説明

便器装置

【課題】本発明の態様は、介助が必要な使用者の身体に大きな負担がかかる前に、トイレブース外にいる介助者に対して速やかな報知を行うことができる便器装置を提供する。
【解決手段】便器部と、便器部の前上方に移動可能に設けられた身体補助具と、前記身体補助具に設けられ、前記身体補助具の位置を検知する第1の検知部と、前記第1の検知部からの信号に基づいて、前記便器部から使用者が離座しようとすることを判定する離座判定部と、前記離座判定部からの信号に基づいて、前記便器部から使用者が離座しようとすることを報知する報知部と、を備え、前記離座判定部は、前記第1の検知部からの信号が所定の値を超えた場合には、使用者が離座しようとしていると判定すること、を特徴とする便器装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、脳疾患の患者に対して、手術後のリハビリとして歩行訓練等が行われている。そして、患者が自分でトイレまで行って用便を行うこともリハビリの一環として行われている。この場合、トイレにて用便を行う際、特に便座に着座する必要がある場合においては、用便後に立ち上がる際の身体への負担が大きい。そのため、患者が立ち上がる際に倒れてしまう等の問題が発生するおそれがある。
【0003】
また、医療機関における入院患者あるいは介護機関における介護患者の中には、下肢に障害を有する等の理由のために、便器装置を使用する時に自力で便座から立ち上がることを、医師や医学療法士等の指示により禁止されることがある。
【0004】
そのため、これらのような患者が便器装置から立ち上がる際に介助を行うために、介助をする人(以後、介助者と称する)に対して患者が立ち上がることを速やかに報知することができる報知装置が求められている。
【0005】
ここで、赤外線センサを用いて、着座/離座を検知して便器装置に内蔵されているヒーターや脱臭装置の駆動を制御したり、便器内部の自動洗浄を行ったりする技術が知られている。そして、このような便器装置においては、着座を検知する際には、着座する直前ではなくある程度の距離を介した状態を着座として判定するようにしている。また、離座を検知する際にも、着座時に腰が動く等の動きを離座として判定しないようにするために、ある程度の距離が確認できた時点を離座として判定するようにしている。
【0006】
また、便器装置において、静電容量式センサの電極を便座内部に隠蔽して、樹脂を介した状態における静電容量の変動から人体の検知を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1の図2を参照)。
【特許文献1】特開2005−168987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、一般的な便器装置においては、着座/離座の判定を行う人体検知装置が、ある程度の距離離れた状態の人体を検知してヒーターや脱臭装置などを制御する構成となっている。そのため、特に離座の判定を行う際にこのような技術を適用して、ある程度の距離離れた状態を確認した時点で離座と判定しても、使用者である患者は既に立ち上がる行為を行ってしまっている。この場合、このような時点で介助者に対して報知をしても、既に大きな負担が患者の身体にかかっているため、患者が倒れこんでしまったり障害を悪化させてしまったりするおそれがあった。
【0008】
また、特許文献1に開示がされているように、便座内部に1つの電極を設けて、電極と大地との間の静電容量の変動を検知する場合には、便座から僅かに人体が離れた状態と、人体が着座している状態との間における静電容量の差がほとんどない。そのため、使用者が立ち上がろうとするために行う腰を上げる等の動作に対して離座と判定することが困難であった。
【0009】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、介助が必要な使用者の身体に大きな負担がかかる前に、トイレブース外にいる介助者に対して速やかな報知を行うことができる便器装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、便器部と、便器部の前上方に移動可能に設けられた身体補助具と、前記身体補助具に設けられ、前記身体補助具の位置を検知する第1の検知部と、前記第1の検知部からの信号に基づいて、前記便器部から使用者が離座しようとすることを判定する離座判定部と、前記離座判定部からの信号に基づいて、前記便器部から使用者が離座しようとすることを報知する報知部と、を備え、前記離座判定部は、前記第1の検知部からの信号が所定の値を超えた場合には、使用者が離座しようとしていると判定すること、を特徴とする便器装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、介助が必要な使用者の身体に大きな負担がかかる前に、トイレブース外にいる介助者に対して速やかな報知を行うことができる便器装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明の実施形態は、便器部と、便器部の前上方に設けられ、所定の方向に移動可能な身体補助具と、前記身体補助具に設けられ、前記身体補助具の位置を検知する第1の検知部と、前記第1の検知部からの信号に基づいて、前記便器部から使用者が離座しようとすることを判定する離座判定部と、前記離座判定部からの信号に基づいて、前記便器部から使用者が離座しようとすることを報知する報知部と、を備え、前記離座判定部は、前記第1の検知部からの信号が所定の値を超えた場合には、使用者が離座しようとしていると判定すること、を特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、介助が必要な使用者の身体に大きな負担がかかる前に、トイレブース外にいる介助者に対して速やかな報知を行うことができる。
【0013】
また、第2の発明の実施形態は、第1の発明の実施形態において、前記報知部による報知が行われた場合には、前記身体補助具を所定の位置に固定する支持制御部と、を備えることを特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、トイレブース外にいる介助者が介助を行う前に使用者が起立してしまうことを防止することができる。
【0014】
また、第3の発明の実施形態は、第1または第2の発明の実施形態において、前記便器部の便座に設けられ、使用者の着座を検知する第2の検知部と、を備え、前記離座判定部は、前記第2の検知部により使用者の着座が検知された後に、前記第1の検知部からの信号が所定の値を超えた場合には、使用者が離座しようとしていると判定すること、を特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、使用者の着座を確認した後に使用者が離座しようとしていることを検知することができるので、誤検知を防止することができる。
【0015】
また、第4の発明の実施形態は、第1〜第3のいずれか1つの発明の実施形態において、前記離座判定部における判定値の値を変更する判定値設定部と、を備えることを特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、様々な場所や使用者に対して適切な判定値への変更を行うことが可能となる。また、介助されることを嫌い自力で立ち上がろうとする使用者や、使用者の体格などにあわせて離座判定部における判定値を適切な値に変更することができる。
【0016】
また、第5の発明の実施形態は、第1〜第4のいずれか1つの発明の実施形態において、前記身体補助具は、アーム部を有し、前記アーム部は一端を回転支点として鉛直方向に回転移動すること、を特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、前記アーム部を鉛直方向に回転移動することができるので省スペース化を図ることができる。
【0017】
また、第6の発明の実施形態は、第1〜第4のいずれか1つの発明の実施形態において、前記身体補助具は、アーム部を有し、前記アーム部は一端を回転支点として水平方向に回転移動すること、を特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、前記アーム部を水平方向に回転移動することができるので、使用者の離座をより容易にすることができる。
【0018】
また、第7の発明の実施形態は、第5の発明の実施形態において、前記第1の検知部は、前記アーム部の鉛直方向の傾きを検知すること、を特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、前記アーム部の鉛直方向の傾きを検知することができる。そのため、この傾きから使用者が離座しようとしていることを知ることができる。
【0019】
また、第8の発明の実施形態は、第6の発明の実施形態において、前記第1の検知部は、前記アーム部の水平方向の傾きを検知すること、を特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、前記アーム部の水平方向の傾きを検知することができる。そのため、この傾きから使用者が離座しようとしていることを知ることができる。
【0020】
また、第9の発明の実施形態は、第1〜第4のいずれか1つの発明の実施形態において、前記身体補助具は、一端を回転支点として鉛直方向および水平方向に回転移動するアーム部と、を有し、前記第1の検知部は、前記アーム部の鉛直方向および水平方向の傾きを検知すること、を特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、前記アーム部を水平方向および鉛直方向に回転移動することができるので、使用者の離座をより容易にすることができる。また、前記アーム部の水平方向および鉛直方向の傾きを検知することができる。また、その傾きから使用者が離座しようとしていることを知ることができる。
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。尚、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る便器装置を例示するための模式斜視図である。 また、図2は、身体補助具の動きを例示するための模式斜視図である。
図1に示すように、便器装置1は、便器部2と、便器部2の前上方に設けられ所定の方向に移動可能な身体補助具3を備えている。便器部2には、大便器2aと、大便器2aの上面で開閉可動する便座2bが設けられている。
【0022】
図2に示すように、身体補助具3は、支持部3aと、支持部3aから一方向に伸びるアーム部3bを有している。アーム部3bは、その一端を支持部3aにより鉛直方向に回転可能に支持されている。そのため、アーム部3bは、一端を回転支点として鉛直方向に回転移動することができるようになっている。
【0023】
また、支持部3aは、トイレブースの壁面に設けられている。なお、支持部3aの設置場所はトイレブースの壁面に限定されるわけではなく、例えば、大便器2a両側部の上方に設けられた図示しない手すりなどに設けるようにすることもできる。また、後述する図4に例示をするように、トイレブース内に設けられる支柱に取り付けるようにしてもよい。
【0024】
この場合、使用者が便器部2に着座した際には、アーム部3bを下方に回転移動させて便器部2の前上方を横切るように倒される。そのため、便器部2に着座した使用者が前向きに倒れることがアーム部3bにより防止される。また、アーム部3bを把持したり、アーム部3bの上に腕を置いたりすることもできる。
【0025】
使用者が便器部2から立ち上がる際には、アーム部3bを上方に回転移動させて、アーム部3bと使用者との間の隙間を大きくできるようになっている。そして、この隙間を使って使用者が便器部2から立ち上がる(離座する)ことができるようになっている。なお、便器部2の前上方が開放される程度にアーム部3bが上方に回転移動できるようにしてもよい。
【0026】
ここで、アーム部3bを上方に回転移動させなければ、着座した使用者は立ち上がることができない。そのため、アーム部3bの位置(傾斜角度)を検知すれば、使用者が便器部2から立ち上がろうとしていることを立ち上がる前に事前に検知することができる。
【0027】
本実施の形態においては、アーム部3bの下面(裏面)に検知部4を設けるようにしている。そして、アーム部3bの傾斜角度(鉛直方向の傾き)θからアーム部3bが便器部2の前上方にあるか否かを検知し、アーム部3bが便器部2の前上方にある状態(倒れている状態)から上方に移動した状態(起立した状態)への変化を捉えて使用者の離座を事前に検知するようにしている。
【0028】
検知部4は、例えば、1次元加速度センサとすることができる。
図3は、1次元加速度センサの出力の様子を表したグラフ図である。なお、横軸は1次元加速度センサの傾斜角度θを表し、縦軸は1次元加速度センサの出力を表している。 図3に示すように、傾斜角度θが0°(水平)から増加すれば1次元加速度センサの出力は漸増する。一方、傾斜角度θが0°(水平)から減少すれば1次元加速度センサの出力は漸減する。すなわち、1次元加速度センサの出力を測定すれば、その際の1次元加速度センサの傾斜角度θを知ることができる。
【0029】
そのため、1次元加速度センサを検知部4としてアーム部3bに設けるようにすれば、1次元加速度センサの出力からアーム部3bの傾斜角度θを知ることができる。なお、本実施の形態においては、アーム部3bが水平の位置から上方に向けて回転移動するので、傾斜角度θが0°(水平)から増加する部分を使用することになる。
【0030】
そして、予め定められた所定の傾斜角度θを超えた場合には、使用者が離座するためにアーム部3bを上方に持ち上げたと判定することができる。そのため、そのような場合には、使用者が離座する意思を持って立ち上がろうとしていると判定することができる。なお、この判定は、後述する離座判定部において行うことができる。すなわち、離座判定部は、検知部4からの信号に基づいて、便器部2から使用者が離座しようとすることを判定する。そして、離座判定部は、検知部4からの信号が所定の値を超えた場合には、使用者が離座しようとしていると判定する。また、後述するように、離座判定部からの信号に基づいて、便器部2から使用者が離座しようとすることを報知するための報知部を設けることもできる。
【0031】
そのため、そのような判定がなされた場合にはトイレブース外にいる介助者に対して速やかな報知を行うことができるので、使用者の身体に大きな負担がかかる前に介助を行うことができる。
【0032】
ここで、使用者によっては介助されることを嫌い自力で立ち上がろうとする場合がある。このような使用者は、アーム部3bをなるべく上げないようにしながら隙間をかいくぐるようにして離座しようとする。そのため、前述の所定の角度を余り大きくしすぎるとアーム部3bとの間の隙間をかいくぐりやすくなるので、トイレブース外にいる介助者に対して報知が行われなくなるおそれがある。
【0033】
一方、身体の大きな使用者の腿などにアーム部3bが当たり上方に持ち上げられる場合がある。そのため、前述の所定の角度を余り小さくしすぎると誤検知による誤報がトイレブース外にいる介助者に対して行われるおそれがある。
【0034】
本発明者の得た知見によれば、前述の所定の角度を30°程度とすればトイレブース外にいる介助者に対して適切な報知を行うことができる。また、使用者の体格などに合わせて前述の所定の角度を設定できるようにすれば、さらに適切な報知を行うことができるようになる。なお、離座判定部における判定値の値を変更する判定値設定部については後述する。
【0035】
また、報知部による報知が行われた場合には、身体補助具3(アーム部3b)を所定の位置に固定する図示しない支持制御部を設けるようにしてもよい。例えば、アーム部3bの傾斜角度が30°を超えたところでその位置を支持制御部により固定するようにすれば、使用者が自力で立ち上がろうとすることを阻止することができる。そのため、トイレブース外にいる介助者が介助を行う前に使用者が起立してしまうことを防止することができる。図示しない支持制御部としては、例えば、支持部3aをソレノイドなどで固定するようなものを例示することができる。
【0036】
図4は、他の実施の形態に係る身体補助具の動きを例示するための模式斜視図である。 図4に示すように、身体補助具13は、支持部13aと、支持部13aから一方向に伸びるアーム部13bを有している。アーム部13bは、その一端を支持部13aにより水平方向に回転可能に支持されている。そのため、アーム部13bは、一端を回転支点として水平方向に回転移動することができるようになっている。すなわち、アーム部13bは、支持部13aを回転支点として前後方向に回転移動できるようになっている。
【0037】
また、支持部13aは、支柱13cに設けられている。そして、支柱13cの下端がトイレブースの床面に設けられている。なお、支柱13cの設置場所はトイレブースの床面に限定されるわけではなく、例えば、トイレブースの壁面や天井であってもよい。また、支柱13cは必ずしも必要ではなく、例えば、図2において例示をしたように支持部13aを壁面や大便器2a両側部の上方に設けられた図示しない手すりなどに設けるようにすることもできる。
【0038】
この場合、使用者が便器部2に着座した際には、アーム部13bを後方に回転移動させて便器部2の前上方を横切る位置に設定する。そのため、便器部2に着座した使用者が前向きに倒れることがアーム部13bにより防止される。また、アーム部13bを把持したり、アーム部13bの上に腕を置いたりすることもできる。
【0039】
使用者が便器部2から立ち上がる際には、アーム部13bを前方に回転移動させて、アーム部13bと使用者との間の隙間を大きくできるようになっている。そして、この隙間を使って使用者が便器部2から立ち上がる(離座する)ことができるようになっている。なお、便器部2の前上方が開放される程度にアーム部13bが前方に回転移動できるようにしてもよい。
【0040】
ここで、アーム部13bを前方に回転移動させなければ、着座した使用者は立ち上がることができない。そのため、アーム部13bの動きを検知すれば、使用者が便器部2から立ち上がろうとしていることを立ち上がる前に事前に検知することができる。
【0041】
本実施の形態においては、アーム部13bの下面(裏面)に検知部14を設けるようにしている。そして、アーム部13bの水平方向の移動角度(水平方向の傾き)θ1からアーム部13bが便器部2の前上方にあるか否かを検知し、アーム部13bが便器部2の前上方にある状態からさらに前方に移動した状態への変化を捉えて使用者の離座を事前に検知するようにしている。
【0042】
検知部14は、例えば、3次元加速度センサとすることができる。
図5は、3次元加速度センサの出力の様子を表したグラフ図である。なお、横軸は3次元加速度センサの移動角度θ1を表し、縦軸は3次元加速度センサの出力を表している。また、グラフ図中の「X軸」と「Y軸」は水平方向において互いに直交する軸に関する出力波形をそれぞれ表し、「Z軸」は鉛直方向の軸に関する出力波形を表している。
【0043】
図5に示すように、移動角度θ1が変化すればX軸とY軸に関する出力が変化する。この場合、アーム部13bは水平方向には回転移動するが鉛直方向には移動しない。そのため、Z軸の出力波形は直線状となる。このような3次元加速度センサの出力を測定すれば、その際のアーム部13bの移動角度θ1を知ることができる。
【0044】
そして、予め定められた所定の移動角度θ1を超えた場合には、使用者が離座するためにアーム部13bを前方に移動させたと判断することができる。そのため、そのような場合には、使用者が離座する意思を持って立ち上がろうとしていると判定することができる。なお、この判定は、後述する離座判定部において行うことができる。すなわち、離座判定部は、検知部14からの信号に基づいて、便器部2から使用者が離座しようとすることを判定する。そして、離座判定部は、検知部14からの信号が所定の値を超えた場合には、使用者が離座しようとしていると判定する。また、後述するように、離座判定部からの信号に基づいて、便器部2から使用者が離座しようとすることを報知するための報知部を設けることもできる。
【0045】
そのため、そのような判定がなされた場合にはトイレブース外にいる介助者に対して速やかな報知を行うことができるので、使用者の身体に大きな負担がかかる前に介助を行うことができる。
【0046】
ここで、使用者によっては介助されることを嫌い自力で立ち上がろうとする場合がある。このような使用者は、アーム部13bをなるべく前方に移動させないようにしながら隙間をかいくぐるようにして離座しようとする。そのため、前述の所定の角度を余り大きくしすぎるとアーム部13bとの間の隙間をかいくぐりやすくなるので、トイレブース外にいる介助者に対して報知が行われなくなるおそれがある。
【0047】
一方、身体の大きな使用者の腹部などにアーム部13bが当たり前方に移動される場合がある。そのため、前述の所定の角度を余り小さくしすぎると誤検知による誤報がトイレブース外にいる介助者に対して行われるおそれがある。
【0048】
本発明者の得た知見によれば、前述の所定の角度を30°程度とすればトイレブース外にいる介助者に対して適切な報知を行うことができる。また、使用者の体格などに合わせて前述の所定の角度を設定できるようにすれば、さらに適切な報知を行うことができるようになる。
【0049】
なお、図2、図4に例示をしたものはアーム部3b、13bの下面(裏面)に検知部4、14を設けるようにしているが、設置場所は適宜変更することができる。また、検知部4として1次元加速度センサ、検知部14として3次元加速度センサを例示したがこれに限定されるわけではない。例えば、磁力を利用するセンサ、光電センサのように光の反射を利用するセンサ、電気が導通したか否かで判定するセンサなどを用いることもできる。
【0050】
また、図2、図4に例示をしたものはアーム部3b、13bが水平方向または鉛直方向に回転移動する場合であるが、一端を回転支点として鉛直方向および水平方向に回転移動するアーム部とすることもできる。この場合、検知部は、アーム部の鉛直方向および水平方向の傾きを検知することになるが、図5に例示をしたような3次元加速度センサとすればよい。
【0051】
そのようにすれば、アーム部を水平方向および鉛直方向に回転移動することができるので、使用者の離座をより容易にすることができる。また、アーム部の水平方向および鉛直方向の傾きを検知することができる。また、その傾きから使用者が離座しようとしていることを知ることができる。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る便器装置の構成を例示するためのブロック図である。
また、図7は、大便器の便座に設けられた検知部を例示するための模式斜視図である。 図6に示すように、便器装置10は、図7に示す便器部20と、図2や図4に例示をしたような身体補助具を備えている。そして、身体補助具には、図2や図4に例示をしたような検知部24が設けられている。
【0053】
また、図7に示すように、便器部22には、大便器22aと、大便器22aの上面で開閉可動する便座22bが設けられている。そして、便座22bには、少なくとも2つ以上の電極23が分離して設けられている。この電極23は、人体(使用者)と電極23との間の静電容量変動を検出するためのものである。また、検知部24と電極23とが離座判定部103と電気的に接続されている。また、離座判定部103は、報知部102、起動スイッチ104、判定値設定部106とも電気的に接続されている。
【0054】
ここで、人体(使用者)と接触する電極23を少なくとも一対有することによって、一対の電極間に人体があるか否かの判定を行うことができる。そのため、使用者の着座または離座の判定を行うことが可能となる。
【0055】
この場合、本実施の形態においては、便座22bに設けられた電極23を着座検知部として用いている。すなわち、便器部20の便座22bに設けられた電極23を使用者の着座を検知する着座検知部として用いている。
【0056】
そして、離座判定部103においては、着座検知部(電極23)と検知部24とからの信号に基づいて使用者の離座を判定し、報知部102に対して信号を出力するようにしている。
【0057】
例えば、離座判定部103において、着座検知部(電極23)により使用者の着座が検知された後に、検知部24からの信号が所定の値(判定値)を超えた場合には、使用者が離座しようとしていると判定することができる。この場合、着座検知部(電極23)からの信号があったときに検知部24の電源を入れるようにしてもよい。また、検知部24と着座検知部(電極23)の電源は同時に入るが、着座検知部(電極23)からの信号があったときに検知部24からの信号の処理を開始するようにしてもよい。
【0058】
判定値設定部106は、離座判定部103における判定値(閾値)の値を変更するためのものである。前述したように、使用者の体格などに合わせて検知信号の判定値(閾値)を変更した方が好ましい場合がある。例えば、前述したアーム部の角度の設定値を変更した方が好ましい場合がある。そのような場合には、判定値設定部106から所望の値を入力することで、離座判定部103における判定値(閾値)の値を変更することができるようになっている。
【0059】
また、便器装置10の使用場所によっては、着座の判定基準が異なる場合が存在する。このような場合には、複数の電極23からの着座信号の内、どの信号を基にして判定を行うかを判定値設定部106から指定できるようにもなっている。
このような判定値設定部106を設けることで、様々な場所や使用者に対して適切な判定値への変更を行うことが可能となる。また、介助されることを嫌い自力で立ち上がろうとする使用者や、使用者の体格などにあわせて離座判定部における判定値を適切な値に変更することができる。
【0060】
また、介助が必要でない使用者が便器装置10を使用する可能性もある。その際に、離座判定部103において離座判定を行うと、介助が必要でない使用者に対しても介助を求めるための報知を行ってしまうおそれがある。そのため、離座判定部103を起動させるための起動スイッチ104を設けるようにしている。
【0061】
この起動スイッチ104を使用者、又は介助者が操作することで介助者が必要な使用者に対して離座のための動作を検知することが可能となるようになっている。また、介助が必要でない使用者に対しては、離座のための動作を検知しないようにすることが可能となっている。この場合、離座時における所定の動作(例えば、自動便器洗浄や、脱臭装置の駆動等)は実施することが出来るようになっている。そのため、様々な使用者が便器装置10を問題なく使用することができるようになっている。
【0062】
次に、電極23の配置方法について例示する。
どのような使用者に対しても確実に電極23と人体とが接触する場所へ電極23を配置する必要がある。そのため、本実施の形態においては、使用者の便座への座り方が深い(ロータンク側に近く座る)場合でも、座り方が浅い(ロータンクから遠い側に座る)場合でも人体と電極23とが接触するように、電極23を便座開口部の最前縁よりも後方に配置している。ここで、「便座開口部の最前縁」とは、便座開口部の最縁のことを指す。例えば図7におけるA点がこれに当たる。
【0063】
このような配置とすることにより着座した人体と電極23との接触を確実に行うことができる。そのため、着座状態を正確に判断することが出来る。また、長い電極23を配置することができるので充分な電極面積を確保することができる。そのため、人体との接触/非接触状態における信号差を顕著にすることができるので、着座状態を容易に判断することが可能となる。
【0064】
電極23は、人体と接触する便座22bの表面に設けられるため、なるべく薄いものとすることが望ましい。そのようにすれば、使用者に違和感を与えることなく着座検知を行うことが可能となる。また電極23は、人体表面との接触面が導電性物質から成るものであればよい。そのため、例えば、金属テープ(アルミテープや銅箔テープ等)のような薄いテープ類とすることができる。
【0065】
図8は、電極の取付を例示するための模式断面図である。
本実施の形態においては、便座22bの表層に一対の電極23を設けている。
この場合、図8(a)に示すように、着座する人体が電極23と接触するように便座22bの表面に電極23を配置することができる。また、図8(b)に示すように、便座22bの表面に凹部を設け、この凹部に電極23を配置して便座22bの表面と電極23の表面とを同一面とすることもできる。このような配置方法により、人体と電極23とを確実に接触させることが可能となるため、使用者の着座状態を早急に且つ正確に検知することが可能となる。
【0066】
また、図8(a)に示す場合のように電極23を露出させた状態で設置すると、人体との接触の際に電極23が損傷するおそれがある。また、人体と電極23とが直接接触することで使用者に違和感が生ずるおそれがある。
【0067】
図9は、他の実施の形態に係る電極の取付を例示するための模式断面図である。
図9(a)に示すように、電極23を覆うように導電性樹脂層500を設けることができる。導電性樹脂層500は、その裏面側から表面側までが導通しているので電極23により人体の着座状態を検知することができる。また、電極23のエッジ部を導電性樹脂層500で被覆することが可能となるため、電極23の損傷を防止することが可能となる。
【0068】
また、図9(b)に示すように、樹脂製の便座22bの裏側に一対の電極23を設けることもできる。樹脂製の便座22bの裏側に電極23を配置することで、電極23と人体とが直接接触することをなくすことができる。そのため、電極23の損傷、使用者の違和感等の問題を解決することができる。また、このようにしても一対の電極23を人体の近傍に設置することができるので、静電容量変動を確認する従来のセンサよりも精度良く検知を行うことが可能となる。
なお、図7〜図9においては、電極23を用いて人体(使用者)と電極23との間の静電容量変動を検出するものを着座検出部として例示しているが、これに限定されるわけではない。例えば、光電式センサ(反射式や透過式(有無判定)、測距式(距離判定))、超音波センサ、電波センサ(例えば、マイクロ波センサなど)など人体(使用者)を検出可能な検出手段を適宜選択することができる。
【0069】
図10は、報知部を例示するための模式斜視図である。
便器装置10が設けられているトイレブース601(トイレブースは、外部から内部を容易に目視確認できないように間仕切られた空間を指す)の外部には、報知部が設けられている。
【0070】
ここで、介助が必要な使用者に対しては介助者が付き添うが、トイレブース601内部で介助者が待機することはほとんどない。また、介助者がトイレブース601内部で待機可能であれば、使用者が離座することを外部に報知する必要も無い。
【0071】
そのため、本実施の形態においては、トイレブース601内部における使用者の離座を介助者が容易に確認できない状況(介助者がトイレブース外で待機する場合)において、介助者に報知を行うための報知部について例示をする。
【0072】
ここで、報知部102としては、発音報知部602や発光報知部603などを例示することができる。本実施の形態に係る便器装置10は、病院等の医療施設において使用される可能性が高いので、周囲の環境に合わせた報知を行う必要がある。そのため、複数の種類の報知部を設けるようにすれば周囲の環境に合わせた適切な報知の種類を選択することができるようになる。例えば、発音または発光で報知する、発音と発光とで同時に報知する等の選択が可能となる。
【0073】
報知部102の設置位置としては、トイレブース入口近傍に設置することが好ましい。そのようにすれば、介助者が容易に確認することでき、且つ確認後にトイレブース601内に速やかに入室することができる。
【0074】
発音報知部602としてはブザー、警報音を発する装置などの発音装置を例示することができる。また、発光報知部603としては、赤色灯、LED、ライト等の発光装置を例示することができる。なお、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0075】
また、介助者がトイレブース601のすぐ外に常に待機できない場合には、離座することを介助可能な他の人物に報知する必要がある。このような場合には、報知部102を、トイレブース601以外の居室や通路等に設置することができる。そのようにすれば、離座することを介助可能な他の人物に速やかに報知することができるので、使用者が倒れこ
む等の危険な状態を回避または早急に対応することが可能となる。
【0076】
例えば、病院のような医療施設においては、看護士が集まる部屋(例えばナースステーション)に報知部102を設置することができる。そのようにすれば、介助者がトイレブース601近傍にいない場合であっても、他の介助者が速やかにトイレブース601へ向かうことが可能となる。そのため、使用者が危険となりうる状況を回避することが可能となる。このような場合の報知部102としては、トイレブース601以外の居室または通路に設置されている報知機器(例えばナースコールを表示する表示板や、施設の放送等に使用される放送機器等)に有線/無線にて報知信号を送信するものなどを例示することができる。そのような報知部102を設けるものとすれば、容易にトイレブース601外の介助者へ報知することが可能となる。
【0077】
また、医療施設等の施設内において連絡用として使用されている無線機器(たとえばPHSなど)を報知部102として使用することも可能である。この場合、トイレブース601外に介助者が不在の場合でも、近隣を通行中の介助可能な人物へ報知することができる。そのため、速やかに該当するトイレブース601へ向かうことができるため、使用者が危険となりうる状況を回避することが可能となる。また、無線機器への通信機能を有する報知部とすれば、報知機器(例えばナースコールを表示する表示板や、施設の放送等に使用される放送機器等)の設置が容易となる。
【0078】
また、前述した起動スイッチ104は、使用者、または介助者が操作容易なように、トイレブース601内部の便座近傍か、トイレブース601入口近傍に設けることが望ましい。そして、起動スイッチ104により離座判定部103を起動させないようにすることで、介助が必要でない使用者の動きによる報知がトイレブース601の外部にされるの防ぐことができる。そのため、様々な使用者に対応した使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る便器装置を例示するための模式斜視図である。
【図2】身体補助具の動きを例示するための模式斜視図である。
【図3】1次元加速度センサの出力の様子を表したグラフ図である。
【図4】他の実施の形態に係る身体補助具の動きを例示するための模式斜視図である。
【図5】3次元加速度センサの出力の様子を表したグラフ図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る便器装置の構成を例示するためのブロック図である。
【図7】大便器の便座に設けられた検知部を例示するための模式斜視図である。
【図8】電極の取付を例示するための模式断面図である。
【図9】他の実施の形態に係る電極の取付を例示するための模式断面図である。
【図10】報知部を例示するための模式斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
1 便器装置、2 便器部、2a 大便器、2b 便座、3 身体補助具、3a 支持部、3b アーム部、4 検知部、10 便器装置、13 身体補助具、13a 支持部、13b アーム部、13c 支柱、14 検知部、20 便器部、22a 大便器、22b 便座、23 電極、102 報知部、103 離座判定部、104 起動スイッチ、106 判定値設定部、601 トイレブース、602 発音報知部、603 発光報知部、θ 傾斜角度、θ1 移動角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器部と、
便器部の前上方に移動可能に設けられた身体補助具と、
前記身体補助具に設けられ、前記身体補助具の位置を検知する第1の検知部と、
前記第1の検知部からの信号に基づいて、前記便器部から使用者が離座しようとすることを判定する離座判定部と、
前記離座判定部からの信号に基づいて、前記便器部から使用者が離座しようとすることを報知する報知部と、
を備え、
前記離座判定部は、前記第1の検知部からの信号が所定の値を超えた場合には、使用者が離座しようとしていると判定すること、を特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記報知部による報知が行われた場合には、前記身体補助具を所定の位置に固定する支持制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の便器装置。
【請求項3】
前記便器部の便座に設けられ、使用者の着座を検知する第2の検知部をさらに備え、
前記離座判定部は、前記第2の検知部により使用者の着座が検知された後に、前記第1の検知部からの信号が所定の値を超えた場合には、使用者が離座しようとしていると判定すること、を特徴とする請求項1または2に記載の便器装置。
【請求項4】
前記離座判定部における判定値の値を変更する判定値設定部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の便器装置。
【請求項5】
前記身体補助具は、アーム部を有し、
前記アーム部は、一端を回転支点として鉛直方向に回転移動すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の便器装置。
【請求項6】
前記身体補助具は、アーム部を有し、
前記アーム部は、一端を回転支点として水平方向に回転移動すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の便器装置。
【請求項7】
前記第1の検知部は、前記アーム部の鉛直方向の傾きを検知すること、を特徴とする請求項5記載の便器装置。
【請求項8】
前記第1の検知部は、前記アーム部の水平方向の傾きを検知すること、を特徴とする請求項6記載の便器装置。
【請求項9】
前記身体補助具は、一端を回転支点として鉛直方向および水平方向に回転移動するアーム部と、を有し、
前記第1の検知部は、前記アーム部の鉛直方向および水平方向の傾きを検知すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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