説明

保管安定なラミネートセグメント

本発明は、接着剤で備え付けたラミネートセグメント、特に接着剤を漏出させる傾向の大きい処方を有する経皮治療システムであって、裏打ち層を備えたまたは備えないマトリックスと、このマトリックスの接着側に設けてあり、剥離補助手段としての切れ目を備えた保護層と、接着剤で部分的に被覆してあり、保護フィルムに貼り付けてあるカバー・フィルムとを含む経皮治療システムに関する。ここで、カバー・フィルムは、その接着剤のない部分を使用して保護フィルムの切れ目に重なっており、したがって、切れ目を通しての接着剤の漏出を防いでおり、これは剥離補助手段としての切れ目の機能に悪影響を与えることなくラミネートセグメントの包装材への接着を防いでいる。このようなラミネートセグメントは、いかなる中間キャリアを用いることなく製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着側に保護カバーを備える接着的に備え付けたラミネートまたは支持体部分に関する。好ましくは、該ラミネートまたは支持体部分は、経皮治療システム(TTS)であり、より詳しくは、治療用(すなわち、活性成分を含有する)パッチである。
【背景技術】
【0002】
接着ラミネート部材の製作、使用は公知である。たとえば、殆どの場合、TTSでは、接着備え付け側、すなわち、使用時に患者の皮膚に接着する側は、部材が互いにまたは外側包装体に接着するのを防ぐために剥離ライナと呼ばれる保護シートで覆われている。さらに、典型的には、保護シートは、切れ目、通常は中央の切れ目を備えており、この切れ目が保護シートを少なくとも2つの部材に剥がすことを可能にし、剥離補助手段として作用する。この種のシステムが、たとえば、特許文献1に記載されている。
【0003】
しかしながら、この種のラミネート部材すなわちTTSの接着備え付け側の接着剤は、室温で粘度に依存する、低温流れと呼ばれる流れ特性を有する。これから生じる可能性のある結果の1つは、部材の保管時に接着剤が切断縁に漏れ出て、その結果、部材が互いに、または周囲の包装材(通常、包装材料のパウチ)に接着するという極端な不都合が生じる。
【0004】
この問題に対する1つの可能性ある解決策が特許文献2に記載されている。そこでは、感圧性接着剤層上の保護シートが、切断縁の領域で重なり合う2枚のシート部材からなるように構成されている。しかしながら、特に、たとえば、接着剤の漏れ出る傾向の高い、製剤を有するTTS製品の場合、この対策では、TTS製品が包装に接着するのを防げない。さらに、このような製品の製作には改良の余地があることが判明する。製造過程において、裏打ち層、マトリックスおよび中間カバーとからなるTTSラミネートは、裏打ち層およびマトリックスを貫いてコンターカット加工(contour-cut)される。残っているラミネートが取り除かれた後、ダイカットされたTTSは、中間キャリア/カバーによって個別に新しい保護シート(剥離ライナ)に転送される。接着剤の漏出を防ぐために、この保護シートは、切断縁の領域に重なり合った部分を有する。このプロセスは、多数の材料を同時に移動させ、正確に位置決めしなければならないので、失敗しやすい。さらなる不利な点としては、中間キャリアを取り除いて廃棄しなければならないということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE3344335A1
【特許文献2】DE19925338A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、保管安定性のある、接着備え付けラミネート部材、より詳しくは、それ自体またはその製造時における従来技術で知られている不利な点をなくした保管安定性のあるTTS製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成すべく、裏打ち層を備えたまたは備えないマトリックスからなる本発明の接着備え付けラミネート部材は、マトリックスの接着面または接着層上に設けた保護シートを有し、この保護シートが、剥離補助手段として、保護シートに貼られたカバー・シート(カバー・ストリップ)によって覆われたスリットを有することを特徴とする。
【0008】
このカバー・ストリップの構造は、好ましくは、保護シートにあるスリットを完全に覆い、片面を接着剤で被覆してあって保護シートに接着するような構造である。カバー・ストリップは、剥離補助手段としての実際の保護シートにあるスリットの機能を損なわないように装着される。換言すれば、カバー・ストリップが接着剤で完全に被覆されることはなく、接着剤で被覆された部分は、スリットの片側にのみ位置する。したがって、好ましくは、カバー・シートは、その接着剤を持つ幅の約半分のみを覆って設けられる。原則として、カバー・ストリップの場合、任意適当な接着剤を使用することができる。たとえば、樹脂、可塑剤または老化防止剤のような添加物と組み合わせて使われる天然ゴムおよび合成ゴムに基づく感圧接着剤、ポリアクリレート類、ポリエステル類、ポリクロロプレン類、ポリイソブテン類、ポリビニール・エーテル類、ポリウレタン類を使用できる。シリコーン接着剤を使用すると好ましい。これは、大多数の活性薬物成分では、これらのシリコーン接着剤の溶解性が非常に低いので、特に本発明のTTS製品に当てはまる。さらに、カバー・ストリップの裏面を、カバー・ストリップの接着剤に接着し得ないバリヤー層で被覆することが好ましい。これは、特に、シリコーン接着剤で被覆されたカバー・ストリップを有するTTS製品に当てはまる。このようなバリヤー層のための適切な材料は、たとえばポリエチレン・テレフタレートおよびポリエチレンである。
【0009】
1つの好ましい実施形態においては、カバー・シートの寸法は、実際のラミネート部材またはマトリックスより大きい可能性のある実際の保護シートの寸法に対応する。この場合、保護シートおよびカバー・シートは、実際のラミネート部材の縁を越えて突出する。これは、保護シート用の付加的な剥離補助手段として機能させることができ、同様に本発明の好ましい実施形態に対応する。
【0010】
実際の保護シートにおける「スリット」という用語は、広く解釈されるべきである。すなわち、たとえば、ラミネート部材当たり1つの線形スリットに限定されることはないということである。その代わりに、幾何学的なすべての形態およびパターン(たとえば、複数のスリット)がここに含まれる。このような例が、特許文献1に開示されている。この例では、カバー・シートおよび接着剤での被覆領域がこのように構成されている。
【0011】
したがって、本発明は、好ましくはTTSの特性として任意種類の接着備え付けラミネート部材(たとえば、絆創膏、接着ラベル、自着性の郵便切手など)を含む。一般的に、これらの部材は、複数の層からなり、接着備え付け側または層を有するマトリックス(裏打ち層の有無は問わない)と、それに隣接した、スリットを備える保護シートと、保護シート上にあって、スリットを、好ましくは完全に覆っている接着剤被覆カバー・シートとからなる。TTSの一形態においては、この種のラミネート部材は、一般的に、裏打ち層と、患者の皮膚に貼り付けるための、活性成分を含む(場合により、別体の感圧性接着剤層を備える)接着備え付けマトリックスと、スリットを備える保護シートと、接着剤の層を有するカバー・シートとを含む。ここに述べたラミネート部材の場合、さらなる層を含んでいてもよいし、または、ここに述べた要素が異なった層を含んでいてもよい。本発明は、広範囲にわたって使用することができ、特に、すべての接着備え付けTTSと一緒に使用することができる。
【0012】
図1は、本発明のラミネート部材(1)の構造の一例を示している。重要なものは、以下の通りである。(2)マトリックス、(3)保護シート(剥離ライナ)、(4)カバー・シート上の接着剤の層、(5)カバー・シートである。
【0013】
本発明は、また、本発明のラミネート部材またはTTS製品を製造する方法も提供する。この方法は、
a)接着備え付けラミネートの保護シートにスリットを設けること、
b)保護シートを切断することなくラミネート部材をコンターカット加工すること、
c)ラミネート部材間に残っている材料を取り出すこと、
d)接着剤で予め被覆したカバー・シートを保護シートに貼り付けること、および
e)ラミネート部材をカットオフすること
の工程を含む。
【0014】
裏打ち層、マトリックスおよび保護シートからなるTTSを一例として挙げて、以下、本発明の方法を、この実施形態に限ることなくより詳しく説明する。先に説明した従来技術と対照的に、最初のラミネートの保護シートは、もはや、後に廃棄しなければならない中間キャリアとしてのみ作用せず、その代わりに既に最終製品の一部となっている。TTSラミネートは、ロールから引き出してからその下面(保護シート側)から軽く切り込みを入れ、マトリックスおよび裏打ち層がそのまま残るように保護シートに長さ方向に線形スリットを設ける。連続する次の段階で、裏打ち層およびマトリックスを貫いてコンターカット加工を行い、保護シートはそのまま残し、次いで、裏打ち層およびマトリックスからなる残り材料を取り外す(マトリックスを剥離する)。その後、接触性接着剤で予め被覆したカバー・シートを、幅の狭いストリップとして、TTSの下面、すなわち保護シートに貼り付ける。この配置では、カバー・シートは、好ましくは、TTSの保護シートを完全に覆う。次いで横方向切断を行って個々のラミネート部材をカットアウトした後、TTS部材を、通常、シールしたパウチの形で、外部包装工程へ直接分配する。重なり合う保護シートを有するラミネート部材についての上述の製造方法とは対照的に、本発明の方法は、もはや、さらなる別の材料の供給を必要としない。
【0015】
上述したように、カバー・シートは接着剤で完全には被覆されておらず、保護シートにおけるスリットの剥離補助手段としての機能にいかなる悪影響も及ぼさない。したがって、カバー・シートを製造するための好ましい方法は、必要なカバー・ストリップを簡単なローラ・カットによって製造することができるブラック帯域とのローラ被覆法である。カバー・シート用の材料としては、原則として多数の材料が適切である。たとえば、シリコーン処理をしたポリエチレン・テレフタレート、ポリエチレン・テレフタレート、ポリエチレンおよびポリプロピレンが適切である。カバー・シートの材料は、好ましくは、実際の保護シートについて用いられる材料に対応する。
【0016】
図2は、本発明の製造方法の1つの可能性ある実施形態を示している。ここでの重要構成は以下の通りである。(6)ラミネート・ロール、(7)スリットを作るための保護シートキスカット用のダイ、(8)前部引張り装置1、(9)コンターカットダイ、(10)ダイ切断した剥離マトリックスのための巻取り機、(11)カバー・ストリップまたはカバー・シートのための繰り出し機、(12)積層ステーション、(13)エンボス加工ダイ、(14)前部引張り装置2、(15)横方向カッタである。
【0017】
本発明の製造方法の利点は、特に、新たに供給すべき最終保護シート部材の節減(中間キャリアの回避)とより容易な作業体制(operating regime)にあり、それ故、より迅速かつより信頼性の高い製品取り扱いにある。実際の保護シートの取り出しは、(スリットの片側に結合されて使用される)カバー・ストリップによってより容易に行われる。
【0018】
したがって、この方法および本発明による製品構造は、特に、非常に流動性の高い接着剤成分を原因とする、保護シート・スリットを通しての接着剤の漏出のリスク、それ故、望ましくない製品相互の粘着または製品の包装材との粘着というリスクがあるすべての接着備え付け製品について使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のラミネート部材(1)の構造の一例を示す図である。
【図2】本発明の製造方法の1つの可能性ある実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏打ち層を備えたまたは備えないマトリックスと、マトリックスの接着側に位置し、スリットを有する保護シートと、保護シートに貼り付けてあり、保護シートのスリットを覆うカバー・シートとを含む接着備え付けラミネート部材。
【請求項2】
保護シートのスリットが、保護シートの剥離補助手段として機能し、保護シートを同一または異なるサイズの1つまたはそれ以上のセグメントに分割することを特徴とする、請求項1記載のラミネート部材。
【請求項3】
保護シートに貼り付けるために、カバー・シートが接着剤で部分的に被覆してあり、カバー・シートの接着剤のない部分が保護シートのスリットを覆うことを特徴とする、請求項1または2記載のラミネート部材。
【請求項4】
カバー・シートが、保護シートのスリットを完全に覆うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のラミネート部材。
【請求項5】
カバー・シートが、保護シートを完全に覆うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のラミネート部材。
【請求項6】
ラミネート部材が、経皮治療システム(TTS)として構成してあることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のラミネート部材。
【請求項7】
裏打ち層と、マトリックスと、マトリックスの接着側にスリットを備える保護シートと、保護シートに貼り付けてあり、保護シートのスリットを覆うカバー・シートとを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のTTS。
【請求項8】
カバー・シートが、シリコーン接着剤で被覆してあることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のTTS。
【請求項9】
カバー・シートの裏面が、バリヤー層を備え、このバリヤー層が、カバー・シートの接着剤に接着しないことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のTTS。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のラミネート部材またはTTSを製造する方法であって、
a)接着備え付けラミネートの保護シートにスリットを設けること、
b)保護シートを切断することなくラミネート部材をコンターカット加工すること、
c)ラミネート部材間に残っている材料を取り出すこと、
d)接着剤で予め被覆したカバー・シートを保護シートに貼り付けること、および
e)ラミネート部材をカットオフすること
の工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−529055(P2010−529055A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510669(P2010−510669)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004185
【国際公開番号】WO2008/148477
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】