説明

便座シート

【課題】便座に着座する者の体格に関係なくお尻が便座に接触しないようにすることができる便座シートを提供する。
【解決手段】便座の略全周に亘って載置される環状をなし、便座の内周側に対応する内縁1a及び外周側に対応する外縁1bの夫々に複数のスリット11,12を設けるとともに、内縁1a及び外縁1bに亘って第2スリット13を設け、スリット11,11間の部片1cを便座の内周部へ押付け、スリット12,12間の部片1dを便座の外周部へ押付けることにより便座の上面側内周部及び外周部に亘って覆うことができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座の上面部に載置する便座シートに関する。
【背景技術】
【0002】
洋式便器には便器本体に対して揺動が可能なO型、U型などの便座を備えており、便座には便座カバーが装着されるか、又は、便座シートが載置される(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
便座カバーは便座の上面部から下面部にかけて被覆し、ゴム紐及びフック等により便座に装着されるように構成されているのに対し、便座シートは便座の上面部に載置されるだけであるため、便座カバーに比べて簡易に装着、取外しができ、しかもコストを低減できる。
【0004】
洋式便器の便座には複数の型式があり、また、型式が同じであっても便座メーカによって便座の大きさが異なるため、便座シートを各便座に共通して用いる場合、便座に対して便座シートの便座内周側が小形であるときは、便座上面部の内周側の露出量が多くなり、この内周側露出部分にお尻が接触して着座感を損なうことになる。また、便座に対して便座シートの便座内周側が大形であるときは、便座シートの内側縁部が便座の内周縁よりも突出し、便座の内周部内空間が狭くなり、便座シートが汚れ易くなる。
【0005】
斯かる事情に鑑みて、便座の内周側となる縁に複数のスリットを設け、便座内周側が大きすぎるとき、スリット間の部片を便座側へ押付けることにより該部片を便座に接着することができるように構成された便座シートが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願平11−178748号公報
【特許文献2】実開平4−25594号公報
【特許文献3】実用新案登録第3105081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年は体格が太り気味の傾向にあるに拘らず、従来の便座シートは便座の内周側となる縁にだけスリットが設けられ、便座の外周側となる縁は、便座の外周縁よりも突出しないように形成されているにすぎないため、標準よりも太い者が着座した場合、便座上面部の外周側露出部分にお尻が接触して着座感を損なうことになり、改善策が要望されていた。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、主たる目的は便座の内周側に対応する縁及び外周側に対応する縁の夫々に複数のスリットを設けることにより、体格に関係なくお尻が便座に接触しないようにすることができる便座シートを提供することにある。
【0009】
また、他の目的は便座の上面部の略全周に亘って載置される環状とし、内周側に対応する縁及び外周側に対応する縁に亘って第2スリットを設けることにより、便座上面部を略全周に亘って覆うことができるに拘らず、便座に対して周方向長さが長すぎる場合は、第2スリットの縁部を切断して周方向長さを短くすることができ、また、便座に対して周方向長さが短すぎる場合は、第2スリットの両縁を離隔させて便座上面部の適正箇所に載置することができる便座シートを提供することにある。
【0010】
また、他の目的は第2スリット側の幅を第2スリットと対向する側の幅よりも狭くすることにより、お尻が接触しない便座の前部に第2スリット部分を配置することができる便座シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る便座シートは、便座の上面部に載置される便座シートにおいて、便座の内周側に対応する縁及び外周側に対応する縁の夫々に複数のスリットを設けてあり、前記便座に接触する面に接着層を有することを特徴とする。
【0012】
この発明にあっては、大きさが異なる便座夫々の上面側内周部及び外周部に亘って覆うことができる幅を有する便座シートとすることにより、便座の大きさに関係なく該便座の上面部に載置して、便座の内周側に対応する部分は、スリット間の部片を便座の内周部へ押付けることにより該部片を便座に接着することができ、また、便座の外周側に対応する部分は、スリット間の部片を便座の外周部へ押付けることにより該部片を便座に接着することができ、便座の上面側内周部及び外周部に亘って覆うことができるため、体格に関係なくお尻が便座に接触するのを防ぐことができ、着座感を良好にできる。
【0013】
また、本発明に係る便座シートは、便座の上面部の略全周に亘って載置される環状をなし、前記内周側に対応する縁及び外周側に対応する縁に亘って第2スリットを有することを特徴とする。
この発明にあっては、全体が環状であるため、便座の上面部を略全周に亘って覆うことができ、しかも、便座に対して周方向長さが長すぎる場合は、第2スリットの縁部を切断して周方向長さを短くすることができるため、第2スリットの縁部を重ならせることなく便座上面部の適正箇所に載置することができ、また、便座に対して周方向長さが短すぎる場合は、第2スリットの両縁を離隔させて便座上面部の適正箇所に載置することができる。
【0014】
また、本発明に係る便座シートは、前記第2スリット側の幅は、第2スリットと対向する側の幅よりも狭いことを特徴とする。
この発明にあっては、第2スリットと対向する側の広幅部分を便座のお尻が接触する後側に配置し、便座のお尻が接触しない前部に狭幅の第2スリット部分を配置して便座の上面部分を覆うことができるため、第2スリットに影響されることなく良好な着座感を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、便座の内周側に対応する部分は、スリット間の部片を便座の内周部へ押付けることにより該部片を便座に接着することができ、便座の外周側に対応する部分は、スリット間の部片を便座の外周部へ押付けることにより該部片を便座に接着することができ、便座の上面側内周部及び外周部に亘って覆うことができるため、体格に関係なくお尻が便座に接触するのを防ぐことができ、着座感を良好にできる。
【0016】
また、本発明によれば、便座の上面部を略全周に亘って覆うことができるとともに、便座に対して周方向長さが長すぎる場合でも第2スリットの縁部を重ならせることなく便座上面部の適正箇所に載置することができ、また、便座に対して周方向長さが短すぎる場合でも便座上面部の適正箇所に載置することができる。
【0017】
また、本発明によれば、第2スリットと対向する側の広幅部分を便座のお尻が接触する後側に配置し、便座のお尻が接触しない前部に狭幅の第2スリット部分を配置して便座の上面部を覆うことができるため、第2スリットに影響されることなく良好な着座感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る便座シートの構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る便座シートの構成を示す底面図である。
【図3】図1のIII −III 線の拡大断面図である。
【図4】本発明に係る便座シートがO型の便座の上面部に載置された状態の断面図である。
【図5】本発明に係る便座シートがO型の便座の上面部に載置された状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は便座シートの構成を示す平面図、図2は便座シートの構成を示す底面図、図3は図1のIII −III 線の拡大断面図である。
【0020】
本発明に係る便座シート1は、O型の比較的大きい便座の上面部を略全周に亘って覆うことができる大きさの環状をなし、便座の内周側に対応する内縁1a、及び外周側に対応する外縁1bの夫々に、縁1a,1bの長手方向に離隔して複数のスリット11,12が設けられており、周方向の一箇所には、内縁1a及び外縁1bに亘って第2スリット13が設けられており、便座に接触する下面に接着層14が設けられている。
【0021】
この便座シート1は、O型の便座の外周縁に対応する大きさの外縁1bに対して、O型の便座の内周縁に対応する大きさの略楕円形をなす内縁1aが第2スリット13側へ偏倚し、第2スリット13側の幅が、第2スリット13と対向する側の幅よりも漸次狭くなっている。便座シート1は不織布によって柔軟に形成されており、上面が起毛され、下面に接着層14が塗布され、複数に折重ねてコンパクトに包装することができるように構成されている。包装された便座シート1は、折重ねられているため、非環状であるが、展開された状態では第2スリット13の縁部が重なって環状になるか、又は第2スリット13の両縁が対向して環状になる。
【0022】
スリット11,12は、内縁1a及び外縁1bの長手方向に30乃至50mm程度の寸法で離隔する位置に配してある。
【0023】
不織布による便座シート1の加工は、ポリエステル等の熱可塑性繊維を互いにからませて集合してなる比較的薄肉のシート状のウェブが形成され、このウェブの一面がニードルパンチ加工により起毛された後、ウェブの他面に接着層14が塗布され、O型の便座に対応する大きさ及び形状に形成される。このように形成された便座シート1は良好な保水性を有すると共に、柔軟性を有する。
【0024】
接着層14は粘着性を有するアクリル酸エステル共重合体及び熱可塑性繊維とよく相溶するメチルメタアクリレートブタジエン共重合体のエマルジョンに充填材を配合してなる合成樹脂材料が用いられる。
【0025】
接着層14は次のような工程によって形成される。上述した合成樹脂材料の溶液をポンプによって送り出す送出路の中間に空気源に連通する撹拌室が設けてあり、該撹拌室に空気を吹き込みつつ撹拌室に供給された前記溶液を撹拌することによって該溶液を泡立たせ、この泡状溶液を前記送出路の出口から便座シート1を構成する前記不織布の下面に塗布し、この塗布された泡状溶液をドクターブレードにより均した後、約120℃の乾燥室で1乃至2分の間乾燥させ、この後、乾燥室から取り出し、冷却することにより粘着性を有する状態で前記泡状溶液が硬化し、複数の微小気泡を有する接着層14が形成される。尚、不織布の下面に塗布された溶液の一部は不織布に浸透する。
【0026】
上述の接着層14を形成するときの乾燥によって泡状の溶液のアクリル酸エステル共重合体とメチルメタアクリレートブタジエン共重合体とが化学反応して分子間に橋かけ結合が生じ、また、溶液の全ての泡部が微小気泡となる。この溶液のアクリル酸エステル共重合体とメチルメタアクリレートブタジエン共重合体との橋かけ結合によって接着層14の保形性を高めることができ、該保形性によって、不織布の保形性を高めることができ、洗濯による皺を発生し難くできる。しかも、微小気泡は接着層14の表面にも生ずるため、接着層14を便座の上面部に押付けることによりその表面に露出する複数の微小気泡の夫々が内部空気を排出し、真空吸着作用をなし、この真空吸着作用及び前記粘着性が接着層14の接着性を高めている。
【0027】
図4は便座シート1がO型の便座Aの上面部に載置された状態の断面図、図5は便座シート1がO型の便座Aの上面部に載置された状態の斜視図である。O型の比較的大きい便座Aの上面部を略全周に亘って覆うことができる大きさの環状に形成されている便座シート1は柔軟性を有し、複数に折重ねてコンパクトに包装されている。解包された便座シート1は折重ね状態から展開され、狭幅部分に設けられている第2スリット13が便座Aの前部に位置するように便座Aの上面部の略全周に亘って載置され、環状となる。この際、便座Aに対して周方向長さが長すぎる場合は、第2スリット13の縁部の一方又は両方を切断して周方向長さを短くし、第2スリット13の両縁が突合うようにする。また、便座Aに対して周方向長さが短すぎる場合は、第2スリット13の両縁が離隔するように便座Aの上面部の適正箇所に載置される。
【0028】
便座Aの上面部の略全周に亘って載置された環状の便座シート1は、内縁1aのスリット11,11の間の部片1cが便座Aの内周部へわずかな力にて押付けられることにより、接着層14の接着性、即ち、粘着性及び真空吸着作用によって夫々の部片1cを弁座Aの上面側内周部に接着することができ、また、外縁1bのスリット12,12の間の部片1dが便座Aの外周部へわずかな力にて押付けられることにより、接着層14の接着性、即ち、粘着性及び真空吸着作用によって夫々の部片1dを便座Aの上面側外周部に接着することができ、便座Aの上面側内周部及び上面側外周部に亘って覆うことができるとともに、部片1c,1dの曲げ状態を保つことができる。
【0029】
このように便座Aの上面側内周部及び上面側外周部に亘って覆うことができるため、体格に関係なくお尻が便座Aに接触するのを防ぐことができ、着座感を良好にできる。
【0030】
また、便座シート1は便座Aのお尻が接触しない前部に第2スリット13が位置するように載置されるため、第2スリット13に影響されることなく良好な着座感を得ることができる。
【0031】
汚損した便座シート1は、便座シート1の第2スリット13側端部を掴んで持ち上げることにより容易に便座上面部から剥がすことができ、この汚損した便座シート1を洗濯機等により洗濯することができる。
【0032】
また、接着層14は接着性及び保形性を有する合成樹脂材料からなり、この接着層14が便座シート1の洗濯による皺を防いでいるため、便座シート1の洗濯を繰り返した場合においても洗濯皺を生じさせることなく平坦な形状を保つことができ、洗濯した便座シート1を便座に良好に載置するこことができる。
【0033】
尚、以上説明した実施の形態では、不織布の下面に接着層14を全面的に設けたが、その他、接着層14は内縁1aのスリット11,11間の部片1cの下面及び外縁1bのスリット12,12間の部片1dの下面にだけ設けた構成としてもよい。
【0034】
また、以上説明した実施の形態ではO型の便座の上面部に載置される便座シートについて説明したが、その他、U型の便座の上面部に載置される場合、U型の便座の上面部形状に対応して第2スリット13の縁部を切断することにより、U型の便座の上面部に載置することも可能である。
【0035】
また、本発明に係る便座シートは、便座の略全周に亘って載置される環状である他、O型の便座上面部の左右両側に載置される略円弧形であってもよいし、また、U型の便座の上面部に載置される略U字形であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 便座シート
1a 内縁
1b 外縁
11 内縁のスリット
12 外縁のスリット
13 第2スリット
14 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座の上面部に載置される便座シートにおいて、便座の内周側に対応する縁及び外周側に対応する縁の夫々に複数のスリットを設けてあり、前記便座に接触する面に接着層を有することを特徴とする便座シート。
【請求項2】
便座の上面部の略全周に亘って載置される環状をなし、前記内周側に対応する縁及び外周側に対応する縁に亘って第2スリットを有する請求項1記載の便座シート。
【請求項3】
前記第2スリット側の幅は、第2スリットと対向する側の幅よりも狭い請求項2記載の便座シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−170587(P2012−170587A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34783(P2011−34783)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(596060594)株式会社サンコー (65)
【Fターム(参考)】