説明

保護ガス供給装置

【課題】蒸気圧が低く、再液化しやすい保護ガスを用いる場合であっても、混合装置に保護ガスを安定的に供給することが可能な保護ガス供給装置の提供。
【解決手段】、保護ガス供給装置1は、保護ガスとキャリアガスとを混合する為の混合装置11に保護ガスを供給するものであり、保護ガスが充填されたガスボンベ5を内部に収容するガスボンベ室2と、ガスボンベ室2とダクト4を介して接続され、ガスボンベ室2内に温風を供給する温風発生器3とを有している。ガスボンベ室2内には保護ガスの流路となる蛇行形状の金属製管部材8が配設されている。金属製管部材8には吸熱フィン9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム溶湯やマグネシウム合金溶湯の燃焼を防止する為の保護ガスを供給する保護ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウムダイカスト等に用いられるマグネシウム合金溶湯又はマグネシウム溶湯は空気中の酸素と激しく反応し燃焼する。従って、下記特許文献1に所載のように、溶湯を保持する保持炉にSF(六フッ化イオウ)からなる保護ガスを窒素等のキャリアガスと混合して供給し、溶湯の燃焼を防止することが従来から行われている。しかし、SFは地球温暖化係数が非常に高いという問題を有することから、地球温暖化係数が極めて低い保護ガスである1,3,3,3−テトラフルオロプロペンをSFに替えて用いることが下記特許文献2により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−500221号公報
【特許文献2】国際公開第2007/063674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、SFと比べて蒸気圧が低く、再液化しやすいことから、ガスボンベから混合装置に供給する際に流量を安定化させるのが難しいという問題を有している。
【0005】
従って、本発明は上記の問題点に鑑みてなされ、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンのように蒸気圧が低く、再液化しやすい保護ガスを用いる場合であっても、混合装置に保護ガスを安定的に供給することが可能な保護ガス供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る保護ガス供給装置1は、保護ガスとキャリアガスとを混合する為の混合装置11に該保護ガスを供給する保護ガス供給装置1であって、該保護ガスが充填されたガスボンベ5を内部に収容するガスボンベ室2と、該ガスボンベ室2とダクト4を介して接続され、該ガスボンベ室2内に温風を供給する温風発生器3とを有し、該ガスボンベ室2内には該保護ガスの流路となる蛇行形状の金属製管部材8が配設され、該金属製管部材8には吸熱フィン9が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の保護ガス供給装置によれば、蒸気圧が低く、再液化しやすい保護ガスが用いられる場合であっても、保護ガスをガスボンベから混合装置に安定的に供給することができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る保護ガス供給装置を示す概略図である。
【図2】本発明に係る保護ガス供給装置の金属製管部材の要部を示す図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる保護ガス供給装置について図1乃至図3を参酌しつつ説明する。図1において1は保護ガス供給装置であり、保護ガス供給装置1は、ガスボンベ室2と、該ガスボンベ室2とダクト4を介して接続された温風発生器3とによって構成されている。ガスボンベ室2は石膏ボード製の箱体であり、外壁には断熱材が貼り付けられている。温風発生器3はダクト4を介してガスボンベ室2内に温風を送風することにより、ガスボンベ室2内の温度を目標温度以上(例えば、25℃以上)に保つ為のものであり、業務用ファンヒータ等を用いることができる。
【0010】
ガスボンベ室2内には1,3,3,3−テトラフルオロプロペン等の保護ガスが充填されたガスボンベ5が収容されている。ガスボンベ5にはレギュレータ(減圧調整器)6の接続部6aが接続されており、ガスボンベ5内の保護ガスはレギュレータ6によって減圧される。レギュレータ6により所定圧に減圧された保護ガスは、レギュレータ6の接続部6bに接続されたホース7内に流出する。
【0011】
ガスボンベ室2の内壁には蛇行形状の金属製管部材8が固定設置されている。金属製管部材8はガスボンベ室2内における保護ガスの流路とされるものであり、本実施形態においては金属製管部材8はステンレス製である。金属製管部材8の一端である接続部8aには前述のホース7が接続されており、保護ガスは金属製管部材8内に流入する。金属製管部材8は、直線部8Aと湾曲部8Bとを備えて蛇行する蛇行形状とされており、互いに平行に配置された5つの直線部8Aと、各直線部8Aを連結する4つの湾曲部8Bを備えている。金属製管部材8の他端である接続部8bにはホース10が接続されており、保護ガスは金属製管部材8内からホース10内に流出する。
【0012】
図1では図示を省略されているが、金属製管部材8の5つの直線部8Aの外周面には、図2に示すようにステンレス製の吸熱フィン9が設けられている。吸熱フィン9は螺旋状のステンレス材の内周9aを直線部8Aの外周面に溶接することにより直線部8Aの外周面に固定されており、図3に示すようにステンレス材の外周9bは直線部8Aの外周面から径方向に突出するようになっている。
【0013】
ホース10は混合器11に接続されており、管部材8内を通過した保護ガスはホース10内を通って混合器11に供給される。尚、ホース10の周りには断熱材12が配置されている。13は窒素等のキャリアガスが充填されたガスボンベであり、ガスボンベ13にはレギュレータ14の接続部14aが接続されている。ガスボンベ13内のキャリアガスはレギュレータ14により減圧され、レギュレータ14の接続部14bに接続されたホース15内を通って混合器11に供給される。保護ガスとキャリアガスは混合器11内で混合されて混合ガスとなり、マグネシウム合金溶湯を保持する図示せぬ溶湯保持炉の位置までホース16により導かれ、溶湯保持炉内に供給される。
【0014】
本実施形態の保護ガス供給装置1によれば、温風発生器3によって室温が目標温度(例えば、25℃)以上にされたガスボンベ室2内にガスボンベ5が収容されており、ガスボンベ室2内において保護ガスは吸熱フィン9が設けられた金属製管部材8内を通過するので、金属製管部材8内を流れる保護ガスの温度が低下して再液化することが十分に防止され、混合器11に供給される保護ガスの量と濃度とを安定化させることができる。そして、金属製管部材8は蛇行形状とされているので、ガスボンベ室2内に保護ガスの流路を確保するにあたり、ガスボンベ室2が大型化することを防ぐことができる。
【0015】
本発明によるガス供給装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、上述した実施形態においてはガスボンベ室2に保護ガスが充填されたガスボンベ5が1つ収容されたが、2以上のガスボンベがガスボンベ室内に収容されていてもよい。また、ガスボンベ室内にガスボンベの重量を測定する電子計り等の重量測定手段を設け、保護ガスが充填されたガスボンベの重量が所定重量以下になった場合には信号を出力させ、警告灯を点灯させるようにし、ガスボンベ室外の作業者がガスボンベ内のガス量が少なくなったことを把握できるようにしてもよい。また、ガスボンベ室内の温度が所定温度よりも上昇した場合には温風発生器が自動的に停止するようにしてもよい。また、ガスボンベ室には室内の温度上昇を防ぐための換気手段が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0016】
1 保護ガス供給装置
2 ガスボンベ室
3 温風発生器
4 ダクト
5 ガスボンベ
8 金属製管部材
9 吸熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護ガスとキャリアガスとを混合する為の混合装置に保護ガスを供給する保護ガス供給装置であって、該保護ガスが充填されたガスボンベを内部に収容するガスボンベ室と、該ガスボンベ室とダクトを介して接続され、該ガスボンベ室内に温風を供給する温風発生器とを有し、該ガスボンベ室内には該保護ガスの流路となる蛇行形状の金属製管部材が配設され、該金属製管部材には吸熱フィンが設けられていることを特徴とする保護ガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−104631(P2011−104631A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263150(P2009−263150)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)