説明

個人用高速輸送システムのための軌道路

個人用高速輸送システム用の軌道路は、予備成形格子状構造体で形成された軌道部材111、113を含む。予備成形格子状構造体は、繊維強化プラスチック等で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人用高速輸送システムのための軌道路に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの交通量の増大、車両が走行する速度を増す車両性能の高まりとともに、これらの車両が走行する走行面を改善する要求が続いている。多くの側面が、このような改善のために、例えば、走行面と車輪の間の改善された摩擦、走行面上にたまった水、雪及び氷の影響を減少させるための改善された排水、及び騒音減少等のために考慮されてきた。多くの解決策が、常に、設置し且つ維持するのに費用がかかり且つやっかいであるこれらの問題を解決するために提案されてきている。
【0003】
個人用高速輸送システムのための軌道路の走行面を改善する上で多額が投資されてきた。一般に、個人高速輸送(PRT)システムは、個々の車両が駅の間を走行する専用の軌道路を備える。各車両は、たった一人の乗客又はグループの乗客を収容し、車両は、始発地と目的地の間をいかなる中間駅で停止することなく連続的に走行する。かくして、PRTシステムは、バス、電車及び地下鉄システムのような従来の大量輸送システムと、自家用車の中間物を提供する。
【0004】
典型的なPRTシステムは、車両の案内をするレールシステムを使用する。これはモノレール、又はデュアルレールであり、通常の鉄道のポイントと似たポイントが、分岐点で車両を方向付けるために使用される。そのようなシステムの例示は、米国特許第5,778,796号明細書に開示される。
【0005】
代替PRTシステムの例は、米国特許第4.061,089号明細書に開示される。このシステムでは、各車両は、車両と軌道路の間に空隙を維持するように空気軸受けによって支持される。車両の推進は、リニア同期モータによって与えられ、リニア同期モータの一次回路は、車両に設置された一対のリニア誘導モータを作動するために軌道路中に埋め込まれている。
【0006】
さらによく知られているPRTシステムが、英国特許第2384223号明細書に開示される。このシステムでは、軌道路は、予備成形セクションで設けられる。軌道路の走行面は、強化コンクリートで形成される。しかしながら、特に走行面がぬれている際、車両がコンクリート製の走行面の上を走るとき、騒音を減少させ、摩擦を改善し、このような天候状態中にシステムの運転を禁止する走行面上にたまる氷及び雪を減少させることが望ましい、ことが見出される。
【0007】
米国特許出願公開第2004/0089189号明細書及び米国特許第5566620号明細書は、車両を支持するレールからなる軌道路を有する輸送システムを開示する。レール間の軌道路の領域は、透かし細工構造を有する歩道を備える。
【発明の概要】
【0008】
本発明によると、個人用高速輸送システム用の軌道路であって、使用中、個人用高速輸送システムの車輪が走る走行面を有する軌道を含む軌道路において、走行面が予備成形格子状構造体を含むことを特徴とする軌道路を提供する。
【0009】
格子状構造体は、格子状構造体を車両の動きに一致させることを可能にするために可撓性であり、そのため、構造体の撓みにより雪及び氷を表面からはじくことを可能にする。格子状構造体は、地面より上の高さに支持されるので、いかなる水、雪及び氷も追加の排水を必要とせずに走行面から地面に落ちることができる。格子状構造体は、溝と隆起の形態をなした別々に交差部材或いは全体の交差部材である複数の交差格子部材からなる。適当な格子状構造体の実施形態は、車両タイヤの磨耗を最小にしながら走行面と車輪の間の摩擦をおおよそ30%まで改善する。格子部材は、走行面上を進行する車輪の進行方向に対して斜めに延びる。これは、車両が走行面上を走行する騒音を著しく減少させることができる。交差格子部材は、隣接した格子部材の間に軌道を貫通する穴を画成する。穴は、20〜60mmの範囲内のピッチを有し、ピッチは走行面の長手方向に沿って変化してもよい。そのピッチ寸法が、製造を容易にでき、より多くの雪と氷が穴を通って走行面から容易に落ちることができる。ピッチの変化が、騒音を減少させ、いかなる騒音を変化させて、騒音を不快にさせなくする。穴は、また、光を通過させる構造体を提供し、構造体をより環境的に魅力的にする。
【0010】
軌道は、連続的な走行面を形成するように長手方向に相互に連結される複数の予備成形セクションを含む。軌道セクションは、斜角で、相互に連結され、すなわち互いに接合される。この斜角を、連続的なセクションの間で任意に変えてもよい。この斜角により、タイヤ荷重をセクション間に円滑に移行させる。これは、タイヤが衝撃をもって下流セクションに衝突するのを防ぎ、かくして、走行面の損傷を防ぎ、さらに、騒音及びタイヤの磨耗を減少させる。
【0011】
軌道は、各軌道セクションの一対の細長い平行な軌道のうちの一方であり、また、各軌道セクションは、軌道を支持する複数のクロス部材を含む。
【0012】
走行面の格子状構造体は、強固な構造体を提供し、その結果、繊維強化プラスチック材料等で簡単に形成され、かくして、構造体を製造容易にし、安価にし且つ可撓性にする。
【0013】
軌道は、走行面として作用するほぼ平らな上面を有する。走行面は、車両のタイヤと走行面の間の摩擦を向上させる滑り止め材料の上面被覆を含む。
【0014】
格子状構造体は、磨耗を最小にしながら車両タイヤとの高い摩擦を提供する。雪及び氷の状態では、雪及び氷は、走行面と付着しにくく、雪及び氷は格子状構造体の表面からはじかれる。さらに、格子状走行面は、その表面がぬれているときでも、車両がその表面上を走るとき、より静かである。
【0015】
本発明による実施形態では、軌道路の各セクションは、クロス部材によって相互に連結された一対の平行なサイドビームを含み、軌道はサイドビームと平行に延びる。軌道上の荷重は、クロス部材に移され、サイドビームに移される。
【0016】
実施形態では、クロス部材は、サイドビームの下領域でサイドビームに連結され、そのため、サイドビームは、クロス部材からおそらく、走行面より上の高さまで上方に延びる側壁を形成する。
【0017】
本発明のより完全な理解のために、今、添付図面と関連してなされる以下の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】個人用高速輸送システム用の軌道路の一部分の平面図である。
【図2】図1の軌道路の軸線A-Aに沿って取った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態による軌道路を、図1および図2を参照してより詳細に記述する。軌道路は、車両が通るための連続的な軌道路を形成するために、端と端をつき合わせて敷設される、一連の軌道セクション100を含む。各セクション100は、複数の間隔を隔てた平行な等しいクロス部材101を含み、各クロス部材は、丸コーナーを有する中空の薄肉の矩形断面ビームからなり、軌道路の幅にわたって横方向に延びる。クロス部材101は、一対のサイドビーム103、105の間に延びる。サイドビーム103、105は、軌道セクション100の両側に沿って延びる同一の薄肉の矩形断面部材である。各サイドビーム103、105の垂直に延びる最も内側の壁107、109は、サイド壁103、105の基部でクロス部材101に溶接される。したがって、各サイドビーム103、105は、クロス部材101の上方に垂直に延びる。例示の実施形態では、クロス部材101及びサイドビーム103、105の垂直方向の寸法は、100mm及びそれぞれ450mmである。クロス部材101は、軌道路の長手方向に沿っておおよそ2mの等間隔に配置される。
【0020】
第1及び第2細長い軌道111、113は、それぞれ、一対の第1細長い支持部材115、117と、一対の第2細長い支持部材119、121の上面に固定される。支持部材115、117、119、121は、それぞれの軌道111、113の長手方向に沿って延びる。支持部材は、同一の薄肉の矩形断面ビームである。支持部材115、117、119、121は、クロス部材101と直角に、クロス部材101の上面に溶接される。第1及び第2細長い軌道111、113は、エッジクランプボルトか保持ボルト(図示せず)のいずれかによって支持部材115、117、119、121に固定される。
【0021】
軌道路用のケーブルを収容するためのふた125付きのケーブルトレイ123が、軌道111、113の間に位置される。ケーブルトレイ123及びふた125は、第1及び第2軌道111、113の長手方向の向かい合い縁部と平行に軌道路の長手方向に沿って延びる。ケーブルトレイ123は、一対の支持体127、129の間に位置する。ケーブルトレイ支持体127、129は、クロス部材101の上面に溶接される。
【0022】
第1及び第2軌道部材111、113の上面は、ほぼ平らであり、個人用高速輸送システムの車輪が走る第1及び第2走行面131、133をそれぞれ提供する。
【0023】
本実施形態を一対の走行面に関して記述しているが、単一走行面を、車両の全幅である単一軌道上に設けてもよいことを理解することができる。
【0024】
軌道路セクション100は、例えば英国特許第2384223号明細書に開示されたような、高架位置に支持されてもよい。
【0025】
第1及び第2軌道111、113は、予備成形格子状構造体を含む。軌道は、例えば繊維強化プラスチック材料(FRP)で作られるのがよい。変形例として、格子状構造体は、いかなる他の適当な材料で形成されてもよい。繊維強化プラスチック材料が用いられる場合、繊維強化プラスチック材料は、樹脂のプレ湿式浴(pre-wetting bath)の中に通される連続繊維ロービングを供給する繊維付着ヘッドを用いてオープンモールドで成型される。軌道の上面には、樹脂内に埋没された種々の材料、例えばショットブラストグリット(shot-blast grit)、シリカサンド(silica sand)又はか焼ボーキサイト(calcinated bauxite)を含む滑り止め材料が被覆される。
【0026】
軌道を形成する格子状部材は、長手方向に隣接したセクションのそれぞれの支持部材115、117、119、121に固定され、各セクションは長さがおおよそ6mである。第1及び第2軌道111、113のセクションは、斜角、例えば45度で隣接したセクションに隣接する。セクションは、適当な接着剤で互いに結合され、或いは変形例として繋留ナット(図示せず)を有するCクランプ(C-clamp)によって軌道部材の下側面でクランプされてもよい。連続するセクションの間の接合部の斜角は、場合によっては任意に軌道路に沿って変えてもよい。次いで、軌道は、追加の安定性のために支持構造に結合される。
【0027】
各軌道部材111、113は、複数の交差格子部材のフレーム付セクションを含む。格子部材は、互いに90度で交差し、斜角でフレームから延び、格子部材が格子部材の間に20mm〜60mmの範囲のピッチを有する複数の正方形穴を残す。1実施形態では、深さ25mm×厚さ5mmである格子部材で格子を形成することによって、作られる正方形穴のピッチは、38mmであり、格子部材の中心線の間の垂線の距離は38mmである。格子部材は、車両の進行方向に対して斜角である。斜角は、軌道部材のセクションの間で任意に変えてもよい。
【0028】
変形実施形態では、格子状構造体は、走行面の交差隆起又は溝で形成される。
【0029】
運転中、車両は、車両の各側のタイヤがそれぞれ第1及び第2軌道111、113の走行面の上を走るように、軌道路の走行面131、133上を案内される。車両の各側のタイヤは、第1及び第2軌道111、113の走行面131、133の中心に位置決めされる。走行面の格子状構造体は、タイヤと走行面の間に高い摩擦を提供するとともに、騒音を減少させ、タイヤの磨耗を最小にし、湿った状態の間でも車両の滑り或いは横滑りを防止する。摩擦は、滑り止め被覆が走行面上に設けられる場合さらに向上される。
【0030】
支持部材115、117、119、121は、氷及び雪が走行面上にたまらず、走行面をきれいに保つように、第1及び第2軌道111、113の格子状構造体を高架にする。その結果、PRTシステムは、厳しい天候状態の中で運転できる。
【0031】
軌道111、113は可撓性であるので、軌道は車両が軌道に沿って通るときわずかに撓む。この撓みは、積もったかもしれない固くなった雪又は氷を取り除くのに役立ち、雪又は氷を下の地面に落とす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人用高速輸送システムのための軌道路であって、使用中、前記システムの車輪が走る走行面を有する軌道を含む軌道路において、前記走行面は予備成形格子状構造体を含むことを特徴とする、前記軌道路。
【請求項2】
前記格子状構造体は、前記走行面を提供する複数の交差する格子部材からなる、請求項1に記載の軌道路。
【請求項3】
前記格子部材は、前記走行面に沿って進行する車輪の進行方向に対し斜めに延びる、請求項2に記載の軌道路。
【請求項4】
前記格子状構造体を貫ぬく穴が、前記交差する格子部材の間に設けられる、請求項2又は3に記載の軌道路。
【請求項5】
前記穴のピッチは、前記走行面の長手方向で変わる、請求項3又は4に記載の軌道路。
【請求項6】
前記軌道は可撓性である、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の軌道路。
【請求項7】
前記軌道は、繊維強化プラスチック材料で形成される、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の軌道路。
【請求項8】
前記走行面は、滑り止め材料の上面被覆を有する、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の軌道路。
【請求項9】
前記軌道は、連続的な走行面を形成するように長手方向に相互に連結される複数の予備成形セクションを含む、請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の軌道路。
【請求項10】
前記軌道は、軌道セクションの一対の細長い平行な軌道のうちの一方であり、また、各軌道セクションも、前記軌道を支持する複数のクロス部材を含む、請求項7に記載の軌道路。
【請求項11】
各軌道セクションは、さらに、前記クロス部材によって相互に連結された一対の平行なサイドビームを含み、前記サイドビームは前記軌道と平行に延びる、請求項10に記載の軌道路。
【請求項12】
前記軌道は、前記クロス部材の上面より高く高架にされる、請求項10又は11に記載の軌道路。
【請求項13】
前記走行面は、ほぼ平らである、請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の軌道路。
【請求項14】
前記軌道又は各軌道は、地面の高さよりも高く支持される、請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載の軌道路。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14の何れか1項に記載の軌道路を含む個人用高速輸送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−501001(P2011−501001A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529452(P2010−529452)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003544
【国際公開番号】WO2009/050491
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(508319129)アドヴァンスド トランスポート システムズ リミテッド (4)