説明

保存しようとする衣装を主な資材とする装飾体

【課題】 衣装を効率良く収納あるいは保存しながら観賞でき、また、衣装の潜在的な価値を活用することにより効率良く生活空間を装飾することができる装飾体を提供する。
【解決手段】 衣装を主な資材として作成した任意の形状体をインナー部材とし、前期インナー部材を収容したまま観賞、保存できるケースをアウター部材として、前期インナー部材と前期アウター部材とを組み合わせることによって、衣装の収納と保存、観賞の三つの要求に応えるとともに、衣装を小さく収納する際に避けられない皺や型くずれを、装飾効果を高めるための表現手法の一要素とみなして意図的につくることによって、保存しようとする衣装が備えていた潜在的な装飾品としての価値を導き出して、効率良く生活空間を装飾する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存しようとする衣装を主な資材として任意の形状を表現した装飾体に関し、特に衣装を効率良く収納あるいは保存した状態で観賞でき、また、衣装が備えていた装飾品としての潜在的な価値を導き出すことによって、効率良く生活空間を装飾することができる装飾体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣装を収納あるいは保存するためのタンス、ケース、真空パック等は知られている。また、真空パックの応用例として、任意の形状を維持することを特徴とする包装袋も開示されている。(特許文献1参照)
【0003】
また、衣装を保存したままで展示、陳列をしやすくするためのケースも開示されている。(特許文献2参照)
【0004】
さらに、衣装を記念に残すための方法としては、ミニチュアドレスを作成することも知られている。(例えば、特許文献3参照)
【0005】
しかし、衣装の収納、保存、観賞の三つの要求に応え、また生活空間を装飾することができる装飾体は提案されていない。(例えば、非特許文献1〜7参照)
【0006】
【特許文献1】 特開平6−199354号広報
【特許文献2】 実用新案登録第3129029号広報
【特許文献3】 特開平11−34598号広報
【非特許文献1】 「All about」 http://allabout.co.jp/gs/weddingdress/subject/msub_cate02.htm
【非特許文献2】 「YAHOO!知恵袋 ウェディングドレスをレンタルではなく買ったという方に質問。結婚式後は?」 http://allabout.co.jp/gs/weddingdress/subject/msub_cate02.htm
【非特許文献3】 「教えて!goo 使用後のウェディングドレスどうしましたか?」 http://oshiete1.goo.ne.jp/qa1150596.html
【非特許文献4】 「教えて!goo ウェディングドレスを買い取った後は・・・?」 http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3427846.html
【非特許文献5】 「教えて!goo ウェディングドレスのその後」 http://oshiete1.goo.ne.jp/qa1351206.html
【非特許文献6】 「教えて!goo 使用後のウェディングドレスについて」 http://oshiete1.goo.ne.jp/qa408394.html
【非特許文献7】 「教えて!goo ドレスはレンタルが賢明?」 http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3880146.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
衣装を収納するとき、折り畳めば皺や型くずれを避けられず、そのまま吊るせば大きなスペースを占有する難点があった。
【0008】
また、保存性を高めようとすると、専用のタンスやケース、あるいはビニール袋の中に密閉することになり、観賞したい場合にはその度に取り出さなければならず不便であった。
【0009】
また、観賞できる状態を優先すると、限られた生活空間においては収納あるいは保存がうまくできなかった。
【0010】
特に、使用済みのウエディングドレスや子供が発表会で着用したバレエコスチュームのように、将来使用する機会をほとんど失った衣装は、収納あるいは保存の要求が強く、観賞の要求もまた強いが、両方の要求に応え得る良い方法がなく、結果としてどちらかを優先しなければならなかった。また、これらの悩みのために自分のドレスを手に入れること自体をあきらめて、レンタルドレスを利用する場合が多かった。
【0011】
そして、上述のとおり特許文献1には任意の形状を維持することを特徴とする包装袋が示されているが、形状を決定するものは外壁を兼ねるビニール袋であるため、衣装をつめこんだ状態は装飾品となりにくい。
【0012】
また、特許文献2には衣装を保存したままで展示、陳列をしやすくするためのケースが示されているが、衣装の原形をできるだけ保つことを前提として考案されているため、衣装の原形から派生する芸術的な装飾効果を得たいという要求には応えられない。また、運搬に適する形状及び重量にすることも前提としているため、永続的な展示用途に対してはケースの耐久性及び美麗さに優れず、装飾品にはなりにくい。また、衣装の保存性を良くするための工夫がされているが、持ち運ぶことを想定しない木製や樹脂製のケースに同じ工夫を施した場合の保存性と比較すると劣るということは、実験結果がなくても想像できる。
【0013】
また、特許文献3にはミニチュアドレスの製作方法が示されている。ミニチュアドレスは、この文献の例に限らず、衣装を記念に残すひとつの方法として認知されている。ミニチュアドレスの場合、原形の雰囲気を小さな形で再現することを前提として、日常生活において観賞をしやすくしているが、衣装の原形を留めないため、本来の衣装としては二度と使用することも観賞することもできない。
【0014】
特に嵩高性が問題となるウエディングドレスの収納、保存、または活用について、市販の結婚情報誌やインターネットの相談コーナー等を参照してみると、活発な議論が多く見られる一方、真空パックにすること、ミニチュアドレスやベビードレス、あるいはクッション等に作り替えること、または衣装ケースやタンス等に入れること以外の選択肢は提案されていない。(例えば、非特許文献1〜7参照)
【0015】
本発明は、上述の課題を解決するため、衣装を小さく収納する際に避けられない皺や型くずれを、任意の形状を表現するための一要素とみなす独自の考えに基づいて、衣装の収納と保存、観賞の三つの要求に応えるとともに、生活空間を芸術的に装飾したいという要求にも応え、また、実用品の一部もしくは全部としても活用できる発展性を持つことによって、生活空間の中に効率よく存在できる装飾体を提供するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の装飾体は、インナー部材とアウター部材とから成る装飾体であって、装飾体の本体であるインナー部材は、衣装を主な資材として作成した任意の形状体であり、装飾体の本体を収容するケースであるアウター部材は、少なくとも一部分が透明または半透明であることを前提とする。
【0017】
上記の前提の構成において、本発明では、インナー部材は衣装を主な資材として、以下のように構成される。
【0018】
衣装を収納するために折り畳んだり丸めたりするときに表れる生地等の折り目や曲面、筋、また生地が重なり合うことによって表れる色の濃淡や陰影等を、草花を模した形や幾何学模様等を表現するための一要素とみなして意図的に施しながら、任意の形状とした状態をクリップ等によって保持する。
【0019】
また、この過程において使用する保持のための部品は、単に保持機能を持つばかりではなく、色彩や形状、質感等を工夫して露出させたり、衣装の生地を透かして視認できるようにしたりして装飾効果を高める効果を持つことができる。
【0020】
尚、本発明では、前記の保持のための部品は、それぞれ独立して存在できる樹脂製の板や留め具等で、またインナー部材を形成する際に衣装に取り付けることを基本としているが、これとは逆に前記のアウター部材の側に備えたり、アウター部材を構成する部品の一部もしくは全部と同一のものとしたり、また、インナー部材とアウター部材の両方に備えることもできる。
【0021】
また、保存しようとする衣装にもともと備わっているファスナーやボタン、フック、あるいは、生地や芯材の柔軟性、反発力、張力、復元力等を、保持のための部品あるいは機能として活用することもできる。特に、衣装を折り畳んだり、縛ったり、ひねったり、折り目を広げたりすることを、任意の形状をつくるための主な表現手法とする場合は、折り紙やふろしきと同様に、衣装自体によって多彩な形状を表現でき、また保持できる。
【0022】
以上のようにして構成されるインナー部材は、衣装の収納あるいは保存をしやすくするという目的においては、衣装を再び使用する際には保持を解除し、アイロンをかける等して原状を回復することができるという点で、単に折り畳んだり丸めたりする場合と比較して、同等かそれ以上の効果がある。
【0023】
また、観賞をしやすくするという目的においては、保持のための部品やその他の装飾部品を加減することにより、衣装本来の大きさを上まわる大きさにすることも、頗る小さくすることもできる上、衣装に本来とは別の芸術的要素を加えることができるという点で、単にボディに着せたりハンガーにかけて吊るしたりする場合と比較して同等かそれ以上の効果がある。
【0024】
さて、上記の前提のとおり、本発明では、アウター部材は少なくとも一部分が透明または半透明である。これにより、内包するインナー部材を観賞することを可能にしている。透明部分にはサンドブラスト加工やカッティングシートによる装飾等を施して、また、その他の部分には彫刻やプリント装飾等を施して、装飾効果を高めることもできる。
【0025】
アウター部材は、インナー部材を出し入れする際に使用する開口部を備えている。開口部はアウター部材を大きく二つに分断する様式を基本とするが、インナー部材の形状と大きさに合わせて、アウター部材の後面、上面、側面、下面、前面のうちのいずれかに備えることができる。尚、開口部にはパッキンやオーリング等を挟み、開口部の蓋となる部品をネジ止めすることによって内部の機密性を保つことができる。
【0026】
また、アウター部材は密閉できる構造にするとともに、内側の空気を抜き取る際や、窒素ガス等、別の物質と置き換える際や、防虫剤、脱酸素剤、除湿剤等を封入する際に使用するチューブやバルブを装着できるひとつ以上の穴を備えることができ、これによりインナー部材の保存性を高めることができる。
【0027】
また、この発明の装飾体では、上記前提の構成において、インナー部材と併存する独立した庫をアウター部材にひとつ以上設けることができる。前記の庫は、インナー部材の主な資材となった衣装に関する記念品、あるいは貴重品等を収納する場所として活用できる。
【0028】
この発明の装飾体のインナー部材とアウター部材とには、音、光線、画像、映像、色、香り、熱、風、動きのいずれか、或いはこれらのうちの二つ以上を組み合わせて表す装置を備えることができる。この装置は、例えば、からくり時計におけるからくりのように働き、この発明の装飾体の存在感を増したり、装飾効果を高めたりできる。また、インナー部材の主な資材とした衣装にまつわる記憶を刺激したり、本発明による装飾体を用いて表現しようとする芸術性を増したりできる。
【0029】
また、この発明の装飾体には、アウター部材の材料や形状を工夫したり、アウター部材に保持金具等を取り付けたりすることによって、台座、足、蝶番、ハンドル、フック、鏡、開閉式の仕切り等、什器や建築材料を構成するための部品のいずれか、或いはこれらを組み合わせて取り付けることができる。例えば、アウター部材を薄い額縁状の丈夫な構造にするとともに、アウター部材の後面に備えたパンチングメタル板に足をつける等して水平に設置することによって机やテーブルとして活用でき、また、台座をつける等して垂直に設置することによって衝立、間仕切り、屏風、サイン、看板、ベッドボード等として活用でき、また、蝶番もしくはキャスター等とハンドルをつけることによって扉、フックを取り付けることによってアートフレーム、鏡を取り付けることによって鏡台として活用できる。
【0030】
また、本発明による装飾体は、送風機、暖房器具、映像表示装置、音響装置、時計等と一体にすることができる。例えば、インナー部材に照明装置を取り付け、アウター部材を薄型にして天井に取り付けることによって照明器具とすることができる。この場合、もともと照明器具を取り付けるために必要だった空間を、衣装の収納場所と兼用することによる省スペース効果がある他、照明器具は部屋を明るくするのみならず、本発明による装飾体の存在感をより強調することと相まってシャンデリアのように部屋を効率良く装飾できる。このように、この発明の装飾体は、単に収納と保存、また観賞のためのものとしてではなく、家具や家電製品等の実用品の一部もしくは全部として活用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の装飾体の実施の形態を説明する。図1及び図2は、本実施の形態による装飾体の前面、後面それぞれの斜視図であり、図3及び図4は、インナー部材の前面と後面をそれぞれ示している。
【0032】
図3及び4に示すように、本実施の形態では、インナー部材1はウエディングドレス3を主な資材とし、ナイロン等の柔軟性のある素材のメッシュ板6を基礎にして、このメッシュ板6にウエディングドレスドレス3を絡めながら、折り曲げたり、ひねったりすることによって皺や曲面を表すことと、表した皺や曲面の裏側にナイロン等の強度と弾性を兼ね備えた素材のヘアピン状のクリップ7を複数使用することによって、薔薇の花を模した形状で保持している。さらに、中心部分には結婚式で使用したティアラ4を、ウエディングドレス3の皺の中に埋め込むことにより保持して一部を露出させている。
【0033】
図3に示すように、インナー部材1の前面にはプリザーブドフラワー5が複数配置されている。これらはウエディングドレス3を折り畳むときにできる皺と皺の間に挟み込むことにより保持している。また、皺のない部分においては適宜箇所に配置した小型の磁石と鉄製のプレート(図示省略)によって保持している。
【0034】
一方、図4に示すようにインナー部材1の後面にはLED照明装置8と、前記LED照明装置8の点灯に反応して一定時間音を奏でることができる電子式のオルゴール9とを取り付けてある。オルゴール9には結婚式で使用した楽曲等を使用できる。また、前記のメッシュ板6には、アウター部材2と接続するためのスナップボタン付きプレート10を設けている。
【0035】
さらに、図4に示すように、インナー部材1の裏側には独立して回転する円形板11を備えている。この円形板11には四枚の反射板を取り付け、LED照明装置8による光線を乱反射して装飾効果を増す。円形板11には、軸とプーリーを取り付けて回転できるようにしている。また、前記オルゴール9が出す音と連動して前記円形板11を回転させるモーターとギアボックス及びセンサーから成る回転機構12をインナー部材の後面下部に配置している。
【0036】
図5及び図6は、本実施の形態の装飾体のアウター部材2の前面及び後面をそれぞれ示す図である。本実施の形態では、アウター部材2の側面及び後面には樹脂系塗材を塗布した桐材を使用し、前面には紫外線カット加工とサンドブラスト加工を施した強化ガラス14を取り付けている。尚、樹脂系塗材は透明または半透明のもの、例えばプレポリマー塗料(寿化工株式会社製品)が好適に使用される。また、桐材を白木の状態で使用する場合で、表面の汚れを避けたい場合には、桐材周囲の通気を確保した状態で樹脂や金属、ガラス等の汚れ防止プレートを備える。また、アウター部材2の全体は、後述する開閉部17を除き、シリコン系シーリング材を用いて密封している。
【0037】
図6に示すように、アウター部材2の後面には、インナー部材1と干渉しない部位に、開閉部17を設けている。開閉部17はアウター部材2の内側に、独立した空間として設けた庫(図示省略)に通じており、これにより写真や書類、貴重品等を保管できる。また、アウター部材2の後面には、主電源スイッチ20を設けており、この主電源スイッチ20によってインナー部材1に取り付けたLED照明装置8等の電源のオンオフを切り替える。
【0038】
また、装飾効果を高めるため、アウター部材2のガラス14には上記のとおりサンドブラスト加工を施した他、その周囲の桐材には宝石と細い貴金属を埋め込んだ彫刻13を施してあり、また前面下部中心には文字と模様を刻み込んだ小プレート16を備える。
【0039】
さらに、アウター部材2の後面には凹凸加工18を施している。これにより、桐材の調湿機能をより効率良く活用でき、内包するインナー部材1の保存性を高め、またアウター部材2が住宅の壁面等に接する面積を小さくでき、壁面等との間の通気性を確保する。
【0040】
また、アウター部材2の後面下部には小バルブ21及び大バルブ22を取り付けている。これはアウター部材2の内部の空気を抜き取り、窒素ガスと置き換えることによってインナー部材の保存性を高める場合に使用する他、脱酸素剤、除湿剤、防虫剤等を封入する際にも使用する。
【0041】
また、電源コード15はインナー部材1に取り付けられたLED照明装置8及び電子式オルゴール9と回転機構12の内部のモーターに電力を供給する。尚、電源コード15の取り出し口はアウター部材2の内部を密閉するために、シリコン系シーリング材を使って封じている。
【0042】
さらに、アウター部材2の後面にはアルミ製のパンチングメタル板19を備えている。これに任意の部品をネジ止めすることにより、本実施の形態の装飾体を壁面に取り付けたり、テーブルとしたり、天井に取り付けて照明器具としたりできる。
【0043】
図7及び図8は、本実施の形態の装飾体のアウター部材2の前面に右扉23及び左扉24を取り付けて閉じた状態と開けた状態をそれぞれ示す図である。右扉23及び左扉24はアウター部材2の両端に取り付けた蝶番によってそれぞれ開閉できる仕組みになっている。インナー部材1を観賞する場合には開け、それ以外のときには閉めておくことができる。
【0044】
図7が示すとおり、右扉23には五分割された写真立て25を備えている。これにより、観賞する写真や絵画等を入れておくことができる。また、写真立て25の一部もしくは全部は、裏あて板を取り除くことができる仕組みになっており、この裏あて板を取り除くことによって、扉を閉じた状態でも内側を覗き見ることができる。
【0045】
また、左扉24の表面には鏡26が取り付けてある。これにより、左扉24を閉じた状態では本実施の形態による装飾体を取り付けた空間を広く見せる効果を期待でき、また、身だしなみを確認する等のために使用することができる。
【0046】
また、図8が示すとおり、右扉23及び左扉21の付け根にはそれぞれ右保持金具33及び左保持金具34を取り付けている。これにより、扉を開けた状態を保ち、風に煽られる等して扉が動くことを防ぐ。さらに、右扉23の上部付け根付近にはマイクロスイッチ27を取り付けている。これにより、右扉23を開けた場合にのみ、インナー部材1に取り付けたLED照明装置8のスイッチを入れられる仕組みになっている。
【0047】
また、右扉23の裏面には前記の写真立て25の後面がある。この写真立て25は、前面の透明板と裏あて板の両方を取り外すことができる構造になっているため、前記の透明板と裏あて板を入れ替えることにより、右扉23を閉めた状態で写真や絵画を観賞することができる一方、右扉23を開けた状態で写真や絵画を観賞できるように切り替えることもできる。
【0048】
また、左扉24の裏面には大プレート30を取り付けている。大プレート30にはエッチング加工を施して装飾効果を高め、左扉24の後面に取り付けられた右レール31及び左レール32及び下レール35とプレート押さえ爪28によって保持する。また、大プレート30は取り外すことができるため、結婚式の時に使用するウェルカムボード等と兼用できる。
【0049】
さらに、大プレート30は左扉24に取り付けられた鏡26の裏あてになっている。このため、大プレート30を取り外せば鏡26を取り外すことができ、鏡26の角についた汚れ等をふき取ったり、別の鏡等と交換したりすることができる。
【0050】
尚、大プレート30と鏡26との間には隙間を埋めて互いを安定させるためにフェルトシート29を挟んでいる。また、フェルトシート29に芳香剤をしみ込ませることにより、任意の香りを一定期間にわたって放出させることができる。
【0051】
上述のように、本実施の形態では、右扉23と左扉24は共に装飾効果を高める特徴を備えているが、装飾効果を常に必要とするわけではない場合には、扉の表面を部屋の壁や家具等と似た仕上げにする。また扉の代わりにカーテン等を取り付けて、単に観賞を制限する仕切りにすることもできる。
【0052】
ところで、本実施の形態における特筆すべき特徴として、衣装を折り畳む際にできる皺や型くずれを、装飾効果を高めるための表現手法の一要素として意図的につくっていることがあげられる。つまり通常、皺や型くずれは好ましくないものとされ、回避するための方法が提案されている。従って、本発明のように衣装の収納あるいは保存を目的のひとつとする場合、衣装の原状をできるだけ改変しないように配慮するのが一般的な常識(既成概念)といえるが、本発明では係る概念を打破し、改変を好ましいこととしている。しかし、衣装を単なる布地素材とみなす考え方には至らず、衣装を保存するという前提を守っている。
【0053】
さらに、本発明による装飾体は、ドレスの一部を切り取る等してミニチュアドレスやベビードレス等を製作する要求がある場合にも、その残りの部分を保存し、観賞するためのものとして提供できる。
【0054】
以上、本発明の原理、実施の形態及び考え方を記述した。しかし、本発明は、説明した特定の実施の形態に限られると解釈すべきではない。したがって、以上に記述した実施の形態は、制限的というよりも実証例としてみなすべきであり、これら実施の形態の様々な変形例が、請求の範囲にて定義される本発明の範囲から逸脱することなく当業者により作られるであろうことを理解されたい。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、衣装の収納と保存、観賞の三つの要求に効率良く応えるとともに、衣装を小さく収納する際に避けられない皺や型くずれを、装飾効果の一要素として活用することによって、保存しようとする衣装が備えていた装飾品としての潜在的な価値を導き出すことができ、効率良く生活空間を装飾することができる。また、単なる装飾品としてではなく、実用品の一部もしくは全部として生活空間の中に効率良く存在した状態で、生活空間を装飾することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態における装飾体の前面外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における装飾体の後面外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における装飾体のインナー部材前面を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における装飾体のインナー部材後面を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における装飾体のアウター部材前面を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における装飾体のアウター部材後面を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における装飾体に付けた扉を閉じた状態を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における装飾体に付けた扉を開けた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 インナー部材
2 アウター部材
3 ウエディングドレス
4 ティアラ
5 プリザーブドフラワー
6 メッシュ板
7 クリップ
8 LED照明装置
9 オルゴール
10 スナップボタン付きプレート
11 円形板
12 回転機構
13 彫刻
14 強化ガラス
15 電源コード
16 小プレート
17 開閉部
18 凹凸加工
19 パンチングメタル板
20 主電源スイッチ
21 小バルブ
22 大バルブ
23 右扉
24 左扉
25 写真立て
26 鏡
27 マイクロスイッチ
28 押さえ爪
29 フェルトシート
30 大プレート
31 右レール
32 左レール
33 右保持金具
34 左保持金具
35 下レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナー部材とアウター部材とから成る装飾体であって、
前記インナー部材は、衣装を主な資材として、草花を模した形や幾何学模様など任意の形を表した状態を、クリップ、糸、紐、磁石、ピン、粘着テープなどによって保持することにより形成され、前記アウター部材は、前記インナー部材を収容できるとともに、前記インナー部材を観賞できるように、透明もしくは半透明の部分を備えたケースであることを特徴とする装飾体。
【請求項2】
前記アウター部材は、密閉できる構造とし、また、チューブを差し込んだり弁を取付けたりできるひとつ以上の穴を備えることにより、内部の空気を抜き取ったり、内部の空気を窒素ガス等他の物質と置き換えたり、または脱酸素剤や除湿剤、防虫剤等を封入できるようにして、前記インナー部材を長期保存するための対策を施したことを特徴とする請求項1に記載の装飾体。
【請求項3】
前記アウター部材には、前記インナー部材とは別に、貴重品など任意の品物を出し入れできる独立した庫をひとつ以上備えていることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の装飾体。
【請求項4】
前記装飾体に、音、光線、画像、映像、色、香り、熱、風、動きのいずれか、或いはこれらのうちの二つ以上を組み合わせて表す装置を備えることにより、前記装飾体の存在感を増したり、前記装飾体の装飾効果を高め得ることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の装飾体。
【請求項5】
前記アウター部材に、台座、足、照明装置、蝶番、ハンドル、フック、鏡、開閉式の仕切り等、什器や建築材料を構成するための部品のいずれか、あるいはこれらを組み合わせて取付けられるようにしたことにより、机やテーブル、ベッドボード、照明器具、扉、壁掛け、屏風、衝立、間仕切り、鏡台、収納家具、サイン、看板等の実用品の一部もしくは全部として活用できるようにした請求項1〜4の何れかに記載の装飾体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−161904(P2011−161904A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44674(P2010−44674)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(510056364)
【Fターム(参考)】