説明

修飾カルジオリピンおよびその使用法

【課題】抗リポイド抗体の検出のための組成物、方法、および装置、ならびに疾患、例えば、梅毒の診断。
【解決手段】具体的には、BSA、KLH、ビオチン、合成タンパク質MAPS、IgY、ストレプトアビジン、またはアビジンのような、種々の付着分子とコンジュゲートされうる、酸化カルジオリピンの使用。このような酸化カルジオリピンは、単独でまたは1つもしくは複数の付着分子と複合して、例えば、側方流動装置に使用される場合、被験体中の抗リポイド抗体を検出するのに有用である。また、抗リポイド抗体の検出を可能にするならびに生体サンプル中での非トレポネーマ抗体およびトレポネーマ抗体の同時検出を可能にする側方流動装置を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は修飾カルジオリピン組成物およびその使用に関し、具体的には、修飾カルジオリピンを固体支持体に固定化する方法、ならびに関連する免疫アッセイ(ELISAのような)および免疫アッセイ装置(試験ストリップ、流入(flow-through)装置、または側方流動装置のような)に関し、これらのアッセイおよび装置は、例えば、抗リポイド抗体の検出および/または疾患(梅毒のような)の診断に有用である。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年11月18日付で出願された米国特許仮出願第60/737,901号の恩典を主張するものであり、この出願はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
政府支援の承認
本発明は、米国政府の機関である疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)の国立HIV・STD・TB予防センター(the National Center for HTV, STD, and TB Prevention)、AIDS・STD・TB研究所の研究部(Division of AIDS, STD, and TB Laboratory Research)、参照研究所および研究部門(Laboratory Reference and Research Branch)によって行われた。
【背景技術】
【0004】
背景
梅毒は、スピロヘータ菌の梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)によって引き起こされる性感染症(STD)である。100,000件を超える症例の成人梅毒が毎年、世界中で報告されている。さらに、この疾患は先天的に伝染し、毎年、3000人またはそれ以上の幼児に影響を与えている。梅毒感染の経過は長年に及び、4つの病期によって特徴付けられる、種々の臨床所見をもたらす恐れがある。
【0005】
梅毒感染の第1期は細菌感染から10〜100日後に起こり、1つまたは複数の下疳(典型的には直径が1 cmに満たない赤く、無血の、無痛性潰瘍)の出現によって特徴付けられる。この下疳は性器または身体の他の部分に現れうる。下疳は3〜6週間存続し、治療なしで治癒し、小さな傷を残す。感染者はこの病期の間、接触伝染性である。
【0006】
梅毒感染の第2期は、身体の一部または全部を覆いうる発疹様の皮膚病変によって特徴付けられる。この皮膚病変は一般に無痛であり、初期の下疳の発症から1〜6ヶ月後に現れる。皮膚病変は疣贅、小膿疱または潰瘍に似うる。治療せずに放置されても、それらは瘢痕化せずに2〜12週間で治癒する。発熱、咽喉炎、衰弱、体重減少、リンパ節の腫脹、ならびにまつげおよび/またはまゆ毛の一部の消失が同様に、この感染期の間に起こりうる。さらに、その症候は髄膜血管性梅毒に進行することがあり、これは脳および脊髄を覆う髄膜の炎症ならびに/または脳血管系の変化によって特徴付けられる。感染者は同様に、第2相において接触伝染性である。
【0007】
この疾患の次の病期は、潜伏性梅毒または隠れた病期である。この病期の間に、感染者は回復しているようであり、無症候性である。この病期は、梅毒の治療を受けていない者のおよそ3分の2において終生続く。潜伏の最初の年に、第2期症候の再発が起こりうる。再発の間を除き、感染者はこの潜伏期の間に接触伝染性ではない; しかしながら、初期の下疳の出現から4年以内に潜伏感染した母親の子として生まれた子供は、先天性梅毒にかかっている恐れがある。
【0008】
第3期または後期梅毒は未治療の感染の最終期である。この病期は、早ければ感染後1年でまたはその後いつでも現れるかもしれないが、10〜20年が最も一般的である。ゴム腫と呼ばれる病変によって特徴付けられる良性梅毒が、骨、皮膚、および内部器官の中に生じることがある。死は稀であるが、重篤な変形および疼痛が起こりうる。心血管梅毒は、大動脈の動脈瘤および他の心血管障害によって特徴付けられ、死をもたらすことが多い。神経学的関与が後期症候として現れるだけでなく、梅毒の初期にも起こりうる。後期疾患においては、神経梅毒は無症候性でありうるか、または患者は認知症の可能性、精神病、運動障害、失明、難聴、もしくは場合により死のような、重篤な神経学的問題を抱えうる。
【0009】
梅毒における免疫反応は、(i) 梅毒トレポネーマ抗原に特異的な、トレポネーマ抗体、ならびに(ii) 損傷した宿主細胞から放出されるリポイド材料、リポタンパク質様の材料および場合によりトレポネーマから放出されるカルジオリピンを認識する、抗リポイド抗体の産生を伴う。梅毒のスクリーニングおよび診断の柱は、これらの2種の抗体の一方または両方に対する血清学的試験である。
【0010】
抗リポイド抗体の試験(「非トレポネーマ試験」と呼ばれることが多い)は、典型的には、天然のカルジオリピン、コレステロールおよびレシチンで構成される抗原に基づく。広く使用されている非トレポネーマ試験(例えば、性病研究室(VDRL)試験および急速血漿レアギン(RPR)試験)では、抗原-抗体複合体で構成される綿状塊の形成を微視的に(例えば、VDRL試験)または巨視的に(例えば、RPR試験)モニターする。非トレポネーマ試験は、広く利用可能で、安価でかつ多数の標本で行うのに好都合であるという利点がある。さらに、抗リポイド抗体の力価は梅毒治療の成功とともに減少し、大部分の患者では最終的に消失するのに対し、トレポネーマ抗体の力価は長期にわたってまたは場合により生涯にわたって高いままであるため、非トレポネーマ試験は、治療のモニターまたは再感染の試験に対するより良い選択であると考えられる。
【0011】
トレポネーマ試験は、梅毒トレポネーマに由来する抗原に基づいており、梅毒トレポネーマ粒子凝集(TP-PA)、蛍光トレポネーマ抗体吸収試験(FTA-ABS)および酵素免疫アッセイを含む。トレポネーマ試験は非トレポネーマ試験における反応性を検証するために主として使用されている。トレポネーマ試験は同様に、非トレポネーマ試験が非反応性である梅毒の臨床的印象を確認するために使用することができる。トレポネーマ試験は技術的にいっそう困難であり、時間がかかり、行うには費用がかかり、それにこの試験は、梅毒の治療に成功した者のおよそ85%において長期にわたりまたは生涯にわたり反応性のままであるものと思われるので、治療をモニターするために使用することができない。
【0012】
臨床現場で得られ、かつ分析のため検査室に送られる血清サンプルを用い、上記の抗体試験の各々は行われる。それ故に、試験結果は、通常、サンプルが集められてから数日後は入手することができない。STDを有する患者の追跡が難しいことが多いので、臨床医が、好ましくは試験当日に、判断を下すうえでの補助となるよう、迅速な、ポイントオブケア試験の開発が必要とされている。
【0013】
迅速な、現場での結果を供与する、免疫アッセイ装置(試験ストリップ、流入装置、または側方流動装置のような)は、トレポネーマ抗体の血清レベルを定性的に試験するのに利用可能である(例えば、DiaSys Corporation; ACON Laboratories, Inc.; Biokit, S.A.; Genix Technology; Standard Diagnostics; Cortez Diagnostics, Inc.; およびPhoenix Bio-Tech Corp)。しかしながら、抗リポイド抗体に対する類似の試験は、少なくとも一つには、抗リポイド抗体の疎水性抗原(例えば、カルジオリピン)が、免疫アッセイ装置の1つの要素である固体支持体への付着に抵抗するので、開発することがさらに困難であった。
【0014】
一部の専門家によれば、梅毒の検出は、スクリーニングおよび診断の目的で非トレポネーマ試験およびトレポネーマ試験の組み合わせによってさらに促進されるようである。これは、World Health Organization, Treponemal Infections, Technical Report Series 674, Geneva: WHO, 1982 (非特許文献1)が提唱する手法である。非トレポネーマ抗体もトレポネーマ抗体もともに同時に検出できる使いやすい、迅速な、ポイントオブケア試験は、この長年にわたる切実な要求に対処する手助けとなろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】World Health Organization, Treponemal Infections, Technical Report Series 674, Geneva: WHO, 1982
【発明の概要】
【0016】
概要
非トレポネーマ試験(または非トレポネーマおよびトレポネーマ試験の組み合わせ)に向けた非溶液系免疫アッセイを開発する努力は、カルジオリピンのような、抗リポイド抗体により特異的に認識される抗原を、ニトロセルロースストリップのような、固体基材に付着させることが困難であることにより頓挫してきた。カルジオリピン分子が非常に小さなサイズであるために、基材上での分子の局在性が不十分となっている。カルジオリピンの脂肪酸側鎖の非極性性もまた、分子に高い疎水性度を与え、カルジオリピンをニトロセルロースのような、極性表面に結合させることを困難にする。カルジオリピンをさらに大きな分子(タンパク質のような)にコンジュゲートさせることで、分子のサイズは増大されうるが、このようなコンジュゲーションはカルジオリピンの抗原性の消失をもたらした。
【0017】
本開示は抗リポイド抗体に対する抗原の抗原性および特異性を維持しながら、カルジオリピン(または本明細書に記述のように修飾されたカルジオリピンを含むリポイド抗原、ホスファチジルコリン(「レシチン」ともいわれる)、およびコレステロール)を固体基材(微孔性膜またはマルチウェルプレートのような)に確実に付着させるための手法を提供する。本明細書において記述されている方法を用いて、今後は、さまざまな固体支持体に付着できるカルジオリピン-付着分子複合体を作出することが可能である。このように免疫原性のカルジオリピン複合体を付着させる能力により、これをELISAのような、非溶液系ベースの免疫アッセイおよび非トレポネーマ抗体の迅速な、現場での試験用の免疫アッセイ装置に使用することが可能になる。ある種の態様において、開示される免疫アッセイ装置は同様に、梅毒トレポネーマにより認識されるトレポネーマ抗原を組み入れており、したがってこの装置は非トレポネーマ抗体もトレポネーマ抗体もともに都合良く同時に検出する。
【0018】
特定の一例を挙げれば、カルジオリピンの脂肪酸側鎖を、少なくとも1つの末端カルボキシル基を提供するように酸化し、これを今度は、固体支持体(マルチウェルプレートまたは側方流動ストリップの透過性基材のような)に容易に付着可能な(または既に付着された)ポリペプチド(BSAのような)に架橋する。
【0019】
前述のおよび他の特徴および利点は添付の図面に関連して進められる、以下のいくつかの態様の詳細な説明からいっそう明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】カルジオリピンの酸化の段階のデジタル画像を示す。(A) t-ブタノール中の未修飾カルジオリピン; (B) m-過ヨウ素酸ナトリウムおよび過マンガン酸カリウムの添加後のカルジオリピン反応混合物; (C) 亜硫酸水素ナトリウムの添加後のカルジオリピン反応混合物; ならびに(D) 混合物(C)の遠心分離後に得られた二相溶液、ここではカルジオリピンのいくつかの酸化形態が上側の、t-ブタノール相に主として見出される。
【図2】カルジオリピン調製物の薄層クロマトグラフのデジタル画像を示す。(A) t-ブタノール中の未修飾カルジオリピン(図1A参照); (B) 酸化カルジオリピン調製物; (D1) カルジオリピン酸化反応後の上側の、t-ブタノール相(図1D参照); および(D2) カルジオリピン酸化反応後の下側の、水相(図1D参照)。各サンプルの移動の方向は矢印で示されている。
【図3】4本の18炭素の、二不飽和脂肪酸鎖を含有する例示的なカルジオリピン分子の図示的な酸化反応を示す。図で示したカルジオリピン反応生成物は、1本または4本のいずれかの酸化された脂肪酸側鎖を有する。実際には、酸化反応生成物は同様に、脂肪酸鎖のいずれか2本または3本がカルボキシル基に酸化された酸化カルジオリピン種を含むであろう。
【図4】酸化カルジオリピンをタンパク質のような、アミン含有の付着分子に共有結合的に連結させるのに有用な図式的反応を示す。図で示した例では、付着分子はBSAである。
【図5】酸化カルジオリピン-BSAコンジュゲート(表2中の「調製物5」)の抗原性を決定するために使用されたドットブロットアッセイのデジタル画像を示す。
【図6】開示の方法で使用されうる側方流動装置の5つの異なる物理的態様のデジタル画像を示す。(A)、(B)および(E)に示されている装置の態様は、各々をサンプルまたはサンプル含有の溶液中に、浸すか、または部分的に沈めるかできるように構成されている。(C)および(D)に示されている装置の態様は、多量のサンプル(またはサンプル含有の溶液)をサンプル導入口の中に液滴で受けるように構成されている。
【図7】筐体の一部を切り欠いて、装置の基本的構成要素および互いとのその関係を示した、側方流動装置の物理的態様の斜視図である。
【図8】酸化カルジオリピン-レシチン混合物の薄層クロマトグラフのデジタル画像を示す。(A) t-ブタノール中の未修飾カルジオリピンおよび未修飾レシチンの混合物; (B) 酸化カルジオリピン/レシチン混合物; (C) カルジオリピン/レシチン混合物の酸化後の上側の、t-ブタノール相; ならびに(D) カルジオリピン/レシチン混合物の酸化後の下側の、水相。各サンプルの移動の方向は矢印で示されている。
【図9】4種の代表的な天然ホスファチジルコリン(レシチン)分子の化学構造を示す。L-α-ホスファチジルコリン(心臓、ウシ)の場合、分子式はC42H80NO8Pであり、分子量は758.07であり、分子量(同位体)は757.562157であり、および組成百分率はC 66.55% H 10.64% N 1.85% O 16.88% P 4.09%である。L-α-ホスファチジルコリン、プラズマロゲン(心臓、ウシ)の場合、分子式はC42H80NO7Pであり、分子量は742.07であり、分子量(同位体)は741.567242であり、および組成百分率はC 67.98% H 10.87% N 1.89% O 15.09% P 4.17%である。L-α-ホスファチジルコリン、エーテル(心臓、ウシ)の場合、分子式はC42H82NO7Pであり、分子量は744.09であり、分子量(同位体)は743.582893であり、および組成百分率はC 67.80% H 11.11% N 1.88% O 15.05% P 4.16%である。
【図10】6種の酸化カルジオリピン/レシチン-BSAまたは酸化カルジオリピン/レシチン-KLHコンジュゲートの抗原性を決定するために使用されたドットブロットアッセイのデジタル画像を示す。アッセイにおいて各ドットに適用されたそれぞれの抗原の量は、ブロット下の表に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
I. 導入
図3に示した通り、カルジオリピンは、脂肪酸側鎖を有する中央の免疫原性のグリセロール部分を含む。本明細書では、抗リポイド抗体と免疫反応性を示す中央のグリセロール部分の能力を保持しながら、基材への付着用のポリペプチドに連結できる酸化カルジオリピンを調製するための方法を開示する。開示の態様において、側鎖の1つまたは複数に末端カルボキシル基を提供するように、カルジオリピンの脂肪酸側鎖の少なくとも1つを酸化するために、カルジオリピンを過ヨウ素酸塩(m-過ヨウ素酸ナトリウムのような)および過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウムのような)と反応させ、その後、中央のグリセロール部分の免疫原性を保持するようカルジオリピンの酸化を停止するためにおよび中央のグリセロール部分に形成されたβ-ケトンをβ-ヒドロキシル基に還元するために還元剤(亜硫酸水素塩のような)を添加する。開示の態様において、カルジオリピンを過マンガン酸塩と反応させる前に、カルジオリピンを過ヨウ素酸塩と反応させる。特定の態様において、カルジオリピンとの酸化反応はアルゴン雰囲気下、アルコール溶媒中で行われる。適当なアルコール溶媒の例は、t-ブタノール、エタノール、プロパノール、もしくはメタノールの1つまたは複数である。m-過ヨウ素酸ナトリウムのカルジオリピンに対するモル比は約4:1〜約5:1であり、過マンガン酸カリウムのカルジオリピンに対するモル比は約0.5:1〜約1:1である。いくつかの例では、亜硫酸水素塩は亜硫酸水素ナトリウムである。
【0022】
酸化カルジオリピンのカルボキシル基を活性化して、ポリペプチド担体をカルボキシル基の少なくとも1つに共有結合的に付着させるためにそれらを調製することができる。カルボキシル基の活性化は、特定の例では、酸化カルジオリピンを1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のような、カルボジイミドおよびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)のようなスクシンイミドと反応させることで達成される。次いで、ポリペプチド(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、もしくはアビジン)、またはビオチンを活性化されたカルボキシル基の少なくとも1つに共有結合的に付着させる。
【0023】
本明細書において同様に開示されるのは抗リポイド抗体と免疫反応性を示す、かつ基材への付着用のポリペプチドに連結できる酸化カルジオリピンを調製するための方法である。このような方法は、カルジオリピンを酸化するために、および側鎖の1つまたは複数に末端カルボキシル基を提供するために、カルジオリピンをアルゴン雰囲気下、t-ブタノール溶媒中でm-過ヨウ素酸ナトリウムおよび過マンガン酸カリウムと反応させる段階を含む。次に、中央のグリセロール部分の免疫原性を保持するように、カルジオリピンの酸化を停止するために、および中央のグリセロール部分に形成されたβ-ケトンをβ-ヒドロキシル基に還元するために、水溶液中の亜硫酸水素ナトリウムをカルジオリピン懸濁液に添加する。次いで、酸化カルジオリピンの末端カルボキシル基を、EDCおよびその後NHSと酸化カルジオリピンを反応させることで活性化し、引き続いてタンパク質担体をカルボキシル基の少なくとも1つに共有結合的にコンジュゲートさせる。
【0024】
ポリペプチド担体にコンジュゲートされた酸化カルジオリピンを次いで、1つの用途では、カルジオリピン-ポリペプチドコンジュゲートをニトロセルロースストリップのような、側方流動基材に付着させることで側方流動クロマトグラフィー装置を作出するために使用することができる。ポリペプチドにコンジュゲートされたカルジオリピンを提供する能力により、カルジオリピンが固体基材に確実に付着可能となる。そのような基材はまた、梅毒トレポネーマに対する抗体と反応するトレポネーマ抗原を含むことができる。同じ固体支持体上(または中)のカルジオリピン-ポリペプチドコンジュゲートとトレポネーマ抗原の両方の存在により、同じ生体標本中の抗リポイド抗体と抗トレポネーマ抗体の両方に対する迅速な臨床試験が好都合に可能となる。
【0025】
本明細書において同様に開示されるのは、流体サンプル中の抗リポイド抗体の存在および/または量を決定するための免疫アッセイ装置(側方流動装置または流入装置のような)である。これらの装置は、典型的には、サンプル適用領域、および、コンジュゲートが移動相の抗リポイド抗体に特異的な結合親和性を有する、固定化されたカルジオリピン-ポリペプチドコンジュゲートが供与された、別個のカルジオリピン捕捉領域を含む。サンプル適用領域中に適用された任意の液体(流体の生体サンプルのような)は、サンプル適用領域からカルジオリピン捕捉領域までの流路に沿って流れる。この流路は、少なくとも一つには、液体貯留層として働く、免疫アッセイ装置に付随する下流の吸収性パッドへ続くことができる。抗リポイド抗体と固定化された酸化カルジオリピンとの間の複合体の形成が検出されて、流体サンプル中の抗リポイド抗体の存在および/または量を決定することができる。
【0026】
側方流動装置のいくつかの態様において、コンジュゲートパッドはサンプル適用領域からカルジオリピン捕捉領域までの流路に配される。コンジュゲートパッドは抗リポイド抗体に対する移動性または可動性の検知試薬を含み、したがってそのパッドを通る液体の流れが検知試薬をカルジオリピン捕捉領域に移す。検知試薬、抗リポイド抗体(分析物)、および固定化されたカルジオリピンを含む複合体の形成は、生体標本中の抗リポイド抗体の存在の可視的なまたは別の形で検出可能な指標となる。別の態様(側方流動装置または流入装置を含む)において、検知試薬はコンジュゲートパッドに供給されるのではなく、その代わりに例えば顕色剤(developer)容器から、基材またはサンプルに適用される。
【0027】
検知試薬の例としては、標識が酵素、コロイド金粒子、有色のラテックス粒子、タンパク質に吸着された銀粒子、タンパク質に吸着された鉄粒子、タンパク質に吸着された銅粒子、タンパク質に吸着されたセレン粒子、タンパク質に吸着された硫黄粒子、タンパク質に吸着されたテルル粒子、タンパク質に吸着された炭素粒子、もしくはタンパク質共役型のダイサック(dye sac)の1つまたは複数である、標識された酸化カルジオリピンまたは標識された抗ヒト抗体が挙げられる。
【0028】
ある種の免疫アッセイ装置の態様(側方流動装置または流入装置のような)では同様に、トレポネーマ捕捉領域をサンプル適用領域からの流路の中に含む。このようなトレポネーマ捕捉領域は、例えば、移動相の抗梅毒トレポネーマ抗体に特異的な結合親和性を有する固定化されたトレポネーマ抗原または移動相の梅毒トレポネーマ生物もしくは梅毒トレポネーマ抗原に特異的な結合親和性を有する固定化された抗梅毒トレポネーマ抗体を含むことができる。側方流動装置は同様に、コンジュゲートパッドの中にトレポネーマ抗体または抗原に特異的な移動性または可動性の検知試薬を有することができる。トレポネーマ抗体または抗原に対する検知試薬は、抗リポイド抗体に対する検知試薬と同じまたは異なるパッドの中にあってもよい。特定の態様において、抗梅毒トレポネーマ抗体に特異的な検知試薬は、標識(例えば、金コンジュゲート)プロテインA、標識(例えば、金コンジュゲート)プロテインG、または標識(例えば、金コンジュゲート)抗ヒト抗体を含む。他の態様において、移動性のトレポネーマ抗原に対する検知試薬は、標識された(例えば、金コンジュゲートされた)抗トレポネーマ抗原抗体でありうる。
【0029】
開示される免疫アッセイ装置は、装置への生体サンプルの適用、および捕捉領域中での抗リポイド抗体と、酸化カルジオリピンと、検知試薬との間の複合体の形成の検出による、被験体由来の生体サンプルの分析により被験体において梅毒を診断するための方法に使用することができる。捕捉領域中での複合体の形成の検出によって、梅毒感染と関連する抗リポイド抗体が検出される。装置がサンプル適用領域からカルジオリピン捕捉領域までの流路の中にコンジュゲートパッドを含む態様において、検出される複合体は移動性または可動性の検知試薬を含む。検知試薬が外部供給源から装置に適用される他の態様において、検出される複合体は外部から適用された検知薬を含む。
【0030】
方法の特に有利な態様において、側方流動装置は、抗リポイド抗体(活動性感染の指標である)も抗トレポネーマ抗体(非トレポネーマ試験の反応性を検証する)もともに検出することができる。トレポネーマ抗原を含む装置の態様において、この方法は捕捉領域中での抗梅毒トレポネーマ抗体と、固定化されたトレポネーマ抗原と、検知試薬との間の複合体の形成を検出する段階を含む。カルジオリピンに使用される検知試薬と同様に、トレポネーマ抗原に対する検知試薬は装置に備えられてもまたは外部供給源から適用されてもよい。
【0031】
本明細書において同様に開示されるのは、梅毒の診断用のキットである。これらのキットは、開示の免疫アッセイ装置および生体サンプルをサンプル適用領域または装置に適用するための使用説明書を含む。このキットは同様に、試験の結果を解釈するための使用説明書を含むことができる。
【0032】
開示される免疫アッセイ装置は同様に、装置への生体サンプルの適用、および捕捉領域中での抗リポイド抗体と、酸化カルジオリピンと、検知試薬との間の複合体の形成の検出による、被験体由来の生体サンプルの分析により被験体において狼瘡を診断するための方法に使用することができる。捕捉領域中での複合体の形成の検出によって、狼瘡と関連する抗リポイド抗体が検出される。場合によっては、1つまたは複数の補因子(β2-糖タンパク質Iのような)が狼瘡の検出のために存在する(例えば、サンプルに添加される)。
【0033】
II. 略語および用語
BSA ウシ血清アルブミン
EDC 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ELISA 酵素連結免疫吸着アッセイ
HPLC 高圧液体クロマトグラフ
KLH キーホールリンペットヘモシアニン
LFD 側方流動装置
MES N-モルホリノエタンスルホン酸
NHS N-ヒドロキシスルホスクシンイミド
NMR 核磁気共鳴
PEG ポリエチレングリコール
PVA ポリビニルアルコール
PVP ポリビニルピロリドン
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0034】
特に断りのない限り、技術用語は慣例的用法にしたがって使用される。分子生物学における共通用語の定義は、Oxford University Pressが刊行しているBenjamin Lewin, Genes V, 1994 (ISBN 0-19-854287-9); Blackwell Science Ltd.が刊行しているKendrew et al. (編), The Encyclopedia of Molecular Biology, 1994 (ISBN 0-632-02182-9); およびVCH Publishers, Inc.が刊行しているRobert A. Meyers (編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, 1995 (ISBN 1-56081-569-8)のなかで見出すことができる。
【0035】
本発明のさまざまな態様の検討を助けるために、特定の用語に関する以下の説明を示す。
【0036】
カルボキシル基の活性化:
カルボキシル基の活性化とはO-尿素誘導体などの、求核試薬反応性誘導体を形成するための、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)のような、薬剤によるカルボキシル基の反応をいう。求核試薬反応性誘導体は求核試薬と容易に反応し、(i) アルコール基とのエーテル連結、(ii) 酸およびアルコールまたはフェノールとのエーテル連結、ならびに(iii) 酸およびアミンとのペプチド結合を形成するよう使用することができる。
【0037】
1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-hydroxbenzotriazole)、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド、およびN-ヒドロキシ-5-ノルベン-エンド-2,3-ジカルボキサミドのような、触媒性の補助求核試薬を使用してカルボジイミドを介したカルボキシル基の活性化を補助し、ラセミ化を含め、起こりうる副反応を減らすこと、および活性エステルを用いる場合には反応速度を高めることができる。
【0038】
例えば、酸化カルジオリピンの1つまたは複数の脂肪酸側鎖の末端カルボキシル基を1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドとの反応により、場合によっては、引き続きN-ヒドロキシスクシンイミドのような、触媒性の補助求核試薬との反応により活性化することができる。
【0039】
分析物:
本明細書において記述されているカルジオリピンの態様に特異的に結合できる、検出または測定しようとされる、原子、分子、分子群、または天然もしくは合成起源の化合物(例えば、薬物、ホルモン、酵素、増殖因子抗原、抗体、ハプテン、レクチン、アポタンパク質、補因子)。分析物は抗体、薬物、ホルモン、抗原、ハプテン、レクチン、アポタンパク質、または補因子を含むことができるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、分析物は、梅毒トレポネーマによる感染に反応して産生される、抗リポイド抗体または抗カルジオリピン抗体のような、抗体を含む。他の態様において、分析物は、(i) 狼瘡のような、自己免疫疾患、(ii) 脳梗塞を含む、さまざまな静脈および動脈血栓障害、(iii) 深部静脈血栓症、(iv) 血小板減少症、(v) 肺塞栓症、または(vi) 胎盤梗塞による再発性胎児喪失のいずれかに反応して産生される抗リポイド抗体を含む。
【0040】
抗体:
免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はκまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、δ、またはεに分類され、これらが免疫グロブリンのクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを、それぞれ規定する。
【0041】
基本的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は一般に、四量体である。各四量体は同じ2対のポリペプチド鎖で構成されており、各対は1本の「軽」鎖(約25 kD)および1対の「重」鎖(約50〜70 kD)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。「可変軽鎖」(VL)および「可変重鎖」(VH)という用語は、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖をいう。
【0042】
抗体は、免疫系に提示される抗原に反応して植物および動物において天然に産生される。天然に産生される抗体は、例えば、動物の血清中に見出すことができる。例えば、梅毒トレポネーマに感染した人は、少なくとも梅毒トレポネーマ抗原に対して抗体を産生し、およびトレポネーマ感染から、例えば、感染によって損傷を受けた宿主細胞から生じるリポイド材料に対して抗体(すなわち、抗リポイド抗体)を産生しうる。
【0043】
抗体は完全な免疫グロブリンとして、またはさまざまなペプチダーゼでの消化によりもしくは組換えDNA法により産生されるいくつかの十分に特徴付けられた断片として存在しうる。例えば、ペプシンは抗体を蝶番領域中のジスルフィド連結の下で消化してF(ab)'2、つまりそれ自体がジスルフィド結合によりVH-CH1に連結された軽鎖であるFabの二量体を産生する。F(ab)'2を穏和な条件下で還元して、蝶番領域中のジスルフィド連結を切断し、それによってF(ab)'2二量体をFab'単量体に変換することができる。Fab'単量体は本質的に、蝶番領域の一部分を有するFabである(Fundamental Immunology, W. E. Paul, ed., Raven Press, N.Y., 1993を参照のこと)。ある種の抗体断片は完全な抗体の消化によって定義されるが、Fab'断片または他の抗体断片は化学的にまたは組換えDNA法の利用により新たに合成できることを理解されたい。このように、本明細書において用いられる抗体という用語は同様に、抗体全体の修飾により産生されるかまたは組換えDNA法により新たに合成されるかのいずれかの抗体断片を含む。
【0044】
本明細書において開示される方法および装置のいくつかの態様で用いられる抗リポイド抗体は、任意の由来のものであってもよいが、ほとんどの場合、被験体の血清中に見出されると考えられる。
【0045】
抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであってよい。単に例として、モノクローナル抗体はKohlerおよびMilsteinの古典的方法(Nature 256 :495-497, 1975)またはその派生的方法にしたがってマウスハイブリドーマから調製することができる。手短に言えば、2〜3週間にわたってマウスに、選択された分析物化合物(またはその断片) 2〜3 μgを繰り返し接種する。場合によっては、動物系における分析物の免疫原性および/または安定性を増大するためにアジュバントまたは担体分子を使用することが有益である。次いで、マウスを殺処理し、脾臓の抗体産生細胞を単離する。脾臓細胞をポリエチレングリコールによってマウス骨髄腫細胞と融合し、過剰の未融合細胞をアミノプテリンの入った選択培地(HAT培地)での系の増殖によって破壊する。成功裏に融合された細胞を希釈し、希釈物の一定分量をマイクロタイタープレートのウェルに入れ、そこで培養物の増殖を継続する。抗体産生クローンを、もともとはEngvall (Meth. Enzymol. 70:419-439, 1980)によって記述されている、ELISAのような、免疫アッセイ手順、およびその派生的方法によりウェルの上清液中の抗体の検出によって同定する。選択された陽性クローンを増殖させ、そのモノクローナル抗体産物を使用のため収集してもよい。モノクローナル抗体の産生のための詳細な手順はHarlowおよびLane (Antibodies, A Laboratory Manual, CSHL, New York, 1988)に記述されている。
【0046】
抗原:
動物の中に注射または吸収される組成物を含む、動物中での抗体の産生またはT細胞応答を刺激できる、化学的もしくは生化学的な化合物、組成物、構造物、決定基、抗原またはその一部分。抗原は、異種の免疫原によって誘導されるものを含めて、特定の体液性または細胞性免疫の産物と反応する。「抗原」という用語は、関連する全ての抗原エピトープを含む。
【0047】
抗リポイド抗体:
感染のような、疾患状態において存在するリポイド抗原に反応して被験体(ヒトのような)の免疫系により産生される(IgMまたはIgGのような)抗体。例えば、この用語は、梅毒トレポネーマ感染の結果として宿主細胞から放出されるリポイド材料、およびリポタンパク質様材料、場合によりトレポネーマから放出されるカルジオリピンに反応して産生される抗リポイド抗体を企図する。抗リポイド抗体は同様に、例えば(i) 狼瘡のような、自己免疫疾患(Harris et al., Clin. Rheum. Dis., 11:591-609, 1985)、(ii) 脳梗塞を含む、さまざまな静脈および動脈血栓障害(Harris et al., Clin. Exp. Rheumatol., 2:47-51, 1984)、(iii) 深部静脈血栓症(Mueh et al., Ann. Intern. Med., 92: 156-159, 1980)、(iv) 血小板減少症(Harris et al., Clin. Rheum. Dis., 11:591-609, 1985)、(v) 肺塞栓症(Anderson and Ali, Ann. Rheum. Dis., 43:760-763, 1984)、または(vi) 胎盤梗塞による再発性胎児喪失(Derue et al., J. Obstet. Gynaecol., 5:207-209, 1985)を含む、リポイド抗原が同様に存在するトレポネーマ以外の疾患に反応して産生されることもある。
【0048】
カルジオリピンは梅毒トレポネーマによる感染のような、疾患状態に反応して形成される抗リポイド抗体の、よく知られた特異的結合パートナーの1つである。天然のカルジオリピンが、例えば梅毒トレポネーマ感染患者の血清中の、抗リポイド抗体を検出するために、凝集試験において、多くの場合にはコレステロールおよびレシチンとの組み合わせで、伝統的に使用されている。
【0049】
アルゴン雰囲気:
化学反応を行う目的で作出される、アルゴンガスを実質的に含む雰囲気。アルゴン雰囲気は、反応容器にアルゴンガスを勢いよく流して、容器内にその時に存在している雰囲気を追いやり、その後、アルゴンガスを実質的に含む反応容器内の雰囲気を維持するのに十分なアルゴンガス流を維持することにより、化学反応を行うのに有用な任意の密閉容器中に作り出すことができる。雰囲気が少なくとも約25%アルゴン、少なくとも約30%アルゴン、少なくとも約40%アルゴン、少なくとも約50%アルゴン、少なくとも約60%アルゴン、少なくとも約70%アルゴン、少なくとも約75%アルゴン、少なくとも約80%アルゴン、少なくとも約85%アルゴン、少なくとも約90%アルゴン、少なくとも約92%アルゴン、少なくとも約95%アルゴン、少なくとも約98%アルゴン、または少なくとも約99%アルゴンである場合、雰囲気はアルゴンガスを実質的に含む。
【0050】
付着分子またはタンパク質:
固体支持体へのカルジオリピンの付着を促すために本明細書に記述のカルジオリピンに直接的にまたは間接的に連結されうる任意のポリペプチドまたは他の分子(例えば、原子、分子、分子群、タンパク質、重合体、または天然もしくは合成起源の化合物)。いくつかの態様において、付着分子とカルジオリピンとの間の連結は、酸化カルジオリピン中のカルボキシル基を介して形成され、および/または任意で連結基を利用してもよい。
【0051】
適当な付着分子はアルブミン、ヘモシアニン、チログロブリンおよびその誘導体、特にウシ血清アルブミン(BSA)、合成タンパク質MAPS、IgY、ストレプトアビジン、アビジン、ならびにキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のようなポリペプチド、タンパク質、またはペプチドを含むが、これらに限定されるものではない。他のポリペプチド由来のまたは非タンパク質由来の物質は、当業者に公知である。付着分子は典型的には、少なくとも50,000ダルトンの分子量、好ましくは60,000ダルトンを超える分子量を有する。付着分子は、酸化カルジオリピンへの共有結合性コンジュゲーションを促すために反応基を含有することが多い。アミノ酸のアミン基はこのように使用されることが多い。このような基を欠いた付着分子は、多くの場合、それらを生成させるよう適切な化学物質と反応させることができる。
【0052】
結合親和性:
分子上の部位でのある分子の別の分子への結合の強さをいう用語。特定の分子が別の特定の分子に結合するかまたは特異的に結び付くなら、これらの2つの分子は互いに結合親和性を示すといわれる。結合親和性は分子対の結合定数および解離定数に関連するが、これらの定数が測定または決定されることは本発明にとって決定的に重要ではない。むしろ、記述の方法および装置の分子間の相互作用を記述するよう本明細書において用いられる親和性とは、広く、実証的研究のなかで観察される見掛けの親和性(特別の定めのない限り)であり、これはある分子(例えば、抗体または他の特異的な結合パートナー)が他の2つの分子(例えば、分析物および分析物追跡子コンジュゲート)に結合する相対強度を比較するために使用することができる。結合親和性、結合定数、および解離定数の概念は周知である。
【0053】
結合ドメイン:
リガンドに結合する受容体の部分と関連する分子構造。より詳しくは、結合ドメインは天然のもしくは合成の、ポリペプチド、またはこのようなポリペプチドをコードする核酸であって、単独でまたは他のドメインとの組み合わせでのいずれかで、所望のリガンド/受容体の結合対のものと同じまたは類似の結合特性を示す、タンパク質の特異的(結合ドメイン)領域に相当するポリペプチドのアミノ酸配列をいうことができる。結合活性が示される限り、そのようなドメインの特異的配列も特異的境界も決定的に重要ではない。同様に、このような文脈のなかで用いられる場合、結合特性は一連の親和性、結合力および特異性、ならびにそれらの組み合わせを、結合活性が示される限り、必然的に含む。
【0054】
生体サンプル:
全血、血漿、血清、涙液、粘液、唾液、尿、胸膜液、脊髄液、胃液、汗、精液、膣分泌液、喀痰、潰瘍および/もしくはその他表面の発疹、疱疹、膿瘍由来の流体、ならびに/または組織、細胞もしくは臓器の抽出物を含む、被験体から直接的にまたは間接的に得ることができる任意のサンプル。生体サンプルは同様に、細胞培養上清のような研究室での研究サンプルであってもよい。サンプルは当業者に周知の方法を用いて集められるかまたは得られる。
【0055】
カルボジイミド:
構造R1-N=C=N-R2の化合物、ここでR1およびR2は独立に水素またはヒドロカルビル基である。具体例としてはHN=C=NH、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド; N,N'-ジシクロヘキシル-カルボジイミド; およびジイソプロピルカルボジイミドが挙げられる。
【0056】
カルジオリピン:
天然のカルジオリピンと、天然のカルジオリピンに対する構造的類似性を有し、かつ抗リポイド抗体に特異的に結合できる任意の修飾カルジオリピンの両方を含む。
【0057】
カルジオリピン捕捉領域:
カルジオリピンが捕捉試薬として固定化される捕捉領域。
【0058】
捕捉試薬:
(i) サンドイッチアッセイなどで、分析物に、または(ii) 競合アッセイなどで、検知試薬もしくは分析物に、あるいは(iii) 間接的アッセイなどで、分析物にそれ自体が特異的である、補助的な特異的結合パートナーに、特異的である未標識の特異的結合パートナー。本明細書において用いられる「補助的な特異的結合パートナー」は、分析物の特異的結合パートナーに結合する特異的結合パートナーである。例えば、補助的な特異的結合パートナーは別の抗体に特異的な抗体、例えば、ヤギ抗ヒト抗体を含むことができる。「捕捉領域」は、捕捉試薬が固定化される側方流動装置の領域である。側方流動装置は複数の捕捉領域、例えば、「第1の捕捉領域」、「第2の捕捉領域」などを有することができる。多くの場合、異なる捕捉試薬が第1の、第2の、またはその他の捕捉領域に固定化されうる。複数の捕捉領域が側方流動基材上で互いに対して任意の配向性を持っていてもよく; 例えば、第1の捕捉領域が第2の(またはその他の)捕捉領域の遠位または近位であってもよく、その逆もまたしかりである。あるいは、第1の捕捉領域および第2の(またはその他の)捕捉領域は、2つ(またはそれ以上)の捕捉領域が十字もしくはプラス記号または他のシンボルを形成するように互いに垂直に配向されてもよい。
【0059】
コンジュゲート:
動詞の形態で用いられる場合、「コンジュゲート」という用語は、ある分子(例えば、酸化カルジオリピン)の別の分子(例えば、タンパク質)への共有結合性カップリングを意味する。そのようなカップリングは化学的手段により、場合によっては連結基を用いて達成することができる。名詞の形態で用いられる場合、「コンジュゲート」という用語は、コンジュゲーションによって形成されるカップリングされた分子複合体を意味する。
【0060】
検出するまたは検出:
調査中の分析物(例えば、抗リポイド抗体および/または抗梅毒トレポネーマ抗体)の存在を定量的にまたは定量的に測定することをいう。「複合体の形成を検出する」とは、検知試薬に付随する特定の標識を観察するのに適した任意の方法; 例えば、有色の(もしくは別の方法で可視的な)標識の視覚的観察、蛍光標識、化学発光標識もしくは放射性標識の測定または視覚的検出により検知試薬を含んだ複合体を検出することをいう。
【0061】
検知試薬(または検出試薬):
標識にコンジュゲートされている特異的結合パートナー。検知試薬は、例えば、標識された分析物特異的結合メンバー(金コンジュゲートの酸化カルジオリピン-付着分子複合体のような)、または標識された補助的な特異的結合メンバー(酵素コンジュゲートのヤギ抗ヒト抗体のような)を含む。
【0062】
エピトープ(または抗原決定基):
単一の抗体分子が結合する抗原分子の表面上の部位; 一般に抗原はいくつかのまたは多くの異なる抗原決定基を有し、多くの異なる特異性の抗体と反応する。
【0063】
免疫原性:
生物体内の免疫反応を惹起することができる特性。例えば、抗リポイド抗体が、酸化カルジオリピンに存在するエピトープに結合する能力を有する場合、酸化カルジオリピンは免疫原性を保持する。
【0064】
標識:
分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出可能な、分析物、分析物類似体、検知試薬、もしくは結合パートナーに結合される任意の分子または組成物。酵素、コロイド金粒子、有色のラテックス粒子を含めて、標識の例が開示されている(それぞれが参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,275,149号; 同第4,313,734号; 同第4,373,932号; および同第4,954,452号)。有用な標識のさらなる例としては、限定されるものではないが、放射性同位体、補因子、リガンド、化学発光剤または蛍光剤、タンパク質に吸着された銀粒子、タンパク質に吸着された鉄粒子、タンパク質に吸着された銅粒子、タンパク質に吸着されたセレン粒子、タンパク質に吸着された硫黄粒子、タンパク質に吸着されたテルル粒子、タンパク質に吸着された炭素粒子、およびタンパク質共役型のダイサックが挙げられる。標識への化合物(例えば、検知試薬)の付着は、キレートなどにおけるのと同様に、共有結合、吸着過程、疎水結合および/もしくは静電結合、またはこれらの結合および相互作用の組み合わせを通じてであってもよく、ならびに/あるいは連結基を含んでもよい。
【0065】
側方流動装置:
側方流動クロマトグラフィーにおいて使用される試験ストリップの形態の分析装置であり、分析物を含有する疑いのある試験サンプルの流体はこのストリップ(紙、ニトロセルロース、およびセルロースのような吸湿性材料で作られていることが多い)を通って流れる(例えば、毛細管作用により)。試験流体および任意の懸濁分析物は、ストリップに沿って検出域に流れることができ、そこで分析物(存在する場合)が検出剤と相互作用して、分析物の存在、非存在および/または量を示す。
【0066】
多数の側方流動分析装置が開示されており、各々が参照により組み入れられる米国特許第4,313,734号; 同第4,435,504号; 同第4,775,636号; 同第4,703,017号; 同第4,740,468号; 同第4,806,311号; 同第4,806,312号; 同第4,861,711号; 同第4,855,240号; 同第4,857,453号; 同第4,943,522号; 同第4,945,042号; 同第4,496,654号; 同第5,001,049号; 同第5,075,078号; 同第5,126,241号; 同第5,451,504号; 同第5,424,193号; 同第5,712,172号; 同第6,555,390号; および同第6,368,876号; 欧州特許第0810436号; ならびに国際公開公報第92/12428号(WO92/12428); 国際公開公報第94/01775号; 国際公開公報第95/16207号; および国際公開公報第97/06439号に示されているものを含む。
【0067】
多くの側方流動装置は1段階の側方流動アッセイであり、この場合には、生体液を吸湿性ストリップ(とはいえ、非吸湿性材料を使用し、および界面活性剤を材料に適用することで吸湿性にしてもよい)上のサンプル領域の中に入れて、その液体中の分析物と相互作用する特異的結合パートナーと、液体が接触するまでストリップに沿って移動させる。分析物が結合パートナーと相互作用したら、シグナル(蛍光色素または別の方法で可視的な色素のような)によって、相互作用が起きたことが示唆される。複数の別個の結合パートナーをストリップ上に(例えば、並行線で)配して、液体中の複数の分析物を検出することができる。試験ストリップは対照の指標を組み入れてもよく、これによって、分析物の存在(または非存在)を示す陽性のシグナルがストリップ上に見られなくても、試験が十分に行われたということのシグナルが得られる。
【0068】
レシチン(別名ホスファチジルコリン):
レシチンはホスファチジルコリンの一般名である。ホスファチジルコリンはグリセロリン脂質であり、これは、通常、動物および植物において最も豊富なリン脂質である。それは膜二重層の重要な構成単位であり、血漿中を循環する主要なリン脂質でもある。ホスファチジルコリンは強酸から強アルカリまでのpH領域にわたって中性のまたは両性イオン性のリン脂質である。ホスファチジルコリンは2つの脂肪酸側鎖を含有し、これは可変の化学構造を天然においておよび合成により修飾されて有することができる。4つの代表的な天然ホスファチジルコリン分子の化学構造を図9に示す。
【0069】
本明細書において用いられる「レシチン」という用語は、天然のレシチンも天然のレシチンに構造的類似性を有する任意の修飾合成レシチンもともに含む。例えば、合成レシチンの脂肪酸は以下を含むことができる。

【0070】
連結基:
2つの化合物、例えば、化合物と標識(例えば、分析物と標識)との間の化学的アーム。必要な化学構造を達成するためには、反応体の各々が反応基を含まなければならない。そのような基の代表的な組み合わせは、アミド連結を形成するようカルボキシルとともにアミノ; エステル連結を形成するようヒドロキシとともにカルボキシもしくはアルキルアミノを形成するようハロゲン化アルキルとともにアミノ; ジスルフィドを形成するようチオールとともにチオール; またはチオエーテルを形成するようマレイミドもしくはハロゲン化アルキルとともにチオールである。ヒドロキシル、カルボキシル、アミノおよび他の官能基は、天然の化合物に存在していない場合、公知の方法により導入することができる。
【0071】
同様に、多種多様の連結基を利用することができる。連結の構造は、2つの化合物を互いに(例えば、分析物に標識を)付着させるために形成される安定な共有結合性の連結とすべきである。場合によっては、連結基は、例えば修飾リガンドおよびその同族受容体の、所望の結合特性を増強するために親水性または疎水性のいずれかであるようデザインされてもよい。共有結合性の連結は、連結化合物が供される溶液条件に対して安定であるべきである。連結基の例は1〜20個の炭素および0〜10個のヘテロ原子(NH、O、S)であり、分枝鎖でも直鎖でもよい。上記を制限するものではないが、化学的に適合性のある原子の組み合わせだけが連結基を構成することは明らかである。例えば、炭素間結合との組み合わせでのアミド、エステル、チオエーテル、チオールエステル、ケト、ヒドロキシル、カルボキシル、エーテル基は、化学的に適合性のある連結基の特定の例である。
【0072】
動作可能なまたは連続的な接触:
2つの固体成分は、水性液体が毛管現象または別のやり方で、実質的に途切れることなく2つの成分の一方からもう一方に流れうる様式で、それらの成分が直接的にまたは間接的に接触している場合、動作可能に接触している。直接的なまたは連続的な接触は、2つの要素が、例えば端と端または前と後など、物理的に接触していることを意味する。2つの成分が直接的に接触している場合、それらは約0.5 mm〜約3 mmの重なりで重なり合うことができる。しかしながら、これらの成分は端を接して配されてもよい。「間接的な接触」は、2つの要素が物理的に接触していないが、1つまたは複数の導体で架橋されていることを意味する。動作可能な接触は「流体伝導性の」または「流体連続的な」接触ということもできる。
【0073】
酸化カルジオリピン(または修飾カルジオリピン):
本明細書において記述されるように化学的に修飾されているカルジオリピン。例えば、酸化カルジオリピンは、非酸化カルジオリピンにおける4つの脂肪酸鎖のうちの少なくとも1つが末端カルボキシル基を生ずるよう酸化的に開裂されている、化学的に関連する分子の混合群である。いくつかの態様において、酸化カルジオリピンは図3に示される化学構造を有する。
【0074】
還元剤:
カルジオリピンの酸化から生じるβ-ケトン基を脂肪酸エステル基および/またはリン酸エステルのような、他の酸化カルジオリピン官能基の実質的な分解をもたらすことなく、対応するβ-ヒドロキシルに還元する任意の還元剤。当業者は適当な還元剤を、例えばLarock, Comprehensive Organic Transformations, 2nd Edition, New York: John Wiley & Sons, 1999により教示されているものから選択することができる。還元剤の特定の例としては、亜硫酸水素ナトリウム、硫化ジメチル、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH(OAc)3)、モルホリンボラン、トリイソプロポキシ水素化ホウ素カリウム、t-ブチルアミンボラン、ジメチルアミンボラン、ピリジンボラン、トリエチルアミンボラン、トリメチルアミンボランが挙げられる。
【0075】
サンプル適用領域:
流体サンプルが、側方流動装置中に存在する免疫クロマトグラフィーの試験ストリップのような、免疫クロマトグラフィーの試験ストリップに導入される領域。一例を挙げれば、サンプルをスポイト(dropper)または他のアプリケーター(applicator)を用いてのように、外的適用によってサンプル適用領域に導入することができる。もう一例を挙げれば、試験ストリップが、例えばサンプルを保持する容器の中に浸される場合など、サンプル適用領域をサンプル中に直接沈めることができる。もう一例を挙げれば、サンプルをサンプル適用領域上に注ぐまたは滲出させることができる。
【0076】
固体支持体(または基材):
不溶性であるか、または後続の反応によって不溶性にされうる任意の材料。多数のおよびさまざまな固体支持体が当業者に公知であり、限定されるものではないが、ニトロセルロース、反応トレイのウェルの壁、マルチウェルプレート、試験管、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズ、膜、微粒子(ラテックス粒子のような)、およびヒツジ(または他の動物)赤血球を含む。検知試薬による接近を可能とするのに十分な多孔性、および捕捉試薬(例えば、酸化カルジオリピンまたは酸化カルジオリピン-付着分子複合体)を固定化するのに適した表面親和性を有する任意の適当な多孔性材料が、この用語により企図される。例えば、ニトロセルロースの多孔性構造は、多種多様の試薬、例えば、捕捉試薬に対し優れた吸収性および吸着性を有する。ナイロンは類似の特性を保有しており、同様に適当である。水和した状態でゲル構造を有する材料のような、微孔性構造物は、有用である。
【0077】
有用な固体支持体のさらなる例としては、天然高分子炭水化物およびその合成的に修飾、架橋または置換された誘導体、例えば寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換および架橋されたグアールガム、セルロースエステル、特に硝酸およびカルボン酸とのエステル、混合セルロースエステル、ならびにセルロースエーテル; 架橋または修飾されたゼラチンを含め、タンパク質および誘導体のような、窒素を含有する天然重合体; ラテックスおよびゴムのような、天然の炭化水素重合体; 適当な多孔性構造を有するように調製されうる合成重合体、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルおよびその部分的に加水分解された誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレートを含む、ビニル重合体、上記の縮合重合体の共重合体および三元重合体、例えばポリエステル、ポリアミド、ならびに他の重合体、例えばポリウレタンまたはポリエポキシド; アルカリ土類金属およびマグネシウムの硫酸塩または炭酸塩、例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルカリのケイ酸塩ならびにアルカリ土類金属、アルミニウムおよびマグネシウムのような多孔性無機材料; およびアルミニウムまたはシリコンの酸化物または水和物、例えば粘土、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲル、またはガラス(これらの材料は上記の共重合体材料とともにフィルタとして使用することができる); ならびに上記のクラスの混合物および共重合体、例えば既存の天然重合体上で合成重合体の重合を開始させることにより得られるグラフト共重合体が挙げられる。
【0078】
以上に記述した、ニトロセルロースのような、多孔性の固体支持体はシートまたはストリップの形態であるのが好ましいと企図される。このようなシートまたはストリップの厚さは、幅広い範囲のなかで、例えば、約0.01から0.5 mmまで、約0.02から0.45 mmまで、約0.05から0.3 mmまで、約0.075から0.25 mmまで、約0.1から0.2 mmまで、または約0.11から0.15 mmまで変化しうる。このようなシートまたはストリップの孔径は同様に、幅広い範囲のなかで、例えば、約0.025から15ミクロンまで、またはより具体的には約0.1から3ミクロンまで変化しうる; しかしながら、孔径は固体支持体の選択における制限因子であると意図されない。適用される場合、固体支持体の流速は同様に、幅広い範囲のなかで、例えば、約12.5から90秒/cm (すなわち、50から300秒/4 cm)まで、約22.5から62.5秒/cm (すなわち、90から250秒/4 cm)まで、約25から62.5秒/cm (すなわち、100から250秒/4 cm)まで、約37.5から62.5秒/cm (すなわち、150から250秒/4 cm)まで、または約50から62.5秒/cm (すなわち、200から250秒/4 cm)まで変化しうる。本明細書において記述されている装置の具体的な態様において、流速は約62.5秒/cm (すなわち、250秒/4 cm)である。本明細書において記述されている装置の他の具体的な態様において、流速は約37.5秒/cm (すなわち、150秒/4 cm)である。
【0079】
固体支持体の表面は、支持体への作用物質(例えば、捕捉試薬)の共有結合性の連結を引き起こす化学的過程によって活性化することができる。しかしながら、限定されるものではないが、イオン相互作用、疎水性相互作用、共有結合性相互作用などを含めて、その他任意の適当な方法を、固体支持体に作用物質(例えば、捕捉試薬)を固定化するのに使用することができる。固相上での作用物質の固定化をもたらす特定の力は、本明細書において記述されている方法および装置にとって重要ではない。
【0080】
固相は捕捉試薬のような、作用物質を引き付けかつ固定化するその固有の能力について選択することができる。または、固相は捕捉試薬のような、作用物質を引き付けかつ固定化する能力を有する因子を保有することができる。この因子は、例えば、捕捉試薬それ自体に対して、または捕捉試薬にコンジュゲートされている帯電物質に対して逆に帯電している帯電物質を含むことができる。別の態様において、特異的結合メンバーを固相上に固定化して、その結合パートナー(例えば、捕捉試薬)を固定化することができる。それ故に、この例では、特異的結合メンバーは固相材料への捕捉試薬の間接的な結合を可能にする。
【0081】
他に物理的に制約のない限り、固体支持体はフィルム、シート、ストリップ、またはプレートのような、任意の適当な形状で使用されてもよく、あるいはそれは紙、ガラス、プラスチックフィルム、または織物のような、適切な不活性の担体にコーティングされてもまたは結合もしくは積層されてもよい。
【0082】
「側方流動基材」は、側方流動装置において有用な任意の固体支持体または基材である。
【0083】
特異的結合パートナー(または結合パートナー):
関与する分子の三次元構造に依る特異的な、非共有結合性の相互作用によって相互に作用する分子対のメンバー。特異的結合パートナーの典型的な対は、抗原/抗体、ハプテン/抗体、ホルモン/受容体、核酸鎖/相補的核酸鎖、基質/酵素、阻害剤/酵素、炭水化物/レクチン、ビオチン/(ストレプト)アビジン、およびウイルス/細胞受容体を含む。
【0084】
「分析物に特異的に結合する」または「特異的に免疫反応性を示す」という語句は、抗体のことをいう場合、タンパク質および他の生体分子のような、不均一な分子集団の存在下において分析物の存在を決定するような結合反応をいう。したがって、所定の免疫アッセイ条件の下で、指定の抗体は特定の分析物に結合し、サンプル中に存在する他の分析物にかなりの量で結合しない。特定の分析物と特異的に免疫反応性を示す抗体を選択するために、さまざまな免疫アッセイ形式を使用することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応性を示すモノクローナル抗体を選択するために日常的に使用される。特異的な免疫反応性を決定するために使用できる免疫アッセイ形式および条件の記述については、Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, CSHP, New York (1988)を参照されたい。
【0085】
被験体:
脊椎生物を含む、生きている多細胞生物であり、ヒトもヒト以外の哺乳動物もともに含むカテゴリー。
【0086】
トレポネーマ抗原:
抗梅毒トレポネーマ抗体を特異的に結合する少なくとも1つの抗原決定基を含んだ抗原。多数のトレポネーマ抗原が当技術分野において報告されている; 例えば、米国特許第6,479,248号; 同第6,248,331号; 同第5,681,934号; 同第5,578,456号; 同第4,868,118号; および同第4,740,467号を参照されたく、これらの各々が参照により本明細書に組み入れられる。例えば、少なくとも以下の見掛けの分子量のポリペプチドが梅毒トレポネーマ抗原として報告されている: 16〜20 kDa、18 kDa、18〜23 kDa、25 kDa、35 kDa、37 kDa、37〜46 kDa、38 kDa、39 kDa、41 kDa、43 kDa、44 kDa、46 kDa、47 kDa、58 kDa、150 kDa; および180 kDa (さらなる詳細については、米国特許第4,846,118号を参照のこと)。
【0087】
別段の説明がない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術を有する者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。単数の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈により他に明記されていない場合、複数対象を含む。同様に、「または(or)」という単語は、文脈により他に明記されていない場合「および(and)」を含むよう意図される。故に「AまたはBを含む」とは、A、もしくはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドに対して示される、全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量値は、近似であり、説明のために与えられていることをさらに理解すべきである。本明細書において記述されているものに類似のまたは同等の方法および材料を本発明の実践または試験において使用することができるが、適当な方法および材料を以下に記述する。本明細書において言及されている全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合、用語の説明を含む、本明細書により統制される。さらに、材料、方法、および例は一例にすぎず、限定するものではないことが意図される。
【0088】
III. カルジオリピン
カルジオリピンはジホスファチジルグリセロール(具体的には、1,3-ジホスファチジルグリセロール)であり、これは、以下に示されるように、2つのホスホジエステル架橋によって連結された3分子のグリセロールからなる骨格を有する:

カルジオリピンの外側のグリセロール部分の4つのヒドロキシル基が各々、飽和または不飽和脂肪酸鎖(典型的には長さが14〜18個の炭素)でエステル化されている。本明細書において用いられる「カルジオリピン」という用語は、脂肪酸側鎖の任意の分布を有する1,3-ジホスファチジルグリセロールを企図する; 但し少なくとも1つの脂肪酸側鎖が少なくとも1つのC=C二重結合を有することを条件とする。したがって、カルジオリピンの4つの脂肪酸側鎖は、長さ(例えば、約14〜約25個の炭素、約14〜約22個の炭素、約14〜約20個の炭素、約14〜約18個の炭素、もしくは約14〜約16個の炭素)および/または飽和度(例えば、完全に飽和している〜約6個の二重結合を有する、完全に飽和している〜約4個の二重結合を有する、もしくは完全に飽和している〜約2個の二重結合を有する)が独立に変化しうる。カルジオリピンの例示的な脂肪酸側鎖は、ミリストイル(14:0); パルミトイル(16:0); ステアロイル(18:0); オレオイル(18:1); ミリストレオイル(14:1); パルミトレオイル(16:1); ペトロセリノイル(18:1); リノレオイル(18:2); リノレノイル(18:3); エイコセノイル(20:1); アラキドノイル(20:4); エルコイル(22:1); DHA (22:6); またはネルボノイル(24:1)を独立に含む。
【0089】
いくつかの態様において、カルジオリピンは天然の形態である。天然のカルジオリピンはいくつかの供給源、例えば、Sigma Aldrich, Avanti Polar Lipids (Alabaster, AL)、およびLee Laboratories (Grayson, GA)から市販されている。それは同様に、例えば、ウシ心筋組織の溶媒抽出により、沈殿法により、または高圧カラムクロマトグラフィーにより得ることもできる。天然のカルジオリピンの脂肪酸組成は、パルミトイル(16:0); ステアロイル(18:0); オレオイル(18:1); およびリノレオイル(18:2)のような多種多様の天然の脂肪酸に準じて広く分布している。カルジオリピンの天然の形態のなかで最も豊富な脂肪酸分子種は、90%のリノール酸であり、これに続くのが5%のオレイン酸、および1%のパルミチン酸(palmitric acid)である。
【0090】
他の態様において、カルジオリピンは非天然の形態である(「合成カルジオリピン」ともいわれる)。合成カルジオリピンの非限定的な例としては、例えば、テトラオレオイルカルジオリピン、ビス(ジパルミトイルD,L-α-グリセリルホスホリル)-1,3グリセロールベンジルエーテル二ナトリウム塩、ビス(ジパルミトイルD,L-α-グリセリルホスホリル)-1,5ペンタンジオール二ナトリウム塩、ビス(ジパルミトイルD,L-α-グリセリルホスホリル)-1,3プロパンジオール二ナトリウム塩、ビス(ジパルミトイルD,L-α-グリセリルホスホリル)-1,4ブタンジオール二ナトリウム塩、ビス(ジパルミトイルD,L-α-グリセリルホスホリル)-1,2エタンジオール二ナトリウム塩、ビス(ジパルミトイルD,L-α-グリセリルホスホリル)-メタンジオール二ナトリウム塩、ビス(ジパルミトイルD,L-α-グリセリルホスホリル)-1,3グリセロール二ナトリウム塩、ビス(ベンジルホスホリル)-1,3-プロパンジオール二ナトリウム塩、またはD,L-α-ジパルミトイルビス-ホスファチジン酸が挙げられる。
【0091】
カルジオリピンの抗原エピトープは、中央のグリセロール部分の2つのリン酸基およびβ-ヒドロキシル基を含むと考えられている。この抗原エピトープは、天然カルジオリピンにも合成カルジオリピンにもともに存在する。天然カルジオリピンまたは合成カルジオリピンの一方または両方は、その酸化形態に抗リポイド抗体が特異的に結合する限り、本明細書において記述されるように酸化されてもよい。
【0092】
IV. カルジオリピンの酸化
A. 一般
カルジオリピンの脂肪酸側鎖の酸化的開裂は、NaIO4およびKMnO4、またはNaIO4および四酸化ルテニウム、またはHIO4およびKMnO4のような、酸化剤の存在下において起こりうることを当業者なら理解する(例えば、March, Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure, Second Edition, New York: McGraw Hill Book Company, 1977, page 1095を参照のこと)。つまり、脂肪酸側鎖に存在する二重結合は、最終的にカルボキシル基に酸化され、それによりマロン酸および/またはカプロン酸のような、アルキルカルボン酸を放出しうる(図3に示されている通り)。完全に酸化されたカルジオリピン分子では、4つ全ての脂肪酸側鎖が最初の(最も近位の)二重結合の位置で開裂されて、末端のカルボキシル基を各々が有する脂肪酸鎖を生じうる(図3に示されている通り)。天然のカルジオリピンはその脂肪酸側鎖の組成に関して不均一でありうるので、完全に酸化されたカルジオリピン調製物は、その非酸化分子における脂肪酸側鎖の不均一性を反映した酸化種の混合物であると考えられる。カルジオリピンの酸化が不完全であるなら、さらなる不均一性が生じうる。その状況では、脂肪酸側鎖の1つ、2つまたは3つがカルボン酸に酸化されている酸化カルジオリピン種の混合物が生じるであろう(例えば、不完全な酸化を例証した、1つの末端カルボキシル基を有する酸化カルジオリピン分子の一例、および完全な酸化を受けた酸化カルジオリピンのもう一つの例については図3を参照のこと)。この段落において記述されている酸化カルジオリピン種のいずれかまたは全てが、記述の組成物、方法、および装置に有用であると本明細書において企図される。
【0093】
B. NaIO4およびKMnO4によるカルジオリピンの酸化
カルジオリピンの酸化に有用な方法の1つでは、過ヨウ素酸(IO4-)および/または過マンガン酸(MnO4-)を酸化剤として利用する。これらの酸化剤の塩は、電気的に中性の化合物をもたらす任意の対イオンを含む。過ヨウ素酸は典型的には、NaIO4またはHIO4 (過ヨウ素酸)のような、過ヨウ素酸塩の形態であり、過マンガン酸は典型的には、塩(ナトリウムまたはカリウム塩のような)、例えばKMnO4の形態である。1つの具体的な態様において、NaIO4およびKMnO4が酸化剤として使用される。この酸化法を実践するため、任意の供給源から得られたカルジオリピンを、カルジオリピンが実質的に溶解するような任意の溶媒に添加することができる。カルジオリピンの疎水性という点では、t-ブタノール、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、またはジエチルエーテルのような、極性有機溶媒の使用が好ましい。クロロホルムのような、その他の非極性有機溶媒を使用して、カルジオリピンを懸濁することができる; しかしながら、これらの非極性有機溶媒は有用性が低い。なぜなら、酸化反応の他の成分(以下に記述の)が、例えば、極性有機溶媒または水性溶媒より、これらの溶媒に可溶性でないからである。
【0094】
カルジオリピン溶液の濃度は、高い方の範囲のなかで、なおカルジオリピンを選択された溶媒に溶解可能とする任意の有用な濃度でありうる。当業者は、任意の特定の溶媒におけるカルジオリピンの飽和点を容易に測定することができる。
t-ブタノールが選択された溶媒である例では、カルジオリピン濃度は約10 mg/ml、約25 mg/ml、約50 mg/ml、約75 mg/ml、約100 mg/ml、約125 mg/ml、約150 mg/ml、約200 mg/mlおよび約250 mg/mlのような、約10 mg/ml〜250 mg/mlの範囲内にありうる。カルジオリピンを選択された溶媒に溶解した後に微粒子が存在している場合、この溶液は任意で、遠心分離またはろ過のような、当技術分野において公知の任意の技術により清澄化されてもよい。
【0095】
いくつかの態様において、カルジオリピンの酸化は酸素の非存在下で、例えばアルゴン、ヘリウム、または窒素雰囲気の中で行うことができる。カルジオリピンの酸化反応は空気のような、酸素含有の雰囲気、または他の雰囲気の中で行われると考えられる; しかしながら、炭酸塩のような、その中に含まれる酸化性分子が反応の効率を下げることがある。それでもなお、カルジオリピンの酸化反応が行われるような雰囲気は全て、反応効率にかかわらず、この開示により企図される。
【0096】
少なくとも1つのカルジオリピン脂肪酸側鎖を酸化的に開裂するのに十分な、NaIO4およびKMnO4などの酸化剤の量を次いで、絶え間なく撹拌しながら、懸濁されたカルジオリピンに添加する。いくつかの例では、カルジオリピンを酸化するのに過ヨウ素酸塩および過マンガン酸塩(NaIO4およびKMnO4のような)が併用される。ある種のそれらの例では、過ヨウ素酸塩(NaIO4のような)が過マンガン酸塩(KMnO4のような)の添加の前にカルジオリピン溶液に添加される。酸化剤は、それらが可溶性であり、かつカルジオリピン溶液と混合しうる任意の溶媒に溶解されうる。例えば、NaIO4およびKMnO4は水に溶解されうる。
【0097】
NaIO4がカルジオリピンを酸化する方法に使用される場合、反応に使用されるNaIO4の量は決定的に重要ではない。最小限には、その量は、反応が特定の状況下にて合理的な時間で行われるようなものである。その対極では、かなりのモル過剰のNaIO4が酸化反応に使用されてもよい。例えば、過ヨウ素酸塩(NaIO4のような)のカルジオリピンに対するモル比は、約0.1:1〜約100:1、約0.5:1〜約50:1、約1:1〜約25:1、約2:1〜約15:1、約2.5:1〜約10:1、約3:1〜約7.5:1、または約4:1〜約5:1でありうる。具体的な態様において、m-過ヨウ素酸ナトリウムのカルジオリピンに対するモル比は、約4:1〜5:1、またはより具体的には約4.2:1である。
【0098】
過マンガン酸塩(KMnO4のような)がカルジオリピンを酸化する方法に使用される場合、反応に使用される過マンガン酸塩の量は決定的に重要ではない。最小限には、その量は、反応が特定の状況下にて合理的な時間で行われるようなものである。その対極では、かなりのモル過剰の過マンガン酸塩が酸化反応に使用されてもよい。例えば、過マンガン酸塩(KMnO4のような)のカルジオリピンに対するモル比は、約0.01:1〜約100:1、約0.02:1〜約50:1、約0.1:1〜約25:1、約0.25:1〜約15:1、約0.3:1〜約10:1、約0.4:1〜約7.5:1、約0.5:1〜約5:1、約0.6:1〜約2:1、または約0.7:1〜約1:1でありうる。具体的な態様において、過マンガン酸塩(KMnO4のような)のカルジオリピンに対するモル比は、約0.5:1〜1:1、またはより具体的には約0.75:1である。
【0099】
酸化反応物の混合は、反応が行われるのを阻止しない任意の温度で行うことができる。同様に、反応は、カルジオリピンの少なくとも1つの脂肪酸側鎖の酸化的開裂を引き起こすのに十分な任意の時間、進行することができる。反応時間は反応温度、溶媒のタイプ、ならびに反応物および生成物の濃度を含め、いくつかの不確定要素に依ることを当業者なら理解しているので、それらの不確定要素の各々は日常の実験で容易に最適化されうる。一例を挙げれば、酸化反応は室温で行われ、少なくとも24〜48時間進行する。
【0100】
カルジオリピンの酸化反応は、反応中に存在する酸化剤を中和できるおよび中央のグリセロール部分のβ-炭素の位置で形成される任意のケトンを対応のβ-ヒドロキシル基に還元できる任意の還元剤により停止することができる。亜硫酸水素塩(例えば、亜硫酸水素ナトリウム)、硫化ジメチル、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH(OAc)3)、モルホリンボラン、トリイソプロポキシ水素化ホウ素カリウム、t-ブチルアミンボラン、ジメチルアミンボラン、ピリジンボラン、トリエチルアミンボラン、またはトリメチルアミンボランのような、還元剤は、この目的に有用である。いくつかの具体的な例では、還元剤は亜硫酸水素塩であり、さらに特定の例では、還元剤は亜硫酸水素ナトリウムである。
【0101】
反応に添加される還元剤の量は、酸化剤が反応停止される限り、決定的に重要ではない。酸化カルジオリピンの免疫原性が、カルジオリピン中央のグリセロール部分のβ-ヒドロキシル基のケトンへの酸化によって悪い影響を受けるならば、還元剤の量は同様に、酸化カルジオリピンの十分な免疫原性のためにβ-ヒドロキシル基を回復させる量である。例えば、反応混合物を実質的に無色に変化させるのに十分な、亜硫酸水素ナトリウムの量をNaIO4およびKMnO4酸化剤含有のカルジオリピン酸化反応物に添加することができる。
【0102】
存在するなら、カルジオリピン酸化反応物の中の水相および有機相は、当技術分野において公知の任意の方法、例えば遠心分離により分離することができる。1つの態様において、酸化カルジオリピンを主に含有するt-ブタノール相およびアルキルカルボン酸を主に含有する水相を、遠心分離により分離することができる。酸化カルジオリピンは、これが有機相の中に分かれると予想できるほど十分に疎水性である。しかしながら、必要ならば、当業者はTLC、HPLC、NMRまたはガスクロマトグラフィーのような、当技術分野において公知の方法により、水相もしくは有機相のどちら(またはその両方)が酸化カルジオリピンを含有するかを決定することができる。
【0103】
任意で、溶液中の酸化カルジオリピンは、10 mMリン酸緩衝液, pH 8.0のような、有用な緩衝液の中に透析され、当技術分野において周知の方法を用いて凍結乾燥されてもよい。
【0104】
C. 酸化カルジオリピンの抗原性
酸化はいくつかのリン脂質の抗原特性を変化させることが示されている(例えば、米国特許第6,177,282号を参照のこと)。梅毒患者の抗リポイド抗体は中央のグリセロール部分の2つのリン酸基およびβ-ヒドロキシル基に結合すると考えられている(例えば、Castro et al., Clin. Diagn. Lab. Immunol., 7(4):658-661, 2000を参照のこと)。したがって、カルジオリピンの抗原性を保持するために、例えば、梅毒血清中の抗リポイド抗体を検出するために中央のグリセロール部分の立体配置を維持することが有益である。酸化カルジオリピンの抗原性は、いくつかの広く使われている技術(例えば、ELISA、ドットブロット、酵素免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ)のいずれかにより、および/または本明細書において記述されているように試験することができる(例えば、実施例4を参照のこと)。実施例4 (以下)に示されているように、本明細書において記述されているカルジオリピンを酸化する方法では、カルジオリピンの抗原性が維持される。
【0105】
D. カルジオリピン/レシチン混合物
カルジオリピンおよびレシチンの混合物はカルジオリピン単独について上に記述したのと同じ方法により酸化することができる; 唯一の違いは、出発材料がカルジオリピンおよびレシチンの混合物であるということである。初期の酸化反応において、カルジオリピンおよびレシチンは約20:1〜約1:1の、または約1:1〜約1:10の、または約10:1〜約1:10の、または約5:1〜約1:5の、または約1:1〜約1:5の重量比(カルジオリピン:レシチン)で一緒に混合される。特定の例では、カルジオリピン:レシチンの重量比は約20:1、約10:1、約5:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:5、または約1:10を含む。
【0106】
V. 酸化カルジオリピン-付着分子複合体
酸化カルジオリピンは比較的小さい分子である。したがって、酸化カルジオリピンをさらに大きな分子(ポリペプチドのような)に付着させて、本明細書において記述されている方法および装置で用いる固体表面へのカルジオリピンの付着を促進することが有益である。ある種の例では、分子が大きいほど、側方流動または流入技術において使用されるタイプの吸湿性基材のような、基材にいっそう容易に付着される。誘導体化された酸化カルジオリピンは、非常に小さなカルジオリピンまたはその酸化カルジオリピン分子よりも多孔性基材(ニトロセルロース多孔性基材のような)にいっそう容易に吸着され、局在化される。酸化カルジオリピンを、それにポリペプチド部分を付着させることにより誘導体化することで、ELISA、側方流動の診断ストリップおよび/もしくは装置、ならびに/または流入装置のような、固体表面ベースの免疫アッセイにおけるその多用途性および有用性が大いに高められる。
【0107】
適当な付着分子はアルブミン、ヘモシアニン、チログロブリンおよびその誘導体、特にウシ血清アルブミン(BSA)およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、アビジン、ストレプトアビジン、ならびにビオチンのようなタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む。他のポリペプチド由来のまたは非タンパク質由来の物質は、当業者に公知である。
【0108】
付着分子は、酸化カルジオリピンへの共有結合性コンジュゲーションを促すために反応基を含有することが多い。アミノ酸のアミン基はこのように使用されることができる。このような基を欠く付着分子は、多くの場合、反応基を生成させるよう適切な化学物質と反応させることができる。付着分子において有用な反応基を生成させるよう使用できる、実例となる化学物質は、限定されるものではないが、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、およびN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)を含む。
【0109】
本明細書における酸化カルジオリピンの提供によって、天然または合成カルジオリピンにおいて他の形では利用可能でない、少なくとも1つの反応性カルボキシル基が得られる。したがって、酸化カルジオリピンを当技術分野において公知の任意の手段によりおよび/または本明細書において記述されているように、酸化によって作出された反応基を介して付着分子に連結することができる。そのような連結はさらなる連結基を伴ってもまたは伴っていなくてもよい。多くの異なる方法を酸化カルジオリピンと付着分子との間の連結をもたらすのに使用することができる。
【0110】
アミン含有の付着分子(例えば、BSA、合成タンパク質MAPS、IgY、ストレプトアビジン、アビジンまたはKLHのような、タンパク質)に酸化カルジオリピンを連結させるのに使用できる方法の一例を図4に図式的に示す。図4中の反応は、本明細書において記述されているように、カルジオリピン脂肪酸側鎖の酸化的開裂によって作出されるカルボキシル基を、NHS (または図4に示されているように、スルホ-NHS)と組み合わせてEDCを用いて、アミン反応性のNHSエステルに修飾できることを例証している。酸化カルジオリピンのNHSエステルを次に、図4に示されているようにBSAのような、付着分子中に存在するアミン基と反応させて、酸化カルジオリピンと付着分子との間にアミド連結を形成させる。
【0111】
本明細書における方法および装置のいくつかの態様では、固相に固定化された酸化カルジオリピンまたは酸化カルジオリピン-付着分子複合体を利用する。基材を固体表面に固定化する任意の従来の方法が本開示において企図される。
【0112】
酸化カルジオリピンまたは酸化カルジオリピン-付着分子複合体を固相に固定化するのに適した方法は、イオン相互作用、疎水性相互作用、共有結合性相互作用などを含む。固相(例えば、第II節を参照のこと)は、酸化カルジオリピンまたは酸化カルジオリピン-付着分子複合体を引き付けかつ固定化するその固有の能力について選択することができる。あるいは、固相は、酸化カルジオリピンまたは酸化カルジオリピン-付着分子複合体を引き付けかつ固定化する能力を有する因子を保有することができる。この因子は、例えば酸化カルジオリピンもしくは酸化カルジオリピン-付着分子複合体に対して逆に帯電している帯電物質、または、例えば酸化カルジオリピンもしくは酸化カルジオリピン-付着分子複合体にコンジュゲートされている帯電物質に対して逆に帯電している帯電物質を含むことができる。さらにもう一つの選択肢として、この因子は任意の特異的結合パートナー、例えば、アビジンまたはストレプトアビジンであってもよく、これは固相上に固定化され、かつこれは特異的結合反応を通じて、酸化カルジオリピンまたは酸化カルジオリピン-付着分子複合体、例えば、ビオチン化された酸化カルジオリピンを固定化する能力を有する。
【0113】
本明細書における方法および装置のいくつかの態様において、酸化カルジオリピンまたは酸化カルジオリピン-付着分子複合体は検知試薬としての機能を果たしてもよく、したがって標識にコンジュゲートされる。分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段により検出可能な任意の分子または組成物は、標識としての機能を果たすことができる。酵素、コロイド金粒子、有色のラテックス粒子を含めて、標識の例が開示されている(それぞれが参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,275,149号; 同第4,313,734号; 同第4,373,932号; および同第4,954,452号)。有用な標識のさらなる例としては、限定されるものではないが、補因子、リガンド、化学発光剤または蛍光剤、タンパク質に吸着された銀粒子、タンパク質に吸着された鉄粒子、タンパク質に吸着された銅粒子、タンパク質に吸着されたセレン粒子、タンパク質に吸着された硫黄粒子、タンパク質に吸着されたテルル粒子、タンパク質に吸着された炭素粒子、およびタンパク質共役型のダイサックが挙げられる。
【0114】
標識への化合物の付着は、キレートなどにおけるのと同様に、共有結合、吸着過程、疎水結合および/もしくは静電結合、またはこれらの結合および相互作用の組み合わせを通じてであってもよく、ならびに/あるいは連結基を含んでもよい。標識の方法および種々の目的に適した標識の選択におけるガイダンスは、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSHL, New York, 1989およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc, and Wiley-Intersciences, 1998のなかで論じられている。
【0115】
方法および装置のいくつかの態様において、酸化カルジオリピンのコロイド金コンジュゲートまたは酸化カルジオリピン-付着分子複合体のコロイド金コンジュゲートが想定される。
【0116】
VI. 免疫アッセイ装置
カルジオリピンを酸化し、かつ固体支持体(ニトロセルロース、ナイロンまたはPVDFのような、微孔性膜などの)上に固定化できるカルジオリピン-付着分子コンジュゲートを調製する方法の本明細書における発見によって、カルジオリピン結合分析物(梅毒トレポネーマに感染した被験体由来の生体サンプル中の抗リポイド抗体など)の検出に向けた固体表面ベースの免疫アッセイ(例えば、EIA、ELISA、流入装置、ディップスティック、および側方流動装置)が可能になる。いくつかの例では、開示される免疫アッセイにより、梅毒の診断のための生体サンプル中の抗リポイド抗体の存在(または非存在)の検出が可能になる。
【0117】
A. 代表的な免疫アッセイ装置形式および関連情報
免疫アッセイ装置は、液体サンプル中の分析物の存在(非存在)の視覚的特定のための比較的安価な、使い捨ての、膜ベースのアッセイの実行を可能にする。そのような装置は、通常、独立したディップスティック(例えば、試験ストリップ)として、またはある種の筺体を有する装置として構成される。典型的には、免疫アッセイ装置は、わずか約200 μlの液体サンプルで使用可能であり、サンプル中の分析物の検出は2〜5分以内で完了しうる(しかし完了しなくてもよい)。臨床アッセイにおいて、サンプルは尿、血液、血清、唾液、または他の体液でありうる。非臨床試験において、サンプルは、土壌、粉塵、植物、または食料から調製される少量の溶液であってもよく、同様に膜試験ストリップに直接適用されてもよい。ほとんどの場合、補助的な器具類はそのような試験を行うのに必要とされず、そのような装置は未経験者でさえも診療所、研究所、野外、および自宅において容易に使用することができる。
【0118】
免疫アッセイ装置は異なる生体サンプル(例えば、尿、血清、血漿、血液、唾液)を用いた生理的および病的状態(例えば、感染症、妊娠、がん、内分泌障害)の日常的な同定またはモニタリングのために、ならびに環境サンプル(例えば、天然の流体および工場排水)の、例えば汚染についての分析のために開発されている。これらの試験の多くは、特異的な結合対の間の高度に特異的な相互作用に基づく。そのような結合対の例としては抗原/抗体、ハプテン/抗体、レクチン/炭水化物、アポタンパク質/補因子およびビオチン/(ストレプト)アビジンが挙げられる。さらに、これらの試験の多くがラテックスビーズ、ガラス繊維、ガラスビーズ、セルロースストリップまたはニトロセルロース膜のような、移動性または不動性の固相材料に付着されている結合対のメンバーの1つまたは複数を有する装置(例えば、固相、側方流動試験ストリップ、流入試験)を必要とする(米国特許第4,703,017号; 同第4,743,560号; 同第5,073,484号)。
【0119】
免疫クロマトグラフィーアッセイの主要なカテゴリーの1つが「サンドイッチ」アッセイである。一般に、サンドイッチ免疫クロマトグラフィー手順では、アッセイされる分析物、例えば、抗リポイド抗体を含有すると思われるサンプルを、その分析物により認識される抗原、例えば、酸化カルジオリピンと混合することを必要とする。抗原、すなわち、検知試薬は移動性であり、典型的には標識または別のシグナル伝達試薬、例えば染色ラテックス、コロイド金属ゾル、または放射性同位体などに連結される。この混合物を次いで、関心対象の分析物抗体により認識される固定化された抗原のバンドまたは帯域を含有するクロマトグラフィー媒体に適用する。クロマトグラフィー媒体は、ディップスティックに似たストリップの形態であることが多い。アッセイされる分子の複合体および検知試薬はクロマトグラフィー媒体上の固定化された抗原の帯域に達すると、結合が起こり、検知試薬の複合体がその帯域に局在化される。これにより、アッセイされる分子の存在が示される。この技術は定量的または半定量的な結果を得るために使用することができる。
【0120】
あるいは、サンドイッチ免疫アッセイでは、関心対象の分析物、例えば、抗リポイド抗体を含有しうるサンプルを、その分析物を認識する抗体、例えば、プロテインAまたはヤギ抗ヒト二次抗体と混合することを必要とする場合がある。この混合物中の二次抗体は移動性で、(例えば、酵素、コロイド金、またはその他により)標識されており、検知試薬としての機能を果たす。サンドイッチ免疫アッセイの前例において記述されているように、アッセイされる分析物(存在するなら)は、この混合物が、そのアッセイ分析物により認識される固定化された抗原のバンドまたは帯域を含有するクロマトグラフィー媒体に適用される際に検出することができる。
【0121】
試験ストリップにて行われるサンドイッチ免疫アッセイの例は、米国特許第4,168,146号および同第4,366,241号に記述されており、これらの各々が参照により本明細書に組み入れられる。
【0122】
固相免疫アッセイ装置により、生体液サンプル中の分析物の高感度な検出が得られる。固相免疫アッセイ装置には、リガンド-受容体の対の一方のメンバー、通常は抗体、抗原、またはハプテンが結合されている固体支持体が組み込まれている。固体支持体の一般的な初期の形態はプレート、試験管、またはポリスチレンのビーズであり、これらは放射免疫アッセイおよび酵素免疫アッセイの分野で公知であった。最近になって、ナイロン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維、および他の多孔性重合体のような、いくつかの多孔性材料が固体支持体として利用されている。膜ベースの免疫アッセイの他の一般的な形態では、いくつかの家庭用妊娠および排卵検出キットに代表されるように、試験ストリップ(またはディップスティック)を、対象分析物を含有する疑いのあるサンプルの中に「浸ける」。酵素で標識された検知試薬を次いで、同時にまたはインキュベーション時間後に添加する。装置を次に洗浄し、その後、酵素の基質を含有する第2の溶液の中に入れる。酵素標識は、存在するなら、基質と相互作用し、固相の上に沈殿物として沈着するかまたは基質溶液の可視的な色の変化を生ずるかのいずれかの、有色の生成物の形成を引き起こす。欧州特許第A 0 125 118号では、そのようなサンドイッチ型ディップスティックの免疫アッセイについて記述している。欧州特許第A 0 282 192号では、競合型のアッセイで用いられるディップスティック装置について記述している。
【0123】
流入型の免疫アッセイ装置は、一つには、ディップスティックのアッセイに付随するインキュベーションおよび洗浄段階の必要性を取り除くためにデザインされた。流入免疫アッセイ装置では、液体サンプルが添加される多孔性の膜またはフィルタに結合された捕捉試薬(酸化カルジオリピン-付着分子複合体のような)を必要とする。液体が膜を通過するので、標的の分析物(抗リポイド抗体のような)は捕捉試薬に結合する。サンプルの添加を検知試薬(金コンジュゲートカルジオリピン、標識(例えば、金コンジュゲート)プロテインAまたは標識(例えば、金コンジュゲート)抗ヒトIgGのような)の添加に先立って(またはそれと同時に)行う。あるいは、検知試薬は、検知薬をサンプルと混合可能にし、それにより分析物を標識する様式で膜上に配されてもよい。検知試薬の視覚的検出は、サンプル中における標的分析物の存在の決定の指標となる。代表的な流入免疫アッセイ装置は、米国特許第4,246,339号; 同第4,277,560号; 同第4,632,901号; 同第4,812,293号; 同第4,920,046号; および同第5,279,935号; ならびに米国特許出願公開公報第20030049857号および同第20040241876号に記述されている。
【0124】
マイグレーション(migration)アッセイ装置は通常、その内部に、有色の標識に付着された試薬を組み込んでおり、それによってさらなる物質の添加なしにアッセイ結果の可視的検出を可能にする。例えば、米国特許第4,770,853号; PCT公開番号WO 88/08534および欧州特許第A 0 299 428号を参照されたい。
【0125】
多数の市販の側方流動型試験および大きな分析物(1,000ダルトンを超えるMW)の検出のための方法を開示している特許が存在する。米国特許第5,229,073号では、血漿リポタンパク質レベルを測定するための半定量的な競合免疫アッセイ側方流動法について記述している。この方法では、標識リポタンパク質も遊離リポタンパク質もともに結合するよう固定化された抗体を含有する複数の捕捉域または捕捉線を利用して、半定量的な結果をもたらす。
【0126】
米国特許第5,591,645号では、少なくとも2つの部分を有するクロマトグラフィー試験ストリップを提供している。第1の部分は移動可能な追跡子を含み、第2の部分は分析物に結合できる固定化された結合剤を含む。大きな分析物に対する側方流動試験のさらなる例は、以下の特許文献に開示されている: 米国特許第4,168,146号; 同第4,366,241号; 同第4,855,240号; 同第4,861,711号; および同第5,120,643号; 欧州特許第0296724号; 国際公開公報第97/06439号; および国際公開公報第98/36278号。
【0127】
小さな分析物(MW 100〜1,000ダルトン)の検出のための側方流動型試験も存在している。一般に、これらの小さな分析物の試験では、米国特許第4,703,017号により例示されているように、陰性のまたは間接の報告結果(すなわち、逓増的な分析物濃度に伴うシグナルの低下)をもたらすよう「典型的な」競合阻害が必要とされる。しかしながら、陽性のまたは直接の報告結果(すなわち、逓増的な分析物濃度に伴うシグナルの増大)をもたらす側方流動試験を用いて小さな分析物を検出するために、いくつかの手法が開発されている。これらは、例えば、米国特許第5,451,504号; 同第5,451,507号; 同第5,798,273号; および同第6,001,658号を含む。
【0128】
米国特許第5,451,504号では、陽性のシグナルを生じるようにそれぞれが異なるラテックスコンジュゲートを含有する3つの特定(移動、トラップおよび検出)域による方法を提供している。移動域はサンプル中の分析物に結合するように標識抗体を含有する。トラップ域では、未結合の標識抗体が次に、固定化された分析物類似体によってトラップされる。検出域は標識分析物-抗体複合体を捕捉する。
【0129】
米国特許第5,451,507号では2帯域、不連絡の免疫アッセイ法について記述している。第1の帯域は、ある成分、例えば、シグナル生成系のメンバーに結合されている、またはシグナル生成系のメンバーに結合されるようになりうる分析物類似体と結合する、非拡散的に結合された試薬を有する。第2の帯域は、試験される分析物が存在する場合にだけその成分に結合する。その成分が第2の帯域へ移動する距離は、分析物の濃度に直接的に関連する。
【0130】
米国特許第5,798,273号では、固定化された分析物類似体を有する捕捉域、および標識された分析物-類似体に結合するための1つまたは複数の読み出し域を含む側方流動装置を開示している。
【0131】
米国特許第6,001,658号では、分析物と結合する拡散性の、標識された結合パートナー、固定化された分析物、および固定化された抗体を含有する検出領域を有する試験ストリップ装置を開示している。
【0132】
本明細書において記述されている装置は全体として吸収材料(微孔性膜のような)のストリップを含み、これは、場合によっては、それぞれが帯域中の他の物質に連結された異なる物質から成ることもあり、これは隣接していてもおよび/または重複していてもよい。いくつかの例では、吸収ストリップは、例えば、さらに高い剛性をストリップに与えるため、支持非干渉材料(不織布ポリエステルのような)上に固定化することができる。各ストリップ内の帯域は、特異的結合パートナーならびに/または、例えば、抗リポイド抗体に対して試験されている特定の分析物の検出および/もしくは定量化に必要な他の試薬を差次的に含有することができる。したがって、これらの帯域は試験装置内の機能的区域または機能的領域と見なすことができる。
【0133】
一般に、流体サンプル(または流体中に懸濁されたサンプル)は、例えば浸漬またはスポッティングにより、ストリップの近位端の位置でストリップに導入される。サンプルは当業者に周知の方法により回収されるかまたは得られる。検出される抗リポイド抗体を含有するサンプルは、任意の生物学的供給源から得ることができる。生物学的供給源の例としては、ヒトまたは動物の血清、血漿、尿、脊髄液、唾液、発酵液、リンパ液、組織培養液および腹水が挙げられる。免疫アッセイの結果を最適化するため、サンプルは免疫アッセイの前に希釈されても、精製されても、濃縮されても、ろ過されても、溶解されても、懸濁されてもまたは他の方法で操作されてもよい。流体はストリップの全ての機能的領域を通って遠位に移動する。個々の機能的領域中での流体の最終分布は、使用される材料の寸法および吸着能に依存する。
【0134】
いくつかの態様において、以上に記述した、ニトロセルロースのような、多孔性の固体支持体はシートまたはストリップの形態であることが好ましい。このようなシートまたはストリップの厚さは、幅広い範囲のなかで、例えば、約0.01から0.5 mmまで、約0.02から0.45 mmまで、約0.05から0.3 mmまで、約0.075から0.25 mmまで、約0.1から0.2 mmまで、または約0.11から0.15 mmまで変化しうる。このようなシートまたはストリップの孔径は同様に、幅広い範囲のなかで、例えば、約0.025から15ミクロンまで、またはより具体的には約0.1から3ミクロンまで変化しうる; しかしながら、孔径は固体支持体の選択における制限因子であるよう意図されない。適用される場合、固体支持体の流速は同様に、幅広い範囲のなかで、例えば、約12.5から90秒/cm (すなわち、50から300秒/4 cm)まで、約22.5から62.5秒/cm (すなわち、90から250秒/4 cm)まで、約25から62.5秒/cm (すなわち、100から250秒/4 cm)まで、約37.5から62.5秒/cm (すなわち、150から250秒/4 cm)まで、または約50から62.5秒/cm (すなわち、200から250秒/4 cm)まで変化しうる。本明細書において記述されている装置の具体的な態様において、流速は約62.5秒/cm (すなわち、250秒/4 cm)である。本明細書において記述されている装置の他の具体的な態様において、流速は約37.5秒/cm (すなわち、150秒/4 cm)である。
【0135】
免疫アッセイ装置の使用において考慮されるべき別の共通の特徴は、分析物(抗リポイド抗体のような)と捕捉試薬(酸化カルジオリピン-付着分子複合体のような)との間の複合体の形成を検出するための手段である。検知薬(検知試薬ともいわれる)はこの目的を果たす。検知薬は免疫アッセイ装置の中に組み込まれても(例えば、以下のように、コンジュゲートパッドの中に含まれても)、または外部供給源から装置に適用されてもよい。
【0136】
検知薬は単一の試薬であっても、または検出目的を集団的に果たす一連の試薬であってもよい。場合によっては、検知試薬は分析物に特異的な、標識された結合パートナー(例えば、抗体分析物の場合には金コンジュゲートされたプロテインA、またはヒト抗体分析物の場合には金標識された抗ヒトAb (Fc)、または抗リポイド抗体分析物の場合には金標識された酸化カルジオリピン)である。その他の例では、検知試薬は、分析物に特異的な未標識の第1の結合パートナーおよび第1の結合パートナーに特異的な標識された第2の結合パートナーなどを集団的に含む。どの場合でも、検知試薬は分析物-捕捉試薬複合体の結合分析物を特異的に検出し、それ故に、検知試薬は捕捉試薬もしくは分析物捕捉領域に局在化されている他の成分に実質的に結合しないか、またはそれらと実質的に反応しないことが好ましい。検知薬のそのような非特異的結合または反応は、偽陽性の結果をもたらすことがある。任意で、検知試薬は、第2の捕捉領域に存在する陽性対照の分子(標識されたプロテインA検知薬、または標識されたプロテインG検知薬、または標識された抗ヒトAb(Fc)の場合には非特異的ヒトIgGのような)を特異的に認識してもよい。
【0137】
B. 流入装置の構築およびデザイン
流入装置は、固体支持体、典型的には、マイクロタイタープレートまたは膜(例えば、ニトロセルロース、ナイロンもしくはPVDF)上に固定化された捕捉試薬(酸化カルジオリピン-付着分子複合体のような)を含む。有用な膜の特徴はこれまでに記述されている; しかしながら、側方流動アッセイと同様に、サンプルが膜を横断するのではなく膜を通して垂直方向に移動するので、流入アッセイのなかで毛管上昇は、膜の特に重要な特徴ではないことに留意するのは有用である。単純な代表的形式では、流入装置の膜は吸収性層(例えば、以下の「吸収性パッド」の記述を参照のこと)と機能的にまたは物理的に接触して配されており、これは、膜を通して流体サンプルを引き出すための貯留層としての機能を果たす。任意で、捕捉試薬の固定化の後、膜上に残る任意のタンパク質結合部位を遮断して(サンプル投与の前にまたはそれと同時に)、非特異的な相互作用を最小限にしてもよい。
【0138】
流入装置の動作では、流体サンプル(体液サンプルのような)を膜と接触させて配する。典型的には、流入装置は同様に、所望の容量の流体サンプルを受けて、一時的に保持するためのサンプル適用領域(または貯留層)を含む。サンプルは膜マトリックスを通過する。この過程において、サンプル中の分析物(抗リポイド抗体のような)は、固定化された捕捉試薬(酸化カルジオリピン-付着分子複合体のような)に特異的に結合することができる。分析物-捕捉試薬複合体の検出が望まれる場合、検知試薬(標識プロテインA、標識プロテインG、標識抗ヒトIgG、もしくは標識カルジオリピンのような)をサンプルとともに添加してもよく、または検知試薬を含有する溶液をサンプルの適用後に添加してもよい。分析物が捕捉試薬によって特異的に結合されるなら、特定の検知試薬に起因する視覚的な標本を膜の表面上にて観察することができる。任意の洗浄段階がその過程中の任意の時点に、例えば、サンプルの適用後に、および/または検知試薬の適合後に付加されてもよい。
【0139】
C. 側方流動装置の構築およびデザイン
側方流動装置は当技術分野において一般に公知である。手短に言えば、側方流動装置はその本質として、関心対象の分析物を含有する疑いのある試験サンプルの流体を流す試験ストリップを有する分析装置である。試験流体および任意の懸濁分析物は、ストリップに沿って検出域に流れることができ、そこで分析物(存在するなら)が捕捉剤および検出剤と相互作用して、分析物の存在、非存在および/または量を示す。
【0140】
多数の側方流動分析装置が開示されており、各々が参照により組み入れられる米国特許第4,313,734号; 同第4,435,504号; 同第4,775,636号; 同第4,703,017号; 同第4,740,468号; 同第4,806,311号; 同第4,806,312号; 同第4,861,711号; 同第4,855,240号; 同第4,857,453号; 同第4,943,522号; 同第4,945,042号; 同第4,496,654号; 同第5,001,049号; 同第5,075,078号; 同第5,126,241号; 同第5,451,504号; 同第5,424,193号; 同第5,712,172号; 同第6,555,390号; および同第6,368,876号; 欧州特許第0810436号; ならびに国際公開公報第92/12428号(WO92/12428); 国際公開公報第94/01775号; 国際公開公報第95/16207号; および国際公開公報第97/06439号に示されているものを含む。
【0141】
多くの側方流動装置は1段階の側方流動アッセイであり、この場合には、生体液を吸湿性ストリップ(とはいえ、非吸湿性材料を使用し、および、例えば界面活性剤を材料に適用することで、吸湿性にしてもよい)上のサンプル領域の中に入れて、その液体中の分析物と相互作用する特異的結合パートナーと、液体が接触するまでストリップに沿って移動させる。分析物が結合パートナーと相互作用したら、シグナル(蛍光色素または別の方法で可視的な色素のような)によって、相互作用が起きたことが示唆される。複数の別個の結合パートナーをストリップ上に(例えば、並行線で)配して、液体中の複数の分析物を検出することができる。試験ストリップは対照の指標を組み入れてもよく、これによって、分析物の存在(または非存在)を示す陽性のシグナルがストリップ上に見られなくても、試験が十分に行われたということのシグナルが得られる。
【0142】
側方流動装置の構築およびデザインは、例えば、(800) 645-5476での依頼により入手可能な、Millipore Corporation, A Short Guide Developing Immunochromatographic Test Strips, 2nd Edition, pp. 1-40, 1999; およびSchleicher & Schuell BioScience, Inc., 10 Optical Avenue, Keene, NH 03431, (603) 352-3810での依頼により入手可能な、Schleicher & Schuell, Easy to Work with BioScience, Products and Protocols 2003, pp. 73-98, 2003, 2003に記述されているように、当技術分野において非常に周知であり、それらの両方が参照により本明細書に組み入れられる。
【0143】
側方流動装置は、当技術分野において等しく周知である多種多様な物理的形式を有する。適切な機能的相関において側方流動装置の基本的構成要素を支持するおよび/または収容する任意の物理的形式が本開示によって企図される。図7は側方流動装置のいくつかの例を示す。これらの例は、側方流動装置の構築において有用でありうる物理的態様のいくつかを実証する。
【0144】
側方流動装置の特定の態様の基本的構成要素は図8に図解されており、この図には長い筺体10が、筺体10の全長に実質的に及ぶ吸湿性の側方流動ストリップ12を含んでいる特定の態様が示されている。側方流動ストリップ12は、サンプル導入口15の下部に位置した近位のサンプル適用パッド14、中間の試験結果膜16、および遠位の吸収性パッド18に分けられる。流動ストリップ12は、標識コンジュゲート(金コンジュゲートプロテインA、金コンジュゲートプロテインG、金コンジュゲート抗ヒトAbのような)を含有するコンジュゲートパッド20によって中断されている。ストリップ12に沿う流路は吸収性パッド18での最終的な回収に向けて、近位のパッド14から、コンジュゲートパッド20を通って、試験結果膜16の中に進む。選択的な結合剤(アンカー抗体-リポイド抗原複合体のような)は、試験結果膜16中の近位の試験ライン22上に位置付けられている。制御ライン24は試験ライン22よりわずかに遠位の試験結果膜16の中に備えられている。
【0145】
図8に図解されている側方流動装置の特定の態様の動作において、抗リポイド抗体のような、関心対象の分析物を含有する流体サンプルはサンプル導入口15を通してサンプルパッド14に適用される。いくつかの例では、サンプルはサンプル導入口15に液滴で、または、あまり好ましくはないが、サンプル導入口15を含む装置の末端をサンプルの中に浸すことで適用することができる。サンプルが全血である他の例では、任意の展開液(developer fluid)を血液サンプルに添加して、赤血球の溶血を引き起こしても、および、場合によっては、全血サンプルの適切な希釈をしてもよい。サンプルパッド14から、サンプルは、例えば毛管現象により、コンジュゲートパッド20に移動する。コンジュゲートパッド20において、関心対象の分析物は移動性もしくは可動性の検知試薬に結合する(またはそれによって結合される)ことができる。例えば、抗リポイド抗体分析物は、コンジュゲートパッドに含有される標識(例えば、金コンジュゲート)プロテインAまたは金コンジュゲートカルジオリピン検知試薬に結合することができる。検知試薬と複合体を形成した分析物はその後、試験結果膜16へ流れることができ、そこでその複合体がさらに、近位の試験ライン22に固定化されている、分析物に特異的な結合パートナー(酸化カルジオリピン-付着分子複合体のような)と相互作用することができる。いくつかの例では、検知試薬(金コンジュゲートカルジオリピン、標識(例えば、金コンジュゲート)プロテインA、標識(例えば、金コンジュゲート)プロテインG、標識(例えば、金コンジュゲート)抗ヒトAbのような)と複合体を形成した抗リポイド抗体はさらに、近位の試験ライン22に固定化されている、未標識の、酸化カルジオリピン-付着分子複合体に結合することができる。抗リポイド抗体と、標識(例えば、金コンジュゲート)検知試薬と、固定化されている酸化カルジオリピン-付着分子複合体との間の免疫複合体の形成は近位の試験ライン22での可視的なラインの出現によって検出することができ、これは、近位の試験ライン22の局所領域における標識(例えば、金)の蓄積に起因する。制御ライン24は、分析物の存在下または非存在下において検知試薬に結合できる、固定化された、検知試薬に特異的な結合パートナーを含有することができる。制御ライン24でのそのような結合から、関心対象の分析物の非存在下でさえも、試験の適切な実行が示される。
【0146】
側方流動装置の別の態様において、試験結果膜16中の試験ライン22と平行にもしくは垂直に(またはその他任意の空間的関係に)位置する第2の試験ラインがあってもよい。この特定の態様の動作は、(i) 抗梅毒トレポネーマ抗体または梅毒トレポネーマ生物もしくは抗原のような、第2の分析物に特異的な第2の検知試薬がコンジュゲートパッドに含有されることができ、および(ii) 第2の試験ラインがサンプル中の第2の分析物に親和性を有する第2の特異的結合パートナーを含有することをさらに考慮のうえで、直前の段落に記述されているものと同様である。例えば、第2の試験ラインは、サンプル中に存在する抗梅毒トレポネーマ抗体を特異的に結合するような固定化されたトレポネーマ抗原を含有してもよく、またはサンプル中に存在する梅毒トレポネーマ抗原もしくは生物を特異的に結合するような固定化された抗梅毒トレポネーマ抗体を含有してもよい。
【0147】
側方流動装置の構成要素に有用な材料のいくつかが表1に示されている。しかしながら、当業者は、特定の側方流動装置において使用される特定の材料が、例えば、検出される分析物、サンプル容量、望ましい流速およびその他のものを含め、いくつかの不確定要素に依ることを認識し、および有用な材料を日常的に適宜選択することができる。
【0148】
(表1)

【0149】
1. サンプルパッド
サンプルパッド(図8中のサンプルパッド14のような)は、サンプルを最初に受ける側方流動装置の任意の構成要素であり、サンプルから微粒子を除去する役割を果たすことができる。サンプルパッドを構築するのに使用できる種々の材料(表1参照)のなかで、大きなベッド容量(例えば、250 μl/cm2)が特定の適用の因子であるなら、セルロースサンプルパッドが有益でありうる。サンプルパッドは緩衝剤、塩、タンパク質、界面活性剤、および界面活性物質のような、1つまたは複数の放出剤(release agent)で処理することができる。このような放出剤は、例えば、コンジュゲートパッド構成要素の再可溶化を促進するのに、およびニトロセルロース膜のような、側方流動装置の他の構成要素における非特異的な結合部位を遮断するのに有用でありうる。代表的な放出剤は、例えば、トレハロースまたはグルコース(1%〜5%)、PVPまたはPVA (0.5%〜2%)、Tween 20またはTriton X-100 (0.1%〜1%)、カゼイン(1%〜2%)、SDS (0.02%〜5%)、およびPEG (0.02%〜5%)を含む。
【0150】
2. 膜および適用溶液:
側方流動装置において有用な膜のタイプ(ニトロセルロース、ナイロンおよびPVDFのような)、ならびに捕捉試薬をこのような膜に適用するための考慮は、これまでに論じられている。
【0151】
3. コンジュゲートパッド
コンジュゲートパッド(図8中のコンジュゲートパッド20のような)は、とりわけ、検知試薬を保持する役割を果たす。いくつかの態様において、検知試薬は、例えば、顕色剤容器より外部から適用されてもよく、この場合、側方流動装置はコンジュゲートパッドを含む必要がない(例えば、米国特許第4,740,468号を参照のこと)。
【0152】
コンジュゲートパッドに含有される検知試薬は、典型的には、試験サンプルの適用によって溶液中に放出される。コンジュゲートパッドは、検知試薬の溶液への放出に影響を与えるよう種々の物質で処理することができる。例えば、コンジュゲートパッドはPVAもしくはPVP (0.5%〜2%)および/またはTriton X-100 (0.5%)で処理することができる。その他の放出剤は、限定するものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、SDS、Brijおよびβ-ラクトースを含む。2つまたはそれ以上の放出剤の混合物を任意の所与の用途において使用することができる。特定の開示態様において、コンジュゲートパッド20中の検知試薬は、金コンジュゲート酸化カルジオリピン、標識プロテインA、標識プロテインG、または標識抗ヒトIgGである。
【0153】
4. 吸収性パッド
側方流動装置における吸収性パッド18の使用は任意である。吸収性パッドは、装置に入るサンプルの全量を増やす働きをする。この容量増大は、例えば、膜から未結合の分析物を洗い流すのに有用でありうる。さまざまな材料のいずれも吸収性パッドを調製するのに有用であり、例えば、表1を参照されたい。いくつかの装置の態様において、吸収性パッドは紙(すなわち、セルロース繊維)でありうる。当業者は、例えば、その厚さ、圧縮率、およびベッド容量の均一性に基づいて、紙の吸収性パッドを選択することができる。作出された吸収剤の容量取り込みは、吸収性パッドの寸法(通常は長さ)を変化させることで調整することができる。
【0154】
D. 抗原でコーティングされたマイクロタイタープレート
その他の一般的な固体表面ベースの免疫アッセイは、酵素連結免疫吸収アッセイ(またはELISA)のような、さまざまな形態の免疫吸収アッセイである。これらのアッセイでは、典型的には、マイクロタイタープレートのウェルに適用された抗原(例えば、酸化カルジオリピン-付着分子複合体)を必要とする。このアッセイでは、関心対象の分析物(例えば、抗リポイド抗体)を含有する可能性のある試験サンプル(例えば、血清または血液)を、対象分析物に特異的な、固定化された結合パートナー(例えば、酸化カルジオリピン-付着分子複合体)を含有するマイクロタイタープレートのウェルに入れる。分析物は固定化抗原に特異的に結合する; その後、未結合の材料を洗い流し、プレートに結合された分析物-抗原複合体を主として残す。この複合体は、上記に詳細に記述されているように、さまざまな方法で検出することができる。マイクロタイタープレート形式の利点の1つは、複数のサンプルを同一プレートの1つまたは複数の異なるウェルの中でそれぞれ同時に(対照と一緒に)試験し、したがって多数のサンプルの高速大量処理分析を可能にできることである。
【0155】
E. 抗原の組み合わせ
本明細書において論じられている免疫アッセイおよび/または免疫アッセイ装置(例えば、ELISA、ディップスティック、流入装置または側方流動装置)の各々は、いくつかの態様において、他の関心対象の分析物(例えば、トレポネーマ抗原)に特異的な捕捉試薬の添加により複数の分析物を検出するように形式を定めることができる。例えば、マイクロタイタープレートのある特定のウェルは、他の関心対象の分析物に特異的な捕捉試薬を含むことができる。いくつかの免疫アッセイ装置の態様では、他の関心対象の分析物に特異的な捕捉試薬を含有する第2の、第3のまたはそれ以上の捕捉領域を含むことができる。
【0156】
特定の態様では、流体サンプル(例えば、ヒト血清)中の抗リポイド抗体およびトレポネーマまたは抗トレポネーマ抗体を同時に検出する免疫アッセイ装置を必要とする。そのような組み合わせ装置はさらに、(a) 抗梅毒トレポネーマ抗体により特異的に結合されうる固定化されたトレポネーマ抗原、または(b) 移動性のトレポネーマ抗原に特異的に結合する固定化された抗梅毒トレポネーマ抗体を含んだトレポネーマ捕捉領域を含む。本明細書において用いられる「トレポネーマ抗原」とは、抗梅毒トレポネーマ抗体に特異的に結合する少なくとも1つの抗原決定基を含んだ抗原である。多数のトレポネーマ抗原が当技術分野において報告されている; 例えば、米国特許第6,479,248号; 同第6,248,331号; 同第5,681,934号; 同第5,578,456号; 同第4,868,118号; および同第4,740,467号を参照されたい。例えば、少なくとも以下の見掛けの分子量のポリペプチドが梅毒トレポネーマ抗原として報告されている: 16〜20 kDa、18 kDa、18〜23 kDa、25 kDa、35 kDa、37 kDa、37〜46 kDa、38 kDa、39 kDa、41 kDa、43 kDa、44 kDa、46 kDa、47 kDa、58 kDa、150 kDa; および180 kDa (さらなる詳細については、米国特許第4,846,118号を参照のこと)。
【0157】
トレポネーマ抗原および抗梅毒トレポネーマ抗体はポリペプチドである; したがって、捕捉試薬として使用される場合、これらの分子は固体支持体(例えば、ニトロセルロース、ナイロンまたはPVDF)に直接的に付着することができる。それでもなお、トレポネーマ抗原または抗梅毒トレポネーマ抗体は任意の利用可能な方法により固体支持体上に(直接的にまたは間接的に)固定化できると考えられる。
【0158】
検知試薬はトレポネーマ捕捉試薬とトレポネーマ特異的な分析物(例えば、トレポネーマ、トレポネーマ抗原、または抗トレポネーマ抗体)との間の複合体の形成を検出するのに使用することができる。いくつかの態様において、検知試薬(抗ヒトAbのような)は、結合されたトレポネーマ特異的な分析物(例えば、ヒト抗トレポネーマ抗体)および結合された抗リポイド抗体分析物(例えば、ヒト抗リポイド抗体)を特異的に検出することができる。その他の例では、結合されたトレポネーマ特異的な分析物(例えば、抗トレポネーマ抗体もしくはトレポネーマ抗原)または結合された抗リポイド抗体分析物の特異的検出に向けて2つの別個の検知試薬が想定される。
【0159】
同時並行トレポネーマおよび非トレポネーマ試験を行うのに有用な免疫アッセイ装置の動作は、本明細書において他の箇所に記述されている装置と実質的に同様である。組み合わせ装置の特定の特徴の1つは、サンプル適用領域に適用された流体サンプルが抗リポイド抗体捕捉領域の、およびトレポネーマ捕捉領域への各々と連絡をする(例えば、それらに流れるまたはそれらの中を流れる)ことが可能だということである。
【0160】
その他の免疫アッセイおよび免疫アッセイ装置の態様では、酸化カルジオリピン含有の抗原(例えば、酸化カルジオリピン-付着分子複合体)および抗リポイド抗体に特異的な他の抗原の組み合わせ; 例えば、カルジオリピン、レシチンおよびコレステロールを含む固定化されたリポイド抗原を必要とする。リポイド抗原の固定化はPCT/US2006/024117のなかで詳細に記述されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。一例を挙げれば、カルジオリピン(例えば、天然または合成カルジオリピン)、レシチンおよびコレステロールを含むリポイド抗原をリポイド抗原に特異的なFab断片の集団と接触させて、リポイド抗原-Fab複合体をもたらし、この複合体は、酸化カルジオリピン含有の抗原との組み合わせで固体支持体に容易に付着可能である。
【0161】
VII. キット
本明細書において開示されるのは、サンプル(例えば、生体サンプル)中の抗リポイド抗体を検出するのに用いられるキットである。そのようなキットは、例えば、抗リポイド抗体の存在が疾患の微侯となる疾患(例えば、梅毒または狼瘡)の診断において使用することもできる。開示されているキットのある種の態様は、一般に携帯用であり、例えばポイントオブケア施設においてなど、実験室施設の必要なく抗リポイド抗体を検出するための、および/または疾患(梅毒のような)を診断するための、簡便な、短時間の、および/または費用効果的な方法をもたらす。
【0162】
キットは、本明細書において開示されている1つまたは複数の免疫アッセイ装置(および/または抗原でコーティングされたマイクロタイタープレート)ならびに箱、袋、小型かばん、プラスチック大型容器(成型プラスチックもしくは他の透明包装のような)、包装体(wrapper)(例えば、密封されたかもしくは密封可能なプラスチック、紙、または金属包装体)、あるいは他の容器のような、運搬手段を含む。いくつかの例では、キット構成要素は箱または他の容器のような、単一の包装単位に収まっており、この包装単位は、キットの1つまたは複数の構成要素を配置できる区画を有することができる。その他の例では、キットは、例えば、試験される1つもしくは複数の生体サンプル、陽性および/もしくは陰性対照のサンプルもしくは溶液(例えば、抗リポイド抗体もしくは抗トレポネーマ抗体を含有する陽性対照の血清)、希釈剤(例えば、リン酸緩衝液、もしくは生理食塩緩衝液)、検知試薬(例えば、キット装置への外部適用の場合)、検知試薬酵素の可視化用の基質試薬(例えば、リン酸5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル、ニトロブルーテトラゾリウムのジメチルホルムアミド液)、ならびに/または洗浄液(例えば、トリス緩衝液、生理食塩緩衝液、もしくは蒸留水)を保持できる1つまたは複数の容器、例えばバイアル、管などを含む。
【0163】
他のキットの態様では、注射器、指-プリック装置、アルコール消毒綿、正方形ガーゼ、綿ボール、包帯、ラテックス手袋、さまざまな数の溝(troughs)を有するインキュベーショントレイ、接着プレートシーラ、データ報告シートを含み、これらは生体サンプルの取り扱い、回収および/または処理に有用でありうる。キットは同様に、例えば、スポイト、ディスポ(Dispo)-ピペット、毛細管、ゴム球(例えば、毛細管用)などを含め、免疫アッセイ装置のサンプルチャンバの中にサンプルを導入するのに有用な道具を任意で含んでもよい。さらに他のキットの態様では、使用された免疫アッセイ装置および/または装置で使用された他の物品(患者サンプルなどのような)を処分するための廃棄手段を含むことができる。そのような廃棄手段は、限定されるものではないが、プラスチック、金属または他の不浸透性の袋、箱もしくは容器のような、廃棄材料からの漏出物を含有できる容器を含むことができる。
【0164】
いくつかの例では、開示のキットは免疫アッセイ装置または抗原でコーティングされたプレートの使用説明書を含むであろう。使用説明書は、サンプルを試験装置またはプレートに適用する方法に関する指示、結果が明らかになるのを待つために必要なまたは勧められる時間の量、および試験の結果を解読および解釈する方法に関する詳細を提供することができる。そのような使用説明書は同様に、試験の結果の比較のための標準的な表、グラフ、または図のような、標準を含むことができる。これらの標準は任意で、試験装置を用いて分析物を定量化するのに必要な情報、例えば、シグナルの強度またはシグナル線の数を、したがってサンプル中に存在する分析物の量に関連付ける標準曲線を含んでもよい。
【実施例】
【0165】
以下の例はある種の特定の特徴および/または態様を例証するために与えられる。これらの例は、記述されている特定の特徴または態様に本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0166】
実施例1
カルジオリピンの酸化
この例では、未修飾カルジオリピンの不飽和脂肪酸中の二重結合の、カルボキシル基への酸化について記述する。
【0167】
凍結乾燥カルジオリピン(Avanti Polar Lipids (Alabaster, AL))およそ100 mgをt-ブタノール2 mlに溶解し、アルゴン雰囲気の下、バイアルに入れた。m-過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4) 60 mgを蒸留水600 μlに溶解し、絶え間なく撹拌しながら、カルジオリピン懸濁液に滴下した。その直後に、蒸留水400 μlに溶解された過マンガン酸(KMnO4) 8 mgを、絶え間なく撹拌しながらNaIO4反応混合物に滴下した。混合物は変色し(図1B)、これを室温で24〜48時間混合させた。
【0168】
カルジオリピンの酸化度を薄層クロマトグラフィー(TLC)で定性的に測定した。クロロホルム:メタノール:水酸化アンモニウム溶液(容量で61.9:30.9:7.1)およそ10 mlを100 mlビーカーに入れた。折り畳んだろ紙をビーカー内に入れて、溶媒で飽和するようにさせた。
【0169】
NaIO4/KMnO4反応混合物1 μlおよび20 mg/mlカルジオリピンt-ブタノール(対照)溶液1 μlをTLCシリカゲルの7.5 cm×2.5 cmストリップの末端から1 cmに配した。ストリップをビーカー中のろ紙に対して配し、溶媒をストリップの上部へ移動させた。
【0170】
ストリップを溶媒から取り出した後に、これを蒸発乾固させた。その後、ストリップをモリブデンブルー(Spray Reagent; Alltech; 品番18213)少なくとも10 ml含有の5%エタノール50 mlの中に簡単に浸すことで湿らせた。ストリップをヘアドライヤーの助けにより乾式加熱して、染色液を発色させた。
【0171】
カルジオリピンの酸化が完了次第、NaIO4/KMnO4反応混合物の反応を、絶え間なく撹拌しながら蒸留水200 μl中の亜硫酸水素ナトリウム80 mgを加えることで停止させた。その後、有色の混合物が無色になった(図1Bおよび図1Cを比較されたい)。停止済の反応混合物を1000×gで5分間遠心分離した。遠心分離後、2つの可視的な相が認められた(図1D)。
【0172】
任意に、上清のt-ブタノール相を蒸発用丸底フラスコの中に入れて、真空下で乾燥した。あるいは、t-ブタノール相を10 mMリン酸緩衝液pH 8.0、または他の緩衝液に対し透析して、アルコール溶媒を、その中に含有されている酸化カルジオリピンの次の使用目的に、例えば、免疫クロマトグラフィーアッセイでの使用に、または、例えば、付着分子へのコンジュゲーションに適した溶液と置き換えてもよい。
【0173】
図2に示した通り、未修飾カルジオリピンは、レーンAにおいて起点から最も遠い灰色点で示されるように、TLCストリップの上部に主として移動する。第IV節に記述されているように、カルジオリピンは天然には、不均一な分子集団を含む。リノール酸はカルジオリピン中の脂肪酸側鎖のおよそ90%を構成しているので、主にリノール酸含有のカルジオリピン分子(および密接に関連するカルジオリピン形態)が、図2、レーンA中の灰色点で表される可能性が高い。存在量の低いカルジオリピン形態は、異なる移動性を有する可能性が高く、移動の方向においてレーンAのなかで観察されるほんのわずかなスメアを占めうる。
【0174】
前述のように、カルジオリピンの酸化がアルケンを酸化し、脂肪酸側鎖を開裂し、脂肪酸側鎖の1つまたは複数の中にカルボキシル基を導入する。酸化カルジオリピンに存在するカルボキシル基はTLCストリップのシリカ基材といっそう強く相互作用し、このことがストリップに沿った酸化カルジオリピンの移動を遅らせる。それ故に、酸化カルジオリピン調製物(図2、レーンBおよびD1参照)では、移動の方向にスメアがいっそう顕著になる(レーンAをレーンBおよびD1と比較のこと)。さらに、脂肪酸側鎖の酸化的開裂はアルキルカルボン酸をもたらし、これはこれらの条件下のTLCストリップでの移動性が小さい。図2、レーンBおよびD2に示した通り、これらのカルボン酸は、起点と同一の広がりを持つ白色点(色素排除により)で表されるものと考えられる。この例に記述されるカルジオリピン酸化の後、カルジオリピンの酸化形態はt-ブタノール相に主として見出されたのに対し(図2、レーンD1に示されている)、アルキルカルボン酸は水相に主として見出された(図2、レーンD2参照)。
【0175】
梅毒血清との反応性によって判断されるように(例えば、実施例4参照)、上側のt-ブタノール相(「アルコール相」) (図2、レーンD1参照)は酸化カルジオリピン種を含有していたのに対し、下側の水相(図2、レーンD2参照)はTLCの結果に基づいてマロン酸およびカプロン酸の混合物を主に含有するものと思われた。
【0176】
実施例2
酸化カルジオリピンの活性化および付着分子とのコンジュゲーション
この例では、EDCおよびNHSを用いてBSAまたはKLHと酸化カルジオリピンをコンジュゲートするいくつかの方法を実証する。
【0177】
A. 第1法
実施例1に記述されているt-ブタノール相の完全な蒸発の後、乾燥酸化カルジオリピン調製物をおよそ25 mg/mlの濃度までN,N-ホルムアミド2 mlに懸濁した。EDC 10 mgおよびNHS 10 mgを蒸留水1 mlに溶解した。EDC/NHS溶液を次いで、酸化カルジオリピンを含有するホルムアミド溶液に添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌した。当業者が認識するように、EDCおよびNHSは酸化カルジオリピン中のカルボキシル基をアミン反応性のNHSエステルに変換するものと思われる。
【0178】
最大40倍までのモル過剰のBSAまたはKLHをEDC/NHS/酸化カルジオリピン混合物に添加し、この混合物を室温で1時間撹拌した。好ましくは、5 mg/ml KLHまたはBSA溶液およそ1 mlを添加した。反応混合物中のBSAまたはKLHの量が、(例えば、10 mg/mlまたはそれ以上まで)増すにつれて、タンパク質成分はそれ自体と架橋し、このことで沈殿物が出現するようになる可能性が高まる。この事象においては、沈殿物を遠心分離により分離し、それを廃棄することが必要になるかもしれない。
【0179】
反応混合物を、必要に応じて、清澄化し、次いで2回の、10 mMリン酸緩衝液, pH 8.0 1リットルの交換に対して透析した。この調製物を膜ろ過(Centriconフィルタ; Millipore)によりおよそ10 mg/mlの酸化カルジオリピンまで濃縮した。この酸化カルジオリピン溶液は、必要とされるまで2〜8℃または-20℃で貯蔵することができる。
【0180】
B. 第2法
実施例1に記述されているように、t-ブタノール相の完全な蒸発の後、乾燥酸化カルジオリピン調製物をおよそ25 mg/mlの濃度までN,N-ホルムアミド2 mlに懸濁した。このホルムアミド混合物をその後、この例の第1法に記述されているように、EDC/NHS溶液の添加の前に2回の、10 mMリン酸緩衝液, pH 8.0 1リットルの交換に対して透析した。EDC/NHS溶液の添加後の段階は、第1法に記述されているものと同じである。
【0181】
C. 第3法
酸化カルジオリピン調製物は、実施例1に記述されているt-ブタノール相を10 mMリン酸緩衝液, pH 8.0に対して透析した後に、凍結乾燥を行うことで調製した。後続の反応で用いるため、凍結乾燥済の酸化カルジオリピンをおよそ25 mg/mlまで水に再構成した。その後、蒸留水1 mlに溶解されたEDC 10 mgおよびNHS 10 mgを室温で1時間撹拌しながら酸化カルジオリピン溶液に添加した。EDC/NHS溶液の添加後の段階は、第1法に記述されているものと同じである。
【0182】
実施例3
酸化カルジオリピンのビオチン化
この例では、酸化カルジオリピンのビオチン化について記述する。
【0183】
酸化カルジオリピン(実施例1参照) 10 mgを100 mM N-モルホリノエタンスルホン酸(MES) 1 mlに溶解した。20 mg/mlビオチン-PEO-アミン100 μlを酸化カルジオリピン溶液に添加した。その直後に、新しく調製した1 mg/ml EDC溶液25 μlをビオチン/カルジオリピン混合物に添加し、溶液を室温で2時間混合した。反応混合物を次いで2回の、10 mMリン酸緩衝液, pH 8.0の交換に対して透析した。ビオチン化生成物を凍結乾燥によって濃縮し、その後、所望の濃度、例えば、10 mg/mlまで蒸留水で再構成することができる。
【0184】
実施例4
カルジオリピン調製物の抗原性
この例では、実施例1において調製された酸化カルジオリピンが2種の免疫アッセイを用いて梅毒血清に対して試験された場合に抗原性を保持することを実証する。
【0185】
A. RPR阻害試験
梅毒血清(ロット50L) 100 μlを、表2に記述されている酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLH調製物(およそ2.5〜5 mg/ml) 50 μlと混合した。酸化カルジオリピン調製物が抗原性を保持するなら、血清中に存在する抗リポイド抗体は酸化カルジオリピン調製物に特異的に結合するはずであり、このことが、利用可能な抗リポイド抗体結合部位の数を減らすように作用するはずである。言い換えれば、血清は抗リポイド抗体結合部位の一部または全部を「剥奪される」と考えられる。抗リポイド抗体結合部位を剥奪された血清は、従来のRPR試験において試験された場合に反応性が低くなろう。
【0186】
(表2)酸化カルジオリピン調製物

【0187】
剥奪(および対照)血清は、the Manual of Tests for Syphilis, 第9版, Washington, DC: American Public Health Association, 1998の第10章にしたがってRPR試験において試験した。
【0188】
表3に示した通り、5 mg/ml未コンジュゲートBSA 50 μlを添加した対照梅毒血清を加え、1:8の血清希釈でRPR試験抗原と反応させた。カルジオリピン調製物1〜12 (表2に記述されている)の各々との梅毒血清のインキュベーションにより、RPR試験抗原との血清の反応性が少なくとも2倍阻害された。この結果から、カルジオリピン調製物の各々が試験梅毒血清中に存在する抗リポイド抗体とある程度反応し、それによって剥奪血清がRPT試験抗原と反応するのを阻害したことが示唆される。例えば、カルジオリピン調製物2、11、および12との梅毒試験血清のプレインキュベーションにより、RPR試験において血清の反応性が完全に阻害された。
【0189】
(表3)RPR阻害試験の結果

カルジオリピン調製物の記述については表2を参照されたい
R = 強い陽性反応
R(-) = 陽性反応
Rm = 弱い反応
Rm(-) = 非常に弱い反応
N = 陰性反応
【0190】
B. 免疫ブロット試験
ドットブロットアッセイは、製造元の使用説明書にしたがってヤギ抗ヒトIgGアルカリホスファターゼとともにImmun-Blot(登録商標)アッセイキット(BioRad)を用いて行った。図5に示した通り、酸化カルジオリピン-BSA調製物5 (表2参照)は梅毒血清(ロット00)と、広い範囲の抗原(7.5〜120 μg)および抗体(1:10〜1:640希釈)濃度にわたって反応した。比較的に、調製物5は正常ヒト血清(すなわち、非梅毒血清)と、同じ範囲の抗原および抗体濃度にわたって全く反応しなかった。
【0191】
図5は同様に、血清ロット00 (1:640希釈)が全細胞梅毒トレポネーマ調製物と反応することを示しており、このことは、血清提供者が梅毒トレポネーマに感染していたことの確認になる。
【0192】
実施例5
酸化カルジオリピン金コンジュゲートの調製
この例では、コロイド金との酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLHのコンジュゲーション、およびこのような金コンジュゲートの調製に有用な条件の決定を実証する。このコロイド金調製物は、図7に関連して記述されている側方流動ストリップのような、側方流動ストリップ中のコンジュゲートとして使用することができる。
【0193】
A. 酸化カルジオリピン/コロイド金コンジュゲーション反応に有用なpHの決定
10 mMリン酸緩衝液およそ25 mlを50 mlのビーカーに入れて、0.2 Mリン酸でpH 5.0に調整した。pH 5.0の緩衝液の0.5 mlアリコート2つを「試験」とラベル付けされた1本と「対照」とラベル付けされたもう1本の、2本の12×75 mm試験管に移した。その後、ビーカー内に残るリン酸緩衝液のpHを0.2 M炭酸カリウムにより5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、および10.0に連続して調整した。各pHで、0.5 mlのアリコート2つをpH 5.0のサンプルで記述したように「試験」および「対照」試験管に移した。
【0194】
実施例2に記述のように調製された、5 mg/mlカルジオリピン-BSA調製物6 μLまたは5 mg/mlカルジオリピン-KLH調製物(30 μg)を「試験」および「対照」の管の各々に添加し、十分に混合した。
【0195】
40 nmのコロイド金(1%溶液) (British Biocell International, London, England)およそ25 mlを別個の50 mlのビーカー内に入れて、pH 5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、および10.0の一連の「対照」および「試験」コロイド金サンプルを上記のように作出した。
【0196】
各pHのコロイド金1 mlを、対応するpHを有する「試験」および「対照」カルジオリピン溶液に添加した。金/カルジオリピン溶液を十分に混合し、室温で20分間インキュベートした。その後、2 M NaCl 200 μLを、「試験」とラベル付けされた管の組に添加し、蒸留水200 μLを「対照」とラベル付けされた管の組に添加した。管の両組の内容物を室温で30分間インキュベートさせた。
【0197】
各「試験」サンプルの580 nmでの光学密度(OD580)を、対応する「対照」サンプルに対して測定した。最も低いOD580を有するサンプルのpHを酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLH調製物の金コンジュゲートの形成に好ましいpHであると決定した。
【0198】
コロイド金粒子は、製造工程の間に金粒子表面上に吸着された陰イオンの層によって負に帯電した表面を有する。酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLH調製物中のBSAまたはKLHのような、タンパク質はイオン相互作用、疎水性相互作用、および配位(dative)相互作用を通じて負に帯電した金粒子に引き付けられる。これらの相互作用はコロイド金-タンパク質コンジュゲートの形成の基礎となる。金粒子にコンジュゲートされたタンパク質のpI (すなわち、タンパク質が正味ゼロの電荷を有するpH)で、コンジュゲートは最も安定なものになると考えられる。
【0199】
未コンジュゲートのコロイド金粒子にNaClを加えることで、金の表面に吸着された負電荷イオンの層が破壊される。結果として、金粒子が解離し、最終的には金イオン(すなわち、Au+)を溶液中に放出する。この遊離金イオンをOD580で測定することができる。対照的に、タンパク質-金コンジュゲート(例えば、酸化カルジオリピン-BSA-金コンジュゲートまたは酸化カルジオリピン-KLH-金コンジュゲート)は、コンジュゲートのタンパク質成分のpIで(例えば、酸化カルジオリピン-BSAのpIでまたは酸化カルジオリピン-KLHのpIで) NaClによる破壊に抵抗性がある。故に、この例において、最も低いOD580を有するサンプルのpHを選択する。
【0200】
各酸化カルジオリピン-付着分子(例えば、酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLH)調製物中の付着分子とのカルジオリピンのモル比は異なりうるので、このような各調製物のpIも異なりうる。したがって、作出された各酸化カルジオリピン-付着分子調製物に対し、この例において記述されているように、有用なpHを決定することが有益である。
【0201】
B. コロイド金コンジュゲーション反応に有用なカルジオリピン-BSAまたはカルジオリピン-KLH濃度の決定
蒸留水100 μlを一連の11本の12×75 mm試験管中の各々に添加した。その後、カルジオリピン-BSAまたはカルジオリピン-KLHのいずれかの1 mg/ml溶液1 μl、2 μl、5 μl、7 μl、10 μl、15 μl、25 μl、50 μl、75 μlまたは100 μlを一連の対応する管に添加した。一連の11本の管を対照として役立てた。各管を十分に混合し、5分間室温でインキュベートさせた。この時点で、各管中の溶液は色が赤色であった。10% NaCl溶液500 μlを次いで、振盪しながら各管に添加し、これらの管を再び5分間室温でインキュベートした。各管の溶液の色は、NaClの添加後に赤色から青色へいくぶん変わったと目で観察された。金コンジュゲートを安定化するのに有用なカルジオリピン-付着分子の最小量は、NaCl添加後の青色溶液中のカルジオリピン-付着分子の最低濃度であると決定された。
【0202】
より高濃度の酸化カルジオリピン-付着分子複合体は、有用であるが、あまり好ましくはない。何故なら、過剰の酸化カルジオリピン-付着分子複合体が、例えば、金粒子とすでに結び付いたカルジオリピン-付着分子複合体の層上に層をなすことで、金粒子との弱い結び付きを生じうるからである。
【0203】
同様に、より低濃度の酸化カルジオリピン-付着分子複合体は有用でありうるが、あまり好ましくはない。何故なら、未コンジュゲートの金粒子が金-コンジュゲートカルジオリピン-付着複合体の他の用途においてバックグラウンド「ノイズ」をもたらしうるからである。あるいは、未コンジュゲートの金粒子は遠心分離またはろ過のような、当技術分野において一般的に公知の方法を用いて金-コンジュゲートカルジオリピン-付着分子複合体から分離されてもよい。
【0204】
C. カルジオリピン-BSAまたはカルジオリピン-KLH金-コンジュゲートの少量調製
特定の酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLHの調製のため、上記のように有用なpHおよび有用な酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLH濃度を決定する。有用なpHがpH 8.0またはそれ以上であるなら、有用な濃度を達成するのに必要な凍結乾燥済の酸化カルジオリピン-付着分子複合体の量に10 mMホウ酸緩衝液5 mlを添加し; その後、pHを有用なpHに調整する。有用なpHがpH 8.0またはそれ以下であるなら、有用な濃度を達成するのに必要な凍結乾燥済の酸化カルジオリピン-付着分子複合体の量に10 mMリン酸緩衝液5 mlを添加し; その後、pHを有用なpHに調整する。次に、40 nmのコロイド金(有用なpHに調整された1%溶液) 10 mlを添加し、十分に混合する。混合物を室温で20分間インキュベートする。その後、10% BSA 1.6 mlを1% BSAの終濃度にまで添加し、室温でさらに20分間インキュベートする。反応混合物を10分間6500×gで遠心分離し、上清を除去する。ペレットを再懸濁緩衝液(150 mM NaCl、20 mM Trizma塩基、10%スクロース、5%トレハロース、0.1% BSA、0.05%アジ化ナトリウム) 0.5 mlに再懸濁する。金コンジュゲートされた酸化カルジオリピン-BSAまたは-KLHを含有する再懸濁済のペレットは、限定されるものではないが、側方流動装置における抗リポイド抗体の検知試薬としてなどの、さまざまな目的に使用することができる。
【0205】
実施例6
ニトロセルロースへのカルジオリピン-付着分子複合体の付着
この例では、カルジオリピン-タンパク質複合体を固体表面、この場合は、ニトロセルロースに付着させるための代表的な方法について記述する。
【0206】
特定の酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLHの調製のため、上記のように有用なpHを決定する。凍結乾燥済の酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLH複合体を10 mM酢酸ナトリウム緩衝液(有用なpH値4.0〜5.6の場合)または10 mMリン酸緩衝液(有用なpH値7.0〜9.0の場合)のいずれかに再懸濁する。pH値4.0〜5.6の場合2 M酢酸でまたはpH値7.0〜9.0の場合1 Mモノ-もしくはジ-ナトリウムリン酸で、溶液を有用なpHに調整する。エタノール(0.5%)を酸化カルジオリピン溶液に任意で添加して、溶液の粘性を低下させることにより試薬用途を向上させてもよい。その後、Matrix 1600試薬分注モジュール(Kinematic Automation, Twain Harte, CA)を製造元の指示にしたがって用い、酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLH溶液をニトロセルロースに適用する。
【0207】
ニトロセルロースへの酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLH調製物の適用の後、この膜は、例えば、側方流動装置での使用の前に37℃で30分間、引き続き真空デシケータ中で2時間乾燥されるべきである。
【0208】
実施例7
酸化カルジオリピン-タンパク質コンジュゲート捕捉試薬によるヒト血清中の抗リポイド抗体の検出
この例では、移動性の酸化カルジオリピン-タンパク質-金コンジュゲート検知試薬と協調して、梅毒血清中の抗リポイド抗体を、ニトロセルロース膜に固定化されている酸化カルジオリピン-タンパク質コンジュゲート捕捉試薬により検出できることを実証する。
【0209】
調製物1〜17 (表2に記述のように) 1 μlをそれぞれ、実施例6に記述されているように別個のニトロセルロース膜に適用し、傍らに取っておいた。酸化カルジオリピン調製物6 (表2参照)を用いて実施例5に記述されているように、コロイド金コンジュゲートを調製した。
【0210】
梅毒血清(ロット00)または非反応性(正常、ヒト)の血清を1:10に希釈し、40ウェルマイクロタイタープレートの適切な数の別個のウェルの中に入れた。次に、金-コンジュゲート調製物6 (検知試薬用として) 3 μlを各ウェルに添加した。次いで、この抗体および検知試薬の溶液を含有するウェルの中に、固定化された調製物1〜17 (表2参照)の各々を含有するニトロセルロースストリップを入れた。ウェル中の溶液は毛細管作用によりストリップを上に向かって流れた。各固定化された酸化カルジオリピン調製物を梅毒血清および非反応性(すなわち、対照)の血清の両方に対して試験した。
【0211】
表4に示した通り、ニトロセルロースの中または上に固定化された酸化カルジオリピン調製物の多くは、固定化された酸化カルジオリピン捕捉試薬と、少なくとも1つの抗リポイド抗体と、酸化カルジオリピン金コンジュゲート検知試薬との間の「サンドイッチ」複合体を示す陽性反応を示した。反応性は、4+がニトロセルロースストリップ上で観察された最も強いシグナルを示すとし、0 (陰性)から4+の段階で測定した。
【0212】
(表4)

【0213】
実施例8
カルジオリピンおよびレシチンの混合物の酸化
この例ではカルジオリピンおよびレシチンの混合物の酸化について記述し、カルジオリピンおよびレシチンの酸化混合物が実施例4〜7に記述されているアッセイにおいて酸化カルジオリピン単独と少なくとも同様に機能することを実証する。
【0214】
カルジオリピンおよびレシチンを1:1、1:3、および1:5の、カルジオリピンのレシチンとの重量比で一緒に混合した。混合物を次いで、実施例1に記述されているように酸化した。図8、レーンAに示した通り、未修飾カルジオリピンおよび未修飾レシチンの混合物はTLCストリップ上の2点に分解する。未修飾カルジオリピンは、起点から最も遠い灰色点で示されるように、TLCストリップの上部に移動する(同様に、図2、レーンAを参照のこと)。未修飾レシチンはTLC場(place)にて若干遅れて移動し、カルジオリピンと起点との間のほぼ中間の灰色点として示される。
【0215】
前述のように、実施例1の条件下の酸化がアルケンを酸化し、脂肪酸側鎖を開裂し、カルジオリピンおよびレシチンの脂肪酸側鎖の1つまたは複数の中にカルボキシル基を導入する。酸化分子に存在するカルボキシル基はTLCストリップのシリカ基材といっそう強く相互作用し、このことがストリップに沿った酸化形態の移動を遅らせる。それ故に、カルジオリピンおよびレシチンの酸化混合物では、移動の方向に顕著なスメアが観察される(図8、レーンBおよびCを参照のこと)。さらに、脂肪酸側鎖の酸化的開裂はアルキルカルボン酸をもたらし、これはこれらの条件下のTLCストリップでの移動性が小さい。図8、レーンDにおいて特に明らかなように、これらのカルボン酸は、起点と同一の広がりを持つ白色点(色素排除により)で表されるものと考えられる。この例に記述のカルジオリピン/レシチン混合物の酸化の後、カルジオリピンの酸化形態はt-ブタノール相に主として見出されたのに対し(図8、レーンCに示されている)、アルキルカルボン酸は水相に主として見出された(図8、レーンD参照)。
【0216】
A. 酸化カルジオリピン/レシチン混合物のBSAおよびKLHコンジュゲーション
カルジオリピンおよびレシチンの酸化混合物を実施例2の第3法に記述されているように、BSAまたはKLHのいずれかにコンジュゲートした。BSAにまたはKLHにコンジュゲートされたカルジオリピン/レシチン調製物は、表5に記述されている。
【0217】
(表5)カルジオリピン/レシチン混合物

【0218】
B. 酸化カルジオリピン/レシチン混合物のRPR阻害試験
表5に記述されているカルジオリピン/レシチン調製物の抗原性を実施例3に記述されているように、RPR阻害試験において試験した。表6に示した通り、カルジオリピン/レシチン調製物の各々が従来のRPR試験において梅毒血清の反応性を完全に阻害した。
【0219】
(表6)カルジオリピン/レシチン混合物のRPR阻害試験の結果

R = 強い陽性反応
R(-) = 陽性反応
Rm = 弱い反応
Rm(-) = 非常に弱い反応
N = 陰性反応
【0220】
この結果から、酸化カルジオリピン/レシチン混合物が抗リポイド抗体を梅毒血清から非常に効率的に剥奪し(すなわち、除去し)、したがってこのような血清は従来のRPR試験において非反応性であることが実証される。
【0221】
C. 酸化カルジオリピン/レシチン混合物の免疫ドット試験
ドットブロットアッセイは、製造元の使用説明書にしたがってヤギ抗ヒトIgGアルカリホスファターゼとともにImmun-Blot(登録商標)アッセイキット(BioRad)を用いて行った。図10に示した通り、ドットあたり375 ng〜21 μgの範囲の酸化カルジオリピン/レシチン混合物が梅毒血清(ロット94265; 1:50希釈)と反応した。比較的に、酸化カルジオリピン/レシチン調製物の試験量のどれも正常ヒト血清(すなわち、非梅毒血清)との有意な反応を示さなかった。
【0222】
カルジオリピンおよびレシチンが(重量で) 1:1の比で酸化され、次いでBSAまたはKLHのいずれかにコンジュゲートされた調製物(すなわち、1:1 BSAおよび1:1 KLH)は、梅毒血清と最も反応性であった。わずか375 ngの1:1 BSA調製物および656 ngの1:1 KLH調製物しか、このアッセイにおいて梅毒血清中に存在するヒト抗体に結合しなかった。
【0223】
実施例9
プロテインAまたは抗ヒト抗体捕捉試薬によるヒト血清中の抗リポイド抗体の検出
この例では、移動性の酸化カルジオリピン-タンパク質-金コンジュゲート検知試薬と協調して、ヒト血清中に存在する抗リポイド抗体を、ニトロセルロース膜に固定化されているプロテインAまたは抗ヒト抗体捕捉試薬により検出できることを実証する。
【0224】
全血は、血清レベルの抗リポイド抗体を生ずる状態の危険性があると思われるヒト被験体から回収される。そのような状態は、例えば、梅毒トレポネーマ感染症(すなわち、梅毒)または狼瘡を含む。当技術分野において公知の方法により、全血から血清が分離される。血清は、例えば、生理食塩水あるいは血清中に存在する抗リポイド抗体の特異的結合を変性させるかもしくはその結合に別の形で影響を与えるか、または所望の方法を別の形で妨害するかしないような他の溶液で希釈することができる。
【0225】
血清サンプルは、移動性または可動性の、標識された酸化カルジオリピン-タンパク質コンジュゲート検知試薬を含有するニトロセルロースストリップに適用される。そのようなコンジュゲートは、例えば、金標識された酸化カルジオリピン-BSA、もしくは金標識された酸化カルジオリピン-KLHコンジュゲート、または金標識された、酸化カルジオリピンおよび酸化レシチンのBSAコンジュゲート混合物、もしくは金標識された、酸化カルジオリピンおよび酸化レシチンのKLHコンジュゲート混合物でありうる。
【0226】
血清サンプル中に存在する抗リポイド抗体は、検知試薬のカルジオリピンに結合し、プロテインAまたは抗ヒト抗体捕捉試薬が固定化されているニトロセルロースストリップの部分に(例えば、毛細管作用により、または側方流動力により)流れよう。カルジオリピン検知試薬と複合体を形成した抗リポイド抗体は、プロテインAまたは抗ヒト抗体捕捉試薬によって捕捉されよう。このように検知試薬複合体の蓄積によって、捕捉試薬が固定化されている領域中のニトロセルロース上に検出可能なシグナル(例えば、可視的なシグナル)が得られる。
【0227】
記述の検出可能なシグナルの出現から、抗リポイド抗体が血清サンプル中に存在し、梅毒または狼瘡のような、ある種の状態の診断において有用でありうることが示唆される。
【0228】
実施例10
酵素連結免疫アッセイによるヒト血清中の抗リポイド抗体の検出
この例では、ヒト血清中に存在する抗リポイド抗体を、酵素連結免疫アッセイの実行のためマイクロタイタープレートに固定化されている、BSAまたはKLHにコンジュゲートされた酸化カルジオリピンを捕捉試薬として用いることにより検出できることを実証する。BSAおよびKLHに代わる選択肢としては、合成タンパク質MAPS、IgY、ストレプトアビジン、およびアビジンが挙げられる。96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを10 μg/mlの酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLH複合体含有の溶液100 μl (10 μg/ml)でコーティングした。溶液を37℃で終夜乾燥させた。ウェルを次に、Trisリン酸緩衝生理食塩水(TPBS) pH 7.2中の1%カゼイン少なくとも200 μlにより室温で2時間ブロッキングした。ウェルをTPBS 200 μlで1回洗浄した。その後、1%カゼインTPBS中で1:20、1:40、1:80または1:160に希釈されたヒト血清(対照または梅毒トレポネーマ感染個体由来のいずれか) 100 μlを各ウェルに添加した。マイクロタイタープレートを室温で60分間インキュベートし、引き続いてTBST 200 μlで3回洗浄を行った。1%カゼインTPBS中で1:3000に希釈された、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートのヤギ抗ヒト抗体100 μlを室温で45分間各ウェルに添加した。1ウェルあたり100 μlのTMB基質の添加の前に、マイクロタイタープレートをTPBSで3回洗浄した。HRPの存在下において、TMB基質は変色する。HRP酵素-基質反応を2 M硫酸の添加によって停止した。各ウェル中の溶液を450 nmで分光学的に測定した。
【0229】
表7および8に示した通り、ヒト梅毒血清(「反応性」)中に存在する抗リポイド抗体は、マイクロタイタープレートのウェルに固定化された酸化カルジオリピン-BSAまたは酸化カルジオリピン-KLH複合体に結合した。しかしながら、同じ固定化抗原への対照(「非反応性」)血清の有意な結合は認められなかった。
【0230】
(表7)酸化カルジオリピン-BSA抗原での酵素連結免疫アッセイ

各データ点に対して二つ組の試験(結果を示した)を行った。このデータセットに使われた梅毒血清は、RPR試験により測定したところ、1:64の力価を有する。
【0231】
(表8)酸化カルジオリピン-BSA抗原での酵素連結免疫アッセイ

各データ点に対して二つ組の試験(結果を示した)を行った。このデータセットに使われた梅毒血清は、RPR試験により測定したところ、1:128の力価を有する。
【0232】
本開示を特定の態様に重点を置いて記述してきたが、特定の態様の変形が使用されてもよく、その開示は本明細書において具体的に記述されているようにではなく別の形で実践されてもよいことが意図されることは当業者に明らかであろう。本発明の特定の局面、態様、もしくは例に関連して記述されている特徴、特性、化合物、化学的部分、または例は、本発明のその他任意の局面、態様、または例に適用可能であるものと理解されるべきである。したがって、本開示は、特許請求の範囲によって定義される開示の趣旨および範囲の中に包含される全ての変更を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖の1つまたは複数に末端カルボキシル基を提供するようにカルジオリピンの脂肪酸側鎖を酸化するために、過ヨウ素酸塩および過マンガン酸塩とカルジオリピンを反応させる段階;
中央のグリセロール部分の免疫原性を保持するように、カルジオリピンの酸化を停止するために、および中央のグリセロール部分に形成されたβ-ケトンをβ-ヒドロキシル基に還元するために、カルジオリピンを過ヨウ素酸塩および過マンガン酸塩と反応させる段階の後に、カルジオリピン懸濁液に還元剤を添加する段階; ならびに
タンパク質担体をカルボキシル基の少なくとも1つに共有結合的に付着させるために酸化カルジオリピンのカルボキシル基を活性化する段階
を含む、抗リポイド抗体と免疫反応性を示し、かつ基材への付着用のタンパク質に連結できる酸化カルジオリピンを調製するための方法であって、カルジオリピンが中央のグリセロール部分および脂肪酸側鎖を含む、方法。
【請求項2】
カルジオリピンを反応させる段階がアルコール溶媒中で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
カルジオリピンを反応させる段階がアルゴン雰囲気中で行われる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
アルコールがt-ブタノール、エタノール、プロパノール、もしくはメタノールの1つまたは複数である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
カルボキシル基を活性化する段階が酸化カルジオリピンをカルボジイミドと反応させる段階を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
カルボジイミドが1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
カルジオリピンが過マンガン酸塩と反応させられる前に、カルジオリピンが過ヨウ素酸塩と反応させられる、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
過ヨウ素酸塩がm-過ヨウ素酸ナトリウムであり、過マンガン酸塩が過マンガン酸カリウムである、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
m-過ヨウ素酸ナトリウムのカルジオリピンに対するモル比が約4:1〜約5:1である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
過マンガン酸カリウムのカルジオリピンに対するモル比が約0.5:1〜約1:1である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
還元剤が亜硫酸水素ナトリウムである、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
還元剤の添加後に水相およびアルコール相を分離する段階、ならびに酸化カルジオリピンをアルコール相から回収する段階をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
カルジオリピン-タンパク質コンジュゲートを提供するために、活性化されたカルボキシル基の少なくとも1つにタンパク質を共有結合的に付着させる段階をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
タンパク質を共有結合的に付着させる段階が、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、またはアビジンを付着させる段階を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
カルボキシル基を活性化する段階が、カルボキシル基をEDCと反応させた後にカルボキシル基をN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と反応させる段階をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項16】
タンパク質を共有結合的に付着させる段階が、酸化カルジオリピンをカルボジイミドおよびその後NHSと反応させて生成物を提供することによりカルボキシル基を活性化する段階、その後、生成物をタンパク質とコンジュゲートさせる段階を含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
タンパク質がウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、またはアビジンを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
カルジオリピンを酸化するために、および脂肪酸側鎖の1つまたは複数に末端カルボキシル基を提供するために、カルジオリピンをアルゴン雰囲気下、t-ブタノール溶媒中でm-過ヨウ素酸ナトリウムおよび過マンガン酸カリウムと反応させる段階;
中央のグリセロール部分の免疫原性を保持するように、カルジオリピンの酸化を停止するために、および中央のグリセロール部分に形成されたβ-ケトンをβ-ヒドロキシル基に還元するために、カルジオリピンをm-過ヨウ素酸ナトリウムおよび過マンガン酸カリウムと反応させる段階の後に、カルジオリピン懸濁液に水溶液中の亜硫酸水素ナトリウムを添加する段階; ならびに
EDCおよびその後NHSと酸化カルジオリピンを反応させる段階を含む、タンパク質担体をカルボキシル基の少なくとも1つに共有結合的に付着させるために酸化カルジオリピンの末端カルボキシル基を活性化する段階; ならびに
タンパク質を活性化カルボキシル基の1つまたは複数にコンジュゲートさせる段階
を含む、抗リポイド抗体と免疫反応性を示し、かつ基材への付着用のタンパク質に連結できる酸化カルジオリピンを調製するための方法であって、カルジオリピンが中央のグリセロール部分および脂肪酸側鎖を含む、方法:
【請求項19】
側方流動基材に、請求項13記載の方法により作出されたコンジュゲートタンパク質を付着させる段階を含む、側方流動装置を作出する方法。
【請求項20】
側方流動基材に、梅毒トレポネーマ(T. pallidum)に対する抗体と反応するトレポネーマ抗原を付着させる段階をさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
基材がニトロセルロース基材である、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
側方流動基材に、請求項18記載の方法により作出されたコンジュゲートタンパク質を付着させる段階を含む、側方流動装置を作出する方法。
【請求項23】
側方流動基材に、梅毒トレポネーマに対する抗体と反応するトレポネーマ抗原を付着させる段階をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
基材がニトロセルロース基材である、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
請求項19〜24のいずれか一項記載の方法により作出された側方流動装置。
【請求項26】
サンプル適用領域と、
抗リポイド抗体に結合親和性を有する固定化された酸化カルジオリピンを含むカルジオリピン捕捉領域とを含む、
サンプル適用領域に適用された液体が、サンプル適用領域からカルジオリピン捕捉領域への流れの方向で流れ、かつ抗リポイド抗体と固定化された酸化カルジオリピンとの間の複合体の形成が流体サンプル中の抗リポイド抗体の存在および/または量を決定するために検出可能である、
流体サンプル中の抗リポイド抗体の存在および/または量を決定するための側方流動装置。
【請求項27】
移動性または可動性の検知試薬(detector reagent)を含むコンジュゲートパッドを、サンプル適用領域からカルジオリピン捕捉領域への流路の中にさらに含む、請求項26記載の側方流動装置。
【請求項28】
カルジオリピンの抗原性を維持しながらカルジオリピンの脂肪酸側鎖を酸化するために、カルジオリピンを過ヨウ素酸塩および過マンガン酸塩と反応させる段階;
カルジオリピンを過ヨウ素酸塩および過マンガン酸塩と反応させる段階の後に、カルジオリピン懸濁液に還元剤を添加する段階; ならびに
タンパク質担体をカルボキシル基の少なくとも1つに共有結合的に付着させるために酸化カルジオリピンのカルボキシル基を活性化する段階;次いで
タンパク質担体を共有結合的に付着させる段階
を含む方法により、固定化された酸化カルジオリピンが作出される、請求項27記載の側方流動装置。
【請求項29】
検知試薬が標識された酸化カルジオリピンを含む、請求項28記載の装置。
【請求項30】
標識された酸化カルジオリピンが、酵素、コロイド金粒子、有色のラテックス粒子、タンパク質に吸着された銀粒子、タンパク質に吸着された鉄粒子、タンパク質に吸着された銅粒子、タンパク質に吸着されたセレン粒子、タンパク質に吸着された硫黄粒子、タンパク質に吸着されたテルル粒子、タンパク質に吸着された炭素粒子、もしくはタンパク質共役型のダイサック(dye sac)の1つまたは複数を含む標識を含む、請求項29記載の装置。
【請求項31】
固定化された酸化カルジオリピンが請求項18記載の方法により作出される、請求項26記載の装置。
【請求項32】
抗梅毒トレポネーマ抗体に結合親和性を有する固定化されたトレポネーマ抗原を含むトレポネーマ捕捉領域を、サンプル適用領域からの流路の中にさらに含む、請求項26記載の装置。
【請求項33】
トレポネーマ抗原に対する移動性または可動性の検知試薬を含むコンジュゲートパッドを、サンプル適用領域からトレポネーマ捕捉領域への流路の中にさらに含む、請求項32記載の装置。
【請求項34】
コンジュゲートパッドがカルジオリピンに対する移動性または可動性の検知試薬をさらに含む、請求項33記載の装置。
【請求項35】
生体サンプルを請求項27記載の装置に適用する段階; および
捕捉領域中での抗リポイド抗体と、酸化カルジオリピンと、検知試薬との間の複合体の形成を検出する段階であって、捕捉領域中での複合体の形成の検出によってサンプル中の抗リポイド抗体が検出される、段階
を含む、被験体由来の生体サンプルの分析により梅毒を診断するための方法。
【請求項36】
装置がサンプル適用領域からカルジオリピン捕捉領域への流路の中に、カルジオリピンに対する移動性または可動性の検知試薬を含むコンジュゲートパッドをさらに含み、および複合体の形成を検出する段階が、移動性または可動性の検知薬を含む複合体の形成を検出する段階を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
カルジオリピンを酸化するためにカルジオリピンを過ヨウ素酸塩および過マンガン酸塩と反応させる段階、タンパク質担体をカルボキシル基の少なくとも1つに共有結合的に付着させるために酸化カルジオリピンのカルボキシル基を活性化する段階、次いでタンパク質担体を共有結合的に付着させる段階により、固定化された酸化カルジオリピンが作出される、請求項35または36記載の方法。
【請求項38】
検知試薬が標識された酸化カルジオリピンを含む、請求項36記載の方法。
【請求項39】
標識された酸化カルジオリピンが、酵素、コロイド金粒子、有色のラテックス粒子、タンパク質に吸着された銀粒子、タンパク質に吸着された鉄粒子、タンパク質に吸着された銅粒子、タンパク質に吸着されたセレン粒子、タンパク質に吸着された硫黄粒子、タンパク質に吸着されたテルル粒子、タンパク質に吸着された炭素粒子、もしくはタンパク質共役型のダイサックの1つまたは複数を含む標識を含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
固定化された酸化カルジオリピンが請求項18記載の方法により作出される、請求項38記載の方法。
【請求項41】
装置がサンプル適用領域からの流路の中に、抗梅毒トレポネーマ抗体に結合親和性を有する固定化されたトレポネーマ抗原を含むトレポネーマ捕捉領域をさらに含み、および複合体の形成を検出する段階が、捕捉領域中での抗梅毒トレポネーマ抗体と、固定化されたトレポネーマ抗原と、検知試薬との間の複合体の形成を検出する段階をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項42】
サンプル適用領域と、
少なくとも1つの移動性または可動性の検知試薬を含むコンジュゲートパッドと、
抗リポイド抗体に結合親和性を有する固定化された酸化カルジオリピンを含む第1の捕捉領域と、
トレポネーマ抗体に結合親和性を有する第2の固定化された結合パートナーを含む第2の捕捉領域とを含む、
サンプル適用領域に配された液体がサンプル適用領域からコンジュゲートパッドを通って第1および第2の捕捉領域に向かう流れの方向で流れ、かつ第1の捕捉領域中での抗リポイド抗体と、酸化カルジオリピンと、少なくとも1つの検知試薬との間の第1の複合体の形成によって流体サンプル中の抗リポイド抗体の存在および/または量が決定され、かつ第2の捕捉領域中でのトレポネーマ抗体と、第2の固定化された結合パートナーと、少なくとも1つの検知試薬との間の第2の複合体の形成によって流体サンプル中のトレポネーマ抗体の存在および/または量が決定される、
流体サンプル中のトレポネーマ抗体および抗リポイド抗体の存在および/または量を同時に検出するための装置。
【請求項43】
請求項42記載の装置のサンプル適用領域に生体サンプルを適用する段階、ならびにコンジュゲートパッドを通り、かつ第1および第2の捕捉領域を通る流れの方向で生体サンプルを流動可能にする段階;
第1の捕捉領域中での抗リポイド抗体と、酸化カルジオリピンと、少なくとも1つの検知試薬との間の第1の複合体の形成を検出する段階; ならびに
第2の捕捉領域中でのトレポネーマ抗体と、第2の固定化された結合パートナーと、少なくとも1つの検知試薬との間の第2の複合体の形成を検出する段階
を含む、患者において梅毒を診断するための方法であって
第1の複合体および第2の複合体の形成の検出により患者における梅毒が診断される、方法。
【請求項44】
サンプル適用領域に適用される生体サンプルがヒト血液サンプルである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
サンプル適用領域に適用されるヒト血液サンプルが全血または血清である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
請求項27記載の装置、生体サンプルをサンプル適用領域に適用するため、および試験の結果を解釈するための使用説明書を含む、梅毒の診断のためのキット。
【請求項47】
生体サンプルを請求項27記載の装置に適用する段階; および
捕捉領域中での抗リポイド抗体と、酸化カルジオリピンと、検知試薬との間の複合体の形成を検出する段階であって、捕捉領域中での複合体の形成の検出によってサンプル中の抗リポイド抗体が検出される、段階
を含む、被験体由来の生体サンプルの分析により狼瘡を診断するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−237443(P2011−237443A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156193(P2011−156193)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2008−541355(P2008−541355)の分割
【原出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(503245650)アメリカ合衆国 (9)