説明

供給装置及び供給方法

【課題】搬送するシート体に他のシート体が付着することを回避でき、シート体の損傷防止を図ることができるようにすること。
【解決手段】複数のシート体SSを重ねて載置可能な載置手段11と、この載置手段11に載置された最表部に位置する最表シート体SS1を支持して搬送する搬送手段12と、隣接するシート体SS同士の付着を解除可能に設けられた付着防止手段14とを備えて供給装置10が構成されている。付着防止手段17は、気流発生手段34を含み、この気流発生手段34は、最表シート体SS1側から、これに隣接する隣接シート体SS2側に向かう気流を積層面SAに沿う位置で発生可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給装置及び供給方法に係り、更に詳しくは、複数のシート体から1枚ずつシート体を供給することができる供給装置及び供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シート体を1枚ずつ供給する供給装置が利用されるに至っており、かかる供給装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。同文献の供給装置は、積層した状態で載置された複数のシート体のうち、最上位のシート体を支持して搬送する搬送手段と、この搬送手段で支持したシート体に接触する樹脂製ファスナーからなる分離部材とを備えている。分離部材は、搬送手段で支持されたシート体と摺動することで、当該シート体に振動を与えている。これにより、支持されたシート体と、これに隣接するシート体が付着した状態となることを回避でき、搬送手段でシート体を1枚ずつ搬送できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−255821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、分離部材とシート体とが接触して擦れ合うので、シート体の端部に傷を付けてしまう、という不都合がある。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、搬送するシート体が損傷することなく他のシート体との付着を防止することができる供給装置及び供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、複数のシート体を重ねて載置可能な載置手段と、この載置手段に載置された最表部に位置する最表シート体を支持して搬送する搬送手段と、隣接するシート体同士の付着を解除可能に設けられた付着防止手段とを備え、
前記付着防止手段は、前記最表シート体側から、これに隣接する隣接シート体側に向かう気流を積層面に沿う位置で発生可能な気流発生手段を有する、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記気流発生手段は、前記最表シート体に隣接する隣接シート体側における前記最表シート体の反対側に位置するとともに、吸引によって前記気流を発生させる、という構成を採用することができる。
【0008】
更に、前記付着防止手段は、前記気流が通過する少なくとも1本の溝部を更に備え、この溝部は、積層面に沿って形成される、という構成を採ることが好ましい。
【0009】
また、前記付着防止手段は、前記最表シート体と隣接シート体との相対面の内方に向かい、且つ、当該相対面に傾斜する方向の斜め気流を発生可能な斜め気流発生手段を備える、という構成も好ましくは採用される。
【0010】
更に、前記付着防止手段は、前記最表シート体と隣接シート体との相対面に平行な切出縁を備え、
前記搬送手段は、前記切出縁を利用して前記相対面方向に最表シート体と隣接シート体とを相対変位可能な変位手段を備える、という構成を採ってもよい。
【0011】
また、前記溝部を屈折又は湾曲した延出形状に設け、前記積層面からシート体の面内中央方向に流れる層間気流を発生可能な層間気流発生手段を備える、という構成を採ってもよい。
【0012】
更に、本発明の供給方法は、重ねて載置された複数のシート体の最表部に位置する最表シート体側から、これに隣接する隣接シート体側に向かう気流を積層面に沿う位置で発生しながら、前記最表シート体を支持して搬送する、という方法を採っている。
【0013】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「積層面」とは、載置手段に積層された状態で載置された複数のシート体において、各シート体の端縁が揃うことで当該端縁により形成される面を意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、付着防止手段は、気流によって隣接するシート体同士の付着を解除するので、シート体に接触することはなく、従来の分離部材のようにシート体に傷を付けることを防止することが可能となる。しかも、積層面に沿う位置で最表シート体側から隣接シート体側に向かって気流を発生するので、重ねられたそれぞれのシート体に対し、隣接するシート体と分離する方向の力を付与可能となる。これにより、搬送するシート体に他のシート体が付着することを回避でき、複数枚のシート体が同時に搬送されることを防止することができる。
【0015】
更に、気流発生手段を最表シート体に隣接する隣接シート体側から吸引によって気流を発生させる構成とした場合、簡単な構成で隣接シート体に安定した気流を当てることができる。すなわち、最表シート体側から隣接シート体に気流を噴き付ける構成の場合だと、隣接シート体に安定した気流を当てるためには、シート体の積層量の増減に伴って気流発生手段の位置を変化させなければならない。その点、隣接シート体側から吸引によって気流を発生させる構成の場合、気流発生手段の位置を変化させることなく隣接シート体に安定した気流を当てることができ、最表シート体と隣接シートとの付着を確実に解除可能となる。
【0016】
また、気流が通過する溝部を有する場合、最表シート体から最下位のシート体までの全体の積層面に沿う位置で気流が流れるようになり、積層されたシート体全体を気流の流れ方向に付勢することができる。
【0017】
更に、斜め気流を発生可能とした場合、最表シート体と隣接シート体との界面に気流が入り易くなり、シート体同士の付着をより一層良好に解除することができる。
【0018】
また、付着防止手段の切出縁を利用して最表シート体と隣接シート体とを相対変位させることで、これらのシート体を相互に面方向にずらし、表出した隣接シート体表面に気流を当てて最表シート体と隣接シート体との界面に気流を入り込み易くすることができる。
【0019】
更に、層間気流発生手段を形成した場合、溝部の屈折又は湾曲した部分を通過する気流を溝部の外部へ吹き出し、隣接するシート体の界面に流れ込む層間気流を発生させることができ、隣接するシート体を分離し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る供給装置の概略正面断面図。
【図2】シート体の搬送要領を示す説明図。
【図3】前記供給装置に部分概略斜視図。
【図4】変形例に係る溝部の図1中Ad矢視図。
【図5】変形例に係る溝部の概略正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」は、図1を基準として用いられ、「前」とは同図中手前側、「後」とは、同奥行き側について用いられる。
【0022】
図1〜図3において、供給装置10は、複数のシート体SSを重ねた状態で左右に2セット載置して収容可能な容器状をなす載置手段11と、この載置手段11の上方に設けられた搬送手段12と、載置手段11に設けられた付着防止手段14とを備えている。シート体SSは、枚葉の印刷用紙や、剥離シートに接着シートが積層された複層構造のシート部材の他、封筒等の袋状をなすものが例示できる。ここで、重ねた状態のシート体SSにおいて、最表部(最上位)に位置するシート体SSを最表シート体SS1とし、当該最表シート体SS1の下面に隣接するシート体SSを隣接シート体SS2とする。
【0023】
前記載置手段11は、底部16と、当該底部16から立設するとともに、重ねたシート体SSを囲う位置に設けられた縦壁17とを備え、縦壁17の内周面17Aが積層面SAに沿って位置するようになっている。
【0024】
前記搬送手段12は、最表シート体SS1の上面を支持可能な吸着パッド、ベルヌーイチャック、チャックシリンダ、メカチャック等の支持体20と、当該支持体20を支持する支持軸21と、支持軸21の上端側をスライダ23を介して支持し、当該スライダ23を左右方向に移動可能な変位手段となる駆動機器としての第1直動モータ24と、左右に位置する第1直動モータ24を連結して支持する連結部材25と、この連結部材25を出力軸27の先端側で支持し、当該出力軸27を上下方向に移動可能な駆動機器としての第2直動モータ28と、この第2直動モータ28をスライダ30を介して支持し、当該スライダ30を前後方向に移動可能な駆動機器としての第3直動モータ31とを備えている。従って、搬送手段12は、各直動モータ24、28、31の作動により、最表シート体SS1を直交3軸方向に移動して搬送可能となっている。なお、支持軸21の上下長さ及び、第2直動モータ28のストローク長さは、縦壁17の内周面17Aの上下長さよりも長く設定されている。
【0025】
前記付着防止手段14は、底部16の内部に形成されたチャンバ33と、このチャンバ33に接続される気流発生手段34と、縦壁17の内周面17Aにおいて上下に延びる直線状に形成され、下端側でチャンバ33に連通する複数本の溝部36と、重ねた状態のシート体SSの右側に位置する内周面17Aの上部領域に形成された段差面37とを備えている。段差面37は、最表シート体SS1と隣接シート体SS2との相対面に平行、つまり水平に形成され、段差面37より上方の内周面17Aが下方の内周面17Aより積層面SAから離れた位置に形成されている。この段差面37の左端縁37Aが切出縁として機能する。
【0026】
前記気流発生手段34は、チャンバ33に連通する吸気管39と、この吸気管39に接続される吸気ポンプや真空エジェクタ等の図示しない吸引手段とを備え、当該吸引手段の作動によって溝部を通じてチャンバ33内に吸気を行うようになっている。この吸気時に、各溝部36に気流が発生することとなり、積層面SS1に沿う位置において、最表シート体SS1側から隣接シート体SS2側に向かう方向、つまり下方向に気流を発生することが可能となる。
【0027】
前記溝部36は、重ねた状態のシート体SSの左右両側の内周面17Aに3本ずつ、前後両側の内周面17Aに1本ずつ形成され、積層面SAに沿って位置することとなる。各溝部36の上端側には、斜め気流発生手段41がそれぞれ設けられている。斜め気流発生手段41は、溝部36の上端領域を上方に向かうに従ってシート体SSから離れる方向に傾斜する傾斜面とすることで形成されている。これにより、気流発生手段41は、溝部36に気流が生じるときに、シート体SSの端縁から内方に向かいつつ、下方に押さえ付ける方向に流れる斜め気流41Aを発生できるようになっている。なお、段差面37の左端縁37Aは、斜め気流発生手段41のよりも下方に設けるとよい。これにより、表出した隣接シート体SS2の上面に気流を吹き付け易くなるので、最表シート体SS1と隣接シート体SS2との付着を解除するのに効果的である。
【0028】
次に、実施形態に係るシート体SSの供給方法について説明する。
【0029】
初めに、複数枚のシート体SSを底部16上に積層しておく。この状態で、図示しない吸引手段を吸気管39を介してチャンバ33に連通し、各溝部36に図1中矢印方向の気流を発生させる。これにより、最表シート体SS1から隣接シート体SS2側に向かう気流が積層面SAに沿う位置で発生し、底部16上に積層された複数枚のシート体SSに下方に向かう力が付与されることとなる。
【0030】
溝部36内に気流を通過させながら、各直動モータ24、28、31の作動により支持体20を最表シート体SS1の上面に配置して支持させる。次いで、第2直動モータ28の作動により支持体20とこれに支持される最表シート体SS1を上昇させる。そして、図2に示されるように、最表シート体SS1が段差面37を通過するときに、第1直動モータ24を作動して最表シート体SS1を右方向に変位させる。これにより、最表シート体SS1に隣接シート体SS2が付着していた場合、隣接シート体SS2の右端縁が段差面37の左端縁37Aに突き当てられ、当該隣接シート体SS2の左端側上面が表出する。そして、表出した隣接シート体SS2の左端側上面に、斜め気流発生手段41によって発生した斜め気流41Aが吹き付けられ、隣接シート体SS2が下方に付勢されて落下し、最表シート体SS1と隣接シート体SS2との付着が解除される。
【0031】
最表シート体SS1と隣接シート体SS2との付着を解除した後、各直動モータ24、28、31の作動により最表シート体SS1を所定位置に搬送し、支持体20による支持を解除することで最表シート体SS1の供給が完了する。そして、次回は上述の隣接シート体SS2が最表部に位置しているので、これを最表シート体SS1として上記同様の動作を繰り返すこととなる。
【0032】
従って、このような実施形態によれば、気流によって隣接するシート体SSの付着を解除可能としたので、当該付着解除のためにシート体SSの端縁に接触する部材を利用しなくてもよくなる。これにより、シート体SSが変形したり損傷したりすることを防止でき、シート体SSの品質向上を図ることが可能となる。また、底部16上に積層されたシート体SSには、搬送の待機中、常に積層面SAに沿って気流が生じるので、最表シート体SS1の搬送前に、隣接シート体SS2と付着し難い状態にして当該付着をより良く抑制することが可能となる。
【0033】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0034】
例えば、前記溝部36は、図4(A)に示されるように、屈折した延出形状に設けたり、図4(B)に示されるように、湾曲した延出形状に設けたりして層間気流発生手段を形成してもよい。これらの図の溝部36では、内部を通過する気流が屈折部36A又は、湾曲部36Bに当たることにより、気流の一部が溝部36の外側に吹き出し易くなる。これにより、積層面SAからシート体SSの面内中央方向に流れる層間気流を多く発生させることができ、隣接するシート体SS同士の付着をより良く防止可能となる。なお、屈折部36A及び湾曲部36Bは、屈折又は湾曲の外側に向うに従って溝が浅くなるように形成することで、気流が慣性によって溝部36の外側に吹き出し易くなり、層間気流を発生し易くすることができる。
また、前記溝部36は、形成位置や形成数を変更してもよい。
【0035】
更に、搬送手段12は、前述のように搬送を行える限りにおいて、種々の設計変更が可能であり、例えば1枚のシート体SSに対し、1個の支持体20で支持するようにしてもよいし、3個以上の支持体20で支持するようにしてもよい。
また、載置手段11は、複数のシート体SSを重ねた状態で1セット収容する構成でもよいし、3セット以上収容する構成でもよい。
更に、切出縁を形成する段差面37は、重ねた状態のシート体SSの右側、左側、前側、後側に位置する内周面17Aの少なくとも1面に形成すればよく、形成された段差面37の位置に合わせて各直動モータ24、28、31の動作を制御すればよい。
また、切出縁は、段差面37で形成する以外に、縦壁17の内側に板状部材、円柱部材、筒状部材等を配置してこれら部材の端縁部を切出縁としてもよい。
更に、図5に示されるように、斜め気流発生手段41を溝部36の延出方向に沿って複数設けてもよい。
【0036】
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0037】
10 供給装置
11 載置手段
12 搬送手段
14 付着防止手段
24 第1直動モータ(変位手段)
34 気流発生手段
36 溝部
37A 左端縁(切出縁)
41 斜め気流発生手段
41A 斜め気流
S シート体
SS1 最表シート体
SS2 隣接シート体
SA 積層面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシート体を重ねて載置可能な載置手段と、この載置手段に載置された最表部に位置する最表シート体を支持して搬送する搬送手段と、隣接するシート体同士の付着を解除可能に設けられた付着防止手段とを備え、
前記付着防止手段は、前記最表シート体側から、これに隣接する隣接シート体側に向かう気流を積層面に沿う位置で発生可能な気流発生手段を有することを特徴とする供給装置。
【請求項2】
前記気流発生手段は、前記最表シート体に隣接する隣接シート体における前記最表シート体の反対側に位置するとともに、吸引によって前記気流を発生させることを特徴とする請求項1記載の供給装置。
【請求項3】
前記付着防止手段は、前記気流が通過する少なくとも1本の溝部を更に備え、この溝部は、積層面に沿って形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の供給装置。
【請求項4】
前記付着防止手段は、前記最表シート体と隣接シート体との相対面の内方に向かい、且つ、当該相対面に傾斜する方向の斜め気流を発生可能な斜め気流発生手段を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の供給装置。
【請求項5】
前記付着防止手段は、前記最表シート体と隣接シート体との相対面に平行な切出縁を備え、
前記搬送手段は、前記切出縁を利用して前記相対面方向に最表シート体と隣接シート体とを相対変位可能な変位手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の供給装置。
【請求項6】
前記溝部を屈折又は湾曲した延出形状に設け、前記積層面からシート体の面内中央方向に流れる層間気流を発生可能な層間気流発生手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の供給装置。
【請求項7】
重ねて載置された複数のシート体の最表部に位置する最表シート体側から、これに隣接する隣接シート体側に向かう気流を積層面に沿う位置で発生しながら、前記最表シート体を支持して搬送することを特徴とする供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−23299(P2013−23299A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156670(P2011−156670)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】