説明

保守用携帯型コンピュータの情報消去システム

【目的】 顧客に関する情報等が他へ漏洩するのを防止することができる保守用携帯コンピュータの提供。
【構成】 コンピュータ1は種々の制御を行うMPU11、キーボードより成る入力部12、表示部13、出力部14、MPU11の制御プログラムが格納されたROM15、各種情報やプログラムが格納されたRAM16で構成される。MPU11は最後のキー操作がなされてから所定時間が経過すると、パスワードと個人番号の入力を求め、誤ったパスワード又は個人番号が入力されるとRAM16に格納された情報等のうち所要のものを消去し、正しいパスワード、個人番号が入力されたときのみ操作を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建造物(ビル)に備えられた機器の保守を行う保守員が携行するコンピュータにおいて、その記憶部に記憶された情報を消去する保守用携帯型コンピュータの情報消去システムに関する。
【0002】
【従来の技術】ビルにはエレベータをはじめ屋上水槽、その他多種の機器が備えられている。これらの機器の保守、特にエレベータの保守には高度の専門技術が必要であるので、通常、それら機器の保守は保守を専門とする保守会社に委託される。保守会社は顧客ビルに保守員を巡回させて機器の保守を行う。保守員は保守を行う場合、保守用携帯型コンピュータ(以下単にコンピュータという)を携行し、コンピュータの記憶部に格納されている種々のデータを参照して機器保守作業を行い、又、実行した保守作業を記録してこれをコンピュータの記憶部に格納する等の処理を行う。
【0003】さらに、保守巡回は頻繁に行われるので(通常月に2回程度)、保守員はビルの所有者又は管理人と接触することが多く、このためエレベータ等の機器の取替えや大幅な修理等の相談を受けることが多く、それに伴う折衝・見積書作成、提出、受注契約等を行う場合がしばしば発生する。このような場合、それら各種データはコンピュータの記憶部に格納されることになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記コンピュータは小型であるため、保守員はこれをビルの保守現場や巡回経路のいずれかに置き忘れる可能性がある。そして、このような場合、コンピュータの記憶部に格納されている顧客に関する情報が取り出されて他へ洩れるおそれが生じ顧客の信頼が失われることになる。
【0005】本発明の目的は、上記従来技術における課題を解決し、顧客に関する情報等が他へ漏洩するのを防止することができる保守用携帯型コンピュータの情報消去システムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、キーボードで構成され各種情報を入力する入力部と、この入力部により入力された情報に応じて所要の処理を行う制御部と、前記入力部から入力された情報、前記制御部で処理された情報、および前記キーボードの操作者を特定する特定符号を記憶する記憶部とを備えた保守用携帯型コンピュータにおいて、前記キーボードのキーが操作されたときこれを判断するキー操作判断手段と、このキー操作判断手段によりキーが操作されたと判断されてから所定時間が経過したときこれを判断する時間経過判断手段と、この時間経過判断手段により所定時間が経過したと判断されたとき前記保守用携帯型コンピュータを処理禁止状態にするとともに前記表示部に前記特定符号を入力する指示を表示する処理禁止・符号入力指示手段と、この処理禁止・符号入力指示手段の指示に応じて入力された符号が前記特定符号と一致しないとき前記記憶部に格納されている所要の情報を消去する消去手段と前記入力された符号が前記特定符号と一致したとき前記処理禁止状態を解除する解除手段とを設けたことを特徴とする。
【0007】
【作用】制御部はキーボードが操作されると、その都度その操作時点からの経過時間を測定する。そして、経過時間が所定時間以上になるとコンピュータの置き忘れ又は紛失が発生している可能性があると判断し、キーボード操作者に対して特定されている特定符号の入力を求める表示を行う。そして、入力された符号が特定符号と一致しないときには、記憶部に格納されている顧客に関する情報等所要の情報も消去する。これにより、支援情報の他への漏洩を防ぐことができる。
【0008】
【実施例】以下、本発明を図示の実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例に係るコンピュータのシステム構成図である。この図で、1はコンピュータを示す。コンピュータ1は、種々の演算、制御を行うMUP11、キーボードで構成される入力部12、表示部13、所要の情報を外部へ出力する出力部14、および記憶部を構成するROM15とRAM16で構成されている。
【0009】ROM15には、MPU11の処理プログラムや保守作業上の参照とされる各種データが格納されている。又、RAM16には、図に符号a〜jに示すように、「見積原稿情報」、「折衝・受注情報」、「納入製品仕様情報」、「契約内容情報」、「修理履歴・計画情報」、「保全作業指示書情報」、「計測結果情報」(保守作業の際に定められた個所を計測した結果のデータ)、「作業結果情報」、「処理プログラム」(特殊な制御を行う処理プログラム)等が格納されている。
【0010】次に、本実施例の動作を図2に示すフローチャトを参照しながら説明する。コンピュータ1を使用するため電源をONにする(図2に示す手順S1 )と、MPU11は、表示部13に、そのコンピュータを使用する保守員の個人番号を入力する指示を表示し(手順S2 )、入力部により個人番号が操作されるとこれを入力し(手順S3 )、入力された個人番号が正しいか否か判断する(手順S4 )。この判断は、予めRAM16に格納しているコンピュータ1を使用する正当な保守員の個人番号と入力された個人番号とを比較することにより行う。なお、個人番号とともに後述するパスワードもRAM16に格納されているが、これらは図1には示されていない。
【0011】入力された個人番号が正しいと判断されると、MPU11は入力部12のキーボードのキーが操作されたか否か判断し(手順S5 )、操作された場合には処理終了の指示がなされたか否かを判断した後(手順S6 )、当該指示がなされていなければ、キーボードのキー操作に応じた処理を実行し(手順S7 )、処理手順S5 に戻って次の指示を待つ。
【0012】処理手順S5 でキー操作がなされていないと判断した場合、MPU11は、内部に備えられたクロック機構(図1には示されていない)に基づいて最後のキー操作からの経過時間を測定し、経過時間2時間以上になったか否か判断する(手順S8 )。2時間が経過しなければ処理は手順S5 に戻されるが最後にキーが操作されて2時間が経過すると処理は手順S9 に移行し、MPU11は表示部13によりパスワードの入力を指示する。保守員によりパスワードが入力されると(手順S10)、MPU11はRAM16から予め格納されている当該保守員のパスワードをとり出し、入力されたパスワードと比較する(手順S11)。両者が一致すれば、MPU11はさらに個人番号の入力を指示し(手順S12)、個人番号が入力されると(手順S13)、両者を比較し(手順S14)、一致すれば処理を手順S5 に戻して再びキー操作の有無の判断を行う。
【0013】以上の処理は、コンピュータ1が正当な保守員により携行されている場合に行われる処理である。次に、コンピュータ1が正当な保守員以外の者に所持されている場合について説明する。この場合、手順S3 における個人番号の入力はでたらめな番号となるので、MPU11は手順S4 の処理により不一致の判断をし、次いで手順S2 、S3 、S4 の処理が4回以上繰り返されたか否か判断する(手順S15)。この判断は正当な保守員のキー操作のミスを3回までは許容するためのものである。
【0014】不一致が4回繰り返されると、処理は手順S9 に移行し、MPU11は前述のようにパスワードの入力を求める。正当な所有者でなければ、正しいパスワードは入力されず、不一致が4回繰り返されたと判断されると(手順S16)、MPU11はRAM16に格納されている所要の情報、例えば図1に符号a〜gで示す情報および符号jで示す処理プログラムを消去する(手順S17)。
【0015】このような処理は、コンピュータ1の電源ON時点で既に当該コンピュータ1が正当な保守員以外の者に所持されている場合の処理である。次に、コンピュータ1が正当な保守員により携行されている途中で置き忘れや紛失が生じた場合について説明する。この場合、コンピュータ1は2時間以上操作されていないと予測されるので、表示部13には手順S9 によりパスワードを入力する指示がなされている。そして、正当な保守員以外の者がコンピュータ1を入手し、当該指示をみてでたらめなパスワードを入力すると、前述と同様の処理を経て情報およびプログラムの消去が行われる。又、偶然にパスワードが一致した場合、MPU11は個人番号入力を求めるが、ここでもでたらめな個人番号の入力が4回行われると(手順S18)同様に情報、プログラム消去が行われる。この場合の個人番号の確認処理は万一の場合を考慮した処理であり、又、手順S16および手順S18の処理は手順S15と同様、正当な保守員のキー操作ミスを許容する処理である。
【0016】ここで、手順S8 における経過時間(2時間)の意味について説明する。保守員がある保守作業でコンピュータを使用し、この保守作業内で又は次の顧客ビルの保守作業で当該コンピュータを使用する間隔は一定していない。したがって、上記経過時間を短く設定すると、コンピュータ1の使用間隔が長くなった場合、手順S9 の処理によりパスワードの入力が求められ、保守員はパスワードと個人番号とを入力しなければコンピュータ1の使用はできなくなり、面倒である。一方、上記経過時間を長く設定すると、正当な保守員がコンピュータ1を置き忘れ又は紛失してから手順S9 の処理に移行するまでの時間が長くなり、この間にコンピュータ1が正当な保守員以外の者の手に渡った場合、コンピュータ1の使用により情報読み出しが可能となる。このように、正当な保守員の使用勝手を考慮すると上記経過時間は長い方が望ましく、情報漏洩防止の観点からは上記経過時間は短い方が望ましい。本実施例の経過時間「2時間」は両者をできるだけ満足するように定められたものである。このことから明らかなように当該経過時間は、2時間に限ることはなく、1時間程度から4時間程度の間で自由に選定することができる。
【0017】このように本実施例では、誤ったパスワードおよび個人番号を入力すると所定の情報やプログラムが消去されるようにしたので、コンピュータの置き忘れや紛失による他への情報の漏洩を防止することができる。
【0018】なお、上記実施例の説明では、パスワードと個人番号を入力する例について説明したが、いずれか一方のみを採用してもよいのは明らかである。又、手順S15、S16、S18の処理は必ずしも必要ではない。さらに、コンピュータが置き忘れ又は紛失のままの状態にある場合は情報の読み出しは行われないので、情報の消去を行わずにそのまま放置しておいても差支えなく、後で正当な保守員がこれを発見すれば、そのまま使用することが可能である。
【0019】
【発明の効果】以上述べたように、本発明では、最後のキー操作から所定時間が経過したとき処理を不可能として符号の入力を求め、入力された符号が特定符号と一致しないとき、所定の情報を消去するようにし、一致したとき処理可能状態とするようにしたので、情報の漏洩を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るコンピュータのシステム構成図である。
【図2】図1に示すコンピュータの動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 コンピュータ
11 MPU
12 入力部
13 表示部
14 出力部
15 ROM
16 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】 キーボードで構成され各種情報を入力する入力部と、この入力部により入力された情報に応じて所要の処理を行う制御部と、前記入力部から入力された情報、前記制御部で処理された情報、および前記キーボードの操作者を特定する特定符号を記憶する記憶部とを備えた保守用携帯型コンピュータにおいて、前記キーボードのキーが操作されたときこれを判断するキー操作判断手段と、このキー操作判断手段によりキーが操作されたと判断されてから所定時間が経過したときこれを判断する時間経過判断手段と、この時間経過判断手段により所定時間が経過したと判断されたとき前記保守用携帯型コンピュータを処理禁止状態にするとともに前記表示部に前記特定符号を入力する指示を表示する処理禁止・符号入力指示手段と、この処理禁止・符号入力指示手段の指示に応じて入力された符号が前記特定符号と一致しないとき前記記憶部に格納されている所要の情報を消去する消去手段と、前記入力された符号が前記特定符号と一致したとき前記処理禁止状態を解除する解除手段とを設けたことを特徴とする保守用携帯型コンピュータの情報消去システム。
【請求項2】 請求項1において、前記消去手段で消去される所要の情報は、顧客に関する情報であることを特徴とする保守用携帯型コンピュータの情報消去システム。
【請求項3】 請求項1において、前記消去手段で消去される所要の情報は、処理プログラムであることを特徴とする保守用携帯型コンピュータの情報消去システム。
【請求項4】 請求項1において、前記特定符号は、前記操作者のパスワードおよび個人番号のうちの少なくとも1つであることを特徴とする保守用携帯型コンピュータの情報消去システム。
【請求項5】 請求項1において、前記符号入力指示手段の指示に応じて入力された符号が前記特定符号と一致しないとき、当該指示を所定数繰り返す指示繰り返し手段を設けたことを特徴とする保守用携帯型コンピュータの情報消去システム。

【図1】
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【図2】
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