説明

便器

【課題】ボウル部を下方から支持しにくい便器デザインであっても、ボウル部を長期間に亘って安定に支持できるように工夫した便器を提供する。
【解決手段】スカート部1と、スカート部1の内部に配置されるボウル部2と、スカート部1の上部に接合されるリム部3とに3分割された便器であって、スカート部1の内部に、ボウル部2の裏面に沿うボウル受け部6bを形成したボウル支持部材6を配置することにより、ボウル支持部材6のボウル受け部6bでボウル部2の裏面2bを支持できるので、ボウル部2を下方から支持しにくい便器デザインであっても、スカート部1の内部に収まる範囲内でボウル支持部材6の形を任意に変えることで、ボウル部2を長期間に亘って安定に支持できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3分割タイプの便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4(a)(b)に示すように、スカート部1と、スカート部1の内部に配置されるボウル部2と、スカート部1の上部に接合されるリム部3とに3分割された合成樹脂製の便器がある(特許文献1参照)。
【0003】
そして、図4(c)に示すように、リム部3を上辺部3aと内辺部3bとで形成して、スカート部1の上端部1aをリム部3の上辺部3aの下面に当接させて接合するとともに、ボウル部2の上端部2aをリム部3の内辺部3bの底部3cに接合するものを本出願人が先に提案している。
【特許文献1】特許第3436004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記のような3分割タイプの便器において、ボウル部を下方から支持しにくい便器デザインである場合には、ボウル部を長期間に亘って安定に支持しにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、ボウル部を下方から支持しにくい便器デザインであっても、ボウル部を長期間に亘って安定に支持できるように工夫した便器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、スカート部と、スカート部の内部に配置されるボウル部と、スカート部の上部に接合されるリム部とに3分割された便器であって、前記スカート部の内部に、ボウル部の裏面に沿うボウル受け部を形成したボウル支持部材を配置したことを特徴とする便器を提供するものである。
【0007】
耐衝撃性をより向上させるために、前記ボウル支持部材は、金属製であることが好ましい。
【0008】
便器全体を軽量化するために、前記ボウル支持部材は、中空状であることが好ましい。
【0009】
寒冷地における便器内の残水の凍結を防止するために、前記ボウル支持部材の中空部分に、温水を供給若しくはヒータを収納することが好ましい。
【0010】
尿水等の当たり音を減衰するために、前記ボウル支持部材の少なくとも一部を制振材で形成していることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スカート部の内部に配置したボウル支持部材のボウル受け部でボウル部の裏面を支持するようにしたから、ボウル部に作用する垂直方向の衝撃荷重と水平方向の衝撃荷重とに対する耐衝撃性が向上するとともに、スカート部に対するボウル部の支持が安定して、接合時の位置ズレが発生しにくくなる。また、ボウル部を下方から支持しにくい便器デザインであっても、スカート部の内部に収まる範囲内でボウル支持部材の形を任意に変えることで、ボウル部を長期間に亘って安定に支持できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、背景技術と同一構成・作用の箇所は、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0013】
図1(a)は便器の側面断面図、図1(b)はボウル支持部材6の斜視図、図2(a)はスカート部の平面断面図、図2(b)は図2(a)のI−I線断面図、図2(c)は図2(b)のII−II線断面図である。
【0014】
図1(a)において、スカート部1の内部にボウル部2が配置されるとともに、スカート部1の上部にリム部3が接合されている。このリム部3は、上辺部3aと内辺部3bとで形成して、スカート部1の上端部1aをリム部3の上辺部3aの下面に当接させて接合するとともに、ボウル部2の上端部2aをリム部3の内辺部3bの底部3cに接合している。
【0015】
スカート部1の内部には、ボウル部2の裏面2bに沿うボウル受け部6bを形成した柱状構造のボウル支持部材6を配置している。このボウル支持部材6は、便器の設置フロアに置かれ、平面視がU字形状のベース部6aと、このベース部6aの上方に配置され、ベース部6aよりも長さが短く、平面視がU字形状のボウル受け部6bと、ベース部6aとボウル受け部6bとを上下方向に連結する複数本(本例では5本)の柱状部6cとで構成されている。そして、ボウル受け部6bにボウル部2の下部を上方から嵌め合わせることで、ボウル受け部6bでボウル部2の裏面2bを支持するようにしている。
【0016】
このように、スカート部1の内部に配置したボウル支持部材6のボウル受け部6bでボウル部2の裏面2bを支持することにより、図1(a)のように、ボウル部2に作用する垂直方向の衝撃荷重Vと水平方向の衝撃荷重Hとに対する耐衝撃性が向上するとともに、スカート部1に対するボウル部2の支持が安定して、接合時の位置ズレが発生しにくくなる。
【0017】
また、ボウル部2を下方から支持しにくい便器デザインであっても、スカート部1の内部に収まる範囲内でボウル支持部材6の形を任意に変えることで、ボウル部2を長期間に亘って安定に支持できるようになる。
【0018】
ボウル支持部材6は、強化繊維材料を有する合成樹脂製であっても良いが、金属製とすれば、耐衝撃性がより向上するようになる。
【0019】
また、ボウル支持部材6は、中実丸棒材を接合したものであっても良いが、パイプ材を接合したものとすれば、便器全体を軽量化できるようになる。さらに、パイプ材であれば、パイプベインダー等による加工も容易になる。なお、中実丸棒材やパイプ材以外に、断面T字状材やI字状材とすることもできる。
【0020】
このように、ボウル支持部材6をパイプ材とすれば、図2(b)に示したように、ボウル支持部材6に温水タンク7を接続することで、ボウル支持部材6の中空部分に温水を供給することにより、寒冷地における便器内の残水の凍結を防止できるようになる。なお、ボウル支持部材の中空部分にヒータを収納しても、同様に残水の凍結を防止できるようになる。
【0021】
さらに、ボウル支持部材6のボウル受け部6b(ボウル支持部材6の少なくとも一部に相当する。)を制振材(例えばマグネシウム材)で形成すれば、特にボウル部の表面(洗浄面)の後方側において、特に男性の尿水等〔図2(b)の矢印a参照〕が当たりやすい部分の振動が抑制されて当たり音を減衰できるようになる。
【0022】
ボウル支持部材6は、スカート部1と別体である必要は無く、スカート部1にインサートモールドすることで、スカート部1と一体化することもできる。
【0023】
図3(a)は別実施形態のスカート部の平面図、図3(b)は図3(a)のIII−III線断面図、図3(c)は図3(b)のIV−IV線断面図であり、図3(a)(b)に仮想線で輪郭とハッチングを示したように、ボウル支持部材6のボウル受け部6bに、ボウル部2の裏面2bに沿う略半球形状の制振材8を配置している。この制振材8は、ボウル部2の裏面2b側の全面に配置する必要は無く、少なくともボウル部の貯水面(喫水面)Lの付近だけ、好ましくは、貯水面(喫水面)L以下に位置するように配置する。
【0024】
このように、ボウル支持部材6のボウル受け部6bに制振材8を配置することにより、制振材8でボウル部2の裏面全体を支持できるので、ボウル支持部材6によるボウル部2の支持がより安定するようになる。
【0025】
また、制振材8によって、特にボウル部2の表面(洗浄面)の後方側において、尿水等〔図3(a)の矢印a参照〕が当たりやすい部分における当たり音を減衰できるようになる。
【0026】
さらに、制振材8を少なくともボウル部2の貯水面(喫水面)L以下の位置とすることにより、制振材8が保温性(若しくは断熱性)を有すれば、寒冷地における便器内の残水の凍結を防止することができる。
【0027】
制振材8を例えばマグネシウム材(金属材)とすることにより、耐衝撃性がより向上するようになる。
【0028】
また、マグネシウム制振材8をチクソーモールドにより成形することにより、ボウル部2の裏面2bに隙間無く密着するような3次元形状で成形できるようになるので、より制振性が向上するようになる。
【0029】
前記実施形態において、便器は、スカート部1とボウル部2とリム部3とに少なくとも3分割された合成樹脂製の成形品であり、これらを溶着により接合して一体化した構造である。成形方法としては、射出成形、圧縮成形、真空成形等がある。成形材料としては、比較的強度があるアクリル系樹脂、補強材入りABSやPBT等を使用することができる。なお、ボウル部2は、陶器製や金属製であって可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る便器であり、(a)は側面断面図、(b)はボウル支持部材の斜視図である。
【図2】(a)はスカート部の平面図、(b)は(a)のI−I線断面図、(c)は(b)のII−II線断面図である。
【図3】(a)は別実施形態のスカート部の平面図、(b)は(a)のIII−III線断面図、(c)は(b)のIV−IV線断面図である。
【図4】従来の便器であり、(a)は分解斜視図、(b)は斜視図、(c)は側面断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 スカート部
2 ボウル部
2b 裏面
3 リム部
6 ボウル支持部材
6a ベース部
6b ボウル受け部
6c 柱状部
7 温水タンク
8 制振材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカート部と、スカート部の内部に配置されるボウル部と、スカート部の上部に接合されるリム部とに3分割された便器であって、
前記スカート部の内部に、ボウル部の裏面に沿うボウル受け部を形成したボウル支持部材を配置したことを特徴とする便器。
【請求項2】
前記ボウル支持部材は、金属製であることを特徴とする請求項1に記載の便器。
【請求項3】
前記ボウル支持部材は、中空状であることを特徴とする請求項1または2に記載の便器。
【請求項4】
前記ボウル支持部材の中空部分に、温水を供給若しくはヒータを収納することを特徴とする請求項3に記載の便器。
【請求項5】
前記ボウル支持部材の少なくとも一部を制振材で形成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の便器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−255159(P2007−255159A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84423(P2006−84423)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】