説明

便器

【課題】
殺菌水を便器洗浄動作と同時に供給できるようにし、且つ、そのタイミングについても殺菌が効果的に行えるときに供給することで、使用者に違和感なく、殺菌水の投入無駄を防止し、便器の汚れを抑制できる便器を提供することを目的とする。
【解決手段】
使用者の排泄物を受け排水配管との間に溜水を溜めたトラップを形成した便器と、前記便器に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、前記洗浄水と共に殺菌水を供給する殺菌水供給手段を備えた便器において、前記便器の一定期間の使用状態に基づいて不使用時間帯を予測する学習制御手段とを有し、前記不使用時間帯の所定時間前から不使用時間帯までの便器洗浄に殺菌水を供給することを特徴とする便器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌性金属イオン水を所定量、かつ、所定時間溜水に貯留させることに係り、特に微生物に由来する汚れが便器のボール表面に発生することを防止することに好適な便器に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の便器における微生物に由来する汚れ発生を防止する方法としては、便器洗浄時に殺菌性の薬液を吐出供給している(例えば、特許文献1参照。)。
便器洗浄毎に薬液を投入することになるので、薬液が毎回消耗されることになり、薬液補充に関する保守作業が大変であった。
【0003】
また、殺菌水として、補充を要する薬液を利用するのではなく電解槽で生成される殺菌性金属イオン水を利用として、種々のタイミングで、殺菌性金属イオン水を供給し、保守作業を低減できるものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特許第3047940号公報
【特許文献2】特開平11−106891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
便器洗浄のタイミングにて、殺菌水を供給することは、使用者にとっては、特に、意識することなく殺菌水の供給が自動的になされるので、望ましい形態ではある。しかしながら、便器洗浄が頻繁に行われような場合には、便器のトラップの溜水が新しい洗浄水に入れ替わり、洗浄水中の菌の繁殖は殆ど行われないので、無駄に殺菌水を利用していることになる。そこで、所定時間間隔や夜間のみに殺菌水を供給することが提案されているが、間隔を密に取ると、上記同様に無駄に供給されてっしまったり、逆に間隔を長く取ると溜水中に殺菌水が無い状態で、暫らく放置され、菌が繁殖してしまったり、また、便器洗浄でのタイミングとは別になるため、便器の誤動作と感じてしまったり、夜間就寝中に洗浄音が聞こえ不快に感じるといった不具合がある。
そこで、本発明は、殺菌水を便器洗浄動作と同時に供給できるようにし、且つ、そのタイミングについても殺菌が効果的に行えるときに供給することで、使用者に違和感なく、殺菌水の投入無駄を防止し、便器の汚れを抑制できる便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、使用者の排泄物を受け排水配管との間に溜水を溜めたトラップを形成した便器と、前記便器に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、前記洗浄水と共に殺菌水を供給する殺菌水供給手段を備えた便器において、前記便器の一定期間の使用状態に基づいて不使用時間帯を予測する学習制御手段とを有し、前記不使用時間帯の所定時間前から不使用時間帯までの便器洗浄に殺菌水を供給することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、例えば、1週間の使用時間を記憶し、その結果に基づいて、便器不使用時間帯を予測し、その不使用時間帯の所定時間前に便器洗浄には、殺菌水を供給できるように殺菌水供給手段を駆動させるので、不使用時間帯に入った際には、便器の溜水中には殺菌水が存在しているので、菌の増殖を抑制し、便器の汚れを抑制できる。
【0008】
本発明において、好ましくは、前記殺菌水供給手段は、電解槽により殺菌性金属イオンを供給することする。それによって、本発明では、薬液用のタンク等が不要となり、保守作業が軽減される。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記殺菌性金属イオン濃度は、電解槽に供給する電力量によって調整可能性である。それによって、本発明では、便器の使用環境等によって、菌の繁殖状況が異なる場合でもその使用環境にあった濃度の殺菌水を電力量を調整することで簡単に供給できる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記不使用時間帯に合わせて殺菌性金属イオン濃度を調整する。それによって、本発明では、殺菌の効果は、殺菌水の殺菌性金属イオン濃度と時間とに影響されるため、例えば、不使用時間帯が長ければ、低濃度の殺菌イオンや薬液で良いため、無駄の無い効果的な殺菌水の供給が可能となる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記殺菌水供給手段は、1日利用されない場合には、翌日の最初の便器洗浄に高濃度の殺菌水を投入する。何らかに事情で便器が使用されなかった場合には、菌が繁殖している可能性が高いの高濃度の殺菌水を投入し、短時間で殺菌させることで、便器汚れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、殺菌水を便器洗浄動作と同時に供給できるようにし、且つ、そのタイミングについても殺菌が効果的に行えるときに供給することで、使用者に違和感を持たせることなく、殺菌水の投入無駄を防止し、便器の汚れを抑制できる便器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第一実施形態について、添付図面に基づいて以下に説明する。図1は本発明に係る殺菌水を用いた便器洗浄システムを組み込んだ直圧給水式便器の斜視図ある。
【0014】
図1において、便器1には開閉自在の便座、便ふた、および衛生洗浄装置が取り付けられるが、本図では省略されている。便器1には排泄物を受けるボール2が設けられており、建物の排水配管3とボール2の間には、排水配管3からの臭気拡散や衛生害虫の侵入を防止するための溜水4を貯留すべく、トラップ5が構成されている。便器1に供給される市水は、水路開閉手段6を介して、ボール2を水洗するためのリム吐水ノズル7と、トラップ3に向けて吐水することでサイホン現象を誘引するためのゼット吐水ノズル8に供給されるようになっている。殺菌水生成装置9は、便器1に内蔵された水路開閉手段6からリム吐水ノズル7への給水路に組み込まれている。
【0015】
殺菌水生成装置9は、本実施形態では、電解槽に供給される電力によって、銀電極の溶出による銀イオンを利用し、さらに、その濃度を電力の増減によって、可変できるものを使用している。電力供給手段としては一般的な商用電源だけでなく、電池であったり、前記便器洗浄手段動作時に生成・蓄電される自己発電によるものであってもよい。なお、殺菌水としては殺菌性金属イオンをではなく、次亜塩素酸やオゾン水などのように他の殺菌メカニズムを持つものでもよい。
【0016】
次に、第一実施形態の動作について説明する。
図2は、本発明に係る殺菌水を用いた便器洗浄システムを組み込んだ直圧給水式便器のシステムブロック図である。
使用者が便器洗浄の動作を行うと、洗浄水供給手段となる水路開閉手段6によって、水路は開となり、便器1に洗浄水となる市水が供給される。洗浄水は、水路開閉手段6を介して、ボール2を水洗するためのリム吐水ノズル7と、トラップ5に向けて吐水することでサイホン現象を誘引するためのゼット吐水ノズル7に供給される。具体的には、先ずリム吐水ノズル7より吐水してボール2を水洗すると共にトラップ3を満水化する。これを前リム吐水と称する。次いで、ゼット吐水ノズル8はトラップ5の直上に向けて吐水を行い、排水配管3とボール2の間に圧力差を生じせしめ、排泄物混じりの溜水4を排水配管3に排出する。次いでリム吐水ノズル7はボール2に向けて吐水し、所定深さの封水深を形成するようになっている。これを後リム吐水と称する。以上による1回の洗浄動作が完了する。
【0017】
この便器洗浄動作において、殺菌水は、後述する学習制御手段10によって把握された不使用時間帯の所定時間前の便器洗浄に殺菌水を供給すべく、計時手段11、電力制御手段12場合によって、濃度制御手段13からなる制御手段14によって、流路開閉手段6及び殺菌水生成手段9を動作させ、便器洗浄を行う。この際、殺菌水は、後リム吐水と共に供給されるようにすることで、溜水中に殺菌水を供給することができ、不使用時間帯に溜水中に菌の繁殖を抑制できるものとなる。
【0018】
なお、殺菌水の濃度については、不使用時間帯の長さによって、定義調整するのが望ましい。発生した濃度をフィードバッグしながら電力供給手段16を制御することも考えられる。本実施例では供給する電力で殺菌水濃度を制御すべく、濃度制御手段17も組み込まれている
【0019】
次に、不使用時間帯を設定する学習制御手段とそれによって把握された不使用時間帯に基づく、殺菌水供給について、以下に説明する。
【0020】
図3は、本発明の学習制御の示す使用方法の一事例であり、図4は本発明の学習制御方法のフローチャートである。
【0021】
通電当初、デフォルトとして使用時間帯は例えば6時から23時と仮決めする。横軸は時間帯であり、1日目以降7日目までの各時間帯は使用実績の有無を計時手段で確認する。図1において、網掛けしている部分が使用実績を確認した時間帯とする。図3の事例において、1週間の時間帯を確認し、8日目に学習結果を演算する。
【0022】
S101で演算をスタートする。S102は使用時間帯を確認するステップで、図3の事例では各1時間おきに使用実績があったかを確認し、S103で1週間分を記憶する。S104は各時間帯の使用確率を演算するステップであり、例えば2時から3時は使用確率C=1/7=14%、4時から5時は使用確率C=0/7=0%、5時から6時は使用確率C=5/7=71%と演算する。S105は使用時間帯かどうかを判断するステップであり、例えば閾値を50%と設定して、S106とS107で使用時間帯か不使用時間帯かを判断し、S108で一覧として学習結果を演算し、S109でストップする。学習期間を1週間とすると、次には1日目のデータを書き換えて新たに使用時間帯と不使用時間帯を修正していく。
【0023】
本事例では1時間を判断時間帯としたが、30分単位であってもよい。通常、使用者は1週間の内に2回休日をとることが多く、それを配慮した学習間隔を設定しても良い。
【0024】
本実施例の場合、学習結果として演算された7時から8時、および23時から24時の間は、次の使用間隔が長く空くことが想定される時間帯ということになる。
【0025】
この学習の場合、8時から18時、および24時から5時が不使用時間帯であり、各々10時間と5時間の不使用時間帯と推定することができる。
【0026】
次に、上記によって把握された不使用時間帯と殺菌水の供給タイミングについて説明する。
学習制御によって設定された不使用時間帯の溜水には、殺菌水が投入される必要があるため、不使用時間帯に入る前の最後の便器洗浄に殺菌水が投入される必要がある。その為に本実施形態では、不使用時間帯の前の所定時間から、例えば、1時間前の便器洗浄の利用には、殺菌水を投入するように制御手段によって制御する。なお、不使用時間帯に洗浄動作が行われる場合もあるため、不使用時間帯の所定時間前の洗浄動作までの洗浄動作まで、殺菌水を供給するようにしても良い。
なお、所定時間の設定に関しては、上記した使用確率の実績を考慮して設定しても良く、また、不使用時間帯を設定するための閾値とは別の所定時間帯すなわち不使用時間帯に入る直前となる位置づけの時間帯を設定するための閾値(不使用確率に更に安全率を考慮した場合のもの)を利用してその時間帯を割り出し、その設定時間の最前の時間を所定時間前と設定しても良い。
なお、殺菌の効果は、滞溜時間と溜水中の殺菌金属イオン濃度との関係で決まってくることが知られており、時間が長くなれば溜水中の殺菌金属イオン濃度は低くて良い。例えば、便器の溜水量は、約1~2Lの間位で、7時間以上の不使用時間帯であれば、2ppb程度、それ以下の不使用時間帯であれば、4ppb程度あれば殺菌できることを確認している。従って、不使用時間帯が把握できれば、それに応じて供給する殺菌水の濃度を調整して供給すれば良い。
また、不使用時間帯に基づき殺菌水を供給するように制御したが、1日経っても便器洗浄がなかった場合には、翌日の最初の便器洗浄に高濃度、例えば、6ppbあれば、数分で殺菌が可能となるので、それ以上の濃度に設定すれば良い。
【0027】
次に、本発明の第2実施態様を図5に基づいて説明する。第1実施態様と異なる部分は、便器の洗浄水を一次貯留するタンクから供給する所謂タンク式の便器である点である。第1実施形態と同じ部位には、同じ符合を用いて説明する。
図5は本発明に係る殺菌水を用いた便器洗浄システムを組み込んだロータンク給水式便器の斜視図である。便器1には排泄物を受けるボール2が設けられており、建物の排水配管とボール2の間には、排水配管からの臭気拡散や衛生害虫の侵入を防止するための溜水4を貯留すべく、トラップが構成されている。便器1に供給される市水は、水路開閉手段6を介して、タンク15に所定量だけ貯留されるようになっている。タンク13から供給された水は、便器1内部でボール5を水洗するためのリム吐水ノズルと、トラップに向けて吐水することでサイホン現象を誘引するためのゼット吐水ノズルに分岐されるようになっている。殺菌水生成装置12は、水路開閉手段9とタンク15の間に配置され、所定濃度の殺菌水をタンク15に貯留するようになっている。便器洗浄を行う場合、殺菌水を使用してボール2の水洗、排水配管に向けた排泄物混じりの溜水4の排出、およびトラップに所定深さの封水深を形成することを、一連の洗浄工程で実施するようになっている。殺菌水生成手段12が駆動され、所定濃度の殺菌水をタンク15に向けて吐出される水に混ぜるようになっている。
【0028】
次に、第2実施形態の動作について説明するが、図6のシステムブロック図に示すように、リムとゼットへの流路切替手段が存在せず、直接、ボール2に対してタンク15が給水することになっている以外は、同様であるが、第1実施形態では、殺菌水を供給したい便器洗浄のタイミングで殺菌水を供給すれば、良いがタンク式の場合には、貯留したタンクに殺菌水を供給することになるので、所定時間前の設定は、第1実施形態より若干長くなる。
なお、図5では、タンクに所定濃度の殺菌水を貯留するようにしているが、封水を形成するためのリフィール水にのみ殺菌水を投入するようにすれば、金属電極の消耗が抑制できる共に便器洗浄のタイミングと同時に殺菌水を供給できるので、第1実施形態同様の所定時間前の設定動作で良くなる。
【0029】
上記実施形態では、、洋風大便器に本発明を組み込んだ事例を示したが、本発明の主眼とすることは溜水に殺菌水を供給するものであり、和風便器であったり、圧送方式のポータブル便器のようなものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る殺菌水を用いた便器洗浄システムを組み込んだ直圧給水式便器の斜視図である。
【図2】本発明に係る殺菌水を用いた便器洗浄システムを組み込んだ直圧給水式便器のシステムブロック図である。
【図3】本発明の学習制御の示す使用方法図である。
【図4】本発明の学習制御方法のフローチャートである
【図5】本発明に係る殺菌水を用いた便器洗浄システムを組み込んだロータンク給水式便器の斜視図である。
【図6】本発明に係る殺菌水を用いた便器洗浄システムを組み込んだロータンク給水式のシステムブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
1…便器
2…ボール
3…排水配管
4…溜水
5…トラップ
6…水路開閉手段
7…リム吐水ノズル
8…ゼット吐水ノズル
9…殺菌水供給手段
10…学習制御手段
11…計時手段
12…電力制御手段
13…濃度制御手段
14…制御手段
15…タンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の排泄物を受け排水配管との間に溜水を溜めたトラップを形成した便器と、
前記便器に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、
前記洗浄水と共に殺菌水を供給する殺菌水供給手段を備えた便器において、
前記便器の一定期間の使用状態に基づいて不使用時間帯を予測する学習制御手段とを有し、
前記不使用時間帯の所定時間前から不使用時間帯までの便器洗浄に殺菌水を供給することを特徴とする便器。
【請求項2】
前記殺菌水供給手段は、電解槽により殺菌性金属イオンを供給することを特徴とする請求項1に記載の便器。
【請求項3】
前記殺菌性金属イオンの濃度は、電解槽に供給する電力量によって調整可能性であるを特徴とする請求項2に記載の便器。
【請求項4】
前記不使用時間帯に合わせて殺菌性金属イオン濃度を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の便器。
【請求項5】
前記殺菌水供給手段は、1日利用されない場合には、翌日の最初の便器洗浄に高濃度の殺菌水を投入することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の便器。

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−77680(P2010−77680A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246995(P2008−246995)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】