説明

便器装置

【課題】カバー体にて洗剤タンクを覆ったものにおいても、洗剤を補充するに当たって、面倒な作業を低減させ、洗剤タンクとの接続部における劣化をなくし、また、カバー体の破損・損傷を防止すると共に、カバー体が汚れた場合であっても洗浄しやすいものとさせる便器装置を提供する。
【解決手段】本発明は、洗剤を混合した洗浄水により洗浄を行なうようにした便器装置である。洗剤タンク81が便器本体1に固設される。この洗剤タンク81に洗剤を供給するための供給口部812が便器本体1の側面部11から突出するようにして設けられている。箱状のカバー体59が供給口部812を内部に収容した状態で側面部11に設けられている。便器本体1に対してカバー体59を開閉自在に支持する回動手段591が設けられている。そして、カバー体59を回動させて開くと洗剤タンク81の供給口部812が露出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤タンクに貯溜された洗剤を水に混ぜた洗浄水によりボウル部の洗浄を行なうようにした便器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗剤タンクに貯溜された洗剤を 水に混合させて洗浄水を生成し、この洗浄水によりボウル部の洗浄を行なうようにした便器装置として、例えば特許文献1により示されたものが知られている。この特許文献1により示された便器装置は、便器装置に洗剤タンクが配設されており、洗浄水を使用するごとに洗剤タンク内の洗剤が所定量使用されて洗浄水が生成されるようになっている。洗剤タンク内の洗剤は便器を使用するたびに減少してゆくため、洗剤を定期的に補充する必要がある。
【0003】
この便器装置について詳しく説明すると、便器装置には後部側面部に洗剤タンクを収納するためのタンク収納空間が凹設されており、このタンク収納空間はカバー体が装着されて閉塞される。タンク収納空間内のカバー体に対向する側面には、洗剤タンクの上部に便器本体側に向けて直線状に突設された接続継手が挿通して接続される接続孔が穿設されている。
【0004】
カバー体は、下縁部に軸が設けられており、該軸を中心としてタンク収納空間の開口下縁部に回動自在に取り付けられている。このカバー体には洗剤タンクが取り外し可能に取り付けられ、洗剤タンクが装着された状態のカバー体を便器本体側に回動させることで、洗剤タンクの接続継手がタンク収納空間の接続孔に挿入された状態で、タンク収納空間内に洗剤タンクが収納されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−108507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような便器装置において、洗剤タンクに洗剤を補充する場合には、タンク収納空間を閉塞するカバー体を洗剤タンクと共に側方に向けて回動させることで洗剤タンクを露出させ、さらに、洗剤タンクをカバー体から取り外して手元に位置させたうえで洗剤を補充するようになっている。そしてその後、再び、洗剤が充填された洗剤タンクをカバー体に装着したうえで、タンク収納空間に納める必要がある。この洗剤補充時に要する洗剤タンクの取り外し・取り付け作業は面倒なものであった。
【0007】
しかも、上記特許文献1のものは、カバー体を回動させてカバー体と共に洗剤タンクの取り付け・取り外しをするに当たって、洗剤タンクから便器装置側に向けて突出した接続継手が、カバー体の回動軸を中心とした円弧に沿うように弧状となったものではなく、直線状となったものであるため、タンク収納空間に対する洗剤タンクの取り付け・取り外しを行なうたびに、タンク収納空間の接続孔の内周面に接続継手が擦られながら出入することになる。このため、洗剤タンクの取り付け・取り外しを繰り返すと、接続孔の内周縁に設けられた水密材又は接続継手の先端が劣化してしまうという問題が生じることもあった。
【0008】
さらに、上記特許文献1のものは、洗剤タンクがカバー体に装着されて重量がカバー体のみのものよりも大きくなっているため、便器装置側方に向けてカバー体を開放させると、勢いよくカバー体が回動してしまう場合があった。一般的に、便器側面部と、この便器側面部に対向するトイレルーム壁面との間の隙間は狭く設計されている場合がほとんどである。この場合には、勢いよく回動したカバー体が、トイレルーム壁面に衝突してしまい、破損・損傷のおそれがあるという問題があった。
【0009】
その上、上記特許文献1のものは、カバー体の下縁部に軸が設けられており、また上記のように便器側面部とトイレルーム壁面との間のスペースは狭くなっている場合がほとんどであるため、便器装置からカバー体を取り外すための作業スペースがない上に、取り外しの手間がかかり、非常に困難な作業が必要となる。例えば、洗剤タンクから洗剤が漏れてカバー体の底面に洗剤が溜まったような場合には、カバー体を取り外してカバー体ごと洗浄するというようなことが、容易にできないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カバー体にて洗剤タンクを覆ったものにおいても、洗剤を補充するに当たって、面倒な作業を低減させ、洗剤タンクとの接続部における劣化をしにくくし、また、カバー体の破損・損傷を防止すると共に、カバー体が汚れた場合であっても洗浄しやすいものとさせる便器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の便器装置は以下の構成とする。
【0012】
本発明は、洗剤タンクに貯溜された洗剤を水に混合した洗浄水によりボウル部の洗浄を行なうようにした便器装置において、前記洗剤タンクが便器本体に固設され、前記洗剤タンクに洗剤を供給するための供給口部が前記便器本体の側面部から突出するようにして設けられ、前記便器本体側に開口した箱状のカバー体が前記供給口部を内部に収容した状態で前記側面部に設けられ、前記便器本体に対して前記カバー体を開閉自在に支持する回動手段が設けられ、前記カバー体を回動させて開くと前記洗剤タンクの供給口部が露出される。
【0013】
また本発明の便器装置は、前記便器本体の側面部に略矩形状の開口部が設けられ、前記供給口部が前記開口部から突出するようにして設けられ、前記カバー体は前記開口部を閉塞するように設けられ、前記回動手段は、前記カバー体の開口下縁部に設けられると共に前記側面部の開口部の開口下縁と係脱自在に係止する鉤状突出片で構成され、前記カバー体を開放させる方向への回動範囲を規制する回動規制手段がカバー体に設けられていることが好ましい。
【0014】
また本発明の便器装置は、前記回動規制手段が、前記カバー体の開口側縁部から回動方向に沿って突設された腕片と、この腕片の突出先端部に当該腕片と交差する方向外方に向けて突設され、前記カバー体が開放した状態で前記側面部の開口部周縁の裏側に当接する回動規制片とを備え、前記側面部の開口部周縁の裏側に、前記カバー体開放時の回動規制片の上端面に対して、近接対向するまたは当接する抜け止め突起が設けられていることが好ましい。
【0015】
また本発明の便器装置は、前記側面部の開口部周縁に、前記鉤状突出片の上方への外れを規制する抜け止め片が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カバー体にて洗剤タンクを覆ったものにおいても、洗剤を補充するに当たって、面倒な作業を低減させ、洗剤タンクとの接続部における劣化をしにくくし、また、カバー体の破損・損傷を防止すると共に、カバー体が汚れた場合であっても洗浄しやすいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の全体斜視図である。
【図2】同上のカバー体のみの斜視図である。
【図3】カバー体の変形例の斜視図である。
【図4】カバー体の変形例の開閉状態を説明するための図であり(a)は閉じた状態の断面図であり(b)は開いた状態の要部断面図である。
【図5】本実施形態の分解斜視図である。
【図6】同上の概略側断面図である。
【図7】同上の微細気泡発生手段を説明するための図であり(a)は要部斜視図であり(b)は側断面図である。
【図8】同上のタンクホルダー周辺を示す斜視図である。
【図9】同上のカバー体を取り外した状態の要部斜視図である。
【図10】同上の洗剤タンクの平面図である。
【図11】同上のカバー体を取り外した状態の要部側断面図である。
【図12】同上のカバー体の取り付けられた状態を便器本体の内部側から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0019】
本発明の実施形態の便器装置を図1等に示す。本実施形態の便器装置は、洗剤タンク81に貯溜された洗剤を水と混合して生成した洗浄水をボウル部6に流すようにしたものである。なお、以下の説明で用いる方向は、用を足す際に便座に着座した人から見た方向を基準とし、着座者の正面側を前方、背面側を後方と定義する。
【0020】
本実施形態の便器装置は、図1及び図5に示されるように、便器装置の主体を形成すると共に前部にボウル部6を有する便器本体1と、便器本体1に内装された内装ユニット2とを備えている。便器本体1には、側面部11から突出する洗剤タンク81の供給口部812を内部に収容するカバー体59が取り付けられている。内装ユニット2は、洗浄水吐出装置4や、局部洗浄装置、脱臭装置、制御回路等の一群の内装機器を一つにまとめて機器ケース21内に設けて構成されている。
【0021】
便器本体1は、金属製の支持フレーム14と、この支持フレーム14の外面に取り付けられた外郭体5と、小便や大便を直接受ける部分となり上方に開放する椀状となったボウル部6と、ボウル部6の後端部に接続されたトラップ部7とを備えている。
【0022】
外郭体5は、前部を構成する前パーツ51と、後部を構成する後パーツ52とで構成されている。前パーツ51は、図5のように平面視で後方に開口した略U字状のスカート部53と、ボウル部6上に位置するリム部54とで構成されており、ボウル部6、及びリム部54、スカート部53が溶着又は接着により一体化されている。後パーツ52は、上カバー55と、後カバー56と、両側の上下に配置されるサイドカバー57とで構成されている。これら上カバー55、後カバー56、及び各サイドカバー57は便器に対して着脱自在となっている。本実施形態においてはこのサイドカバー57が便器本体1の側面部11を構成している。
【0023】
詳しく説明すると、上カバー55は、機器ケース21に対してビスにより着脱自在に取り付けられ、前端部には便座12や便蓋13が回動自在に取り付けられている。後カバー56は、上カバー55に着脱自在に係合され、さらに支持フレーム14にビスにより着脱自在に取り付けられている。両側の上のサイドカバー57は後カバー56と前パーツ51とに着脱自在に係合されている。両側の下のサイドカバー57は、後カバー56及び下フレーム材に磁石により着脱自在に取り付けられると共に上のサイドカバー57に着脱自在に係合されている。右側のサイドカバー57には、洗剤タンク81の供給口部812を露出させるための略矩形状の開口部58が設けられている。
【0024】
この開口部58には、上述のようにカバー体59が取り付けられている。
【0025】
カバー体59は、便器本体1側に開口した断面略コ字状をした箱体で構成されており、図1に示されるように、後述する洗剤タンク81の突出部811及び供給口部812が内部に収容された状態で便器本体1の側面部11に取り付けられる。カバー体59は、図2に示されるように、その開口下縁部590に設けられた回動手段591と、カバー体59を開放させる方向への回動範囲を規制する回動規制手段592と、カバー体59の閉塞状態を保持させる上係止部593とを備えている。
【0026】
この回動手段591は、図2に示されるように、便器本体1の側面部11の開口部58の開口下縁と係脱自在に係止する鉤状突出片594が、カバー体59の開口下縁に沿う方向に並ぶように複数箇所(本実施形態では2箇所)に設けられることで構成されている。この鉤状突出片594は、便器本体1側に突出する横片595と、横片595の突出先端から略鉛直下方に連設される縦片596とで構成されており、横片595と縦片596との下面側が滑らかに連続している。つまり、この鉤状突出片594を便器本体1の側面部11の開口部58の開口下縁上に載置するだけで、便器本体1の開口部58の下縁と鉤状突出片594との接点部分が支点となってカバー体59が上下(左右)方向に回動可能となる。
【0027】
回動規制手段592は、カバー体59の対向する開口側縁部のうち、前方側の側縁部に設けられており、カバー体59の回動範囲を所定の範囲内に規制する。この回動規制手段592は、カバー体59の開口側縁部から回動方向に沿って突設された腕片597と、該腕片597の突出先端部に設けられた回動規制片598とから構成されている。この回動規制片598は、腕片597と交差する方向の外方側に向けて突設されており、詳しくは、腕片597の先端部を略直交するように前方側に屈曲して成形される。回動規制片598は、カバー体59が開放側に回動され所定の位置まで回動されたところで、サイドカバー57の開口部58周縁の裏面(側面部11の裏側)に当接する。腕片597は、回動規制片598がサイドカバー57の裏面に当接した状態で、洗剤タンク81の供給口部812がカバー体59と便器本体1のサイドカバー57との間から露出するような長さで形成されている。
【0028】
このようにカバー体59は、便器本体1の側面部11に対し容易に着脱できるように取り付けられているが、鉤状突出片594にて開口部58の下縁に引っ掛けて取り付けただけであれば、不意にその係止が解除されてしまうことも考えられる。そのため本実施形態の便器装置は、不意にこのカバー体59が外れてしまわないための工夫がなされている。本実施形態の便器装置は、図12に示されるように、回動規制片598が上方へずれるのを防ぐ抜け止め突起582がサイドカバー57の裏面に設けられており、また、鉤状突出片594が上方へ外れるのを規制する抜け止め片583が開口部58下縁に設けられている。抜け止め突起582は、カバー体59が開放した状態において、回動規制片508の上端面に近接対向または当接するようにして設けられている。抜け止め片583は、開口部58下縁から上方に向けて突設された逆L字形状をしており、一方の鉤状突出片594の上方にその一部が当接又は近接対向するようになっている。カバー体59は、その回動中には抜け止め片583によって上方へのずれが規制され、開放時(カバー体59が開放しきった状態)には抜け止め突起582と抜け止め片583とによって上方へのずれが規制される。
【0029】
一方、カバー体59を便器本体1の側面部11から取り外すときは、カバー体59を、カバー体59が開放しきった状態から閉じる方向にやや回動させ、抜け止め突起582に対する回動規制片598の規制を解除したうえで、前後に傾けながら持ち上げる。すると、鉤状突出片594と抜け止め片583との間にあるあそびの存在と、抜け止め片583の微小な弾性変形とで、ある程度の力を加えるだけでカバー体59を取り外すことができる。
【0030】
上係止部593は、カバー体59の開口縁の上端部に便器本体1側に向けて突設されており、便器本体1の側面部11の開口部58の上縁の対応する部分に設けられた被係止部581(図11参照)に係脱自在に係止される。なお、図2中の符号599は、カバー体59の上端部に設けられた手掛かり部となっており、カバー体59を便器本体1に対して回動させるに当たっての手掛かりとなると共に、カバー体59が閉じた状態で手掛かり部599を下方に押圧すると、上係止部593と被係止部581との係止状態を容易に解除させる押圧部にもなっている。
【0031】
ここで、本実施形態のカバー体59は、以下のような変形例であってもよい。
【0032】
本変形例のカバー体59は、図3及び図4に示されるように、カバー体59の開口下縁部590に鉤状突出片594からなる回動手段591が設けられており、カバー体59の下面における鉤状突出片594に対向する部位に回動規制手段592が下方に向けて突設されている。この鉤状突出片594は、カバー体59の開口下縁部590の略中央部分に設けられており、図4に示されるように、カバー体59の開口下縁部590の略中央部分から便器本体1側に向けて突出しカバー体59の回動時の支点となる半円状の円弧部分594aと、カバー体59が開放した時に便器本体1の開口部58の内面の周縁の一部に当接する第1当接部594bと、カバー体59が閉塞した時に便器本体1の開口部58の内面の周縁の一部に当接する第2当接部594cとを有しており、これらが連続して形成されている。また、回動規制手段592は、突設された一対の突起部592aが前後方向(開口下縁部590に沿う方向)に離間することで構成されている。
【0033】
カバー体59が便器本体1の開口部58を閉じた状態では、図4(a)に示されるように、回動規制手段592の突起部592aの回動手段591側の縁部と、回動手段591の第2当接部594cとで便器本体1のサイドカバー57を挟持すると共に、上係止部593が被係止部581に係止され、カバー体59が閉塞状態で保持される。
【0034】
また、カバー体59を開放させると、図4(b)に示されるように、回動規制手段592の頂部と、回動手段591の第1当接部594bとで便器本体1のサイドカバー57を挟持し、カバー体59が開放状態に保持される。なお、このときのカバー体59の開放角度は、回動規制手段592の突起部592aの突出高さと第1当接部594bの角度とで任意に変更可能である。つまり、図1のように洗剤タンク81の供給口部812を露出できる最小限の開放角度にするようにしてもよいし、カバー体59を大きく開放させるように構成してもよい。
【0035】
トラップ部7は、図5に示されるように、ボウル部6の後部に配設されている。本実施形態のトラップ部7は、フレームに固設されたトラップケース71内に配設されると共に、一端部がボウル部6の後端部の排水部61に接続されたフレキシブルなトラップ筒72により構成されている。このトラップ部7は、いわゆるターントラップ方式のものであり、便器本体1に設けられた操作部(図示せず)を操作することで、図示しないモータを駆動させてトラップ筒72を回動させる。このとき、トラップ筒72は、ボウル部6に接続された側とは反対側の開口部を上向きとしたトラップ構造をなす状態と、前記開口部を下向きとし、トラップ構造を解除して排水がなされる状態とに選択可能に切り替えられる。トラップケース71は床に設けられた排水孔に連通し、トラップ筒72のトラップ構造を解除することで、ボウル部6内の溜め水がトラップ筒72とトラップケース71を介して排水孔から外部に排出される。
【0036】
トラップ部7は、通常時には、図6に示されるように、トラップ構造とされることで、ボウル部6内の下部及びトラップ筒72内部に洗浄水が溜まるような構造となっている。この状態で大便や小便が行なわれ、その後洗浄される。ボウル部6の洗浄に当たっては、ボウル部6内に洗浄水を流すと共にトラップ筒72を回動させ、トラップ状態を解除する。これにより、汚物と共に洗浄水をトラップケース71の排水孔を介して排水することができる。
【0037】
便器本体1に内装された洗浄水吐出装置4は、ボウル部6に洗浄水を吐出するために設けられている。この洗浄水吐出装置4には洗剤供給手段8が設けられており、この洗剤供給手段8により上水道からの水に洗剤を混合させ、洗浄水を生成する。
【0038】
洗浄水吐出装置4は、図6に示されるように、上水道からボウル部6上の空間に連通する洗浄水流路41を有しており、この洗浄水流路41には電磁弁からなる洗浄水開閉弁42が設けられている。この洗浄水開閉弁42を開放させると、洗浄水流路41の下流側の端部からボウル部6に洗浄水が吐出されるようになっており、他方、洗浄水開閉弁42を閉塞させると、洗浄水流路41の端部からの吐水が停止されるようになっている。
【0039】
洗浄水流路41の下流側の端部の洗浄水吐出口43は、ボウル部6の後部の一側端部からボウル部6の内側面の上部に沿って前方に臨んで設けられており、ボウル部6内に吐出した洗浄水を旋回流とさせる。
【0040】
洗浄水吐出装置4には、洗浄水に空気を混入すると共にこの空気を細分化して微細気泡を生成し、この微細気泡を洗浄水に含ませる図7のような微細気泡発生手段44が設けられている。微細気泡が混入された洗浄水は、嵩比重の低下による節水効果、洗浄水がボウル部6内面に衝突する際の摩擦低減による消音化や水跳ね防止効果があり、その上、旋回流となって微細気泡がボウル部6内壁に衝突して破裂する際に発生する衝撃波や気泡界面が有する吸着特性などによってボウル部6内壁に付着する汚物を強力に剥がして吸着できる気泡洗浄効果がある。
【0041】
微細気泡発生手段44は、図7に示されるように、洗浄水流路41に空気混入部45が設けられると共に、この下流にベンチュリー管状の圧力急変部48が設けられて成る管部により構成されている。空気混入部45は、洗浄水流路41の径を絞ったノズル部46の下流側の周辺に逆止弁を有する空気供給管47が接続されることで構成されており、ノズル部46から洗浄水が吐出されることで生じる負圧によって、空気を混入して洗浄水内に空気供給管47からの空気が混入される。
【0042】
圧力急変部48は、上流側から順に、径が徐々に絞られる縮径部481、絞られた径の咽喉部482、径が徐々に広がる拡径部483、と有しており、これらが連設された構造となっている。空気混入部45から混入した空気は、洗浄水が圧力急変部48を流れる際に、まず、縮径部481及び咽喉部482での内圧低下により膨張され、続けて、拡径部483での内圧上昇によりせん断力や衝撃波が作用して砕破されて微細化される。なお、微細気泡発生手段44としては、混入空気を洗浄水内に溶解させた後に析出させるタイプを用いることも可能である。
【0043】
洗剤供給手段8は、図6に示されるように、洗剤タンク81と、洗剤タンク81と洗浄水流路41に設けられた洗剤混合部85とを接続させる洗剤供給路82と、洗剤供給路82に設けられた洗剤用ポンプ83と、洗剤用開閉弁84とを備えている。
【0044】
洗剤タンク81は、図8のようなトラップケース71の一側面側(右側)に固設されたタンクホルダー9に着脱自在に保持されており、内部に洗剤が収容される。なお、洗剤タンク81の詳細については後述する。
【0045】
洗剤供給路82は、図6に示されるように、往路部821の始端部と復路部822の終端部とが洗剤タンク81に接続される循環経路部820と、循環経路部820の途中から分岐して循環水流路の洗剤混合部85に至る供給経路部823とを有している。洗剤用ポンプ83は循環経路部820(本実施形態は、循環経路部820の往路部821)に設けられている。洗剤用開閉弁84は供給経路部823の下流側に設けられている。
【0046】
洗剤用ポンプ83を駆動すると、洗剤タンク81内に貯溜された液体洗剤が循環経路部820を循環する。これにより、洗剤が洗剤供給路82内で固化等して詰まってしまうのが防止される。
【0047】
洗剤混合部85は、洗浄水流路41の流路径を絞って流れる洗浄水に負圧を発生させる部位となっており、本実施形態では前記咽喉部482が洗剤混合部85となっている。
【0048】
洗剤用開閉弁84は、洗剤混合部85で洗浄水の負圧がかかり、且つ洗剤用ポンプ83が駆動してポンプ圧がかかった場合に開くようになっており、一定量の洗剤を洗浄水内に混入させる。
【0049】
洗剤が混入された気泡入り洗浄水は、洗浄水流路41の下流側端部の洗浄水吐出口43からボウル部6内に吐出され、旋回流となってボウル部6内の内面に隈なく行き渡り、混入された洗剤により洗剤洗浄効果をボウル部6の内面に隈なく発揮させて効果的な洗浄を可能としている。また、洗浄水には洗剤(界面活性剤)が混入され、水の表面張力を低下させているため、微細気泡発生手段44により発生する微細気泡の径をmmオーダからμmオーダにまで小さくできる。ここで、μmオーダの微細気泡はmmオーダの微細気泡に比べて、格段に割れにくい性質を有している。このため、ボウル部6の洗浄後にボウル部6内にこの洗浄水が溜め水として残るが、このとき微細気泡を長期に亙って残留させることができて、溜め水の喫水線付近の汚れ付着防止効果を図ることができるようになっている。
【0050】
以下、洗剤タンク81及びこの周辺の構成につき詳述する。
【0051】
洗剤供給路82における往路部821の始端部及び往路部821の終端部は、それぞれ図8に示されるように、筒状の連結部31,32で構成されている。各連結部31,32はトラップケース71に取り付けられる接続具3に前後に並べて設けられている。
【0052】
洗剤タンク81を保持するタンクホルダー9は、底部91と、底部91のトラップケース71側の側端部に立設された側壁部92と、側壁部92の前後両端に突設され洗剤タンク81を両側で保持する被係合部93とを備えており、側壁部92をビスによりトラップケース71の外側面に固着し、連結部31,32の下方に配設される。この底部91と側壁部92と両被係合部93とで、上方及び便器外側方に向けて開口した保持部が構成されている。この保持部によって洗剤タンク81が着脱自在に保持される。
【0053】
洗剤タンク81は、内部に貯溜された液状の洗剤を外部から視認できるように透明又は半透明な材料で形成されている。洗剤タンク81は、図10に示されるように、平面視で略L字状に形成され、図9に示されるように、対応する下のサイドカバー57よりも便器内部に配置される内装部分810と、内装部分810の前部から便器外側方に向けて突出する突出部811とで構成されている。
【0054】
突出部811の上面部には洗剤を供給するための供給口部812が形成されている。この供給口部812は、洗剤タンク81が便器本体1に取り付けられた状態では、図1及び図9,10に示されるように、その供給口部812の軸線(中心軸線)819が、上側ほど便器から外側方に離れる方向に傾斜すると共に、上方ほど便器装置の手前側に向かうように傾斜している。
【0055】
この供給口部812の先端には、通常は、図9に示されるように、着脱自在の蓋816が設けられている。内装部分810の上面部の前部には、管c(図11参照)を介して洗剤タンク81内に連通する洗剤出口部817及び洗剤入口部818が設けられている。洗剤出口部817及び洗剤入口部818は便器内側方(左方)に向けて突出する接続継手からなり、対応する連結部に対して抜き差し自在に挿入される。
【0056】
このような洗剤タンク81を、トラップケース71に取り付けられたタンクホルダー9にて保持するには、対応する下のサイドカバー57を取り外した状態で、洗剤タンク81を底部91上に載置して側壁部92の外側面に沿わせると共に、各被係合部93を対応する洗剤タンク81の前後面に形成された係合部に着脱自在に係合する。それと同時に、洗剤出口部817及び洗剤入口部818を対応する連結部31,32に右側から挿入する。なお、洗剤出口部817及び洗剤入口部818の夫々は、Oリングを介して連結部31,32に挿入され、連結部31,32に対して水密的に連結される。また、前述の各被係合部93を係合部(図示せず)に係合したときには、作業者に対して係合時の適度な感触が付与され、これにより各被係合部93を対応する係合部に確実に係合できるようになっている。
【0057】
上記のように洗剤タンク81を循環経路部820に連結することで、洗剤タンク81内の洗剤を洗剤出口部817及び連結部31,32を介して循環経路部820に供給することが可能となり、また循環経路部820の洗剤を連結部31,32及び洗剤入口部818を介して洗剤タンク81内に戻すことが可能となる。この結果、前述のように洗剤タンク81内の洗剤を循環経路部820で循環させることができる。
【0058】
このように構成された便器装置において、便器本体1の側面部11に設けられたカバー体59を回動させて開くと、洗剤タンク81の供給口部812が便器本体1の側面部11から突出した状態で露出することになる。つまり、カバー体59を回動させて開くだけで、洗剤タンク81を取り外さなくても、供給口部812から洗剤タンク81に洗剤を補給可能な状態とさせることができる。また、洗剤を補充するに当たってカバー体59を回動させても、洗剤タンク81は便器本体1に固設されているため、洗剤タンク81と便器本体1との接続された部分は接続状態が維持される。つまり、便器本体1と洗剤タンク81との接続部分での部品劣化の問題が発生しにくくなる。
【0059】
また、カバー体59は、カバー体59に設けられた回動手段591が鉤状突出片594で構成されており、軸を有しない構造であるため、回動できるにもかかわらず容易に取り外すことができる。これにより、洗剤補充時に洗剤が漏れてカバー体59が汚れた場合であっても、カバー体59を簡単に取り外すことができて洗浄しやすく使い勝手がよい。また、軸を有しない構造であるため、従来必要であった軸によるコストを低減させることができる。
【0060】
また、カバー体59を開放させる方向への回動範囲を規制する回動規制手段592が設けられていることにより、便器本体1側面部11と、この便器本体1側面部11に対向するトイレルーム壁面との間の隙間が狭く設計されていた場合であっても、トイレルーム壁面にカバー体59が干渉するのを回避することも可能である。この結果、カバー体59の破損・損傷を防止することができる。
【0061】
その上、回動手段591や回動規制手段592はカバー体59に設けられているため、便器本体1側には開口部58が設けられるだけでよい。つまり、本実施形態のカバー体59を用いれば、既存の便器装置に対しても後付けで装着することができる。
【0062】
また、本実施形態の便器装置は、便器本体1の側面部11に抜け止め突起582が設けられているため、カバー体59を開放させた状態で洗剤タンク81に洗剤を補給する場合等に、不意にカバー体59が外れてしまうのを防止できる。
【0063】
また、本実施形態の便器装置は、便器本体1の側面部11に抜け止め片583が設けられているため、カバー体59を回動させているときにおいても、カバー体59が不意に外れてしまうのを防止することができる。
【0064】
なお、本実施形態の便器装置の吐出装置は、上述のようにロータンクレス方式となっているが、本発明はこのものに限定されず、ロータンクの貯溜水が開閉弁を介してボウル部6に供給されるようにした構成のものであってもよい。また、タンクレス方式の場合には、圧送ポンプにより洗浄水が供給されるようにしたものであってもよい。
【0065】
また、本実施形態の供給口部812は円筒により構成されていたが、本発明の供給口部は、例えば角筒であってもよく、特に限定されない。
【0066】
また、本実施形態の供給口部812は上側ほど便器装置から外側方に離れる方向に傾斜し且つ上方ほど便器装置の手前側に向かうように傾斜していたが、本発明の供給口部は、便器装置の側面部から突出していればよく、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 便器本体
11 側面部
13 便蓋
51 前パーツ
53 スカート部
55 上カバー
57 サイドカバー
58 開口部
59 カバー体
590 開口下縁部
591 回動手段
592 回動規制手段
593 上係止部
597 腕片
598 回動規制片
599 手掛かり部
6 ボウル部
811 突出部
812 供給口部
816 蓋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗剤タンクに貯溜された洗剤を水に混合した洗浄水によりボウル部の洗浄を行なうようにした便器装置において、
前記洗剤タンクが便器本体に固設され、
前記洗剤タンクに洗剤を供給するための供給口部が前記便器本体の側面部から突出するようにして設けられ、
前記便器本体側に開口した箱状のカバー体が前記供給口部を内部に収容した状態で前記側面部に設けられ、
前記便器本体に対して前記カバー体を開閉自在に支持する回動手段が設けられ、
前記カバー体を回動させて開くと前記洗剤タンクの供給口部が露出されることを特徴とする、便器装置。
【請求項2】
前記便器本体の側面部に略矩形状の開口部が設けられ、
前記供給口部が前記開口部から突出するようにして設けられ、
前記カバー体は前記開口部を閉塞するように設けられ、
前記回動手段は、前記カバー体の開口下縁部に設けられると共に前記側面部の開口部の開口下縁と係脱自在に係止する鉤状突出片で構成され、
前記カバー体を開放させる方向への回動範囲を規制する回動規制手段がカバー体に設けられている、請求項1記載の便器装置。
【請求項3】
前記回動規制手段は、
前記カバー体の開口側縁部から回動方向に沿って突設された腕片と、
この腕片の突出先端部に当該腕片と交差する方向外方に向けて突設され、前記カバー体が開放した状態で前記側面部の開口部周縁の裏側に当接する回動規制片と、
を備え、
前記側面部の開口部周縁の裏側に、前記カバー体開放時の回動規制片の上端面に対して、近接対向するまたは当接する抜け止め突起が設けられている、請求項2記載の便器装置。
【請求項4】
前記側面部の開口部周縁に、前記鉤状突出片の上方への外れを規制する抜け止め片が設けられている、請求項2または請求項3のいずれかに記載の便器装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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