説明

便器

【課題】コネクタの嵌合作業を容易に行えるようにする。
【解決手段】便器は、下側ケーシング20と、上側ケーシング50と、下側ケーシング20側に設けられる複数の下側コネクタ40A〜Eと、上側ケーシング50側に設けられる複数の上側コネクタ70A〜Eとを備える。下側ケーシング20には、複数の下側コネクタ40A〜Eを保持するコネクタ保持具80が取り付けられる。各下側コネクタ40A〜Eから引き出された電線群47は、コネクタ保持具80の下面側に沿って配されるようになっている。コネクタ保持具80は、下側ケーシング20の平面視中央よりも端寄りに配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の便器は、便器本体の後部に設置される下側ケーシングと、下側ケーシングに対して上方から取り付けられる上側ケーシングとを備え、両ケーシングの内部には、洗浄タンクが収容されている。下側ケーシング側には、電線の端末に接続された下側コネクタが設けられ、上側ケーシング側には、電線の端末に接続された上側コネクタが設けられ、両ケーシングの取り付けが完了する前に、両コネクタの嵌合動作が行われるようになっている。また、電線は、下側ケーシングの平面視中央部から下側コネクタが配された端側にかけて露出状態で延出して配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−144459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の便器の場合、電線の引き出し具合等によっては、電線を狭いスペース内で回り込ませながら接続を行わねばならないことがあり、コネクタの嵌合作業がし辛いという事情があった。とりわけ、下側ケーシングに下側コネクタが複数設けられるようになると、電線の配線構造そのものが煩雑となり、コネクタの嵌合作業がいっそうし辛くなるおそれがあった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタの嵌合作業を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の便器は、便器本体と、この便器本体の後部に設置される下側ケーシングと、この下側ケーシング側に設けられ、電線の端末に接続される、複数の下側コネクタと、これら下側コネクタを覆いつつ前記下側ケーシングに上方から取り付けられる上側ケーシングと、この上側ケーシング側に設けられ、電線の端末に接続される、複数の上側コネクタとを備え、前記上側及び下側の両ケーシングの取り付けが完了する前に、前記上側及び下側の両コネクタの嵌合動作を行うようにした便器であって、
前記下側ケーシングには、前記複数の下側コネクタを保持するコネクタ保持具が取り付けられ、前記各下側コネクタから引き出された電線群は、前記コネクタ保持具の下面側に沿って配されるようになっており、前記コネクタ保持具は、前記下側ケーシングの平面視中央よりも端寄りに配されている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成であれば、複数の下側コネクタがコネクタ保持具に集まるため、複数個所に分散されるよりも、両コネクタの嵌合作業を行いやすい。また、電線群がコネクタ保持具の下面側に沿って配されているから、電線群の取り回しの煩わしさがない。さらに、下側ケーシングの端寄りの位置で両コネクタの嵌合作業を行えるので、作業者の手も届きやすい。したがって、本発明の便器によれば、コネクタの嵌合作業を容易に行うことできる。しかも、複数の下側コネクタがコネクタ保持具に集約され、電線群がコネクタ保持具の下面側に沿って配されるため、意匠性に優れる。
【0008】
この場合、コネクタ保持具の片側の縁部は、下側ケーシングの片側の縁部に沿って配されているのが好ましい。これにより、作業性の手がより届きやすい範囲でコネクタの嵌合作業を行えるので、本発明の効果を顕著に享受することができる。
【0009】
また、コネクタ保持具の下面側には、電線群を束ねて支持する電線保持部が形成されているのが好ましい。
【0010】
こうすると、電線群がばらけることがなく、電線がはみ出して両ケーシング間にかみ込むのが防止される。なお、電線保持部は、コネクタ保持具とは別体の結束バンドのようなものでもよいが、コネクタ保持具と一体化されていれば、部品点数を削減できるため、より望ましい。
【0011】
また、コネクタ保持具には、電線群を上方へまとめて引き出す1つの導出部が形成されているのが好ましい。これにより、電線群が導出部からまとまりよく引き出されるため、引き出された電線群の取り回し性に優れる。
【0012】
また、この便器では、下側ケーシング内には回路基板が収容され、この回路基板には複数の基板コネクタが接続され、これら基板コネクタと各下側コネクタの対応するもの同士が電線の両端に接続されるようになっており、回路基板は、導出部と隣接して配されていることが好ましい。
【0013】
こうすると、基板コネクタと下側コネクタとに接続される電線の長さを短くできるため、基板コネクタを回路基板に接続する際に、電線の遊びを小さく抑えることができ、作業性の向上を図れる。また、下側ケーシング内において、他の部品と電線とが干渉するのを回避でき、電線の損傷を防止できる。
【0014】
また、コネクタ保持具の上面側には、両ケーシングの取り付け状態で、上側ケーシングの側板と、導出部から導出される電線群との間を仕切る仕切り部が立ち上げ形成されていることが好ましい。
【0015】
かかる仕切り部によって、電線がコネクタ保持具の外側にはみ出て両ケーシング間にかみ込まれるのが防止される。
【0016】
また、この便器では、コネクタ保持具の上面側には、両ケーシングの取り付けが完了する前に、上側ケーシングを支持する仮置き部が立ち上げ形成されており、この仮置き部に支持された上側ケーシングとコネクタ保持具との間には、両コネクタの嵌合動作を行うための作業空間が保有されるのが好ましい。
【0017】
こうすると、作業者は、上側ケーシングを仮置き部に支持させた状態で、作業空間を通して両コネクタの嵌合作業を行える。このため、作業者が上側ケーシングを支える必要がなく、作業性のいっそうの向上を図れる。しかも、仮置き部がコネクタ保持具に形成されているため、下側ケーシングの形状の簡素化を図れる。
【0018】
また、コネクタ保持具には、電線群を上方へまとめて引き出す1つの導出部が形成され、コネクタ保持具の上面側には、両ケーシングの取り付け状態で、上側ケーシングの側板と、導出部から導出される電線群との間を仕切る仕切り部が立ち上げ形成されており、仮置き部は、仕切り部に構成されていることが好ましい。
【0019】
このような構成であれば、仕切り部が上側ケーシングを仮置きする仮置き手段を兼備するため、コネクタ保持具の小型化を図れる。この場合、仕切り部の高さを高くすることにより、作業空間が広く確保されるとともに、両ケーシング間に電線がかみ込まれるのがより確実に防止される。
【0020】
また、コネクタ保持具は、複数の下側コネクタが縦一列に保持される縦長の形状をなし、その長手方向を下側ケーシングの片側の縁部に沿う方向に向けて配されていることが好ましい。
【0021】
このように、コネクタ保持具がコンパクトにまとめられて下側ケーシングの片側に寄せられることにより、下側ケーシングのスペース効率が良好となり、空きスペースに部品を設置する際の自由度が高められる。また、意匠性にも優れる。
【0022】
また、この便器では、上側ケーシングの下面側には、各上側コネクタから引き出された電線群を束ねる電線結束部が形成されており、電線結束部は、両ケーシングの取り付け状態で、コネクタ保持具と対向する位置に配されることが好ましい。
【0023】
かかる電線結束部によって、電線群がばらけて両ケーシング間に電線がかみ込まれるのが防止される。また、電線結束部がコネクタ保持具と対向する位置に配されることで、上側コネクタから引き出された電線の長さを短くできるため、上側ケーシング側でも電線の取り回し性の向上を図れる。
【0024】
また、コネクタ保持具は、下方に開放された箱形状をなしていることが好ましい。これにより、コネクタ保持具の剛性が高められる。また、コネクタ保持具の下面側に配される電線の両脇にコネクタ保持具の両側壁が位置するため、電線の両側方への遊動が規制され、両ケーシング間に電線がかみ込むのが防止されるとともに、電線が他の部品と干渉するのが回避される。
【0025】
また、この便器では、上側ケーシングにはロック部が形成され、下側ケーシングには、ロック部に係止されて両ケーシングを取り付け状態に保持するロック受け部が形成されており、コネクタ保持具には、両ケーシングの取り付けの過程で、ロック部を挿入案内する案内溝が形成されていることが好ましい。
【0026】
こうしてロック部が案内溝に挿入案内されることで、両ケーシングの取り付けが円滑に行われるとともに、ロック信頼性が高められる。しかも、案内溝がコネクタ保持具に形成されているため、下側ケーシングの形状の簡素化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例の便器の側面図である。
【図2】上側及び下側の両ケーシングの取り付け前の一部破断側面図である。
【図3】コネクタ保持具を取り付けた下側ケーシングの片側の平面図である。
【図4】コネクタ保持具を取り付けた下側ケーシングの一部破断側面図である。
【図5】上側ケーシングの底面図である。
【図6】コネクタ保持具の底面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】上側ケーシングを仮置きした下側ケーシングの一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0029】
実施例の便器は、水洗式便器である便器本体10と、便器本体10の後部に取り付けられる下側ケーシング20と、下側ケーシング20側に設けられる複数の下側コネクタ40A〜Eと、下側ケーシング20に取り付けられる上側ケーシング50と、上側ケーシング50側に設けられる複数の上側コネクタ70A〜Eと、下側ケーシング20に取り付けられるコネクタ保持具80とを備えている。下側及び上側の両ケーシング20、50、下側及び上側の両コネクタ40A〜E、70A〜E及びコネクタ保持具80は、いずれも合成樹脂製である。
【0030】
上側ケーシング50は、図8に示すように、下側ケーシング20を覆蓋するカバー51を有し、カバー51の前端部には、便座11及び便蓋12が開閉可能に取り付けられている。便座11には、図示しない電気ヒータを有するヒータ部が内蔵されている。
【0031】
カバー51は、やや前下がりの天板52、左右の両側板53及び背板54を有し、下方に開放された扁平箱状をなしている。両側板53の下端部には、片状のロック部55、56が形成されている。ロック部55、56は、図2に示すように、前側に位置して上下方向に真直ぐ延びる一対の第1ロック部55と、後側に位置して下端に行くにつれ内側へ傾斜する一対の第2ロック部56とを有している。そして、図5に示すように、カバー51の片側の側板53には、洗浄用の押しボタンからなるスイッチ部57が組み込まれている。
【0032】
また、カバー51には、リモコンからの光信号を受光する受光部58が組み込まれ、さらに人体の存在を検知する人体検知部59、60が組み込まれている。この人体検知部59、60は、便蓋12が開状態のときに人体を検知する光学センサからなる下側センサ60と、便蓋12が閉状態のときに人体を検知する焦電センサからなる上側センサ59とによって構成されている。受光部58は、カバー51の天板52における片側の縁部に沿って配される縦長の形状をなし、上側センサ59は、受光部58の直前方に配されている。下側センサ60は、カバー51の前端部の幅方向略中央に配されている。また、カバー51の天板52の下面のうち、幅方向について上側センサ59と下側センサ60との間には、便蓋12及び便座11の開閉動作を行う動力部61が組み込まれている。
【0033】
そして、カバー51の天板52の下面には、上記したヒータ部、スイッチ部57、受光部58、人体検知部59、60及び動力部61の各部から延びる複数の電線62が配策されている。これら電線62からなる電線群63は、カバー51の天板52における片側の縁部で、かつ受光部58の前方において取りまとめられ、そこに形成された門型枠状の電線結束部64に後方から挿通されて結束されている。こうしてカバー51の前方に臨む各電線62の端末には、対応する上側コネクタ70A〜Eが接続され、各上側コネクタ70A〜Eが対応する下側コネクタ40A〜Eと嵌合されることにより、両コネクタ40A〜E、70A〜Eを介して各部への通電が行われるようになっている。
【0034】
続いて、下側ケーシング20について説明すると、下側ケーシング20は、ベースプレート21と左右一対の化粧板22とを有している。化粧板22は、便器の後部両側面を覆いつつベースプレート21に外側から取り付けられている。
【0035】
ベースプレート21は、カバー51内に嵌合可能な板状をなし、図4に示すように、後側に位置して便器本体10の後部上面にボルト締めして固定される固定プレート23と、前側に位置して固定プレート23に対して昇降可能な可動プレート24とからなる。図3に示すように、可動プレート24の幅方向中央部には局部洗浄ノズル部25が後方へ向けて上り勾配に配されている。また、可動プレート24の後端には、局部洗浄ノズル部25の上端よりも上方で、かつ固定プレート23の上方を覆う位置に、電力回路が形成された電力回路基板26と、制御回路が形成された制御回路基板27とが幅方向両側に分かれて配されている。両回路基板26、27は、電線28及び電線28の端末に接続された中継基板コネクタ29を介して互いに接続されている。また、両回路基板26、27は、上方に開放された扁平箱状の基板収容部30内に収容されている。
【0036】
そして、可動プレート24の片側の縁部には、コネクタ保持具80を取り付ける収容部31が形成されている。収容部31は、可動プレート24の上面から立ち上げられ、コネクタ保持具80をその幅方向及び後方への遊動を規制した状態で取り囲む周壁32を有している。周壁32の外壁は、可動プレート24の外郭の一部を構成する片側の側壁34であって、ここには下側ケーシング20の第2ロック部56を受ける凹部33が切り欠き形成され、さらに凹部33の下方には、第2ロック受け部35が垂下して形成されている。第2ロック受け部35の外側面は、第2ロック部56と対応して内向きに傾斜する形態とされている。また、可動プレート24には、第1ロック部55と対応して第1ロック受け部36も形成されている。
【0037】
また、可動プレート24の上面のうち収容部31の後部底面には、幅方向に延びる位置決め壁37が立ち上げ形成されており、この位置決め壁37によってコネクタ保持具80の収容部31への取り付けが案内されるようになっている。さらに、可動プレート24の上面のうち収容部31の前部底面には、円柱状の第1ボルト受け部38が立ち上げ形成されており、第1ボルト受け部38の上面にはねじ孔39が開口して形成されている。
【0038】
コネクタ保持具80は、図6に示すように、内側板81、外側板82及び上板83を有し、下方に開放された前後方向に細長い箱形状をなしている。収容部31への取り付け時には、外側板82が可動プレート24の片側の側壁34に隣接して配され、内側板81が可動プレート24の片側の側壁34から離れて配される。コネクタ保持具80の上板83の前端には、ボルト通し孔84を有する第1ボルト締め部85が前方へ突出して形成されている。また、コネクタ保持具80の内側板81の後端部には、円柱状の第2ボルト受け部86が上下方向に延出して形成され、第2ボルト受け部86の上面にはねじ孔87が開口して形成されている。制御回路基板27を収容する基板収容部30の側壁下端には、図4に示すように、ボルト通し孔41を有する第2ボルト締め部42が側方へ突出して形成されている。
【0039】
したがって、第1ボルト受け部38に第1ボルト締め部85を上方から重ねて、ボルト通し孔84とねじ孔39とを整合させ、かつ、第2ボルト締め部42に第2ボルト受け部86を下方から重ねて、ボルト通し孔41とねじ孔87とを整合させ、その状態で、上方からねじ孔39、83にボルト75をねじ込むことにより、コネクタ保持具80が下側ケーシング20に固定されるようになっている。
【0040】
コネクタ保持具80の上板83には、下側コネクタ40A〜Eが取り付けられる複数の取り付け孔88が開口して形成されている。各取り付け孔88は、前後方向(縦方向)に一列に配され、対応する下側コネクタ40A〜Eの外形形状に適合するよう、互いに異なる孔形状を有している。なお、図示する場合には、下側コネクタが取り付けられずに空いた取り付け孔88が含まれている。
【0041】
ここで、各下側コネクタ40A〜Eの両側面には、図6に示すように、撓み可能な一対の係止片45が突出して形成されている。このため、各取り付け孔88に下方から対応する下側コネクタ40A〜Eが挿入され、各取り付け孔88の孔縁に両係止片45が弾性的に係止されることで、各下側コネクタ40A〜Eがコネクタ保持具80に抜け止め保持される。各下側コネクタ40A〜Eは、図4に示すように、電線46の端末に接続されており、電線46のもう一方の端末には、対応する基板コネクタ48が接続されている。基板コネクタ48は、制御回路基板27又は電力回路基板26の上面に実装されている。
【0042】
また、コネクタ保持具80の上板83は、下段部89、中段部90及び上段部91の順に高く配され、それぞれの上面には前向きに傾斜する斜面が形成されている。このうち、下段部89及び上段部91の両斜面は互いにほぼ同じ傾斜角をもった緩傾斜面とされ、中段部90の斜面は、下段部89及び上段部91よりも大きい傾斜角をもった急傾斜面とされている。ここで、下段部89の取り付け孔88には、上側センサ59及び下側センサ60のそれぞれに対応する下側コネクタ40A、Bが挿入され、中段部90の取り付け孔88には、動力部61に対応する下側コネクタ40Cが挿入され、上段部91の取り付け孔88には、ヒータ部及びスイッチ部57のそれぞれに対応する下側コネクタ40D、Eが挿入されている。このため、各下側コネクタ40A〜Eの嵌合面は、各斜面の傾斜角に応じて斜め上前方を向くようになっている。
【0043】
各下側コネクタ40A〜Eから引き出された電線群47は、コネクタ保持具80の上板83の下面に沿って後方へ引き寄せられる。上板83の下面には、各下側コネクタから引き出された電線群47を束ねて支持する電線保持部92、93が形成されている。図6に示すように、電線保持部92、93は、下段部89に形成された第1電線保持部92と、上段部91に形成された第2電線保持部93とからなり、いずれも上板83と一体化され、かつ相互の幅方向の位置をずらして構成されている。
【0044】
第1電線保持部92は、図7にも示すように、幅方向に一対の抱持片94を有し、第2電線保持部93は、片方のみの抱持片94を有している。下段部89の各下側コネクタ40A、Bから引き出された電線群47は、第1電線保持部92の両抱持片94に抱持されたあと片側へ蛇行しつつ延びて、第2電線保持部93の抱持片94に抱持されるようになっている。この場合、第2電線保持部93の側方には、中段部90及び上段部91の各下側コネクタ40C〜Eから引き出された電線群47が隣接して配されている。したがって、上板83の下面では、中段部90及び上段部91からの電線群47と下段部89からの電線群47とが互いに干渉することなく幅方向に並列に配線されることとなる。なお、電線群47は、内側板81及び外側板82に内側から当接することで、コネクタ保持具80の外側にはみ出ることなくコネクタ保持具80内に収められる。
【0045】
また、コネクタ保持具80の上段部91には、図3に示すように、斜面の後端から後方へほぼ水平に延びる突片部95が形成されている。突片部95は、制御回路基板27と隣接して配され、ここに既述した第2ボルト受け部86のねじ孔87が開口して形成されている。そして、突片部95には、各下側コネクタ40A〜Eからの電線群47を上方へまとめて引き出す1つの導出部96が後端に開口して形成されている。この導出部96は制御回路基板27に隣接して配され、各基板コネクタ48と対応する下側コネクタ40A〜Eとを接続する電線46の長さを短くさせている。
【0046】
突片部95の上面には案内壁97が導出部96の口縁から立ち上げ形成されている。このうち、カバー51の片側の側板53と対面する部分は、他よりも一段高くされた仕切り部98とされている。仕切り部98は、前後方向に延びる形状であって、両ケーシング20、50の取り付け時に、カバー51の片側の側板53と電線群47との間を仕切ることで、電線46が両ケーシング20、50間にかみ込むのを防止する役割を果たしている。
【0047】
また、仕切り部98には、幅方向に一対の規制壁99が立ち上げ形成されている。両規制壁99間には、カバー51の側板53の下端部を差し込み可能な挿入空間79が保有されている。ここで、図8に示すように、仕切り部98の挿入空間79に上方からカバー51の側板53の下端部が差し込まれると、側板53の下端部が両規制壁99に内側から当接し、もって下側ケーシング20がやや傾きながらも仕切り部98に自立状態で支持されるようになっている。このとき、カバー51の側板53の下端とコネクタ保持具80の上板83の上面との間には、上下方向に開いた作業空間78が保有され、この作業空間78を通して両コネクタ40A〜E、70A〜Eの嵌合作業を行うことが可能となっている。このように、仕切り部98は、両コネクタ40A〜E、70A〜Eの嵌合時に下側ケーシング20を仮置きする仮置き部としての役割をも果たしている。
【0048】
コネクタ保持具80の外側板82は、可動プレート24の側壁34の内面に沿って配され、側壁34の形状に適合する形状をなしている。このうち、側壁34の凹部33と対応する部分には、下側ケーシング20の第2ロック部56を挿入して案内可能な案内溝77が上下方向に延出して形成されている。案内溝77の下方には、第2ロック受け部35が配されている。また、コネクタ保持具80の外側板82及び内側板81には、位置決め壁37を嵌合可能なスリット状の位置決め孔76が下端に開口して形成されている。さらに、内側板81及び外側板82の後端部には、後端及び下端に向けて略L字形に大きく切り欠かれた段付き部74が形成されており、この段付き部74内に周壁32の後壁が逃がされるようになっている。
【0049】
次に、この実施例の便器における両コネクタ40A〜E、70A〜Eの嵌合方法及び両ケーシング20、50の組み立て方法について説明する。まず、コネクタ保持具80の取り付け孔88内に下方から対応する下側コネクタ40A〜Eを挿入し、係止片45の係止作用によって各下側コネクタ40A〜Eをコネクタ保持具80に取り付ける。続いて、第1、第2電線保持部92、93に、各下側コネクタから引き出された電線群47を挿通して結束させ、さらに導出部96を通して電線群47をコネクタ保持具80の上方へ導出させる。
【0050】
次いで、下側ケーシング20の収容部31にコネクタ保持具80を上方から取り付ける。このとき、周壁32の後壁に段付き部74の内前縁が摺動し、さらに位置決め孔76内に位置決め壁37が嵌合することで、コネクタ保持具80の取り付けが案内される。こうしてコネクタ保持具80が収容部31に正規深さで押し込まれた状態で、第1、第2ボルト締め部42、85にボルト75を締め付けることにより、コネクタ保持具80が下側ケーシング20に固定される。一方、上側ケーシング50では、各部から延出される電線群63を電線結束部64により結束させ、電線結束部64の前方に各上側コネクタ70A〜Eを臨ませる。
【0051】
続いて、下側ケーシング20に対して上方から上側ケーシング50を引き降ろし、図8に示すように、仕切り部98の挿入空間79にカバー51の片側の側板53の下端部を差し込むことで、下側ケーシング20に対して上側ケーシング50を仮置き状態に保持する。このとき、カバー51の片側の側板53と可動プレート24の片側の側壁34とが同じ側に配され、電線結束部64がコネクタ保持具80の上方に対向して配される。このため、電線結束部64から導出される電線62の長さが短くても、上側コネクタ70A〜Eを下側コネクタ40A〜Eとの嵌合可能な位置に至らすことができる。
【0052】
こうして上側ケーシング50を仮置きした状態から、両コネクタ40A〜E、70A〜Eを互いに嵌合させる。このとき、作業者は、上側ケーシング50を支える必要がなく、作業空間78に両手を差し入れて両コネクタ40A〜E、70A〜Eの嵌合作業を行える。また、下側ケーシング20の片側の縁部で接続を行えるので、手探りで作業を行わずに済み、良好な作業性が確保される。
【0053】
全てのコネクタ40A〜E、70A〜Eの嵌合作業を終えたら、続いて、上側ケーシング50を少し持ち上げて仕切り部98から解離させ、そこからさらに上側ケーシング50を引き下げて下側ケーシング20に取り付ける。上側ケーシング50を下降させる過程では、第2ロック部56がコネクタ保持具80の案内溝77内に摺動可能に挿入されるとともに、カバー51の両側板53及び背板54がベースプレート21に外側から摺動可能に被嵌される。このため、上側ケーシング50の前後方向及び幅方向への遊動が規制され、上側ケーシング50の取り付けの円滑性が確保される。両ケーシング20、50が正規に取り付けられると、第1、第2ロック部55、56が第1、第2ロック受け部36、35に当接され、双方を貫通するボルトによって両ケーシング20、50が固定される。
【0054】
以上説明したように、この実施例によれば、複数の下側コネクタ40A〜Eがコネクタ保持具80に保持されているため、複数個所に分散されるよりも、両コネクタ40A〜E、70A〜Eの嵌合作業を容易に行うことができる。この場合、コネクタ保持具80が下側ケーシング20の片側の縁部に沿って配されているから、作業者の手がより届きやすい。しかも、各下側コネクタ40A〜Eから引き出された電線群47がコネクタ保持具80の下面に隠蔽され、さらに上側ケーシング50では同じ片側の縁部に各上側コネクタ70A〜Eが配されることによって各上側コネクタ70A〜Eから引き出される電線62の長さを短くできるため、作業中に電線群47、63がからまる等するのが回避され、両コネクタ40A〜E、70A〜Eの嵌合作業をいっそう容易に行うことができる。
【0055】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)コネクタ保持具は、下側ケーシングの平面視中央よりも端寄りに配されていればよく、例えば、下側ケーシングの片側の側壁から少し離れて配されていてもよい。
(2)上側ケーシングを仮置きする仮置き部は、下側ケーシングにも形成してよい。また、仮置き部は、仕切り部以外の部分で構成されてもよい。
(3)各下側コネクタは、コネクタ保持具に複数列に亘って取り付けられてもよい。
(4)両ケーシング内には、洗浄タンク等が収容されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…便器本体
20…下側ケーシング
27…制御回路基板
35…第2ロック受け部(ロック受け部)
40A〜E…下側コネクタ
46、62…電線
47、63…電線群
64…電線結束部
50…上側ケーシング
56…第2ロック部(ロック部)
70A〜E…上側コネクタ
78…作業空間
80…コネクタ保持具
92…第1電線保持部(電線保持部)
93…第2電線保持部(電線保持部)
96… 導出部
98…仕切り部(仮置き部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、この便器本体の後部に設置される下側ケーシングと、この下側ケーシング側に設けられ、電線の端末に接続される、複数の下側コネクタと、これら下側コネクタを覆いつつ前記下側ケーシングに上方から取り付けられる上側ケーシングと、この上側ケーシング側に設けられ、電線の端末に接続される、複数の上側コネクタとを備え、前記上側及び下側の両ケーシングの取り付けが完了する前に、前記上側及び下側の両コネクタの嵌合動作を行うようにした便器であって、
前記下側ケーシングには、前記複数の下側コネクタを保持するコネクタ保持具が取り付けられ、前記各下側コネクタから引き出された電線群は、前記コネクタ保持具の下面側に沿って配されるようになっており、前記コネクタ保持具は、前記下側ケーシングの平面視中央よりも端寄りに配されていることを特徴とする便器。
【請求項2】
前記コネクタ保持具の片側の縁部は、前記下側ケーシングの片側の縁部に沿って配されていることを特徴とする請求項1記載の便器。
【請求項3】
前記コネクタ保持具の下面側には、前記電線群を束ねて支持する電線保持部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の便器。
【請求項4】
前記コネクタ保持具には、前記電線群を上方へまとめて引き出す1つの導出部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の便器。
【請求項5】
前記下側ケーシング内には回路基板が収容され、この回路基板には複数の基板コネクタが接続され、これら基板コネクタと前記各下側コネクタの対応するもの同士が電線の両端に接続されるようになっており、前記回路基板は、前記導出部と隣接して配されていることを特徴とする請求項4記載の便器。
【請求項6】
前記コネクタ保持具の上面側には、前記両ケーシングの取り付け状態で、前記上側ケーシングの側板と、前記導出部から導出される電線群との間を仕切る仕切り部が立ち上げ形成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の便器。
【請求項7】
前記コネクタ保持具の上面側には、前記両ケーシングの取り付けが完了する前に、前記上側ケーシングを支持する仮置き部が立ち上げ形成されており、この仮置き部に支持された前記上側ケーシングと前記コネクタ保持具との間には、前記両コネクタの嵌合動作を行うための作業空間が保有されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の便器。
【請求項8】
前記コネクタ保持具には、前記電線群を上方へまとめて引き出す1つの導出部が形成され、前記コネクタ保持具の上面側には、前記両ケーシングの取り付け状態で、前記上側ケーシングの側板と、前記導出部から導出される電線群との間を仕切る仕切り部が立ち上げ形成されており、前記仮置き部は、前記仕切り部に構成されていることを特徴とする請求項7記載の便器。
【請求項9】
前記コネクタ保持具は、前記複数の下側コネクタが縦一列に保持される縦長の形状をなし、その長手方向を前記下側ケーシングの片側の縁部に沿う方向に向けて配されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の便器。
【請求項10】
前記上側ケーシングの下面側には、前記各上側コネクタから引き出された電線群を束ねる電線結束部が形成されており、
前記電線結束部は、前記両ケーシングの取り付け状態で、前記コネクタ保持具と対向する位置に配されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項記載の便器。
【請求項11】
前記コネクタ保持具は、下方に開放された箱形状をなしていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項記載の便器。
【請求項12】
前記上側ケーシングにはロック部が形成され、前記下側ケーシングには、前記ロック部に係止されて前記両ケーシングを取り付け状態に保持するロック受け部が形成されており、
前記コネクタ保持具には、前記両ケーシングの取り付けの過程で、前記ロック部を挿入案内する案内溝が形成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項記載の便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−196368(P2010−196368A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42569(P2009−42569)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】