説明

便器設備

【課題】金属イオンによる殺菌効果と、光照射による作用とが重畳した便器設備を提供することを目的とする。
【解決手段】ノズル30によって人体臀部を温水で洗浄するときには、ノズル30の噴出口36を上向きの状態とし、シリンダ32へ温水を供給し、ノズル本体34を前進させ、噴出口36から温水を上方に噴出させる。この際、銀イオン添加手段を作動させると、銀イオンを含んだ温水で臀部が洗浄され、銀イオン殺菌が行われる。この臀部洗浄に際し、UVLED38を点灯させ、反射面34aで反射した紫外線を臀部にあて、紫外線殺菌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水を流出させるノズルを備えた便器設備に係り、特に水に金属イオンを添加する手段と、紫外線などの光を照射する手段とを備えた便器設備に関する。
【背景技術】
【0002】
I.人体の臀部を温水で洗浄する温水洗浄装置において、水に銀イオンなどの金属イオンを添加することが特開2001−279780号、同2005−105741号に記載されている。
【0003】
II.便鉢内面に光触媒層を設け、便座に紫外線光源を設け、この紫外線光源からの紫外線を便鉢内面に当てて臭気成分を光触媒作用により分解することが実開平5−16881号の図4に記載されている。
【0004】
特開平11−71803号の図5,6には、便鉢内面に光触媒を保持させ、紫外線光源を便蓋の下面もしくは便器リムの下面に設けることが記載されている。
【0005】
特開2001−65035号公報の図5には、便鉢の底部(トラップ部)に紫外線殺菌灯を設けた便器が記載されている。また、同号公報の図7には、温水洗浄装置のノズルに向って紫外線を照射するように紫外線殺菌灯をノズルのカバー部に設けることが記載されている。
【特許文献1】特開2001−279780号
【特許文献2】特開2005−105741号
【特許文献3】実開平5−16881号
【特許文献4】特開平11−71803号
【特許文献5】特開2001−65035号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、金属イオンによる殺菌効果と、光照射による作用とが重畳した便器設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の便器設備は、水を流出させるノズルと、該ノズルに供給される水に金属イオンを添加する金属イオン添加手段とを有する便器設備において、該便器設備の少なくとも一部に対して光を照射するための発光体を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の便器設備は、請求項1において、該発光体は該ノズルの先端部から光を照射するように設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の便器設備は、請求項2において、該発光体は、該ノズル内又はそれよりも上流側に設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の便器設備は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ノズルは人体洗浄用のノズルであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の便器設備は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ノズルは便器、便座又は便蓋を洗浄するためのノズルであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
銀イオンなどの金属イオンを含んだ水が人体の臀部に当たれば殺菌作用を得ることができる。この金属イオンは光により活性化される。この活性化作用は、短波長光ほど強くなる。また、この水が便鉢等に当たれば、その表面や下流側のトラップや排水管などを清潔にすることができる。
【0013】
本発明では、光を照射するので、この光が紫外線(UV)であればそれにより殺菌効果を得ることができる。便器等に光触媒を設けておけば、光がUVでなくても光触媒作用により防汚効果を得ることができる。
【0014】
光をノズルから照射する場合、影の面積が小さくなる。発光体をノズル内又はそれよりも上流側に設けた場合には、ノズルから噴出する水に光を導波させ、光触媒作用及び金属イオンの殺菌作用を水の接触部位に及ぼすことができる。
【0015】
本発明によれば、便器、便座、便蓋を効率よく、上記作用で防汚ないし殺菌するよう構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係る便器設備を示す全体縦断面図、図2は温水洗浄装置のノズルを示す断面図である。
【0017】
図1において、洋風便器10の便鉢12の底部にトラップ14が設けられ、排水口16がこのトラップ14に後続して設けられている。便鉢12には、ロータンク20内の水が水路18を介して供給される。
【0018】
この洋風便器10の後部上面には便座ボックス22が設置され、便座24と便蓋26とが該便座ボックス22に対し上下方向回動自在に取り付けられている。便鉢12の内面と、便座24の下面、上面、内周面及び外周面と、便蓋26及び便座ボックス22の下面にはそれぞれ光触媒のコーティング層が設けられている。
【0019】
便座ボックス22内には、便器使用者の臀部を温水で洗浄するためのノズル30のほか、このノズル30用の温水タンクや、臀部を乾燥させるための温風ファン等が設置されている。この実施の形態では、さらに、このノズルへの給水に銀イオンを添加するための電解装置も該便座ボックス22内に設置されている。
【0020】
ノズル30は、シリンダ32と、該シリンダ32から前方に進出可能なノズル本体34と、ノズル本体34の先端の噴出口36と、シリンダ32内の後部に設けられたUVLED38と、該ノズル本体34を後退方向に付勢するリターンスプリング等を有する。ノズル本体34内の先端部には、UVLED38からの紫外線を噴出口36に向けて反射するための反射面34aが設けられている。ノズル本体34及びシリンダ32の外面及び内面には光触媒のコーティング層が設けられている。
【0021】
このノズル30は、ノズル支持装置50によって支持されている。このノズル支持装置50は、ノズル30の向きを上下左右方向に変えることができると共に、ノズル30をその軸心線回りに回動させ、噴出口36aからの水の噴出方向を上向きだけでなく横向き、斜め上向き、斜め下向き、下向きのいずれにもしうるようになっている。
【0022】
このように構成された便器設備において、ノズル30によって人体臀部を温水で洗浄するときには、ノズル30の噴出口36を上向きの状態とし、シリンダ32へ温水を供給し、図2のようにノズル本体34を前進させ、噴出口36から温水を上方に噴出させる。この際、銀イオン添加手段を作動させると、銀イオンを含んだ温水で臀部が洗浄され、銀イオン殺菌が行われる。この臀部洗浄に際し、UVLED38を点灯させ、反射面34aで反射した紫外線を臀部にあて、紫外線殺菌してもよい。なお、UVにより銀イオンが活性化され、殺菌作用が強化される。
【0023】
このように人体に紫外線を当てるときには、紫外線の波長は340〜380nm程度であることが望ましい。温水供給を停止すると、リターンスプリングの付勢力によりノズル本体34が後退する。ノズル本体34が後退した状態にあっては、UVLED38は消灯していることが望ましい。
【0024】
UVLED38から便鉢12の内面等に紫外線を照射する場合には、まずノズル30の噴出口が下向きとなるようにノズル30を回転させた後、ノズル30に温水を供給してノズル本体34を前進させると共に、UVLED38に通電する。UVLED38からの紫外線が反射面34aで反射され、噴出口36から外部に照射される。これにより、便鉢12の内面の下面に直接的に紫外線が照射される。また、溜水面や便鉢12の内面で反射した紫外線が便鉢26や便座24に照射される。この紫外線照射により、殺菌作用が奏されると共に、光触媒が励起し、有機物分解作用(防汚作用)が奏される。さらに、銀イオンによって殺菌作用が奏されると共に、UVにより銀イオンが活性化され、殺菌作用が強化される。また、銀イオンを添加したノズル噴出水を便鉢12の内面に注ぎかけることにより、便鉢12の内面に銀イオンを付着させ、殺菌効果を与えることができる。
【0025】
この便鉢12の内面への紫外線照射を行う場合、ノズル3の噴出口36の方向を斜め下向きとしてもよい。また、左斜め下向き、下向き、右斜め下向きの間で揺動するように連続的に向きを変えてもよい。このようにすれば、便鉢内面の広い範囲に紫外線を照射することができる。また、便鉢12の内面や溜水面で反射した紫外線が便座24、便蓋26の広い範囲に照射される。
【0026】
なお、銀イオン添加手段、発光体にはそれぞれON,OFF制御装置が設けられている。その結果、銀イオンの溶出のみの場合、発光のみの場合があり得る。
【0027】
上記のノズル30は、シャワーノズルであってもよく、ビデノズルであってもよい。
【0028】
ノズル30は、水圧による前進駆動方式以外のものであってもよい。例えば、エアー圧駆動方式や、モータ駆動方式、リニア駆動方式、あるいはこれらの複合式のものなどであってもよい。水圧によらない方式の場合、ノズル30から温水を噴出させることなく、紫外線のみを照射することができる。
【0029】
図1では、便器にロータンク20が設置されているが、ロータンクカバーを備えた機種や、ロータンクのない機種の便器にも本発明を適用することができる。
【0030】
図1,2ではUVLED38をノズル30に設けているが、それよりも上流側に設けてもよい。図3,4はそれぞれそのような実施の形態を示す系統図である。
【0031】
図3,4では、ノズル30Aとして、ノズル30からUVLEDを取り外した他は同一構成のものを用いている。
【0032】
図3では、このノズル30Aの給水口に対し、水が電解ユニット40、配管42、温水タンク44及び配管46を介して導入される。電解ユニット40には、銀イオンを水中に溶解させるための電極41が設けられている。温水タンク44には、ヒータ44aとUVLED38とが設けられている。このUVLED38からの紫外線は、水によって導波されてノズル30A内に導入され、ノズル本体34の噴出口から外部に照射される。
【0033】
図4では、電解ユニット40が省略され、代りに温水タンク44Aに銀イオン添加用電極41が設けられている。この場合も、UVLED38からの紫外線は、水によって導波されてノズル30A内に導入され、ノズル本体34の噴出口から外部に照射される。
【0034】
上記実施の形態では光触媒を用いているので、紫外線の代わりに可視光を発光させてもよい。ただし、紫外線を照射することにより光触媒反応がより十分に進行すると共に、銀イオンが活性化される。
【0035】
本発明では、ノズルからの水を便座や便蓋に注ぎかけてこれらを洗浄するようにしてもよい。この場合、金属イオン、光照射を組み合わせることにより、それぞれの効果に加え、金属イオンを光で活性化させる作用も奏される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態に係る便器設備の縦断面図である。
【図2】図1の便器設備の温水洗浄装置のノズルの断面図である。
【図3】別の実施の形態に係る便器設備の給水系統図である。
【図4】さらに別の実施の形態に係る便器設備の給水系統図である。
【符号の説明】
【0037】
10 洋風便器
12 便鉢
14 トラップ
20 ロータンク
22 便座ボックス
24 便座
26 便蓋
30 ノズル
32 シリンダ
34 ノズル本体
36 噴出口
38 UVLED
44 温水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を流出させるノズルと、該ノズルに供給される水に金属イオンを添加する金属イオン添加手段とを有する便器設備において、該便器設備の少なくとも一部に対して光を照射するための発光体を設けたことを特徴とする便器設備。
【請求項2】
請求項1において、該発光体は該ノズルの先端部から光を照射するように設けられていることを特徴とする便器設備。
【請求項3】
請求項2において、該発光体は、該ノズル内又はそれよりも上流側に設けられていることを特徴とする便器設備。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ノズルは人体洗浄用のノズルであることを特徴とする便器設備。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ノズルは便器、便座又は便蓋を洗浄するためのノズルであることを特徴とする便器設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−39988(P2007−39988A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225631(P2005−225631)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】