説明

保温装置

【課題】 製品コストを抑えるとともに、チョコレートおよび動植物性油脂製品の品質を維持したまま、しかも融解状態を長時間にわたって維持し得る保温装置の提供を目的とする。
【解決手段】 底壁を備えた油脂製品収容部と該油脂製品収容部とは底壁を介して区画され前記底壁の下側に配置された挿入空間とを設けた収容容器に用いられ、前記油脂製品収容部に収容された油脂製品を融解状態で維持するための保温装置であって、前記挿入空間に挿抜自在とされる挿入部を備え、該挿入部は、その上面部が前記製品収容部の底壁に対向するとともに底壁の面方向に広がる箱状に形成され、該挿入部は内部に加熱部が装着されるとともに、前記上面部は前記加熱部から伝えられた熱が面方向に分散されるよう構成されている保温装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチョコレートおよびその他の動植物性油脂製品を融解状態に維持するための保温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にチョコレート加工品は、融解したチョコレートを加工工場で所定の形状になるように固化することで作られる。したがって、加工工場に搬送されたチョコレートは融解状態にあることが好ましい。しかしながら、一般的なチョコレートは常温で固化してしまうから、加工工場に融解状態で納品することは難しい。このため加工工場では、固化したチョコレートを融解して用いている。なお、融解状態で搬送することが可能なチョコレートとして融点の低いチョコレートがあり、これは所定の容器に収容して加工工場に搬送される。
【0003】
ところで、融解したチョコレートは加工工場においてすぐに加工されるとは限らない。したがって、融解したチョコレートが加工されるまで、融解状態に維持しておくことが必要である。そこで、固化したチョコレートを融解し、さらに融解状態を維持するために、チョコレートを加熱保温できるようにした容器として、金属板からなる底壁や金属板からなる側壁を備えて、該底壁や側壁を直接的に加熱することでチョコレートを加熱融解し、チョコレートを融解状態に維持するようにした容器が提案されている。また、参考となる公知文献として、下記特許文献1にチョコレート生成装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−274912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の容器では金属板を直接的に加熱してチョコレート(あるいは融解チョコレート)を加熱(保温)する構成のため、チョコレートを局所加熱してしまう。特に、容器のフレーム部位において局所加熱が著しく、そうなると短時間で融解状態にあるチョコレートが変質したり、変色したりしてしまうという問題があった。また、特許文献1のチョコレート生成装置を保温装置に用いた場合では、構造が複雑であるため装置のコストが高くなるという問題がある。そしてこのような問題は、チョコレートに限らず、動植物油脂製品全般に共通の問題であった。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、製品コストを抑えるとともに、チョコレートおよび動植物性油脂製品の品質を維持したまま、しかも融解状態を長時間にわたって維持し得る保温装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、底壁を備えた油脂製品収容部と該油脂製品収容部とは底壁を介して区画され前記底壁の下側に配置された挿入空間とを設けた収容容器に用いられ、前記油脂製品収容部に収容された油脂製品を融解状態で維持するための保温装置であって、前記挿入空間に挿抜自在とされる挿入部を備え、該挿入部は、その上面部が前記製品収容部の底壁に対向するとともに底壁の面方向に広がる箱状に形成され、該挿入部は内部に加熱部が装着されるとともに、前記上面部は前記加熱部から伝えられた熱が面方向に分散されるよう構成されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、挿入空間に挿入部を挿入した状態とし、挿入部の内部の加熱部を稼働させると加熱部からの熱が加熱部の上側に配置した底壁の面方向に広がる上面部に伝熱し、加熱部からの熱が上面部の面方向に分散し、油脂製品収容部の底壁が下方から均等的に加熱されて、油脂製品収容部に収容された油脂製品に与えられる熱が部分的に集中せず、油脂製品の融解状態が良好に維持される。ここで油脂製品とは、チョコレートおよびその他の動植物性油脂製品を含む概念であり、チョコレート以外の動植物性油脂製品として、やし油、パーム油、ラード等、常温で固形ないし半固形の状態となる動植物性油脂製品が挙げられる。
【0009】
本発明の保温装置では、加熱部と上面部とのあいだには伝熱空間が形成されていることが好ましい。この構成によれば、加熱部の熱が伝熱空間を介して上面部に伝播するから、上面部の熱はその面方向に均等的に分散され易い。
【0010】
本発明の保温装置では、上面部を面一とした複数の挿入部が離間して且つ平行に配置され、挿入部どうしは共通の支持部材によって一体化されるよう端部が支持されている構成を採用することができる。この構成によれば、収容容器に、その挿入空間を分ける支柱部があっても、該支柱部を回避して挿入部を挿入空間に挿入することができる。
【0011】
本発明の保温装置では、上面部は底壁の底壁面に隙間を介するように挿入空間に挿入されることが好ましい。このような隙間を介して収容容器の底壁面と保温装置の上面部とを対向させることで、加熱部の熱が隙間を介して底壁面に伝播するから、油脂製品収容部に収容された油脂製品に与えられる熱が部分的に集中せず、油脂製品の融解状態が良好に維持される。
【0012】
本発明の保温装置では、上面部は加熱部の上に配置した第一板部材と、該第一板部材の上に配置した第二板部材とから構成され、前記第一板部材は平板状に形成されて加熱部から伝えられた熱が面方向に分散されるものであり、前記第二板部材はその板面に多数の孔が形成されている構成を採用することができる。
【0013】
上記構成によれば、加熱部からの熱は第一板部材の面方向に分散し、分散した熱は第二板部材に形成された各孔を通過して上昇し、収容容器の底壁面をその面方向で均等に加熱する。
【0014】
本発明は、底壁を備えた油脂製品収容部と該油脂製品収容部とは底壁を介して区画され前記底壁の下側に配置された挿入空間とを設けた収容容器に保温装置を用いて、前記油脂製品収容部に収容された油脂製品を融解状態で維持するための保温方法であって、前記挿入空間に保温装置の挿入部を挿入し、該挿入部の内部の加熱部からの熱を該加熱部の上側に配置した底壁の面方向に広がる上面部に伝熱させ、加熱部からの熱を前記上面部の面方向に分散させて前記油脂製品収容部の底壁を下方から加熱することで、油脂製品の融解状態を維持することを特徴としている。
【0015】
この方法において、挿入空間に保温装置の挿入部を挿入した状態とし、挿入部の内部の加熱部を稼働させると加熱部からの熱が加熱部の上側に配置した底壁の面方向に広がる上面部に伝熱し、加熱部からの熱が上面部の面方向に分散し、油脂製品収容部の底壁が下方から均等的に加熱されて、油脂製品収容部に収容された油脂製品に与えられる熱が部分的に集中せず、油脂製品の融解状態が良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の保温装置によれば、挿入空間に挿入部を挿入した状態とし、挿入部の内部の加熱部を稼働させると加熱部からの熱が加熱部の上側に配置した底壁の面方向に広がる上面部に伝熱し、加熱部からの熱が上面部の面方向に分散し、油脂製品収容部の底壁が下方から均等的に加熱されるから、油脂製品収容部に収容された油脂製品(チョコレートおよびその他の動植物性油脂製品)に与えられる熱が部分的に集中せず、したがって、油脂製品の品質を維持したまま融解状態を長時間にわたって維持することができ、挿入空間に挿入部を挿入して加熱部を稼働させてその熱を上面部に分散させるといった簡単な構成であるから、保温装置の製品コストの上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る保温装置の、使用状態を示す一部破断側面図である。
【図2】同保温装置の一部および収容容器の、使用状態を示す斜視図である。
【図3】同収容容器の、使用状態を示す単体斜視図である。
【図4】同収容容器の、収納状態を示す単体斜視図である。
【図5】同保温装置の単体斜視図である。
【図6】同保温装置の単体平面図である。
【図7】同保温装置の単体側面図である。
【図8】同保温装置の単体背面図である。
【図9】同保温装置を用いてチョコレートの温度を管理した場合の温度管理表である。
【図10】同保温装置の別の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る保温装置を、図1ないし図10を参照しつつ説明する。図1に示すように、この保温装置1は、油脂製品の一例としてのチョコレートを収容する収容容器2に対して用いられる。
【0019】
まず、収容容器2の構成の概略を説明する。図1ないし図4に示すように、収容容器2は、組み立てた状態で内部が収容空間(チョコレート収容部に相当する)3とされる直方体形状の箱状に形成されている。収容容器2は、容器本体4と、保温装置1の一部(後述する挿入部18)が挿入される挿入空間5を備えている。容器本体4は、平面視して矩形の底壁6と、底壁6の四隅に立設される支柱7と、これら支柱7に支持される四方の側壁8,9と、蓋体10とを備えている。
【0020】
容器本体4はステンレス製の板状部材から構成されている。特に各側壁8,9の外面には、上下方向に沿う複数本の補強リブ11が所定間隔置き、且つ平行に配置されている。なお、図示しないが、何れの側壁8,9も、合成樹脂を内側および外側の板部材により挟持することで断熱性に富む構成となっている。
【0021】
特に図2に示すように、側壁8,9のうち、一方向で対向する側壁8の上部8A,8Bは、それぞれ上下方向途中部分に設けられたヒンジ部材12を介して立ち姿勢Xと倒れ姿勢Yとに切り替え自在に構成されている。支柱7は側壁8,9の端部に一体的に形成されており、支柱7および側壁8,9に、支柱7に対して上部8A,8Bを立ち姿勢Xに保持する不図示のロック機構が設けられている。
【0022】
図2および図3に示すように、他方向で対向する側壁9のうちの何れかの下部に、融解チョコレート(融解状態のチョコレート)Tを収容空間3から取り出すための取出口13が形成されている。この取出口13は、側壁9に開閉自在に設けられた開閉部材14を閉じることで隠蔽され、開閉部材14を開くことで露出するよう構成されている。
【0023】
さらに、図4に示すように、収容容器2は折り畳みできるように構成されており、底壁6に対して側壁8,9が上側から重なるようにして折り畳まれ、折り畳まれた側壁8,9のさらに上側が蓋体10で覆われるようにしてコンパクトに収納できる構造となっている。
【0024】
挿入空間5は、底壁6の下面6aの面方向に広がる下側の領域である。底壁6の四隅には下方に延長された支持脚15が形成され、隣り合う支持脚15どうしを一体化するよう支持脚15に渡された底板部材16が設けられ、各支持脚15間に区画用脚17が配設されている。これら、支持脚15、底板部材16、および区画用脚17により、挿入空間5の開口5aが、収容容器2の四方の下部に形成されている。
【0025】
次に、図5ないし図8を主に、上記構成の収容容器2に用いられる前記保温装置1について説明する。保温装置1は、開口5aから挿入空間5に挿抜自在とされる前記挿入部18を備えている。この挿入部18は複数個(この場合、二個)設けられており、各挿入部18は同一の構成を備えている。各挿入部18は、上部を開放した平面視矩形状の挿入部本体19と、挿入部本体19の上部開放部を覆う前記上面部とを備えている。挿入部18は上面部(後述のパンチングメタル)の上面を面一として設けられ、挿入部18どうしは所定距離Lだけ横方向に離間し、且つ平行に配置されている。この所定距離Lは、挿入部18を挿入空間5に挿入するのに区画用脚17を回避できる距離に設定されている。
【0026】
保温装置1は、挿入部18どうしをその端部側で支持する共通の支持部材20を備え、挿入部18どうしは支持部材20によって支持されている。各挿入部18は、高さの低い箱状に形成されている。その厚みt(図5参照)は、開口5aの高さH(図3参照)に比べて小さく設定されている。
【0027】
図6および図7に示すように、保温装置1は、加熱部であるヒートパイプ21、ヒートパイプ21を加熱稼働させる稼働部である加熱パイプ22、およびヒートパイプ21の熱量を調整するサーモスタット23を備えている。加熱パイプ22は支持部材20の左右に振り分けて内装され、各加熱パイプ22は、コンセント(図示せず)にプラグ24を差込んで、リード線25を介して電力が供給されることでヒートパイプ21に熱媒(作動流体)を供給するよう構成されている。
【0028】
ヒートパイプ21は各挿入部18に複数本(この場合、三本)が均等配置の状態(等ピッチ)で内装され、図7に示すように、各ヒートパイプ21は支持部材20側である後方から前方へ向けて上傾斜して配置されるとともに、後端部が加熱パイプ22に連結連通されて支持され、各ヒートパイプ21は挿入部18の略長手方向全長に亘って延長されている。そして、各ヒートパイプ21は挿入部18の空間内に配置されている。また、各加熱パイプ22は挿入部本体19の側板19aと平行で、しかも互いに平行になるよう、その先端部が保持部材26によって保持されている。
【0029】
前記上面部は、ヒートパイプ21の上に配置した拡散板(第一板部材に相当する)27と、拡散板27の上に配置した前記パンチングメタル(第二板部材に相当する)28とから構成されている。拡散板27は平板状に形成されてヒートパイプ21から伝えられた熱がその面方向(長手方向および幅方向への広がり方向)に伝播して分散される金属、例えばステンレスから形成されている。パンチングメタル28もまた、例えばステンレスから形成されている。
【0030】
拡散板27は、ヒートパイプ21に載置されるよう設けられている。したがって、拡散板27とヒートパイプ21は同一の傾斜で配置されている。一方、パンチングメタル28は、挿入部18の底板29と平行に配置され、底板29は水平に配置されている。なお、挿入部18どうしにおけるパンチングメタル28の上面は面一に配置されている。
【0031】
サーモスタット23は、各挿入部18にあって、例えば拡散板27の上面に載置されている。支持部材20には、サーモスタット23からの温度信号に応じて加熱パイプ22からヒートパイプ21に供給する熱媒の量を制御するための制御部30が内装されている。
【0032】
なお、挿入部本体19の前部および支持部材20の後部には、キャスター式の車輪31を取り付けるためのキャスター部32を有する。後部のキャスター部32には保温装置1を任意の位置への移動を補助する門形の把手33が取り付けられている。
【0033】
次に、上記構成の保温装置1の使用方法を説明する。保温装置1はキャスター部32を有するから、任意の場所、例えば収容容器2を設置してある場所まで移動させることが容易である。この際、車輪31はキャスター式であるから、作業者は、把手33を把持して保温装置1を押し引きすることで、保温装置1を容易に移動することができる。
【0034】
保温装置1を収容容器2まで移動させた後は、保温装置1の各挿入部18を収容容器2の挿入空間5に挿入する。この際、挿入部18のそれぞれが開口5aにから挿入されるように、所定距離Lに相当する部分を区画用脚17に位置合わせして、把手33を把持して保温装置1を押し込むようにして各挿入部18を挿入空間5に挿入する。
【0035】
なお、図1に示すように、保温装置1と収容容器2は、支持部材20を側壁9まで到達するように各挿入部18を挿入空間5に挿入すると、前側のキャスター部32が挿入空間5を出るような寸法関係になっており、保温装置1の上面部を構成するパンチングメタル28の上面28aが底壁6の下面6aとが、面方向(広がり方向)略全域で、上下方向で対向する。このとき、各挿入部18の厚みtは、開口5aの高さHに比べて小さく設定されているから、パンチングメタル28の上面28aが底壁6の下面6aとは、隙間空間δ1を介して対向する。また、挿入部18の底板29と底板部材16との間にも、隙間空間δ2が存在するようになっている。なお、各挿入部18を挿入空間5に挿入するとき、車輪31は底板部材16を乗り越える。
【0036】
なお、収容容器2の収容空間3には、予め、収容袋Fに収容した融解チョコレートTを収容しておく。収容袋Fは、取出口13に連通接続される口部(図示せず)を備えており、融解チョコレートTは前記口部を取出口13に接続した状態で収容されている。また、融解チョコレートTを収容空間3に収容して、容器本体4には、蓋体10を装着しておく。
【0037】
続いて、プラグ24を備え付けのコンセントに接続し、不図示のスイッチをONすると、ヒートパイプ21が加熱稼働し、ヒートパイプ21に熱媒を供給する。各ヒートパイプ21は支持部材20側である後方から前方へ向けて上傾斜して配置されているから、蒸気となった熱媒は、ヒートパイプ21内を後方へ向けて移動して拡散板27を加熱する。
【0038】
そして加熱を終え、凝縮された熱媒は液体に還元される。各ヒートパイプ21は支持部材20側である後方から前方へ向けて上傾斜している(前方から後方へ向けて下傾斜している)から、液体に還元された熱媒は、自重により加熱パイプ22に戻る。加熱パイプ22に戻った熱媒は再び加熱されて蒸気となり、各ヒートパイプ21を前方に移動して拡散板27を加熱する。熱媒はこのような動作を繰り返す。
【0039】
そして、三本のヒートパイプ21は、各挿入部18に均等に配置され挿入部18の空間内に配置されているから、ヒートパイプ21の熱は、拡散板27全体にその面方向で分散され、拡散板27が均等に加熱される。拡散板27からの熱は上昇して、パンチングメタル28を加熱する。パンチングメタル28はそのものが加熱され、その熱が上昇して収容容器2の底壁6を加熱するとともに、パンチングメタル28の孔からも加熱空気が上昇して、底壁6を加熱する。このとき、パンチングメタル28の上面28aと底壁6の下面6aとは、隙間空間δ1を介して対向するから、ヒートパイプ21から供給された熱は、隙間空間δ1でさらに均等化されて、底壁6をその全域にわたって均等に加熱することができる。
【0040】
このように、保温装置1の上面部を二重構造としており、ヒートパイプ21からの熱を上面部で均等に分散させることで、底壁6全体をその全域に亘って均等的に加熱することができる。さらに、上面部(パンチングメタル28)と底壁6の下面6aとの間には隙間空間δ1を設けていることにより、ヒートパイプ21からの熱を、底壁6をいっそう均等的に加熱するようにすることができる。その結果、融解チョコレートTを融解状態に維持することができ、しかも融解チョコレートTを局所的に加熱することがない。このため融解チョコレートTの変質(悪化)を確実に抑制することができる。
【0041】
さらに、本発明の実施形態の保温装置1では、ヒートパイプ21を挿入部18内に均等的に配置することで、その熱を上面部で均等に分散させる構成を採用しているから、保温装置1の構成が簡素であり、したがって製造コストの上昇を抑えることができるとともに、融解チョコレートTを融解状態に維持するためのランニングコストの上昇を抑えることができる。ランニングコストを抑えられることで、例えば保温装置1をエンドユーザーに所持してもらっても、該エンドユーザーに経済的な負担を強いない。
【0042】
なお、用いる融解チョコレートTの種類に応じて、所定の時間(日数)だけこれを変質させず維持できる保温温度は一般的に異なる。したがって、用いる融解チョコレートTの種類に応じて所定の時間(日数)だけこれを変質させず維持できる保温温度を予め知っておいて、ヒートパイプ21から発せされる熱量を管理しておく必要がある。
【0043】
そこで図9に、上記保温装置1を用いて融解チョコレートTを保温した場合の試験結果の一例を示す。条件は、用いた融解チョコレートTは900kgのホワイトチョコレートであり、収容袋Fには、47°Cで充填した。充填の終了は8:40であり、9:03に融解チョコレートTを収容した収容容器2を冷却庫へ移動した。また、試験期間(2010年の日付)、検温時刻、外気温は表のとおりである。また検温場所は、融解チョコレートTそのものの複数箇所(底部、中心部、上部の三箇所)と、底壁6の上面6bの複数箇所(左前、左奥、右前、右奥の四箇所)である。また、加熱パイプ22へ供給する電力供給量は100V,1000Wに設定した。
【0044】
保温装置1において、この表に示した底壁6(上面6b)の温度管理を行うと、長時間経過しても充填された融解チョコレートTが固化せず、しかも品質の低下をきたさない温度に、容易に管理できることが明らかになった。特に、ホワイトチョコレートは、融解状態では品質の低下を抑えるための温度管理が難しいとされるが、このようなホワイトチョコレートであっても、品質の低下をきたさない温度に、容易に管理できることが明らかになった。
【0045】
また、上記実施形態のように、例えば側壁8,9を、合成樹脂を内側および外側の板部材により挟持することで断熱性に富む構成とすることで、ヒートパイプ21から大きな熱量を供給しなくても、融解チョコレートTの融解状態を維持することができる。さらに、図10に示すように、保温装置1を稼働している際に、収容容器2全体を断熱カバーDで覆うようにすれば、融解チョコレートTが側壁8,9あるいは蓋体10側から冷やされて固化してしまう状態を回避することができる。
【0046】
また、断熱カバーDを、収容容器2全体を覆うのに余裕をもった大きさとすることで、挿入空間5から側方に逃げる熱をキャッチして、断熱カバーDと側壁8,9との間に留めておくことができる。そうなると、できるだけ無駄な電力を消費することなく、融解チョコレートTの融解状態を維持することができる。この際、挿入部18の底板29と底板部材16との間にも、隙間空間δ2が存在するから、ヒートパイプ21からの熱が収容容器2の設置面に逃げにくく、挿入部18の側部に沿って上昇することになる。したがって、隙間空間δ2から上昇する熱も無駄にならず、融解チョコレートTの融解状態の維持のために使用することができる。
【0047】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の範囲内で多くの変更が可能である。例えば、上記実施形態では、挿入部18は互いに幅方向に離間させて一対で設けたが、これは収容容器2が区画用脚17を備えていることに起因する。したがって、区画用脚17を有しない収容容器2に保温装置1を用いる場合では、挿入部18を一対で設ける必要はなく、底壁6の下面6aに略全面的に対向する挿入部を一個だけ設けたものであってもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、加熱部として、蒸気と液体に変化する熱媒を用い、これがヒートパイプを循環する構成のものを用いた。しかしながら、本発明の保温装置1では、加熱部によって上面部の熱を分散させる構成であるから、ヒートパイプ式の加熱部に限らず、例えば、閉じられた領域(例えばパイプ)内でオイル(熱媒)を加熱して、その熱を上面部に伝える構成であってもよい。そしてこのような加熱部は、上面部の熱を分散させる構成であれば、その本数も三本に限定されず、さらに多くの本数を設けることも可能であるし、ヒートパイプであれば、これを格子状に配置して上面部の熱を分散させるようにすることも可能である。
【0049】
あるいは上記実施形態では、拡散板としてステンレスを一例に挙げているがこれに限定されず、拡散板そのものを、熱が拡散され易い材料から形成する、すなわち、拡散板そのものが熱の拡散機能を備えた材料から形成することもできる。また、上記実施形態では、融解状態を維持する対象としてチョコレートを挙げた。しかしながら融解状態を維持する対象として、一定期間、品質を維持しつつ固化を防止する必要のある、やし油、パーム油、ラード等、常温で固形ないし半固形の状態となる動植物性油脂製品であれば、適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1…保温装置、2…収容容器、3…収容空間、4…容器本体、5…挿入空間、5a…開口、6…底壁、6a…下面、8,9…側壁、14…開閉部材、15…支持脚、16…底板部材、17…区画用脚、18…挿入部、19…挿入部本体、20…支持部材、21…ヒートパイプ、22…加熱パイプ、23…サーモスタット、26…保持部材、27…拡散板、28…パンチングメタル、28a…上面、29…底板、30…制御部、L…所定距離、T…融解チョコレート、δ1…隙間空間、δ2…隙間空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁を備えた油脂製品収容部と該油脂製品収容部とは底壁を介して区画され前記底壁の下側に配置された挿入空間とを設けた収容容器に用いられ、前記油脂製品収容部に収容された油脂製品を融解状態で維持するための保温装置であって、
前記挿入空間に挿抜自在とされる挿入部を備え、該挿入部は、その上面部が前記製品収容部の底壁に対向するとともに底壁の面方向に広がる箱状に形成され、該挿入部は内部に加熱部が装着されるとともに、前記上面部は前記加熱部から伝えられた熱が面方向に分散されるよう構成されていることを特徴とする保温装置。
【請求項2】
加熱部と上面部とのあいだには伝熱空間が形成されていることを特徴とする請求項1記載の保温装置。
【請求項3】
上面部を面一とした複数の挿入部が離間して且つ平行に配置され、挿入部どうしは共通の支持部材によって一体化されるよう端部が支持されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の保温装置。
【請求項4】
上面部は底壁の底壁面に隙間を介するように挿入空間に挿入されるものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の保温装置。
【請求項5】
上面部は加熱部の上に配置した第一板部材と、該第一板部材の上に配置した第二板部材とから構成され、前記第一板部材は平板状に形成されて加熱部から伝えられた熱が面方向に分散されるものであり、前記第二板部材はその板面に多数の孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の保温装置。
【請求項6】
底壁を備えた油脂製品収容部と該油脂製品収容部とは底壁を介して区画され前記底壁の下側に配置された挿入空間とを設けた収容容器に保温装置を用いて、前記油脂製品収容部に収容された油脂製品を融解状態で維持するための保温方法であって、
前記挿入空間に保温装置の挿入部を挿入し、該挿入部の内部の加熱部からの熱を該加熱部の上側に配置した底壁の面方向に広がる上面部に伝熱させ、加熱部からの熱を前記上面部の面方向に分散させて前記油脂製品収容部の底壁を下方から加熱することで、油脂製品の融解状態を維持することを特徴とする保温方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−130260(P2012−130260A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283247(P2010−283247)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】