説明

便器装置および便器装置からの異臭発生防止方法

【課題】本発明は、水洗便器装置からの異臭を防止する便器装置および便器装置からの異臭発生防止方法に関するものである。
【解決手段】本発明は、便器装置が工場で作製された後、熱収縮性樹脂フィルムの成形品が被せられる。前記熱収縮性樹脂フィルムは、前記便器装置の上部と密着するように、たとえば、熱風ガンによって所望の場所に熱が加えられる。前記加熱により、前記熱収縮性樹脂フィルムと便器装置の上面とは、密着した状態になっているため、長期間にわたって、設置の際に試験を行った水が蒸発することなく残り、他の家または排水管からの臭いを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器装置からの異臭を防止する便器装置および便器装置からの異臭発生防止方法に関するものである。本明細書および特許請求の範囲において、「便器装置」は、水洗便器装置のことを指している。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、特開2004−162505号公報に記載された便器装置は、便器の内部に汚物が付着するのを防止している。また、特開2008−95396号公報に記載されている便器装置は、カバーの着脱を容易にしたものである。
【特許文献1】特開2004−162505号公報
【特許文献2】特開2008−95396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、景気の低迷により、戸建住宅または集合住宅は、完売になることが少なくなって来た。前記住宅に設置される便器装置は、汚水排出管を介して、他の部屋または他の住宅等に接続されている。また、前記便器装置は、便または尿等を一時的に貯めるボウル部がある。前記ボウル部は、トラップ排水部を介して汚水排出管に通じている。
【0004】
前記便器装置は、前記戸建住宅または集合住宅に設置された後、売れない場合、あるいは、何らかの理由により長期間使用されない場合がある。前記のような場合、前記便器装置は、前記ボウル部における水が蒸発することにより、前記トラップ排水部の役目が果たさなくなり、他の住宅の汚水排出管と直接通じてしまい、下水管または隣家の汚水排出管からの臭いを遮断することができなくなるという問題が発生する。
【0005】
以上のような課題を解決するために、本発明は、便器装置を住宅に設置した後、長期間にわたって使用されない場合であっても、ボウル部から排水トラップ部にかけての水が蒸発することなく、常に、貯えられているようにしたため、隣家または排水管からの臭いが逆流することがない便器装置および便器装置からの異臭発生防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1発明)
第1発明の便器装置は、汚水排出管からの臭いを遮断するトラップ排水部に連接されているボウル部に貯えられている水を乾燥させないようにしたものであり、便器の上部形状より大きめに成形された熱収縮性樹脂フィルムと、前記熱収縮性樹脂フィルムを前記便器の上部に被せた状態で、熱が加えられることにより、前記熱収縮性樹脂フィルムと便器の上面とが密着した状態になっていることを特徴とする。
【0007】
(第2発明)
第2発明の便器装置において、第1発明の熱収縮性樹脂フィルムは、フッ素系樹脂フィルム、シリコン系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂フィルム、あるいは、ポリエステル系樹脂フィルムのいずれかであることを特徴とする。
【0008】
(第3発明)
第3発明の便器装置において、第1発明または第2発明における熱収縮性樹脂フィルムの一部には、熱溶融性樹脂フィルムが積層されて設けられていることを特徴とする。
【0009】
(第4発明)
第4発明の便器装置において、第3発明の熱溶融性樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂系フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、あるいは、ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも一つであることを特徴とする。
【0010】
(第5発明)
第5発明における便器装置からの異臭発生防止方法は、熱収縮性樹脂フィルムが便器装置の上部を覆うことができる形状より大きめに成形する工程と、前記便器装置を作製する工程と、前記便器装置の上部に前記熱収縮性樹脂フィルムを被せる工程と、前記便器装置における所定位置で、かつ、前記熱収縮性樹脂フィルムの上から熱を加える工程と、前記便器装置を住宅に設置する工程と、前記便器装置に対して水を流して試験を行う工程と、前記便器装置の使用開始前に前記熱収縮性樹脂フィルムを外す工程とから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱収縮性樹脂フィルムが便器装置の上面と密着した状態になっているため、長期間にわたって使用しない場合であっても、設置の際に試験を行った際の水が蒸発することなく残っており、他の家または排水管からの臭いを防止することができる。
【0012】
本発明によれば、便器装置と熱収縮性樹脂フィルムとの間に設けられた熱溶融性樹脂フィルムにより、密閉度を向上させることができるため、長期間にわたって使用しない場合であっても、便器装置におけるボウル部内の水が蒸発することなく、他の家または汚水排水管からの臭いを防止することができる。
【0013】
本発明によれば、熱収縮性樹脂フィルムと便器装置の間に熱溶融性樹脂フィルムまたは接着剤を配置したため、前記両者の密封が向上するとともに、熱収縮性樹脂フィルムを容易に取り剥がすことができる。
【0014】
本発明によれば、長期間人が住まなかった住宅が、販売された後、便器装置を覆っている熱収縮性樹脂フィルムを外した際に、トラップ内の水が蒸発することがないため、汚水排出管等からの異臭が出ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1発明)
第1発明の便器装置は、設置した後、長期間にわたって使用されない場合であっても、ボウル部から排水トラップ部にかけて水が乾燥することなく、貯えられているため、隣家または排水管からの臭いが逆流することがないものである。まず、熱収縮性樹脂フィルムは、前記便器装置の上部を覆う、やや大きめの形状に成形される。
【0016】
前記便器装置は、工場で作製された後、前記熱収縮性樹脂フィルムの成形品が被せられる。前記熱収縮性樹脂フィルムは、前記便器装置の上部と密着するように、たとえば、熱風ガンによって所望の場所に熱が加えられる。前記加熱により、前記熱収縮性樹脂フィルムは、収縮して便器装置の上面と密着した状態になるため、長期間にわたって、設置の際に試験を行った水が蒸発することなく残り、他の家または排水管からの臭いを防止することができる。
【0017】
(第2発明)
第2発明の便器装置を覆う熱収縮性樹脂フィルムは、フッ素系樹脂フィルム、シリコン系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂フィルム、あるいは、ポリエステル系樹脂フィルムのいずれかであり、厚さは前記材料により任意に変えることができる。たとえば、フッ素系樹脂フィルムの場合、加熱温度は、340℃から360℃、10分前後であり、この時の収縮率が40%から50%である。
【0018】
(第3発明)
第3発明の便器装置は、前記熱収縮性樹脂フィルムが完全に便器部分を覆うことができない場合に熱溶融性樹脂フィルムを熱で溶融させて便器の上部に接着させることにより、ボウル内部の水を蒸発させないようにするものである。前記熱溶融性樹脂フィルムは、所望の場所に積層されて設けられている。前記熱溶融性樹脂フィルムは、熱溶融性樹脂からなる接着性のあるものによって代えることも可能である。
【0019】
(第4発明)
第4発明の熱溶融性樹脂フィルムは、ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、あるいは、ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも一つであり、熱収縮性樹脂フィルムの種類、厚さ等を選択する。前記熱溶融性樹脂フィルムは、前記熱収縮性樹脂フィルムが便器装置を覆う際に、高熱を要するため、便器装置と接着する際に、取り剥がし易い状態に温度管理することが必要である。
【0020】
(第5発明)
第5発明における便器装置からの異臭発生防止方法は、便器装置が設置された後、長期間にわたって、使用されない場合、他の家の汚水排出管、その他の配管からの異臭の発生を防止するものである。熱収縮性樹脂フィルムは、前記便器装置の上部を覆うことができる形状より大きめに予め成形される。前記便器装置は、通常の工程によって作製される。前記熱収縮性樹脂フィルムの成形と前記便器装置は、別々に作製されるため、時間的にいずれが先であってもよい。
【0021】
次に、作製された便器装置の上部に前記熱収縮性樹脂フィルムが被せられる。前記熱収縮性樹脂フィルムは、前記便器装置との間が密閉されるように、所定位置において、たとえば、熱風ガンによって熱が加えられる。前記熱収縮性樹脂フィルムによって覆われた便器装置は、戸建または集合住宅に運搬された後、所定の場所に設置される。
【0022】
前記便器装置は、設置された後、前記熱収縮性樹脂フィルムが覆われた状態のまま、水を流して試験が行われる。前記住宅は、販売された後、買い手が付いた際に、前記便器装置を覆っている熱収縮性樹脂フィルムを外した後に使用を開始する。前記住宅は、長期間売れずに放置されていても、買い手が見に来た場合、あるいは、使用を開始する場合、トラップ内の水が蒸発することがないため、汚水排出管等からの異臭が出ない。
【実施例】
【0023】
図1は本発明の実施例である異臭の発生を防止する便器装置を説明するための概略斜視図である。図2は本発明の実施例で、異臭の発生を防止する便器装置の概略断面図である。図1および図2おいて、便器装置11は、便器本体12と、前記便器本体12の上部を囲むように一体に成形されているリム部13と、前記便器本体12内部に成形されているボウル部14と、前記リム部13を覆う便座15と、前記便座15を覆う蓋体16と、前記リム部13を覆う熱収縮性樹脂フィルム17と、前記ボウル14に連通するU字形トラップ排水部18とから少なくとも構成されている。
【0024】
前記便器本体12は、上部において、外側に膨出するようにリム部13が成形されている。前記リム部13の上部には、開閉可能な便座15および蓋体16が設けられている。また、前記リム部13は、前記ボウル部14内を洗浄する水が吐き出す環状吐出口131が設けられている。さらに、前記ボウル部14は、便および/または尿を排出する水を流す配管121および吐き出すジェット排水部122が設けられている。
【0025】
前記ボウル部14には、常時水141が溜まるように、トラップ排水部18が成形されている。前記便器装置11は、前記便座15および/または蓋体16を上げて小用を行うか、あるいは、前記便座15を下げて大用を行う。前記便器装置11は、住宅の建設時に、設置され、配管121が水道管(図示されていない)に接続された後、試験を行う。前記試験を行った際の前記ボウル部14の内部に残された水141は、排水管を介して来る臭いを遮断する。
【0026】
本発明は、前記便器装置11を設置し、試験を行った後に、長期間にわたって使用しない場合の前記ボウル部14内の水141が蒸発しないように熱収縮性樹脂フィルム17を前記リム部13に密着させる。前記熱収縮性樹脂フィルム17は、便器本体12を覆う形状であれば、特に限定されい。たとえば、図1および図2に示す便器本体12の場合、前記熱収縮性樹脂フィルム17は、リム部13を覆うとともに、リム部13の便座15側の上部に密着する形状に予め成形しておく。
【0027】
前記熱収縮性樹脂フィルム17は、側部172、172′、172″が設けられている。前記熱収縮性樹脂フィルム17の材質は、たとえば、フッ素系樹脂フィルム、シリコン系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂フィルム、あるいは、ポリエステル系樹脂フィルム等がある。また、前記熱収縮性樹脂フィルム17の厚さは、前記材料により任意に変えることができる。たとえば、前記フッ素系樹脂フィルム17は、熱風ガン(図示されていない)によって、加熱温度を340℃から360℃にして、10分間とすることで、収縮率が40%から50%となった。
【0028】
前記熱収縮性樹脂フィルム17は、便器装置11の形状によって、完全に便器本体12のリム部13部分を覆うことができない場合がある。このような場合、前記熱収縮性樹脂フィルム17は、一部に熱溶融性樹脂フィルム(図示されていない)を予め積層させておき、前記熱風ガンの熱により、前記リム部13の上部に接着させることができる。また、前記熱溶融性樹脂フィルムの代わりに、熱により接着が可能であり、剥がし易い樹脂性接着剤により密閉を向上させることができる。前記熱溶融性樹脂フィルムは、ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、あるいは、ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも一つを使用することができる。
【0029】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記本実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。たとえば、特許請求の範囲および発明の詳細な説明における、便器装置の形状は、市販のいずれのものであっても差し支えないことはいうまでもないことである。また、本実施例における熱溶融性樹脂フィルムは、合成樹脂製の材料で説明したが、ゴム系部材に変えることができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例である異臭の発生を防止する便器装置を説明するための概略斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明の実施例で、異臭の発生を防止する便器装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0031】
11・・・便器装置
12・・・便器本体
121・・・配管
122・・・ジェット排水部
13・・・リム部
131・・・環状吐出口
14・・・ボウル部
141・・・水
15・・・便座
16・・・蓋体
17・・・熱収縮性樹脂フィルム
18・・・トラップ排水部
181・・・汚水排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水排出管からの臭いを遮断するトラップ排水部に連接されているボウル部に貯えられている水を乾燥させない便器装置において、
便器の上部形状より大きめに成形された熱収縮性樹脂フィルムと、
前記熱収縮性樹脂フィルムを前記便器の上部に被せた状態で、熱が加えられることにより、前記熱収縮性樹脂フィルムと便器の上面とが密着した状態になっていることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記熱収縮性樹脂フィルムは、フッ素系樹脂フィルム、シリコン系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂フィルム、あるいは、ポリエステル系樹脂フィルムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載された便器装置。
【請求項3】
前記熱収縮性樹脂フィルムの一部には、熱溶融性樹脂フィルムが積層されて設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された便器装置。
【請求項4】
前記熱溶融性樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂系フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、あるいは、ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも一つであることを特徴とする請求項3に記載された便器装置。
【請求項5】
熱収縮性樹脂フィルムが便器装置の上部を覆うことができる形状より大きめに成形する工程と、
前記便器装置を作製する工程と、
前記便器装置の上部に前記熱収縮性樹脂フィルムを被せる工程と、
前記便器装置における所定位置で、かつ、前記熱収縮性樹脂フィルムの上から熱を加える工程と、
前記便器装置を住宅に設置する工程と、
前記便器装置に対して水を流して試験を行う工程と、
前記便器装置の使用開始前に前記熱収縮性樹脂フィルムを外す工程と、
から構成されていることを特徴とする便器装置からの異臭発生防止方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−150893(P2010−150893A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333201(P2008−333201)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000143721)株式会社佐山製作所 (19)
【出願人】(396016788)木内建設株式会社 (7)
【Fターム(参考)】