説明

便収容袋

【課題】便器に対して使用される袋であって、自然環境にも有害でないものを提供することを課題とする。
【解決手段】便器に対して装着されて使用される袋であって、紙層と、紙層の内面に設けられた生分解性樹脂層とを有する複合シートによって形成されている、便収容袋10である。便収容袋10は、上方に開口し下部に底部30を有し内部に便が収容される収容部14と、収容部形成部24と一連に形成され(すなわち、基端部が収容部14の上端部に位置し)、相互に離隔する方向に延びる状態になり得る一対の延出部25とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に対して装着されて使用され、便を収容する袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害が発生し、自宅(家屋)が半壊又は全壊等した場合には、被災者は、一般的に、公的な施設等の避難場所に避難する。そして、その被災者は、自宅の修繕がされたり、仮設家屋が提供されたりするまでの少なくともしばらくの間、その避難場所に滞在することとなる。
【0003】
ところで、そのような災害の避難の際における大きな問題の1つとして、トイレの問題がある。
すなわち、そのような災害の際には、水道の供給が停止する場合もあり、その場合は、トイレの使用後に、便を水で流すことができない。
そこで、その場合には、一般的には、その被災地に移動式の仮設トイレが搬送され、その避難場所に設置される。
【0004】
しかしながら、被災地までのアクセス状況等によっては、移動式の仮設トイレが搬送されるまでに長時間(数日間)を要する場合もある。
また、仮設トイレは、本来の水洗式のトイレと比較すれば、やはり、衛生上又は気分上、使用を控えたいものである。
【0005】
ところで、一般の家屋等においては、トイレは、床面積が小さいとともに、その四隅に柱があるため、構造上、最も強固な場所である。このため、その家屋が半壊又はほぼ全壊した場合でも、トイレだけは壊れずに残る場合が多い。
そこで、避難場所に避難している被災者も、トイレのみは自宅のものを使用したいという気持ちが大きい。また、自宅のトイレでなくても、できるだけ清潔感のあるトイレを使用したいという気持ちは大きい。
【0006】
しかしながら、トイレという場所及び便器は破損していなくても、水道の供給が停止した場合には、やはり、そのトイレを使用することはできないこととなる。
そこで、本発明は、水道の供給が停止した場合でも、その便器を使用することが可能になるものを提供することとした。
【0007】
ところで、特許文献1には、便器に対して収容して使用する袋が開示されている。
しかしながら、その袋は高分子によって形成されており、一般的に、燃やすと有害であるとともに、埋め立て処理した場合は、ほぼ永久に分解せずに自然環境内に残存することとなる。
【特許文献1】特開平8−238198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、便器に対して使用される袋であって、自然環境にも有害でないものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、請求項1に係る発明は、便器に対して装着されて使用される袋であって、紙層と、前記紙層の外面及び内面のうちの少なくともいずれかに設けられた生分解性樹脂層とを有する複合シートによって形成されている、便収容袋である。
【0010】
ここで、紙層の「外面」「内面」とは、その複合シートによって便収容袋が形成されている状態における「外側の面」「内側の面」のことをいう。
「生分解性樹脂層」とは、生分解性樹脂からなる層、又は、生分解性樹脂を主成分とする層のことをいう。
生分解性樹脂としては、請求項4に係る発明のものに限らず、澱粉、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、キトサン酢酸セルロ−ス、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
生分解性樹脂は、焼却しても有害ガスが発生せず、また、埋め立て処理した場合は自然環境下で炭酸ガスと水に分解する。
また、「便器に対して装着されて使用される…」の「便器」については、自宅のトイレのものに限らず、避難場所や、それ以外の公共施設のもの等も含まれる。
これらのことは、請求項2に係る発明においても同様である。
【0011】
この発明の便収容袋では、紙層と、紙層の外面及び内面のうちの少なくともいずれかに設けられた生分解性樹脂層とを有する複合シートによって形成されている。
このため、その生分解性樹脂層によって非透水性が得られることから、便器に対して装着されて使用される際に、水分を含んだ便を適切に収容することができる。
【0012】
また、この発明の便収容袋を形成する紙層及び生分解性樹脂層とも可燃性を有する(燃えるとともに、燃やしても無害である)ため、便を収容した状態で、その全体を一括的に可燃ゴミとして廃棄することが可能である。
一方、埋め立て処理されることによって、自然環境下において、生分解性樹脂は炭酸ガスと水に分解し、紙及び便は堆肥となる。このため、この発明の便収容袋では、便を収容した状態で、その全体を一括的に埋め立て処理することも可能である。
このようにして、いずれにしても、この発明の便収容袋では、自然環境に対して悪影響を及ぼすことなく処理することができる。
【0013】
また、この発明の便収容袋は、紙層及び生分解性樹脂層からなる複合シートによって形成されていることから、次のこともいえる。
すなわち、生分解性樹脂層のみからなるシートによって形成される場合は、便収容袋としての強度を確保するために、その生分解性樹脂層の厚みが所定以上のものである必要があり、その場合は製造コストが高いものとなる。
しかしながら、この発明の便収容袋は紙層も有しているために、強度の点において、その分、生分解性樹脂層が薄くても足りることとなる。そして、生分解性樹脂よりも紙の方が低価格であることから、全体としての製造コストを低くすることができるのである。
【0014】
請求項2に係る発明は、便器に対して装着されて使用される袋であって、紙層と、前記紙層の内面に設けられた生分解性樹脂層とを有する複合シートによって形成されている、便収容袋である。
【0015】
この発明の便収容袋では、請求項1に係る発明の便収容袋の作用効果と同一の作用効果が得られるとともに、さらに、次の作用効果が得られる。
すなわち、この便収容袋を形成する複合シートにおいては、生分解性樹脂層が紙層の内面に設けられている。
このため、この発明の便収容袋を製造する際において、複合シートを所定の位置関係で重ねた状態で、生分解性樹脂層同士が対向する。そして、その状態で所定の部位を加圧及び加熱することによって、その複合シートのうちのその部位における生分解性樹脂層同士が溶着する。
こうして、特に接着剤等を必要とすることなく、便収容袋が容易に製造され得る。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の便収容袋であって、上方に開口し下部に底部を有し内部に便が収容される収容部と、基端部が前記収容部の上端部又はその近傍に位置し、相互に離隔する方向に延びる状態になり得る対状の延出部とを有する、便収容袋である。
【0017】
「延出部」としては、収容部を構成する要素と一連的に形成されている態様と、当該要素に対して別体のものとして接続されている態様とがある。
【0018】
この発明の便収容袋では、請求項1又は請求項2に係る発明の便収容袋の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の便収容袋は延出部を有しているため、洋式便器(便器本体,便座等を有する)に対して使用される場合は、収容部が便器本体に収容されるとともに、延出部が便座に載置されたり(第1の使用方法)、延出部が便器本体の開口縁部と便座とによって挟持されたり(第2の使用方法)、延出部が便座の上面を通り便座の外縁部から便器本体の開口縁部と便座との間に挿入され両者によって挟持されたりする(第3の使用方法)ことが可能である。
また、和式便器に対して使用される場合は、収容部が和式便器の内部に収容されるとともに、延出部が和式便器の開口縁部に載置される(その先端部は開口縁部を越えて床に載置される場合を含む)ことが可能である(第4の使用方法)。
【0019】
第1の使用方法の場合は、延出部によって、使用者の臀部が直接的に便座に接触することが防止される(又は軽減される)ため、清潔感を得られる。また、使用者が便座に腰をおろしている状態においては、対状の延出部が便座と使用者の臀部とによって挟持され、便収容袋が位置ずれすることが防止される。
第2の使用方法の場合は、使用者が便座に腰をおろしていない状態においても、対状の延出部が便器本体の開口縁部と便座とによって挟持され、便収容袋が位置ずれすることが防止される(又はその可能性が軽減される)。
第3の使用方法の場合は、第1の使用方法の長所及び第2の使用方法の長所の両方が得られることとなる。
また、第1〜第4のいずれの使用方法の場合においても、延出部は便器の内部に位置しないため、用をたした後に便収容袋を便器から取り出す際に、その延出部を把持することによって、より衛生的に便収容袋を便器から取り出すことができる。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の便収容袋であって、当該便収容袋の深さ方向に該当する長さ方向に延びる1枚のシートが当該長さ方向と垂直の方向に沿って折り曲げられて形成された複数の折り曲げシート部のうち当該便収容袋の底部の側に該当する部分において幅方向における両縁部が相互に接着されることによって前記収容部が形成されるとともに、前記複数の折り曲げシート部のうち当該便収容袋の底部の側とは反対の側に該当する部分においては相互に接着されないことによって前記延出部が形成されている、便収容袋である。
【0021】
この発明の便収容袋では、請求項3に係る発明の便収容袋の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
この発明の便収容袋は、次のように製造される。
便収容袋の深さ方向に該当する長さ方向に延びる1枚のシートが用意され、そのシートが、その長さ方向と垂直の方向に折り曲げられて、複数の折り曲げシート部が形成される。
そして、その複数の折り曲げシート部のうち便収容袋の底部の側に該当する部分において、幅方向における縁部が相互に接着されることによって、収容部が形成される。それとともに、それ以外の部分においては、相互に接着されないことによって、延出部が形成される。
このようにして、この発明の便収容袋では、延出部を別途形成する工程を必要とすることなく、収容部を形成する工程において延出部が形成される。
以上のように、この発明の便収容袋は、容易に製造することができるのである。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の便収容袋であって、前記生分解性樹脂層が、
下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、
下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び、
下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%
からなる脂肪族ポリエステル共重合樹脂であって、温度240℃、せん断速度100sec-1 における溶融粘度が1×102 〜1×103 Pa・sである生分解性樹脂を主成分とする樹脂層である、便収容袋である。
(1) −O−R1−O− (R1 は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式 炭化水素基)
(2) −OC−R2−CO− (R2 は直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基)
(3) −O−R3−O− (R3 は2価の脂肪族炭化水素基)
【0023】
この発明の便収容袋では、請求項1〜請求項3のいずれかに係る発明の便収容袋の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、上述の生分解性樹脂層であれば、紙層に対して良好に積層され得るため、この発明の便収容袋が容易に製造され得ることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[実施形態1]
次に、本発明の実施形態1について、図1〜図4Dに基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、この便収容袋10は、一対のおもてシート部20A,裏シート部20Bを有している。そして、この便収容袋10は、上方に開口している。
この便収容袋10は、全体として大きな可撓性を有しており、ほぼ平面状に折り畳まれた折り畳み状態(図1)や、内部に収容可能な開状態(図4A−1〜図4D)等の種々の形状をとることができる。
【0025】
この便収容袋10は、おもてシート部20A,裏シート部20Bにわたって、1枚のシート(複合シート50)によって形成されている。すなわち、おもてシート部20A及び裏シート部20Bは連続的に形成され、この便収容袋10の下端部は閉塞しており底部30とされている。
【0026】
おもてシート部20Aと裏シート部20Bとは、各々の左右(幅方向)の縁部のうちのほぼ下半部において、相互に接着されている。その部分のことを接着部22ということとする。
このようにして、この便収容袋10の内部に収容部14が形成されている。
おもてシート部20A及び裏シート部20のうち、収容部14を形成する部分(すなわち、その縁部が接着部22とされている部分)のことを収容部形成部24ということとする。
【0027】
一方、おもてシート部20Aと裏シート部20Bとは、そのほぼ上半部において、相互に接着されてはいない。
こうして、その各部分は、延出部25とされている。すなわち、おもてシート部20A及び裏シート部20Bのうちの収容部形成部24よりも上側の部分が延出部25である。
すなわち、各延出部25の基端部は、収容部14(収容部形成部24)の上端部に位置している。各延出部25は、おもてシート部20A又は裏シート部20B(複合シート50)の一部であって可撓性を有するとともに、上述したように両者は接着されていないため、両者は、相互に離隔する方向に延びる状態になり得る。
【0028】
図2に示すように、この便収容袋10(おもてシート部20A,裏シート部20B)は、外側が紙で内側が生分解性樹脂からなる複合シート50によって形成されている。
すなわち、複合シート50は、紙層51及び生分解性樹脂層52からなり、この便収容袋10は、複合シート50のうち紙層51が外側になり、生分解性樹脂層52が内側になるようにして形成されている(紙層51の内面に、生分解性樹脂層52が形成されている)。
【0029】
生分解性樹脂層52は、例えば、次のような樹脂によって形成されている。
下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、
下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び、
下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜50モル%
からなる脂肪族ポリエステル共重合樹脂であって、温度240℃、せん断速度100sec-1 における溶融粘度が1×102 〜1×103 Pa・sである生分解性樹脂を主成分とする樹脂による層である。
(1) −O−R1−O− (R1 は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式 炭化水素基)
(2) −OC−R2−CO− (R2 は直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基)
(3) −O−R3−O− (R3 は2価の脂肪族炭化水素基)
【0030】
上述の(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、又はこれらの混合物が挙げられる。
また、(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸又はこれらの無水物、及びそれらの低級アルコールエステルが好ましく、特には、コハク酸、無水コハク酸、又はこれらの混合物が好ましい。
また、(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸又はこれらの混合物が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合は、D体、L体、ラセミ体のいずれでもよい。
【0031】
脂肪族又は脂環式ジオールの使用量は、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、1〜20モル%過剰に用いられる。
脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体100モルに対し、好ましくは0.5〜60モル、より好ましくは、1.0〜40モルである。
【0032】
脂肪族ポリエステル共重合樹脂の組成比は、(1)式の脂肪族又は脂環式ジオール単位と(2)式の脂肪族ジカルボン酸単位のモル比が、実質的に等しいことが必要である。
(1)式の脂肪族又は脂環式ジオール単位及び(2)式の脂肪族ジカルボン酸単位は、各々35〜49.99モル%、好ましくは37.5〜49.75モル%、より好ましくは40〜49.5モル%、さらに好ましくは45〜49.5モル%である。
また、(3)式の脂肪族オキシカルボン酸単位は、0.02〜50モル%、好ましくは0.5〜25モル%、より好ましくは1.0〜20モル%、さらに好ましくは1.0〜10モル%である。
脂肪族オキシカルボン酸が50モル%を超えると、結晶性が失われて柔らかくなり過ぎて好ましくない。
【0033】
そして、上述の成分の樹脂は、紙層51に対して良好に接着するため、紙層51の内面に対して生分解性樹脂層52が容易に形成されるのである(紙層51の外面に対しても同様である)。
【0034】
次に、この便収容袋10の製造方法について、図3に基づいて説明する。
なお、図3に示されている複合シート50においては、そのうち、製造後の便収容袋10の各部位に該当する部分に対して、その各部位に係る符号が括弧とともに示されている。
【0035】
まず、長方形状の複合シート50を用意する。前述したように、複合シート50は、紙層51及び生分解性樹脂層52からなっている。
【0036】
この複合シート50について、次のように、生分解性樹脂層52が内側になるようにして折り曲げる。
この複合シート50の長さ方向(便収容袋10の深さ方向)における中央部分において、生分解性樹脂層52が内側になるようにして、その長さ方向と垂直の方向に沿って折り曲げる。その折り曲げ線の部分が、底部該当部31(底部30に該当する部分)である。
こうして、おもてシート部該当部21A(おもてシート部20Aに該当する部分)及び裏シート部該当部21B(裏シート部20Bに該当する部分)の生分解性樹脂層52同士が対向する。
なお、おもてシート部該当部21A及び裏シート部該当部21Bが、本発明の折り曲げシート部に該当する。
【0037】
次に、その折り曲げられた複合シート50(おもてシート部該当部21A,裏シート部該当部21B)の左右の両縁部のうちのほぼ下半部に対して、おもてシート部該当部21Aの外側及び裏シート部該当部21Bの外側の双方又は一方から、相互に押圧し合うようにして加圧するとともに、加熱する。
こうして、その部分における生分解性樹脂層52が溶融状態となり、それが冷却固化することによって接着状態となる。
こうして、前述の接着部22が形成されるとともに、おもてシート部20A,裏シート部20Bが形成される。それとともに、おもてシート部20A及び裏シート部20Bのうちのほぼ上半部が延出部25とされる。
【0038】
以上のようにして、接着剤を別途使用する必要もなく、便収容袋10が容易に製造されるのである。
【0039】
次に、この便収容袋10の各種の使用方法について、図4A−1〜図4Dに基づいて説明する。
まず、第1の使用方法について、図4A−1〜図4A−2に基づいて説明する。
図4A−1に示すように、使用者は、まず、洋式便器TWについて蓋T3を開状態とし、便座T2は閉状態(下ろされた状態)のままとし、折り畳み状態の便収容袋10を開状態とする。
次に、図4A−1→図4A−2に示すように、便収容袋10について、その収容部14を便器本体T1の内部に収容するとともに、一対の延出部25を便座T2(その左右両側の部分)の上に載置する。
以上のようにして、便収容袋10を洋式便器TWに対して装着する。
【0040】
その状態で、使用者は、便座T2に腰を下ろして用をたす。すなわち、この便収容袋10は原則として大便用であるため、小便はできるだけ便収容袋10(その収容部14)に入らないようにして用をたし、できるだけ大便のみ便収容袋10(その収容部14)に入るようにする。
なお、用をたす前のいずれかのタイミングにおいて(洋式便器TWに対する装着の前でもよい)、この便収容袋10に凝固剤(ポリアクリル酸ナトリウム等)を入れておくのもよい。
使用者は、用をたし終えた後には、この便収容袋10を閉じて密封状態として、可燃ごみとして廃棄したり、埋め立て処理したりする。
【0041】
このように使用する際、使用者の臀部が直接的に便座T2に接触することが防止される(又は軽減される)ため、特に、自宅以外のトイレ等において使用する場合に、清潔感が得られ、好適である。
また、使用者が便座T2に腰を下ろしている状態において、一対の延出部25は便座T2と使用者の臀部とによって挟持され、便収容袋10が位置ずれすることが防止され、良好に使用され得る。
【0042】
次に、第2の使用方法について、図4B−1〜図4B−3に基づいて、第1の方法との相違点を中心に説明する。
図4B−1に示すように、使用者は、まず、洋式便器TWについて蓋T3及び便座T2を開状態とし、折り畳み状態の便収容袋10を開状態とする。
次に、図4B−1→図4B−2に示すように、便収容袋10について、その収容部14を便器本体T1の内部に収容するとともに、一対の延出部25を便器本体T1の開口縁部(その左右両側の縁部)に対して載置する。
次に、図4B−2→図4B−3に示すように、便座T2を下ろして閉状態とする。こうして、便器本体T1の開口縁部と便座T2とによって、便収容袋10の一対の延出部25が挟持されるようにする。
以上のようにして、便収容袋10を洋式便器TWに対して装着して、使用者は用をたす。
その際、一対の延出部25が便器本体T1の開口縁部と便座T2とによって挟持されているために、位置ずれが防止される。すなわち、この使用方法の場合においては、使用者が便座T2に腰を下ろしているタイミングはもちろんのこと、その前後の便座T2に腰を下ろしていないタイミングにおいても位置ずれすることが防止される(又はその可能性が軽減される)のである。
【0043】
次に、第3の使用方法について、図4Cに基づいて説明する。
この使用方法は、第1の使用方法と第2の使用方法とを組み合わせた内容である。
すなわち、洋式便器TWについて蓋T3を開状態とし、便座T2は閉状態(下ろされた状態)のままとし、次のように便収容袋10を洋式便器TWに対して装着する。
開状態とされた便収容袋10について、その収容部14を便器本体T1の内部に収容するとともに、一対の延出部25のうちの基端部の側の部分を便座T2(その左右両側の部分)の上に載置するとともに、一対の延出部25のうちの先端部の側の部分を便座T2の外側から便座T2の下側に挿入し(その際、便座T2を若干浮かす)、当該部分を便器本体T1の開口縁部と便座T2とによって挟持する。
以上のようにして、便収容袋10を洋式便器TWに対して装着する。
これによって、第1の使用方法の長所及び第2の使用方法の長所の両方が得られることとなる。
【0044】
次に、第4の使用方法について、図4Dに基づいて説明する。
この使用方法は、和式便器TJに対して使用する場合である。
便収容袋10について、その収容部14を和式便器TJの内部に収容するとともに、一対の延出部25を和式便器TJの開口縁部の左右一対の縁部に載置する。その先端部は当該縁部を越えて床にまで及んでいてもよい。
このようにして便収容袋10を和式便器TJに対して装着した状態で、使用者は用をたすのである。
【0045】
用をたした後に、一対の延出部25を把持して便収容袋10を和式便器TJから取り出す。その際、一対の延出部25が和式便器TJの内部に位置していないため、手を汚すおそれもなく、便収容袋10を和式便器TJから取り出すことができる。なお、このことは、洋式便器TWに対する使用(第1〜第3の使用方法)の場合においても該当することである。
また、一対の延出部25(その先端部)が床まで及んでいる場合には、使用者は、その延出部25を踏んだ状態で用をたすことも可能であり、その場合は、便収容袋10が位置ずれする可能性をより低くすることができる。
【0046】
次に、この便収容袋10の効果について説明する。
この便収容袋10は、生分解性樹脂層52を有し、非透水性を有している。このため、前述したように使用者がこの便収容袋10に便を収容する際に、便の水分が外部に漏れることが防止される。
【0047】
また、この便収容袋10は、紙層51及び生分解性樹脂層52からなる複合シート50によって形成されている。このため、上述のように便を収容した状態で一括的に可燃ゴミとして廃棄されたり、埋め立て処理されたりすることが可能である。
すなわち、紙及び生分解性樹脂とも、燃焼させることが可能であるとともに、燃焼させても無害である。このため、収容された便とともに可燃ゴミとして廃棄することが可能である。
また、埋め立て処理されることによって、自然環境下において、生分解性樹脂は炭酸ガスと水に分解し、紙及び便は堆肥となる。
このようにして、自然環境に対して悪影響を及ぼすことが防止される。
【0048】
また、この便収容袋10は、紙層51及び生分解性樹脂層52からなる複合シート50によって形成されていることから、次のこともいえる。
すなわち、生分解性樹脂層(52)のみからなるシートによって便収容袋(10)が形成された場合には、所定の強度を確保する観点から、生分解性樹脂層(52)は、本実施形態の便収容袋10の複合シート50の生分解性樹脂層52よりも厚いものである必要がある。しかしながら、それでは、製造コストが高くなってしまう。
その点、この実施形態の便収容袋10では、紙層51及び生分解性樹脂層52からなる複合シート50によって形成されており、紙層51によって所定の強度が確保されることによって、生分解性樹脂層52は、非透水性が確保できる程度の薄さで足りる。
そして、生分解性樹脂よりも紙の方が低価格であるため、全体として低コスト化を図ることができるのである。
【0049】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2について、図5及び図6に基づいて、実施形態1との相違点を中心に説明する。
実施形態1の便収容袋10と同一の要素については同一の符号を付し、対応する要素については対応する符号(「100」を加算した値の符号)を付して、適宜、説明を省略する。
【0050】
図5に示すように、この便収容袋110は、おもてシート部20A,裏シート部20B,底部130を有している。
この便収容袋110も、おもてシート部20A,底部130,裏シート部20Bにわたって、1枚のシート(複合シート50)によって連続的に形成されている。
おもてシート部20Aと裏シート部20Bとは、各々の左右の側縁部(下縁部及びその近傍を除く)において、相互に接着されている。その部分のことを接着部122ということとする。
【0051】
底部130は、その左右の側縁部において、おもてシート部20A及び裏シート部20Bの左右の側縁部と接着されている。その部分のことを接着部132ということとする。
正確にいえば、底部130のうちの左右の側縁部のうち、おもてシート部20Aの側の半分は、おもてシート部20Aの左右の側縁部(そのうちの下縁部及びその近傍)と接着されている。同様に、底部130のうちの左右の側縁部のうち、裏シート部20Bの側の半分は、裏シート部20Bの左右の側縁部(そのうちの下縁部及びその近傍)と接着されている。
【0052】
図5(b)に示すように、この便収容袋110が開状態にある際において、底部130のうちの左右の端部及びその近傍以外は、ほぼ一平面状をしている。
一方、図5(a)に示すように、この便収容袋110が折り畳み状態にある際において、底部130は、その幅方向における中心線において山状に折り曲げられている。
【0053】
次に、この便収容袋110の製造方法について、図6に基づいて説明する。
まず、長方形状の複合シート50について、次のように、生分解性樹脂層52が内側になるようにして折り曲げる。
底部該当部131(底部130に該当する部分)については、その幅方向(便収容袋110としての奥行方向)における中央部分において山状になるように折り曲げる。
おもてシート部該当部21Aと底部該当部131との境界部分については、谷状になるように折り曲げる。同様に、裏シート部該当部21Bと底部該当部131との境界部分についても、谷状になるように折り曲げる。
いずれにおいても、複合シート50の長さ方向(便収容袋110の深さ方向)と垂直の方向に沿って折り曲げる。
【0054】
こうして、おもてシート部該当部21A及び裏シート部該当部21Bのほぼ下半部(ともにその下縁部及びその近傍を除く)については、両者の生分解性樹脂層52同士が対向する。
おもてシート部該当部21A(そのうちの下縁部及びその近傍)及び底部該当部131(そのうちのおもてシート部該当部21Aの側の半分)についても、両者の生分解性樹脂層52同士が対向する。同様に、裏シート部該当部21B(そのうちの下縁部及びその近傍)及び底部該当部131(そのうちの裏シート部該当部21Bの側の半分)についても、両者の生分解性樹脂層52同士が対向する。
なお、おもてシート部該当部21A,裏シート部該当部21B,底部該当部131(正確には、その一対の各半部)が、本発明の折り曲げシート部に該当する。
【0055】
そして、その折り曲げられた複合シート50(おもてシート部該当部21A,裏シート部該当部21B,底部該当部131)の左右の両縁部のうちのほぼ下半部に対して、おもてシート部該当部21Aの外側及び裏シート部該当部21Bの外側の双方又は一方から、相互に押圧し合うようにして加圧するとともに、加熱する。
こうして、その部分における生分解性樹脂層52が溶融状態となり、それが冷却固化することによって接着状態となる。こうして、前述の接着部122,132が形成される。
こうして、おもてシート部20A,裏シート部20B,底部130が形成される。それとともに、おもてシート部20A及び裏シート部20Bのうちのほぼ上半部が延出部25とされる。
【0056】
なお、上記のものはあくまで本発明の一実施形態にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【0057】
例えば、複合シート(50)については、生分解性樹脂層(52)は、紙層(51)の内面のみでなく、内面及び外面の両面に形成されていてもよい。また、生分解性樹脂層(52)は、紙層(51)の外面にのみ形成されていてもよい。それらの場合は、複合シート(50)から便収容袋(10,110)が製造される際に、適宜、接着剤が使用される等、上述の方法とは異なる方法で製造される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態1の便収容袋(折り畳み状態)を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1の便収容袋(折り畳み状態に近い状態)を示す縦断面図(切断端面図)である。(a)は便収容袋の一般的な部分の縦断面図であり、(b)は便収容袋の左右の各縁部の縦断面図である。複合シート(紙層,生分解性樹脂層)の厚みは誇張して表現されている。
【図3】本発明の実施形態1の便収容袋の製造過程の一部を示す部分斜視図である。複合シート(紙層,生分解性樹脂層)の厚みは誇張して表現されている。
【図4A−1】本発明の実施形態1の便収容袋の第1の使用方法を示す図である。最初の段階を示す。
【図4A−2】本発明の実施形態1の便収容袋の第1の使用方法を示す図である。図4A−1の次の段階を示す。
【図4B−1】本発明の実施形態1の便収容袋の第2の使用方法を示す図である。最初の段階を示す。
【図4B−2】本発明の実施形態1の便収容袋の第2の使用方法を示す図である。図4A−1の次の段階を示す。
【図4B−3】本発明の実施形態1の便収容袋の第2の使用方法を示す図である。図4A−2の次の段階を示す。
【図4C】本発明の実施形態1の便収容袋の第3の使用方法を示す図である。
【図4D】本発明の実施形態1の便収容袋の第4の使用方法を示す図である。
【図5】本発明の実施形態2の便収容袋を示す斜視図である。(a)は折り畳み状態を示し、(b)は開状態を示す。
【図6】本発明の実施形態2の便収容袋の製造過程の一部を示す部分斜視図である。複合シート(紙層,生分解性樹脂層)の厚みは誇張して表現されている。
【符号の説明】
【0059】
10,110 便収容袋
14 収容部
21A おもてシート部該当部(折り曲げシート部)
21B 裏シート部該当部(折り曲げシート部)
30,130 底部
31 底部該当部
131 底部該当部(折り曲げシート部)
25 延出部
50 複合シート
51 紙層
52 生分解性樹脂層
TW 洋式便器
T1 便器本体
T2 便座
TJ 和式便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に対して装着されて使用される袋であって、
紙層と、前記紙層の外面及び内面のうちの少なくともいずれかに設けられた生分解性樹脂層とを有する複合シートによって形成されている、
便収容袋。
【請求項2】
便器に対して装着されて使用される袋であって、
紙層と、前記紙層の内面に設けられた生分解性樹脂層とを有する複合シートによって形成されている、
便収容袋。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の便収容袋であって、
上方に開口し下部に底部を有し内部に便が収容される収容部と、
基端部が前記収容部の上端部又はその近傍に位置し、相互に離隔する方向に延びる状態になり得る対状の延出部と
を有する、便収容袋。
【請求項4】
請求項3に記載の便収容袋であって、
当該便収容袋の深さ方向に該当する長さ方向に延びる1枚のシートが当該長さ方向と垂直の方向に沿って折り曲げられて形成された複数の折り曲げシート部のうち当該便収容袋の底部の側に該当する部分において幅方向における両縁部が相互に接着されることによって前記収容部が形成されるとともに、前記複数の折り曲げシート部のうち当該便収容袋の底部の側とは反対の側に該当する部分においては相互に接着されないことによって前記延出部が形成されている、
便収容袋。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の便収容袋であって、
前記生分解性樹脂層が、
下記(1)式で表される脂肪族又は脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、
下記(2)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%、及び、
下記(3)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%
からなる脂肪族ポリエステル共重合樹脂であって、温度240℃、せん断速度100sec-1 における溶融粘度が1×102 〜1×103 Pa・sである生分解性樹脂を主成分とする樹脂層である、
便収容袋。
(1) −O−R1−O− (R1 は2価の脂肪族炭化水素基又は2価の脂環式 炭化水素基)
(2) −OC−R2−CO− (R2 は直接結合又は2価の脂肪族炭化水素基)
(3) −O−R3−O− (R3 は2価の脂肪族炭化水素基)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A−1】
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【図4A−2】
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【図4B−1】
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【図4B−2】
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【図4B−3】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−72429(P2009−72429A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245434(P2007−245434)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(592110808)株式会社吉良紙工 (11)
【Fターム(参考)】