説明

便器洗浄ノズル

【課題】見栄えが良く、確実に止水することができる便器洗浄ノズルを提供する
【解決手段】便器洗浄ノズル20は、水洗便器の水封部5を形成する壁面10に設けられた貫通孔11に取り付けられ、洗浄水を噴出する。便器洗浄ノズル20は、噴出口31及び噴出口31の周囲に延びる鍔部32を有する先端部30と、先端部30の後方に延び、噴出口31に連通する給水路41を形成する接続管部40とを備えたノズル本体を具備している。また、便器洗浄ノズル20は、中央に接続管部40を挿通する挿通孔22Hを有し、鍔部32と貫通孔11の周囲の壁面10との間に挟持されるパッキン22を具備している。鍔部32は、パッキン22の前方及び側方を包囲し、外周縁部の後端面34Aが壁面10の前面に当接するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器洗浄ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の便器洗浄ノズルが開示されている。この便器洗浄ノズルは、水洗便器の水封部を形成する壁面に設けられた貫通孔に取り付けられ、洗浄水を噴出する。便器洗浄ノズルはノズル本体を有している。ノズル本体は、噴出口が開口し、噴出口の周囲に延びる鍔部を有する先端部を備えている。鍔部は平坦なリング状に形成されている。また、ノズル本体は、先端部の後方に延び、噴出口に連通する給水路を形成する接続管部を備えている。鍔部の後面と、貫通孔の周囲の壁面の前面との間には、接続管部に挿通されたパッキンが挟持されている。これにより、水封部の貯留された封水が貫通孔とノズル本体との間から漏水することを防止している。
【0003】
【特許文献1】特開2002−106041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の便器洗浄ノズルでは、パッキンが鍔部と壁面との間から露出してしまう。特に、漏水を防止するために、パッキンを鍔部と貫通孔の周囲の壁面との間で強く挟持すると、パッキンが押しつぶされ、鍔部の外周縁よりもはみ出してしまう虞がある。パッキンはシリコンゴム等により形成されているためカビが生えることがある。パッキンが露出したり、はみ出した状態では、パッキンに生えたカビが便器の使用者等に視認され、見栄えが悪くなる。また、鍔部と壁面との間でパッキンを挟持しているため、鍔部の外周縁と壁面との間に隙間が生じる。このため、この隙間に汚物等の汚れが溜まり易く、溜まった汚れは掃除により除去し難い。このため、さらに見栄えが悪くなる。また、パッキンを視認され難くするために鍔部の外周縁よりもはみ出さないように鍔部の背面と貫通孔の周囲の壁面とによるパッキンの挟持を弱くすると漏水してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、見栄えが良く、確実に止水することができる便器洗浄ノズルを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の便器洗浄ノズルは、水洗便器の水封部を形成する壁面に設けられた貫通孔に取り付けられ、洗浄水を噴出する便器洗浄ノズルにおいて、
噴出口及び該噴出口の周囲に延びる鍔部を有する先端部と、該先端部の後方に延び、該噴出口に連通する給水路を形成する接続管部とを備えたノズル本体と、
中央に該接続管部を挿通する挿通孔を有し、該鍔部と前記貫通孔の周囲の前記壁面との間に挟持されるパッキンとを具備し、
該鍔部は、該パッキンの前方及び側方を包囲し、外周縁部の後端面が該壁面の前面に当接するように形成されていることを特徴とする。
【0007】
この便器洗浄ノズルでは、パッキンは鍔部により包囲されるため、外部に露出しない。このため、仮にパッキンにカビが生えたとしても水洗便器の使用者等から視認されず、見栄えのよい状態を保つことができる。また、鍔部の外周縁部の後端面を壁面に当接させるため、隙間が生じず、汚物等の汚れが溜まり難い。このため、掃除を楽に行なうことができる。また、鍔部の外周縁部の後端面が壁面に当接するため、パッキンを適正な力で圧縮し、挟持することができる。このため、パッキンにより止水を確実に行なうことができる。
【0008】
したがって、本発明の便器洗浄ノズルは、見栄えが良く、確実に止水することができる。
【0009】
前記鍔部の前面は、前記噴出口の周囲が前方に突出し、周縁に向かうに従い後方に後退するように傾斜し得る。この場合、便器洗浄中の水封部内の水は、便器洗浄ノズルの先端部の近傍をスムーズに流れる。このため、先端部の近傍に汚物等が滞留することを防止することができる。また、鍔部の外周縁部が薄く形成されているので、汚物等が溜まり難い。このため、便器洗浄ノズルの先端部の周囲を汚れ難くすることができる。噴出口の周囲が前方に突出しているため、接続管部の給水路から噴出口までの距離が長くなる。これにより、噴出口から噴出される洗浄水の直進性が良好になる。このため、噴出口から噴出される洗浄水により、水封部内の汚物等を排水路へ強力に搬出することができる。
【0010】
前記接続管部は、前記貫通孔に取り付けられた際、外周面が前記貫通孔の内周面との間に隙間を有し、該隙間に前記パッキンの内周縁部が充填可能であり得る。この場合、鍔部の後面と貫通孔の周囲の壁面の前面との間のみならず、接続管部の外周面と貫通孔の内周面との間でパッキンを挟持することができる。このため、より確実に止水をすることができる。
【0011】
前記パッキンは、前記鍔部の後面に当接する前面が平面であり、内周側から外周側に向けて薄肉になるよう前記壁面の前面に当接する後面が傾斜し得る。この場合、パッキンの外周部は、鍔部の後面と貫通孔の周囲の壁面の前面との間で確実に挟持される。また、鍔部の後面と貫通孔の周囲の壁面の前面との間隔が狭くし、パッキンを圧縮するに従い、パッキンは内周方向に向けて迫り出すように変形する。これにより、接続管部の外周面と貫通孔の内周面との間にパッキンが充填され、この部分でも止水することができるため、より確実に止水することができる。
【0012】
前記ノズル本体は、前記先端部を形成する第1部材と、前記接続管部を形成する第2部材とを接着して形成され得る。この場合、第1部材と第2部材とを別々に成形するため、鍔部を精度良く形成することができる。つまり、鍔部の外周縁部の後端面を同一平面状に形成することができるため、鍔部の外周縁部の後端面を壁面に隙間なく当接させることができる。このため、隙間が生じず、汚物等の汚れが溜まり難い。このため、掃除を楽に行なうことができる。
【0013】
また、先端部は水封部内に露出し、便器使用者等に視認されることがあるため、色合い等の外観を重視しなければならず、そのために製造コストが高くなる。一方、接続管部は便器使用者等に視認されることがないため、色合い等は関係なく、製造コストを安くできる。このため、ノズル本体を第1部材と第2部材とにより形成することにより、1部材で形成した場合に比べ、製造コストを安くすることができる。また、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の便器洗浄ノズルを水洗便器に取り付けて具体化した実施例1を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
実施例1の水洗便器は、図1に示すように、便器本体1を有している。便器本体1は、上方に開口する鉢部2を有している。鉢部2の上端部には、内方に突出するリム3が形成されている。リム3の下方には、内方に向けて緩やかな下り勾配を有する棚部4が形成されている。棚部4には、図示しない第1給水管から洗浄水が供給される。棚部4に供給された洗浄水は、一方向に棚部4の上面を流れ、徐々に鉢面に沿って旋回しながら鉢部2の上方から下方に流下する。
【0016】
便器本体1は、鉢部2の下端に連通し、鉢部2の後部に沿って上昇する上昇排水路6を有している。鉢部2及び上昇排水路6により、洗浄水が滞留する水封部5が形成されている。また、便器本体1は、上昇排水路6の上端に連通し、垂直下方に下降する下降排水路7が形成されている。下降排水路7の下端開口8は、排水ソケット9を介して床面に開口する図示しない排水管の流入口に連通されている。
【0017】
水封部5を形成する壁面10には、上昇排水路6の流入口6Aより下流側であり、鉢部2の下部に貫通孔11が設けられている。貫通孔11には、洗浄水を噴出する便器洗浄ノズル20が取り付けられている。便器洗浄ノズル20は、第2給水管50に接続され、洗浄水が供給される。
【0018】
便器洗浄ノズル20は、図2に示すように、ノズル本体21、パッキン22、ノズル本体の位置決めをする固定用パッキン23、平座金24及び締付ナット25から構成されている。
【0019】
ノズル本体21は、先端に開口する噴出口31と、噴出口31の周囲に延び、噴出口31を中心にした円盤形状の鍔部32とを有する先端部30を備えている。また、ノズル本体21は、先端部30の後方に延び、噴出口31に連通する給水路41を形成する接続管部40を有している。接続管部40は後部が90°横方向に屈曲している。ノズル本体21の流入口42は、横方向に開口している。このため、第2給水管50を大きく屈曲させずに便器洗浄ノズル20に接続することができる。よって、第2給水管50の取り回しが容易となり、接続作業も容易に行なうことができる。
【0020】
ノズル本体21は、先端部30を形成する第1部材30A及び接続管部40を形成する第2部材40Aの2部材から形成されている。第1部材30Aは、先端部30の後方に延びて形成された挿入管部30Bを有している。挿入管部30Bは、第2部材40Aの先端側に形成された接続管部40Bに内嵌され、溶着されている。このようにして、第1部材30Aと第2部材40Aとは一体化されている。第1部材30Aと第2部材40Aとを別々に成形することができるため、鍔部32の外周縁部の後端面34Aが同一平面状に精度良く形成されている。また、接続管部40を屈曲させることができる。
【0021】
第1部材30Aの先端部30は水封部5内に露出し、便器使用者等に視認されることがあるため、色合い等の外観を重視して形成されている。このため、製造コストは高くなってしまう。一方、第2部材40Aは便器使用者等に視認されることがないため、色合い等は関係なく形成されている。このため、製造コストを安くすることができる。
【0022】
鍔部32の前面33は、噴出口31の周囲が前方に突出し、周縁に向かうに従い後方に後退するように傾斜している。更に詳しくは、鍔部32の前面33は、中央部である噴出口31の周囲は前方に膨らむ湾曲面に形成され、中央部に連続する中間部は後方に凹む湾曲面に形成され、中間部に連続する周縁部は斜め前方へ膨らむ湾曲面に形成されている。
【0023】
鍔部32の後面34は、後方に突出する外周縁部の後端面34Aと、後端面34Aよりも凹んだ内側後面34Bから形成されている。内側後面34Bは平坦に形成されている。
【0024】
パッキン22は、中央に接続管部40を挿通する挿通孔22Hを有している。また、パッキン22は、鍔部32の内側後面34Bに当接する前面22Aが平面であり、内周側から外周側に向けて薄肉になるよう後面22Bが傾斜している。
【0025】
固定用パッキン23は、中央に接続管部40を挿通する挿通孔23Hを有している。固定用パッキン23は、前方の外周部が後方に向けて拡がる傾斜面23Aに形成されている。傾斜面23Aは、挿通孔23Hの中心軸に対して対称形状に形成されている。また、固定用パッキン23は、後面23Bが平面である。
【0026】
このように構成された便器洗浄ノズル20は、図3に示すように、貫通孔11に取り付けられる。便器洗浄ノズル20の貫通孔11への取り付けは以下のように行なわれる。
【0027】
先ず、ノズル本体21の接続管部40を流入口42側からパッキン22の挿通孔22Hに挿入し、パッキン22の前面22Aをノズル本体21の鍔部32の内側後面34Bに当接させる。次に、鉢部2側からノズル本体21の接続管部40を貫通孔11に挿入する。接続管部40は、貫通孔11を挿通し、壁面10の裏側に現れる。壁面10の裏側に現れた接続管部40に対し、固定用パッキン23、平座金24及び締付ナット25の順に嵌め込む。締付ナット25をねじ込むに従い、固定用パッキン23の傾斜面23Aが貫通孔11に入り込む。傾斜面32Aは、挿通孔23Hの中心軸に対して対称形状に形成されているため、挿通孔23Hは、貫通孔11と同軸上に位置する。このため、挿通孔23Hに挿入された接続管部40も貫通孔11と同軸上に位置させることができる。この状態では、接続管部40の外周面43と貫通孔11の内周面との間には隙間が形成されている。
【0028】
また、締付ナット25をねじ込む従い、パッキン22の外周部は、鍔部32の内側後面34Bと貫通孔11の周囲の壁面10の前面との間で挟持され、この部分で止水することができる。さらに、締付ナット25を締付けると、パッキン22は圧縮され、パッキン22の内周方向に向けて迫り出すように変形する。これにより、接続管部40の外周面43と貫通孔11の内周面との間にもパッキン22が充填され、この部分でも止水することができるため、より確実に止水することができる。
【0029】
締付ナット25をねじ込んでいくと、鍔部32の後端面34Aが壁面10の前面に当接する。これにより、締付ナット25の締め付けを完了する。このため、パッキン22を適正な力で圧縮し、挟持することができるため、パッキン22により止水を確実に行なうことができる。また、この状態では、パッキン22は鍔部32に包囲されるため、外部に露出しない。このため、仮にパッキンにカビが生えたとしても水洗便器の使用者等から視認されず、見栄えのよい状態を保つことができる。また、ノズル本体21を第1部材30Aと第2部材40Aとから形成し、鍔部32の外周縁部の後端面34Aが同一平面状に精度良く形成されているため、鍔部32の外周縁部の後端面34Aが壁面に当接し、隙間が生じない。このため、汚物等の汚れが溜まり難い。よって、掃除を楽に行なうことができる。
【0030】
したがって、実施例1の便器洗浄ノズルは、見栄えが良く、確実に止水をすることができる。
【0031】
鍔部32の前面33は、噴出口31の周囲が前方に突出し、周縁に向かうに従い後方に後退するように傾斜しているため、便器洗浄中の水封部5内の水は、先端部30の近傍をスムーズに流れる。このため、先端部30の近傍に汚物等が滞留することを防止することができる。また、鍔部32の外周縁部が薄く形成されているので、汚物等が溜まり難い。よって、先端部30の周囲を汚れ難くすることができる。
【0032】
噴出口31の周囲が前方に突出しているため、接続管部40の給水路41から噴出口31までの距離が長い。これにより、噴出口31から噴出される洗浄水の直進性が良好になる。このため、上昇排水路6に沿って噴出口31から洗浄水を勢い良く噴出させることができる。このため、水封部5内の汚物等を下降排水路7に向けて強力に排出することができる。
≪他の実施例≫
【0033】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、ノズル本体を第1部材及び第2部材の2部材から形成し、一体化しているが、1部材により形成してもよい。
(2)上記実施例1では、第1部材と第2部材とを溶着しているが、接着剤等により接着してもよい。
(3)上記実施例1では、鍔部の外周縁部が後方に突出するように形成されているが、鍔部の後面を徐々に後方に傾斜するように形成されていてもよい。
(4)上記実施例1では、接続管部が屈曲しているが、屈曲せず、まっすぐ延びていてもよい。
(5)上記実施例1では、鍔部の後面と貫通孔の周囲の壁面の前面とに挟持されるパッキンは、内周側から外周側に向けて薄肉になるように後面が傾斜しているが、肉厚が一定の平パッキンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は水洗便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1の洋風便器をあらわす断面図である。
【図2】実施例1の便器洗浄ノズルをあらわす分解図である。
【図3】実施例1の便器洗浄ノズルの取り付け状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
5…水封部
10…壁面
11…貫通孔
20…便器洗浄ノズル
21…ノズル本体
22…パッキン
22H…挿通孔
30…先端部
30A…第1部材
31…噴出口
32…鍔部
40…接続管部
40A…第2部材
41…給水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器の水封部を形成する壁面に設けられた貫通孔に取り付けられ、洗浄水を噴出する便器洗浄ノズルにおいて、
噴出口及び該噴出口の周囲に延びる鍔部を有する先端部と、該先端部の後方に延び、該噴出口に連通する給水路を形成する接続管部とを備えたノズル本体と、
中央に該接続管部を挿通する挿通孔を有し、該鍔部と前記貫通孔の周囲の前記壁面との間に挟持されるパッキンとを具備し、
該鍔部は、該パッキンの前方及び側方を包囲し、外周縁部の後端面が該壁面の前面に当接するように形成されていることを特徴とする便器洗浄ノズル。
【請求項2】
前記鍔部の前面は、前記噴出口の周囲が前方に突出し、周縁に向かうに従い後方に後退するように傾斜していることを特徴とする請求項1記載の便器洗浄ノズル。
【請求項3】
前記接続管部は、前記貫通孔に取り付けられた際、外周面が前記貫通孔の内周面との間に隙間を有し、該隙間に前記パッキンの内周縁部が充填可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の便器洗浄ノズル。
【請求項4】
前記パッキンは、前記鍔部の後面に当接する前面が平面であり、内周側から外周側に向けて薄肉になるよう前記壁面の前面に当接する後面が傾斜していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の便器洗浄ノズル。
【請求項5】
前記ノズル本体は、前記先端部を形成する第1部材と、前記接続管部を形成する第2部材とを接着して形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の便器洗浄ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−106447(P2010−106447A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276601(P2008−276601)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】