説明

使用済排出海水の泡監視装置及び使用済排出海水の排出システム

【課題】放水路に放出される排出海水に同伴される泡を安定して連続して監視することができる使用済排出海水の泡監視装置及び使用済排出海水の排出システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る使用済排出海水の泡監視装置13は、使用済の排出海水11の放水路12の排出海水11に浮遊している泡22の拡散を抑制する浮体15と、浮体15の上流側の側面に互いに所定間隔を保って対向して設けられる発光部25と受光部26とを有する測定手段16と、測定手段16で受光された光量を検知するセンサ18と、測定手段16で受光された光27をセンサ18に伝達する光伝送手段17と、センサ18の検知結果から排出海水11に泡22が浮遊しているか否かを判断し、泡22の発生している範囲を求める判定手段19と、判定手段19の判断結果に基づいて泡22の有無を表示する表示手段24と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火力発電所や原子力発電所等の発電プラントや化学プラント等の冷却水として、あるいは排ガスの洗浄用水として、海水を使用した後に再び海へ排出する使用済排出海水に同伴される泡を監視する使用済排出海水の泡監視装置及び使用済排出海水の排出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、火力発電所などの種々の発電プラントでは、海水は復水器等の冷却水や、海水脱硫設備の排ガス処理用の水や熱交換器等の熱交換用の水として多量に使用されている。復水器で使用された後の使用済の排出海水、海水脱硫設備で用いた使用済の排出海水、熱交換器等から排出される排出海水は、温排水として放水路に排出され、海域や河川域に排出されている。
【0003】
放水路には、一般に海の潮位の変動に対応するため堰を設置しているが、この堰を越えて排水が下流側に流れ落ちて空気を巻き込むことで、放水路の水面上には多量の泡が発生する。また、放水路には、排水が空気を巻き込むことで生じる泡の他に、界面活性剤などの化学薬品、微生物や生物死骸など汚染物などの様々な原因により生じている泡も含まれている場合がある。
【0004】
空気を巻き込むことで生じる泡のほとんどは放水路の途中で消泡するが、化学薬品や汚染物等に起因して生じた泡は、化学薬品や汚染物等による界面活性作用により容易に破泡しないため、使用済海水や排出海水の表面に浮遊している場合が多く、放水路の排出口から海に排出される場合がある。
【0005】
また、化学薬品や汚染物等に起因して生じた泡は、空気を巻き込むことで生じる泡に比べ外観も悪く、排水基準に泡の規制がないが、これらに起因して生じた泡が同伴された排出海水は、外観的に汚濁排水と認識されやすい。そのため、排水が放水される周辺の海域や河川域で行われている漁業や農業の安全性を確保する観点から、泡の安全性の確認や証明を行う場合がある。
【0006】
また、放水路の下流側にはフロート(浮体)を設置して、放水路の水面上に浮遊している泡が海域や河川域に流れ出さないようにしている。しかし、放水路の水面上に浮遊している泡を海域や河川域に流れ出さないようにフロートで止めておくと、フロート周辺には多量の泡が集中して、高波が来た場合や強風が生じた場合には、フロート周辺に浮遊している泡が近隣に飛散してしまう場合がある。
【0007】
そこで、放水路の水面上に泡が発生するのを抑制するため、従来では、例えば、冷却水として用いる海水中に消泡剤等の薬剤を添加し、海水を冷却水として用いる際に泡が発生するのを抑制する発泡抑制方法などが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、放水路の水面上に泡が発生するのを抑制する他に、フロートが浮いている放水路周辺の水面を作業員が直接確認するか監視カメラなどを用いて目視で監視し、フロートで泡が止まっているのを確認した際には、フロート周辺の水面上に浮遊している泡を回収し、分析等していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2008/041400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、作業員が直接確認するか監視カメラなどを用いて目視で監視する方法では、夜間は放水路の水面上に浮遊している泡を確認することは困難であるため、昼夜を通じて安定して放水路の水面上に浮遊している泡を監視することは困難である、という問題がある。
【0011】
そこで、放水路の水面上に浮遊している泡を昼夜を通じて安定して監視することができる泡の泡検知装置が切望されている。
【0012】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであって、放水路に放出される排出海水に同伴される泡を安定して連続して監視することができる使用済排出海水の泡監視装置及び使用済排出海水の排出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、使用済の排出海水を放水する放水路に係留されて設けられ、前記排出海水に浮遊している泡の拡散を抑制するための1つ以上の浮体と、前記浮体の上流側の側面に互いに対向して設けられ、光源からの光を照射する発光部と、前記発光部から照射された光を受光する受光部とを有する測定手段と、前記測定手段で受光された光量に基づいて前記泡を検知する検知手段と、を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置である。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、前記検知手段の検知結果に基づいて前記泡が発生している範囲を求める判定手段を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置である。
【0015】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記発光部と前記受光部とを保護する一対の外筒を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置である。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、前記一対の外筒は、前記浮体の上流側の側面の高さ方向に複数設けられることを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置である。
【0017】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記外筒は、互いの対向面側に前記泡が付着することを抑制する泡付着抑制手段を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置である。
【0018】
第6の発明は、使用済の排出海水を海に放水する放水路と、請求項1乃至5の何れか1つに記載の使用済排出海水の泡監視装置と、前記排出海水に浮遊している泡を消泡する消泡装置と、を有することを特徴とする使用済排出海水の排出システムである。
【0019】
第7の発明は、第6の発明において、前記泡監視装置は、前記消泡装置を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記検知手段の検知結果に基づいて前記泡の発生量が所定量以上となったら、前記消泡装置を用いて前記排出海水に浮遊している前記泡を消泡することを特徴とする使用済排出海水の排出システムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、放水路に放出される排出海水に同伴される泡を安定して連続して監視することができる。このため、海水を使用した後に再び海洋へ排出する排出海水に同伴される泡に対して適切に消泡処理を施すことができ、昼夜を通じて効率よく泡を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置を適用した使用済排出海水の排出システムの概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例に係る使用済排出海水の排出システムの平面概略図である。
【図3】図3は、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置の概略図である。
【図4】図4は、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置の平面概略図である。
【図5】図5は、本実施例に係る測定手段の構成例である。
【図6】図6は、本実施例に係る泡の発生範囲の算出方法を説明する図である。
【図7】図7は、本実施例に係る泡の発生範囲の算出方法を説明する図である。
【図8】図8は、本実施例に係る泡の発生範囲の算出方法を説明する図である。
【図9】図9は、本実施例に係る測定手段の外筒の構成を簡略に示す図である。
【図10】図10は、本実施例に係る測定手段の泡付着抑制手段を簡略に示す図である。
【図11】図11は、本実施例に係る測定手段の泡付着抑制手段を簡略に示す図である。
【図12】図12は、本実施例に係る測定手段の泡付着抑制手段を簡略に示す図である。
【図13】図13は、本実施例に係る測定手段の泡付着抑制手段を簡略に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る使用済排出海水の泡監視装置及び使用済排出海水の排出システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに以下に記載した下記実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0023】
本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置を備えた使用済排出海水の排出システムについて説明する。図1は、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置を適用した使用済排出海水の排出システムの概略構成図であり、図2は、本実施例に係る使用済排出海水の排出システムの平面概略図であり、図3は、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置の概略図であり、図4は、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置の平面概略図である。図1、図2に示すように、本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10は、使用済の排出海水11を海20へ排出する放水路12に設けられ、使用済排出海水の泡監視装置13と、消泡装置14とを有するものである。また、図1〜4に示すように、使用済排出海水の泡監視装置13は、浮体(フロート)15と、測定手段16と、検知手段(センサ)18と、判定手段19と、光伝送手段(光ファイバー)17と、制御手段(制御装置)23と、表示手段(モニタ)24とを有するものである。
【0024】
排出海水11は、例えば、海20から取水した海水を火力発電所、原子力発電所等の発電プラントの復水器の冷却水として用い、復水器で熱交換されて温められた温排水であり、復水器から放水溝29に排出され放水路12を通って海20に向けて排出される使用済の海水である。
【0025】
放水路12には堰21が設けられ、放水路12の水面の高さは、復水器の方が海域側よりも高くなるように形成され、海20の潮位の変動を受けないようにしている。
【0026】
放水路12には、排出海水11が海20に向けて排出されるまでの間に、排出海水11には泡22が多量に発生し、泡22を同伴した排出海水11が海20に向けて流れている。泡22は、排出海水11が堰21を越えて下流側に流れ落ちた際に排出海水11が空気を巻き込むことで生じる泡や、界面活性剤などの化学薬品、微生物や生物死骸などの汚染物、水中の藻類や細菌、無機物や有機物の微粒子、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子などの様々な原因により生じている泡などがある。空気を巻き込むことで生じる泡のほとんどは放水路12の途中で消泡するが、汚染物等に起因して生じた泡は、水と水以外の物質(化学薬品や汚染物、水中の藻類や細菌、無機物や有機物の微粒子、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子)が攪拌されたときに曝気され,いったん沈んだ泡が浮上する際に加圧浮上することによって気泡の周囲に吸着することから界面活性剤としての機能を果たし、気泡が割れにくくなっている。また、こうした泡22に対しては、物理的な力を加えた場合でも、破泡、消泡せず、余計な泡を生じることが多い。すなわち、小さな泡が放水路12の下部から上昇する過程で排出海水11中や放水路12の底部に堆積した汚泥などの汚濁成分が泡に巻き込まれることで、化学薬品や汚染物、水中の藻類や細菌、無機物や有機物の微粒子、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子などを多く取り込み、泡の中に更に小さい泡が多数存在した状態の泡を形成することが考えられる。これにより、泡22の皮膜が厚く、強固となる結果、気泡が割れにくくなり、破泡、消泡し難くなっている。そのため、化学薬品や汚染物等に起因して生じた泡は、放水路12の排出口まで排出海水11の表面に着色した状態で浮遊している場合が多い。
【0027】
放水路12の下流側の放水路12と海域との境近傍には、泡22を同伴した排出海水11の表面近傍の流れを遮る浮体(以下、フロートという)15が係留して設けられている。フロート15は放水路12の排出海水11の流れ方向と略直交する向きに複数設けられており、放水路12を流れる排出海水11の海水表層に浮遊する泡22を、フロート15で止めて排出海水11に同伴して海域に拡散するのを抑制するようにしている。
【0028】
フロート15同士は、例えば、紐等により各々連結されており、フロート15の数は、放水路12の幅大きさ等により調整される。また、発生する泡22に応じて、フロート15の高さや、水没量を適宜調整できるようにしてもよい。
【0029】
フロート15を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、発泡ポリスチレン等の有機系樹脂などを用いることが好ましい。消泡装置14として薬剤噴霧装置を用いて排出海水11に同伴する泡22を消泡する場合、フロート15の表面に酸が付着することで、フロート15の表面に水垢や微生物が付着するのを抑制し、表面の汚染を抑制できると共に、樹脂と泡22とが接触することで破泡作用が発揮され、泡22の消泡効果を促進することができる。また、フロート15からの有害物質溶出が無いため環境水域(海、湖沼、河川等)を汚染することも抑制することができる。
【0030】
測定手段16は、図3及び図4に示すように、フロート15の上流側の側面に互いに所定間隔を保って対向して設けられる発光部25と受光部26とを有するものである。また、フロート15の上流側の側面には発光部25と受光部26とを保護する一対の外筒62が対向して設けられており、一方の外筒62内には発光部25が設けられ、他方の外筒62内には受光部26が設けられている。
【0031】
発光部25としては、光を出力できるものであればよく、例えば、レーザーダイオード(Laser Diode:LD)や発光ダイオード(Light-Emitting Diodes:LED)等の光源を有して構成されるものが挙げられる。また、発光部25から照射する光27の種類は、例えば、紫外線、可視光線、赤外線などが挙げられ、光27の波長は紫外領域から赤外領域までを使用することができる。使用する波長としては、例えば、100nm以上1100nm以下、好ましくは300nm以上900nm以下、より好ましくは400nm以上900nm以下、さらに好ましくは380nm以上780nm以下である。
【0032】
受光部26は、発光部25から照射された光27を受光し、光量を検出し、出力信号を得るものである。受光部26としては、例えば、フォトディテクタ(Photo Detector:PD)や電荷結合素子(Charge-Coupled Device:CCD)等の固体撮像素子等が用いられる。
【0033】
また、発光部25及び受光部26としては、公知の透過型フォトセンサ等を用いるようにしてもよい。
【0034】
発光部25と受光部26とは、それぞれ光伝送手段(以下、光ファイバーという)17により検知手段18と接続され、判定手段19、制御手段(制御装置)23との間でデータの送受信ができるようになっている。
【0035】
発光部25は受光部26に向けて光27を照射し、受光部26は受光した光27の光量に応じて光ファイバー17を介して検知手段(以下、センサという)18に伝達される。放水路12の上流側から流れてきた排出海水11に泡22が浮遊している場合、フロート15に泡22がせき止められる。発光部25と受光部26との間の光路に泡22が入ると、発光部25から照射される光27の光量は泡22で弱くなるので、受光部26で受光される光27またはその透過光の光量は減少する。よって、受光部26で受光される光量の減少割合から、放水路12の上流側から排出海水11に同伴して流れてきた泡22がフロート15に滞留しているか否かを検知することができる。
【0036】
また、本実施例においては、発光部25は、光源を有して構成されているが、本実施例は、これに限定されるものではなく、発光部25は発光源を別途設け、光ファイバー17は、発光源からの光27を測定手段16に伝送するようにしてもよい。これにより、発光源からの光27を光ファイバー17を介して発光部25に伝送し、発光部25から受光部26に向けて光27を照射することができる。
【0037】
光ファイバー17は、受光部26で受光された光27をセンサ18に伝送する。受光部26で受光された光27の信号は光ファイバー17を介してセンサ18に伝送される。図4では光ファイバー17は1本の線で示してあるが、各フロートの発光部25と受光部26との信号をそれぞれ得るために複数の光ファイバーが束となっているものである。
【0038】
検知手段(センサ)18は、受光部26で受光された光27の信号を検知する。センサ18は、受光部26で受光した光量に応じた信号を光ファイバー17を介して受信し、受信された信号の値から泡22の有無を検知する。センサ18は、受光部26から伝送された光27の信号を判定手段19、制御手段23に伝達する。
【0039】
センサ18は、光27の信号の情報を光ファイバー17などを用いて判定手段19、制御手段23に送信するようにしているが、これに限定されるものではなく、センサ18は、受光された光27の信号の情報を無線などを用いて判定手段19、制御手段23に送信するようにしてもよい。
【0040】
判定手段19は、検知手段(センサ)18で検知された受光部26の光27の光量から排出海水11に泡22が浮遊しているか否かを判断する。また、判定手段19は、泡22があると判断した各フロート15に設けられている測定手段16からの測定結果を参照して、予め定められた各測定手段16の位置や配置から泡22の発生している範囲を求める。
【0041】
よって、発光部25から照射され、受光部26が受光する光27の光量の変動割合を求めることにより、放水路12の上流側から排出海水11に同伴して流れてきた泡22がフロート15に滞留しているか否かを求めることができる。また、海20が干潮、満潮により海面の高さが変動する場合でも、発光部25および受光部26はフロート15に設けられているため、発光部25から照射された光27を受光部26が受光する際、海面の高さの変動の影響を受けることはない。そのため、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置13を用いれば、海面の高さの変動の影響を受けることなく、通年で安定してフロート15近傍で排出海水11に泡22が浮遊しているか否かを求めることができる。
【0042】
また、本実施例においては、図3に示すように水面28から出ているフロート15の高さのおよそ中間の高さhの位置に測定手段16が設けられている。この水面28からの高さhの位置に測定手段16を配置することで、泡22が少ない(高さhに到達しない)場合には、測定手段16は泡22を測定しないので、表示手段24を頻繁に動作させる必要がない。また、図3及び図4に示すように泡22が水面28からの高さhに到達した場合、泡22が測定手段16の一対の対向する光電センサの発光部25と受光部26の間の光路を遮光することで光量が変化するので泡22を測定することができる。本実施例では、水面28から出ているフロート15の高さのおよそ中間の高さhの位置に測定手段16を設けることにより、泡22がフロート15を乗り越えて外海に漏洩する前に検知手段(センサ)18により泡22を検知することができる。なお、測定手段16の設置高さ位置は泡22の性質や泡22の発生量の許容値により適宜設定することが可能である。
【0043】
また、本実施例では、測定手段16はフロート15の上流側の側面に一つ設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、フロートの高さ方向に複数設けるようにしてもよい。図5は、フロート15の他の構成の一例を示す図である。図5に示すように、フロート15に測定手段16a〜16cを各々、水面28からフロート15の高さh1〜h3に設ける。これにより、発生した泡22が少ない場合や泡22がフロート15を乗り越える直前の場合など任意の泡22の高さの時に泡22を測定することが可能となる。また、水面28に近い下側の測定手段16cで泡22を測定してから上側の測定手段16bで泡22を測定するまでの時間が分かるため時間当たりの泡22の発生量を見積もることが可能となる。
【0044】
また、本実施例に係る泡監視装置13の泡22の発生した範囲を求める場合、例えば、図6に示すように、検知手段18は、フロート15cと15dと15eの測定手段16で泡22が検知された場合、フロート15cと15dと15eの領域Aにある排出海水11に泡22が浮遊していると判断することができる。
【0045】
また、図7に示すように、検知手段18は、フロート15b〜15fの測定手段16で泡22が検知された場合、フロート15b〜15fの領域Bにある排出海水11に泡22が浮遊していると判断することができる。
【0046】
また、図8に示すように、検知手段18は、フロート15a〜15gの測定手段16で泡22が検知された場合、フロート15a〜15gの領域Cにある排出海水11に泡22が浮遊していると判断することができる。
【0047】
なお、フロート15の大きさ、長さ、及び設置する数などは放水路12に合わせて適宜設定することができる。
【0048】
このように、泡22の発生した範囲の面積と測定手段16の水面28からの高さh、又は高さh1〜h3に基づいて発生した泡22の体積を算出することが可能となる。また、発生した泡22の範囲と、例えば、泡22を測定した測定手段16の高さh1から高さh2に到達するまでの時間から、時間当たりの泡22の発生量(体積)を算出することが可能となる。
【0049】
制御手段23は、各測定手段16の測定結果に基づく判定手段19の判断結果を監視室のモニタ(表示手段)24に伝達し、モニタ24は判定手段19の判断結果に基づいて放水路12のフロート15近傍の排出海水11に泡22が浮遊しているか否かを表示する。また、判定手段19の判断結果を直接モニタ(表示手段)24に伝達するようにしてもよい。
【0050】
これにより、放水路12のフロート15近傍の排出海水11に泡22が浮遊しているか否かは、モニタ24で放水路12の外部から作業員は容易に監視することができる。
【0051】
また、本実施例では、表示手段としてモニタ24を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、警告灯を点灯したり、警報を発生したり、ブザー、サイレンを鳴動させたり、回転灯を回転させるなどでもよい。
【0052】
よって、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置13を放水路12に設け、モニタ24に判定手段19の判断結果を表示することにより、放水路12に放出される排出海水11に同伴する泡22を容易に監視することができる。
【0053】
また、本実施例においては、使用済排出海水の泡監視装置13は、浮体(フロート)15と、測定手段16と、検知手段(センサ)18と、判定手段19と、光伝送手段(光ファイバー)17と、制御手段(制御装置)23と、表示手段(モニタ)24とを有する構成として説明したが、本実施例はこれに限定されるものではない。使用済排出海水の泡監視装置13は、浮体(フロート)15と、測定手段16と、検知手段(センサ)18とを有する構成とすることができる。
【0054】
制御手段23は、検知手段18で泡22が検知され、判定手段19で泡22の発生範囲を求めたら、消泡装置14により泡22の消泡処理を行わせる。本実施例では、図2に示すように消泡装置14は、薬剤31を排出海水11に噴霧する薬剤噴霧装置である。消泡装置14は、薬剤31の薬液を噴霧するスプレー32と、薬剤供給ライン33と、薬剤タンク34とを有するものである。スプレー32から排出海水11に薬剤31を供給し、排出海水11中の微生物を殺菌する。図2において薬剤31の薬液を噴霧するスプレー32は放水路12のフロート15に集められた泡22を消泡するように2箇所だけ例示しているが、全てのフロート15に集められた泡22を消泡できるように所定間隔で複数設置されている。
【0055】
薬剤31としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、オゾン、過酸化水素水などが挙げられる。消泡装置14は、その先端のスプレー32からNaClOが5ppm〜10ppm相当分となるように散布する。また、オゾンが気体の場合にはオゾンを吹きつけるようにしてもよい。
【0056】
排出海水11に浮遊している泡22は、水中の藻類や細菌、多糖類、脂肪等の両親媒性生体高分子が気泡の周囲に吸着し、界面活性剤としての機能を果たす結果、気泡が割れにくくなっている。そこで、消泡装置14より薬剤31を排出海水11に噴霧することで、例えば藻類や、細菌の殺菌が促進され、この藻類や細菌等の存在に起因する泡の破泡抑止性能を低下させ、消泡が促進される。これにより、微生物由来に起因し、破砲し難い汚濁泡に対して、薬剤処理により、効果的に消泡処理がなされる。
【0057】
また、制御手段23は、測定手段16で測定された測定結果に基づいて、消泡装置14を用いて排出海水11に浮遊している泡22を消泡することが好ましい。制御手段23は、泡22の発生量が所定量以上と判断した場合に、消泡装置14を用いて薬剤31をフロート15近傍の排出海水11に噴霧し、排出海水11に浮遊している泡22を消泡する。これにより、薬剤31を無駄に消費することなく、効率よく排出海水11に浮遊している泡22の消泡処理を施すことができる。
【0058】
本実施例においては、消泡装置14として薬剤31を噴霧させる方法を用いているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、一般的な泡の消泡方法、例えば、高温ガスを噴射する方法、海水や消泡剤を散布させる方法、海水や消泡剤を噴射させる方法、泡を加熱する方法などを用いることができる。
【0059】
よって、本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10によれば、使用済の排出海水11の放水路12に本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置13を設け、放水路12に放出される排出海水11に同伴した泡22を安定して連続して監視することができる。このため、昼夜を通じて消泡装置14により、排出海水11の表面に浮遊している泡22に対して、迅速かつ確実に効率よく消泡処理を施すことができるため、海20に泡22が放流するのを抑制することができる。
【0060】
また、従来のように泡22を陸上に回収し、陸上に設けた泡処理設備で処理する場合には、泡22の残骸は産業廃棄物として別途処理する必要があるため、泡22の処理設備を別途設置する必要があり、ランニングコストが上昇すると共に、廃棄物としての処理コストも嵩むこととなる。これに対し、本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10では、排出海水11に浮遊している泡22をそのまま破泡55させているため、直接、海20へ放出することができ、泡22を処理するために要する泡処理設備の設置コストの低廉及びランニングコストの大幅な削減を図ることが可能となる。
【0061】
本実施例においては、図2に示すように、制御手段(制御装置)23など本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10において用いられる装置には、一般の電源部41と、補助電源部として太陽光発電設備42とから電気を供給するようにしている。太陽光発電設備42は、発電部として太陽光から電力を得る太陽光発電パネル43と、発電された電力を充電する充電部44とを有する。充電部44としては、例えば、二次電池(充電池)、リチウムイオン充電池、ニッケル水素充電池等を挙げることができる。
【0062】
昼間に太陽光発電パネル43で発電した電気は充電部44に充電され、充電しておいた電気は夜間に制御手段(制御装置)23の運転用などの電気として用いる。これにより、昼夜を通して安定して効率よく節電しつつ本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10において用いられる装置に電気を供給することが可能となる。
【0063】
本実施例において、発電部には、自然エネルギーとして太陽光から発電する太陽光発電パネル43を用いているが、これに限定されるものではない。発電部は、自然エネルギーとして太陽光以外に、風力、水力などから電力を得るようにしてもよい。発電部として、例えば、風力から電力を得る場合には風車が用いられ、水力から電力を得る場合には水車が用いられる。
【0064】
例えば、風力を用いて電力を得る場合には、昼間に風車で発電した電気を充電部44に充電し、水力を用いて電力を得る場合には、水車で発電した電気を充電部44に充電する。そして、夜間に充電部44に充電しておいた電気を制御手段(制御装置)23など本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10において用いられる装置の動力用の電気として用いる。これにより、本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10に電気を昼夜を通して安定して効率よく供給することができるため、節電を図りつつ効率よく運転することが可能となる。また、使用済排出海水の泡監視装置13は主に沿岸部に設置されることから、太陽光発電パネル43、風車、水車などを併用することが可能である。
【0065】
本実施例においては、排出海水11として、火力発電所、原子力発電所等の発電プラントの復水器等から排出される使用済海水に同伴される泡を監視し、処理する場合について説明したが、本実施例はこれに限定されるものではなく、海水脱硫設備で用いた使用済の排出海水、熱交換器等から排出される排水、河川に排出される排水等についても同様に適用することができる。
【実施例2】
【0066】
本実施例に係る使用済排出海水の排出システムについて説明する。本実施例に係る使用済排出海水の排出システムは、上述した図1〜図4に示す実施例1に係る使用済排出海水の排出システム10に備えられている使用済排出海水の泡監視装置13の測定手段16の構成以外は実施例1と同様である。上述した実施例1と同一の構成には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0067】
図9は、測定手段の外筒の構成を簡略に示す図である。図10は、測定手段の泡付着抑制手段を簡略に示す図である。図9に示すように、使用済排出海水の泡監視装置13の測定手段16は、一対の外筒62の対向面63a、63bに、外筒62の対向面63a、63b側に空気58を噴出させるための気体噴出部(泡付着抑制手段)56を有するものである。気体噴出部56は、外筒62の対向面63a、63b側に空気58をポンプ51で送り込むようにしている。
【0068】
放水路12の水面上に浮遊する泡22のなかでも、例えば化学薬品、微生物、生物死骸などに起因して生じた泡22は有機物、糖類、油等を含んでいる場合がある。このような泡22は表面張力が高く消泡しづらいので長時間、泡22として水面上を浮遊することになる。例えば、消泡装置14により水面28を浮遊する泡22を消泡しても、例えば、図9に示すように、泡22が測定手段16の外筒62の対向面63a、63bに付着したままとなる場合があり、測定手段16の発光部25と受光部26の光路を塞いでしまうことがある。
【0069】
本実施例によれば、図10に示すように、外筒62の対向面63a、63bに気体噴出部56を有するため、発光部25又は受光部26が設けられた一方の外筒62の内側から対向する他方の外筒62側に向かって、それぞれ空気58又はガス58を噴出させて、外筒62の対向面63a、63bに付着した泡22を吹き飛ばして除去する。これにより、泡22の付着を抑制することができる。
【0070】
よって、泡付着抑制手段を有する本実施例によれば外筒62の対向面63a、63bに気体噴出部56を有することにより泡22が測定手段16の光路を塞いでしまうことがない。
【0071】
本実施例においては、気体噴出部56から噴出させる気体として空気58を用いているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、ガス、高圧空気、高圧ガスなどを用いてもよい。
【0072】
本実施例においては、泡付着抑制手段として気体噴出部56から気体を外筒62の対向面63a、63b側に噴出させて、泡22の付着を抑制しているが、本実施例はこれに限定されるものではない。泡付着抑制手段の他の一例を図11、図12及び図13に示す。図11、図12に示すように、本実施例は、泡付着抑制手段として、外筒62の対向面63a、63bの端面に油52を塗布するようにしてもよい。対向面63a、63bに塗布する油52としては、例えばシリコン油などを挙げることができる。よって、泡付着抑制手段を有する本実施例によれば外筒62の対向面63a、63bに油52を塗布することにより測定手段16に泡22が付着することを抑制することができる。また、仮に泡22が外筒62の対向面63a、63bに付着しても油52の作用により泡22が破れて消泡するため測定手段16の光路を塞いでしまうことがない。
【0073】
また、図13に示すように、本実施例は、泡付着抑制手段として、一対の外筒62の対向面63a、63bに光触媒層53が形成されたカバー54を有するようにしてもよい。カバー54は、対向面63a、63b側の表面に光触媒の皮膜が形成されたものである。放水路12の水面上に浮遊する泡22のなかでも、例えば化学薬品、微生物、生物死骸などに起因して生じた泡22は有機物、糖類、油等を含んでいることが多いため、光触媒層53の作用により泡22の構成成分である有機物、糖類、油のいずれか1つ以上を分解することにより泡22を破れ(破泡55)させ、消泡させることができる。
【0074】
光触媒層53としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)などを用いて形成される層が挙げられる。外筒62の対向面63a、63bを光触媒層53が形成されたカバー54で覆うことにより、測定手段16に泡22が付着することを抑制することができる。また、仮に泡22がカバー54表面に付着しても光触媒層53の作用により泡22が破れて消泡するため測定手段16の光路を塞いでしまうことがない。
【0075】
よって、本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置13によれば、測定手段16の発光部25と受光部26が設けられた一対の対向する外筒62の対向面63a、63bに付着した泡22を除去、又は泡22の付着を抑制することができ、測定手段16の誤検出を抑制することができる。
【0076】
よって、本実施例に係る使用済排出海水の排出システム10によれば、使用済の排出海水11の放水路12に本実施例に係る使用済排出海水の泡監視装置13を設け、測定手段16の誤検出を抑制しつつ、放水路12に放出される排出海水11に同伴した泡22を安定して連続して監視することができる。このため、昼夜を通じて消泡装置14により、排出海水11の表面に浮遊している泡22に対して、迅速かつ確実に効率よく消泡処理を施すことができるため、海20に泡22が放流するのを抑制することができ、更に信頼性の高い使用済排出海水の排出システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 使用済排出海水の排出システム
11 排出海水
12 放水路
13 使用済排出海水の泡監視装置
14 消泡装置(消泡手段)
15 フロート
16 測定手段
17 光伝送手段(光ファイバー)
18 検知手段(センサ)
19 判定手段
20 海
21 堰
22 泡
23 制御手段(制御装置)
24 表示手段(モニタ)
25 発光部
26 受光部
27 光
28 水面
29 放水溝
31 薬剤
32 スプレー
33 薬剤供給ライン
34 薬剤タンク
41 電源部
42 太陽光発電設備
43 太陽光発電パネル
44 充電部
51 ポンプ
52 油
53 光触媒層
54 カバー
55 破泡
56 気体噴出部
58 空気、ガス
62 外筒
63a、63b 対向面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済の排出海水を放水する放水路に係留されて設けられ、前記排出海水に浮遊している泡の拡散を抑制するための1つ以上の浮体と、
前記浮体の上流側の側面に互いに対向して設けられ、光源からの光を照射する発光部と、前記発光部から照射された光を受光する受光部とを有する測定手段と、
前記測定手段で受光された光量に基づいて前記泡を検知する検知手段と、
を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記検知手段の検知結果に基づいて前記泡が発生している範囲を求める判定手段を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記発光部と前記受光部とを保護する一対の外筒を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記一対の外筒は、前記浮体の上流側の側面の高さ方向に複数設けられることを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記外筒は、互いの対向面側に前記泡が付着することを抑制する泡付着抑制手段を有することを特徴とする使用済排出海水の泡監視装置。
【請求項6】
使用済の排出海水を海に放水する放水路と、
請求項1乃至5の何れか1つに記載の使用済排出海水の泡監視装置と、
前記排出海水に浮遊している泡を消泡する消泡装置と、
を有することを特徴とする使用済排出海水の排出システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記泡監視装置は、前記消泡装置を制御する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記検知手段の検知結果に基づいて前記泡の発生量が所定量以上となったら、前記消泡装置を用いて前記排出海水に浮遊している前記泡を消泡することを特徴とする使用済排出海水の排出システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−34921(P2013−34921A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171238(P2011−171238)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】