説明

保護素子の劣化・動作表示装置

【課題】極めて簡単な構成により、保護素子の劣化や動作状態を確実に表示可能とし、低コストにて製造可能とした劣化・動作表示装置を提供する。
【解決手段】保護素子の劣化または動作を視覚的に表示するようにしたバリスタ等の保護素子の劣化・動作表示装置に関する。劣化または動作した保護素子21が発生する熱が伝導される熱伝導板1と、この熱伝導板1の熱により収縮、退避する熱収縮材2と、この熱収縮材2収縮、退避時に、窓部1dを介して外部から目視される表示材3と、を備え、この表示材3により、保護素子21の劣化または動作を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷等の過電圧、過電流から各種機器を保護するための保護素子の劣化・動作表示装置に関し、詳しくは、バリスタ、アレスタ等の保護素子が発生する熱を検出して劣化状態、動作状態を表示可能とした表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の表示装置の従来技術として、例えば特許文献1,2に記載されているように、避雷素子に流れる漏洩電流を検出して避雷素子の劣化を表示する表示装置が知られている。
また、特許文献3に記載されているように、避雷器の劣化時や短絡破壊時に導電性プラスチックを溶断させてスプリングにより表示部を動作させる切り離し装置も公知となっており、更には、温度ヒューズやハンダを溶融させてスプリングにより表示部を動作させる劣化表示装置も既に知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−5350号公報(段落[0008]〜[0019]、図1等)
【特許文献2】特開平8−203415号公報(段落[0010]〜[0013]、図1等)
【特許文献3】特開平2−117083号公報(第2頁右下欄第17行〜第3頁左下欄第7行、第1図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載された従来技術では、漏洩電流を検出して表示部を動作させるための回路構成が複雑であり、コストが高くなるという問題がある。
また、特許文献3に記載された従来技術や温度ヒューズ、ハンダ等を用いる従来技術では、表示部を駆動するためのスプリング等が構造の複雑化や大型化の原因になり、特に、ハンダを溶融させる方式では、ハンダ付け作業に熟練が必要であると共に、個人差によって検出精度が安定せず、信頼性が低い等の問題があった。
【0005】
そこで本発明の解決課題は、極めて簡単な構成により、保護素子の劣化や動作状態を確実に表示可能とし、低コストにて製造可能とした劣化・動作表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、保護素子の劣化または動作を視覚的に表示するようにした保護素子の劣化・動作表示装置において、
劣化または動作した前記保護素子が発生する熱が伝導される熱伝導体と、
この熱伝導体の熱により収縮、退避する熱収縮材と、
この熱収縮材の収縮、退避時に、窓部を介して外部から目視される表示材と、を備え、
この表示材により、前記保護素子の劣化または動作を表示するものである。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1において、
平常時には、前記窓部を介して外部から前記熱収縮材が目視されるものである。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項2において、
外部から目視される前記熱収縮材及び前記表示材の表面を、異なる色でそれぞれ着色したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バリスタ、アレスタ等の保護素子の劣化や短絡破壊によってその温度が上昇すると、熱収縮材が収縮して退避し、窓部を介して表示材を外部から目視できるようになる。これにより、劣化または動作した保護素子や保安器を外部から容易に確認することが可能になる。
本発明では、従来技術のように漏洩電流の増加を電気的に検出する方法によらないので、複雑な電気回路も不要である。また、表示部を駆動するためのスプリング等も不要であり、構造上、極めて簡単であると共に、従来のハンダ付け作業における熟練も要求されないので、本発明が実装される保安器の小型化、低コスト化に寄与する等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態を示す構成図であり、1は平板状の金属からなる熱伝導板である。この熱伝導板1の上端部には、熱によって収縮する材料(例えば、難燃性ポリオレフィンや難燃性ポリ塩化ビニルなど)からなる環状の熱収縮材2が配置されている。後述するように、熱伝導板1は保護素子から発生した熱を下記の熱収縮材2に伝導させる作用を果たせば良いから、熱伝導体としては、板状材に限らず棒状材やブロック状材であっても良い。
【0011】
熱伝導板1の上部左側には、柵状の保持部1aが形成され、また、上端部には一対のガイド部1b,1cが形成されており、環状の熱収縮材2は、保持部1aに千鳥状に掛け渡されてガイド部1b,1cの間で二重になった状態で配置されている。図示されていないが、ガイド部1b,1cの内部には、熱収縮材2を図示するような位置に案内して保持するためのリブ等が設けられている。
【0012】
更に、ガイド部1b,1cの相互間には窓部1dが形成されており、熱伝導板1の温度が低い平常時には、窓部1d内に熱収縮材2が存在し、外部からは窓部1dを介して熱収縮材2の表面が目視されるようになっている。このとき、ガイド部1cの背後にある熱収縮材2の折り返し部分はフリーな状態(熱収縮材2の収縮によって自身が移動可能な状態)にある。
【0013】
一方、ガイド部1b,1cより奥まった位置の熱伝導板1の表面には、一対の支持部1e,1fが設けられており、これらの支持部1e,1fの間には、前記窓部1d側の表面が例えば赤色に着色された表示材3が張架されている。
上記のように構成することにより、熱伝導板1の温度が低い平常時には、外部から窓部1dを介して熱収縮材2の表面が目視され、熱伝導板1が加熱されてその温度が上昇した場合には、図2に示すように熱収縮材2が保持部1a方向に収縮して窓部1dから退避し、外部からは窓部1dを介して表示材3の表面が目視されるようになっている。
なお、平常時に窓部1dを介して目視される熱収縮材2の表面は、表示材3の表面とは異なる色、例えば白色に着色されている。
【0014】
次に、図3は本実施形態にかかる劣化・動作表示装置を保安器に実装した状態の内部構造を示している。実際には、図示されていないカバーがこの上に装着されて保安器の全体が構成されるものであり、カバーに別途形成される窓部を介して前記窓部1dを外部から目視可能となっている。
図3において、保安器20は、絶縁材料からなるケーシング25の内部にバリスタやアレスタ等の保護素子21,22を収納して構成されており、保護素子21,22の動作により雷サージを吸収して各種機器(図示せず)を保護するためのものである。
【0015】
本実施形態にかかる劣化・動作表示装置10は、上記保護素子21,22と共にケーシング25の内部に実装され、例えば保護素子21の側面に前記熱伝導板1の裏面が面接触して保護素子21の熱が効率よく熱伝導板1に伝導されるように配置されている。なお、平常時には、保安器20の外部から窓部1dを介して熱収縮材2の表面が目視される。
【0016】
この状態で、雷などによる過電圧、過電流が保護素子21に繰り返し作用し、漏洩電流の増加により特性が劣化したり、あるいは雷サージにより保護素子21が動作して短絡破壊した場合、保護素子21が加熱されてその温度が上昇する。
これにより、保護素子21の温度は熱伝導板1を介して前述した熱収縮材2に伝導されるので、図2に示したように熱収縮材2が保持部1a方向に収縮して窓部1dから退避する。従って、外部からは窓部1dを介して表示材3の表面が目視されることとなり、保守、作業員は、保安器20が劣化していること、または動作したことを一見して認識することができる。
【0017】
なお、表示装置10、保護素子21,22等の配置構造は図3の例に何ら限定されず、要は、劣化・動作表示の対象となる保護素子の熱が表示装置10の熱伝導板1に効率よく伝導される配置構造であれば良い。
また、上記実施形態では、平常時に窓部1dを介して外部から熱収縮材2の表面が目視される構造としたが、熱収縮材2に別の遮蔽部材を連結しておき、平常時にはこの遮蔽部材により窓部1dを遮蔽し、熱収縮材2の収縮時に遮蔽部材を窓部1dから退避させて表示材3の表面を露出させるような構造にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態を示す内部構成図である。
【図2】本発明の実施形態の動作状態を示す内部構成図である。
【図3】本発明の実施形態の使用状態を示す内部構成図である。
【符号の説明】
【0019】
1:熱伝導板(熱伝導体)
1a:保持部
1b,1c:ガイド部
1d:窓部
1e,1f:支持部
2:熱収縮材
3:表示材
10:劣化・動作表示装置
20:保安器
21,22:保護素子
25:ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護素子の劣化または動作を視覚的に表示するようにした保護素子の劣化・動作表示装置において、
劣化または動作した前記保護素子が発生する熱が伝導される熱伝導体と、
この熱伝導体の熱により収縮、退避する熱収縮材と、
この熱収縮材の収縮、退避時に、窓部を介して外部から目視される表示材と、を備え、
この表示材により、前記保護素子の劣化または動作を表示することを特徴とする保護素子の劣化・動作表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載した保護素子の劣化・動作表示装置において、
平常時には、前記窓部を介して外部から前記熱収縮材が目視されることを特徴とする保護素子の劣化・動作表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載した保護素子の劣化・動作表示装置において、
外部から目視される前記熱収縮材及び前記表示材の表面を、異なる色でそれぞれ着色したことを特徴とする保護素子の劣化・動作表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−242569(P2007−242569A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66927(P2006−66927)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000145954)株式会社昭電 (22)