説明

信号伝送装置

【課題】各チャネルごとに音声信号と制御信号とのタイミングを合わせることが容易な信号伝送装置を提供する。
【解決手段】各チャネルごとに音声信号及びPTT信号を入力部12で一旦周波数多重したのち回線切替系11を介して宛先となる出力部13に伝送し、出力部13で周波数多重信号を音声信号とPTT信号に分離して出力するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば航空管制システム等で使用される信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、航空管制システム内の信号伝送装置は、複数チャネルの音声信号及び音声入力スイッチのオン/オフを示す制御信号(PTT信号)を入力するための入力インタフェース部と、入力された音声信号のチャネル出力先を切り替える回線切替系と、この回線切替系に同期して入力されたPTT信号のチャネル出力先を切り替えるPTT信号切替系と、回線切替系及びPTT信号切替系により切り替えられた音声信号及びPTT信号をチャネル毎に同期させて出力する出力インタフェース部とを備えている(例えば、非特許文献1)。各チャネルには、管制卓といった航空管制機器や、無線通信機器、有線電話機等が接続される。
【0003】
すなわち、上記信号伝送装置では、管制卓上の音声入力スイッチの押下に応じて、無線通信回線の制御、有線電話回線の呼制御及び管制卓間の通信制御を行うことができる。
【非特許文献1】レーダ技術 財団法人電子情報通信学会。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記信号伝送装置では、音声信号とPTT信号とを回線切替系及びPTT信号切替系に別々に伝送し処理しているので、回線切替系とPTT信号切替系とのタイミングずれが生じると、音声信号の頭切れなどが生じることになる。
【0005】
そこで、この発明の目的は、各チャネルごとに音声信号と制御信号とのタイミングを合わせることが容易な信号伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明は、送信側で音声入力スイッチがオンされることで音声信号及び当該オンの旨を示す制御信号をチャネルへ送出し、受信側でチャネルからの音声信号及び制御信号を受信する信号伝送装置において、送信側から送られる複数チャネルの音声信号及び制御信号を入力するための入力部と、この入力部で入力される複数チャネルの音声信号及び制御信号を任意のチャネルに選択的に導出する切替部と、この切替部で導出された各チャネルの音声信号及び制御信号を受信側へ出力する出力部とを具備し、入力部は、チャネルごとの音声信号及び制御信号を周波数多重する周波数多重手段を備え、出力部は、切替部で導出された各チャネルごとの周波数多重信号を音声信号及び制御信号に分離する周波数分離手段を備えるようにしたものである。
【0007】
この構成によれば、各チャネルごとに音声信号及び制御信号を入力部で一旦周波数多重したのち切替部を介して宛先となる出力部に伝送し、出力部で周波数多重信号を音声信号と制御信号に分離して出力するようにしている。
【0008】
従って、音声信号専用の切替部及び制御信号専用の切替部を別々に用意する必要がなく、1台の切替部を音声信号及び制御信号で共用でき、これにより各チャネルごとに音声信号と制御信号とのタイミングを合わせることが可能となる。また、各チャネルごとに音声信号及び制御信号が周波数多重されて1つのチャネルにより伝送されるので、音声信号専用のチャネル及び制御信号専用のチャネルを不要にすることができ、その分入力部と切替部との間を接続するチャネル数及び切替部と出力部との間を接続するチャネル数を減らしてシステムの配線構造を簡素化することができると共に、回路規模を縮小することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上詳述したようにこの発明によれば、各チャネルごとに音声信号と制御信号とのタイミングを合わせることが容易な信号伝送装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる信号伝送装置の構成を示すブロック図である。図1において、符号11は回線切替系で、複数の入出力チャネルを切り替えるものである。なお、ここでは説明を簡単にするため、1チャネルのみを示している。
【0011】
この実施形態では、回線切替系11の入力チャネルに入力部12を接続し、出力チャネルに出力部13を接続している。これらは一つの筐体に組み込んでもよいが、回線切替系11をネットワーク管理室に設置し、入力部12、出力部13を各部屋に配置するようにしてもよい。ここでは、入力部12に管制卓14が接続され、出力部13に無線機15が接続される。
【0012】
管制卓14のユーザが、音声入力スイッチ141を押しながら話すと、管制卓14から音声信号とスイッチオンを示すPTT信号が発生する。
【0013】
管制卓14から送られた音声信号は、入力部12の混合器121に送られる。また、管制卓14から送られたPTT信号は、入力部12のスイッチ122に送られる。スイッチ122は、PTT信号が入力されると、f1信号発生器123から発生されるf1信号を混合器121に出力する。このf1信号は、音声周波数帯(300Hz〜3kHz)とは異なる周波数帯の信号(例えば300Hz未満または3kHzを超える周波数)となる。
【0014】
混合器121は、図2に示すように、音声信号及びf1信号を周波数多重し、この周波数多重信号を回線切替系11に出力する。回線切替系11は、入力部12から送られた周波数多重信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、制御部(図示せず)からの指示によって選択された出力先のチャネルへ出力する。出力チャネルへ出力される周波数多重信号は、デジタル信号からアナログ信号に変換されて出力部13に送られる。
【0015】
出力部13に入力された周波数多重信号は、周波数分離器131によって音声信号及びf1信号に分離され、音声信号は無線機15に送られ、f1信号はスイッチドライブ132に送られる。スイッチドライブ132は、f1信号が入力されると、スイッチ133をオンさせ、このオン信号をPTT信号として無線機15に出力する。
【0016】
かくして、無線機15のユーザは、管制卓14のユーザからの音声を聞くことができる。
【0017】
次に、上記構成において、その運用動作を説明する。
以前は、図3に示す信号伝送装置が適用されていた。まず、回線切替系21及びPTT信号切替系22は、適当なネットワーク管理室に配置され、そこから各部屋へチャネルが敷設され、その端末にそれぞれの部屋で必要な管制卓14、無線機15に対応するインタフェース23,24が取り付けられる。
【0018】
管制卓14では、ユーザが音声入力スイッチ141を押しながら話すと、その音声信号とPTT信号を発生する。インタフェース23では、音声信号及びPTT信号を取り込み、音声信号を回線切替系21へのチャネルに送り、PTT信号をPTT信号切替系22へのチャネルに送る。
【0019】
回線切替系21及びPTT信号切替系22では、音声信号及びPTT信号を同期させながら処理してインタフェース24に送る。インタフェース24では、音声信号及びPTT信号のタイミング合わせを行って、これら音声信号及びPTT信号を無線機15に送出する。
【0020】
ここで、以前では、回線切替系21とPTT信号切替系22との間で同期ずれが発生すると、無線機15に送る音声信号の頭切れなどが発生していた。そこで、本発明により、音声信号及びPTT信号を入力部12で周波数多重して回線切替系11に送り、出力部13で音声信号とf1信号とに周波数分離することにより、タイミングずれを生じることがなくなる。
【0021】
以上のように上記実施形態では、各チャネルごとに音声信号及びPTT信号を入力部12で一旦周波数多重したのち回線切替系11を介して宛先となる出力部13に伝送し、出力部13で周波数多重信号を音声信号とPTT信号に分離して出力するようにしている。
【0022】
従って、以前のような回線切替系21及びPTT信号切替系22を別々に用意する必要がなく、1台の回線切替系11を音声信号及びPTT信号で共用でき、これにより各チャネルごとに音声信号とPTT信号とのタイミングを合わせて出力チャネルに送出することができる。
【0023】
また、各チャネルごとに音声信号及びPTT信号が周波数多重されて1つのチャネルにより伝送されるので、音声信号専用のチャネル及びPTT信号専用のチャネルを不要にすることができ、その分入力部12と回線切替系11との間を接続するチャネル数及び回線切替系11と出力部13との間を接続するチャネル数を減らしてシステムの配線構造を簡素化することができると共に、回路規模を縮小することができる。
【0024】
なお、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態に係わる信号伝送装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示した混合器で周波数多重される周波数多重信号の周波数特性を示す図。
【図3】以前使用されていた信号伝送装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0026】
11、21…回線切替系、12…入力部、13…出力部、14…管制卓、15…無線機、22…PTT信号切替系、23、24…インタフェース、121…混合器、122…スイッチ、123…f1信号発生器、131…周波数分離器、132…スイッチドライブ、133…スイッチ、141…音声入力スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側で音声入力スイッチがオンされることで音声信号及び当該オンの旨を示す制御信号をチャネルへ送出し、受信側で前記チャネルからの音声信号及び制御信号を受信する信号伝送装置において、
前記送信側から送られる複数チャネルの音声信号及び制御信号を入力するための入力部と、
この入力部で入力される複数チャネルの音声信号及び制御信号を任意のチャネルに選択的に導出する切替部と、
この切替部で導出された各チャネルの音声信号及び制御信号を前記受信側へ出力する出力部とを具備し、
前記入力部は、前記チャネルごとの音声信号及び制御信号を周波数多重する周波数多重手段を備え、
前記出力部は、前記切替部で導出された各チャネルごとの周波数多重信号を前記音声信号及び前記制御信号に分離する周波数分離手段を備えたことを特徴とする信号伝送装置。
【請求項2】
前記切替部は、前記入力部で入力される複数チャネルの周波数多重信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して任意のチャネルに選択的に導出し、各チャネルごとにアナログ信号に変換して前記出力部に出力することを特徴とする請求項1記載の信号伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−34968(P2008−34968A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203689(P2006−203689)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(593115769)東京エレクトロニツクシステムズ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】