説明

保護フィルム

【課題】取り扱いが容易で長期に亘って繰り返し使用が可能な、例えば卓球用ラケットのラバー面(保護対象物)を汚れから保護するに好適な保護フィルムを提供する。
【解決手段】保護対象物に貼り付けられて該保護対象物の表面を保護する保護フィルムであって、一面に吸盤層を形成した発泡吸着シートと、この発泡吸着シートの上記吸盤層の形成面とは逆側の面に接着されたシート状の表面材とを具備し、前記表面材は、オレフィン材にて裏打ちした布生地または皮革からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば卓球用ラケットのラバー面のような保護対象物の表面を汚れから保護するに好適な保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
卓球用ラケットのラバー面の汚れは、ヒットした球の回転に悪影響を及ぼす虞がある。これ故、卓球用ラケットを使用しないとき、図3に示すように卓球用ラケット1のラバー面2に保護フィルム3を貼り付け、これによってラバー面2を汚れから保護することが行われている。ちなみにこの種の保護フィルム3は、一般的には一面に粘着層を形成したPE(ポリエチレン)等の合成樹脂製シートからなり、「粘着ラバーフィルム」等と称されてスポーツ用品店等で市販されている。
【0003】
具体的には保護フィルム3は、先ず卓球用ラケット1のラバー面2の汚れを専用のクリーナーで除去した後、該保護フィルム3の粘着層の表面に貼り付けられたシート状のセパレータ(図示せず)を剥がして、前記卓球用ラケット1のラバー面2に貼り付けられる。この際、はさみやカッタを用いて卓球用ラケット1のラバー面2からはみ出した部分を切り落とすことで、保護フィルム3をラバー面2の形状に合わせることも行われる。尚、卓球用ラケット1の使用時には、前記保護フィルム3は該卓球用ラケット1のラバー面3から剥がされ、前記セパレータに貼り付けて保管され、再使用に供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで従来の保護フィルム3は、前述した如くその一面に形成された粘着層をラバー面2に貼り付けて使用するものであり、使用の繰り返しに伴ってその粘着性が次第に失われてくることが否めない。また粘着層(粘着剤)の一部が、合成樹脂製シートからなる基体から剥がれてラバー面2に貼り付くこともある。しかも保護フィルム3は、例えばその端部に生じた細かい傷の部分や折り曲げ箇所から裂け易いと言う不具合がある。ちなみに保護フィルム3は、不本意にラバー面2から剥がれないように、一般的には上述したようにラバー面2の形状に合わせてカットして使用される。この為、爪先等にて保護フィルム3の端部を捲ってラバー面2から剥がす際、捲り上げた端部が折れ曲がることがあり、またその端部に細かな傷が付くことがある。このような折れ曲がりや傷は、保護フィルム3が破損する要因となる。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、取り扱いが容易で長期に亘って繰り返し使用が可能な、例えば卓球用ラケットのラバー面(保護対象物)を汚れから保護するに好適な保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するべく本発明に係る保護フィルムは、保護対象物に貼り付けられて該保護対象物の表面を保護するものであって、
一面に吸盤層を形成した発泡吸着シートと、この発泡吸着シートの上記吸盤層の形成面とは逆側の面に接着されたシート状の表面材と、を具備し、
前記表面材は、オレフィン材にて裏打ちした布生地または皮革からなることを特徴としている。
【0007】
尚、一面に吸盤層を形成した発泡吸着シートとは、例えば特開2006-176693号公報や特開平1−259043号公報に開示されるような、紙や合成樹脂シート等の基材の一面に微小な空孔、いわゆるミクロ吸盤(セル吸盤とも称される)を多数形成した発泡体(吸盤層)を設けたものであって、保護対象物(被着体)の表面に密着させた際、前記吸盤層(ミクロ吸盤/セル吸盤)による吸着作用により前記保護対象物(被着体)の表面に貼り付くものからなる。
【0008】
また前記布生地とは、糸状の天然繊維・再生繊維・合成繊維を織る、或いは編む等して薄くて広い形状に加工した織物や編み物、更にはフェルトや不織布等を指している。このような布生地や皮革材を、オレフィン材にて裏打ちしたものが本発明における表面材として用いられる。
好ましくは、前記保護対象物は、卓球用ラケットのラバー面であって、前記発泡吸着シートは、前記卓球用ラケットのラバー面の全体を覆う大きさを有するものからなる。
【0009】
尚、上記保護フィルムは、更に前記発泡吸着シートの吸盤層の表面に、該吸盤層の表面から剥離可能に吸着させたシート状のセパレータを備えることが望ましい。このセパレータは、該保護フィルムを前記保護対象物に貼り付ける際には、前記発泡吸着シートから剥離されるものであって、また前記保護対象物から剥がされた保護フィルムの前記発泡吸着シートの吸盤層の表面に吸着されて前記吸盤層の保護に用いられるものである。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の保護フィルムによれば、発泡性吸着シートの吸着層による吸着作用を利用して該保護フィルムを保護対象物の表面に貼り付けるので、従来の粘着シートを用いた保護フィルムのように、粘着剤の一部が保護対象物の表面に残るような不具合がなく、またその粘着力が次第に弱まるような不具合もない。換言すれば本発明に係る保護フィルムは発泡性吸着シートを用いているので、汚れに起因して吸着力が低下した場合には、その吸着層を清掃することで、その吸着力が復帰する。従って長期に亘って繰り返し使用が可能である。
【0011】
また本発明に係る保護フィルムは、発泡性吸着シートの吸盤層の形成面とは逆側の面に、オレフィン材にて裏打ちした布生地または皮革からなる表面材を接着した構造をなすので、前記発泡性吸着シートを裂け難くすることができ、また発泡性吸着シートを折れ難くすることができる。しかも保護フィルム自体に或る程度の厚みと、いわゆる「コシ」と称される曲げ強度を持たせることができ、また表面材の端部からの「ほつれ」や「毛羽立ち」にいても効果的に防止することができる。従って保護対象物(例えば卓球用ラケットのラバー面)への貼り付けの容易化と共に、保護対象物からの引き剥がしの容易化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る保護フィルムの外観と大きさを示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る保護フィルムの概略的な断面構造を示す図。
【図3】卓球用ラケットと、そのラバー面に貼り付けられる保護フィルムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る保護フィルムについて、卓球用ラケットのラバー面を保護する為の保護フィルムを例に説明する。
図1はこの実施形態に係る保護フィルムの外観と大きさを示す斜視図であり、この保護フィルム10は、その保護対象とする卓球用ラケットのラバー面よりも大きい、例えば17.5cm角の大きさを有し、例えば0.8〜1.0mm程度の厚みを有している。尚、保護フィルム10の表面には、その商品アピール効果を高めるべく、適宜、模様やロゴマーク等が印刷される。
【0014】
さて保護フィルム10は、図2にその概略的な断面構造を示すように、例えばアクリル系樹脂からなるシート状の基材11の一面に吸盤層12を形成した発泡吸着シート13と、この発泡吸着シート13の上記吸盤層12の形成面とは逆側の面に接着されたシート状の表面材14と、を備えている。この表面材14は、オレフィン材15にて裏打ちした布生地(または皮革)16からなり、布生地(または皮革)16を表面側として前記発泡吸着シート13に、具体的には前記基材11の他面側に、例えばアクリル系の接着剤17を介して接着一体化される。
【0015】
尚、接着剤17に代えて、シート状の、いわゆる両面接着テープを用いて発泡吸着シート13と表面材14とを接着しても良い。また前記発泡吸着シート13の一面に形成された吸盤層12の表面(保護フィルム10の裏面)には、例えばPE(ポリエチレン)シートからなるセパレータ18が着脱自在に設けられる。このセパレータ18の前記吸盤層12への貼り付けは、該吸盤層12の吸着力を利用して行われる。
【0016】
ちなみに一面に吸盤層12を形成した発泡吸着シート13は、例えば日本ゼオン社から発売されている「ゼオンALシート(商品名)」からなり、基材11の一面に微小な空孔、いわゆるミクロ吸盤(セル吸盤)を多数形成した発泡体(吸盤層)12を設けた構造を有するもので、吸盤層(ミクロ吸盤/セル吸盤)12による吸着作用により、糊等を用いることなく保護対象物(被着体)の表面に密着して貼り付くものからなる。
【0017】
またこの実施形態においては前記表面材14の布生地16として綿布を用いたが、その他の天然繊維や再生繊維,更には合成繊維を布状に織り上げた織物、或いはフェルトや不織布であっても良く、また薄く鞣された皮革材であっても良い。いずれの素材を布生地16として用いるにしろ、該布生地16をオレフィン材15にて裏打ちすることで、いわゆる「コシ」と称される曲げ強度を持たせ、また端部からの「ほつれ」や「毛羽立ち」を防止した表面材14が実現されている。
【0018】
このような層構造をなす保護フィルム10は、前述したセパレータ18を剥がして保護対象物である卓球用ラケット1のラバー面2に貼り付けられて、該ラバー面2の汚れ防止に供される。ちなみに卓球用ラケット1のラバー面2への保護フィルム10の貼り付けは次のようにして行われる。先ず専用のクリーナーを用いて卓球用ラケット1のラバー面2を清掃し、その表面に付着した汚れを除去する。次いで保護フィルム10のセパレータ18を剥がして前記発泡吸着シート13の吸盤層12を露出させ、露出させた吸盤層12を卓球用ラケット1のラバー面2に密着させることで、該ラバー面2に保護フィルム10を貼り付ける。
【0019】
この保護フィルム10のラバー面2への貼り付けに際しては、例えばラバー面2の一端側から、該ラバー面2と保護フィルム10との間に空気が入り込まないよう徐々に密着されながら行うことが好ましい。また保護フィルム10を初めて使用する場合には、ラバー面2よりも保護フィルム10が大きいので、貼り付けが終わった後、はさみやカッタを用いて保護フィルム10の前記ラバー面2からはみ出した部分を除去し、保護フィルム10をラバー面2の形状に合わせることが望ましい。このようにラバー面2の形状に合わせて保護フィルム10をカットすれば、ラバー面2の縁部から保護フィルム10がはみ出すことがないので、その端部が不本意な外力を受けて折れ曲がったり、或いはラバー面2から捲り上がる等の不具合を効果的に防止することができる。
【0020】
そして上述した如く保護フィルム10をラバー面2に貼り付けた卓球用ラケット1は、ラケットケース(図示せず)に収納される等して保管される。この際、保護フィルム10から剥離したセパレータ18についても、一緒に保管することが望ましい。
尚、卓球用ラケット1を使用する際には、ラバー面2に貼り付けられた保護フィルム10をその端部から捲り上げ、ラバー面2から引き剥がす。そしてラバー面2から剥離した保護フィルム10を、先に前記保護フィルム10から剥離したセパレータ18に貼り付けて保管し、再使用に供する。
【0021】
この際、前記ラバー面2から剥離した保護フィルム10の吸着層12が汚れ,その吸着力が低下しているならば、該保護フィルム10(吸着層12)を水洗いする等してその汚れを除去し、十分に乾かした後、前述した如くセパレータ18に貼り付けて保管する。このような水洗いによって吸着層12の汚れを除去するだけで該吸着層12の吸着力が復帰するので、保護フィルム10の長期に亘る繰り返し使用が可能となる。
【0022】
上述した本発明に係る保護シート10によれば、発泡吸着シート13の吸着力を利用して卓球用ラケット1のラバー面2に貼り付けるので、従来の「粘着ラバーフィルム」とは異なって糊のような粘着剤が不要であり、粘着剤の一部がラバー面2に貼り付く等の不具合を招くこともない。これにもまして発泡吸着シート13の表面に布生地16を主体とする表面材14を接着した層構造をなすので、その全体的な厚み(ボリューム)を増すと共に手触り感の向上を図り、その取り扱いの容易化を図ることができる。
【0023】
しかも表面材14として、オレフィン材15にて裏打ちした布生地16を用いているので、表面材14に、いわゆる「コシ」と称される曲げ強度を持たせることができ、また表面材14の端部からの「ほつれ」や「毛羽立ち」を効果的に防止することができる。この結果、表面材14、ひいては保護フィルム10を裂け難くし、同時に折れ難くすることができるので、セパレータ18やラバー面2から保護フィルム10を剥がす際、保護フィルム10の損傷を効果的に防ぐことができる。故に、簡単な取り扱いの下で、長期に亘って保護フィルム10を安定に繰り返し使用することができる等の効果が奏せられる。
【0024】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。ここでは卓球用ラケット1のラバー面2を汚れから保護する保護フィルム10を例に説明したが、例えばポータブル型のノートパソコンのディスプレイ面等を汚れから保護する為の保護フィルムとして実現することも可能である。この場合、表面材14として合成樹脂製の透明体を用いることも有用である。
【0025】
またCDやDVD等の光学記録媒体の保護フィルムとして実現することも可能である。この場合には、複数枚の保護フィルムを重ねてその一端側を綴じ、各保護フィルムに光学記録媒体(光ディスク)を吸着させて保管する、いわゆる保管ケースとして実現することも有用である。このような保管ケースであれば、前述した表面材14が複数枚の光学記録媒体の間に位置付けられるクッション材としても作用するので、その利点は多大である。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0026】
10 保護シート
11 基材
12 吸盤層
13 発泡性吸着シート
14 表面材
15 オレフィン材
16 布生地
17 接着剤
18 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象物に貼り付けられて該保護対象物の表面を保護する保護フィルムであって、
一面に吸盤層を形成した発泡吸着シートと、この発泡吸着シートの上記吸盤層の形成面とは逆側の面に接着されたシート状の表面材と、を具備し、
前記表面材は、オレフィン材にて裏打ちした布生地または皮革からなることを特徴とする保護フィルム。
【請求項2】
前記保護対象物は、卓球用ラケットのラバー面であって、
前記発泡吸着シートは、前記卓球用ラケットのラバー面の全体を覆う大きさを有するものである請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の保護フィルムであって、
更に前記発泡吸着シートの吸盤層の表面に、該吸盤層の表面から剥離可能に吸着させたシート状のセパレータを備えることを特徴とする保護フィルム。
【請求項4】
前記セパレータは、該保護フィルムの前記保護対象物への貼り付け時には前記発泡吸着シートから剥離され、前記保護対象物から剥がされた保護フィルムの前記発泡吸着シートの吸盤層の表面に吸着されて前記吸盤層の保護に用いられるものである請求項3に記載の保護フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−254981(P2011−254981A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131870(P2010−131870)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(594194778)株式会社ミノウラ (12)