説明

保護帽

【課題】本発明は自動二輪車の運転者の飲酒運転に対する自覚と周囲の注意を促すことにより事故の未然防止に寄与する保護帽を提供する。
【解決手段】自動二輪車の運転者が着用するヘルメットに、運転者の呼気を捕捉する呼気センサ10と、呼気中のアルコール濃度を検出する制御部12と、アルコール濃度の検出値に対応したパターンで発光する発光体11と、制御部12と発光体11に作動用の電力を供給するバッテリ13と、運転者がヘルメットを着用したことを検出する頭部センサ14を備えた構成とした。ヘルメット着用時に発光体11がアルコール濃度の検出値に対応したパターンで発光し、運転者の飲酒の有無や程度を周囲に報知することで、運転者の飲酒運転に対する自覚と周囲の注意が促され、事故の未然防止に寄与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の運転者が着用する保護帽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲酒時は通常時に比べて判断力や瞬発力等の諸機能が低下するため、アルコール濃度が一定以上である状態での車両の運転は道路交通法等の法令により禁止されている。しかしながら、飲酒者が運転に際し自らのアルコール濃度を知る機会は稀であり、自覚のないまま車両を運転してしまうことで重大な事故を引き起こすケースが多発している。このような状況を鑑み、従来、運転者の呼気から一定濃度以上のアルコールが検出されると自動車の走行を機構的に不能にする技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−249847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この技術によれば飲酒時の運転が物理的に不可能であるため、飲酒運転およびそれに伴って発生する事故等を激減させることが可能である。しかし、運転者の呼気中のアルコール濃度を検出するアルコールセンサは正確を期すため運転席の近傍に設置する必要があるが、運転席がドアやルーフに囲まれた密閉空間にある四輪車と異なり二輪車の場合は運転席が外気にさらされているため、呼気が拡散してしまい、アルコール濃度を正確に検出することは困難である。また、車両運行を機構的に不能にするための制御装置を新たに設置する必要があるため、四輪者に比べサイズが小さくまた単価も低い二輪車に導入するにはスペースやコスト面での課題がある。さらに、制御装置になんらかの不具合が生じるとアルコール濃度に関わらず走行が不能になることが起こり得る。
【0004】
これらの課題を解決するため、本発明は自動二輪車の運転者の飲酒運転に対する自覚と周囲の注意を促すことにより事故の未然防止に寄与する保護帽を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、自動二輪車の運転者が着用する保護帽であって、運転者の呼気中のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、アルコール濃度の検出値に対応したパターンで発光する発光体と、アルコール濃度検出手段と発光体に作動用の電力を供給する給電手段を備えた構成とした。アルコール濃度の検出値に対応したパターンで発光する発光体が運転者の飲酒の有無や程度を周囲に報知する役割を果たし、飲酒運転を取り締まる当局の業務の便益に供するとともに、運転者自身に飲酒運転に対する羞恥心や罪悪感等が醸成され、飲酒運転を中止することへのインセンティブが作用する。また、運転時に着用が義務付けられている保護帽にアルコール濃度検出手段と発光体と給電手段を一体的に備えており、自動二輪車本体に制御装置等を付加する必要がないので、スペースやコスト面からも導入が容易である。さらに自動二輪車自体の走行を機構的に不能にすることがないので、機構的な不具合に走行が不能になることがない。
【0006】
前記発光体は、アルコール濃度の検出値が所定の基準値を超えている場合に赤色点灯し、所定の時間が経過したら点滅パターンに移行することで、視認性を高めることができる。さらに、アルコール濃度の検出値が所定の基準値に達していない場合に緑色に点灯することで、運転者は自らの飲酒の程度を知ることができ、運転が可能であるか否かの判断を行うことができる。
【0007】
また、運転者が着用したことを検出するためのセンサを備え、センサにより運転者が着用したことが検出された場合に給電手段がアルコール濃度検出手段と発光体に作動用の電力を供給することで、着用時には必ずアルコール濃度が検出され、少なくとも所定の基準値を超えるアルコール濃度が検出された場合であって保護帽を着用している間、すなわち飲酒運転をしている間は発光体が発光し続けることになり報知効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自動二輪車の運転者の飲酒運転に対する自覚と周囲の注意を促すことが可能になり、自動二輪車の飲酒運転に起因する事故の未然防止に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の二輪車用のヘルメットの構造を示している。ヘルメット1はフルフェイス型ヘルメットであり、運転者の頭頂部から側頭部、後頭部を覆い、さらに顎を保護するチンガードを設けた保護帽である。ヘルメット1は、外側から帽体2、ライナー3、内装4の順に積層されて構成されている。着用者の両目にあたる箇所は開口されており、開閉自在の透明なシールド5で覆われている。ヘルメット1の下部には顎紐6が設けられている。
【0010】
帽体2には硬さと強度に加え衝撃を分散させる弾性が要求されており、素材にはポリカーボネイト、ファイバーグラス、カーボン、ABS樹脂等が使用されている。ライナー3は帽体2で分散された衝撃を吸収し、頭部に伝わる衝撃を緩和する役割を担っており、主に発泡スチロールで構成されている。内装4はライナー3と頭部の間で緩衝材の役割を果たすとともに頭部をヘルメット1にホールドする役割を担っている。直接頭部と接触する部分であるので、素材は通気性や吸汗性に優れたウレタンが広く使用されている。走行中の負圧を利用したベンチレーション7により内装4の内側にこもる湿気や熱気を強制排気し、シールド5の曇りを除去するとともに内装4をドライな状態に維持して快適性の向上を図っている。
【0011】
呼気センサ10は、酸化スズを主成分とする半導体を用いた半導体式ガスセンサであり、アルコール系の有機溶剤ガスに曝露されると電気抵抗が減少する性質を有している。呼気センサ10は着用者の呼気を直接捕捉することが可能な位置、例えば内装4の運転者の口と対向する個所に設けられ、内装4の表面に取り付けることも可能であるが、破損防止や事故の際の着用者の安全性を確保する観点からは内装4の内側に配置することが望ましく、この場合は内装4に呼気センサ10に通じる通気孔を設ける。
【0012】
発光体11は、運転者の呼気中のアルコール濃度の数値に応じて異なるパターンで発光し、運転者および周囲に報知する報知手段である。発光体11は運転中に何れの方向からでも視認できることが望ましいので、帽体2の外側に複数の発光体11を適宜離間させて配置する。なお、特に冬季においては運転者が着用する防寒具等によりヘルメット1の下方が遮蔽される場合があるので、発光体11はシールド5の上方に配置するのが望ましい。また少なくとも1個の発光体1をシールド5の近傍に配置すると、ヘルメット1を着用した運転者自身が二輪車のサイドミラー等で発光状態を確認することができる。発光体11は、呼気中のアルコール濃度が法定基準値に達していない場合には緑色で発光し、法定基準値を超えている場合には赤色で発光する。赤色発光の場合は法令上の飲酒運転(道路交通法では、違反行為として酒酔い運転と酒気帯び運転に分類されている。)に該当するため、周囲に注意を促す観点から一定時間(数分程度)点灯した後に点滅パターンに移行する。発光体11は省電力で寿命が長く耐衝撃性にも優れるLEDを使用するのが望ましい。
【0013】
図2はヘルメット1の制御構成を示している。制御部12は演算処理を実行するCPUや演算処理に必要なデータを記憶するメモリ等を備えている。制御部12は、呼気センサ10における電気抵抗の変化に基づいて運転者の呼気中に含まれるアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段としての機能を有する。また制御部12は、アルコール濃度の検出値とメモリに予め記憶させた法定基準値とを比較し、発光体11を検出値に対応してメモリに予め記憶させたパターンに基づいて発光させる制御を行う。検出値が法定基準値に達していないと発光体11は緑色発光し、法定基準値を超えていると赤色発光する。バッテリ13は作動用の電力を発光体11と制御部12に供給する給電手段である。バッテリ13は発光体11と制御部12への給電をON/OFFに切り替えることが可能であり、頭部センサ14が作動している状態においてはON状態になり、それ以外の場合にはOFF状態が維持される。
【0014】
頭部センサ14は運転者がヘルメット1を着用したことを検出するためのセンサであり、ヘルメット1の着用時にのみ作動し、それ以外の状況下では非作動になっている。頭部センサ14としては、荷重センサや圧力センサのような頭部による圧迫を検知するセンサ等を使用することができる。頭部センサ14はヘルメット1の着用時に運転者の頭部の少なくとも一部が近接する個所、例えば図1に示すように頭頂部が近接する箇所に配置すると、運転者がヘルメット1を正常な状態で着用した場合のみ作動することになり、誤作動を防止することができる。従って、運転者がヘルメット1を着用すると頭部センサ14が作動し、給電がOFF状態からON状態に自動的に切り替わるため、手動で切り替える煩わしさから開放されるとともに切り替えミス等の人為的ミスの発生を回避することができる。また、ヘルメット1を着用している間は発光体11が点灯若しくは点滅しているので、例えば二輪車と四輪車の配置によっては四輪車の運転者から二輪車の前照灯が確認できない場合であっても発光体11の点灯若しくは点滅により二輪車の存在を周囲に報知することができる。なお制御部12とバッテリ13は、帽体2の後頭部側の一部を外側に膨らませ、その内部に収納している。
【0015】
図3はヘルメット1の作動手順を示すフローチャートである。運転者がヘルメット1を着用すると(ST1)、頭部センサ14が作動し(ST2)、バッテリ13が発光体11と制御部12に作動用の電力の供給を開始する(ST3)。呼気センサ10が運転者の呼気を捕捉し、制御部12において呼気中のアルコール濃度を検出する(ST4)。制御部12はアルコール濃度の検出値と法定基準値との比較を行い(ST5)、アルコール濃度の検出値が法定基準値を超えている場合、発光体11は赤色点灯し(ST6)、一定時間経過後に点滅パターンに移行する(ST7)。一方、アルコール濃度の検出値が法定基準値に達していない場合、発光体11は緑色点灯する(ST8)。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明によれば、自動二輪車の運転者の飲酒運転に対する自覚と周囲の注意を促すことが可能になり、自動二輪車の飲酒運転に起因する事故の未然防止に寄与することができるので、自動二輪車に関する生産分野や自動二輪車を用いた運送分野等において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態のヘルメットの構造を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態のヘルメットの制御構造を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態のヘルメットの作動手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0018】
1 ヘルメット
10 呼気センサ
11 発光体
12 制御部
13 バッテリ
14 頭部センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車の運転者が着用する保護帽であって、
運転者の呼気中のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、アルコール濃度の検出値に対応したパターンで発光する発光体と、アルコール濃度検出手段と発光体に作動用の電力を供給する給電手段を備えた保護帽。
【請求項2】
前記アルコール濃度検出手段により検出された運転者の呼気中のアルコール濃度の検出値が所定の基準値を超えている場合に前記発光体が赤色に点灯する請求項1に記載の保護帽。
【請求項3】
前記発光体が点灯してから所定の時間が経過した後に点滅パターンに移行する請求項2に記載の保護帽。
【請求項4】
前記アルコール濃度検出手段により検出された運転者の呼気中のアルコール濃度の検出値が所定の基準値に達していない場合に前記発光体が所定の時間だけ緑色に点灯する請求項1乃至3の何れかに記載の保護帽。
【請求項5】
運転者が着用したことを検出するためのセンサを備え、
センサにより運転者が着用したことが検出された場合に前記給電手段が前記アルコール濃度検出手段と前記発光体に作動用の電力を供給する請求項1乃至4の何れかに記載の保護帽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−214770(P2008−214770A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49199(P2007−49199)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(305050339)
【Fターム(参考)】