説明

倉庫の搬入開口部構造

【課題】落下防止安全装置を備えた倉庫の搬入開口部構造を提供する。
【解決手段】倉庫Sに荷物Bを出入庫するための2階以上の搬入口10に、落下防止安全装置1を設置し、落下防止安全装置1は搬入口10の左右縁部11,12に配設した縦ガイド部材3,3に沿って昇降自在に横架される水平状の安全バー2を備え、荷物Bの非搬入時には安全バー2が作業員Aの落下を防止する安全作動状態になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫の搬入開口部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の2階以上に設けられるベランダ等の開口部には、人の転落事故を防止するための転落防止具が固設されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−120159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、荷物の出入庫が頻繁に行われる倉庫の2階以上の搬入開口部に、地上階から搬入開口部までフォークリフトにより荷物を昇降させて搬送する際に、搬入開口部の床に転落防止具が立設されていると、搬入開口部の床に荷物を置くことができなくなり、荷物の受け渡しに多大な労力を費やしていた。
また、荷物の搬入及び搬出を行なう度に、搬入開口部の転落防止具を着脱するのは非常に面倒であり、作業効率が低下する原因となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、人の落下防止安全装置を備えた倉庫の搬入開口部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る搬入開口部構造は、倉庫に荷物を出入庫するための2階以上の搬入口に、落下防止安全装置を設置し、該落下防止安全装置は上記搬入口の左右縁部に配設した縦ガイド部材に沿って昇降自在に横架される水平状の安全バーを備え、上記荷物の非搬入時には上記安全バーが作業員の落下を防止する安全作動状態にあるものである。
【0007】
また、上記落下防止安全装置は、電気モータから成る駆動装置と、該駆動装置の動力を上記安全バーに伝達する動力伝達機構とを、有するものである。
また、上記安全バーは、上記作業員が把持可能なパイプ材から成るものである。
【0008】
また、上下所定間隔に2本の上記安全バーを配設すると共に該安全バーの左右端部を取付部材にて一体に連結し、該取付部材を上記動力伝達機構を介して昇降させるものである。
また、上記縦ガイド部材の下端部は、上記搬入口を形成する床よりも下方位置に配設され、上記安全バーを上記床よりも低い位置に降下させて荷物搬送状態とするように構成したものである。
【0009】
また、上記縦ガイド部材の上方部に設けた定滑車にワイヤーを懸架し、該ワイヤーの一端を、上記取付部材に連繋し、かつ、該ワイヤーの他端に、バランスウェイトを取着したものである。
また、上記動力伝達機構は、上記安全バーの昇降方向に作用する外力を、上記駆動装置に伝達しないように構成したものである。
【0010】
また、搬入車両側の無線操作器によって、上記駆動装置の制御を行うように構成しているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の搬入開口部構造によれば、高所で荷物の受け渡し作業を行なう作業員の転落事故の危険性を低減し、安全を確保することができる。また、荷物の搬入時には、安全バーを降下させて、フォークリフト等の搬送車両による荷物の搬送が可能となり作業効率が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の一形態を示した斜視図である。
【図2】倉庫の搬入口を示した平面図である。
【図3】倉庫の搬入口を示した要部拡大正面図である。
【図4】倉庫の搬入口を示した要部拡大平面図である。
【図5】倉庫の搬入口を示した要部拡大側面図である。
【図6】取付部材の一例を示した拡大正面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図6のB−B断面図である。
【図9】ヘリカルギアボックスを示した平面断面図である。
【図10】ウォームギアボックスを示した側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1及び図2に示すように、本発明は、フォークリフト等の搬入車両Fによって運ばれてきた荷物Bを地上階から上昇搬送して倉庫S内に入庫するために、又は、倉庫S内の荷物Bを地上階に降下して出庫するために、倉庫Sの2階以上に設けられた搬入口10に、作業員Aの安全を確保する落下防止安全装置1を設置したものである。
落下防止安全装置1は、搬入口10の左右縁部に配設した縦ガイド部材3,3に沿って昇降自在に横架される水平状の安全バー2を備え、搬入車両Fによる荷物Bの搬送を待っている等の非搬入時には、安全バー2が作業員Aの落下を防止する安全作動状態となっている。
【0014】
図3〜図5は、落下防止安全装置1を設置した搬入口10を示したものである。
2本の安全バー2,2は、作業員Aが把持可能なパイプ材から成り、上下所定間隔に配設されると共に、安全バー2,2の左右端部2a,2bを取付部材31,31にて一体に連結している。また、安全バー2,2は、縦方向の補強部材22,22,22で連結されている。なお、安全作動状態での安全バー2の床13からの高さ寸法Hは、1100mm以上に設定されている。
縦ガイド部材3,3は、搬入口10の左右縁部11,12を拡張して切欠形成した凹窪部11a,12aに取付けられ、長手方向に開口するガイド溝30,30を相互に対向させて左右一対に垂設されている。縦ガイド部材3,3の下端部3a,3aは、搬入口10の床13よりも下方位置に配設されている。縦ガイド部材3,3は、搬入口10の左右縁部11,12の外端に沿って、倉庫Sの外方に露出して取付けられている。そして、安全バー2,2を床13よりも低い位置に降下させて(図中二点鎖線にて示す)荷物搬送状態となるように構成している。荷物搬送状態では、安全バー2,2が搬入口10の何れも遮断することなく、荷物Bの搬送を阻害することがないように配設されている。
【0015】
また、縦ガイド部材3,3の上方部3b,3bには、定滑車32が固設されており、定滑車32に懸架したワイヤー33の一端33aを、取付部材31に連繋し、かつ、ワイヤー33の他端33bに、バランスウェイト34を取着している。
【0016】
落下防止安全装置1は、電気モータから成る駆動装置4と、駆動装置4の動力を安全バー2に伝達する動力伝達機構5とを、有している。
駆動装置4は、電気モータの駆動軸を第1水平軸心X廻りに回転するように配設されている。
動力伝達機構5は、第1水平軸心Xに直交する第2水平軸心X廻りに回転自在のロット棒40と、第1鉛直軸心Y廻りに回転自在として左側の縦ガイド部材3内に配設した取付部材31に螺着されるスクリューシャフト41と、第2鉛直軸心Y廻りに回転自在として右側の縦ガイド部材3内に配設した取付部材31に螺着されるスクリューシャフト42とを、備えている。
【0017】
さらに、図9及び図10に示すように、電気モータの駆動軸とロット棒40の中間部とを、筐体内部でウォームギアとウォームホイールを噛合させて成るウォームギアボックス43にて連結し、かつ、ロット棒40の左右端部と左右のスクリューシャフト41,42の下端部とを、筐体内部ではす歯歯車を噛合させて成るヘリカルギアボックス44,44にて連結している。
動力伝達機構5は、駆動装置4の動力をウォームギアボックス43を介して、ロット棒40に伝達して回転させ、さらに、ヘリカルギアボックス44,44を介して、ロット棒40からスクリューシャフト41,42に伝達して回転させて、取付部材31,31を昇降させるように構成している。
【0018】
ウォームギアボックス43は、駆動装置4から回転力を付加することによって、ロット棒40を回転させるように構成されているが、反対に、ロット棒40に回転力が付与されたとしても、駆動装置4に回転力を伝達しない。
また、スクリューシャフト41,42は、安全バー2,2に昇降方向の外力が作用したとしても、回転しないように構成されている。
つまり、動力伝達機構5は、駆動装置4の動力を取付部材31,31に伝達して安全バー2,2を昇降させるが、安全バー2,2に作用する昇降方向の外力を、駆動装置4に伝達しないように構成されている。
【0019】
落下防止安全装置1には、駆動装置4の動作を制御するための操作部20が付設されている(図4又は図5参照)。また、搬入車両Fには、駆動装置4の動作を制御可能な無線操作器21が搭載されている(図1又は図2参照)。操作部20及び無線操作器21は、安全バー2の上昇と降下を制御するために2種類の操作ボタンを有するコントローラーである。
【0020】
図6〜図8は、取付部材31を示した拡大図である。
取付部材31は、スクリューシャフト41,42と螺合するナット部材35を下端縁部に付設し、スクリューシャフト41,42をナット部材35に挿通させて、縦ガイド部材3内を昇降自在に支持されている。取付部材31は、縦ガイド部材3のガイド溝30から連結部36を突出している。連結部36には、安全バー2,2の左右端部2a,2bに嵌入可能な短筒部材37,37が固着されている。短筒部材37,37は、安全バー2,2を取着してビス止め固定している。
さらに、取付部材31は、縦ガイド部材3内のガイド面45を転動自在のローラー38,38を有し、かつ、縦ガイド部材3の内壁面46を転動自在の球体39,39を有している。
【0021】
上述した本発明の倉庫の搬入開口部構造の使用方法(作用)について説明する。
図3に示すように、落下防止安全装置1を安全作動状態とすれば、搬入口10は、上昇した安全バー2,2により遮断され、作業員Aの通行を阻害する。よって、誤って作業員Aが転落することがない。安全バー2,2は、手摺りとして把持することができ、危険の伴う搬入口10付近での作業を行なう作業員Aの安全を確保する。取付部材31,31により一体連結されて縦ガイド部材3,3に横架される安全バー2,2は、作業員Aの荷重を受けたとしても降下することなく、確実に作業員Aを支持する。
【0022】
そして、搬入車両Fにより搬送されてきた荷物Bを、搬入口10から倉庫S内に入庫するために、搬入車両Fの無線操作器21で駆動装置4を作動させて、安全バー2,2を降下させる。この際、駆動装置4の動力は、動力伝達機構5により伝達されて、取付部材31,31を降下させ、安全作動状態にある安全バー2,2を搬入口10の床13よりも下方位置まで降下させる。このようにして、落下防止安全装置1を荷物搬送状態として搬入口10を全面開放する。
【0023】
搬入車両Fは、荷物Bを搬入口10に搬入可能な高さまで上昇させた後、床13の上に荷物Bを載置して、後退する。この際、安全バー2,2は、床13よりも下方位置に降下しているため、搬入車両Fの搬入作業を阻害することがない。その後、無線操作器21で安全バー2,2を再び上昇させるように操作して、落下防止安全装置1を安全作動状態に復帰させる。取付部材31,31は、ワイヤー33を介してバランスウェイト34に連繋されているため、上昇方向に張力が作用しており、安全バー2,2の上昇に係る駆動装置4の駆動力は最小限で済む。また、取付部材31,31は、縦ガイド部材3,3内のガイド面45及び内壁面46に、ローラー38,38及び球体39,39を転動させて昇降方向に案内されるため、昇降方向以外の荷重は、縦ガイド部材3,3内が受け持ちつつ昇降する。
【0024】
落下防止安全装置1は、搬入車両F側の無線操作器21及び搬入口10側に取付けられた操作部20によって制御可能であり、作業員Aが搬入口10付近で作業を行なう際には、常に、安全作動状態にあるものとする。
【0025】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、動力伝達機構5は、駆動装置4の動力を伝達して安全バー2の昇降を行なうものであれば構成を自由に変更することができる。
【0026】
以上のように、本発明は、倉庫Sに荷物Bを出入庫するための2階以上の搬入口10に、落下防止安全装置1を設置し、落下防止安全装置1は搬入口10の左右縁部11,12に配設した縦ガイド部材3,3に沿って昇降自在に横架される水平状の安全バー2を備え、荷物Bの非搬入時には安全バー2が作業員Aの落下を防止する安全作動状態にあるので、安全バー2により搬入口10を遮断し、作業員Aや他の人が搬入口10から転落することを防止して、安全を確保することができる。また、荷物Bの搬入時には、安全バー2を降下させて、搬入車両Fによる荷物Bの搬送の邪魔とならず作業効率が著しく向上する。
【0027】
また、落下防止安全装置1は、電気モータから成る駆動装置4と、駆動装置4の動力を安全バー2に伝達する動力伝達機構5とを、有するので、安全バー2を迅速に上昇または下降でき、搬入車両Fの接近に伴って迅速に下降させ、逆に、搬入車両Fが離れると直ちに上昇させ得る。
【0028】
また、安全バー2は、作業員Aが把持可能なパイプ材から成るので、安全バー2を手摺りとして把持することができ、作業員A等の安全を確保できる。
【0029】
また、上下所定間隔に2本の安全バー2,2を配設すると共に安全バー2,2の左右端部2a,2bを取付部材31,31にて一体に連結し、取付部材31,31を動力伝達機構5を介して昇降させるので、安全バー2,2を円滑に昇降させることが可能となり、かつ、剛性が高まって安全であり、さらに、正確な位置決めができる。
【0030】
また、縦ガイド部材3,3の下端部3a,3aは、搬入口10を形成する床13よりも下方位置に配設され、安全バー2,2を床13よりも低い位置に降下させて荷物搬送状態とするように構成したので、搬入口10を全面的に開放することができ、荷物Bの搬入・搬出の作業を阻害することがなく、作業効率が向上する。
【0031】
また、縦ガイド部材3,3の上方部3b,3bに設けた定滑車32にワイヤー33を懸架し、ワイヤー33の一端33aを、取付部材31に連繋し、かつ、ワイヤー33の他端33bに、バランスウェイト34を取着したので、安全バー2の上昇に係る駆動装置4の仕事量を最小限に抑えることができる。
【0032】
また、動力伝達機構5は、安全バー2の昇降方向に作用する外力を、駆動装置4に伝達しないように構成したので、安全バー2が作業員Aの荷重を昇降方向に受けたとしても不意に降下することなく、確実に作業員Aを支持することができる。
【0033】
また、搬入車両F側の無線操作器21によって、駆動装置4の制御を行うように構成しているので、搬入車両Fの運転手が容易かつ迅速に安全バー2を上昇させ、また、下降させることが可能である。また、作業員Aが搬入口10に近づくことなく落下防止安全装置1を安全作動状態に復帰することができる。即ち、作業員Aが搬入口10付近で作業を行なう際には、常に、落下防止安全装置1を安全作動状態とすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 落下防止安全装置
2 安全バー
2a (左)端部
2b (右)端部
3 縦ガイド部材
3a 下端部
3b 上方部
4 駆動装置
5 動力伝達機構
10 搬入口
11 (左)縁部
12 (右)縁部
13 床
21 無線操作器
31 取付部材
32 定滑車
33 ワイヤー
33a 一端
33b 他端
34 バランスウェイト
S 倉庫
B 荷物
A 作業員
F 搬入車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
倉庫(S)に荷物(B)を出入庫するための2階以上の搬入口(10)に、落下防止安全装置(1)を設置し、該落下防止安全装置(1)は上記搬入口(10)の左右縁部(11)(12)に配設した縦ガイド部材(3)(3)に沿って昇降自在に横架される水平状の安全バー(2)を備え、
上記荷物(B)の非搬入時には上記安全バー(2)が作業員(A)の落下を防止する安全作動状態にあることを特徴とする倉庫の搬入開口部構造。
【請求項2】
上記落下防止安全装置(1)は、電気モータから成る駆動装置(4)と、該駆動装置(4)の動力を上記安全バー(2)に伝達する動力伝達機構(5)とを、有する請求項1記載の倉庫の搬入開口部構造。
【請求項3】
上記安全バー(2)は、上記作業員(A)が把持可能なパイプ材から成る請求項1又は2記載の倉庫の搬入開口部構造。
【請求項4】
上下所定間隔に2本の上記安全バー(2)(2)を配設すると共に該安全バー(2)(2)の左右端部(2a)(2b)を取付部材(31)(31)にて一体に連結し、該取付部材(31)(31)を上記動力伝達機構(5)を介して昇降させる請求項2又は3記載の倉庫の搬入開口部構造。
【請求項5】
上記縦ガイド部材(3)(3)の下端部(3a)(3a)は、上記搬入口(10)を形成する床(13)よりも下方位置に配設され、上記安全バー(2)(2)を上記床(13)よりも低い位置に降下させて荷物搬送状態とするように構成した請求項1,2,3又は4記載の倉庫の搬入開口部構造。
【請求項6】
上記縦ガイド部材(3)(3)の上方部(3b)(3b)に設けた定滑車(32)にワイヤー(33)を懸架し、該ワイヤー(33)の一端(33a)を、上記取付部材(31)に連繋し、かつ、該ワイヤー(33)の他端(33b)に、バランスウェイト(34)を取着した請求項1,2,3,4又は5記載の倉庫の搬入開口部構造。
【請求項7】
上記動力伝達機構(5)は、上記安全バー(2)の昇降方向に作用する外力を、上記駆動装置(4)に伝達しないように構成した請求項1,2,3,4,5又は6記載の倉庫の搬入開口部構造。
【請求項8】
搬入車両(F)側の無線操作器(21)によって、上記駆動装置(4)の制御を行うように構成している請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の倉庫の搬入開口部構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−47213(P2011−47213A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197174(P2009−197174)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(504374849)株式会社泉陽商会 (16)