説明

保護用ヘルメット

【課題】保護用ヘルメット
【解決手段】使用時にユーザの頭部を顔領域を除いて少なくとも部分的に囲むヘルメットシェル(3)と、使用時にユーザの顔領域の下方部分を囲む顎ガード(1)と、ヘルメットシェル(3)と顎ガード(1)との間の視野開口を覆うべく、好ましくは前記ヘルメットシェル(3)に枢動可能な様相で配置されるバイザー(4)とを有しており、前記顎ガード(1)が、互いに対して可動である2つの部位(1a、1b)を備えている保護用ヘルメット。本発明によれば、前記2つの顎ガード部(1a、1b)のそれぞれが、前記ヘルメットシェル(3)に枢動可能に配置され、前記顎ガード部(1a、1b)の前記ヘルメットシェル(3)へのこの枢動可能な配置が、いずれも前記ヘルメットシェル(3)を該当する前記顎ガード部(1a、1b)へと接続する柔軟なプレート部材(2)によって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載の保護用ヘルメットであって、使用時に顔領域を除く装着者の頭部を少なくとも部分的に囲むヘルメットシェルと、使用時に装着者の顔領域の下方部分を囲む顎ガードと、ヘルメットシェルと顎ガードとの間の視野開口を覆うべく、好ましくはヘルメットシェルに枢動可能な様相で配置されるバイザーとを有しており、顎ガードが、互いに対して可動である2つの部位を備えている保護用ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
このような保護用ヘルメットは、特にオートバイの事故の場合に、ヘルメットの装着者の頭蓋の領域の負傷を軽減または防止する。いくつかの種類を区別することが可能である。
【0003】
例えば欧州特許第0 433 182号には、互いに対して可動である2つの顎ガード部を、ヘルメットシェルに変位可能な様相で保持して備えているヘルメットが記載されている。このヘルメットにおいては、顎ガード部を単にヘルメットの内部へと向かう方向に変位させるとき、ヘルメットの開口を下方に向かって大きく広げることはできない。さらに、顎ガード部の開放位置においても、閉鎖位置においても、あらかじめの付勢を実現することができない。さらに、このようなヘルメットは、技術的な観点から製造が困難であり、2つの顎ガード部の間の連結ジョイントを可能にしていない。結果として、顎ガード部について、顎ガード部のそれぞれの移動の経路を同期させることができない。
【0004】
さらには、顔領域が開放されているヘルメットも知られている(いわゆる「ジェット・ヘルメット」)。このようなヘルメットは、新鮮な空気という利点を提供するが、雨または寒い天候において不利である。また、事故の場合に、顔および顎の領域の保護が不充分である。
【0005】
クロス・ヘルメットが、とくに単車でのスポーツの分野において使用され、激しい運動の場合に重要な空気の供給を保証するために、やはり比較的大きなバイザー開口を有している。ジェット・ヘルメットと対照的に、これらのヘルメットは、きわめて頻繁に生じる落下の場合に充分な保護を提供するために、安定な顎ガードを有している。
【0006】
いわゆるフリップ−アップヘルメットまたはシステムヘルメットは、一体の大きな顎ガードを有しており、多くの場合、バイザーもこの顎ガードへと取り付けられている。顎ガードを、実質的に水平な枢支軸によって上方へと跳ね上げることができ、したがってヘルメットの着け外しが容易である。この形式のヘルメットは、顎ガードが上方へと跳ね上げられた状態で装着されるため、ヘルメットの装着が容易になっているが、顎ガードが水平軸を中心にして下方に枢動するにすぎないため、顎領域において形状によるさらなるフィットを提供していない。また、この形式のヘルメットは、眼鏡をかけた状態での着け外しが不可能である。
【0007】
さらなる実施形態によれば、使用時に顔領域を除く装着者の頭部をほぼ完全に囲むヘルメットシェル、使用時に装着者の顔領域の下方部分を完全に囲む顎ガード、およびヘルメットシェルと顎ガードとの間の視野開口を覆うべく、好ましくはヘルメットシェルに枢動可能な様相で配置されるバイザーが提供される。装着者の頭部への固定が、ヘルメットの装着後に装着者の顎領域において引き張られる顎ひもによって生じる。この形式のヘルメット(いわゆる、「一体型ヘルメット」)は、広く使用されているが、着け外しが実用的でないという欠点を抱えている。特に事故の場合に、ヘルメットを取り外すことが困難であることで、特にのどの負傷の場合に、危険な状況につながる可能性がある。
【0008】
また、すべての種類のヘルメットは、さまざまな頭のサイズに最もよくフィットする製品を選択するために、さまざまなサイズのヘルメットを提供しなければならないという欠点を有している。しかしながら、実際には、このやり方では、ヘルメットについて可能な最良のフィットが、限られた範囲の中でしか得ることができないことが分かっている。したがって、消費者は、実際のところ、良好なフィットを提供するが着け外しが困難であるヘルメット、または着け外しが容易であるがフィットに難のあるヘルメットの間で、選択を行うことがしばしばである。さらに、この種のヘルメットにおいてヘルメットを装着者の頭部へと固定するために必要である顎ひもは、特に顎および首の領域において適切な保持をもたらしておらず、その影響は、フィットに難のあるヘルメットにおいてさらに大きい。この欠点は、さらなる風の圧力が作用して、ヘルメットを押し上げかねないより高い速度において、とくに顕著である。また、ヘルメットと前部領域との間のフィットの不足の結果として、空気の流れが下方からヘルメットへと進入し、不愉快な風切り音および寒さを引き起こして、乗車の快適さを損なう可能性がある。
【0009】
また、顎ひもは、特に手袋を着用しているときに取り扱いが難しいという欠点を抱えている。また、片手での作業が、不可能ではないが困難である。さらに、顎ひも用の多数の固定システムが提供されているが、それらの操作は、未経験のシステムを初めて取り扱う場合に、困難であると考えられる。現実に、事故の状況において、救急医療師が顎ひもの固定システムの開放に手間取り、貴重な時間を失うこともしばしばであることが実際に知られている。
【0010】
したがって、本発明の目標は、容易に着け外しが可能であり、かつ特に顎および首の領域においてより良好な保持をもたらす保護用ヘルメットを実現することにある。これは、特に事故の状況の流れの中で、ヘルメットが頭部の後ろ側へと滑って外れることがないように確実に防止するうえで役に立つ。本発明のこの分野において使用される用語は、「引き剥がし挙動」と称され、本発明による保護用ヘルメットにおいて改善されるべきである。さらに本発明は、より良好な空力特性および空気音響特性、ならびに風、塵埃、および寒さに対するより良好な防護を、確実に実現しなければならない。
【特許文献1】欧州特許第0 433 182号
【発明の概要】
【0011】
これらの目的が、請求項1または2の特徴によって達成される。請求項1および2はそれぞれ、使用時にユーザの頭部を顔領域を除いて少なくとも部分的に囲むヘルメットシェルと、ヘルメットの使用時にヘルメットのユーザの顔領域の下方部分を囲む顎ガードと、ヘルメットシェルと顎ガードとの間に顔面のための開口を形成するため、好ましくはヘルメットシェルに枢動可能に配置されるバイザーとを有しており、前記顎ガードが、ヘルメットシェルに可動に取り付けられた2つの部位を備えている保護用ヘルメットに関する。請求項1によれば、2つの顎ガード部のそれぞれが、ヘルメットシェルに枢動可能に配置され、この顎ガード部のヘルメットシェルへの枢動可能な配置が、いずれの場合もヘルメットシェルを該当する顎ガード部へと接続する柔軟なプレート部材によって行われる。請求項2によれば、2つの顎ガード部が、これらのそれぞれの上部の連結ジョイントによって互いに接続されることが提供されている。結果として、たとえ手によって2つの顎ガード部へと加えられる閉鎖の圧力が相違する場合でも、2つの顎ガード部が常に同期して閉じる。特にこの施策により、顎ガード部を片手で閉じることも可能である。
【0012】
顎ガード部の枢動可能な構成の結果として、最初にヘルメットの着け外しに先立ってヘルメットの開口を広げることができるため、ヘルメットの着け外しが容易になる。通常は、両方の顎ガード部が、開放の際に2つの顎ガード部が互いから離れるように移動するよう、開放の際に2つの顎ガード部のそれぞれが別個の軸をそれぞれ中心として下方かつ外側へと枢動するような様相で、枢動可能に配置される。顎ガード部は、閉鎖の際には、再び互いに向かって移動して、ヘルメットの開口を小さくする。
【0013】
本発明による施策の結果として、ヘルメットの着け外しのための充分に大きなヘルメット開口が顎ガード部が枢動可能であることによって確保されるため、顎ガード部を、構成上の観点から、ヘルメットの装着後にヘルメットの開口がさらに小さくされるようなやり方で構成して、特に顎領域における保持をさらに顕著に改善することも可能である。例えば、請求項3によれば、2つの顎ガード部のそれぞれの下部に、ヘルメットの内側に向かう方向へと横向きに突き出す顎保護面を持たせることができる。さらに詳しく後述されるとおり、ヘルメットの開口が、顎ガード部の閉鎖の際にさらに小さくされ、したがって保持が改善されるだけでなく、ヘルメットの空力特性および空気音響特性の改善、ならびに風、塵埃、および寒さに対する防護の改善が可能になる。
【0014】
顎ガード部についてのとくに好都合な実施形態が、請求項4に提案される。請求項4によれば、顎ガード部がそれぞれ、ヘルメットシェルに面する端部に位置する固定領域と、ヘルメットシェルから離れる方の端部に位置して閉鎖面を備えている閉鎖領域とを備えており、2つの閉鎖面が、2つの顎ガード部が開放位置にあるときは互いから離間しており、2つの顎ガード部を枢動させることによって到達できる閉鎖位置においては、互いに当接している。
【0015】
請求項5の特徴は、閉鎖機構が前記閉鎖面の領域に配置されており、この閉鎖機構が、2つの顎ガード部を互いに当接して位置する顎ガード部の閉鎖位置に空間的に固定する点で、好都合である。閉鎖機構を、閉鎖面の領域において下方へと向けられる表面の付近に配置でき、例えば留め金として構成することができる。
【0016】
請求項6によれば、閉鎖面の一方が溝を備えており、他方の閉鎖面が、前記溝に組み合わせられるばねを備えており、閉鎖位置において溝およびばねが互いに係合する。結果として、衝撃の場合に、2つの顎ガード部のせん断力をよりよく吸収でき、連結ジョイントおよび閉鎖機構への荷重を軽減することができる。したがって、事故の場合、および事故によって生じた荷重が顎ガード部に加わる場合に、閉鎖機構が適切に機能するように保証することができる。
【0017】
請求項7に従って2つの顎ガード部が開放位置へと付勢される場合、2つの顎ガード部が、例えば閉鎖機構を開放した後に、開放位置へと自動的に枢動する。柔軟なプレート部材が設けられる場合、付勢を、開放位置に位置しているときにプレート部材が緊張のない自由な状態であって、閉鎖の動きが進むにつれてプレート部材に緊張が加えられるようなやり方で、達成することができる
請求項8によれば、2つの顎ガード部の前記固定領域がそれぞれ、ヘルメットシェルに面する側面を終端としており、この側面が、顎ガード部が閉鎖位置にあるときにヘルメットシェルの1つの支持面に当接し、顎ガード部が開放位置にあるときに前記支持面から離間する。閉鎖位置において顎ガード部をヘルメットシェルにて支持することによって、力が下方から顎ガード部に作用する場合に、より良好な保護が保証される。とくに請求項9に従って用意される場合には、顎ガード部の前記固定領域の前記側面およびヘルメットシェルの前記支持面が、それぞれ段差を付けられた様相で構成されており、これらの段差部が、顎ガード部が閉鎖位置にあるときに互いに係合し、顎ガード部とヘルメットシェルとの間のせん断力をよりよく吸収することができる。
【0018】
請求項10によれば、前記顎ガード面に、ヘルメットの内部に面する面の着脱式のパッドが設けられる。この着脱可能性が、ヘルメットをさまざまな頭のサイズに合わせてより上手く調節できるよう、異なる厚さを有するパッドを使用することができるように保証する。さらに、着脱可能なパッドは、より簡単に洗浄することができる。
【0019】
請求項11によれば、前記固定領域の前記側面が、この側面の長手方向の広がりに沿い、終端面を介して、鈍角の様相で前記顎ガード面へと合流しており、前記終端面が、顎ガード部が閉鎖位置にあるときにヘルメットシェルの保持用の段部に当接する。これにより、顎ガード部に前方から作用する力が、ヘルメットによってより良好に吸収される。
【0020】
請求項12に従って2つの顎ガード部が閉鎖位置にあるときに前記バイザーが2つの顎ガード部にさらに重なる場合、あるいは2つの顎ガード部が前記バイザーの下縁に当接する場合、顎ガード部をバイザーとは別個独立に開閉することが可能である。
【0021】
次に、本発明を、添付の図面を参照することによってさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
最初に図1を参照すると、ヘルメットシェル3および顎ガード部1a、1b(図1においては、顎ガード部1aのみを見て取ることができる)を備える本発明による保護用ヘルメットの一実施形態の斜視側面図が、顎ガード部1a、1bが閉鎖位置にある状態で示されている。図示の実施形態によれば、顎ガード部1a、1bがそれぞれ、柔軟なプレート部材2を介してヘルメットシェル3へと取り付けられている。プレート部材2は、POM(ポリオキシメチレン/ポリアセタール)またはPCなどといった永続的に柔軟であって割れおよび裂けに耐える材料で作られており、接着剤、リベット、または留め金による接続によってヘルメットシェル3の外表面に取り付けられている。図1は、例として、リベット接続5による取り付けを示している。好ましくは、プレート部材2を、空力の改善という利益のために、ヘルメットシェル3へと沈めて、滑らかな表面をもたらしてもよい。さらに、好ましくはバイザー4が、枢動可能な様相でヘルメットシェル3に配置される。また、通常は、パッド12が、ヘルメットシェル3の内面に設けられる。
【0023】
プレート部材2は、顎ガード部1a、1bを枢動させる際に、枢支軸に平行である平行な引っ張り線のみが得られるようなやり方で、ヘルメットシェル3および当該顎ガード部1a、1bにまたがって曲げられている。したがって、プレート部材2において、顎ガード部1a、1bの案内に使用されない変形が防止される。その結果、プレート部材2の材料の応力が軽減される。
【0024】
また、プレート部材2とヘルメットシェル3ならびに顎ガード部1a、1bとの間の固定部材5についても、応力が小さくなる。好ましくは、2つの顎ガード部1a、1bが、開放位置へと付勢されている。このような付勢は、開放位置に位置しているときにプレート部材2が緊張のない自由な状態であって、閉鎖の動きが進むにつれてプレート部材2に緊張が加えられるようなやり方で、達成することができる。ヘルメットシェル3上での顎ガード部1a、1bの枢動の構成について、他の実施形態も、閉鎖位置から開放位置への移行が進むにつれてヘルメットの開口が大きくなるように顎ガード部1a、1bの枢動の能力が保証され、かつ顎ガード部1a、1bのヘルメットシェル3への堅固な固定が保証される限りにおいて、可能である。
【0025】
両方の顎ガード部1a、1bは、通常は、2つの顎ガード部1a、1bのそれぞれが、開放の際に2つの顎ガード部1a、1bの重心が互いから離れるように動くよう、それぞれ異なる軸によって下方かつ外側へと枢動するようなやり方で、枢動可能な様相に配置される。閉鎖の際には、顎ガード部1a、1bが互いに向かって動き、ヘルメットの開口を小さくする。したがって、ヘルメットシェル3、顎ガード部1a、1b、およびプレート部材2によって定められる枢支軸は、それぞれ斜めの方向を向いている。図1に関しては、枢支軸が、おおむね左下から右上へと延びている。
【0026】
図2は、図1の実施形態の斜視側面図を、顎ガード部1a、1bを開いた状態で示している。すでに述べたように、本発明による施策の結果として、ヘルメットの着け外しのための充分に大きな開口が顎ガード部が枢動可能であることによって確保されるため、着用後にヘルメットの開口をさらに小さくでき、したがって特に顎の領域においてヘルメットの据わりを大いに改善できるような構成を、顎ガード部1a、1bにもたらすことができる。図2は、例として、2つの顎ガード部1a、1bのそれぞれが、これらの下方の領域に、ヘルメットの内側の方向へと横方向に突き出す顎ガード面6を備えることを示している。したがって、このやり方で、顎ガード部1a、1bを閉じるときに、顎ガード面6が互いに向かって動き、最終的に顎ガード部1a、1bが閉鎖位置となるときに互いに対して同一面に位置するため、ヘルメットの開口がさらに小さくなる。これは、ヘルメットの据わりを改善するだけでなく、ヘルメットについてより良好な空力特性および空気音響特性をもたらし、風、塵埃、および寒さに対する防護も改善される。
【0027】
以下では、顎ガード部1a、1bを、ヘルメットシェル3に面する端部に位置する固定領域7と、ヘルメットシェル3から離れる方の端部に位置する閉鎖領域13とに分割することができる。閉鎖領域13は、それぞれ閉鎖面8を備えており、2つの閉鎖面8が、2つの顎ガード部1a、1bが開放位置にあるときは互いから離間し、2つの顎ガード部1a、1bの枢動によって達成できる閉鎖位置においては、互いに当接して位置している。さらに、閉鎖面8に、風および水の進入に対する防護のために、ゴム製の表面シール(図1〜9には示されていない)を設けることが可能である。
【0028】
2つの顎ガード部1a、1bは、顎ガード部1a、1bの閉鎖領域13の上部において、連結ジョイントによって互いに相互に接続されている。結果として、たとえ手によって2つの顎ガード部1a、1bへと加えられる閉鎖の圧力が相違する場合でも、2つの顎ガード部1a、1bが常に同期して閉じるようになる。すでに述べたように、この施策の結果として、例えば第1の顎ガード部1aの動きが連結ジョイント10によって第2の顎ガード部1bへと伝達されるため、顎ガード部1a、1bの閉鎖を片手で行うことも可能である。また、2つの顎ガード部1a、1bを互いに当接した閉鎖位置に空間的に固定する閉鎖機構11、14を、閉鎖面8の領域に配置することも可能である。図2が、このような閉鎖機構11、14について考えられる実施形態であって、ピン11と協働するレバー14の助けによる可能な実施形態を示している。レバー14を持ち上げることでピン11が開放され、プレート部材2の付勢の結果として、2つの顎ガード部1a、1bが開放位置へと枢動する。このようなレバー14は、片手で操作することも可能であり、片手での操作はとくに好都合であり、したがって閉鎖機構11、14を選択するときに考慮されるべきである。
【0029】
したがって、連結ジョイント10は、開放時に2つの顎ガード部1a、1bが互いから離れるように移動するよう、好ましくは2つの顎ガード部1a、1bのそれぞれが開放時に下方かつ外側へと枢動すべきであるため、閉鎖領域13のそれぞれの上部に配置されるべきである。
【0030】
さらに図2は、2つの閉鎖面8のうちの一方が溝9を備え、他方の閉鎖面8が溝9に組み合わせられるばね15(例えば、図4を参照)を備え、閉鎖位置において溝9およびばね15が互いに係合する旨を示している。結果として、衝撃の場合に、2つの顎ガード部1a、1bのせん断力をよりよく吸収でき、連結ジョイント10および閉鎖機構11、14の負荷を軽減することができる。したがって、事故の場合、およびそれによって生じた応力が顎ガード部1a、1bに加わる場合に、閉鎖機構11、14が適切に機能するように保証することができる。
【0031】
図3は、本発明による図1の実施形態の保護用ヘルメットの斜視正面図を、顎ガード部1a、1bを閉鎖した状態で示している。顎ガード部1a、1bの前部に、ヘルメットの内部の充分な通気を保証して、バイザー4の曇りを防止する空気スリット23を見ることができる。図4は、本発明による図1の実施形態の保護用ヘルメットの斜視正面図を、顎ガード部1a、1bを開放した状態で示しており、溝9(図2を参照)と協働するばね15が示されている。
【0032】
図5および6はそれぞれ、図4の説明図の断面図を示しており、図5においては顎ガード部1a、1bが開放位置に位置しており、図6においては閉鎖位置に位置している。さらに図5および6は、ヘルメットシェル3の内張りを示している。ヘルメットシェル3そのものが、最も外側の保護シェルを呈し、衝撃力を分散させる。ヘルメットシェル3の製造においては、デュロプラスチック材料、プラスチックに埋め込まれたガラス繊維材料(GRP)、あるいはポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)などの熱可塑性材料を使用することが推奨される。パッド12は、ポリスチレンで構成され、ヘルメットの内部において衝撃の際に放出されるエネルギーを吸収する保護パッド12aと、例えば発泡材料で製作され、ヘルメットを固定かつ快適なやり方でユーザの頭部へと固定する快適パッド12bとで構成できる。さらに、顎ガード部1a、1bおよび顎ガード部1a、1bの顎ガード面6にも、ヘルメットの内部に面する表面に保護パッド12aおよび快適パッド12bを設けることができる。顎ガード部1a、1bが開放位置にあるとき、顎ガード部1a、1bのパッド12がヘルメットシェル3のパッド12に中断なく連続すると、ヘルメットの着け外しを容易にするために好都合である(図5を参照)。顎ガード部1a、1bが閉鎖位置にあるとき、顎ガード部1a、1bのパッド12が、ユーザの耳の下方に密に当接するが、耳そのものの領域においては、快適な着用のためおよび妨げなく音を聴くための充分な空き空間がもたらされている。眼鏡の装着も、容易かつ快適なやり方で可能である(図6)。また、顎ガード部1a、1bおよび顎ガード部1a、1bの顎ガード面6のパッド12は、好ましくは着脱式である。この着脱可能性の結果として、異なる厚さを有する異なる種類のパッド12を使用して、ヘルメットをさまざまな頭のサイズに合わせてより上手く調節することができる。
【0033】
このようにして、ヘルメットの据わりが改善される。さらに、着脱式のパッド12は、より容易に清掃が可能である。好ましくは、ヘルメットシェル3が、当該パッドを有する首部の保護をさらに備えている(図1〜9には示されていない)。
【0034】
さらに、図5および6は、2つの顎ガード部1a、1bの固定領域7がそれぞれ、ヘルメットシェル3に面する側面16を終端としており、この側面が、顎ガード部1a、1bが閉鎖位置(図6)にあるときにヘルメットシェル3の支持面17に当接し、顎ガード部1a、1bが開放位置(図5)にあるときは支持面17から離間する旨を示している。閉鎖位置において顎ガード部1a、1bをヘルメットシェル3へと支持する結果として、力が下方から顎ガード部1a、1bに作用する場合に、より良好な保護がもたらされる。特に、顎ガード部1a、1bの固定領域7の側面16およびヘルメットシェル3の支持面17のそれぞれに、側面16に折れ目21が形成され、支持面17に支持突起22が形成されるよう、段差の構成を設けることができる。顎ガード部1a、1bが閉鎖位置にあるとき、これらの段差部が、支持突起22が折れ目21に位置するように互いに係合する(図6)。結果として、顎ガード部1a、1bとヘルメットシェル3との間のせん断力を、より良好に吸収することができる(図6)。
【0035】
図7が、本発明による保護用ヘルメットのヘルメットシェル3の実施形態の斜視図を示しており、パッド12は省略されている。支持突起22の形成による支持面17の段付きの構成を、詳しく見て取ることができる。顎ガード部1a、1bの実施形態の斜視図を示している図8との比較において、顎ガード部1a、1bが閉鎖位置にあるときに支持突起22が折れ目21に収容されるように、支持突起22が側面16の折れ目21に合わせてどのように調節されているのかを、見て取ることができる。この状態において、側面16および支持面17が互いに当接している。さらに図7は、空力の改善という利益のために、プレート部材2をヘルメットシェル3および顎ガード部1a、1bの段差領域18に沈め、ヘルメットシェル3に滑らかな外表面をもたらすことができることを示している。
【0036】
さらに図8は、固定領域7の側面16が、終端面20を介し、この側面16の長手方向の広がりに沿って、顎ガード面6へと鈍角の様相で合流する旨を示している。再び図7に目を向けると、ヘルメットシェル3が保持用の段部19を備える旨が示されている。終端面20が、特に顎ガード部1a、1bが閉鎖位置にあるときに、ヘルメットシェル3の保持用の段部19に当接して位置する。したがって、顎ガード部1a、1bに前方から作用する力が、ヘルメットによってより良好に吸収される。さらに図8は、顎ガード部1a、1bおよび顎ガード部1a、1bの顎ガード面6において、ヘルメットの内部に面する表面にどのようにパッド12が設けられるのかを、明瞭に示している。顎ガード面6のパッド12は、好ましくは着脱可能であり、種々の頭のサイズに合わせた調節のために、異なる厚さにて用意することが可能である。さらに、通常は、顎ガード部1a、1bの内側の側面にもパッド12が設けられる。しかしながら、それらは図8には示されていない。
【0037】
図9は、本発明による保護用ヘルメットの図1の実施形態について、下方から見たときの斜視図の一部分の詳細図を示している。特に、閉鎖面8および閉鎖機構11、14について考えられる実施形態が示されている。すでに述べたように、閉鎖面8の一方が溝9を備えており、他方の閉鎖面8が、この溝9に組み合わせられるばね15を備えており(図2および4も参照のこと)、閉鎖位置において溝9およびばね15が互いに係合する。また、連結ジョイント10も明瞭に示されている。閉鎖機構11、14は、図示の実施形態においては、ピン11と協働するレバー14からなる。レバー14が持ち上げられると、ピン11が解放され、プレート部材2の付勢の結果として、2つの顎ガード部1a、1bが閉鎖位置へと枢動する。閉鎖機構11、14について、他の実施形態も可能である。いずれの場合も、それらは頑丈かつ使用が容易でなければならない。
【0038】
このようにして、着け外しが容易であり、かつ特に顎および首の領域において良好な据わりをもたらす保護用ヘルメットが、本発明の助けによって実現される。このようにして、「引き剥がし挙動」がきわめて最適にされる。さらに、本発明によるヘルメットは、優れた空力特性および空気音響特性を有しており、かつ風、塵埃、および寒さに対して優れた防護を提供する。出願人による一次テストによれば、本発明によるヘルメットが、現時点において入手可能な最も静かな全面バイザー・ヘルメットであることが明らかになっている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による保護用ヘルメットの実施形態の斜視側面図を示しており、顎ガード部は閉じた状態にある。
【図2】図1の実施形態の斜視側面図を示しており、顎ガード部が開いた状態にある。
【図3】本発明による図1の実施形態の保護用ヘルメットの斜視正面図を示しており、顎ガード部は閉じた状態にある。
【図4】本発明による図1の実施形態の保護用ヘルメットの斜視正面図を示しており、顎ガード部が開いた状態にある。
【図5】図4による図の断面図を示しており、顎ガード部は開いた状態にある。
【図6】図3による図の断面図を示しており、顎ガード部が閉じた状態にある。
【図7】本発明による保護用ヘルメットのヘルメットシェルの実施形態の斜視図を示している。
【図8】本発明による保護用ヘルメットの顎ガード部の実施形態の斜視図を、顎ガード部が閉じられた状態について示している。
【図9】保護用ヘルメットの図1の実施形態について、下方から見たときの斜視図の詳細図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時にユーザの頭部を顔領域を除いて少なくとも部分的に囲むヘルメットシェル(3)と、
使用時にユーザの顔領域の下方部分を囲む顎ガード(1)と、
ヘルメットシェル(3)と顎ガード(1)との間の視野開口を覆うべく、好ましくは前記ヘルメットシェル(3)に枢動可能な様相で配置されるバイザー(4)とを有しており、
前記顎ガード(1)が、互いに対して可動である2つの部位(1a、1b)を備えている保護用ヘルメットにおいて、
前記2つの顎ガード部(1a、1b)のそれぞれは、前記ヘルメットシェル(3)に枢動可能に配置されており、前記ヘルメットシェル(3)への前記顎ガード部(1a、1b)の前記枢動可能な配置は、前記ヘルメットシェル(3)を該当する前記顎ガード部(1a、1b)へと接続する柔軟なプレート部材(2)によって行われていることを特徴とする保護用ヘルメット。
【請求項2】
使用時にユーザの頭部を顔領域を除いて少なくとも部分的に囲むヘルメットシェル(3)と、使用時にユーザの顔領域の下方部分を囲む顎ガード(1)と、ヘルメットシェル(3)と顎ガード(1)との間の視野開口を覆うべく、好ましくは前記ヘルメットシェル(3)に枢動可能な様相で配置されるバイザー(4)とを有しており、前記顎ガード(1)が、互いに対して可動である2つの部位(1a、1b)を備えている保護用ヘルメットにおいて、
前記2つの顎ガード部(1a、1b)のそれぞれは、前記ヘルメットシェル(3)に枢動可能に配置されており、前記2つの顎ガード部(1a、1b)は、これらのそれぞれの上部において連結ジョイント(10)によって互いに接続されていることを特徴とする保護用ヘルメット。
【請求項3】
前記2つの顎ガード部(1a、1b)はそれぞれ、これらの下部に、ヘルメットの内側に向かう方向へと横向きに突き出す顎保護面(6)を有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の保護用ヘルメット。
【請求項4】
前記顎ガード部(1a、1b)はそれぞれ、前記ヘルメットシェル(3)に面する端部に位置する固定領域(7)と、前記ヘルメットシェル(3)から離れる方の端部に位置して閉鎖面(8)を備えている閉鎖領域(13)とを備えており、
前記2つの閉鎖面(8)は、前記2つの顎ガード部(1a、1b)が開放位置にあるときは互いから離間しており、前記2つの前記顎ガード部(1a、1b)を枢動させることによって到達できる閉鎖位置においては、互いに当接していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護用ヘルメット。
【請求項5】
前記2つの顎ガード部(1a、1b)が閉鎖位置にあるときに前記2つの顎ガード部(1a、1b)を互いに対して空間的に固定する閉鎖機構(11、14)が、前記閉鎖面(8)の領域に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の保護用ヘルメット。
【請求項6】
前記閉鎖面(8)の一方は、溝(9)を備えており、前記他方の閉鎖面(8)は、前記溝(9)に組み合わせられるばね(15)を備えており、前記閉鎖位置において前記溝(9)および前記ばね(15)が互いに係合することを特徴とする、請求項4または5に記載の保護用ヘルメット。
【請求項7】
前記2つの顎ガード部(1a、1b)は、開放位置へと付勢されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の保護用ヘルメット。
【請求項8】
前記2つの顎ガード部(1a、1b)の前記固定領域(7)はそれぞれ、前記ヘルメットシェル(3)に面する側面(16)を終端としており、この側面は、前記顎ガード部(1a、1b)が閉鎖位置にあるときに前記ヘルメットシェル(3)の1つの支持面(17)に当接し、前記顎ガード部(1a、1b)が開放位置にあるときに前記支持面(17)から離間することを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一項に記載の保護用ヘルメット。
【請求項9】
前記顎ガード部(1a、1b)の前記固定領域(7)の前記側面(16)および前記ヘルメットシェル(3)の前記支持面(17)は、それぞれ段差を付けられた様相に構成されており、
これらの段差部は、前記顎ガード部(1a、1b)が閉鎖位置にあるときに互いに係合することを特徴とする、請求項8に記載の保護用ヘルメット。
【請求項10】
前記顎ガード面(6)に、ヘルメットの内部に面する面の着脱式のパッド(12)が設けられていることを特徴とする、請求項3〜9のいずれか一項に記載の保護用ヘルメット。
【請求項11】
前記固定領域(7)の前記側面(16)は、この側面(16)の長手方向の広がりに沿い、終端面(20)を介して、鈍角の様相で前記顎ガード面(6)へと合流しており、前記終端面(20)は、前記顎ガード部(1a、1b)が閉鎖位置にあるときに前記ヘルメットシェル(3)の保持用の段部(19)に当接することを特徴とする、請求項4〜10のいずれか一項に記載の保護用ヘルメット。
【請求項12】
前記2つの顎ガード部(1a、1b)が閉鎖位置にあるとき、前記バイザー(4)が前記2つの顎ガード部(1a、1b)に重なり、あるいは前記2つの顎ガード部(1a、1b)が前記バイザー(4)の下縁に当接することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の保護用ヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−544103(P2008−544103A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517467(P2008−517467)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063184
【国際公開番号】WO2006/136519
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507417064)
【Fターム(参考)】