説明

便器

【課題】標的として設けた目印が小便によって剥がれることがなく、さらに目印を設けたことに起因して汚れが蓄積しない便器を提供することである。
【解決手段】便器1の小便受け部3の所定位置に、LEDランプ4が発する光線7を、透光部5を介して照射させる。透光部5は、便器1の上部に形成された突出部2の裏面側に設けられる。これによって、小便受け部3の当該部位に標的部6を投影する。標的部6は、小便受け部3上に光線7によって形成された目印である。標的部6は、LEDランプ4を点滅させることによって小便受け部3内における位置を強調したり、透光部5に任意のデザインを施すことによって、アニメキャラクタ等を投影することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性が起立姿勢で小便をする際における、標的として目印を付した便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
男性が起立姿勢で便器に向かって無造作に小便をすると、便器の周囲に小便が飛散し易く、便器周囲を汚してしまう。そこで特許文献1に開示されている汚染回避トイレが提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されている汚染回避トイレでは、便器内の所定位置に目印材を貼付や接着等の手段によって配置するように構成されている。便器内に目印材があると、人の心理として、小便が目印材に掛かるようにその目印材を狙うとされている。
【0004】
便器に目印材を設けると、目印材を設けない便器よりも便器周囲の小便による汚染が少ないことを、本発明者らは独自の調査によって確認した。すなわち、特許文献1に開示されている汚染回避トイレは、便器周囲の汚染の軽減に効果を有していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−301505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されている汚染回避トイレでは、目印材を貼付や接着等によって便器表面に取り付けている。そのため、当該トイレの使用が重なるにつれ、目印材が剥がれたり、目印材自体に汚れが蓄積されてしまう。すなわち目印材が剥がれると、再度目印材を取り付けなければならず、また、目印材が汚れると、便器自体が不衛生な状態となる。
【0007】
そこで本発明は、目印が小便によって剥がれることがなく、さらに目印を設けたことに起因して汚れが蓄積することがない便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、便器内部の小便受け部の所定位置に標的を設けた便器であって、光源を設け、当該光源から発する光線が、小便受け部の前記所定位置に照射されることを特徴とする便器である。
【0009】
請求項1の発明では、光源から発する光線が、小便受け部の所定位置に照射され、光線によって便器の小便受け部に標的が配置される。すなわち、光線が便器の小便受け部の表面に照射される位置、又は小便受け部の表面から光線が散乱する位置に標的が配置される。よって、小便受け部の所定位置に標的部材を貼付又は接着しないので、従来の標的のように小便が掛かって剥がれたり、汚れが蓄積することがない。その結果、剥がれた標的を貼り直す手間や、蓄積した汚れを落とす作業が不要になり、メンテナンスの労力が軽減される。
【0010】
また、便器の小便受け部に光が照射される、又は小便受け部に光が散乱するので、夜間において煌煌と明るい照明を点灯しなくても用を足すことができる。すなわち尿意を覚えて目覚め、トイレで明るい照明によって眩しい思いをせずに済み、完全に覚醒することなく用を足すことができる。
【0011】
小便受け部は、光を透過する樹脂等の素材で構成したり、光を反射することができる素材で構成するのが好ましい。すなわち光源を小便受けの裏側に配置して光を透過させて標的を構成する場合には、光を透過する樹脂等の素材で小便受け部(透過部)を構成する。又、光源を小便受け部の表側に配置して光を小便受け部に照射して反射又は散乱させて標的を構成する場合には、光を反射することができる素材で小便受け部を構成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の便器によれば、光源から発する光で小便受け部の所定位置に標的を設けるので、従来のように標的部材を貼付又は接着する必要がない。よって、従来の標的のように標的部材に小便が掛かって剥がれたり、汚れが蓄積することがない。その結果、剥がれた標的を貼り直す手間や、蓄積した汚れを落とす作業が不要になり、メンテナンスの労力が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明を実施した座椅子タイプの便器の斜視図であり、(b)は(a)の便器の部分断面図である。
【図2】(a)は本発明を実施した男性の小便用の便器の斜視図であり、(b)は(a)の便器の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の便器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0015】
まず、図1を参照しながら本発明の実施形態に係る便器の構成について説明する。
【0016】
図1(a)に示す便器1は、椀状部3(小便受け部)と、椀状部3と連通する配管(図示せず)が設けられている。また、椀状部3の上端付近には、多数のノズル(図示せず)が設けられている。すなわち、便器1内の大小便は、図示しないノズルから供給される水によって、椀状部3から図示しない配管を介して外部へ排出される。
【0017】
また、便器1は椀状部3の上方であって後方側には前方へフランジ状に突出する突出部2が設けられている。突出部2は内部に中空部2aを有している。突出部2は、全体が樹脂材やプラスチック材等の強度を有する素材で形成されている。また、突出部2の外部(外面)には、UV硬化性のアクリルなどのコーティング処理を行ってもよい。
【0018】
突出部2の中空部2aには、図1(b)に示す長寿命のLEDランプ4(光源)が配置されている。LEDランプ4としては、周囲の明るさや時間帯等によって、明るさが自動で調整されるものを使用するのが好ましい。突出部2を樹脂材で構成すると、後述する光線7を透過させるような色味調整が容易になる。
【0019】
中空部2aの下側を仕切る下部壁8には、透光部5が設けられている。透光部5は、LEDランプ4の光を通す透光性の素材で形成されている。透光部5は、透光部5を通過した光線7が目に優しい光となるように、LEDランプ4の光を通す素材で構成するのが好ましい。
【0020】
透光部5を通過した光線7は、椀状部3の標的部6に照射される。すなわち標的部6は、椀状部3上の特定の範囲(例えば直径1〜2cm程度)に形成される光線7が照射される部位である。
【0021】
椀状部3に光線7を照射して標的部6を表示すると、標的部6は目印として機能する。すなわち、光線7によって椀状部3の全領域に対して、標的部6のみが目立つ。LEDランプ4が点灯すると、椀状部3には標的部6が表示される。LEDランプ4は、電池式のものを採用すると、便器1の周囲に配線を施す手間が省け、さらに便器1の周囲を簡素化することができて好ましい。また、LEDランプ4は、透光部5を効率よく通過するように、指向性を有する光線7を発するものであるのが好ましい。さらに、光線7の色は任意に選定可能であり、また、点滅させることによって色盲,色弱,弱視などの目の不自由な人にも、標的部6の位置を見え易くすることができる。便器1全体を薄暗く光らせ、標的部6のみを明るく表示することも可能である。さらに、透光部5を工夫してアニメのキャラクタ等を描き、ランプ4を点灯すると、キャラクタが標的部6に投影されるようにすることも可能である。このようにすると、子供に愛着を持たせることができる。
【0022】
夜間には、照明を点灯させなくても便器1の位置が把握できる程度にランプ4の光量を調整すると、ランプ4を点灯させておくことによって、照明を点灯させなくても用を足すことができる。より詳しくは、夜間に尿意を覚えて目覚め、暗がりに目が慣れた状態でトイレへ行き、いきなり照明を点灯させると眩しい思いをする上に、完全に覚醒してしまうが、本発明を実施した便器では、照明を点灯させることなく用を足すことができるので、このような事態を回避することができる。
【0023】
図1(a)に示す例では、LEDランプ4から照射される光線7が、椀状部3の特定の箇所(標的部6)に照射されるように便器1を構成したが、代わりに、椀状部3の標的部6を表示する部位に透光部を配置し、椀状部3の裏面側(内側)にLEDランプを設置してもよい。その際には、透光部は耐水性を有する素材で椀状部3に一体的に設ける。
【0024】
次に、図2を参照しながら本発明の別の便器について説明する。図2(a)に示す便器11は、男性の小便専用の便器である。便器11は、排出部12と小便受け部13とを有している。排出部12は、便器11の下部に設けられており、図示しない配管が接続されている。
【0025】
便器11の内部には中空部17が形成されている。そして図2(b)に示すように、中空部17を仕切る前側の壁が小便受け部13を構成する。小便受け部13は上方から下方へ延びる壁である。小便受け部13の上部には、図示しないノズルが設けられている。小便受け部13に向かって小便が放尿されると、図示しないノズルから水が供給され、小便受け部13に付着した小便が排出部12を介して図示しない配管から外部へ排出される。
【0026】
便器11の中空部17にはLEDランプ14が配置されている。また、LEDランプ14の近傍の小便受け13には、透光部15が設けられている。透光部15は、LEDランプ14から発せられる光を通すことができ、さらに耐水性を有する素材で構成されている。
【0027】
LEDランプ14が点灯すると、光が透光部15を透過し、小便受け部13の表面から放たれる。すなわち、LEDランプ14から発せられる光が透光部15を介して照射され、標的部16が構成される。よって、LEDランプ14の光が、標的部16から周囲へ放たれる。標的部16の機能及び作用効果は、図1の標的部6と同様である。
【0028】
図2(a)に示す例では、小便受け部13自体に透光部15を設けたが、小便受け部13に透光部15を設ける代わりに、便器11の別の部位にLEDランプを設置し、LEDランプから照射される光線が、小便受け部13の特定の箇所(標的部16)に照射されるようにしてもよい。
【0029】
本発明を実施した便器では、標的部6,16が、LEDランプ4,14によって照射される光によって表示されるものであるので、椀状部3(小便受け部13)の表面に凹凸を形成せず、椀状部3(小便受け部13)に汚れが蓄積することがなく、衛生的である。また、標的部6,16は、小便又は流水によって欠落することがなく、従来のように目印材を再度小便受け部に貼付する等のメンテナンスが不要である。
【符号の説明】
【0030】
1 便器
2 突出部(LEDランプを設置する部位)
3 椀状部(小便受け部)
4 LEDランプ(光源)
5 透光部
6 標的部
11 便器
13 小便受け部
14 LEDランプ
15 透光部
16 標的部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器内部の小便受け部の所定位置に標的を設けた便器であって、光源を設け、当該光源から発する光線が、小便受け部の前記所定位置に照射されることを特徴とする便器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−2203(P2013−2203A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136229(P2011−136229)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】