説明

便器装置

【課題】便器本体のリムに対する局部洗浄装置の装置ケースの位置決め強度と止水強度とをそれぞれ高めること。
【解決手段】ボウル部3の後部に位置するリム後部4aよりも後方B位置にリム4と連続して後方Bに突出する左右の突出側壁11を設けると共に両突出側壁11間に装置ケース8を収納可能な後方Bに開口した収納開口部12を設ける。収納開口部12の互いに対向する両内側面11aにおける前後A,Bにずれた左右対角位置P1,P2に一対の嵌合部13を設け、収納開口部12に収納される装置ケース8の左右両側の一対の嵌合部13と個別に対応する対角位置に一対の嵌合部13に着脱自在に嵌合する一対の被嵌合部14を設け、装置ケース8の前端部をリム後部4aと装置ケース8との間に配置されるシール部材15に密着させた便器装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に関し、詳しくは、ボウル部のリムに対して局部洗浄装置の装置ケースを位置決めする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボウル部を備えた前パーツと、後パーツと、これら前パーツと後パーツとを支持する支持フレームとで構成された便器装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−191901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来は、図9、図10に示すように、後パーツ1Bの一部を構成する局部洗浄装置5の装置ケース8を支持フレーム9にて支持しているが、ボウル部3の上端縁にリム4が形成されてなる便器本体2と装置ケース8との間は直接締結されるものではなく、そのため前パーツ1Aと後パーツ1Bを構成する部品寸法のばらつきにより、ボウル部3の後部に位置するリム4と装置ケース8との間に位置ずれが生じやすく、リム後部4aと装置ケース8間に生じる隙間26から、排便・小便の跳ね返りや飛び散り等による汚水がボウル部3の外部に漏れ出すという問題がある。
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、便器本体のリムに対する局部洗浄装置の装置ケースの位置決め強度と止水強度とをそれぞれ高めることができる便器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、ボウル部3の上端縁に沿ってリム4が形成された便器本体2と、便器本体2の後部上面に配置されて人体の局部を洗浄する局部洗浄ノズル6と該局部洗浄ノズル6を出し入れ自在に収納する装置ケース8とを有する局部洗浄装置5と備え、便器本体2と局部洗浄装置5の装置ケース8とを共通の支持フレーム9にて支持した便器装置1である。上記ボウル部3の後部に位置するリム後部4aよりも後方B位置に、リム後部4aの左右両側からリム4と連続して後方Bに突出する左右の突出側壁11を設けると共に両突出側壁11間に上記装置ケース8を収納可能な後方Bに開口した収納開口部12を設ける。収納開口部12の互いに対向する両内側面11aにおける前後A,Bにずれた左右対角位置P1,P2に一対の嵌合部13を設け、収納開口部12に収納される上記装置ケース8の左右両側の上記一対の嵌合部13と個別に対応する対角位置に一対の嵌合部13に着脱自在に嵌合する一対の被嵌合部14を設けると共に、上記装置ケース8の前端部を上記リム後部4aと装置ケース8との間に配置されるシール部材15に密着させてなることを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、局部洗浄装置5の装置ケース8を収納開口部12に嵌め込む際に、収納開口部12内の前後A,Bにずれた左右対角位置P1,P2にある一対の嵌合部13に対して、装置ケース8の左右2箇所にある一対の被嵌合部14を前後片側ずつスムーズに嵌合させてリム4と装置ケース8とを直接嵌合させることができ、これにより、たとえ部品寸法のばらつきがあっても、リム4に対する装置ケース8の位置決め強度を高めることができると共に、リム後部4aと装置ケース8との隙間26に介挿したシール部材15が装置ケース8の前端部に密着して確実にシールでき、止水強度が同時に高められる。さらにメンテナンスの際の分解時には、嵌合部13と被嵌合部14との掛かり代分だけ装置ケース8を僅かに水平回動させるだけで前後片側ずつそれぞれ容易に取り外し可能となる。
【0008】
また、上記装置ケース8の前端部下面8aを後方Bに向かって下り傾斜させると共に、当該前端部下面8aを除く装置ケース下面部分8bをリム後部上面4bよりも低い位置に配置してなるのが好ましく、この場合、装置ケース下面部分8bの高さを低くできるので、装置ケース下面部分8bの上に設置される局部洗浄ノズル6の高さも低くでき、局部洗浄装置5の上方への突出寸法を小さく抑えてコンパクト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、局部洗浄装置の装置ケースを収納可能な後方に開口した収納開口部と、収納開口部の互いに対向する両内側面における嵌合構造と、装置ケースとリム後部間の隙間に配置されるシール部材との組み合わせにより、便器本体のリムに対する装置ケースの位置決め強度と止水強度の2条件を満足させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の便器本体のリムに対する局部洗浄装置の装置ケースの嵌合位置決め状態を示す便器装置の平面図である。
【図2】同上の便器装置の前パーツと後パーツとこれを支持する支持フレームとを示す側面図である。
【図3】同上の前パーツを後方から見た斜視図である。
【図4】(a)は図1のP1(P2)における嵌合部と被嵌合部との嵌合位置決め状態を示す平面図、(b)は(a)のd−d線に沿う側面断面図である。
【図5】同上の装置ケースを水平回動させて嵌合部と被嵌合部との嵌合を取り外す場合を説明する平面図である。
【図6】同上のリム後部と装置ケースとの間にシール部材を介在させた状態を説明する側面断面図である。
【図7】同上の後パーツを前方から見た一部を破断して示した斜視図である。
【図8】同上の後パーツを後方から見た斜視図である。
【図9】従来の温水洗浄一体式便器の一例を示す斜視図である。
【図10】従来のリム後部と局部洗浄装置の装置ケースとの位置関係を説明する側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0012】
本実施形態の便器装置1は、図2、図3、図8に示すように、便器本体2とスカート部16とを備えた前パーツ1Aと、局部洗浄装置5の装置ケース8、上カバー10、リアスカート、左右のサイドスカート17をそれぞれ備えた後パーツ1Bと、これら前パーツ1Aと後パーツ1Bを支持する共通の金属製の支持フレーム9とで構成してある。
【0013】
便器本体2は、図1に示すように、ボウル部3と、ボウル部3の上端開口縁の全周にわたって形成されたリム4とからなる。リム4の上面は便座載置面となる。ボウル部3の底部の後部には排水筒部18(図3)が設けられる。
【0014】
上記リム4のうちボウル部3の後部に位置するリム後部4aの内部には、図6に示すように、局部洗浄装置5のノズル出し入れ部7を収納する収納空間19が形成され、その収納空間19の前側壁に局部洗浄ノズル6の先端部を出退させるためのノズル用開口部20が形成されている。
【0015】
便器本体2の後部上面に配置される局部洗浄装置5は、図6に示すように、装置ケース8の上面に局部洗浄ノズル6が固定されている。ここでは、リム後部4aと連続して上方に立ち上がる立ち上り部4cの下方に局部洗浄ノズル6が収納されると共に、立ち上り部4cの下部にノズル出し入れ部7が設けられている。局部洗浄ノズル6は上カバー10で被覆されている。なお、装置ケース8の上面には、局部洗浄ノズル6以外に、送風ダクト21(図7)、図示省略した貯湯タンク、送水用ポンプ、温風供給用の温風ファン、水道水からの入水を制御する電磁弁等の機能部品が設置される。
【0016】
本例の装置ケース8の前端部下面8aは、図6に示すように、後方Bに向かって下り傾斜しており、この前端部下面8aを除く装置ケース下面部分8bをリム後部上面4bよりも低い位置に配置している。この装置ケース8は、支持フレーム9の後部上面にネジ具23(図2)により締結固定される。この締結は図8に示すように左右2箇所で行われる。
【0017】
一方、ボウル部3の後部に位置するリム後部4aよりも後方Bには、図1、図3に示すように、リム4と連続してリム後部4aの左右両側から後方Bに向かって突出する左右の突出側壁11が設けられており、両突出側壁11の間に装置ケース8が収納可能な後方Bに開口した収納開口部12が形成される。本例の両突出側壁11はリム後部4aから立ち上がる立ち上り部4cと連続して形成されている。また収納開口部12の底面部分には、装置ケース8の前端部下面8aをガイドする下ガイド面25が設けられている。なお図3は後方Bに突出する左右の突出側壁11をそれぞれ途中から破断した図面を示している。
【0018】
上記左右の突出側壁11の互いに対向する内側面11aには、図1に示すように、一対の嵌合部13が設けられている。各嵌合部13は両内側面11aにおける前後A,Bにずれた左右対角位置P1,P2に設けられている。本例の各嵌合部13は、図4に示すように、収納開口部12の内側面11aから内方に向けて突出した嵌合面13aと、嵌合面13aの先端から後方Bに向かって徐々に突出高さが小さくなる傾斜ガイド面13bとからなる。
【0019】
一方、装置ケース8の左右両側の上記一対の嵌合部13と個別に対応する対角位置には、一対の嵌合部13に対して着脱自在に嵌合する一対の被嵌合部14が設けられている。本例では装置ケース8の左右両端部から上方に向かって突設したリブ51(図4)の上端部に被嵌合部14をそれぞれ設けて、図2に示すように、嵌合部13と被嵌合部14とを同じ高さ位置に配置している。各被嵌合部14は、図4(a)に示すように、リブ51の外側面から内方に向けて突出した嵌合面14aと、嵌合面14aの先端から前方A(リム後部4a側)に向かって徐々に突出高さが小さくなる傾斜ガイド面14bとからなる。そして装置ケース8を前方Aに押し込むと、被嵌合部14の傾斜ガイド面14bが嵌合部13の傾斜ガイド面13bを乗り越えて嵌合できるようになり、装置ケース8を後述のように水平に回動させると容易に外れる構造となっている。
【0020】
上記リム後部4aと装置ケース8の前端部下面8aとの間には、図6、図7に示すように、シール部材15が介在される。シール部材15は例えば弾性を有する防水材料からなる。本例ではシール部材15は、図7のハッチングで示すように送風ダクト21の先端外周面にも巻き付けられており、ダクト用開口部22(図3)からの臭気漏れも同時に防ぐようにしている。
【0021】
次に組立動作を説明する。
【0022】
予め、装置ケース8の前端部下面8a又はリム後部上面4bのいずれか一方にシール部材15を貼着しておく。その後、装置ケース8を水平にして下ガイド面25に沿わせて収納開口部12内に押し込む。このとき、被嵌合部14の傾斜ガイド面14bが嵌合部13の傾斜ガイド面13bを乗り越えることで、嵌合面13a,14a同士がスムーズに嵌合する。またこのとき装置ケース8を水平に回動させる動作を加えることで、左右対角位置に位置する嵌合部13と被嵌合部14とを前後片側ずつ嵌合させることができ、リム4に対する装置ケース8の嵌合動作が容易となる。この嵌合状態では局部洗浄ノズル6の先端部分がノズル用開口部20に位置決めされ、同時に送風ダクト21の先端部分がダクト用開口部22に位置決めされる。その後、装置ケース8を支持フレーム9にネジ具23にて締結する。この締結によって、図6に示すように、シール部材15が装置ケース8の前端部下面8aとリム後部4aとの間で押圧されて双方の隙間26が確実にシールされた状態となる。
【0023】
一方、メンテナンスのための分解時には、装置ケース8を支持フレーム9から取り外し、その後、収納開口部12から引き抜く。このとき、最初に装置ケース8を一旦押し込み、図5の矢印aで示すように嵌合部13と被嵌合部14との掛かり代分だけ水平に僅かに回動させることで、左右対角位置P1,P2にある嵌合部13と被嵌合部14とを前後片側ずつ外すことが可能となり、狭いトイレ空間でも分解作業をスムーズに行えるようになる。
【0024】
しかして、組立時において、たとえ部品寸法のばらつきがあっても、リム4に対する装置ケース8の位置決め強度を高めることができると共に、装置ケース8の前端部下面8aがシール部材15に密着することで止水強度が同時に高められる。この結果、組立作業がはかどると共に、安定してシールを行えるので、汚水が当該隙間26に浸入することがなく、清掃もきわめて容易となる。
【0025】
また本例では、装置ケース8の前端部下面8aを後方Bに向かって下り傾斜させているので、前端部下面8aを除く装置ケース下面部分8bをリム後部上面4bよりも低い位置に配置できるようになり、これにより装置ケース8の高さを低くでき、局部洗浄装置5の上方への突出寸法を小さくしてコンパクト化を図ることができる利点もある。
【0026】
さらに本例では、装置ケース8の前端部分の肉厚を薄くすることで前端部下面8aを傾斜させているが、この前端部分の上面には局部洗浄ノズル6等の機器は載設されないため上からの荷重はかからず、しかも前端部下面8aはリム後部4a上の弾性を有するシール部材15にて下方から支持されているため、前端部分を薄肉にしても装置ケース8全体として強度的に何ら問題はない。
【符号の説明】
【0027】
1 便器装置
2 便器本体
3 ボウル部
4 リム
4a リム後部
4b リム後部上面
5 局部洗浄装置
6 局部洗浄ノズル
7 ノズル出し入れ部
8 装置ケース
8a 前端部下面
8b 装置ケース下面部分
9 支持フレーム
11 突出側壁
11a 内側面
12 収納開口部
13 嵌合部
14 被嵌合部
15 シール部材
A 前方
B 後方
P1,P2 左右対角位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル部の上端縁に沿ってリムが形成された便器本体と、便器本体の後部上面に配置されて人体の局部を洗浄する局部洗浄ノズルと該局部洗浄ノズルを出し入れ自在に収納する装置ケースとを有する局部洗浄装置と備え、便器本体と局部洗浄装置の装置ケースとを共通の支持フレームにて支持した便器装置であって、上記ボウル部の後部に位置するリム後部よりも後方位置に、リム後部の左右両側からリムと連続して後方に突出する左右の突出側壁を設けると共に両突出側壁間に装置ケースを収納可能な後方に開口した収納開口部を設け、収納開口部の互いに対向する両内側面における前後にずれた左右対角位置に一対の嵌合部を設け、収納開口部に収納される上記装置ケースの左右両側の上記一対の嵌合部と個別に対応する対角位置に一対の嵌合部に着脱自在に嵌合する一対の被嵌合部を設けると共に、上記装置ケースの前端部を上記リム後部と装置ケースとの間に配置されるシール部材に密着させてなることを特徴とする便器装置。
【請求項2】
上記装置ケースの前端部下面を後方に向かって下り傾斜させると共に、当該前端部下面を除く装置ケース下面部分をリム後部上面よりも低い位置に配置してなることを特徴とする請求項1記載の便器装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−255315(P2010−255315A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107035(P2009−107035)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】