説明

便器

【課題】 種々の形状の便器に対応できるようにして汎用性を向上させ、容器を回転させることで容器の内面を少量の洗浄液で確実に洗浄できるようにし省力化を図る。
【解決手段】 汚物を受け上端開口2及び下端開口3を有する略逆錘形の容器1と、容器1を回転可能に支持する支持体10と、容器1を回転駆動する駆動部30と、容器1の内面1aを洗浄する洗浄手段とを備え、容器1を可撓性のシート状部材で形成して開口の形状が真円でなくてもこれに追従して形状を変化させることができるようにし、容器1の上端開口2縁をガイド部20で覆ってガイドし、洗浄手段を、容器1の内面1aに向けて洗浄液を噴射する洗浄液噴射装置40を備えて構成するとともに、容器1の上端開口2から下端開口3に亘る稜線に沿って延在し、容器1の内面1aを払拭する払拭部材51を有した払拭機構50を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚物を受ける容器を回転可能にして容器の内面の洗浄を確実に行なうことができるようにした便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便器としては、特許文献1記載の技術が知られている(特開昭57−201437号公報参照)。
図7に示すように、この便器Baは、着座タイプの便器であり、汚物を受ける上端開口101及び下端開口102を有する断面円形で略逆錘形の容器100と、容器100を覆う外筒104と、容器100を外筒104に対して回転可能に支持する伸縮螺旋105と、容器100内に水を噴射して容器100の内面を洗浄する洗浄装置106とを備えている。また、容器100の上端開口101には、使用者が座る体重受輪107が配置され、この体重受輪107と容器100の上端開口101に設けた鍔部との間にはスラスト球108が配列されている。
【0003】
そして、使用の際に、使用者が体重受輪107に座ると、その体重で体重受輪107が伸縮螺旋105を縮め、使用後に立ち上がると、縮まった伸縮螺旋105の旋回反転回転作動が起こり、容器100が自動的に反転回転させられる。この状態で、洗浄装置106からの洗浄液で容器100の内面を洗浄し、洗浄液を汚物とともに容器100の下端開口102から排出するようにしている。この洗浄の際には、容器100が回転するので洗浄液が容器100の内面に満遍なく行き渡り、洗浄が確実に行なわれるとともに、洗浄液が少なくても洗浄が可能になり省力化が図られる。
【0004】
【特許文献1】特開昭57−201437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の便器Baにおいては、容器100の断面が円形であるので、種々の形状、例えば、男子トイレ用便器のように開口が卵形(涙形あるいは舌形などとも表現できる)の異型のものなど、種々の形状の便器に対応できないという問題があった。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、種々の形状の便器に対応できるようにして汎用性を向上させ、容器を回転させることで容器の内面を少量の洗浄液で確実に洗浄できるようにし省力化を図った便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明の技術的手段は、汚物を受け上端開口及び下端開口を有する略逆錘形の容器と、該容器を回転可能に支持する支持体と、上記容器を回転駆動する駆動部と、上記容器の内面を洗浄する洗浄手段とを備えた便器において、上記容器を可撓性のシート状部材で形成した構成としている。
【0007】
これにより、この便器を使用するときは、例えば、使用者が用を済ませた後、容器を回転させるとともに洗浄手段により洗浄を行なう。この場合、容器は可撓性のシート状部材で形成されているので、開口の形状が真円でなくても、これに追従して形状を変化させることができ、回転にも対応できるようになる。その結果、種々の形状の便器に対応できるようになり、汎用性が向上させられる。
容器が回転するので、容器内面を満遍なく洗浄することができ、そのため洗浄が確実に行なわれる。
【0008】
そして、必要に応じ、上記支持体を、上記容器の下端部を回転可能に支持する下端支持部を備えて構成している。容器は下端支持部に支持されているので、下からの支持になることから支持が安定する。
この場合、上記容器の下端部に軸部を形成し、上記支持体の下端支持部を、上記軸部を回転可能に保持する軸受部を設けて構成したことが有効である。容器はその軸部が軸受部に軸支されて支持されるので、軸支されることから回転が円滑に行なわれる。
【0009】
また、必要に応じ、上記容器の上端開口縁を覆ってガイドするガイド部を設けた構成としている。容器は、可撓性のシート状部材で形成されているので、上端開口縁がガイド部にガイドされ、例えば卵型などの異形の開口であっても、この形状を保持した状態で回転が行なわれる。即ち、開口の形状が真円でなくても、これに追従して形状を変化させるようガイドができ、確実に回転に対応させることができる。
【0010】
更に、必要に応じ、上記駆動部を、上記容器の上端開口縁部を挾持する一対のローラと、該ローラを回転させる電動モータとを備えて構成している。容器の上端開口縁部を挾持する一対のローラにより回転を行なうので、装置が比較的簡易であり、また、ローラで挾持することから確実に容器を回転させることができる。
【0011】
更にまた、上記洗浄手段を、上記容器の内面に向けて洗浄液を噴射する洗浄液噴射装置を備えて構成している。容器を回転させることから、洗浄液が満遍なく容器内面に行き渡り、そのため洗浄が確実に行なわれる。また、容器を回転させることから、洗浄液の量を多くしなくても良く、洗浄液だけで洗浄する場合に比較して大幅に少なくて済み、水資源の節約をすることができ、それだけ省力化が図られる。
【0012】
また、必要に応じ、上記洗浄手段を、上記容器の内面を払拭する払拭部材を有した払拭機構を備えて構成している。
容器内面を払拭部材によって払拭するので、より一層確実に容器内面を洗浄することができる。特に、容器内面の払拭により、尿石の付着が防止されるので、容器内面を清浄な状態に保持することができるようになる。
【0013】
そして、必要に応じ、上記払拭部材は、上記容器の内面側で該容器の上端開口から下端開口に亘る稜線に沿って延在する構成としている。容器の回転により、払拭部材に容器内面を払拭させることができる。
この場合、上記払拭部材を上記容器の稜線に沿う回転軸を有した回転体で構成したことが有効である。払拭部材は回転するので、容器内面との接触頻度が増し、それだけ、確実に内面を清浄にすることができる。
更に、この場合、上記払拭機構を、上記容器の上端開口側で上記回転軸の一端を軸支する一端軸受部と、上記容器の下端開口側で上記回転軸の他端を軸支する他端軸受部と、上記回転軸を回転駆動する電動モータとを備えて構成したことが有効である。支持を確実にして強制的に回転させ、確実に内面を清浄にすることができる。
【0014】
そしてまた、必要に応じ、上記払拭部材を、上記容器の内面側で該容器の上端開口から下端開口に亘る稜線に沿って移動可能にし、上記払拭機構に上記払拭部材を移動駆動する移動駆動部を備えた構成としている。払拭部材を小さくして容器内面を払拭することができ、払拭部材の容器内での露出度を少なくすることができ、使用時に汚物が払拭部材にぶつかって飛散してしまう事態が防止される。また、露出度が少ないことから見栄えも向上させられる。
【0015】
また、必要に応じ、上記払拭部材を、上記容器外の退出位置から該容器の内面側で該容器の上端開口から下端開口に亘る稜線に沿って移動可能にし、上記払拭機構に上記払拭部材を移動駆動する移動駆動部を備えた構成としている。払拭部材を容器外の退出位置に位置させることができるので、使用時に払拭部材を退出させておけば、汚物が払拭部材にぶつかって飛散してしまう事態が防止される。また、払拭部材を退出させておけば、容器内に露出しないことから見栄えも向上させられる。
【0016】
この場合、上記払拭部材の退出位置において該払拭部材を収容し洗浄液に浸漬する液槽を設けたことが有効である。退出位置において払拭部材を清浄化でき、そのため、容器の払拭を確実に行なうことができるようになる。尚、液槽内の洗浄液は、適時に交換するようにすればよい。
【0017】
また、必要に応じ、上記払拭機構に、上記容器の内面側で該容器の上端開口から下端開口に亘る稜線に沿って延在し上記払拭部材をガイドするガイドレールを備えた構成としている。移動駆動部により、払拭部材をガイドレールに沿って移動させるので、払拭部材の移動が確実に行なわれ、払拭を確実に行なうことができる。
【0018】
そしてまた、必要に応じ、上記支持体に、上記容器の下端開口から流出する汚物を排出する排出管を備えて構成し、該排出管に排出ポンプを介装した構成としている。
これにより、下端開口へ流下した汚物は容器の下端開口に溜まろうとするが、排出ポンプも作動しているので、この排出ポンプにより吸引されて外部に排出されていく。この場合、汚物が比較的高速で強制的に圧送される。そのため、汚物の流速が速いので、排出管内に尿石が付着しにくく尿石の堆積による排出管の詰りが防止され、排出管が尿石の堆積で詰まった際に行なわれる高圧洗浄を行なう必要がなくなる。その結果、メンテナンスにかかる費用を軽減することができる。また、排出ポンプが設置されているので、汚物を高い場所に圧送することもでき、汚物の投棄場所が遠距離であっても使用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の便器によれば、容器は可撓性のシート状部材で形成されているので、開口の形状が真円でなくても、これに追従して形状を変化させることができ、回転にも対応できるようになる。その結果、種々の形状の便器に対応できるようになり、汎用性が向上させられる。
また、洗浄手段を、容器の内面に向けて洗浄液を噴射する洗浄液噴射装置を備えて構成した場合には、容器を回転させることから、洗浄液が満遍なく容器内面に行き渡り、そのため洗浄が確実に行なわれる。また、容器を回転させることから、洗浄液の量を多くしなくても良く、洗浄液だけで洗浄する場合に比較して大幅に少なくて済み、水資源の節約をすることができ、それだけ省力化が図られる。
更に、容器内面を払拭機構の払拭部材によって払拭するようにすれば、より一層確実に容器内面を洗浄することができる。特に、容器内面の払拭により、尿石の付着が防止されるので、容器内面を清浄な状態に保持することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る便器について詳細に説明する。
図1乃至図4に示すように、本発明の実施の形態に係る便器Bは、男性用小便器であり、腰掛けて使用する便座タイプのものに比較して開口が小さく、汚物としての尿を確実に受けるように前に伸びた形状になっている。
本発明の実施の形態に係る便器Bの基本的構成は、汚物を受け上端開口2及び下端開口3を有する略逆錘形の容器1と、容器1の上端開口2を開放させて容器1の外側を覆う外装体5と、容器1を回転可能に支持する支持体10と、容器1を回転駆動する駆動部30と、容器1の内面1aを洗浄する洗浄手段としての洗浄液噴射装置40及び払拭機構50とを備えている。
【0021】
容器1は、可撓性のシート状部材で形成されている。この容器1の材質は、例えば、フッ素樹脂や塩化ビニル等の樹脂であり、通常の状態で略逆錘形の形状を保持できる例えば厚さが1〜2mm程度に形成されている。
容器1の下端部には、下端開口3を構成する円筒状の軸部4が形成されている。
【0022】
支持体10は、外装体5内に設けられ、容器1の下端部の軸部4を回転可能に支持する下端支持部11を備えて構成されている。支持体10の下端支持部11は、支持台12(図4)と、支持台12上に設けられ軸部4を回転可能に保持する円筒状の軸受部13とを備えて構成されている。軸受部13の下端は閉塞されており、軸部4に流れ込む液体が溜まるように形成されている。軸受部13には、軸部4に摺接可能に嵌合し、尿や洗浄液等の液体が漏れるのを防止するパッキン14が設けられている。
【0023】
また、図4に示すように、支持台12には、軸受部13及び軸部4内に突設された凸条体15が設けられている。この凸条体15には、その側面に汚物及び洗浄液が排出される排出口16が形成されるとともに、この排出口16に連通する汚物の排出路17が形成されている。汚物及び洗浄液は、排出口16から排出路17を通って外部に排出される。
【0024】
更に、外装体5の上側には、容器1の上端開口2縁を覆ってガイドするガイド部20が設けられている。ガイド部20は、図4に示すように、上端開口2が入り込む断面略U字状に形成されている。そして、容器1の回転により、容器1の上端開口2縁はガイド部20にガイドされてガイド部20内を摺接する。
ガイド部20の外形は、図1及び図3に示すように、卵形(涙形あるいは舌形などとも表現できる)に形成されており、この結果、容器1の上端開口2も撓んでこのガイド部20の外形に倣った形状を呈する。即ち、容器1は可撓性のシート状部材で形成されているので、開口の形状が真円でなくても、これに追従して形状を変化させることができ、回転に対応できる。
【0025】
駆動部30は、容器1の上端開口2縁部を挾持する一対のローラ31と、ローラ31を回転させる電動モータ32とを備えて構成されている。電動モータ32は例えばDC12Vのモータが使用される。ローラ31及び電動モータ32は図示外の支持部材により外装体5に支持されている。
【0026】
洗浄手段としての洗浄液噴射装置40は、容器1の内面1aに向けて洗浄液を噴射するノズル41を備えて構成されている。洗浄液噴射装置40は、外装体5上部に設けたタンク42から電動ポンプ43で洗浄液を送給する。電動ポンプ43は例えばDC12Vの電動モータ(図示せず)で駆動される。ノズル41は、容器1の上端開口2の内面1aに向けて洗浄液を噴射する位置に設けられている。
【0027】
また、洗浄手段としての払拭機構50は、容器1の内面1a側で容器1の上端開口2から下端開口3に亘る稜線に沿って延在し、容器1の内面1aを払拭する払拭部材51を備えて構成されている。この払拭部材51は、容器1の稜線に沿う回転軸52を有した回転体53で構成されている。払拭部材51としては、スポンジ,ブラシ等が用いられる。
【0028】
この払拭機構50において、図4に示すように、外装体5には、容器1の上端開口2側で払拭部材51の回転軸52の一端を軸支する一端軸受部54が設けられ、支持体10には、容器1の下端開口3側で回転軸52の他端を軸支する他端軸受部55が設けられている。具体的には、他端軸受部55は、凸条体15の上部に形成されている。また、払拭部材51の回転軸52を回転駆動する電動モータ56が、一端軸受部54に付設されている。回転軸52を回転駆動する電動モータ56は例えばDC12Vのモータが使用される。
【0029】
また、容器1の下端開口3から流出する汚物及び洗浄水を排出する排出管60が上記の凸条体15の排出路17に接続されている。排出管60の内径は例えば10〜20mmの例えばフッ素樹脂製の継ぎ目が無い管が使用される。この排出管60には、排出ポンプ61が介装されている。排出ポンプ61は例えばDC12Vの電動モータ(図示せず)で駆動される。
【0030】
上記のDC12Vの各電動モータは、人体に対しての感電の危険が少なく、太陽光発電または風力発電での使用も可能である。また、電圧及びヘルツに関係なく使用できる。
そして、小型の発電機や自動車等の外部からの発電機があれば、発電機と便器Bの設置距離に関係なく使用できる。
【0031】
また、実施の形態に係る便器Bにおいては、便器Bの前に使用者が来たことを検知するとともに、使用者が用を済ませ、便器Bから立ち去ったことを検知するセンサ(図示せず)と、このセンサの検知に基づいて、駆動部30の電動モータ32,洗浄液噴射装置40の電動ポンプ43の電動モータ,払拭機構50の電動モータ56及び排出ポンプ61の電動モータを駆動する制御部(図示せず)を備えている。駆動のタイミングは適宜に定めてよい。
【0032】
従って、この実施の形態に係る便器Bによれば、センサが、便器Bの前に使用者が来たことを検知するとともに、使用者が用を済ませ、便器Bから立ち去ったことを検知すると、例えばその後一定時間、駆動部30の電動モータ32,洗浄液噴射装置40の電動ポンプ43の電動モータ,払拭機構50の電動モータ56及び排出ポンプ61の電動モータを駆動する。
これにより、洗浄液噴射装置40から例えば約10ml位の洗浄液が容器1の内面1aに向けて噴射されるとともに、容器1が回転を始めると同時に、払拭部材51も回転を始める。
【0033】
この場合、容器1は下端支持部11に支持されているので、下からの支持になることから支持が安定するとともに、容器1はその軸部4が軸受部13に軸支されて支持されるので、軸支されることから回転が円滑に行なわれる。また、容器1は、可撓性のシート状部材で形成されているので、上端開口2縁がガイド部20にガイドされて卵型の開口を保持した状態で回転が行なわれる。ガイド部20でガイドすることから、上端開口2縁の形状を確実に保持できる。
また、この容器1を回転させる駆動部30は、容器1の上端開口2縁部を挾持する一対のローラ31により行なうので、装置が比較的簡易であり、また、ローラ31で挾持することから確実に容器1を回転させることができる。
【0034】
そして、洗浄液が容器1の上から下へ向けて流れていき、この過程で、容器1の回転と、回転体53の回転により、容器1の内面1aが洗浄され、汚物及び洗浄液は容器1の下端開口3へ流れていく。
この場合、容器1が回転するので、洗浄液が満遍なく容器1の内面1aに行き渡り、そのため洗浄が確実に行なわれる。また、容器1の内面1aは、払拭部材51によって払拭もされるので、確実に容器1の内面1aを洗浄することができる。特に、容器1の内面1aの払拭により、尿石の付着が防止されるので、容器1の内面1aを清浄な状態に保持することができるようになる。また、払拭部材51は回転するので、容器1の内面1aとの接触頻度が増し、それだけ、確実に内面1aを清浄にすることができる。
更にまた、容器1を回転させるとともに払拭部材51で払拭することから、それだけ、洗浄液の量を多くしなくても良く、洗浄液だけで洗浄する場合に比較して大幅に少なくて済み、水資源の節約をすることができ、それだけ省力化が図られる。また、水洗トイレの水を流した音と比較して、洗浄時に生じる音は非常に静かである。
【0035】
下端開口3へ流下した汚物及び洗浄液は容器1の下端開口3に溜まろうとするが、排出ポンプ61も作動しているので、この排出ポンプ61により吸引されて外部に排出されていく。
この場合、排出管60の内径は10mm〜20mm位と比較的細いので、汚物及び洗浄液が比較的高速で強制的に圧送される。そのため、汚物の流速が速いので、排出管60内に尿石が付着しにくく尿石の堆積による排出管60の詰りが防止され、排出管60が尿石の堆積で詰まった際に行なわれる高圧洗浄を行なう必要がなくなる。その結果、メンテナンスにかかる費用を軽減することができる。
また、排出ポンプ61が設置されているので、汚物を高い場所に圧送することもでき、汚物の投棄場所が遠距離であっても使用できる。
【0036】
また、このような実施の形態に係る便器Bにおいては、容器1を可撓性のシート状部材で形成したので、容器1が汚れたり、キズや破損が生じた場合に簡単に容器1を取り外して取り替えることができる。更に、容器1は可撓性のシート状部材で製造されているので、陶器等で製造されているものに比較して、便器B全体が軽量となり移動や便器Bの取り付けが容易となり、振動に対しても強い構造となる。
【0037】
図5には、本発明の別の実施の形態に係る便器Bを示している。この便器Bは、上記実施の形態とは、払拭機構50の構成を異にする。この払拭機構50において、払拭部材51は、内部に錘(図示せず)が入れられたブロック状のブラシで構成されており、容器1外の退出位置Xから容器1の内面側で容器1の上端開口2から下端開口3に亘る稜線に沿って移動可能になっている。退出位置Xは、容器1の上端開口2に隣接した位置に設けられている。この払拭部材51の退出位置Xには、払拭部材51を収容し洗浄液に浸漬する液槽70が設けられている。71はダンパであり液槽70を所定のタイミングで開閉する。
【0038】
また、払拭機構50には、容器1の内面側で容器1の上端開口2から下端開口3に亘る稜線に沿って延在し払拭部材51をガイドするガイドレール72が備えられている。このガイドレール72は、ワイヤで構成され、上記の凸条体15と、容器1外部の外装体5との間に張設されている。
そして、払拭機構50には、払拭部材51を移動駆動する移動駆動部73が備えられている。この移動駆動部73は、一端が払拭部材51に止着され他端側がロール74に巻回されるワイヤ75と、ロール74を正逆回転させてワイヤ75を送出し巻き戻しするモータ76とを備えて構成されている。モータ76は、容器1の上端開口2上方で外装体5に設けられている。
【0039】
これにより、払拭部材51は、退出位置Xにおいて、液槽70に入れられ、必要時にダンパ71が開かれた状態でモータ76の駆動によりワイヤ75が巻き戻されることにより液槽70から引き上げられ、ダンパ71が閉じられた状態でモータ76の駆動によりワイヤ75が送出されることによりダンパ71上をスライドさせられて容器1内に至りガイドレール72に沿って容器1の上端開口2から下端開口3に向けて移動させられ、容器1を払拭する。払拭終了後は、払拭部材51は、ダンパ71が閉じられた状態でモータ76の駆動によりワイヤ75が巻き戻されることによりガイドレール72に沿って容器1の下端開口3から上端開口2に向けて移動させられダンパ71上をスライドさせられてダンパ71の上部に位置させられ、ダンパ71が開かれた状態でモータ76の駆動によりワイヤ75が送出されることにより液槽70内に引き下げられこれに入れられる。
【0040】
従って、この実施の形態に係る便器Bによれば、例えば、以下のような制御により、洗浄が行なわれる。常時は、払拭部材51は、退出位置Xにおいて、液槽70に入れられている。この状態で、人が便器Bを使用する。この場合、人感センサで人が便器Bの前に立ち止まったことを感知する。この使用の際には、払拭部材51は、容器1内にはなく、露出していないことから、使用時に汚物が払拭部材51にぶつかって飛散してしまう事態が防止される。また、露出していないことから見栄えも向上させられる。
【0041】
次に、人感センサが放尿を済ませ立ち去りを確認すると、モータ76が始動して一定のところまで払拭部材51を巻き戻し停止させる。それから、ダンパ71が斜め上方向に上がり液槽70の入口を閉の状態にする。次に、モータ76が逆転し払拭部材51を一定のところまで下降させる。また、容器1が回転を始め、払拭部材51がガイドレール72に沿い中心部に向かって回転に合わせたスピードで下降し一定の所で止まる。この場合、払拭部材51はガイドレール72に沿って移動させられるので、払拭部材51の移動が確実に行なわれ、払拭を確実に行なうことができる。
払拭が終わると容器1は回転を停止しモータ76により払拭部材51を巻揚げ一定の所で停止させる。それから、ダンパ71が開き、モータ76が逆転し払拭部材51を降下させるとともに液槽70内に収納し終了となる。この場合、退出位置Xにおいて払拭部材51を清浄化でき、そのため、容器1の払拭を確実に行なうことができるようになる。
【0042】
図6には、本発明のまた別の実施の形態に係る便器Bを示している。この便器Bは、上記実施の形態とは、払拭機構50の構成を異にする。この払拭機構50において、払拭部材51は、ブロック状の筒状の可撓性ブラシで構成されており、容器1外の退出位置Xから容器1の内面側で容器1の上端開口2から下端開口3に亘る稜線に沿って移動可能になっている。退出位置Xは、容器1の上端開口2に隣接した位置に設けられている。この払拭部材51の退出位置Xには、払拭部材Xを収容し洗浄液に浸漬する液槽70が設けられている。
【0043】
また、払拭機構50には、容器1の内面側で容器1の上端開口2から下端開口3に亘る稜線に沿って延在し払拭部材51をガイドするガイドレール72が備えられている。このガイドレール72は、Cチャンネル状の部材であり、全体が略U字状に折曲形成され、凸条体15に一端が固定され、他端が液槽70内に至っている。払拭部材51の両端部にはこのガイドレール72に摺動可能に挿通されるリング部77が設けられ、このリング部77の挿通により、払拭部材51はガイドレール72に沿って移動可能になっている。
【0044】
そして、払拭機構50には、払拭部材51を移動駆動する移動駆動部80が備えられている。この移動駆動部80は、ガイドレール72内に配設され一端が払拭部材51のリング部77に止着され他端側が液槽70内に至るとともに、液槽70内に配設されたスプロケット81に噛合しこのスプロケット81の回転により進退動させられるチェーン82と、スプロケット81を正逆回転させてチェーン82を進退動させるモータ83とを備えて構成されている。これにより、払拭部材51は、退出位置Xにおいて、液槽70に入れられ、必要時にモータ83の駆動によりスプロケット81を介してチェーン82が進出させられることにより液槽70から引き上げられて容器1内に至りガイドレール72に沿って容器1の上端開口2から下端開口3に向けて移動させられ、容器1を払拭する。払拭終了後は、払拭部材51は、モータ83の駆動によりスプロケット81を介してチェーン82が後退させられることによりガイドレール72に沿って容器1の下端開口3から上端開口2に向けて移動させられ液槽70内に入れられる。従って、この実施の形態に係る便器Bにおいても、別の実施の形態に係る便器Bと同様の作用,効果を奏する。
【0045】
尚、本発明の実施の形態においては、例えば、容器1に絵を印刷し子供用便器Bに使用することにより、子供が1人で喜んで便器Bを利用するように促すことができる便器Bにして良い。
また、便器Bの後側に上下にモータによりスライドするレールを設け、スイッチによる簡単な操作で便器Bを使用者の身長に応じて高さを調節できる便器Bにしても良い。
更に、容器1の内側面に可視光動作光触媒を使用し、洗浄効果を向上させても良い。
更にまた、排出管60を樹脂製、例えば、フッ素樹脂等で細く蛇腹状に製造されたものを使用して良い。
【0046】
尚また、上記実施の形態において、払拭部材51を回転させるようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ブラシや、自動車のワイパーブレードのようなものを用い固定タイプにしても良い。
また、ガイド部20により容器1の上端開口2をガイドするようにしたが、必ずしもこれに限定されず、容器1の中間部をガイドするように構成しても良く、適宜変更して差支えない。
更に、上記実施の形態においては、本発明を男性用便器Bに適用したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、便座型の便器B等どのようなタイプの便器Bに本発明を適用して良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る便器を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る便器を示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る便器を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る便器を示す断面図である。
【図5】本発明の別の実施の形態に係る便器を示す断面図である。
【図6】本発明のまた別の実施の形態に係る便器を示し、(a)は断面図、(b)は(a)中Y−Y線断面図である。
【図7】従来の便器の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
B 便器
1 容器
1a 内面
2 上端開口
3 下端開口
4 軸部
5 外装体
10 支持体
11 下端支持部
12 支持台
13 軸受部
14 パッキン
15 凸条体
16 排出口
17 排出路
20 ガイド部
30 駆動部
31 ローラ
32 電動モータ
40 洗浄液噴射装置(洗浄手段)
41 ノズル
42 タンク
43 電動ポンプ
50 払拭機構(洗浄手段)
51 払拭部材
52 回転軸
53 回転体
54 一端軸受部
55 他端軸受部
56 電動モータ
60 排出管
61 排出ポンプ
X 退出位置
70 液槽
71 ダンパ
72 ガイドレール
73 移動駆動部
74 ロール
75 ワイヤ
76 モータ
77 リング部
80 移動駆動部
81 スプロケット
82 チェーン
83 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受け上端開口及び下端開口を有する略逆錘形の容器と、該容器を回転可能に支持する支持体と、上記容器を回転駆動する駆動部と、上記容器の内面を洗浄する洗浄手段とを備えた便器において、
上記容器を可撓性のシート状部材で形成したことを特徴とする便器。
【請求項2】
上記支持体を、上記容器の下端部を回転可能に支持する下端支持部を備えて構成したことを特徴とする請求項1記載の便器。
【請求項3】
上記容器の下端部に軸部を形成し、上記支持体の下端支持部を、上記軸部を回転可能に保持する軸受部を設けて構成したことを特徴とする請求項2記載の便器。
【請求項4】
上記容器の上端開口縁を覆ってガイドするガイド部を設けたことを特徴とする請求項1,2または3記載の便器。
【請求項5】
上記駆動部を、上記容器の上端開口縁部を挾持する一対のローラと、該ローラを回転させる電動モータとを備えて構成したことを特徴とする請求項1,2,3または4記載の便器。
【請求項6】
上記洗浄手段を、上記容器の内面に向けて洗浄液を噴射する洗浄液噴射装置を備えて構成したことを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の便器。
【請求項7】
上記洗浄手段を、上記容器の内面を払拭する払拭部材を有した払拭機構を備えて構成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の便器。
【請求項8】
上記払拭部材は、上記容器の内面側で該容器の上端開口から下端開口に亘る稜線に沿って延在することを特徴とする請求項7記載の便器。
【請求項9】
上記払拭部材を上記容器の稜線に沿う回転軸を有した回転体で構成したことを特徴とする請求項8記載の便器。
【請求項10】
上記払拭機構を、上記容器の上端開口側で上記回転軸の一端を軸支する一端軸受部と、上記容器の下端開口側で上記回転軸の他端を軸支する他端軸受部と、上記回転軸を回転駆動する電動モータとを備えて構成したことを特徴とする請求項9記載の便器。
【請求項11】
上記払拭部材を、上記容器の内面側で該容器の上端開口から下端開口に亘る稜線に沿って移動可能にし、上記払拭機構に上記払拭部材を移動駆動する移動駆動部を備えたことを特徴とする請求項7記載の便器。
【請求項12】
上記払拭部材を、上記容器外の退出位置から該容器の内面側で該容器の上端開口から下端開口に亘る稜線に沿って移動可能にし、上記払拭機構に上記払拭部材を移動駆動する移動駆動部を備えたことを特徴とする請求項7記載の便器。
【請求項13】
上記払拭部材の退出位置において該払拭部材を収容し洗浄液に浸漬する液槽を設けたことを特徴とする請求項12記載の便器。
【請求項14】
上記払拭機構に、上記容器の内面側で該容器の上端開口から下端開口に亘る稜線に沿って延在し上記払拭部材をガイドするガイドレールを備えたことを特徴とする請求項11,12または13記載の便器。
【請求項15】
上記支持体に、上記容器の下端開口から流出する汚物を排出する排出管を備えて構成し、該排出管に排出ポンプを介装したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13または14記載の便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−28949(P2006−28949A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211323(P2004−211323)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(593046599)旭エンジニアリング株式会社 (2)
【出願人】(504002964)
【出願人】(504002975)
【Fターム(参考)】