説明

便器

【課題】ケーシングに対する化粧板の取り付け信頼性を高める。
【解決手段】便器は、便器本体10とケーシング20と化粧板60とを備える。化粧板60の内面には装着部72が形成され、ケーシング20の外面には装着部72と対応して装着受け部35が形成されている。装着部72には、撓み可能な弾性係止部75が突出して形成されているとともに、弾性係止部75と並んで案内部74が突出して形成されている。装着受け部35には、化粧板60の取り付け時に、弾性係止部75に弾性的に係止される係止受け部37が形成されているとともに、係止受け部37と並んで案内部74が適合して嵌る案内受け部41が形成されている。この場合に、案内部74の突端は、弾性係止部75の突端よりも突出した位置に配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、便器本体の後部に、機能部を収容可能なケーシングが取り付けられているとともに、このケーシングの外側に、後部側面を覆うように化粧板が取り付けられた便器が開示されている。化粧板の内面には、断面C字状の弾性係止部を有する装着部が突出して形成され、ケーシングの外面には、装着部と対応する位置に、円柱状の係止受け部を有する装着受け部が形成されている。また、化粧板の内面には、装着部よりも下方に、爪状片が形成され、ケーシングの外面には、爪状片が上方から嵌る係合溝が形成されている。
【0003】
ケーシングに化粧板を取り付ける際には、係合溝に爪状片を引掛けた状態で、化粧板を便器本体側に押し付けるようにする。すると、弾性係止部が係止受け部の外周面を摺動して拡開したあと係止受け部を弾性的に抱持し、もってケーシングに化粧板が取り付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−213860(第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の便器では、化粧板の取り付け誤差等に起因し、装着部が不正な姿勢をとったまま装着受け部との係止動作を開始することがあった。そうすると、弾性係止部が過剰に拡開変形して折損・破損するおそれがあり、また弾性係止部が折損等しないまでも、化粧板がケーシングに対して正規の取り付け位置からずれた状態で取り付けられるおそれがあった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ケーシングに対する化粧板の取り付け信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、便器本体と、この便器本体の後部に取り付けられ、機能部を収容可能なケーシングと、前記ケーシングに外側から取り付けられ、後部側面を覆うように配される化粧板とを備え、前記化粧板の内面には装着部が形成され、前記ケーシングの外面には前記装着部と対応して装着受け部が形成されている便器であって、
前記装着部と前記装着受け部のいずれか一方には、撓み可能な弾性係止部が突出して形成されているとともに、前記弾性係止部と並んで案内部が突出して形成されており、
他方には、前記化粧板の前記ケーシングへの取り付け時に、前記弾性係止部に弾性的に係止される係止受け部が形成されているとともに、前記案内部が適合して嵌る案内受け部が形成されており、
前記案内部の突端は、前記弾性係止部の突端よりも突出した位置に配されているところに特徴を有する。
【0008】
本発明の便器によれば、案内部の突端が弾性係止部の突端よりも突出した位置に配されているから、ケーシングに化粧板を取り付ける際に取り付け誤差があったとしても、まず案内部が案内受け部に適合して嵌ることで装着部の取り付け姿勢が矯正され、その状態で弾性係止部が弾性受け部を正確に係止することになる。したがって、ケーシングに化粧板が位置ずれすることなく取り付けられ、ケーシングに対する化粧板の取り付け信頼性が高められる。
【0009】
また、外部からの異物が案内部の突端に当接しても弾性係止部の突端には非当接とされ得るため、弾性係止部が異物との干渉によって破損するのを回避できる。
【0010】
この場合、化粧板は、ケーシングに対して一端側を支点として回動され、その回動完了位置にて弾性係止部が係止受け部を弾性的に係止するものであって、装着部と装着受け部との間の取り付け誤差を吸収する誤差吸収手段を有していることが好ましい。
【0011】
このように、化粧板がその一端側を支点に回動されてケーシングに取り付けられる場合には、装着部と装着受け部との係止方向を化粧板の回動方向である円弧に沿わせることが求められ、装着部と装着受け部との間で取り付け誤差が生じやすいという事情がある。その点、本発明によれば、誤差吸収手段によって装着部と装着受け部との取り付け誤差が吸収されるため、装着部と装着受け部との係止位置のずれが防止される。
【0012】
また、弾性係止部は、対をなす係止片を有し、両係止片は、その先端部間の開口を通して内側に係止受け部を導入し、導入された前記係止受け部を弾性的に挟持するようになっており、両係止片の先端部には、先端に向けて拡開する誘い込み部が形成されていることが好ましい。
【0013】
こうすると、誘い込み部によって係止受け部が両係止片に誘い込まれて挟持されるから、装着部と装着受け部との取り付け誤差が吸収される。
【0014】
また、装着部と装着受け部の少なくともいずれか一方は、相手側から取り外し可能な別体の部材とされ、相手側への取り付け状態において上下方向及び幅方向への遊動が許容されていることが好ましい。
【0015】
これによれば、装着部と装着受け部との取り付け誤差が相手側(化粧板・ケーシング)に対する別体の部材の上下方向及び幅方向への遊動によって吸収される。この場合、別体の部材と相手側とを別々に成形できるため、別体の部材が複雑な形状であってもそれに対応することができる。
【0016】
また、弾性係止部は、化粧板に形成されるものであって対をなす係止片を有し、両係止片は、その先端部間の開口を通して内側に係止受け部を導入し、導入された係止受け部を弾性的に挟持するようになっており、両係止片の開口方向は、前記両係止片が係止受け部との係止動作を開始する直前に係止受け部と適正に向き合うよう、化粧板の基準面と直角な面に対して傾斜する方向に設定されていることが好ましい。
【0017】
これにより、両係止片と係止受け部とが係止動作を開始する直前に適正に向き合うから、両係止片が係止受け部との係止動作によって過大な応力を受けるのを回避でき、ひいては両係止片が折損・破損するのを回避できる。なお、化粧板の基準面とは、化粧板の内面のうち弾性係止部に対応する部分のことをいう。
【0018】
この場合、装着部は、化粧板から取り外し可能な別体の部材とされ、両係止片の開口方向を誤った状態で化粧板に取り付けられるのを規制する逆装防止構造を有していることが好ましい。
【0019】
これによれば、装着部が化粧板から取り外し可能な別体の部材であっても、逆装防止構造によって両係止片の開口方向を誤ることはないから、装着部を化粧板に正しく取り付けることができる。
【0020】
ここで、案内部には逆装防止部が形成され、化粧板には逆装防止受け部が形成されており、装着部が化粧板に対して正規の取り付け姿勢をとる場合には、逆装防止部と逆装防止受け部とが互いに凹凸嵌合してその取り付け動作が許容される一方、装着部が化粧板に対して不正な取り付け姿勢をとる場合には、逆装防止部と逆装防止受け部とが互いに非対応の位置に配されてその取り付け動作が規制されることが好ましい。
【0021】
このような構成であれば、装着部の化粧板への取り付けの可否によって装着部の状態を正確に知ることができる。しかも、案内部が逆装防止機能と案内機能の両機能を兼備しているから、両機能が別々の部分で構成される場合と違って、装着部全体をコンパクトにできる。
【0022】
また、この便器によれば、弾性係止部は、対をなす係止片を有し、両係止片は、その先端部間の開口を通して内側に係止受け部を導入し、導入された係止受け部を弾性的に挟持するようになっており、係止受け部の外周面は、両係止片の先端部が係止動作の過程で摺動する摺動面を有し、この摺動面に両係止片が摺動することで、両係止片の先端部間が拡開するようになっており、摺動面は、両係止片の先端部が進入する側に向けて細く突出する形状をなしていることが好ましい。
【0023】
こうすると、両係止片が摺動面を摺動したときに、両係止片の先端部間の拡開量が急激に大きくなることがないから、両係止片と係止受け部との間に取り付け誤差があっても、両係止片が係止受け部から過大な応力を受けるのを回避でき、ひいては両係止片が折損・破損するのを回避できる。
【0024】
また、この便器によれば、弾性係止部は、案内部を挟んだ両側に配されていることが好ましい。
【0025】
このように、弾性係止部が複数箇所に設置されることにより、弾性係止部の係止受け部への係止強度が高められる。しかも、この構成によれば、各弾性係止部と案内部との間の距離を小さくできるので、案内部が案内受け部に適合して嵌るときに、取り付け誤差等に起因して弾性係止部と係止受け部との係止位置がずれるのを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1に係る便器の斜視図である。
【図2】化粧板が装着される前の便器の側面図である。
【図3】化粧板の外側から見た側面図である。
【図4】化粧板の一部破断正面図である。
【図5】化粧板の内側から見た側面図である。
【図6】受け孔内に挿入される前の突片部の側面図である。
【図7】受け孔内に挿入されて抜け止めされた突片部の正面から見た側面図である。
【図8】先端側が受け孔内に挿入された突片部の正面から見た断面図である。
【図9】回動開始位置において受け孔内に挿入された突片部の正面から見た断面図である。
【図10】回動完了位置において受け孔内に挿入された突片部の正面から見た断面図である。
【図11】回動開始位置において係止受け部を係止する前の弾性係止部の正面から見た正面図である。
【図12】係止受け部に当接した弾性係止部の正面図である。
【図13】回動完了位置において係止受け部を係止した弾性係止部の正面図である。
【図14】化粧板に取り付けられた装着部の下方から見た断面図である。
【図15】化粧板に取り付けられる過程の装着部の側方から見た断面図である。
【図16】化粧板に取り付けられる直前の装着部の側方から見た断面図である。
【図17】化粧板に取り付けられた装着部の側方から見た断面図である。
【図18】実施例2に係る便器において、装着部及び装着受け部の正面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0028】
実施例1の便器は、水洗式便器である便器本体10と、便器本体10の後部に取り付け固定され、機能部を収容するケーシング20と、ケーシング20に取り付け固定され、便器本体10の後部両側面を覆うように配される化粧板60とを備えている。便器本体10は便鉢11を有している。
【0029】
機能部は、図示はしないが、局部洗浄装置、温風乾燥装置、脱臭装置、便器洗浄装置、便座・便蓋開閉装置、人体検知装置及びこれらを制御する制御装置等によって構成されている。
【0030】
ケーシング20は合成樹脂製であって、図1及び図2に示すように、カバー本体21、ベースプレート22及び下カバー23によって構成され、その外面には、側方から化粧板60が被せ付けられる。
【0031】
ベースプレート22は、便器本体10の後部上面にボルト締め等して固定されている。そして、ベースプレート22には、上記の各種装置からなる機能部が設置され、機能部を覆うようにして上方からカバー本体21は被せ付けられる。カバー本体21には、便座15及び便蓋16が開閉可能に取り付けられている。
【0032】
また、ベースプレート22の後部には、ファンモータ等の収容空間を画成する立板部24が立ち上げ形成されている。立板部24は、上下方向に開放された形状をなし、左右の側板25、背板26及び前板27によって構成されている。側板25の内面には、図6に示すように、互いに一定間隔をあけて上下方向に延びる前後の第1リブ28と、両第1リブ28間のほぼ中央に位置して両第1リブ28とほぼ平行に配される第2リブ29とが形成されている。また、側板25の内部には、第1、第2リブ28、29の内端同士を連ねるとともに側板25の内面とほぼ平行に配される架橋板30が形成されている。
【0033】
第1、第2リブ28、29、架橋板30及び側板25によって取り囲まれる内側には、後述する突片部63が下方から挿入される受け孔31が構成されている。受け孔31の下端部には、下方に向けて拡開する拡開部32が形成され、この拡開部32によって突片部63の受け孔31内への誘い込みがなされる。拡開部32の一部は架橋板30で構成され、図8に示すように、架橋板30はその上端から下端にかけて側板25から離れるようにやや傾倒して配されている。
【0034】
第1リブ28には、受け孔31内に挿入された突片部63を係止可能な掛止部33が形成されている。図6に示すように、前側の掛止部33は、前側の第1リブ28の後端縁を段付き状に切り欠いて形成され、後側の掛止部33は、後側の第1リブ28の上端面に形成されている。
【0035】
そして、ベースプレート22の下端部には、受け孔31を挟んだ前後両側に、一対の垂下部34が下方へ突出して形成されている。両垂下部34には、化粧板60の上端部が外側から当接可能とされている。また、ベースプレート22の下方には洗浄水の水圧を増すための図示しないブースターが設置され、下カバー23はこのブースターの周りを取り囲みつつベースプレート22の後部に垂下して取り付けられている。
【0036】
下カバー23の左右の側外面には、図2に示すように、後述する装着部72を受ける装着受け部35が形成されている。装着受け部35は、図11に示すように、下カバー23の側外面の下端部から外側に突出するとともに前後方向に延びる板状の延出部36と、延出部36の突端に沿って前後方向に延びるとともに中空環状に膨出される係止受け部37とからなる。
【0037】
係止受け部37の外周面のうち、内側の半円部分は、真円弧状の円弧面部38とされ、外側の半円部分は、後述する弾性係止部75が進入する側である前方へ向けて次第に細くなりながら突出する略山型の凸曲面部39とされている。凸曲面部39は、弾性係止部75の先端部が摺動可能な摺動面とされている。
【0038】
係止受け部37の上方及び両側方は門型枠状の庇部40によって覆われ、延出部36及び係止受け部37の前後両端は庇部40の両側壁に一体に連結されている。また、図2に示すように、係止受け部37の前後方向略中央部には、後述する案内部74を嵌合可能な案内受け部41が切り欠き形成されており、延出部36及び係止受け部37は、案内受け部41を挟んだ前後両側に分断して配されている。
【0039】
続いて化粧板60について説明すると、化粧板60は、下カバー23を外側から覆うようにしてケーシング20に取り付けられ、上端部がベースプレート22の下端部に位置決めされて下端部が下カバー23から離間して配される回動初期位置と、上端部の位置決め状態が保たれつつ下端部が下カバー23に近接して配される回動完了位置とに、上端部を支点として回動可能とされている。
【0040】
図1に示すように、回動完了位置では、その前端縁が便器本体10の後端縁に全長に亘ってほぼ隙間なく接するとともに、その上端縁がベースプレート22の下端縁に全長に亘ってほぼ隙間なく接するようになっている。図3及び図4に示すように、化粧板60は、便器本体10の側外面と対応して湾曲状に沿った形状をなし、化粧板60の前端縁は上端へ向けて次第に前方へ突出するようなオーバーハング状をなし、化粧板60の上端縁はベースプレート22の下端縁に沿ってほぼ水平に延びる形状をなしている。化粧板60の後部上端側には、図2に示すように、ケーシング20に設置されたスピーカー90と対応する位置に、多数の横長スリット孔61が上下方向及び前後方向に形成されている。
【0041】
また、化粧板60の後部上端縁には、図4に示すように、ケーシング20への取り付け時にベースプレート22の下端縁に当接されるステージ部62が内側に突出して形成され、ステージ部62の上面には、突片部63が上方へ突出して形成されている。
【0042】
突片部63は、図8に示すように、根元側にあってステージ部62の上面から立ち上がる第2片部64と、先端側にあって第2片部64とは異なる起立角度で立ち上がる第1片部65と、第1、第2片部64、65間にあって両者を連結する屈曲部66とによって構成されている。
【0043】
突片部63の略中央には、図6に示すように、第1片部65の略全長に亘って延びるとともに上端に開口する受け溝67が形成されており、ケーシング20への取り付け時に、受け溝67内に第2リブ29が嵌合するようになっている。第2片部64の外側面には、上下方向に延びる一対の補強リブ68が前後に間隔をあけて形成されている。
【0044】
また、突片部63の両端側には、第1片部65の略全長に亘って延びるとともに上端に開口する一対のスリット溝69が形成され、両スリット溝69の外側に、一対の弾性片70が形成されている。弾性片70の先端部には、係止爪71が外側に突出して形成されている。受け孔31内への挿入過程では、係止爪71が第1リブ28を摺動して弾性片70がスリット溝69内に撓み変形され、突片部63が受け孔31内に正規挿入されるに伴い、弾性片70が弾性復帰して係止爪71が掛止部33を引掛け状態で係止し、もって突片部63の受け孔31からの抜け出しが規制されるようになっている。
【0045】
また、第2片部64は、化粧板60の上端縁に対して90度以下の所定の起立角度で内側へ傾斜して配され、第1片部65は、化粧板60の上端縁に対して90度以下ではあるが第2片部64よりも大きい起立角度で内側へ傾斜して配されている。したがって、回動初期位置から回動完了位置にかけて、下カバー23に対する化粧板60の開き角度を第1、第2片部64、65の各起立角度に会うように徐々に小さくすることにより、受け孔31内に突片部63を無理なく差し込むことが可能となっている。
【0046】
さて、化粧板60の内面には、回動完了位置にて装着受け部35を係止する装着部72が形成されている。装着部72は、突片部63よりも下方にあって、化粧板60の内面における上下方向略中央部でかつ後端寄りの位置に配されている。
【0047】
そして、装着部72は、化粧板60から取り外し可能であって化粧板60とは別体の部材とされ、化粧板60がPP樹脂(ポリプロピレン樹脂)で構成されているのに対し、装着部72はPP樹脂よりも軟質のナイロン樹脂で構成されている。詳しくは、装着部72は、図5に示すように、前後方向に細長い矩形状の支持板73と、支持板73の略中央部から内側へ突出する案内部74と、案内部74を挟んだ両側であって支持板73の両端側から内側へ突出する一対の弾性係止部75とを有している。支持板73は、図11に示すように、化粧板60への取り付け時に、対向する化粧板60の内面と略平行に配される板面を有している。この対向する化粧板60の内面は、化粧板60の基準面76に相当するものである。
【0048】
案内部74は、支持板73の全高に亘る大きさの四角筒状をなし、図14に示すように、その突端が閉止端とされている一方、その基端が支持板73を貫通する開口端とされている。化粧板60が回動完了位置に至ると、案内部74は、案内受け部41に適合して嵌合され、幅方向への遊動を規制された状態に位置決めされるようになっている。案内部74の上壁には、内外方向に延びて支持板73の外面に開口するスリット77が形成されている。
【0049】
弾性係止部75は、図11に示すように、前後方向に延びるとともに支持板73の内面から突出する上下一対の係止片78を有し、両係止片78の先端部間が開放された断面略C字形をなしている。回動完了位置に至る過程では、両係止片78の先端部間から内側に係止受け部37が導入され、それに伴って両係止片78の先端が係止受け部37の凸曲面部39を摺動して弾性的に拡開変形される。その後、回動完了位置に至ると、両係止片78の先端側が係止受け部37の円弧面部38側に廻り込むとともに、両係止片78が係止受け部37を外側から弾性的に抱持し、もって装着部72が装着受け部35を係止するようになっている。
【0050】
両係止片78の先端部には、先端へ行くにしたがって外側に拡開する誘い込み部79が形成されている。この誘い込み部79は、化粧板60の回動動作に起因する装着部72と装着受け部35との取り付け誤差を吸収し、弾性係止部75内に係止受け部37を確実に導入する役割を果たす。
【0051】
そして、誘い込み部79の先端、つまり弾性係止部75の突端は、案内部74の突端よりも化粧板60側へ引っ込んだ位置に配され、言い換えれば、案内部74の突端は、弾性係止部75の突端よりも化粧板60側から離れるように突出した位置に配されている。したがって、弾性係止部75が係止受け部37との係止動作を開始するのに先立って、案内部74が案内受け部41に適合して嵌合されるようになっている。
【0052】
また、弾性係止部75は、支持板73の内面に対してやや下向きの姿勢で接続されており、両係止片78の先端部間の開口方向は、化粧板60の基準面76と直角な面Sに対してやや斜め下方を向くように設定されている。これにより、弾性係止部75と係止受け部37とが係止動作を開始する直前に、弾性係止部75が係止受け部37に対して正規の係止姿勢で向き合うことが可能となり、両係止片78が係止受け部37から過大な応力を受けるのを回避でき、ひいては両係止片78が折損・破損するのを回避できるようになっている。なお、案内部74の突出方向は、化粧板60の基準面76と直角な面Sに対して平行な方向に向けられている。
【0053】
化粧板60の内面には、図5に示すように、装着部72を受ける取付受け部80が一体に形成されている。取付受け部80は、支持板73の両側縁部が摺接可能に嵌合される一対のレール部81と、両レール部81間の両側に位置して両レール部81に連結される板片状の一対の第1突状部82と、両レール部81間のほぼ中央に位置する板片状の第2突状部83とを有している。装着部72は、図15に示すように、取付受け部80に下方からスライドして取り付けられ、その取り付け過程では、図16に示すように、支持板73の中央部が第1突状部82に弾性的に乗り上げられつつ支持板73の両側縁部がレール部81内を摺動する一方、正規に取り付けられるに伴い、図17に示すように、支持板73が下側規制部を乗り越えて取付受け部80内にスナップ嵌合されるようになっている。この取り付け状態では、取付受け部80内における装着部72の上下方向及び幅方向への遊動が許容されており、これにより、装着部72と装着受け部35との間の取り付け誤差が吸収されて、弾性係止部75に過剰な応力が発生しないようになっている。
【0054】
また、装着部72の取付受け部80への取り付け状態では、レール部81の上端閉止面に支持板73の両端上縁部が当接して、装着部72の上方への抜けが規制されるとともに、第1突状部82に支持板73の両側下縁部が当接して、装着部72の下方への抜けが規制され、かつスリット77内に第2突状部83が凹凸状に嵌合するようになっている。
【0055】
ところで、上述した両係止片78の開口方向の傾斜に起因して、装着部72には上下方向の構造識別性を有することが求められる。その点、上記の構成によれば、スリット77内に第2突状部83が嵌れば、装着部72の化粧板60への取り付けが許容される一方、スリット77内に第2突状部83が嵌らなければ、装着部72の化粧板60への取り付けが規制されるため、化粧板60に対して装着部72が上下反転して誤組み付けされる事態を確実に回避できる。
【0056】
次に、化粧板60のケーシング20への取り付け方法について説明する。
まず、ベースプレート22の下端部に下方から化粧板60の上端部を押し当てるようにして、受け孔31内に突片部63の先端側を差し込む。すると、図8に示すように、第1片部65が拡開部32を通して受け孔31内に進入するとともに、第1片部65の先端が架橋板30を摺動し、それに伴って化粧板60の下端部が下カバー23側に徐々に近づいて行く。図7及び図9に示すように、第1片部65の略全体が受け孔31内に進入すると、突片部63の係止爪71が掛止部33を弾性的に係止して化粧板60の下方への抜けが規制されるとともに、弾性片70の両端側縁が第1リブ28に当接して化粧板60の幅方向への遊動が規制され、かつ、受け溝67の奥端に第2リブ29の下端が当接して化粧板60の上方への押し込みが規制される。これにより、化粧板60の上端部は回動初期位置に位置決めされる。
【0057】
上記の状態で、化粧板60をその上端部を支点として下カバー23側に向けて回動する。化粧板60が回動完了位置に至ると、図10に示すように、第1片部65が略垂直に起立した状態となり、第1片部65の外面が側板25の内面に当接して化粧板60の外側への遊動が規制されるとともに、ステージ部62の突端が垂下部34に当接して化粧板60の内側への遊動が規制される。
【0058】
また、図11に示すように、化粧板60が回動完了位置に至る手前で、化粧板60の基準面76がやや上向きの状態になると、弾性係止部75と係止受け部37とが互いに正対して、両係止片78の誘い込み部79が凸曲面部39の上下両面に臨むように配される。さらに回動が進むと、図12に示すように、両係止片78の先端部が凸曲面部39の上下両面を摺動し、それに伴って両係止片78が拡開変形する。このとき、両係止片78の先端部が先端尖がり気味の凸曲面部39を摺動するため、誘い込み部79が真円弧の曲面を摺動する場合と違って、両係止片78の拡開量が急激に大きくなることがなく、化粧板60が回動されるという事情があっても、両係止片78が係止受け部37から過大な応力を受けるのを回避でき、ひいては両係止片78が折損・破損するのを回避できる。
【0059】
その後、化粧板60が回動完了位置に至ると、図13に示すように、両係止片78の奥端に係止受け部37の先端が当接するとともに両係止片78が係止受け部37を上下方向から弾性的に挟持して、化粧板60がケーシング20に取り付け固定される。この場合、弾性係止部75が案内部74を挟んだ2箇所に設定されているから、弾性係止部75が1箇所のみに設定されるよりも係止強度が高められる。また、案内部74の片側に両弾性係止部75が順次並んで配されるよりも、両弾性係止部75のそれぞれと案内部74との間の距離を小さくできるため、取り付け誤差等に起因する弾性係止部75と係止受け部37との間の位置ずれを未然に防止できる。
【0060】
化粧板60が回動完了位置に至る手前で、かつ弾性係止部75と係止受け部37とが互いの係止動作を開始する前に、案内部74が案内受け部41内に適合して、装着部72の幅方向への遊動が規制されるとともに、弾性係止部75と係止受け部37との位置関係が適正に調整される。このため、弾性係止部75と係止受け部37とが係止動作を開始するときには、弾性係止部75が係止受け部37と正対可能な適正位置に至らされ、両者の係止動作が正確に行われる結果、化粧板60がケーシング20に位置ずれすることなく取り付けられる。したがって、ケーシング20に対する化粧板60の取り付け信頼性が高められる。
【実施例2】
【0061】
図18は、本発明の実施例2を示す。実施例2では、装着部72A及び装着受け部35Aの各形状が実施例1とは異なっている。その他は、実施例1と同様であり、実施例1と同様の構造には同一符合を付し、重複する説明は省略する。
【0062】
装着受け部35Aは、下カバー23を板厚方向に貫通する案内受け部41Aと、案内受け部41Aを挟んだ両側に配されて同じく下カバー23を板厚方向に貫通する係止受け部37Aとからなる。
【0063】
装着部72Aは、弾性係止部75Aの形状のみが実施例1とは異なっている。すなわち、弾性係止部75Aは、支持板73の内面から突出する柱状をなし、その軸心部には全長に亘って延びる割り溝85が形成され、割り溝85を挟んだ両側に、対をなす弾性係止片86が直立して形成されている。弾性係止片86の先端外周部には突条87が周方向に張り出して形成されている。
【0064】
化粧板60が回動完了位置に至る過程では、案内部74が案内受け部41A内に適合することで、装着部72Aの遊動が規制され、弾性係止部75Aと係止受け部37Aとの位置関係が適正な位置に調整される。化粧板60が回動完了位置に至ると、弾性係止部75Aが係止受け部37A内に挿入され、弾性係止部75Aの突条87が下カバー23の裏面側に回り込んで係止受け部37Aの裏面側の開口縁を弾性的に係止し、もって化粧板60がケーシング20に正しく取り付けられる。実施例2によれば、装着部72Aと装着受け部35Aの両形状が簡素化される。
【0065】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1、2とは逆に、係止受け部及び案内受け部が化粧板側の装着部に形成され、弾性係止部及び案内部がケーシング側の装着受け部に形成されるものであってもよい。
(2)化粧板は、その下端部を支点として回動されてケーシングに取り付けられるものであってもよい。あるいは、化粧板は、ケーシングの外面に外側から被せ付けられるものであってもよい。
(3)装着部が化粧板に一体に形成され、装着受け部がケーシングから取り外し可能な別体の部材とされてもよい。あるいは、装着部と装着受け部のいずれもが相手側(化粧板・ケーシング)から取り外し可能であってもよい。また、この場合に、別体の部材は、相手側に対して遊動規制状態に取り付けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…便器本体
20…ケーシング
35、35A…装着受け部
37、37A…係止受け部
39…凸曲面部(摺動面)
41、41A…案内受け部
60…化粧板
72、72A…装着部
74…案内部
75、75A…弾性係止部
76…基準面
77…スリット(逆装防止部)
78…係止片
79…誘い込み部
83…第2突状部(逆装防止受け部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、この便器本体の後部に取り付けられ、機能部を収容可能なケーシングと、前記ケーシングに外側から取り付けられ、後部側面を覆うように配される化粧板とを備え、前記化粧板の内面には装着部が形成され、前記ケーシングの外面には前記装着部と対応して装着受け部が形成されている便器であって、
前記装着部と前記装着受け部のいずれか一方には、撓み可能な弾性係止部が突出して形成されているとともに、前記弾性係止部と並んで案内部が突出して形成されており、
他方には、前記化粧板の前記ケーシングへの取り付け時に、前記弾性係止部に弾性的に係止される係止受け部が形成されているとともに、前記案内部が適合して嵌る案内受け部が形成されており、
前記案内部の突端は、前記弾性係止部の突端よりも突出した位置に配されていることを特徴とする便器。
【請求項2】
前記化粧板は、前記ケーシングに対して一端側を支点として回動され、その回動完了位置にて前記弾性係止部が前記係止受け部を弾性的に係止するものであって、前記装着部と前記装着受け部との間の取り付け誤差を吸収する誤差吸収手段を有していることを特徴とする請求項1記載の便器。
【請求項3】
前記弾性係止部は、対をなす係止片を有し、両係止片は、その先端部間の開口を通して内側に前記係止受け部を導入し、導入された前記係止受け部を弾性的に挟持するようになっており、
前記両係止片の先端部には、先端に向けて拡開する誘い込み部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の便器。
【請求項4】
前記装着部と前記装着受け部の少なくともいずれか一方は、相手側から取り外し可能な別体の部材とされ、前記相手側への取り付け状態において上下方向及び幅方向への遊動が許容されていることを特徴とする請求項2又は3記載の便器。
【請求項5】
前記弾性係止部は、前記化粧板に形成されるものであって対をなす係止片を有し、両係止片は、その先端部間の開口を通して内側に前記係止受け部を導入し、導入された前記係止受け部を弾性的に挟持するようになっており、
前記両係止片の開口方向は、前記両係止片が前記係止受け部との係止動作を開始する直前に前記係止受け部と適正に向き合うよう、前記化粧板の基準面と直角な面に対して傾斜する方向に設定されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項記載の便器。
【請求項6】
前記装着部は、前記化粧板から取り外し可能な別体の部材とされ、前記両係止片の開口方向を誤った状態で前記化粧板に取り付けられるのを規制する逆装防止構造を有していることを特徴とする請求項5記載の便器。
【請求項7】
前記案内部には逆装防止部が形成され、前記化粧板には逆装防止受け部が形成されており、前記装着部が前記化粧板に対して正規の取り付け姿勢をとる場合には、前記逆装防止部と前記逆装防止受け部とが互いに凹凸嵌合してその取り付け動作が許容される一方、前記装着部が前記化粧板に対して不正な取り付け姿勢をとる場合には、前記逆装防止部と前記逆装防止受け部とが互いに非対応の位置に配されてその取り付け動作が規制されることを特徴とする請求項6記載の便器。
【請求項8】
前記弾性係止部は、対をなす係止片を有し、両係止片は、その先端部間の開口を通して内側に前記係止受け部を導入し、導入された前記係止受け部を弾性的に挟持するようになっており、
前記係止受け部の外周面は、前記両係止片の先端部が係止動作の過程で摺動する摺動面を有し、この摺動面に前記両係止片が摺動することで、前記両係止片の先端部間が拡開するようになっており、
前記摺動面は、前記両係止片の先端部が進入する側に向けて細く突出する形状をなしていることを特徴とする請求項2ないし7のいずれか1項記載の便器。
【請求項9】
前記弾性係止部は、前記案内部を挟んだ両側に配されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−190021(P2010−190021A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38595(P2009−38595)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】