信号発生器及び信号発生システム並びに信号発生方法
【課題】任意の波形を繰り返し発生し、波形の周波数を変えることなく、発生した波形の先頭と最後尾の位相を連続させることができる信号発生器及び信号発生システム並びに信号発生方法を提供する。
【解決手段】信号発生器は、繰り返し出力回数がn回目となる波形データを受けて、n−1回目の波形データの最後尾とn回目の波形データの先頭との位相変化を連続とするためのn−1回目の波形データとn回目の波形データとの位相差である基準位相差θ及び繰り返し出力回数nから求めた位相シフト量φnだけn回目の波形データの各サンプルデータの位相をシフトしてD/A変換手段に出力する位相シフト手段を備える。
【解決手段】信号発生器は、繰り返し出力回数がn回目となる波形データを受けて、n−1回目の波形データの最後尾とn回目の波形データの先頭との位相変化を連続とするためのn−1回目の波形データとn回目の波形データとの位相差である基準位相差θ及び繰り返し出力回数nから求めた位相シフト量φnだけn回目の波形データの各サンプルデータの位相をシフトしてD/A変換手段に出力する位相シフト手段を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象の無線通信機器にRFの試験信号を出力し、この無線通信機器を試験するための信号発生器及び信号発生システム並びに信号発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機器を試験するために、この無線通信機器に対応した通信方式の試験信号をこの無線通信機器に送出する信号発生器が知られている。その一例として、試験信号に対応するベースバンド信号をデジタルの波形データとして内部のメモリ部に記憶しておき、記憶された波形データを繰り返し出力してD/A変換し、変換された信号を周波数変換して、RFの試験信号として出力する信号発生器がある。
【0003】
このような信号発生器では、メモリ部の容量が限られるため、波形データのデータ長が有限となる。一方で、無線通信機器の試験条件が規格で定められている等により、波形データのデータ長を自由に変更できない場合がある。このため、従来の信号発生器では、繰り返し出力される波形データの先頭と最後尾との接続部で位相が不連続となる現象が発生する。これにより、位相の不連続点でスプリアスが発生するほか、無線通信の同期が外れ、無線通信機器の試験を正常に行えないおそれがある。
【0004】
図13は、そのような現象の概念図である。D1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWを3回繰り返して出力し、D/A変換した波形を示している。ここで、波形データWの先頭のサンプルデータD1の位相と最後尾のサンプルデータDMの位相とが大きく異なっていることにより、波形データ繰り返しの1回目と2回目の接続部及び2回目と3回目の接続部において、D/A変換した波形で位相の不連続点が現れている。
【0005】
このような問題に対し、接続部の位相を連続させた波形パターンのFSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)信号を発生する任意波形信号発生装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この任意波形信号発生装置は、PN(Pseudo-Noise)信号を繰り返し出力するデジタルデータ発生器と、デジタルデータ発生器の出力データの各ビットに補正値を分割して加算する補正手段と、を備え、接続部の位相が連続したFSK信号を発生することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−44170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で開示された発明では、データを補正して接続部の位相を連続させるようにした結果、出力信号の周波数が変わってしまい、無線通信機器の試験を精度良く行うことができないという課題があった。
【0008】
本発明は、以上のような課題に対し、無線通信機器の試験を精度良く行うために、波形の周波数を変えることなく、発生した波形の最後尾と次に繰り返し発生した波形の先頭の位相とを連続させて、任意の波形を繰り返し発生することができる信号発生器及び信号発生システム並びに信号発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明の信号発生器(10,11,12)は、M個のサンプルデータから成るデジタルのベースバンド信号の波形データを記憶し、当該波形データを繰り返し連続して出力する波形データ記憶手段(20)と、前記波形データをデジタル−アナログ変換するD/A変換手段(40)と、このデジタル−アナログ変換されたベースバンド信号を所定の周波数のキャリア信号で周波数変換して、無線通信機器を試験するためのRFの試験信号として出力する周波数変換手段(60,70)とを備えた信号発生器において、前記波形データ記憶手段からの繰り返し出力回数がn回目となる前記波形データを受けて、n−1回目の前記波形データの最後尾とn回目の前記波形データの先頭との位相変化を連続とするための当該n−1回目の波形データと当該n回目の波形データとの位相差である基準位相差θ及び前記繰り返し出力回数nから求めた位相シフト量φnだけ前記n回目の波形データの各サンプルデータの位相をシフトして前記D/A変換手段に出力する位相シフト手段(30)を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の信号発生器は、前記波形データ記憶手段に記憶された前記波形データに基づいて、前記基準位相差θを決定する基準位相差決定手段(23)を備えていてもよい。
【0011】
また、本発明の信号発生器は、前記基準位相差決定手段は、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有していてもよい。
【0012】
また、本発明の信号発生器は、前記基準位相差決定手段は、前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する平均位相差算出手段(81)と、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有していてもよい。
【0013】
また、本発明の信号発生システムは、前記の信号発生器と、前記波形データを生成して前記信号発生器に送出する波形データ生成装置(90)とを含み、前記波形データ生成装置は、前記波形データを生成する波形生成手段(92)と、前記基準位相差θを決定する基準位相差決定手段(93)と、前記波形データ及び前記基準位相差θを前記信号発生器に送出する波形送出手段(94)とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の信号発生システムは、前記基準位相差決定手段は、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有していてもよい。
【0015】
また、本発明の信号発生システムは、前記基準位相差決定手段は、前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する平均位相差算出手段(81)と、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有していてもよい。
【0016】
また、本発明の信号発生システムは、前記波形生成手段は、先頭からM番目までのサンプルデータを生成するとともにM+1番目のサンプルデータの位相を取得して、この生成したM個のサンプルデータを用いて前記波形データを生成し、前記基準位相差決定手段は、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)を有していてもよい。
【0017】
また、本発明の信号発生方法は、M個のサンプルデータから成るデジタルのベースバンド信号の波形データを繰り返し連続して出力する段階(S9)と、前記波形データをデジタル−アナログ変換する段階(S11)と、このデジタル−アナログ変換されたベースバンド信号を所定の周波数のキャリア信号で周波数変換して、無線通信機器を試験するためのRFの試験信号として出力する段階(S12)とを備えた信号発生方法において、前記波形データの繰り返し出力回数がn回目であるときに、n−1回目の前記波形データの最後尾とn回目の前記波形データの先頭との位相変化を連続とするための当該n−1回目の波形データと当該n回目の波形データとの位相差である基準位相差θ及び前記波形データの前記繰り返し出力回数nから位相シフト量φnを求める段階(S7)と、前記デジタル−アナログ変換する段階の前に、前記繰り返し出力回数がn回目となる前記波形データを受けたときに前記位相シフト量φnだけ前記n回目の波形データの各サンプルデータの位相をシフトする段階(S10)とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の信号発生方法は、前記波形データに基づいて、前記基準位相差θを決定する段階(S3)を備えていてもよい。
【0019】
また、本発明の信号発生方法は、前記基準位相差θを決定する段階は、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する段階(S23)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S24)とを有していてもよい。
【0020】
また、本発明の信号発生方法は、前記基準位相差θを決定する段階は、前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する段階(S32)と、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する段階(S34)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S35)とを有していてもよい。
【0021】
また、本発明の信号発生方法は、先頭からM番目までのサンプルデータを生成するとともにM+1番目のサンプルデータの位相を取得する段階(S41)と、この生成したM個のサンプルデータを用いて前記波形データを生成する段階(S42)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S44)とを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の信号発生器及び信号発生システム並びに信号発生方法は、波形の周波数を変えることなく、発生した波形の最後尾と次に繰り返し発生した波形の先頭の位相とを連続させて、任意の波形を繰り返し発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の概念図
【図2】本発明の第1の実施形態のブロック図
【図3】本発明の第1の実施形態の要部のブロック図
【図4】本発明の第1の実施形態の信号発生器の変形例
【図5】本発明の第1の実施形態のフローチャート
【図6】本発明の基準位相差θの決定手法の概念図
【図7】本発明の基準位相差決定手段の第1の実施例
【図8】本発明の基準位相差決定手段の第2の実施例
【図9】本発明の基準位相差決定手段の第3の実施例
【図10】本発明の基準位相差決定手段の第4の実施例
【図11】本発明の第2の実施形態のブロック図
【図12】本発明の第2の実施形態のフローチャート
【図13】従来の信号発生器の波形データ出力の概念図
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
まず、図1により、本発明の概念を説明する。図1では、D1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWを3回繰り返して出力し、D/A変換した波形を示している。波形データWの繰り返しの1回目をW1、次の2回目の繰り返しをW2、その次の3回目の繰り返しをW3としたとき、その繰り返し回数nに応じた位相シフト量φnだけ、波形データWの各サンプルデータD1乃至DMの位相がシフトされる。この位相シフト量φnは、波形データW1の最後尾と波形データW2の先頭、波形データW2の最後尾と波形データW3の先頭で、それぞれ位相が連続となるように決定されている。これにより、3回繰り返された波形データWは、位相が連続した波形データW1、W2、W3となる。
【0025】
具体的には、波形データWの繰り返しの1回目で、各サンプルデータD1乃至DMの位相がφ1だけシフト(遅れ)される。この例では、φ1=0であるので、実質的には位相はシフトされず、波形データW=W1となる。次に、波形データWの繰り返しの2回目で、各サンプルデータD1乃至DMの位相がφ2だけシフトされ、D1(φ2)乃至DM(φ2)となった波形データW2となる。この例では、φ2=π/2である。その次に、波形データWの繰り返しの3回目で、各サンプルデータD1乃至DMの位相がφ3だけシフトされ、D1(φ3)乃至DM(φ3)となった波形データW3となる。この例では、φ3=πである。
【0026】
この位相シフト量φnは、繰り返し回数nと基準位相差θとから、φn=(n−1)×θにより算出される。この基準位相差θとは、先に出力される波形データの最後尾(のサンプルデータ)とその次に繰り返し出力される波形データの先頭(のサンプルデータ)との位相変化を連続としたときの、この先の波形データとこの次の波形データとの位相差である。具体的には、繰り返しの1回目の波形データW1の最後尾のサンプルデータDMと次の2回目の繰り返し波形データW2の先頭のサンプルデータD1(φ2)との位相変化が連続となる位相差であって、この例では、θ=π/2である。なお、基準位相差θの決定の手法の詳細は後述する。
【0027】
このように、本発明では、基準位相差θを決定し、繰り返し回数nと基準位相差θとから位相シフト量φnを求め、繰り返し回数nに応じた位相シフト量φnだけ波形データWの各サンプルデータD1乃至DMの位相をシフトする。これにより、波形の周波数を変えることなく、且つスプリアスを発生させることなく、発生した波形の最後尾と次に繰り返し発生した波形の先頭の位相とを連続させて、任意の波形を繰り返し発生することができる。
【0028】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の信号発生システム100の構成を示している。信号発生システム100は、波形データWを生成するとともに基準位相差θを決定する波形データ生成装置90と、この波形データW及び基準位相差θにより、RFの試験信号を発生する信号発生器10とを備える。例えば、この波形データWはFSK変調信号の波形データであり、信号発生器10は、FSK変調方式を採用する通信方式に対応した無線通信機器を試験するためのRFの試験信号を発生する。FSK変調方式を採用する通信方式は、例えば、Bluetooth(登録商標)である。
【0029】
波形データ生成装置90は、操作手段91、波形データ生成手段92、基準位相差決定手段93、波形データ送出手段94を備える。波形データ生成装置90は、例えばパーソナルコンピュータ及びソフトウェアによって構成され、これらの各手段の機能を実現している。
【0030】
操作手段91は、波形データを生成するためのパラメータを設定するため、ユーザが操作するものである。例えば、操作手段91は、図示を省略したが、パラメータを設定するための設定画面を表示するディスプレイと、キーボードやマウス等の入力デバイスとを備えている。
【0031】
波形データ生成手段92は、ユーザが操作手段91を操作して入力したパラメータに基づき、デジタルの波形データWを生成するようになっている。この波形データWは、ベースバンド信号の波形データであり、D1乃至DMのM個のサンプルデータから成る。より正確には、この波形データWは複素のIQデータであり、M個のI相のデータと、M個のQ相のデータとで成る。従って、IQでM組のデータとなるが、ここでは1組のIQデータを1つのサンプルデータとして説明する。また、波形データ生成手段92は、基準位相差決定手段93に波形データWに関する情報を送出するとともに、波形データ送出手段94に波形データWを送出する。
【0032】
基準位相差決定手段93は、波形データ生成手段92から受けた波形データWに関する情報に基づいて、基準位相差θを決定する。基準位相差決定手段93の詳細な構成は後述する。
【0033】
波形データ送出手段94は、波形データ生成手段92から受けた波形データWと、基準位相差決定手段93から受けた基準位相差θとを、信号発生器10に送出する。信号発生器10への波形データの送出は、USBやイーサネット(登録商標)、無線LAN等により波形データ生成装置90と信号発生器10とを接続して行っても良いし、CDやSDカード等の記憶媒体を介して行っても良い。
【0034】
信号発生器10は、波形データ記憶手段20、位相シフト手段30、D/A変換手段40、直交変調手段50、周波数変換手段60を備える。信号発生器10は、波形データWを基にして、無線通信機器を試験するためのRF試験信号を発生する。
【0035】
波形データ記憶手段20は、波形データ生成装置90から受けた波形データW及び基準位相差θを記憶し、波形データWのI相のデータとQ相のデータとを繰り返し出力する。また、波形データ記憶手段20は、出力される波形データWに対応した基準位相差θと波形データWの繰り返し出力回数nとを出力する。波形データ記憶手段20は、具体的には、ハードディスクドライブ(HDD)等の大容量のストレージ部と、高速でデータをリード/ライト可能なランダムアクセスメモリ(RAM)のメモリ部とを有しており、ストレージ部に複数種類の波形データW及び基準位相差θの組合せを記憶できるようになっている。そして、ユーザが指定した波形データWをメモリ部に移し、このメモリ部から波形データWを出力する。このため、波形データWのデータ容量は、メモリ部の記憶容量を超えないようにされている。
【0036】
位相シフト手段30は、波形データ記憶手段20から受けた基準位相差θと繰り返し出力回数nに基づいて位相シフト量φnを算出し、この算出した位相シフト量だけ、波形データWのI相のデータとQ相のデータとの位相をシフトする。図3に位相シフト手段30の構成を示す。位相シフト手段30は、デジタルの乗算器31a乃至31dと、デジタルの加算器32a,32bと、位相シフト量算出手段33とを有している。位相シフト量算出手段33は、波形データ記憶手段20から基準位相差θと波形データWの繰り返し出力回数nとを受けて、位相シフト量φn=(n−1)×θを算出し、算出した位相シフト量に応じた位相シフトデータcosφn,sinφnを出力する。乗算器31a乃至31dは、波形データWの各サンプルデータのIQデータそれぞれに位相シフトデータを乗じ、それらの出力を加算器32a,32bで加算(又は減算)して、各サンプルデータの位相をシフトしたIQデータI’,Q’を出力する。具体的には、波形データWの各サンプルデータは、Aejφ=A(cosφ+jsinφ)で表現され、I相のデータはAcosφ、Q相のデータはAsinφとなる。ここで、位相シフトデータをejφnとし、この位相シフトデータejφnを各サンプルデータに乗じることにより、各サンプルデータの位相が位相シフト量φnだけシフトされる。この式を展開すると、以下のようになる。
【0037】
Aejφ・ejφn=A(cosφ+jsinφ)・(cosφn+jsinφn)
=(A・cosφ・cosφn−A・sinφ・sinφn)
+j(A・sinφ・cosφn+A・cosφ・sinφn)
=(I・cosφn−Q・sinφn)+j(Q・cosφn+I・sinφn)
=I’+jQ’
ここで、
I’=I・cosφn−Q・sinφn
Q’=Q・cosφn+I・sinφn
図3に示す位相シフト手段30は、これに相当する演算を行い、位相をシフトしたIQデータI’,Q’を出力する。
【0038】
D/A変換手段40は、2つのD/A変換器41,42を有し、位相シフトされた各サンプルデータのIQデータをそれぞれ順次D/A変換する。
【0039】
直交変調手段50は、2つのミキサ51,52、局部発振器53、90度移相器54、加算器55を有する直交変調器で構成されている。D/A変換されたI相の信号が局部発振器53からの局部発振信号と混合されるとともに、D/A変換されたQ相の信号が局部発振器53からの局部発振信号を90度(π/2)移相した信号と混合され、これらの混合された信号を加算して出力する。
【0040】
周波数変換手段60は、局部発振器61とミキサ62とを有し、直交変調手段50からの信号を局部発振器61からの局部発振信号により周波数変換する。周波数変換された信号は、図示しないフィルタ及びアンプにより整形及び増幅され、RF試験信号として出力される。
【0041】
なお、信号発生器は、図4に示す信号発生器11のような構成であっても良い。図4において、周波数変換手段70は、図2の直交変調手段50及び周波数変換手段60の機能を兼ねており、局部発振器73からの局部発振信号の周波数を搬送波の周波数とすることにより、直交変調と周波数変換とを同一の手段で行っている。
【0042】
次に、本実施形態における信号発生システム100の動作について、図5のフローチャートにより説明する。まず、波形データ生成装置90の動作を説明する。ユーザが操作手段91を操作して、波形データWを生成するためのパラメータを設定する(S1)。このパラメータとは、変調前のデータの内容、データ長等である。設定されたパラメータを基に、波形データ生成手段92が、波形データWを生成する(S2)。波形データWの情報を用いて、基準位相差決定手段93が基準位相差θを決定する(S3)。波形データ送出手段94は、生成された波形データW及び決定された基準位相差θを信号発生器10に送出する(S4)。
【0043】
さらに、信号発生器10の動作を説明する。波形データ記憶手段20は、波形データ生成装置90から受けた波形データW及び基準位相差θを記憶する(S5)。ユーザが図示しない操作部を操作して、RF試験信号を出力するためのパラメータを設定する(S6)。このパラメータとは、波形データ記憶手段20に複数種類記憶された波形データWの選択、RF試験信号の搬送波周波数、出力レベル、出力継続時間(又は繰り返し出力継続回数)等である。波形データ記憶手段20から基準位相差θを受けて、位相シフト量算出手段33が、波形データWの繰り返し回数n(n=1,2,3,・・・)それぞれについて、位相シフト量φnを算出する(S7)。なお、位相シフト量φnの算出は、パラメータとして設定された出力継続時間又は繰り返し出力継続回数を用いて、予め想定される全てのnについて算出しておいても良いし、波形データWを繰り返し出力する度に、そのときの繰り返し出力回数nについて算出しても良い。
【0044】
そして、波形データWの繰り返し出力回数nがn=1に設定され(S8)、波形データ記憶手段20から波形データWが、先頭のサンプルデータD1から最後尾のサンプルデータDMまで順に出力される(S9)。出力された波形データWの各サンプルデータD1乃至DMに、乗算器31,32により位相シフトデータが乗算され、各サンプルデータD1乃至DMの位相が位相シフト量φnだけシフトされる(S10)。この位相シフト量φnは、波形データWの繰り返し回数n毎に異なる。
【0045】
位相シフトされた各サンプルデータはD/A変換器41,42によりD/A変換され(S11)、直交変調手段50により直交変調され、周波数変換手段60によりRF信号に周波数変換されて、RF試験信号として出力される(S12)。その一方で、波形データWの繰り返し出力回数nがインクリメントされて(S13)、次の繰り返しの波形データWが、波形データ記憶手段20から出力される。このようにして、S9乃至S13の動作は、繰り返し出力回数nが所定数に達するまで反復される。
【0046】
次に、基準位相差θを決定する手法について詳述する。まず、その概念について図6を用いて説明し、その後に4つの実施例を挙げて、対応する図7乃至図10に基づき説明する。
【0047】
図6は、基準位相差θを決定する手法の概念を示した図であり、図6(A)は各サンプルデータを模式的に時間軸で並べたもの、図6(B)は、それをIQ平面上に示したものである。図6(A)に示すように、波形データWの繰り返しの1回目と、次の2回目の繰り返しとで位相を連続にするため、2回目の繰り返しの先頭のサンプルデータD1に着目すると、2回目の繰り返しのD1の位相が、1回目の繰り返しのDM+1の位相となるように、2回目の繰り返しのD1の位相をシフトすれば良い。図6(B)に示すように、D1とDM+1との位相差はθであり、これが基準位相差θとなる。別な表現をすれば、基準位相差θは、波形データWの先頭のサンプルデータD1の位相と、最後尾のサンプルデータDMの次のサンプルデータDM+1を仮想したときのこの仮想サンプルデータDM+1の位相との位相差である。
【0048】
ただし、サンプルデータDM+1は、本来は存在しないデータである。従って、基準位相差θの決定は、まずサンプルデータDM+1の位相を得て、それにより基準位相差θを決定するという手法で行う。以下の実施例にて、その手法を詳述する。第1の実施例及び第2の実施例は、最後尾のサンプルデータDMの位相に所定の位相(ΨA又はΨB)を付加してサンプルデータDM+1の位相を得る手法であり、第3の実施例は、波形データWを解析してサンプルデータDM+1の位相を推定する手法、第4の実施例は、直接的にサンプルデータDM+1の位相を得る手法である。
【0049】
(第1の実施例)
図7(A)は、第1の実施例における基準位相差決定手段93(または後述する基準位相差決定手段23)の構成を示すブロック図である。基準位相差決定手段93は、位相推定手段82a、基準位相差算出手段83を有している。図7(B)は、図7(A)に対応して基準位相差θを決定する手法のフローチャートである。
【0050】
まず、波形データ生成手段92により、サンプルデータD1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWが生成されている(S21)。位相推定手段82aは、波形データ生成手段92から、波形データWの1番目のサンプルデータD1の位相Ψ1と、M−1番目のサンプルデータDM−1の位相ΨM−1と、M番目のサンプルデータDMの位相ΨMとの3つの位相情報を取得する(S22)。ここで、M番目のサンプルデータDMの位相ΨMとM−1番目のサンプルデータDM−1の位相ΨM−1との位相差をΨAとして、位相推定手段82aは、ΨM+1=ΨM+ΨA=ΨM+(ΨM−ΨM−1)の演算を行って、M+1番目のサンプルデータDM+1を仮想したときのサンプルデータDM+1の位相ΨM+1を推定する(S23)。基準位相差算出手段83は、サンプルデータD1の位相Ψ1と、推定したサンプルデータDM+1の位相ΨM+1とから、θ=ΨM+1−Ψ1の演算により、基準位相差θを算出する(S24)。これにより、基準位相差θが決定される。
【0051】
本実施例によれば、生成された波形データWの3つのサンプルデータの位相情報から、簡易な演算により基準位相差θを決定しているので、容易に基準位相差θを決定できる。また、従来の波形データ生成装置で生成され、基準位相差θが決定されていない波形データであっても、後から基準位相差θを決定でき、本発明の信号発生器により波形の先頭と最後尾の位相を連続させて出力することができる。
【0052】
(第2の実施例)
図8(A)は、第2の実施例における基準位相差決定手段93(または後述する基準位相差決定手段23)の構成を示すブロック図である。基準位相差決定手段93は、平均位相差算出手段81、位相推定手段82b、基準位相差算出手段83を有している。図8(B)は、図8(A)に対応して基準位相差θを決定する手法のフローチャートである。
【0053】
まず、波形データ生成手段92により、サンプルデータD1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWが生成されている(S31)。平均位相差算出手段81は、波形データ生成手段92からサンプルデータD1乃至DMの位相情報を受け、あるサンプルデータDmと次のサンプルデータDm+1との位相差の平均値である1サンプルデータあたりの平均位相差ΨBを算出する(S32)。位相推定手段82bは、波形データWの1番目のサンプルデータD1の位相Ψ1と、M番目のサンプルデータDMの位相ΨMとの位相情報を取得する(S33)。そして、位相推定手段82bは、ΨM+1=ΨM+ΨBの演算を行って、M+1番目のサンプルデータDM+1を仮想したときのサンプルデータDM+1の位相ΨM+1を推定する(S34)。基準位相差算出手段83は、サンプルデータD1の位相Ψ1と、推定したサンプルデータDM+1の位相ΨM+1とから、θ=ΨM+1−Ψ1の演算により、基準位相差θを算出する(S35)。これにより、基準位相差θが決定される。
【0054】
本実施例によれば、生成された波形データWのサンプルデータの位相情報から基準位相差θを決定しているので、従来の波形データ生成装置で生成され、基準位相差θが決定されていない波形データであっても、後から基準位相差θを決定でき、本発明の信号発生器により波形の先頭と最後尾の位相を連続させて出力することができる。
【0055】
(第3の実施例)
図9(A)は、第3の実施例における基準位相差決定手段93(または後述する基準位相差決定手段23)の構成を示すブロック図である。基準位相差決定手段93は、平均位相差算出手段81、位相推定手段82c、基準位相差算出手段83を有している。図9(B)は、図9(A)に対応して基準位相差θを決定する手法のフローチャートである。
【0056】
まず、波形データ生成手段92により、サンプルデータD1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWが生成されている(S41)。位相推定手段82cは、波形データ生成手段92から波形データWを受けてこれを解析し、M+1番目のサンプルデータDM+1を仮想したときのサンプルデータDM+1の位相ΨM+1を推定する(S42)。基準位相差算出手段83は、サンプルデータD1の位相Ψ1と、推定したサンプルデータDM+1の位相ΨM+1とから、θ=ΨM+1−Ψ1の演算により、基準位相差θを算出する(S43)。これにより、基準位相差θが決定される。
【0057】
位相推定手段82cにおける波形データWの解析の手法について、以下に例を挙げて説明する。
【0058】
(a)波形データWの先頭のデータ付近と最後尾のデータ付近との周波数を解析する。その結果、それらの周波数がほぼ同一であれば、最後尾のデータ付近から次の繰り返し波形データWの先頭のデータ付近まで周波数がほぼ変化しない期間となり、その期間では位相が一定の割合で変化するので、位相ΨM+1を容易に推定できる。
【0059】
(b)波形データWの周波数の時間変化を解析する。その結果、例えば、時間の経過に従って、周波数1kHzと2kHzとに交互に変化するような信号であれば、FSK変調信号と推測できる。FSK変調信号であれば、周波数が変化しない期間では位相が一定の割合で変化するので、位相ΨM+1を容易に推定できる。
【0060】
(c)波形データWの位相の時間変化を解析する。その結果、例えば、位相が時間に比例(1次関数の関係)する信号であれば、位相が一定の割合で変化するので、位相ΨM+1を容易に推定できる。さらに、波形データWをFFT処理して周波数成分を解析することを組み合わせて、より正確に波形データWを推測し、位相ΨM+1推定するようにしても良い。
【0061】
(d)波形データWの振幅の時間変化を解析する。その結果に対して近似式を求め、求めた近似式から位相ΨM+1を算出する。
これら(a)乃至(d)のいずれか又はこれらの組合せにより、位相推定手段82bは、位相ΨM+1を推定する。
【0062】
本実施例によれば、生成された波形データWを解析して基準位相差θを決定しているので、従来の波形データ生成装置で生成され、基準位相差θが決定されていない波形データであっても、後から基準位相差θを決定でき、本発明の信号発生器により波形の先頭と最後尾の位相を連続させて出力することができる。
【0063】
(第4の実施例)
図10(A)は、第4の実施例における基準位相差決定手段93の構成を示すブロック図である。基準位相差決定手段93は、基準位相差算出手段83を有している。図10(B)は、図10(A)に対応して基準位相差θを決定する手法のフローチャートである。
【0064】
まず、波形データ生成手段92により、サンプルデータD1乃至DMのM個のサンプルデータと、少なくともサンプルデータDM+1の位相情報とが生成(D1乃至DM+1のM+1個のサンプルデータを全て生成してしまっても良い)され(S51)、このサンプルデータD1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWが生成されている(S52)。基準位相差算出手段83は、サンプルデータD1の位相Ψ1と、サンプルデータDM+1の位相ΨM+1との位相情報を波形データ生成手段92から取得し(S53)、θ=ΨM+1−Ψ1の演算により、基準位相差θを算出する(S54)。これにより、基準位相差θが決定される。
【0065】
本実施例によれば、M個のサンプルデータから成る波形データWを生成する際に、本来は生成されないM+1番目のサンプルデータDM+1の位相情報も生成して取得し、その位相情報から基準位相差θを決定している。M+1番目のサンプルデータDM+1の位相ΨM+1を推定によって求めるのではなく、実際に生成して得ているので、基準位相差θを精度良く決定でき、本発明の信号発生器により波形の先頭と最後尾の位相を連続させて出力することができる。
【0066】
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態における信号発生システム101の構成を示している。信号発生システム101は、波形データWを生成する波形データ生成装置95と、この波形データWにより、RFの試験信号を発生する信号発生器12とを備える。以下、主に第1の実施形態との差異について説明し、第1の実施形態における構成と同等の部分については、適宜説明を省略する。
【0067】
波形データ生成装置95は、基準位相差決定手段93が無い点が、第1の実施形態の波形データ生成装置90と異なる。このため、波形データ生成装置95では基準位相差θは決定されず、波形データ生成装置95から信号発生器12に対して、基準位相差θの情報は送出されない。
【0068】
信号発生器12は、基準位相差決定手段23を備える点で、第1の実施形態の信号発生器10と異なる。基準位相差決定手段23は、前述した第1の実施形態の第1の実施例、第2の実施例または第3の実施例のいずれかの構成を備えている。なお、信号発生器12は、図4に示す信号発生器11のように、直交変調手段50及び周波数変換手段60の機能を兼ねた周波数変換手段70を備える構成であっても良い。
【0069】
図12は、本実施形態における信号発生システム101の動作を説明するためのフローチャートである。S61からS63に至る波形データ生成装置の動作において、基準位相差θを算出する手順が無いことが、第1の実施形態と異なる。また、S64からS73に至る信号発生器の動作において、基準位相差θを算出する手順(S66)を備えることが、第1の実施形態と異なる。前述したように、この基準位相差θを算出する手順は、第1の実施形態の第1の実施例、第2の実施例または第3の実施例のいずれかの手順を適用できる。なお、基準位相差θを算出する手順の順番は、波形データWを記憶する手順の後で且つ位相シフト量φnを算出する手順の前であれば、いつでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
このように、本発明の信号発生器及び信号発生システム並びに信号発生方法は、任意の波形を繰り返し発生し、発生した波形の先頭と最後尾の位相を連続させることができるので、無線通信機器の試験を精度良く行うために有用である。
【符号の説明】
【0071】
10,11,12…信号発生器、20…波形データ記憶手段、23…基準位相差決定手段、30…位相シフト手段、31,32…乗算器、33…位相シフト量算出手段、40…D/A変換手段、41,42…D/A変換器、50…直交変調手段、51,52…ミキサ、53…局部発振器、54…90度移相器、55…加算器、60…周波数変換手段、61…局部発振器、62…ミキサ、70…周波数変換手段、73…局部発振器、81…平均位相差算出手段、82…位相推定手段、83…基準位相差算出手段、90…波形データ生成装置、91…操作手段、92…波形データ生成手段、93…基準位相差決定手段、94…波形データ送出手段、95…波形データ生成装置、100,101…信号発生システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象の無線通信機器にRFの試験信号を出力し、この無線通信機器を試験するための信号発生器及び信号発生システム並びに信号発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機器を試験するために、この無線通信機器に対応した通信方式の試験信号をこの無線通信機器に送出する信号発生器が知られている。その一例として、試験信号に対応するベースバンド信号をデジタルの波形データとして内部のメモリ部に記憶しておき、記憶された波形データを繰り返し出力してD/A変換し、変換された信号を周波数変換して、RFの試験信号として出力する信号発生器がある。
【0003】
このような信号発生器では、メモリ部の容量が限られるため、波形データのデータ長が有限となる。一方で、無線通信機器の試験条件が規格で定められている等により、波形データのデータ長を自由に変更できない場合がある。このため、従来の信号発生器では、繰り返し出力される波形データの先頭と最後尾との接続部で位相が不連続となる現象が発生する。これにより、位相の不連続点でスプリアスが発生するほか、無線通信の同期が外れ、無線通信機器の試験を正常に行えないおそれがある。
【0004】
図13は、そのような現象の概念図である。D1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWを3回繰り返して出力し、D/A変換した波形を示している。ここで、波形データWの先頭のサンプルデータD1の位相と最後尾のサンプルデータDMの位相とが大きく異なっていることにより、波形データ繰り返しの1回目と2回目の接続部及び2回目と3回目の接続部において、D/A変換した波形で位相の不連続点が現れている。
【0005】
このような問題に対し、接続部の位相を連続させた波形パターンのFSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)信号を発生する任意波形信号発生装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この任意波形信号発生装置は、PN(Pseudo-Noise)信号を繰り返し出力するデジタルデータ発生器と、デジタルデータ発生器の出力データの各ビットに補正値を分割して加算する補正手段と、を備え、接続部の位相が連続したFSK信号を発生することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−44170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で開示された発明では、データを補正して接続部の位相を連続させるようにした結果、出力信号の周波数が変わってしまい、無線通信機器の試験を精度良く行うことができないという課題があった。
【0008】
本発明は、以上のような課題に対し、無線通信機器の試験を精度良く行うために、波形の周波数を変えることなく、発生した波形の最後尾と次に繰り返し発生した波形の先頭の位相とを連続させて、任意の波形を繰り返し発生することができる信号発生器及び信号発生システム並びに信号発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明の信号発生器(10,11,12)は、M個のサンプルデータから成るデジタルのベースバンド信号の波形データを記憶し、当該波形データを繰り返し連続して出力する波形データ記憶手段(20)と、前記波形データをデジタル−アナログ変換するD/A変換手段(40)と、このデジタル−アナログ変換されたベースバンド信号を所定の周波数のキャリア信号で周波数変換して、無線通信機器を試験するためのRFの試験信号として出力する周波数変換手段(60,70)とを備えた信号発生器において、前記波形データ記憶手段からの繰り返し出力回数がn回目となる前記波形データを受けて、n−1回目の前記波形データの最後尾とn回目の前記波形データの先頭との位相変化を連続とするための当該n−1回目の波形データと当該n回目の波形データとの位相差である基準位相差θ及び前記繰り返し出力回数nから求めた位相シフト量φnだけ前記n回目の波形データの各サンプルデータの位相をシフトして前記D/A変換手段に出力する位相シフト手段(30)を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の信号発生器は、前記波形データ記憶手段に記憶された前記波形データに基づいて、前記基準位相差θを決定する基準位相差決定手段(23)を備えていてもよい。
【0011】
また、本発明の信号発生器は、前記基準位相差決定手段は、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有していてもよい。
【0012】
また、本発明の信号発生器は、前記基準位相差決定手段は、前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する平均位相差算出手段(81)と、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有していてもよい。
【0013】
また、本発明の信号発生システムは、前記の信号発生器と、前記波形データを生成して前記信号発生器に送出する波形データ生成装置(90)とを含み、前記波形データ生成装置は、前記波形データを生成する波形生成手段(92)と、前記基準位相差θを決定する基準位相差決定手段(93)と、前記波形データ及び前記基準位相差θを前記信号発生器に送出する波形送出手段(94)とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の信号発生システムは、前記基準位相差決定手段は、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有していてもよい。
【0015】
また、本発明の信号発生システムは、前記基準位相差決定手段は、前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する平均位相差算出手段(81)と、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有していてもよい。
【0016】
また、本発明の信号発生システムは、前記波形生成手段は、先頭からM番目までのサンプルデータを生成するとともにM+1番目のサンプルデータの位相を取得して、この生成したM個のサンプルデータを用いて前記波形データを生成し、前記基準位相差決定手段は、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)を有していてもよい。
【0017】
また、本発明の信号発生方法は、M個のサンプルデータから成るデジタルのベースバンド信号の波形データを繰り返し連続して出力する段階(S9)と、前記波形データをデジタル−アナログ変換する段階(S11)と、このデジタル−アナログ変換されたベースバンド信号を所定の周波数のキャリア信号で周波数変換して、無線通信機器を試験するためのRFの試験信号として出力する段階(S12)とを備えた信号発生方法において、前記波形データの繰り返し出力回数がn回目であるときに、n−1回目の前記波形データの最後尾とn回目の前記波形データの先頭との位相変化を連続とするための当該n−1回目の波形データと当該n回目の波形データとの位相差である基準位相差θ及び前記波形データの前記繰り返し出力回数nから位相シフト量φnを求める段階(S7)と、前記デジタル−アナログ変換する段階の前に、前記繰り返し出力回数がn回目となる前記波形データを受けたときに前記位相シフト量φnだけ前記n回目の波形データの各サンプルデータの位相をシフトする段階(S10)とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の信号発生方法は、前記波形データに基づいて、前記基準位相差θを決定する段階(S3)を備えていてもよい。
【0019】
また、本発明の信号発生方法は、前記基準位相差θを決定する段階は、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する段階(S23)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S24)とを有していてもよい。
【0020】
また、本発明の信号発生方法は、前記基準位相差θを決定する段階は、前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する段階(S32)と、前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する段階(S34)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S35)とを有していてもよい。
【0021】
また、本発明の信号発生方法は、先頭からM番目までのサンプルデータを生成するとともにM+1番目のサンプルデータの位相を取得する段階(S41)と、この生成したM個のサンプルデータを用いて前記波形データを生成する段階(S42)と、前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S44)とを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の信号発生器及び信号発生システム並びに信号発生方法は、波形の周波数を変えることなく、発生した波形の最後尾と次に繰り返し発生した波形の先頭の位相とを連続させて、任意の波形を繰り返し発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の概念図
【図2】本発明の第1の実施形態のブロック図
【図3】本発明の第1の実施形態の要部のブロック図
【図4】本発明の第1の実施形態の信号発生器の変形例
【図5】本発明の第1の実施形態のフローチャート
【図6】本発明の基準位相差θの決定手法の概念図
【図7】本発明の基準位相差決定手段の第1の実施例
【図8】本発明の基準位相差決定手段の第2の実施例
【図9】本発明の基準位相差決定手段の第3の実施例
【図10】本発明の基準位相差決定手段の第4の実施例
【図11】本発明の第2の実施形態のブロック図
【図12】本発明の第2の実施形態のフローチャート
【図13】従来の信号発生器の波形データ出力の概念図
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
まず、図1により、本発明の概念を説明する。図1では、D1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWを3回繰り返して出力し、D/A変換した波形を示している。波形データWの繰り返しの1回目をW1、次の2回目の繰り返しをW2、その次の3回目の繰り返しをW3としたとき、その繰り返し回数nに応じた位相シフト量φnだけ、波形データWの各サンプルデータD1乃至DMの位相がシフトされる。この位相シフト量φnは、波形データW1の最後尾と波形データW2の先頭、波形データW2の最後尾と波形データW3の先頭で、それぞれ位相が連続となるように決定されている。これにより、3回繰り返された波形データWは、位相が連続した波形データW1、W2、W3となる。
【0025】
具体的には、波形データWの繰り返しの1回目で、各サンプルデータD1乃至DMの位相がφ1だけシフト(遅れ)される。この例では、φ1=0であるので、実質的には位相はシフトされず、波形データW=W1となる。次に、波形データWの繰り返しの2回目で、各サンプルデータD1乃至DMの位相がφ2だけシフトされ、D1(φ2)乃至DM(φ2)となった波形データW2となる。この例では、φ2=π/2である。その次に、波形データWの繰り返しの3回目で、各サンプルデータD1乃至DMの位相がφ3だけシフトされ、D1(φ3)乃至DM(φ3)となった波形データW3となる。この例では、φ3=πである。
【0026】
この位相シフト量φnは、繰り返し回数nと基準位相差θとから、φn=(n−1)×θにより算出される。この基準位相差θとは、先に出力される波形データの最後尾(のサンプルデータ)とその次に繰り返し出力される波形データの先頭(のサンプルデータ)との位相変化を連続としたときの、この先の波形データとこの次の波形データとの位相差である。具体的には、繰り返しの1回目の波形データW1の最後尾のサンプルデータDMと次の2回目の繰り返し波形データW2の先頭のサンプルデータD1(φ2)との位相変化が連続となる位相差であって、この例では、θ=π/2である。なお、基準位相差θの決定の手法の詳細は後述する。
【0027】
このように、本発明では、基準位相差θを決定し、繰り返し回数nと基準位相差θとから位相シフト量φnを求め、繰り返し回数nに応じた位相シフト量φnだけ波形データWの各サンプルデータD1乃至DMの位相をシフトする。これにより、波形の周波数を変えることなく、且つスプリアスを発生させることなく、発生した波形の最後尾と次に繰り返し発生した波形の先頭の位相とを連続させて、任意の波形を繰り返し発生することができる。
【0028】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の信号発生システム100の構成を示している。信号発生システム100は、波形データWを生成するとともに基準位相差θを決定する波形データ生成装置90と、この波形データW及び基準位相差θにより、RFの試験信号を発生する信号発生器10とを備える。例えば、この波形データWはFSK変調信号の波形データであり、信号発生器10は、FSK変調方式を採用する通信方式に対応した無線通信機器を試験するためのRFの試験信号を発生する。FSK変調方式を採用する通信方式は、例えば、Bluetooth(登録商標)である。
【0029】
波形データ生成装置90は、操作手段91、波形データ生成手段92、基準位相差決定手段93、波形データ送出手段94を備える。波形データ生成装置90は、例えばパーソナルコンピュータ及びソフトウェアによって構成され、これらの各手段の機能を実現している。
【0030】
操作手段91は、波形データを生成するためのパラメータを設定するため、ユーザが操作するものである。例えば、操作手段91は、図示を省略したが、パラメータを設定するための設定画面を表示するディスプレイと、キーボードやマウス等の入力デバイスとを備えている。
【0031】
波形データ生成手段92は、ユーザが操作手段91を操作して入力したパラメータに基づき、デジタルの波形データWを生成するようになっている。この波形データWは、ベースバンド信号の波形データであり、D1乃至DMのM個のサンプルデータから成る。より正確には、この波形データWは複素のIQデータであり、M個のI相のデータと、M個のQ相のデータとで成る。従って、IQでM組のデータとなるが、ここでは1組のIQデータを1つのサンプルデータとして説明する。また、波形データ生成手段92は、基準位相差決定手段93に波形データWに関する情報を送出するとともに、波形データ送出手段94に波形データWを送出する。
【0032】
基準位相差決定手段93は、波形データ生成手段92から受けた波形データWに関する情報に基づいて、基準位相差θを決定する。基準位相差決定手段93の詳細な構成は後述する。
【0033】
波形データ送出手段94は、波形データ生成手段92から受けた波形データWと、基準位相差決定手段93から受けた基準位相差θとを、信号発生器10に送出する。信号発生器10への波形データの送出は、USBやイーサネット(登録商標)、無線LAN等により波形データ生成装置90と信号発生器10とを接続して行っても良いし、CDやSDカード等の記憶媒体を介して行っても良い。
【0034】
信号発生器10は、波形データ記憶手段20、位相シフト手段30、D/A変換手段40、直交変調手段50、周波数変換手段60を備える。信号発生器10は、波形データWを基にして、無線通信機器を試験するためのRF試験信号を発生する。
【0035】
波形データ記憶手段20は、波形データ生成装置90から受けた波形データW及び基準位相差θを記憶し、波形データWのI相のデータとQ相のデータとを繰り返し出力する。また、波形データ記憶手段20は、出力される波形データWに対応した基準位相差θと波形データWの繰り返し出力回数nとを出力する。波形データ記憶手段20は、具体的には、ハードディスクドライブ(HDD)等の大容量のストレージ部と、高速でデータをリード/ライト可能なランダムアクセスメモリ(RAM)のメモリ部とを有しており、ストレージ部に複数種類の波形データW及び基準位相差θの組合せを記憶できるようになっている。そして、ユーザが指定した波形データWをメモリ部に移し、このメモリ部から波形データWを出力する。このため、波形データWのデータ容量は、メモリ部の記憶容量を超えないようにされている。
【0036】
位相シフト手段30は、波形データ記憶手段20から受けた基準位相差θと繰り返し出力回数nに基づいて位相シフト量φnを算出し、この算出した位相シフト量だけ、波形データWのI相のデータとQ相のデータとの位相をシフトする。図3に位相シフト手段30の構成を示す。位相シフト手段30は、デジタルの乗算器31a乃至31dと、デジタルの加算器32a,32bと、位相シフト量算出手段33とを有している。位相シフト量算出手段33は、波形データ記憶手段20から基準位相差θと波形データWの繰り返し出力回数nとを受けて、位相シフト量φn=(n−1)×θを算出し、算出した位相シフト量に応じた位相シフトデータcosφn,sinφnを出力する。乗算器31a乃至31dは、波形データWの各サンプルデータのIQデータそれぞれに位相シフトデータを乗じ、それらの出力を加算器32a,32bで加算(又は減算)して、各サンプルデータの位相をシフトしたIQデータI’,Q’を出力する。具体的には、波形データWの各サンプルデータは、Aejφ=A(cosφ+jsinφ)で表現され、I相のデータはAcosφ、Q相のデータはAsinφとなる。ここで、位相シフトデータをejφnとし、この位相シフトデータejφnを各サンプルデータに乗じることにより、各サンプルデータの位相が位相シフト量φnだけシフトされる。この式を展開すると、以下のようになる。
【0037】
Aejφ・ejφn=A(cosφ+jsinφ)・(cosφn+jsinφn)
=(A・cosφ・cosφn−A・sinφ・sinφn)
+j(A・sinφ・cosφn+A・cosφ・sinφn)
=(I・cosφn−Q・sinφn)+j(Q・cosφn+I・sinφn)
=I’+jQ’
ここで、
I’=I・cosφn−Q・sinφn
Q’=Q・cosφn+I・sinφn
図3に示す位相シフト手段30は、これに相当する演算を行い、位相をシフトしたIQデータI’,Q’を出力する。
【0038】
D/A変換手段40は、2つのD/A変換器41,42を有し、位相シフトされた各サンプルデータのIQデータをそれぞれ順次D/A変換する。
【0039】
直交変調手段50は、2つのミキサ51,52、局部発振器53、90度移相器54、加算器55を有する直交変調器で構成されている。D/A変換されたI相の信号が局部発振器53からの局部発振信号と混合されるとともに、D/A変換されたQ相の信号が局部発振器53からの局部発振信号を90度(π/2)移相した信号と混合され、これらの混合された信号を加算して出力する。
【0040】
周波数変換手段60は、局部発振器61とミキサ62とを有し、直交変調手段50からの信号を局部発振器61からの局部発振信号により周波数変換する。周波数変換された信号は、図示しないフィルタ及びアンプにより整形及び増幅され、RF試験信号として出力される。
【0041】
なお、信号発生器は、図4に示す信号発生器11のような構成であっても良い。図4において、周波数変換手段70は、図2の直交変調手段50及び周波数変換手段60の機能を兼ねており、局部発振器73からの局部発振信号の周波数を搬送波の周波数とすることにより、直交変調と周波数変換とを同一の手段で行っている。
【0042】
次に、本実施形態における信号発生システム100の動作について、図5のフローチャートにより説明する。まず、波形データ生成装置90の動作を説明する。ユーザが操作手段91を操作して、波形データWを生成するためのパラメータを設定する(S1)。このパラメータとは、変調前のデータの内容、データ長等である。設定されたパラメータを基に、波形データ生成手段92が、波形データWを生成する(S2)。波形データWの情報を用いて、基準位相差決定手段93が基準位相差θを決定する(S3)。波形データ送出手段94は、生成された波形データW及び決定された基準位相差θを信号発生器10に送出する(S4)。
【0043】
さらに、信号発生器10の動作を説明する。波形データ記憶手段20は、波形データ生成装置90から受けた波形データW及び基準位相差θを記憶する(S5)。ユーザが図示しない操作部を操作して、RF試験信号を出力するためのパラメータを設定する(S6)。このパラメータとは、波形データ記憶手段20に複数種類記憶された波形データWの選択、RF試験信号の搬送波周波数、出力レベル、出力継続時間(又は繰り返し出力継続回数)等である。波形データ記憶手段20から基準位相差θを受けて、位相シフト量算出手段33が、波形データWの繰り返し回数n(n=1,2,3,・・・)それぞれについて、位相シフト量φnを算出する(S7)。なお、位相シフト量φnの算出は、パラメータとして設定された出力継続時間又は繰り返し出力継続回数を用いて、予め想定される全てのnについて算出しておいても良いし、波形データWを繰り返し出力する度に、そのときの繰り返し出力回数nについて算出しても良い。
【0044】
そして、波形データWの繰り返し出力回数nがn=1に設定され(S8)、波形データ記憶手段20から波形データWが、先頭のサンプルデータD1から最後尾のサンプルデータDMまで順に出力される(S9)。出力された波形データWの各サンプルデータD1乃至DMに、乗算器31,32により位相シフトデータが乗算され、各サンプルデータD1乃至DMの位相が位相シフト量φnだけシフトされる(S10)。この位相シフト量φnは、波形データWの繰り返し回数n毎に異なる。
【0045】
位相シフトされた各サンプルデータはD/A変換器41,42によりD/A変換され(S11)、直交変調手段50により直交変調され、周波数変換手段60によりRF信号に周波数変換されて、RF試験信号として出力される(S12)。その一方で、波形データWの繰り返し出力回数nがインクリメントされて(S13)、次の繰り返しの波形データWが、波形データ記憶手段20から出力される。このようにして、S9乃至S13の動作は、繰り返し出力回数nが所定数に達するまで反復される。
【0046】
次に、基準位相差θを決定する手法について詳述する。まず、その概念について図6を用いて説明し、その後に4つの実施例を挙げて、対応する図7乃至図10に基づき説明する。
【0047】
図6は、基準位相差θを決定する手法の概念を示した図であり、図6(A)は各サンプルデータを模式的に時間軸で並べたもの、図6(B)は、それをIQ平面上に示したものである。図6(A)に示すように、波形データWの繰り返しの1回目と、次の2回目の繰り返しとで位相を連続にするため、2回目の繰り返しの先頭のサンプルデータD1に着目すると、2回目の繰り返しのD1の位相が、1回目の繰り返しのDM+1の位相となるように、2回目の繰り返しのD1の位相をシフトすれば良い。図6(B)に示すように、D1とDM+1との位相差はθであり、これが基準位相差θとなる。別な表現をすれば、基準位相差θは、波形データWの先頭のサンプルデータD1の位相と、最後尾のサンプルデータDMの次のサンプルデータDM+1を仮想したときのこの仮想サンプルデータDM+1の位相との位相差である。
【0048】
ただし、サンプルデータDM+1は、本来は存在しないデータである。従って、基準位相差θの決定は、まずサンプルデータDM+1の位相を得て、それにより基準位相差θを決定するという手法で行う。以下の実施例にて、その手法を詳述する。第1の実施例及び第2の実施例は、最後尾のサンプルデータDMの位相に所定の位相(ΨA又はΨB)を付加してサンプルデータDM+1の位相を得る手法であり、第3の実施例は、波形データWを解析してサンプルデータDM+1の位相を推定する手法、第4の実施例は、直接的にサンプルデータDM+1の位相を得る手法である。
【0049】
(第1の実施例)
図7(A)は、第1の実施例における基準位相差決定手段93(または後述する基準位相差決定手段23)の構成を示すブロック図である。基準位相差決定手段93は、位相推定手段82a、基準位相差算出手段83を有している。図7(B)は、図7(A)に対応して基準位相差θを決定する手法のフローチャートである。
【0050】
まず、波形データ生成手段92により、サンプルデータD1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWが生成されている(S21)。位相推定手段82aは、波形データ生成手段92から、波形データWの1番目のサンプルデータD1の位相Ψ1と、M−1番目のサンプルデータDM−1の位相ΨM−1と、M番目のサンプルデータDMの位相ΨMとの3つの位相情報を取得する(S22)。ここで、M番目のサンプルデータDMの位相ΨMとM−1番目のサンプルデータDM−1の位相ΨM−1との位相差をΨAとして、位相推定手段82aは、ΨM+1=ΨM+ΨA=ΨM+(ΨM−ΨM−1)の演算を行って、M+1番目のサンプルデータDM+1を仮想したときのサンプルデータDM+1の位相ΨM+1を推定する(S23)。基準位相差算出手段83は、サンプルデータD1の位相Ψ1と、推定したサンプルデータDM+1の位相ΨM+1とから、θ=ΨM+1−Ψ1の演算により、基準位相差θを算出する(S24)。これにより、基準位相差θが決定される。
【0051】
本実施例によれば、生成された波形データWの3つのサンプルデータの位相情報から、簡易な演算により基準位相差θを決定しているので、容易に基準位相差θを決定できる。また、従来の波形データ生成装置で生成され、基準位相差θが決定されていない波形データであっても、後から基準位相差θを決定でき、本発明の信号発生器により波形の先頭と最後尾の位相を連続させて出力することができる。
【0052】
(第2の実施例)
図8(A)は、第2の実施例における基準位相差決定手段93(または後述する基準位相差決定手段23)の構成を示すブロック図である。基準位相差決定手段93は、平均位相差算出手段81、位相推定手段82b、基準位相差算出手段83を有している。図8(B)は、図8(A)に対応して基準位相差θを決定する手法のフローチャートである。
【0053】
まず、波形データ生成手段92により、サンプルデータD1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWが生成されている(S31)。平均位相差算出手段81は、波形データ生成手段92からサンプルデータD1乃至DMの位相情報を受け、あるサンプルデータDmと次のサンプルデータDm+1との位相差の平均値である1サンプルデータあたりの平均位相差ΨBを算出する(S32)。位相推定手段82bは、波形データWの1番目のサンプルデータD1の位相Ψ1と、M番目のサンプルデータDMの位相ΨMとの位相情報を取得する(S33)。そして、位相推定手段82bは、ΨM+1=ΨM+ΨBの演算を行って、M+1番目のサンプルデータDM+1を仮想したときのサンプルデータDM+1の位相ΨM+1を推定する(S34)。基準位相差算出手段83は、サンプルデータD1の位相Ψ1と、推定したサンプルデータDM+1の位相ΨM+1とから、θ=ΨM+1−Ψ1の演算により、基準位相差θを算出する(S35)。これにより、基準位相差θが決定される。
【0054】
本実施例によれば、生成された波形データWのサンプルデータの位相情報から基準位相差θを決定しているので、従来の波形データ生成装置で生成され、基準位相差θが決定されていない波形データであっても、後から基準位相差θを決定でき、本発明の信号発生器により波形の先頭と最後尾の位相を連続させて出力することができる。
【0055】
(第3の実施例)
図9(A)は、第3の実施例における基準位相差決定手段93(または後述する基準位相差決定手段23)の構成を示すブロック図である。基準位相差決定手段93は、平均位相差算出手段81、位相推定手段82c、基準位相差算出手段83を有している。図9(B)は、図9(A)に対応して基準位相差θを決定する手法のフローチャートである。
【0056】
まず、波形データ生成手段92により、サンプルデータD1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWが生成されている(S41)。位相推定手段82cは、波形データ生成手段92から波形データWを受けてこれを解析し、M+1番目のサンプルデータDM+1を仮想したときのサンプルデータDM+1の位相ΨM+1を推定する(S42)。基準位相差算出手段83は、サンプルデータD1の位相Ψ1と、推定したサンプルデータDM+1の位相ΨM+1とから、θ=ΨM+1−Ψ1の演算により、基準位相差θを算出する(S43)。これにより、基準位相差θが決定される。
【0057】
位相推定手段82cにおける波形データWの解析の手法について、以下に例を挙げて説明する。
【0058】
(a)波形データWの先頭のデータ付近と最後尾のデータ付近との周波数を解析する。その結果、それらの周波数がほぼ同一であれば、最後尾のデータ付近から次の繰り返し波形データWの先頭のデータ付近まで周波数がほぼ変化しない期間となり、その期間では位相が一定の割合で変化するので、位相ΨM+1を容易に推定できる。
【0059】
(b)波形データWの周波数の時間変化を解析する。その結果、例えば、時間の経過に従って、周波数1kHzと2kHzとに交互に変化するような信号であれば、FSK変調信号と推測できる。FSK変調信号であれば、周波数が変化しない期間では位相が一定の割合で変化するので、位相ΨM+1を容易に推定できる。
【0060】
(c)波形データWの位相の時間変化を解析する。その結果、例えば、位相が時間に比例(1次関数の関係)する信号であれば、位相が一定の割合で変化するので、位相ΨM+1を容易に推定できる。さらに、波形データWをFFT処理して周波数成分を解析することを組み合わせて、より正確に波形データWを推測し、位相ΨM+1推定するようにしても良い。
【0061】
(d)波形データWの振幅の時間変化を解析する。その結果に対して近似式を求め、求めた近似式から位相ΨM+1を算出する。
これら(a)乃至(d)のいずれか又はこれらの組合せにより、位相推定手段82bは、位相ΨM+1を推定する。
【0062】
本実施例によれば、生成された波形データWを解析して基準位相差θを決定しているので、従来の波形データ生成装置で生成され、基準位相差θが決定されていない波形データであっても、後から基準位相差θを決定でき、本発明の信号発生器により波形の先頭と最後尾の位相を連続させて出力することができる。
【0063】
(第4の実施例)
図10(A)は、第4の実施例における基準位相差決定手段93の構成を示すブロック図である。基準位相差決定手段93は、基準位相差算出手段83を有している。図10(B)は、図10(A)に対応して基準位相差θを決定する手法のフローチャートである。
【0064】
まず、波形データ生成手段92により、サンプルデータD1乃至DMのM個のサンプルデータと、少なくともサンプルデータDM+1の位相情報とが生成(D1乃至DM+1のM+1個のサンプルデータを全て生成してしまっても良い)され(S51)、このサンプルデータD1乃至DMのM個のサンプルデータから成る波形データWが生成されている(S52)。基準位相差算出手段83は、サンプルデータD1の位相Ψ1と、サンプルデータDM+1の位相ΨM+1との位相情報を波形データ生成手段92から取得し(S53)、θ=ΨM+1−Ψ1の演算により、基準位相差θを算出する(S54)。これにより、基準位相差θが決定される。
【0065】
本実施例によれば、M個のサンプルデータから成る波形データWを生成する際に、本来は生成されないM+1番目のサンプルデータDM+1の位相情報も生成して取得し、その位相情報から基準位相差θを決定している。M+1番目のサンプルデータDM+1の位相ΨM+1を推定によって求めるのではなく、実際に生成して得ているので、基準位相差θを精度良く決定でき、本発明の信号発生器により波形の先頭と最後尾の位相を連続させて出力することができる。
【0066】
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態における信号発生システム101の構成を示している。信号発生システム101は、波形データWを生成する波形データ生成装置95と、この波形データWにより、RFの試験信号を発生する信号発生器12とを備える。以下、主に第1の実施形態との差異について説明し、第1の実施形態における構成と同等の部分については、適宜説明を省略する。
【0067】
波形データ生成装置95は、基準位相差決定手段93が無い点が、第1の実施形態の波形データ生成装置90と異なる。このため、波形データ生成装置95では基準位相差θは決定されず、波形データ生成装置95から信号発生器12に対して、基準位相差θの情報は送出されない。
【0068】
信号発生器12は、基準位相差決定手段23を備える点で、第1の実施形態の信号発生器10と異なる。基準位相差決定手段23は、前述した第1の実施形態の第1の実施例、第2の実施例または第3の実施例のいずれかの構成を備えている。なお、信号発生器12は、図4に示す信号発生器11のように、直交変調手段50及び周波数変換手段60の機能を兼ねた周波数変換手段70を備える構成であっても良い。
【0069】
図12は、本実施形態における信号発生システム101の動作を説明するためのフローチャートである。S61からS63に至る波形データ生成装置の動作において、基準位相差θを算出する手順が無いことが、第1の実施形態と異なる。また、S64からS73に至る信号発生器の動作において、基準位相差θを算出する手順(S66)を備えることが、第1の実施形態と異なる。前述したように、この基準位相差θを算出する手順は、第1の実施形態の第1の実施例、第2の実施例または第3の実施例のいずれかの手順を適用できる。なお、基準位相差θを算出する手順の順番は、波形データWを記憶する手順の後で且つ位相シフト量φnを算出する手順の前であれば、いつでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
このように、本発明の信号発生器及び信号発生システム並びに信号発生方法は、任意の波形を繰り返し発生し、発生した波形の先頭と最後尾の位相を連続させることができるので、無線通信機器の試験を精度良く行うために有用である。
【符号の説明】
【0071】
10,11,12…信号発生器、20…波形データ記憶手段、23…基準位相差決定手段、30…位相シフト手段、31,32…乗算器、33…位相シフト量算出手段、40…D/A変換手段、41,42…D/A変換器、50…直交変調手段、51,52…ミキサ、53…局部発振器、54…90度移相器、55…加算器、60…周波数変換手段、61…局部発振器、62…ミキサ、70…周波数変換手段、73…局部発振器、81…平均位相差算出手段、82…位相推定手段、83…基準位相差算出手段、90…波形データ生成装置、91…操作手段、92…波形データ生成手段、93…基準位相差決定手段、94…波形データ送出手段、95…波形データ生成装置、100,101…信号発生システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
M個のサンプルデータから成るデジタルのベースバンド信号の波形データを記憶し、当該波形データを繰り返し連続して出力する波形データ記憶手段(20)と、
前記波形データをデジタル−アナログ変換するD/A変換手段(40)と、
このデジタル−アナログ変換されたベースバンド信号を所定の周波数のキャリア信号で周波数変換して、無線通信機器を試験するためのRFの試験信号として出力する周波数変換手段(60,70)とを備えた信号発生器において、
前記波形データ記憶手段からの繰り返し出力回数がn回目となる前記波形データを受けて、n−1回目の前記波形データの最後尾とn回目の前記波形データの先頭との位相変化を連続とするための当該n−1回目の波形データと当該n回目の波形データとの位相差である基準位相差θ及び前記繰り返し出力回数nから求めた位相シフト量φnだけ前記n回目の波形データの各サンプルデータの位相をシフトして前記D/A変換手段に出力する位相シフト手段(30)を備えたことを特徴とする信号発生器(10,11,12)。
【請求項2】
前記波形データ記憶手段に記憶された前記波形データに基づいて、前記基準位相差θを決定する基準位相差決定手段(23)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の信号発生器。
【請求項3】
前記基準位相差決定手段は、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有することを特徴とする請求項2に記載の信号発生器。
【請求項4】
前記基準位相差決定手段は、
前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する平均位相差算出手段(81)と、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有することを特徴とする請求項2に記載の信号発生器。
【請求項5】
請求項1に記載の信号発生器と、
前記波形データを生成して前記信号発生器に送出する波形データ生成装置(90)とを含み、
前記波形データ生成装置は、
前記波形データを生成する波形生成手段(92)と、
前記基準位相差θを決定する基準位相差決定手段(93)と、
前記波形データ及び前記基準位相差θを前記信号発生器に送出する波形送出手段(94)とを備えたことを特徴とする信号発生システム。
【請求項6】
前記基準位相差決定手段は、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有することを特徴とする請求項5に記載の信号発生システム。
【請求項7】
前記基準位相差決定手段は、
前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する平均位相差算出手段(81)と、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有することを特徴とする請求項5に記載の信号発生システム。
【請求項8】
前記波形生成手段は、先頭からM番目までのサンプルデータを生成するとともにM+1番目のサンプルデータの位相を取得して、この生成したM個のサンプルデータを用いて前記波形データを生成し、
前記基準位相差決定手段は、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)を有することを特徴とする請求項5に記載の信号発生システム。
【請求項9】
M個のサンプルデータから成るデジタルのベースバンド信号の波形データを繰り返し連続して出力する段階(S9)と、
前記波形データをデジタル−アナログ変換する段階(S11)と、
このデジタル−アナログ変換されたベースバンド信号を所定の周波数のキャリア信号で周波数変換して、無線通信機器を試験するためのRFの試験信号として出力する段階(S12)とを備えた信号発生方法において、
前記波形データの繰り返し出力回数がn回目であるときに、n−1回目の前記波形データの最後尾とn回目の前記波形データの先頭との位相変化を連続とするための当該n−1回目の波形データと当該n回目の波形データとの位相差である基準位相差θ及び前記波形データの前記繰り返し出力回数nから位相シフト量φnを求める段階(S7)と、
前記デジタル−アナログ変換する段階の前に、前記繰り返し出力回数がn回目となる前記波形データを受けたときに前記位相シフト量φnだけ前記n回目の波形データの各サンプルデータの位相をシフトする段階(S10)とを備えたことを特徴とする信号発生方法。
【請求項10】
前記波形データに基づいて、前記基準位相差θを決定する段階(S3)を備えたことを特徴とする請求項9に記載の信号発生方法。
【請求項11】
前記基準位相差θを決定する段階は、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する段階(S23)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S24)とを有することを特徴とする請求項10に記載の信号発生方法。
【請求項12】
前記基準位相差θを決定する段階は、
前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する段階(S32)と、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する段階(S34)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S35)とを有することを特徴とする請求項10に記載の信号発生方法。
【請求項13】
先頭からM番目までのサンプルデータを生成するとともにM+1番目のサンプルデータの位相を取得する段階(S41)と、
この生成したM個のサンプルデータを用いて前記波形データを生成する段階(S42)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S44)とを備えたことを特徴とする請求項9に記載の信号発生方法。
【請求項1】
M個のサンプルデータから成るデジタルのベースバンド信号の波形データを記憶し、当該波形データを繰り返し連続して出力する波形データ記憶手段(20)と、
前記波形データをデジタル−アナログ変換するD/A変換手段(40)と、
このデジタル−アナログ変換されたベースバンド信号を所定の周波数のキャリア信号で周波数変換して、無線通信機器を試験するためのRFの試験信号として出力する周波数変換手段(60,70)とを備えた信号発生器において、
前記波形データ記憶手段からの繰り返し出力回数がn回目となる前記波形データを受けて、n−1回目の前記波形データの最後尾とn回目の前記波形データの先頭との位相変化を連続とするための当該n−1回目の波形データと当該n回目の波形データとの位相差である基準位相差θ及び前記繰り返し出力回数nから求めた位相シフト量φnだけ前記n回目の波形データの各サンプルデータの位相をシフトして前記D/A変換手段に出力する位相シフト手段(30)を備えたことを特徴とする信号発生器(10,11,12)。
【請求項2】
前記波形データ記憶手段に記憶された前記波形データに基づいて、前記基準位相差θを決定する基準位相差決定手段(23)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の信号発生器。
【請求項3】
前記基準位相差決定手段は、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有することを特徴とする請求項2に記載の信号発生器。
【請求項4】
前記基準位相差決定手段は、
前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する平均位相差算出手段(81)と、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有することを特徴とする請求項2に記載の信号発生器。
【請求項5】
請求項1に記載の信号発生器と、
前記波形データを生成して前記信号発生器に送出する波形データ生成装置(90)とを含み、
前記波形データ生成装置は、
前記波形データを生成する波形生成手段(92)と、
前記基準位相差θを決定する基準位相差決定手段(93)と、
前記波形データ及び前記基準位相差θを前記信号発生器に送出する波形送出手段(94)とを備えたことを特徴とする信号発生システム。
【請求項6】
前記基準位相差決定手段は、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有することを特徴とする請求項5に記載の信号発生システム。
【請求項7】
前記基準位相差決定手段は、
前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する平均位相差算出手段(81)と、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する位相推定手段(82)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)とを有することを特徴とする請求項5に記載の信号発生システム。
【請求項8】
前記波形生成手段は、先頭からM番目までのサンプルデータを生成するとともにM+1番目のサンプルデータの位相を取得して、この生成したM個のサンプルデータを用いて前記波形データを生成し、
前記基準位相差決定手段は、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する基準位相差算出手段(83)を有することを特徴とする請求項5に記載の信号発生システム。
【請求項9】
M個のサンプルデータから成るデジタルのベースバンド信号の波形データを繰り返し連続して出力する段階(S9)と、
前記波形データをデジタル−アナログ変換する段階(S11)と、
このデジタル−アナログ変換されたベースバンド信号を所定の周波数のキャリア信号で周波数変換して、無線通信機器を試験するためのRFの試験信号として出力する段階(S12)とを備えた信号発生方法において、
前記波形データの繰り返し出力回数がn回目であるときに、n−1回目の前記波形データの最後尾とn回目の前記波形データの先頭との位相変化を連続とするための当該n−1回目の波形データと当該n回目の波形データとの位相差である基準位相差θ及び前記波形データの前記繰り返し出力回数nから位相シフト量φnを求める段階(S7)と、
前記デジタル−アナログ変換する段階の前に、前記繰り返し出力回数がn回目となる前記波形データを受けたときに前記位相シフト量φnだけ前記n回目の波形データの各サンプルデータの位相をシフトする段階(S10)とを備えたことを特徴とする信号発生方法。
【請求項10】
前記波形データに基づいて、前記基準位相差θを決定する段階(S3)を備えたことを特徴とする請求項9に記載の信号発生方法。
【請求項11】
前記基準位相差θを決定する段階は、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相とM−1番目のサンプルデータの位相と基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する段階(S23)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S24)とを有することを特徴とする請求項10に記載の信号発生方法。
【請求項12】
前記基準位相差θを決定する段階は、
前記波形データの1サンプルデータあたりの平均位相差を算出する段階(S32)と、
前記波形データの先頭からM番目のサンプルデータの位相と前記平均位相差とに基づいてM+1番目のサンプルデータの位相を推定する段階(S34)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S35)とを有することを特徴とする請求項10に記載の信号発生方法。
【請求項13】
先頭からM番目までのサンプルデータを生成するとともにM+1番目のサンプルデータの位相を取得する段階(S41)と、
この生成したM個のサンプルデータを用いて前記波形データを生成する段階(S42)と、
前記波形データの先頭のサンプルデータの位相と前記M+1番目のサンプルデータの位相との差から前記基準位相差θを算出する段階(S44)とを備えたことを特徴とする請求項9に記載の信号発生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−129835(P2012−129835A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280082(P2010−280082)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
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