説明

保持トレイの位置検出システム及び検出方法並びに記録装置

【課題】保持トレイのセット部の中心位置を精度良く求めること。
【解決手段】本発明の保持トレイの位置検出システムは、被セット材Qをセットするためのセット部71を有する保持トレイ55の一面に設けられる円形状の検出用マーク80と、前記一面内において互いに交差する第1および第2の走査ラインに沿って前記検出用マーク80の走査を行い、当該検出用マーク80の外周と当該走査ラインとの交点の位置を検出するマーク位置検出センサ85と、検出された前記交点の位置に基づいて求められる前記検出用マーク80のマーク中心位置に基づいて前記セット部71の中心位置を求めるセット部中心求め部93とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材等の被セット材がセットされる保持トレイの前記セット部の中心位置を検出するための保持トレイの位置検出システム、該保持トレイのセット部中心検出方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、記録装置の一例であるインクジェットプリンタを例に採って説明する。インクジェットプリンタには、用紙やフィルム等、自立性を有しない軟質の被記録材と、光ディスク(CD−RやDVD−R等)で代表される、自立性を有する硬質の被記録材との両方に対して選択的に記録を実行することができる構造のプリンタが在る。そして、前記CD−R等に対して記録を実行する場合には、別途付属品として用意されている専用の保持トレイを使用するか、下記特許文献1に記載されているプリンタ本体内に保持トレイが内蔵されている構造のインクジェットプリンタを使用する。
前記保持トレイにはその上面にCD−R等の光ディスク(被記録材)をセットする浅底のセット部が設けられており、該保持トレイの浅底のセット部に対して光ディスク(被記録材)がセットされて搬送されるようになっている。
【0003】
前記インクジェットプリンタにおいて、光ディスク(被記録材)のラベル面に対して正確な位置で記録を実行するために、光ディスク(被記録材)のセット部の中心位置を検出し、この検出したセット部の中心位置に基づいて記録データを展開して記録が実行される。
【0004】
下記特許文献2には、保持トレイにセットされた光ディスクそのものの外周位置を検出して、その検出値に基づいて光ディスクの中心位置を求める検出方法が開示されている。また、保持トレイにセット部の中心位置を検出する為の基準となる位置検出用の角穴を設けておき、この角穴が成す四角形の中心位置を求め、この求めた中心位置から前記セット部の中心位置を求めるという検出方法も実施されている。
【特許文献1】特開2005−59584号公報
【特許文献2】特開2003−217259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記光ディスク(被記録材)そのものの外周位置を検出する方法の場合には、光ディスクのラベル面の大きさや光ディスクの外周径の大きさにはメーカー毎のバラツキがあることと、光ディスクの外周部ではピットが形成された面の反射部材が視認できる状態になっていることから、反射式センサを使用して光ディスクのラベル面や光ディスクの外周エッジを正確に検出することは困難である。
【0006】
一方、保持トレイに設けた角穴を使用する方法の場合には、上述のような問題は生じないが、保持トレイにスキュー(傾き)が発生していた場合に、図10に示したように、角穴100である四角形マークの検出中心101が本来の角穴100の中心102からずれてしまうため、結果としてセット部の中心位置を正確に求めることはできなかった。
【0007】
本発明の目的は、保持トレイのセット部の中心位置を精度良く求めることのできる保持トレイの位置検出システム及び検出方法並びに記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る保持トレイの位置検出システムは、被セット材をセットするためのセット部を有する保持トレイの一面に設けられる円形状の検出用マークと、前記一面内において互いに交差する第1および第2の走査ラインに沿って前記検出用マークの走査を行い、当該検出用マークの外周と当該走査ラインとの交点の位置を検出するマーク位置検出センサと、検出された前記交点の位置に基づいて求められる前記検出用マークのマーク中心位置に基づいて前記セット部の中心位置を求めるセット部中心求め部と、を備えるものである。
【0009】
本態様によれば、検出用マークは円形状に形成されているので、保持トレイにスキューが発生している状況下でも、該検出用マークの中心位置は、従来の四角形状の検出用マークとは異なって、前記スキューの影響を全く受けずに求めることができる。これによりセット部の中心位置を精度良く求めることができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る保持トレイの位置検出システムにおいて、前記保持トレイはセットされる前記被セット材の中心部をチャックするチャック部を前記セット部に備え、前記検出用マークは1つで、前記チャック部の中心に設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
本態様によれば、検出用マークは1つで、前記チャック部の中心に設けられているので、求めたマーク中心位置がそのままセット部の中心位置になる。従って、簡単な構造で、また演算処理を行うことなく、セット部の中心位置を求めることが可能になる。更に前記スキューの影響を全く受けずにセット部の中心位置を精度良く求めることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、前記第1の態様に係る保持トレイの位置検出システムにおいて、前記検出用マークは2つであり、前記セット部中心求め部は、求めた2つの前記マーク中心位置に基づいて前記セット部の中心位置を求めることを特徴とするものである。
【0013】
本態様によれば、2つの検出用マークの各中心位置と、セット部の中心位置との相対位置関係を予め特定しておくことにより、スキューの影響を全く受けずにセット部の中心位置を精度良く求めることができる。すなわち、スキューが生じている場合は、2つの検出用マークの各中心位置を求めることによって当該保持トレイにスキューが発生していることが把握できる。そして、そのスキューの量を簡単な演算処理によって求めることができるので、セット部の中心位置をスキューの影響を受けることなく正確に求めることが可能になる。
【0014】
本発明の第4の態様は、前記第3の態様に係る保持トレイの位置検出システムにおいて、前記2つの検出用マークは、前記セット部の中心を通る直線上にあって、前記セット部の中心から等距離であって前記セット部の外側位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
本態様によれば、2つの検出用マークの各マーク中心位置が分かれば、それらの中点にセット部の中心が位置することになるから、演算処理の単純化が図られるようになる。
【0016】
本発明の第5の態様は、前記第1の態様に係る保持トレイの位置検出システムにおいて、前記検出用マークは少なくとも3つで、前記セット部の中心の同心円上に配置されており、前記セット部中心求め部は、求めた前記少なくとも3つのマーク中心位置に基づいて、前記同心円の中心位置である前記セット部の中心位置を求めることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、前記検出用マークは少なくとも3つで、前記セット部の中心の同心円上に配置されているので、求めた前記少なくとも3つのマーク中心位置に基づいて、前記同心円の中心位置である前記セット部の中心位置を容易に求めることができ、これによりスキューの影響を全く受けずにセット部の中心位置を精度良く求めることができる。また、前記第3の態様や第4の態様と同様、保持トレイのスキューの量も同時に求めることができる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る保持トレイのセット部中心検出方法は、円形状の検出用マークが設けられている保持トレイを搬送方向に移動させて、前記検出用マークをマーク位置検出センサの移動ライン上に位置させ、前記マーク位置検出センサを前記移動ライン上を移動させて、前記検出用マークの外周との移動方向における2つの交点を検出する第1検出工程と、前記マーク位置検出センサを、前記保持トレイを搬送する際における前記検出用マークの移動ライン上に位置させた状態で、前記保持トレイを搬送方向に移動させて、前記検出用マークの外周との搬送方向における2つの交点を検出する第2検出工程と、前記移動方向の2つの交点と前記搬送方向の2つの交点から前記検出用マークのマーク中心を求め、求めたマーク中心に基づいて被セット材のセット部の中心を求めるセット部中心求め工程と、を有することを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、保持トレイの搬送方向への移動と、マーク位置検出センサの移動とを利用して検出用マークのマーク中心を求めることができる。そして、円形状の検出用マークを使用したことによって保持トレイのスキューの影響を受けないでマーク中心位置を正確に求めることができ、前記正確なマーク中心に基づいてセット部の中心位置を精度良く求めることができる。
【0020】
本発明第7の態様に係る記録装置は、被記録材をセットするためのセット部を有する保持トレイと、前記保持トレイのセット部の中心位置を検出するための保持トレイの位置検出システムと、前記位置検出システムで求めたセット部の中心位置に基づいて前記保持トレイにセットされている前記被記録材に記録を実行可能な記録実行装置と、を備え、保持トレイの位置検出システムは、前記保持トレイの一面に設けられる円形状の検出用マークと、前記一面内において互いに交差する第1および第2の走査ラインに沿って前記検出用マークの走査を行い、当該検出用マークの外周と当該走査ラインとの交点の位置を検出するマーク位置検出センサと、検出された前記交点の位置に基づいて求められる前記検出用マークのマーク中心位置に基づいて前記セット部の中心位置を求めるセット部中心求め部と、を備えることを特徴とするものである。
【0021】
本態様によれば、前記第1の態様と同様の作用、効果を奏することができ、セット部の中心位置を精度良く求めることができ、以て、位置ずれのない高品質の記録を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る保持トレイの位置検出システム、該保持トレイの位置検出システムを使用することによって実行される保持トレイのセット部中心検出方法及び該保持トレイの位置検出システムを備えた記録装置について説明する。最初に本発明の記録装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンタ1を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1はインクジェットプリンタの内部構造を示す保持トレイがセットポジションに位置している時の斜視図、図2はインクジェットプリンタの内部構造の概略を示す保持トレイが検出実行ポジションに位置しているときの側断面図である。尚、この実施の形態に係る図示のインクジェットプリンタ1は、上部に図示を省略した画像読取り装置(スキャナ)を搭載した複合型のインクジェットプリンタであり、用紙やフィルム等の軟質の被記録材と、CD−RやDVD−Rを含む光ディスク等の硬質の被記録材Qとの両方に対して記録を実行することができるタイプのインクジェットプリンタである。
【0024】
このインクジェットプリンタ1は、被セット材である硬質の被記録材Qをセットするためのセット凹部71とチャック部72が上面55aに形成されている保持トレイ55を使用して被記録材Qを搬送方向Aと戻し方向Dとに往復移動させる被記録材の搬送装置(搬送手段)5と、記録ヘッド42が搭載されたキャリッジ40を前記搬送方向Aと交差する幅方向Bに往復移動させることによって所望の記録を実行する記録実行装置4と、前記キャリッジ40に搭載されるマーク位置検出センサ85によって前記保持トレイ55の上面55aのセット凹部71の中心位置O、すなわちチャック部72の中心位置Oを求める保持トレイのセット中心検出装置7と、を備えることによって基本的に構成されている。
【0025】
被記録材の搬送装置5は、被記録材Qをセットするためのセット凹部71と、被記録材Qの中心部開口の内周縁73を保持するチャック部72とが上面55aに形成されている保持トレイ55と、前記保持トレイ55を狭持して、保持トレイ55に搬送力を付与する搬送駆動ローラ35と搬送従動ローラ36とによって構成されている搬送用ローラ34と、を備えることによって構成されている。
【0026】
保持トレイ55は、奥行き寸法の短い矩形平板状の部材である。保持トレイ55の上面55aにおける幅方向Bの中央位置の幾分前方寄りの位置(図1)に上述したセット凹部71が形成されており、該セット凹部71の中心に上述したチャック部72が形成されている。そして、前記保持トレイ55にセットできる被セット材である被記録材Qは、直径12cmあるいは直径8cm等、使用が想定されるサイズのCD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RWあるいは次世代の光ディスクとして注目されているブルーレイディスクや今後開発されるものを含めた種々の光ディスク等が適用可能になっている。
【0027】
搬送ローラ34は、幅方向Bに延びる長寸の搬送駆動ローラ35と、当該搬送駆動ローラ35の周面に圧接され、幅方向Bに適宜の間隔を空けて配設される複数の短寸の搬送従動ローラ36とによって構成されている。また、前記搬送駆動ローラ35は装置本体における図示しないサイドフレーム間に水平に架け渡されているローラ駆動軸35aに対して設けられている。
【0028】
記録実行装置4は、記録実行領域51の上部に設けられるキャリッジ40と、該キャリッジ40の下面に搭載される記録ヘッド42と、記録実行領域51の下部に設けられるプラテン38とを備えることによって基本的に構成されている。
【0029】
キャリッジ40は、被記録材Qの搬送方向Aと交差する幅方向Bに沿って架け渡されているキャリッジガイド軸41に沿って往復移動し得る部材である。また、記録ヘッド42は図示しないインク供給装置から供給されたインクを下面に形成されている図示しないノズル口から吐出して被記録材Qの上面の被記録面に直接、記録を実行する部材である。また、プラテン38は、記録実行領域51に搬送されてきた被記録材Qの下面を支持して、前記記録ヘッド42の下面との間のギャップPGを規定する被記録材Qの搬送案内部材である。
【0030】
[実施例1]
次に、このようにして構成されるインクジェットプリンタ1に対して適用される本実施例に係る保持トレイの位置検出システム7の構造と、該保持トレイの位置検出システム7を使用することによって実行される保持トレイのセット部中心検出方法について図面に基づいて具体的に説明する。
図3は保持トレイを示す斜視図、図4は保持トレイが検出実行ポジションに到達した状態の保持トレイの位置検出システムを示す平面図である。図5は同保持トレイにスキューが生じている場合のリターンポジション側のセット部中心検出用マーク周辺を拡大して示す要部平面図、図6は同保持トレイにスキューが生じている場合のホームポジション側(一桁側)のセット部中心検出用マーク周辺を拡大して示す要部平面図である。
【0031】
本実施例に係る保持トレイの位置検出システム7は、被記録材Qをセットするためのセット凹部71とチャック部72とを有する保持トレイ55の上面55aに設けられる2つのセット部中心検出用マーク80L、80Rと、前記セット部中心検出用マーク80L,80Rを、少なくとも交差する平面2方向から横切るように光を照射して、前記セット部中心検出用マーク80L、80Rの外周との交点87L、88L、87R、88Rと、89L、90L、89R、90Rとを検出するマーク位置検出センサ85と、前記マーク位置検出センサ85によって検出した交点87L、88L、87R、88Rと、89L、90L、89R、90Rの位置に基づいてセット部中心検出用マーク80L、80Rのマーク中心位置91L、91Rを求め、求めたマーク中心位置91L、91Rに基づいてセット凹部71の中心位置O(チャック部72の中心位置O)を求めるセット部中心求め部93と、を備えている。
【0032】
セット部中心検出用マーク80L、80Rは、本発明の特徴的構成として平面視正円の円形状に形成されており、本実施例では保持トレイ55の上面55a及び下面を貫通する穴部81L、81Rによって構成されている。そして、本実施例では前記2つのセット部中心検出用マーク80L、80Rのそれぞれのマーク中心位置91L、91Rはチャック部72の中心Oを通る直線上にあって、前記中心Oから等距離aのセット凹部71の左右外側位置に設けられている。
【0033】
また、前記セット部中心検出用マーク80L、80Rの周囲には、幅方向Bと搬送方向Aに長い、平面視十字形状の識別マーク83L、83Rが設けられている。該識別マーク83L、83Rは、保持トレイ55の上面55aに塗工されている白色塗膜84L、84Rによって構成されており、前記セット部中心検出用マーク80L、80Rとの明度差によってセット部中心検出用マーク80L、80Rの外周位置を検出し易くしている。
【0034】
マーク位置検出センサ85は、一例として光反射式センサよって構成されており、キャリッジ40の下面における記録ヘッド42の近傍位置に設けられている。また、前記マーク位置検出センサ85は、セット部中心検出用マーク80L、80Rの位置に向って照射し、反射して戻ってきた光と、識別マーク83L、83Rに向って照射し、反射して戻ってきた光とを少なくとも区別し得るだけの感度を備えている。
【0035】
そして、本実施例では、マーク位置検出センサ85の幅方向Bへの移動と、保持トレイ55の搬送方向Aへの移動とによってマーク位置検出センサ85から照射された光がセット部中心検出用マーク80を前記幅方向Bと搬送方向Aとに横切って、前記幅方向Bの第1交点87L、87R及び第2交点88L、88Rと、前記搬送方向Aの第3交点89L、89R及び第4交点90L、90Rとの4つずつ計8つの交点が検出できるようになっている。
尚、マーク位置検出センサ85は、前記光反射式センサに限定されないのは勿論であり、例えば、磁気式のセンサでもよい。
【0036】
セット部中心求め部93は、前記検出した8つの交点からセット部中心検出用マーク80L、80Rのそれぞれのマーク中心位置91L、91Rを求め、求めた2つのマーク中心位置91L、91Rに基づいてセット凹部71の中心位置Oを求める演算処理を実行する。そして、前記セット部中心求め部93によって求められたセット凹部71の中心位置Oに基づいて前述した記録実行装置4による所望の記録が実行される。
【0037】
次に、このような保持トレイの位置検出システム7を使用することによって実行される本実施例の保持トレイのセット部中心検出方法について説明する。本実施例のセット部中心検出方法は、(1)第1検出工程と、(2)第2検出工程と、(3)セット部中心求め工程とを備えることによって構成されている。
【0038】
(1)第1検出工程
先ず、円形状のセット部中心検出用マーク80L、80Rが上面55aに設けられている保持トレイ55を搬送方向Aに移動させて、前記セット部中心検出用マーク80L、80Rをマーク位置検出センサ85の移動ラインL上に位置させる。即ち、搬送用モータ34を駆動して、保持トレイ55の通過を通過検知センサ(図示せず)が検知した後、更に所定ステップ同じく駆動して保持トレイ55を検出実行ポジション52に至らせる。
【0039】
そして、マーク位置検出センサ85を幅方向Bに移動させて、前記チャック中心検出マーク80L、80Rを横切らせ、前記セット部中心検出用マーク80L、80Rの外周との幅方向Bにおける2つの交点である第1交点87L、87Rと、第2交点88L、88Rとを検出する。
【0040】
即ち、キャリッジ40をリターンポジションからホームポジション側へ或いはホームポジションからリターンポジション側に移動させて、キャリッジ40の下面に搭載されているマーク位置検出センサ85から照射される光を識別マーク83L、83Rからセット部中心検出用マーク80L、80Rへと通過させて、前記第1交点87L、87Rと、第2交点88L、88Rの位置を検出する。
【0041】
(2)第2検出工程
先ず、マーク位置検出センサ85を前記セット部中心検出用マーク80L、80Rの上方に位置させた状態で、保持トレイ55を戻し方向Dに移動させて、前記セット部中心検出用マーク80L、80Rを前記マーク位置検出センサ85の搬送方向Aにおける上流側位置に位置させる。
【0042】
即ち、前記(1)第1検出工程終了後、マーク位置検出センサ85がセット部中心検出用マーク80L、80Rの上方に位置している場合には、そのままの状態で、セット部中心検出用マーク80L、80Rの上方に位置していない場合にはキャリッジ40を移動させてセット部中心検出用マーク80L、80Rの上方にマーク位置検出センサ85を位置させる。続いて、搬送用ローラ34を逆転方向に所定ステップ駆動して、保持トレイ55を戻し方向Dに移動させ、前記セット部中心検出用マーク80L、80Rを前記移動ラインLよりも後方となる搬送方向Aの上流側位置に位置させる。
【0043】
そして、保持トレイ55を搬送方向Aに移動させて、前記マーク位置検出センサ85を横切らせ、セット部中心検出用マーク80L、80Rの外周との搬送方向Aにおける2つの交点である第3交点89L、89Rと、第4交点90L、90Rを検出する。即ち、搬送用ローラ34を正転方向に所定ステップで駆動して、キャリッジ40の下面に搭載されているマーク位置検出センサ85から照射される光を上流の識別マーク83L、83Rからセット部中心検出用マーク80L、80R、そして、下流の識別マーク83L、83Rへと通過させて、前記第3交点89L、89Rと、第4交点90L、90Rの位置を検出する。
【0044】
(3)セット部中心求め工程
セット部中心求め工程では、前記幅方向Bにおける2つの交点である第1交点87L、87R及び第2交点88L、88Rと、搬送方向Bにおける2つの交点である第3交点89L、89R及び第4交点90L、90Rの各位置からセット部中心検出用マーク80L、80Rのマーク中心位置91L、91Rを求め、求めたマーク中心位置91L、91Rに基づいてセット凹部71の中心位置Oを求める。
【0045】
即ち、図5、図6に示すように、第1交点87L、87Rと第2交点88L、88Rの中点を通る垂線と、第3交点89L、89Rと第4交点90L、90Rの中点を通る垂線との交点を求める。そして、このようにして求めた交点がセット部中心検出用マーク80L、80Rのマーク中心位置91L、91Rとなる。尚、リターンポジション側のセット部中心検出用マーク80Lのマーク中心位置91Lと、ホームポジション側のセット部中心検出用マーク80Rのマーク中心位置91Rは、それぞれ独立して求められる。そして、このようにして求めた2つのマーク中心91L、91Rの中点を求めれば、その中点がセット凹部71の中心位置Oとなる。
【0046】
[実施例2]
本発明に係る保持トレイの位置検出システム7、該保持トレイのセット部中心検出方法及び記録装置1は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0047】
図7はセット部中心検出用マークを1つのみ保持トレイに設けた保持トレイの位置検出システムの実施例を示す平面図である。即ち、図7に示す保持トレイの位置検出システム7Aは、セット部中心検出用マーク80は平面視正円形状のものが1つで、保持トレイ55の上面55aのチャック部72の中心位置Oに設けられている。そして、このような構造の保持トレイの位置検出システム7Aによれば、求めたマーク中心位置91がそのままセット部71の中心位置Oになる。従って、簡単な構造で、また演算処理を行うことなく、セット凹部71の中心位置Oを求めることが可能になる。更にスキューの影響を全く受けずにセット凹部71の中心位置Oを精度良く求めることができる。
【0048】
[実施例3]
図8はセット部中心検出用マークを2つ保持トレイに設けた保持トレイの位置検出システムの実施例を示す平面図である。即ち、図8に示す保持トレイの位置検出システム7Bでは、セット凹部71の中心位置Oから搬送方向Aに外れた位置に2つのセット部中心検出用マーク80L、80Rが設けられている。そして、2つのセット部中心検出用マーク80L、80Rのマーク中心位置91L、91Rは保持トレイ55にスキューが生じていない状態では、走査ラインLと平行な直線上に位置するように設定されている。
【0049】
このような構造の保持トレイの位置検出システム7Bによっても、2つのセット部中心検出用マーク80L、80Rのマーク中心位置91L、91Rと、セット凹部71の中心位置Oとの相対位置関係を予め特定しておくことにより、スキューの影響を全く受けずにセット凹部71の中心位置Oを精度良く求めることができる。すなわち、スキューが生じている場合は、2つのセット部中心検出用マーク80L、80Rのマーク中心位置91L、91Rを求めることによって当該保持トレイ55にスキューが発生していることが把握できる。そして、そのスキューの量を前記マーク中心位置91L、91Rの搬送方向Aにおけるずれ量から簡単な演算処理によって求めることができるので、セット部の中心位置をスキューの影響を受けることなく正確に求めることが可能になる。
【0050】
[実施例4]
図9はセット部中心検出用マークを3つ保持トレイに設けた保持トレイの位置検出システムの実施例を示す平面図である。即ち、図9に示す保持トレイの位置検出システム7Cでは、セット部中心検出用マークが80L、80C、80Rの3つ設けられており、これら3つのセット部中心検出用マーク80L、80C、80Rがセット凹部71の中心位置Oの同心円95上に配置されている。そして、セット部中心求め部93では、求めた3つのマーク中心位置91L、91C、91Rから、これらのマーク中心91L、91C,91Rを通る前記円95を推定し、該推定した前記円95の中心をセット凹部71の中心位置Oとして求める。
【0051】
本実施例によれば、求めた前記3つのマーク中心位置91L、91C、91Rに基づいて、前記同心円95の中心位置である前記セット凹部71の中心位置Oを容易に求めることができる。従って、スキューの影響を全く受けずにセット凹部71の中心位置Oを精度良く求めることができる。また、前記実施例2や実施例3と同様に保持トレイのスキューの量も同時に求めることができる。
【0052】
[その他の実施例]
また、前記セット部中心検出用マーク80は、穴部81の他、黒色等の暗色系の色が付された保持トレイ55自体あるいは保持トレイ55の上面55aに塗布された塗膜や貼付されたシール材等であってもよい。同様に、識別マーク83も白色塗膜84に限らず、白色等の明色系の色や反射率の高い蛍光色が付された保持トレイ55自体、あるいは保持トレイ55の上面55aに貼付されたシール材等であってもよい。
【0053】
この他、本発明の保持トレイの位置検出システム7及び記録装置1は軟質の被記録材と硬質の被記録材Qの両方の被記録材に対応できる構造の他、硬質の被記録材Qのみに対応できる構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタの内部構造を示す斜視図。
【図2】同インクジェットプリンタの内部構造の概略を示す保持トレイが検出実行ポジションに位置しているときの側断面図。
【図3】保持トレイを示す斜視図。
【図4】同保持トレイが検出実行ポジションに到達した状態の保持トレイの位置検出システムを示す平面図。
【図5】同保持トレイにスキューが生じている場合のリターンポジション側の検出用マーク周辺を拡大して示す要部平面図。
【図6】同保持トレイにスキューが生じている場合のホームポジション側(一桁側)の検出用マーク周辺を拡大して示す要部平面図。
【図7】保持トレイの位置検出システムの他の実施例を示す平面図。
【図8】保持トレイの位置検出システムの更に他の実施例を示す平面図。
【図9】保持トレイの位置検出システムの更に他の実施例を示す平面図。
【図10】保持トレイにスキューが生じている状態の従来の角穴の問題点を示す平面図。
【符号の説明】
【0055】
1 インクジェットプリンタ(記録装置)、4 記録実行装置、5 被記録材の搬送装置、7 保持トレイの位置検出システム、34 搬送用ローラ、35 搬送駆動ローラ、35a ローラ駆動軸、36 搬送従動ローラ、38 プラテン、40 キャリッジ、41 キャリッジガイド軸、42 記録ヘッド、51 記録実行領域、52 検出実行ポジション、53 セットポジション、55 保持トレイ、55a 上面、71 セット凹部、71a 底面、72 チャック部、73 内周縁、80 セット部中心検出用マーク、81 穴部、83 識別マーク、84 白色塗膜、85 マーク位置検出センサ、87 第1交点、88 第2交点、89 第3交点、90 第4交点、91 マーク中心、93 セット部中心求め部、95 同心円(円)、100 角穴、101 検出中心、102 (本来の)中心、Q (硬質の)被記録材(光ディスク)、A 搬送方向、B 幅方向、D 戻し方向、PG ギャップ、O セット部の中心、L 移動ライン、a 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被セット材をセットするためのセット部を有する保持トレイの一面に設けられる円形状の検出用マークと、
前記一面内において互いに交差する第1および第2の走査ラインに沿って前記検出用マークの走査を行い、当該検出用マークの外周と当該走査ラインとの交点の位置を検出するマーク位置検出センサと、
検出された前記交点の位置に基づいて求められる前記検出用マークのマーク中心位置に基づいて前記セット部の中心位置を求めるセット部中心求め部と、を備える保持トレイの位置検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の保持トレイの位置検出システムにおいて、
前記保持トレイはセットされる前記被セット材の中心部をチャックするチャック部を前記セット部に備え、
前記検出用マークは1つで、前記チャック部の中心に設けられていることを特徴とする保持トレイの位置検出システム。
【請求項3】
請求項1に記載の保持トレイの位置検出システムにおいて、
前記検出用マークは2つであり、
前記セット部中心求め部は、求めた2つの前記マーク中心位置に基づいて前記セット部の中心位置を求めることを特徴とする保持トレイの位置検出システム。
【請求項4】
請求項3に記載の保持トレイの位置検出システムにおいて、
前記2つの検出用マークは、前記セット部の中心を通る直線上にあって、前記セット部の中心から等距離であって前記セット部の外側位置に設けられていることを特徴とする保持トレイの位置検出システム。
【請求項5】
請求項1に記載の保持トレイの位置検出システムにおいて、
前記検出用マークは少なくとも3つで、前記セット部の中心の同心円上に配置されており、
前記セット部中心求め部は、求めた前記少なくとも3つのマーク中心位置に基づいて、前記同心円の中心位置である前記セット部の中心位置を求めることを特徴とする保持トレイの位置検出システム。
【請求項6】
円形状の検出用マークが設けられている保持トレイを搬送方向に移動させて、前記検出用マークをマーク位置検出センサの移動ライン上に位置させ、前記マーク位置検出センサを前記移動ライン上を移動させて、前記検出用マークの外周との移動方向における2つの交点を検出する第1検出工程と、
前記マーク位置検出センサを、前記保持トレイを搬送する際における前記検出用マークの移動ライン上に位置させた状態で、前記保持トレイを搬送方向に移動させて、前記検出用マークの外周との搬送方向における2つの交点を検出する第2検出工程と、
前記移動方向の2つの交点と前記搬送方向の2つの交点から前記検出用マークのマーク中心を求め、求めたマーク中心に基づいて被セット材のセット部の中心を求めるセット部中心求め工程と、
を有することを特徴とする保持トレイのセット部中心検出方法。
【請求項7】
被記録材をセットするためのセット部を有する保持トレイと、
前記保持トレイのセット部の中心位置を検出するための保持トレイの位置検出システムと、
前記位置検出システムで求めたセット部の中心位置に基づいて前記保持トレイにセットされている前記被記録材に記録を実行可能な記録実行装置と、を備え、
保持トレイの位置検出システムは、
前記保持トレイの一面に設けられる円形状の検出用マークと、
前記一面内において互いに交差する第1および第2の走査ラインに沿って前記検出用マークの走査を行い、当該検出用マークの外周と当該走査ラインとの交点の位置を検出するマーク位置検出センサと、
検出された前記交点の位置に基づいて求められる前記検出用マークのマーク中心位置に基づいて前記セット部の中心位置を求めるセット部中心求め部と、を備えることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−292111(P2009−292111A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150232(P2008−150232)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】