個別要素の光学特性を調整することによる光電池モジュールの製造方法
光子を電子に変換するように機能することができる光電池を選択するステップと、表板吸収係数及び表板屈折率を有する光透過性表板を選択するステップと、封止材吸収係数及び封止材屈折率を有する封止材を選択するステップと、選択される材料を用いて該光電池を組み立てるステップとを含み、該表板吸収係数と該封止材該吸収係数との吸収係数関係及び該表板屈折率と該封止材屈折率との間の屈折率関係は効率が向上するように選択される、光電池モジュールの製造方法及び結果物としての光電池モジュールを提供する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一般的な光電池モジュール又は太陽電池は、耐久性があり安定な構造を提供しながら太陽エネルギーを利用する、複数の個別要素を備える。例えば、光電池モジュールはバックシート、封止材の下層、光電池、電池の上の封止材の層、及び透明な硬いカバーを備えることができる。要素は、光がモジュールの上層を通過し、電池に作用することができるように重ね合わせる。電池は入射光子を電子に変換し、入射光のエネルギーを利用する。一方、光電池モジュールの全体的な効率は少なくとも部分的には光電池に到達する入射光の量によって決まる。光をモジュール中の複数の要素及び界面により吸収、反射又は屈折することができ、これにより電池に到達する入射光の量を制限する。
【0002】
各個別要素は特定の役割を果たすが、封止材はその多くの要件のため電池の効率にとってとくに重要であり得る。これは光学的に透明、電気的に絶縁、機械的に柔軟であり、ガラス及び光電池の両方に接着し、環境下で長寿命に耐えるため十分に頑強でなければならない。すでに封止材に異なる材料を用いることに固有の不利点を克服するためのさまざまな試みがなされてきた。例えば、従来の電池は封止材料としてエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーをよく用いた。しかしながら、紫外線にさらされるとEVAは安定ではなくなる。長期安定性を向上するため、一般的には紫外線吸収剤を添加しなければならず、これはスペクトルの紫外線領域において低光透過率を有する封止材をもたらす。シリコーンは広範囲の温度にわたり安定であり、所望の誘電特性を有し、光透過性を有するので、封止材としてEVAをシリコーンで置き換えることが提案されている。
【0003】
しかしながら、当技術分野には光電池モジュール及び配列の効率を継続して向上させる必要性が残っている。
【発明の概要】
【0004】
1つの実施形態では、効率を向上させた光電池モジュールの製造方法を提供する。その方法は、光子を電子に変換するように機能することができる光電池を選択するステップ、表板吸収係数及び表板屈折率を有する光透過性表板を選択するステップ、並びに封止材吸収係数及び封止材屈折率を有する封止材を選択するステップを含み、表板及び封止材の吸収係数はモジュールへの光の通過を最適化するように選択され、例えば、各吸収係数はできるだけ低いことが望ましい。表板及び封止材のそれぞれの屈折率は効率が向上するように選択される。光電池モジュールは選択される要素を用いて組み立てられる。
【0005】
別の実施形態では、光学特性を調整した光電池モジュールの製造方法を提供する。その方法は、複数の封止材料について封止材光学特性をもたらすステップ、複数の封止材料のそれぞれを実装する光電池モジュールの効率を比較するステップ、複数の封止材料のそれぞれを実装する光電池モジュールの効率を比較するステップに基づいて光電池モジュールの製造に用いる複数の封止材料の1つを選択するステップ、及び選択される封止材料を用いて光電池モジュールを組み立てるステップを含む。
【0006】
また別の実施形態では、屈折率の不一致を制御した光電池モジュールを提供する。光電池モジュールは、光子を電子に変換するように機能することができる光電池、光透過性表板、及び表板を光電池から離すシリコーン封止材を備え、シリコーン封止材は表板の屈折率より大きい屈折率を有する。
【0007】
また別の実施形態では、効率を向上させた光電池モジュールを提供する。光電池モジュールは、光子を電子に変換するように機能することができる光電池、光透過性表板、及び表板を光電池から離す封止材を備え、封止材はエスケープコーン損失の影響を受ける内部反射の増加によって達成されるモジュールの光学的損失の減少が封止材表板界面での反射に関連する光学的損失より大きくなるような屈折率及び吸収係数を有する。
【0008】
本明細書に記載する実施形態により提供されるこれら及び追加の特徴は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照してより完全に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明及びそのいくつかの実施形態は、添付の図面と関連付けて考える場合、以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるので、そのより完全な理解は容易に得ることができる:
【図1】各種個別要素に関する光学的損失機構を表す典型的な光電池モジュールの断面図である。
【図2】ガラス及び4つの異なる封止材料の(a)実屈折率及び(b)吸収係数の波長依存性グラフである。
【図3】4つの異なる封止材料を含む3つの異なる電池タイプの短絡回路電流密度(Jsc)のチャートである。
【図4】電池又はバックシートから反射する光についての封止材の屈折率の関数としてのガラス−空気界面でのエスケープコーン内の光の割合のグラフである。
【図5】典型的な光電池モジュール中の異なる層の界面での入射光の反射の断面図である。
【図6】全内部反射をもたらす透過光のエスケープコーン損失及び屈折を表す断面図である。
【図7】表板−封止材界面で反射する(R)、又は封止材中に透過する(Te)入射光の割合を表すグラフである。
【図8(a)】表板−封止材界面で反射する(R)、又は典型的な光電池中に透過する(Te)、及びRΘのさまざまな値について内部反射する入射光の割合を表すグラフである。
【図8(b)】表板−封止材界面で反射する(R)、又は典型的な光電池中に透過する(Te)、及びRΘのさまざまな値について内部反射する入射光の割合を表すグラフである。
【図8(c)】表板−封止材界面で反射する(R)、又は典型的な光電池中に透過する(Te)、及びRΘのさまざまな値について内部反射する入射光の割合を表すグラフである。
【図9(a)】異なる封止材間のコーン損失調整による内部反射の差を表すグラフである。
【図9(b)】異なる封止材間のコーン損失調整による内部反射の差を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで本発明の特徴及び利点をときどき具体的な実施形態を参照しながら説明する。しかしながら、本発明は異なる形態で実施することができ、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態はこの開示を詳細で完全なものとし、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提供する。
【0011】
とくに定義されない限り、本明細書に用いるすべての技術及び科学用語は当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書の記載に用いる用語は特定の実施形態をただ説明するためのものであり、限定することを意図しない。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、とくに文脈で明示されない限り、複数形も含むことを意図する。
【0013】
とくに指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載する数値的特性は本発明の実施形態において得ようとする所望の特性に応じて異なり得る概算値である。本発明の広範囲を示す数値範囲及びパラメータは概算値であるが、具体例において示す数値はできるだけ正確に報告されている。いずれの数値も、しかしながら、本質的にそれらのそれぞれ測定に見られる誤差から必ず生じる特定の誤差を含む。
【0014】
実施形態によると、光電池モジュールの全体的な効率を向上させるため、光学モデリング、例えば光線追跡モデリングによって屈折率(n)、吸収係数(a)及び/又は他の光学特性に基づいて光電池モジュールの個別要素の材料の選択を調整する方法を提供する。
【0015】
図1を参照すると、光電池モジュール1000は、これらに限定されないが、バックシート100、封止材の下層200、光電池300、封止材の上層400及び光透過性表板500を含む、複数の個別要素を備えることができる。バックシート100は光電池モジュールに機械的強度をもたらし、外部要素(例えば水、ほこり、及び他の汚染物質)が浸透し、光電池モジュール1000に進入するのを制限するように機能することができるいずれかの材料を含むことができる。例えば、バックシート100は、多数のバックシート製造業者により用いられているTedlar(登録商標)フィルムとしても知られるポリフッ化ビニル(PVF)のようなフルオロポリマーを含むことができる。光電池モジュール1000に強度及び保護をもたらすことに加えて、バックシートは本明細書において後述するように入射光を吸収又は反射するように機能することもできる。例えば、ざらつきのある表面を有するバックシートは、より平らな表面からのより鏡面な反射とは対照的に、入射光を拡散散乱させることができる。従って、バックシートを構成する材料の選択はその機械及び光学特性の両方によって決まり得る。
【0016】
また図1を参照すると、光電池モジュールは光電池300をさらに備えることができる。電池300は封止材の上層400及び封止材の下層200により保護し、バックシート100の上に配置することができる。電池300そのものは入射光子を電子に変換するように機能することができるいずれかの光電池材料を含むことができる。電池は単結晶若しくは多結晶のようないずれかの結晶構造、又は平らな若しくはざらつきのある表面をさらに含むことができる。例えば、電池300は平らな多結晶シリコン、ざらつきのある単結晶シリコン又はこれらのいずれかの変形物をさらに含むことができる。また、電池300は変換した電子を電池から送り出すように機能することができる電気接点を有することができる。例えば、接点は高導電性及び低抵抗性を有する金属又は合金、例えば銀(Ag)のような電流を通すように機能することができるいずれかの導電材料を含むことができる。1つの実施形態では、電池300は接点が電池300の上面(又は封止材の上層400に対向する面)に配置されているスクリーン印刷電池を含むことができる。別の実施形態では、電池300は、W.P.Mulligan他、Proc.19th EU PVSEC、パリ、pp.387〜90、2004に記載される方法に従ってSunPower Corporationにより製造されるもののような、接点が電池300の底面(又は封止材の下層200に対向する面)に配置されているリア接触電池を含むことができる。
【0017】
1つの実施形態では、光電池モジュールは互いに隣接して配置される複数の電池300を備えることができる。電池300は光子から電子への変換もたらすように機能することができ、光電池モジュール1000内でのパッキングを可能にするいずれかの個別寸法を含むことができる。例えば、複数の電池300のそれぞれは約200mm×200mmの範囲内の寸法を含み、電池間で均一な寸法をもたらすことができる。あるいは、個別の電池寸法は光電池モジュール1000における存在し得る障害物の周りの特注パッキングを可能にする、又は特注若しくは独自の構成要件に合うように異なり得る。電池300の位置決めは光電池300を配置可能な全体的な面積に影響を及ぼし得る(これはひいては光電池モジュールの全体的な効率に影響を及ぼし得る)が、実施形態が、封止材の上層400及び表板500により覆われ、本明細書において理解されるように電子に変換する入射光子を得るように機能することができるような、いずれかの寸法又はいずれかのパッキング構造の電池を備えることができることを理解すべきである。
【0018】
封止材200、400は電池300を囲み、バックシート100及び表板500から保護することができる。封止材200、400は電池300をバックシート100から離す封止材の下層及び電池300を表板500から離す封止材の上層を含むことができる。あるいは、封止材200、400は上及び下層が個別電池300間の隙間でつながる1つの連続封止材を含むことができる。封止材の下層200及び封止材の上層400は電池300を保護すること、及び電池300の表面への入射光子の透過を可能にすることの両方のために機能することができる、ゲル、エラストマー又は樹脂のようないずれかの材料を含むことができる。さらに、封止材の上層400及び封止材の下層200が別々の層である場合、それらは同じ材料又は異なる材料を含んでいてもよい。1つの実施形態では、封止材200、400は光透過性シリコーン材料を含むことができる。別の実施形態では、封止材の上層400は光透過性シリコーン材料を含むことができ、封止材の下層200はエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーを含むことができる。また別の実施形態では、本明細書において後述するように、封止材の薄層は電池及びバックシートをコーティングして高屈折率をもたらすことができ、同様に本明細書において後述するように、低吸収係数を確保するため第2のより大きな封止材の層を備えることができる。
【0019】
表板500は光電池モジュール1000の他の表面を保護し、その層を通る入射光子の透過を可能にするように機能することができるいずれかの材料を含むことができる。一般的には、表板500はガラスを含むだろう。例えば、ガラスの遮断波長(又はガラスを通過することができない波長の範囲)がそのセリウム及び鉄のレベルによって決まる場合、ガラスは低セリウム及び鉄含有量を有するように選択することができる。例えば、ガラスは330nmの遮断波長を有するPPGの低鉄Starphire(登録商標)ガラスを含むことができる。
【0020】
追加の特徴、構造又は添加物が光電池モジュール1000の上、周り又は全体に存在することもできる。例えば、本明細書において後述するように、反射防止コーティング(ARC)を光電池モジュールの表面のいずれかに用い、反射して失われる入射光の量を制限することができる。ARCは単層コーティング、多層コーティング又はコーティングした表面からの入射光の反射の量を制限若しくは低減するように機能することができるその他の変形物を含むことができる。
【0021】
光電池モジュールの封止材、表板及び他の要素は、屈折率(n)及び吸収係数(a)のような各種光学特性を有する。屈折率は波長依存性であり、入射光が材料に入る際の屈曲又は屈折量と相関する。吸収係数は、同様に波長依存性であり、以下に表すランベルト・ベールの法則に従って材料の層を通過する光の強度を測定するのに用いることができるが、式中、Iは測定された層を透過する光の強度であり、I0は入射強度であり、aは吸収係数(減衰係数とも称される)であり、xは経路長さ又は厚さである:
【数1】
I=I0e−axとも記載される。
【0022】
光電池モジュール1000のこれらの光学特性及び全体的な構造は、光電池モジュール全体を移動する入射光の各種経路に影響を及ぼし得、ひいては電池300に到達する光子の量及び光電池モジュールの全体的な効率に影響を及ぼし得る。例えば、2つの隣接する材料が異なる屈折率を有する場合、入射光は部分反射し、光電池モジュールから失われ得る。
【0023】
また図1を参照すると、典型的な光電池モジュール1000について8つの異なる入射光経路を示す。第1経路10は入射光の空気−表板界面からの反射を示す。こうした反射は表板の反射特性に起因し、又は2つの媒体間の屈折率の差の結果であり得る。第2経路20は表板の構造及び組成によって決まり得る表板500による吸収を示す。第3経路30は、少なくとも部分的には各媒体の屈折率間の差の結果である表板−封止材界面450からの反射を示す。同様に図示するように、界面450から反射した光の少なくともいくつかの部分は空気−表板界面でモジュール中へ内部反射することができる。第4経路40は封止材そのものによる吸収を示す。第5経路50は反射防止コーティング又は(例えばスクリーン印刷電池中の)金属接点のような電池を囲む材料による吸収を示す。第6経路60は封止材と電池との間の界面で起こり得る反射を示す。同様に図示するように、その界面から反射した光の少なくともいくつかの部分は空気−表板界面でモジュール中へ内部反射することができる。第7経路70はバックシート100による光子の吸収を示す。最後に、第8経路80は封止材とバックシートとの間の界面からの反射を示す。さらに、同様に図示するように、その界面から反射した光の少なくともいくつかの部分は空気−表板界面でモジュール中へ内部反射することができる。
【0024】
入射光の他の潜在的な経路も光電池モジュール1000内に存在し、示した8つの経路は典型例であり、非限定的な例示であることを意図する。例えば、光が光電池モジュール内で(例えば表板−封止材界面450で又はバックシート100から)内部反射する場合、光は電池300に向かって反射、又は別に光電池モジュール1000内で反射、屈折又は吸収することができる。光電池モジュールから脱出する光は全体的にエスケープ損失又はエスケープコーン損失と総称することができ、光電池モジュール1000内の各要素の光学及び構造特性によって決まり得る。例えば、内部要素が入射光を(例えばざらつきのある表面によって)拡散反射又は散乱させる場合、光が実質的により鏡面で反射する場合と比較して、光は電池300により吸収される機会をより多く有し、エスケープ損失を制限することができる。
【0025】
図5及び6に示すように、入射光はガラス−空気及びガラス−封止材界面での正反射に関連する複数の光学的損失を経験する。さらに、電池又はバックシートからの反射及びモジュールを構成する各種媒体による吸収後の光学的損失もある。正反射の量はフレネルの法則によって割り出され、2つの媒体の屈折率の関数であり、吸収による影響も受ける。垂直入射について、吸収損失をゼロと仮定すると、封止材に到達する光の量は下式により与えられる。
【数2】
電池に到達する光の量は空気(na)、ガラス(ng)のような特定の表板、及び封止材(ne)の屈折率により割り出される。電池/バックシートが拡散反射を生成する場合、光のいくらかは内部反射する。内部反射光の量はエスケープコーン(図6参照)により割り出される。モジュールから脱出する拡散散乱光の量はエスケープ割合(fex)として知られる。反射が入射角とは無関係であり、電池/バックシートからの反射が均等拡散性であると仮定すると、fexは下式のように与えられ、
【数3】
式中、θcは全内部反射についてのバックシートからの反射の臨界角である。エスケープコーンは2θcと定義される。封止材−電池/バックシート界面ではTeはいくらかの強度で拡散反射し、
【数4】
式中、Rθは反射したTeの割合である。内部反射する入射光の割合は下式により与えられる。
【数5】
Rθが増加すると、損失コーン低下の利点は増加する。Rθは封止材及び電池/バックシートの光学特性の影響を受ける。
【0026】
部分的に電池300に到達する入射光子の全体量に基づき、光電池モジュールは、例えば、短絡回路電流密度(Jsc)を測定することにより割り出すことができる全体的な効率を有することができる。短絡回路電流密度は、入射光子の潜在的な経路を分析し、生成される短絡回路電子密度を予測するモデリング又はシミュレーション方法によって測定することができる。モデリングは、例えば、上述のような光線追跡シミュレーションによって達成することができる。
【0027】
1つの実施形態では、モデリング(例えば、光線追跡シミュレーション)を用い、各種構造、材料及び光学特性を備える光電池モジュールの短絡回路電流密度を測定し、全体的な効率を向上させることができる。例えば、表板500及び封止材200、400要素の光学特性(すなわち屈折率及び吸収係数)は大きく異なり得る。しかしながら、予測される短絡回路電流密度を最大化するため、これらの光学特性を互いについて調整することは有益であり得る。異なる光学特性の要素を有する各種光電池モジュール1000の短絡回路電流密度をモデリングすることにより、光電池モジュール1000の効率を向上又は最大化するため、材料の選択を調整することができる。
【0028】
光電池モジュールの要素の光学特性は材料の選択又は取扱に基づいて異なり得る。1つの実施形態では、屈折率間に小さな(すなわち、<0.05の)不一致をもたらし、ガラス−封止材界面での反射量を低下させる、ガラスのような表板材料及び封止材料を選択することが望ましくあり得る。例えば、選択されるガラス表板材料は633nmの波長で1.5の屈折率を含むことができる。封止材はその屈折率の±0.05以内のようなその屈折率の特定の範囲内の屈折率を有するシリコーン材料を含むことができる。
【0029】
別の実施形態では、封止材料の屈折率は表板材料の屈折率より大きく、上述のエスケープコーン損失を低下させるように選択される。エスケープコーン損失は封止材及び表板の屈折率の不一致が増加すると減少するので、比較的高い屈折率を有する封止材料はモジュールの効率を向上させるように機能することができる。
【0030】
特定の実施形態では、封止材はその化学組成に基づいて異なる屈折率を有するシリコーン材料を含む。一般的には、本発明の実施形態の実践において有用なシリコーンはアルキル及び/又はアリール置換ポリシロキサンを含む。例えば、1つの実施形態では、シリコーン材料は633nmの波長で約1.4の屈折率を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むことができる。別の実施形態では、PDMSのメチル基をフェニル基で置き換え、633nmの波長で約1.53の屈折率を有するポリメチルフェニルシロキサン(PMPS)を形成することができる。別の実施形態では、シリコーンはポリジフェニルシロキサンを含むことができる。また別の実施形態では、シリコーン材料は全体的な組成におけるメチル及びフェニル基の相対量に応じて光学特性を有するPDMS及びPMPSのコポリマーを含むことができる。ある封止材料の別の封止材料に対する相対的利点は表板の遮断波長によっても決まり得る。例えば、封止材を通る高透過率は、光が上にある材料によりすでに吸収されている場合、利点をもたらさない。よって、ガラスのような表板の遮断波長がそのセリウム及び鉄含有量に強く依存する場合、こうした含有量は特定の封止材料が実際に有することができる相対的利点に影響を及ぼし得る。
【0031】
あるいは、封止材又は他の要素の屈折率及び吸収係数は微量の化学物質又はナノ粒子のような化合物を添加することにより調整することができる。例えば、結晶TiO2ナノ粒子を封止材に添加し、光電池モジュール1000中に存在する封止材又は他の材料の屈折率を増加することができる。光学特性を調整する追加の方法は、例えばガラスの化学組成を変えることによりガラスの屈折率を低下させるステップ、電池の屈折率を低下させるステップ、又は封止材、ガラス、若しくは光電池モジュール1000中に存在するいずれかの反射防止コーティングの吸収係数を低下させるステップを含むことができる。
【0032】
さらに、光学特性は光電池モジュールの意図する用途に基づく特定の波長範囲について調整することができる。例えば、屈折率及び吸収係数はともに波長によって決まるので、両特性は異なる波長で異なり得る。よって、異なる材料の光学特性の関係は異なり、比較に用いる波長の範囲によって決まる。従って、光電池モジュールの各種要素の光学特性を調整する際、光電池モジュールの意図する目的を組み込み、又は電池が捕捉することを意図する波長の適用可能範囲を決定することができる。望ましくは、選択される封止材料の光学特性は実質的に可視及び紫外線スペクトル全体にわたり実質的に同じとなるだろう。
【0033】
また別の実施形態では、シミュレーション又は測定は測定された、実験上の又は他の方法で得られたデータに基づいてパラメータ化し、効率の比較をより大きな範囲に広げることができる。例えば、(以下に表す)Schottの分散式は、H.Bach及びN.Nueroth(編)、The Properties of Optical Glass、第2版、Springer、ベルリン、P.25、1995に記載される方法論に従って、例えば、300nm〜1600nmのような、より大きな波長範囲にわたる広範な分析をもたらすことができる。
【数6】
【0034】
Schottの式を用いることは、式の少なくとも最初の3つの項(a、b及びc)に基づく精度(χ2)の評価をさらにもたらすことができ、適切な相関が確実により大きな範囲の波長に沿って達成される。
【0035】
実施形態は、例示の目的で提示され、当業者であれば限定を意図するものではないと認識するだろう以下の例を参照することによってよりよく理解されるだろう。
【実施例】
【0036】
4つの異なる封止材を3つの異なる電池構造に用い、合計12個のモデリング用試料を作成した。試料の光学特性はそれらのシミュレーションした全体的な効率と比較し、どの材料が互いにもっとも良く適合するかを決定した。各種モジュールの効率をシミュレーションすることにより、光学特性及び材料選択を調整し、光電池モジュールの性能を向上させることができた。
【0037】
光学特性を表板又は封止材要素として用いることができる5つの異なる材料についてまず試験した。表板材料は330nmの遮断波長を有するPPGの低鉄Starphire(登録商標)ガラスを含んでいた。潜在的な封止材料はSTR Solarから得られるエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、並びにダウコーニングコーポレーションの201、203及び205で示される3つのシリコーンを含んでいた。シリコーン201は一般式:R1R1R3Si−O(R4Si−O)n−SiR1R1R3を有するポリジメチルシロキサンであり、式中、R1及びR4はメチル基であり、R3はビニル基であり、nは25より大きい整数である。シリコーン203は一般式:R1R1R3SiO−(R1R4Si−O)n−(R1R1Si−O)m−SiR1R1R3を有するポリジメチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサンのコポリマーであり、式中、R1はメチル基であり、R3はビニル基であり、R4はフェニル基であり、n及びmは25より大きい整数である。シリコーン205は一般式:R1R1R3Si−O(R4Si−O)n−SiR1R1R3を有するポリメチルフェニルシロキサンであり、式中、R1はメチル基であり、R4はフェニル基であり、R3はビニル基であり、nは100より大きい整数である。
【0038】
図2を参照すると、各材料についての(a)実屈折率(n)及び(b)吸収係数(a)のプロットはそれぞれ波長(λ)の関数として示されている。3つのシリコーンは広範囲の波長にわたり低吸収係数を維持した。すべてのデータはK.R.McIntosh他、“Increase in external quantum efficiency of encapsulated silicon solar cells from luminescent down shifting layer”、Progress in Photovoltaics 17、pp.191−197、2009において概説される方法により実験的に測定した。
【0039】
図2(a)はEVAのn(λ)がガラスのそれと同様であり、材料間の理想に近い光学的結合をもたらしたことを示す。一方、光学シリコーンの典型であるシリコーン201のn(λ)はガラスのn(λ)より著しく低かった。これはガラス−シリコーン界面での小さな反射及び電池又はバックシートからの拡散反射後のより多くの光の脱出をもたらす。図2(a)はシリコーン203及び205により達成されるより高いn(λ)も示す。図2(b)はそれぞれシリコーン201、203及び205の273nm、315nm及び330nmと比較してEVAの短波長吸収が417nmまで拡大したことを示す。よって、シリコーンはスペクトルの紫外線部分においてEVAより著しく多い短波長光子を透過することが見出された。図2(b)は、大きさは同じだがEVAのピークがより広範でより長波長(〜20nm)に集中する場合、EVAが900〜940nm、1000〜1050nm及び1100〜1300nmでシリコーンと同様のピークを示したことも示す。450μmの封止材の場合、最初の2つのピークは0.1%〜0.9%の入射光子を吸収するが、後者は最大8%を吸収する。最後に、図2(b)はEVAのa(λ)が400nm〜850nmの波長範囲にわたりシリコーンより高かったことを示す。
【0040】
データをSchottの式を用いてパラメータ化し、代わりとなる比較の機会をもたらすこともできた。表1はSchottの分散式の最初の3つの項に対する最小二乗適合の最良適合データ及び信頼度95%までのその不確実性を記載する。
【0041】
【表1】
【0042】
次に光学特性は3つのタイプの電池:(A)平らな多結晶シリコンスクリーン印刷電池、(B)ざらつきのある単結晶シリコンスクリーン印刷電池、及び(C)上述のSunPower Corporationにより製造されるもののようなざらつきのある単結晶シリコンリア接触電池から製造された12個のモジュールについてシミュレーションした。各電池タイプに用いられる寸法は表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
各電池タイプ(A、B、及びC)について光学的損失を各電池封止材料(EVA、201、203及び205)の短絡電流密度(Jsc)に関して光線追跡モデリングを用いて計算した。短絡回路電流密度の割合に関する光学特性は各種損失メカニズムについて表3に記載するが、各光電池モジュールの全体的な短絡回路電流密度値は図3に記載する。
【0045】
【表3】
【0046】
モジュールの前面からの反射は各モジュールについて約4.1%であり、同じ材料として維持されたガラスの屈折率により制御された。ガラスの吸収係数は、電池タイプをAからBからCへ変えるとわずかに増加した。モジュールは同じガラスを有したので、その差は電池又はバックシート(Tedlar(登録商標))から反射した後のガラスへの光の2次通過に起因すると考えられる。その差は、とくに反射がその遮光線の高割合のため拡散散乱した場合、電池及びバックシートからの高反射を有するモジュールにおいてもっとも大きかった。
【0047】
封止材における吸収はシリコーンを含有するすべてのモジュールについて比較的小さかった(<0.2%)。一方、EVAにおける吸収はかなり大きかった(1.6〜1.8%)。ガラスと同様、より多くの光の2次通過がある場合、封止材における吸収はより大きかった。しかしながら、その短波長光へのより強い依存性及び電池タイプAの短波長での高反射に見られるように、封止材にはガラスとはわずかに異なる傾向があった。
【0048】
吸収の波長依存性は、すべての波長でもっとも高い効率を示し、従って吸収にもっとも敏感である電池タイプCについて考察した。結果を下の表4に示す:
【0049】
【表4】
*EVA封止モジュールのガラス吸収
【0050】
表は、短波長でEVAは強く吸収し、ガラスはわずかに吸収し、シリコーン201はほとんど全く吸収しなかったことを示す。長波長では、ガラスは鉄に関連する幅広い吸収ピークのため封止材より強く吸収した(図2(b)参照)。封止材について、それらがEVA又はシリコーンであるかに関係なく、小さい吸収ピーク及び大きい吸収ピークで同様に吸収した。長波長で高い電池効率を有するモジュールはよりこれらのピークの影響を受けた。
【0051】
バックシートにおける吸収はより小さいTedlar(登録商標)面積を有する電池についてより小さかった(A<B<C)が、金属における吸収はより多くの金属を有する電池についてより大きかった(A>B>C)。エスケープ損失はAタイプのモジュールについて2つの理由でもっとも大きかった:(i)平らであるので電池は光を正反射し、よってガラス−空気界面での全内部反射(TIR)によって光をモジュール内に閉じ込めることができなかった;及び(ii)電池のARC及び金属からのもっとも高い反射を有していた。Bタイプのモジュールのエスケープ損失は、ざらつきのある電池が光を拡散反射し、ガラス−空気界面でいくらかのTIRをもたらすので、より小さかった。Cタイプのモジュールのエスケープ損失は、電池が前面に金属を有していなかったので、小さいままだった。
【0052】
表3はモジュールが大きな拡散面積を有する場合(すなわち電池タイプB及びC)、エスケープ損失はより高い屈折率の封止材についてより小さいことも示した。これはともに比較的小さいガラス−封止材又は封止材−ARC界面からの反射とはほとんど関係なかった。代わりに、それは電池及びバックシートからの拡散反射、並びにガラス−空気界面で光が内部反射する割合に関連していた。均等拡散反射と仮定すると、エスケープコーン内の光の割合fescは、以下に表す方程式による(Snellの法則のためガラスではなく)封止材の屈折率nencのみによって決まり、式中、θcは臨界角である。
【数7】
【0053】
図4を参照すると、nencの関数としてのfescのプロットが表されている。nencを1.40から1.55まで増加させることにより、fescが0.51から0.42まで減少することを示す。このエスケープ損失の減少はより大きなTIR及び従ってより大きな均等拡散表面を有するモジュール(B及びC)について図3に示すようにより高いJscをもたらす。平らな電池を有し、バックシートをほとんど露出しないAタイプの電池モジュールについて、より高い屈折率の封止材を用いることにはほとんど利点がなかった。実は、シリコーン203又は205を用いることには、それらがわずかにより吸収性であるため、シリコーン201と比較して不利点があった。上記データ及び分析は、それらの光学特性に基づく光電池モジュール材料のより効率的な選択を可能にするだけでなく、さらに高い屈折率の封止材により追加の向上を達成することができることも示す(例えば図4参照)。
【0054】
光電池における封止材屈折率のエスケープコーン損失への効果を示すため、ガラス−封止材界面から内部反射した入射光の割合及び電池/バックシートからの拡散反射後に内部反射(均等拡散反射と仮定)した入射光の割合を封止材屈折率(ne)の関数として計算した。計算は垂直入射、(633nmで)na=1、ng=1.5と仮定する。図7から明らかであるように、交差点(すなわち、ガラス封止材界面での屈折の不一致がより高いRIの封止材を用いることから得られる光学利得を上回る点)は拡散反射するTeの割合が変化すると変化する。要素から拡散反射する光の割合がTeの1%より大きい場合、より小さいエスケープコーン損失の利得が封止材−ガラス界面での反射により無視される交差点は、図7に示すようにne=1.67より大きい。
【0055】
Starphire(登録商標)ガラス、シリコーン201及びシリコーン205の屈折率の測定値を用い、波長の関数として内部反射した入射光の割合を計算した(図8(a)〜8(c)参照)。シリコーン205と201との、及びシリコーン205とEVAコポリマーとの差は図9(a)及び(b)に示す。計算はシリコーン205のより高いne値が電池/バックシートにより拡散反射したTeの量に応じて0.01〜10%の利得を示すことを示す。ne<ngの場合生じるガラスにおける内部反射のため、シリコーン201の値を多く見積もり過ぎることがあり得ることに留意すべきである。
【0056】
本発明は本明細書に記載する具体例に限定されるとみなすべきではなく、むしろ本発明のすべての態様を対象にすると理解すべきである。本発明に適用可能であり得る各種変形及び同等のプロセス、並びに多数の構造及び装置が当業者に容易に理解されるだろうこと。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに各種変更を行うことができ、これが明細書に記載するものに限定されるとみなすべきではないことを理解するだろう。
【背景技術】
【0001】
一般的な光電池モジュール又は太陽電池は、耐久性があり安定な構造を提供しながら太陽エネルギーを利用する、複数の個別要素を備える。例えば、光電池モジュールはバックシート、封止材の下層、光電池、電池の上の封止材の層、及び透明な硬いカバーを備えることができる。要素は、光がモジュールの上層を通過し、電池に作用することができるように重ね合わせる。電池は入射光子を電子に変換し、入射光のエネルギーを利用する。一方、光電池モジュールの全体的な効率は少なくとも部分的には光電池に到達する入射光の量によって決まる。光をモジュール中の複数の要素及び界面により吸収、反射又は屈折することができ、これにより電池に到達する入射光の量を制限する。
【0002】
各個別要素は特定の役割を果たすが、封止材はその多くの要件のため電池の効率にとってとくに重要であり得る。これは光学的に透明、電気的に絶縁、機械的に柔軟であり、ガラス及び光電池の両方に接着し、環境下で長寿命に耐えるため十分に頑強でなければならない。すでに封止材に異なる材料を用いることに固有の不利点を克服するためのさまざまな試みがなされてきた。例えば、従来の電池は封止材料としてエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーをよく用いた。しかしながら、紫外線にさらされるとEVAは安定ではなくなる。長期安定性を向上するため、一般的には紫外線吸収剤を添加しなければならず、これはスペクトルの紫外線領域において低光透過率を有する封止材をもたらす。シリコーンは広範囲の温度にわたり安定であり、所望の誘電特性を有し、光透過性を有するので、封止材としてEVAをシリコーンで置き換えることが提案されている。
【0003】
しかしながら、当技術分野には光電池モジュール及び配列の効率を継続して向上させる必要性が残っている。
【発明の概要】
【0004】
1つの実施形態では、効率を向上させた光電池モジュールの製造方法を提供する。その方法は、光子を電子に変換するように機能することができる光電池を選択するステップ、表板吸収係数及び表板屈折率を有する光透過性表板を選択するステップ、並びに封止材吸収係数及び封止材屈折率を有する封止材を選択するステップを含み、表板及び封止材の吸収係数はモジュールへの光の通過を最適化するように選択され、例えば、各吸収係数はできるだけ低いことが望ましい。表板及び封止材のそれぞれの屈折率は効率が向上するように選択される。光電池モジュールは選択される要素を用いて組み立てられる。
【0005】
別の実施形態では、光学特性を調整した光電池モジュールの製造方法を提供する。その方法は、複数の封止材料について封止材光学特性をもたらすステップ、複数の封止材料のそれぞれを実装する光電池モジュールの効率を比較するステップ、複数の封止材料のそれぞれを実装する光電池モジュールの効率を比較するステップに基づいて光電池モジュールの製造に用いる複数の封止材料の1つを選択するステップ、及び選択される封止材料を用いて光電池モジュールを組み立てるステップを含む。
【0006】
また別の実施形態では、屈折率の不一致を制御した光電池モジュールを提供する。光電池モジュールは、光子を電子に変換するように機能することができる光電池、光透過性表板、及び表板を光電池から離すシリコーン封止材を備え、シリコーン封止材は表板の屈折率より大きい屈折率を有する。
【0007】
また別の実施形態では、効率を向上させた光電池モジュールを提供する。光電池モジュールは、光子を電子に変換するように機能することができる光電池、光透過性表板、及び表板を光電池から離す封止材を備え、封止材はエスケープコーン損失の影響を受ける内部反射の増加によって達成されるモジュールの光学的損失の減少が封止材表板界面での反射に関連する光学的損失より大きくなるような屈折率及び吸収係数を有する。
【0008】
本明細書に記載する実施形態により提供されるこれら及び追加の特徴は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照してより完全に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明及びそのいくつかの実施形態は、添付の図面と関連付けて考える場合、以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるので、そのより完全な理解は容易に得ることができる:
【図1】各種個別要素に関する光学的損失機構を表す典型的な光電池モジュールの断面図である。
【図2】ガラス及び4つの異なる封止材料の(a)実屈折率及び(b)吸収係数の波長依存性グラフである。
【図3】4つの異なる封止材料を含む3つの異なる電池タイプの短絡回路電流密度(Jsc)のチャートである。
【図4】電池又はバックシートから反射する光についての封止材の屈折率の関数としてのガラス−空気界面でのエスケープコーン内の光の割合のグラフである。
【図5】典型的な光電池モジュール中の異なる層の界面での入射光の反射の断面図である。
【図6】全内部反射をもたらす透過光のエスケープコーン損失及び屈折を表す断面図である。
【図7】表板−封止材界面で反射する(R)、又は封止材中に透過する(Te)入射光の割合を表すグラフである。
【図8(a)】表板−封止材界面で反射する(R)、又は典型的な光電池中に透過する(Te)、及びRΘのさまざまな値について内部反射する入射光の割合を表すグラフである。
【図8(b)】表板−封止材界面で反射する(R)、又は典型的な光電池中に透過する(Te)、及びRΘのさまざまな値について内部反射する入射光の割合を表すグラフである。
【図8(c)】表板−封止材界面で反射する(R)、又は典型的な光電池中に透過する(Te)、及びRΘのさまざまな値について内部反射する入射光の割合を表すグラフである。
【図9(a)】異なる封止材間のコーン損失調整による内部反射の差を表すグラフである。
【図9(b)】異なる封止材間のコーン損失調整による内部反射の差を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで本発明の特徴及び利点をときどき具体的な実施形態を参照しながら説明する。しかしながら、本発明は異なる形態で実施することができ、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態はこの開示を詳細で完全なものとし、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提供する。
【0011】
とくに定義されない限り、本明細書に用いるすべての技術及び科学用語は当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書の記載に用いる用語は特定の実施形態をただ説明するためのものであり、限定することを意図しない。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、とくに文脈で明示されない限り、複数形も含むことを意図する。
【0013】
とくに指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載する数値的特性は本発明の実施形態において得ようとする所望の特性に応じて異なり得る概算値である。本発明の広範囲を示す数値範囲及びパラメータは概算値であるが、具体例において示す数値はできるだけ正確に報告されている。いずれの数値も、しかしながら、本質的にそれらのそれぞれ測定に見られる誤差から必ず生じる特定の誤差を含む。
【0014】
実施形態によると、光電池モジュールの全体的な効率を向上させるため、光学モデリング、例えば光線追跡モデリングによって屈折率(n)、吸収係数(a)及び/又は他の光学特性に基づいて光電池モジュールの個別要素の材料の選択を調整する方法を提供する。
【0015】
図1を参照すると、光電池モジュール1000は、これらに限定されないが、バックシート100、封止材の下層200、光電池300、封止材の上層400及び光透過性表板500を含む、複数の個別要素を備えることができる。バックシート100は光電池モジュールに機械的強度をもたらし、外部要素(例えば水、ほこり、及び他の汚染物質)が浸透し、光電池モジュール1000に進入するのを制限するように機能することができるいずれかの材料を含むことができる。例えば、バックシート100は、多数のバックシート製造業者により用いられているTedlar(登録商標)フィルムとしても知られるポリフッ化ビニル(PVF)のようなフルオロポリマーを含むことができる。光電池モジュール1000に強度及び保護をもたらすことに加えて、バックシートは本明細書において後述するように入射光を吸収又は反射するように機能することもできる。例えば、ざらつきのある表面を有するバックシートは、より平らな表面からのより鏡面な反射とは対照的に、入射光を拡散散乱させることができる。従って、バックシートを構成する材料の選択はその機械及び光学特性の両方によって決まり得る。
【0016】
また図1を参照すると、光電池モジュールは光電池300をさらに備えることができる。電池300は封止材の上層400及び封止材の下層200により保護し、バックシート100の上に配置することができる。電池300そのものは入射光子を電子に変換するように機能することができるいずれかの光電池材料を含むことができる。電池は単結晶若しくは多結晶のようないずれかの結晶構造、又は平らな若しくはざらつきのある表面をさらに含むことができる。例えば、電池300は平らな多結晶シリコン、ざらつきのある単結晶シリコン又はこれらのいずれかの変形物をさらに含むことができる。また、電池300は変換した電子を電池から送り出すように機能することができる電気接点を有することができる。例えば、接点は高導電性及び低抵抗性を有する金属又は合金、例えば銀(Ag)のような電流を通すように機能することができるいずれかの導電材料を含むことができる。1つの実施形態では、電池300は接点が電池300の上面(又は封止材の上層400に対向する面)に配置されているスクリーン印刷電池を含むことができる。別の実施形態では、電池300は、W.P.Mulligan他、Proc.19th EU PVSEC、パリ、pp.387〜90、2004に記載される方法に従ってSunPower Corporationにより製造されるもののような、接点が電池300の底面(又は封止材の下層200に対向する面)に配置されているリア接触電池を含むことができる。
【0017】
1つの実施形態では、光電池モジュールは互いに隣接して配置される複数の電池300を備えることができる。電池300は光子から電子への変換もたらすように機能することができ、光電池モジュール1000内でのパッキングを可能にするいずれかの個別寸法を含むことができる。例えば、複数の電池300のそれぞれは約200mm×200mmの範囲内の寸法を含み、電池間で均一な寸法をもたらすことができる。あるいは、個別の電池寸法は光電池モジュール1000における存在し得る障害物の周りの特注パッキングを可能にする、又は特注若しくは独自の構成要件に合うように異なり得る。電池300の位置決めは光電池300を配置可能な全体的な面積に影響を及ぼし得る(これはひいては光電池モジュールの全体的な効率に影響を及ぼし得る)が、実施形態が、封止材の上層400及び表板500により覆われ、本明細書において理解されるように電子に変換する入射光子を得るように機能することができるような、いずれかの寸法又はいずれかのパッキング構造の電池を備えることができることを理解すべきである。
【0018】
封止材200、400は電池300を囲み、バックシート100及び表板500から保護することができる。封止材200、400は電池300をバックシート100から離す封止材の下層及び電池300を表板500から離す封止材の上層を含むことができる。あるいは、封止材200、400は上及び下層が個別電池300間の隙間でつながる1つの連続封止材を含むことができる。封止材の下層200及び封止材の上層400は電池300を保護すること、及び電池300の表面への入射光子の透過を可能にすることの両方のために機能することができる、ゲル、エラストマー又は樹脂のようないずれかの材料を含むことができる。さらに、封止材の上層400及び封止材の下層200が別々の層である場合、それらは同じ材料又は異なる材料を含んでいてもよい。1つの実施形態では、封止材200、400は光透過性シリコーン材料を含むことができる。別の実施形態では、封止材の上層400は光透過性シリコーン材料を含むことができ、封止材の下層200はエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーを含むことができる。また別の実施形態では、本明細書において後述するように、封止材の薄層は電池及びバックシートをコーティングして高屈折率をもたらすことができ、同様に本明細書において後述するように、低吸収係数を確保するため第2のより大きな封止材の層を備えることができる。
【0019】
表板500は光電池モジュール1000の他の表面を保護し、その層を通る入射光子の透過を可能にするように機能することができるいずれかの材料を含むことができる。一般的には、表板500はガラスを含むだろう。例えば、ガラスの遮断波長(又はガラスを通過することができない波長の範囲)がそのセリウム及び鉄のレベルによって決まる場合、ガラスは低セリウム及び鉄含有量を有するように選択することができる。例えば、ガラスは330nmの遮断波長を有するPPGの低鉄Starphire(登録商標)ガラスを含むことができる。
【0020】
追加の特徴、構造又は添加物が光電池モジュール1000の上、周り又は全体に存在することもできる。例えば、本明細書において後述するように、反射防止コーティング(ARC)を光電池モジュールの表面のいずれかに用い、反射して失われる入射光の量を制限することができる。ARCは単層コーティング、多層コーティング又はコーティングした表面からの入射光の反射の量を制限若しくは低減するように機能することができるその他の変形物を含むことができる。
【0021】
光電池モジュールの封止材、表板及び他の要素は、屈折率(n)及び吸収係数(a)のような各種光学特性を有する。屈折率は波長依存性であり、入射光が材料に入る際の屈曲又は屈折量と相関する。吸収係数は、同様に波長依存性であり、以下に表すランベルト・ベールの法則に従って材料の層を通過する光の強度を測定するのに用いることができるが、式中、Iは測定された層を透過する光の強度であり、I0は入射強度であり、aは吸収係数(減衰係数とも称される)であり、xは経路長さ又は厚さである:
【数1】
I=I0e−axとも記載される。
【0022】
光電池モジュール1000のこれらの光学特性及び全体的な構造は、光電池モジュール全体を移動する入射光の各種経路に影響を及ぼし得、ひいては電池300に到達する光子の量及び光電池モジュールの全体的な効率に影響を及ぼし得る。例えば、2つの隣接する材料が異なる屈折率を有する場合、入射光は部分反射し、光電池モジュールから失われ得る。
【0023】
また図1を参照すると、典型的な光電池モジュール1000について8つの異なる入射光経路を示す。第1経路10は入射光の空気−表板界面からの反射を示す。こうした反射は表板の反射特性に起因し、又は2つの媒体間の屈折率の差の結果であり得る。第2経路20は表板の構造及び組成によって決まり得る表板500による吸収を示す。第3経路30は、少なくとも部分的には各媒体の屈折率間の差の結果である表板−封止材界面450からの反射を示す。同様に図示するように、界面450から反射した光の少なくともいくつかの部分は空気−表板界面でモジュール中へ内部反射することができる。第4経路40は封止材そのものによる吸収を示す。第5経路50は反射防止コーティング又は(例えばスクリーン印刷電池中の)金属接点のような電池を囲む材料による吸収を示す。第6経路60は封止材と電池との間の界面で起こり得る反射を示す。同様に図示するように、その界面から反射した光の少なくともいくつかの部分は空気−表板界面でモジュール中へ内部反射することができる。第7経路70はバックシート100による光子の吸収を示す。最後に、第8経路80は封止材とバックシートとの間の界面からの反射を示す。さらに、同様に図示するように、その界面から反射した光の少なくともいくつかの部分は空気−表板界面でモジュール中へ内部反射することができる。
【0024】
入射光の他の潜在的な経路も光電池モジュール1000内に存在し、示した8つの経路は典型例であり、非限定的な例示であることを意図する。例えば、光が光電池モジュール内で(例えば表板−封止材界面450で又はバックシート100から)内部反射する場合、光は電池300に向かって反射、又は別に光電池モジュール1000内で反射、屈折又は吸収することができる。光電池モジュールから脱出する光は全体的にエスケープ損失又はエスケープコーン損失と総称することができ、光電池モジュール1000内の各要素の光学及び構造特性によって決まり得る。例えば、内部要素が入射光を(例えばざらつきのある表面によって)拡散反射又は散乱させる場合、光が実質的により鏡面で反射する場合と比較して、光は電池300により吸収される機会をより多く有し、エスケープ損失を制限することができる。
【0025】
図5及び6に示すように、入射光はガラス−空気及びガラス−封止材界面での正反射に関連する複数の光学的損失を経験する。さらに、電池又はバックシートからの反射及びモジュールを構成する各種媒体による吸収後の光学的損失もある。正反射の量はフレネルの法則によって割り出され、2つの媒体の屈折率の関数であり、吸収による影響も受ける。垂直入射について、吸収損失をゼロと仮定すると、封止材に到達する光の量は下式により与えられる。
【数2】
電池に到達する光の量は空気(na)、ガラス(ng)のような特定の表板、及び封止材(ne)の屈折率により割り出される。電池/バックシートが拡散反射を生成する場合、光のいくらかは内部反射する。内部反射光の量はエスケープコーン(図6参照)により割り出される。モジュールから脱出する拡散散乱光の量はエスケープ割合(fex)として知られる。反射が入射角とは無関係であり、電池/バックシートからの反射が均等拡散性であると仮定すると、fexは下式のように与えられ、
【数3】
式中、θcは全内部反射についてのバックシートからの反射の臨界角である。エスケープコーンは2θcと定義される。封止材−電池/バックシート界面ではTeはいくらかの強度で拡散反射し、
【数4】
式中、Rθは反射したTeの割合である。内部反射する入射光の割合は下式により与えられる。
【数5】
Rθが増加すると、損失コーン低下の利点は増加する。Rθは封止材及び電池/バックシートの光学特性の影響を受ける。
【0026】
部分的に電池300に到達する入射光子の全体量に基づき、光電池モジュールは、例えば、短絡回路電流密度(Jsc)を測定することにより割り出すことができる全体的な効率を有することができる。短絡回路電流密度は、入射光子の潜在的な経路を分析し、生成される短絡回路電子密度を予測するモデリング又はシミュレーション方法によって測定することができる。モデリングは、例えば、上述のような光線追跡シミュレーションによって達成することができる。
【0027】
1つの実施形態では、モデリング(例えば、光線追跡シミュレーション)を用い、各種構造、材料及び光学特性を備える光電池モジュールの短絡回路電流密度を測定し、全体的な効率を向上させることができる。例えば、表板500及び封止材200、400要素の光学特性(すなわち屈折率及び吸収係数)は大きく異なり得る。しかしながら、予測される短絡回路電流密度を最大化するため、これらの光学特性を互いについて調整することは有益であり得る。異なる光学特性の要素を有する各種光電池モジュール1000の短絡回路電流密度をモデリングすることにより、光電池モジュール1000の効率を向上又は最大化するため、材料の選択を調整することができる。
【0028】
光電池モジュールの要素の光学特性は材料の選択又は取扱に基づいて異なり得る。1つの実施形態では、屈折率間に小さな(すなわち、<0.05の)不一致をもたらし、ガラス−封止材界面での反射量を低下させる、ガラスのような表板材料及び封止材料を選択することが望ましくあり得る。例えば、選択されるガラス表板材料は633nmの波長で1.5の屈折率を含むことができる。封止材はその屈折率の±0.05以内のようなその屈折率の特定の範囲内の屈折率を有するシリコーン材料を含むことができる。
【0029】
別の実施形態では、封止材料の屈折率は表板材料の屈折率より大きく、上述のエスケープコーン損失を低下させるように選択される。エスケープコーン損失は封止材及び表板の屈折率の不一致が増加すると減少するので、比較的高い屈折率を有する封止材料はモジュールの効率を向上させるように機能することができる。
【0030】
特定の実施形態では、封止材はその化学組成に基づいて異なる屈折率を有するシリコーン材料を含む。一般的には、本発明の実施形態の実践において有用なシリコーンはアルキル及び/又はアリール置換ポリシロキサンを含む。例えば、1つの実施形態では、シリコーン材料は633nmの波長で約1.4の屈折率を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むことができる。別の実施形態では、PDMSのメチル基をフェニル基で置き換え、633nmの波長で約1.53の屈折率を有するポリメチルフェニルシロキサン(PMPS)を形成することができる。別の実施形態では、シリコーンはポリジフェニルシロキサンを含むことができる。また別の実施形態では、シリコーン材料は全体的な組成におけるメチル及びフェニル基の相対量に応じて光学特性を有するPDMS及びPMPSのコポリマーを含むことができる。ある封止材料の別の封止材料に対する相対的利点は表板の遮断波長によっても決まり得る。例えば、封止材を通る高透過率は、光が上にある材料によりすでに吸収されている場合、利点をもたらさない。よって、ガラスのような表板の遮断波長がそのセリウム及び鉄含有量に強く依存する場合、こうした含有量は特定の封止材料が実際に有することができる相対的利点に影響を及ぼし得る。
【0031】
あるいは、封止材又は他の要素の屈折率及び吸収係数は微量の化学物質又はナノ粒子のような化合物を添加することにより調整することができる。例えば、結晶TiO2ナノ粒子を封止材に添加し、光電池モジュール1000中に存在する封止材又は他の材料の屈折率を増加することができる。光学特性を調整する追加の方法は、例えばガラスの化学組成を変えることによりガラスの屈折率を低下させるステップ、電池の屈折率を低下させるステップ、又は封止材、ガラス、若しくは光電池モジュール1000中に存在するいずれかの反射防止コーティングの吸収係数を低下させるステップを含むことができる。
【0032】
さらに、光学特性は光電池モジュールの意図する用途に基づく特定の波長範囲について調整することができる。例えば、屈折率及び吸収係数はともに波長によって決まるので、両特性は異なる波長で異なり得る。よって、異なる材料の光学特性の関係は異なり、比較に用いる波長の範囲によって決まる。従って、光電池モジュールの各種要素の光学特性を調整する際、光電池モジュールの意図する目的を組み込み、又は電池が捕捉することを意図する波長の適用可能範囲を決定することができる。望ましくは、選択される封止材料の光学特性は実質的に可視及び紫外線スペクトル全体にわたり実質的に同じとなるだろう。
【0033】
また別の実施形態では、シミュレーション又は測定は測定された、実験上の又は他の方法で得られたデータに基づいてパラメータ化し、効率の比較をより大きな範囲に広げることができる。例えば、(以下に表す)Schottの分散式は、H.Bach及びN.Nueroth(編)、The Properties of Optical Glass、第2版、Springer、ベルリン、P.25、1995に記載される方法論に従って、例えば、300nm〜1600nmのような、より大きな波長範囲にわたる広範な分析をもたらすことができる。
【数6】
【0034】
Schottの式を用いることは、式の少なくとも最初の3つの項(a、b及びc)に基づく精度(χ2)の評価をさらにもたらすことができ、適切な相関が確実により大きな範囲の波長に沿って達成される。
【0035】
実施形態は、例示の目的で提示され、当業者であれば限定を意図するものではないと認識するだろう以下の例を参照することによってよりよく理解されるだろう。
【実施例】
【0036】
4つの異なる封止材を3つの異なる電池構造に用い、合計12個のモデリング用試料を作成した。試料の光学特性はそれらのシミュレーションした全体的な効率と比較し、どの材料が互いにもっとも良く適合するかを決定した。各種モジュールの効率をシミュレーションすることにより、光学特性及び材料選択を調整し、光電池モジュールの性能を向上させることができた。
【0037】
光学特性を表板又は封止材要素として用いることができる5つの異なる材料についてまず試験した。表板材料は330nmの遮断波長を有するPPGの低鉄Starphire(登録商標)ガラスを含んでいた。潜在的な封止材料はSTR Solarから得られるエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、並びにダウコーニングコーポレーションの201、203及び205で示される3つのシリコーンを含んでいた。シリコーン201は一般式:R1R1R3Si−O(R4Si−O)n−SiR1R1R3を有するポリジメチルシロキサンであり、式中、R1及びR4はメチル基であり、R3はビニル基であり、nは25より大きい整数である。シリコーン203は一般式:R1R1R3SiO−(R1R4Si−O)n−(R1R1Si−O)m−SiR1R1R3を有するポリジメチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサンのコポリマーであり、式中、R1はメチル基であり、R3はビニル基であり、R4はフェニル基であり、n及びmは25より大きい整数である。シリコーン205は一般式:R1R1R3Si−O(R4Si−O)n−SiR1R1R3を有するポリメチルフェニルシロキサンであり、式中、R1はメチル基であり、R4はフェニル基であり、R3はビニル基であり、nは100より大きい整数である。
【0038】
図2を参照すると、各材料についての(a)実屈折率(n)及び(b)吸収係数(a)のプロットはそれぞれ波長(λ)の関数として示されている。3つのシリコーンは広範囲の波長にわたり低吸収係数を維持した。すべてのデータはK.R.McIntosh他、“Increase in external quantum efficiency of encapsulated silicon solar cells from luminescent down shifting layer”、Progress in Photovoltaics 17、pp.191−197、2009において概説される方法により実験的に測定した。
【0039】
図2(a)はEVAのn(λ)がガラスのそれと同様であり、材料間の理想に近い光学的結合をもたらしたことを示す。一方、光学シリコーンの典型であるシリコーン201のn(λ)はガラスのn(λ)より著しく低かった。これはガラス−シリコーン界面での小さな反射及び電池又はバックシートからの拡散反射後のより多くの光の脱出をもたらす。図2(a)はシリコーン203及び205により達成されるより高いn(λ)も示す。図2(b)はそれぞれシリコーン201、203及び205の273nm、315nm及び330nmと比較してEVAの短波長吸収が417nmまで拡大したことを示す。よって、シリコーンはスペクトルの紫外線部分においてEVAより著しく多い短波長光子を透過することが見出された。図2(b)は、大きさは同じだがEVAのピークがより広範でより長波長(〜20nm)に集中する場合、EVAが900〜940nm、1000〜1050nm及び1100〜1300nmでシリコーンと同様のピークを示したことも示す。450μmの封止材の場合、最初の2つのピークは0.1%〜0.9%の入射光子を吸収するが、後者は最大8%を吸収する。最後に、図2(b)はEVAのa(λ)が400nm〜850nmの波長範囲にわたりシリコーンより高かったことを示す。
【0040】
データをSchottの式を用いてパラメータ化し、代わりとなる比較の機会をもたらすこともできた。表1はSchottの分散式の最初の3つの項に対する最小二乗適合の最良適合データ及び信頼度95%までのその不確実性を記載する。
【0041】
【表1】
【0042】
次に光学特性は3つのタイプの電池:(A)平らな多結晶シリコンスクリーン印刷電池、(B)ざらつきのある単結晶シリコンスクリーン印刷電池、及び(C)上述のSunPower Corporationにより製造されるもののようなざらつきのある単結晶シリコンリア接触電池から製造された12個のモジュールについてシミュレーションした。各電池タイプに用いられる寸法は表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
各電池タイプ(A、B、及びC)について光学的損失を各電池封止材料(EVA、201、203及び205)の短絡電流密度(Jsc)に関して光線追跡モデリングを用いて計算した。短絡回路電流密度の割合に関する光学特性は各種損失メカニズムについて表3に記載するが、各光電池モジュールの全体的な短絡回路電流密度値は図3に記載する。
【0045】
【表3】
【0046】
モジュールの前面からの反射は各モジュールについて約4.1%であり、同じ材料として維持されたガラスの屈折率により制御された。ガラスの吸収係数は、電池タイプをAからBからCへ変えるとわずかに増加した。モジュールは同じガラスを有したので、その差は電池又はバックシート(Tedlar(登録商標))から反射した後のガラスへの光の2次通過に起因すると考えられる。その差は、とくに反射がその遮光線の高割合のため拡散散乱した場合、電池及びバックシートからの高反射を有するモジュールにおいてもっとも大きかった。
【0047】
封止材における吸収はシリコーンを含有するすべてのモジュールについて比較的小さかった(<0.2%)。一方、EVAにおける吸収はかなり大きかった(1.6〜1.8%)。ガラスと同様、より多くの光の2次通過がある場合、封止材における吸収はより大きかった。しかしながら、その短波長光へのより強い依存性及び電池タイプAの短波長での高反射に見られるように、封止材にはガラスとはわずかに異なる傾向があった。
【0048】
吸収の波長依存性は、すべての波長でもっとも高い効率を示し、従って吸収にもっとも敏感である電池タイプCについて考察した。結果を下の表4に示す:
【0049】
【表4】
*EVA封止モジュールのガラス吸収
【0050】
表は、短波長でEVAは強く吸収し、ガラスはわずかに吸収し、シリコーン201はほとんど全く吸収しなかったことを示す。長波長では、ガラスは鉄に関連する幅広い吸収ピークのため封止材より強く吸収した(図2(b)参照)。封止材について、それらがEVA又はシリコーンであるかに関係なく、小さい吸収ピーク及び大きい吸収ピークで同様に吸収した。長波長で高い電池効率を有するモジュールはよりこれらのピークの影響を受けた。
【0051】
バックシートにおける吸収はより小さいTedlar(登録商標)面積を有する電池についてより小さかった(A<B<C)が、金属における吸収はより多くの金属を有する電池についてより大きかった(A>B>C)。エスケープ損失はAタイプのモジュールについて2つの理由でもっとも大きかった:(i)平らであるので電池は光を正反射し、よってガラス−空気界面での全内部反射(TIR)によって光をモジュール内に閉じ込めることができなかった;及び(ii)電池のARC及び金属からのもっとも高い反射を有していた。Bタイプのモジュールのエスケープ損失は、ざらつきのある電池が光を拡散反射し、ガラス−空気界面でいくらかのTIRをもたらすので、より小さかった。Cタイプのモジュールのエスケープ損失は、電池が前面に金属を有していなかったので、小さいままだった。
【0052】
表3はモジュールが大きな拡散面積を有する場合(すなわち電池タイプB及びC)、エスケープ損失はより高い屈折率の封止材についてより小さいことも示した。これはともに比較的小さいガラス−封止材又は封止材−ARC界面からの反射とはほとんど関係なかった。代わりに、それは電池及びバックシートからの拡散反射、並びにガラス−空気界面で光が内部反射する割合に関連していた。均等拡散反射と仮定すると、エスケープコーン内の光の割合fescは、以下に表す方程式による(Snellの法則のためガラスではなく)封止材の屈折率nencのみによって決まり、式中、θcは臨界角である。
【数7】
【0053】
図4を参照すると、nencの関数としてのfescのプロットが表されている。nencを1.40から1.55まで増加させることにより、fescが0.51から0.42まで減少することを示す。このエスケープ損失の減少はより大きなTIR及び従ってより大きな均等拡散表面を有するモジュール(B及びC)について図3に示すようにより高いJscをもたらす。平らな電池を有し、バックシートをほとんど露出しないAタイプの電池モジュールについて、より高い屈折率の封止材を用いることにはほとんど利点がなかった。実は、シリコーン203又は205を用いることには、それらがわずかにより吸収性であるため、シリコーン201と比較して不利点があった。上記データ及び分析は、それらの光学特性に基づく光電池モジュール材料のより効率的な選択を可能にするだけでなく、さらに高い屈折率の封止材により追加の向上を達成することができることも示す(例えば図4参照)。
【0054】
光電池における封止材屈折率のエスケープコーン損失への効果を示すため、ガラス−封止材界面から内部反射した入射光の割合及び電池/バックシートからの拡散反射後に内部反射(均等拡散反射と仮定)した入射光の割合を封止材屈折率(ne)の関数として計算した。計算は垂直入射、(633nmで)na=1、ng=1.5と仮定する。図7から明らかであるように、交差点(すなわち、ガラス封止材界面での屈折の不一致がより高いRIの封止材を用いることから得られる光学利得を上回る点)は拡散反射するTeの割合が変化すると変化する。要素から拡散反射する光の割合がTeの1%より大きい場合、より小さいエスケープコーン損失の利得が封止材−ガラス界面での反射により無視される交差点は、図7に示すようにne=1.67より大きい。
【0055】
Starphire(登録商標)ガラス、シリコーン201及びシリコーン205の屈折率の測定値を用い、波長の関数として内部反射した入射光の割合を計算した(図8(a)〜8(c)参照)。シリコーン205と201との、及びシリコーン205とEVAコポリマーとの差は図9(a)及び(b)に示す。計算はシリコーン205のより高いne値が電池/バックシートにより拡散反射したTeの量に応じて0.01〜10%の利得を示すことを示す。ne<ngの場合生じるガラスにおける内部反射のため、シリコーン201の値を多く見積もり過ぎることがあり得ることに留意すべきである。
【0056】
本発明は本明細書に記載する具体例に限定されるとみなすべきではなく、むしろ本発明のすべての態様を対象にすると理解すべきである。本発明に適用可能であり得る各種変形及び同等のプロセス、並びに多数の構造及び装置が当業者に容易に理解されるだろうこと。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに各種変更を行うことができ、これが明細書に記載するものに限定されるとみなすべきではないことを理解するだろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子を電子に変換するように機能することができる光電池を選択するステップと、
表板吸収係数及び表板屈折率を有する光透過性表板を選択するステップと、
封止材吸収係数及び封止材屈折率を有する封止材を選択するステップと、
選択される材料を用いて該光電池を組み立てるステップとを具え、
該表板及び該封止材の吸収係数は、該光電池に到達する光を最適化するように選択され、該表板及び該封止材のそれぞれの屈折率は、効率が向上するように選択される、効率を向上させた光電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記最適化された効率の向上は部分的にエスケープコーン損失に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記効率の向上は前記光電池の短絡回路電流密度に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記封止材がシリコーンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコーンが、アルキル及び/又はアリール置換ポリジメチルシロキサンのホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコーンが、ポリジメチルシロキサンとポリメチルフェニルシロキサンのコポリマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記封止材屈折率が前記表板屈折率の±0.05内である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記表板屈折率が約1.5である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記封止材屈折率が前記表板屈折率より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
光子を電子に変換するように機能することができる光電池と、
光透過性表板材料と、
表板を該光電池から離すシリコーン封止材とを備え、
該表板及び該シリコーン封止材が該表板の該屈折率より大きい屈折率を有する、屈折率の不一致を制御した光電池モジュール。
【請求項11】
前記シリコーン封止材は、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるシリコーンホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項12】
前記シリコーン封止材が該封止材より大きい屈折率を有するナノ粒子を含む、請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項13】
前記光電池が単結晶シリコン電池を含む、請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項14】
前記光電池がスクリーン印刷電池をさらに含む、請求項13に記載の光電池モジュール。
【請求項15】
前記光電池がリア接触電池をさらに含む、請求項13に記載の光電池モジュール。
【請求項16】
光子を電子に変換するように機能することができる光電池と、
光透過性表板材料と、
該表板を該光電池から離すシリコーン封止材と、
を備え、
該封止材は、エスケープコーン損失の影響を受ける内部反射の増加によって達成される該モジュールの光学的損失の減少が封止材表板界面での反射に関連する光学的損失より大きくなるような屈折率及び吸収係数を有する、屈折率の不一致を制御した光電池モジュール。
【請求項17】
前記シリコーン封止材は、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるシリコーンホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項16に記載の光電池モジュール。
【請求項1】
光子を電子に変換するように機能することができる光電池を選択するステップと、
表板吸収係数及び表板屈折率を有する光透過性表板を選択するステップと、
封止材吸収係数及び封止材屈折率を有する封止材を選択するステップと、
選択される材料を用いて該光電池を組み立てるステップとを具え、
該表板及び該封止材の吸収係数は、該光電池に到達する光を最適化するように選択され、該表板及び該封止材のそれぞれの屈折率は、効率が向上するように選択される、効率を向上させた光電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記最適化された効率の向上は部分的にエスケープコーン損失に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記効率の向上は前記光電池の短絡回路電流密度に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記封止材がシリコーンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコーンが、アルキル及び/又はアリール置換ポリジメチルシロキサンのホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコーンが、ポリジメチルシロキサンとポリメチルフェニルシロキサンのコポリマーを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記封止材屈折率が前記表板屈折率の±0.05内である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記表板屈折率が約1.5である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記封止材屈折率が前記表板屈折率より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
光子を電子に変換するように機能することができる光電池と、
光透過性表板材料と、
表板を該光電池から離すシリコーン封止材とを備え、
該表板及び該シリコーン封止材が該表板の該屈折率より大きい屈折率を有する、屈折率の不一致を制御した光電池モジュール。
【請求項11】
前記シリコーン封止材は、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるシリコーンホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項12】
前記シリコーン封止材が該封止材より大きい屈折率を有するナノ粒子を含む、請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項13】
前記光電池が単結晶シリコン電池を含む、請求項10に記載の光電池モジュール。
【請求項14】
前記光電池がスクリーン印刷電池をさらに含む、請求項13に記載の光電池モジュール。
【請求項15】
前記光電池がリア接触電池をさらに含む、請求項13に記載の光電池モジュール。
【請求項16】
光子を電子に変換するように機能することができる光電池と、
光透過性表板材料と、
該表板を該光電池から離すシリコーン封止材と、
を備え、
該封止材は、エスケープコーン損失の影響を受ける内部反射の増加によって達成される該モジュールの光学的損失の減少が封止材表板界面での反射に関連する光学的損失より大きくなるような屈折率及び吸収係数を有する、屈折率の不一致を制御した光電池モジュール。
【請求項17】
前記シリコーン封止材は、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びこれらの混合物からなる群より選択されるシリコーンホモポリマー又はコポリマーを含む、請求項16に記載の光電池モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図9(a)】
【図9(b)】
【公表番号】特表2012−529186(P2012−529186A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514121(P2012−514121)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/037228
【国際公開番号】WO2010/141697
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【出願人】(511286953)ザ オーストラリアン ナショナル ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】THE AUSTRALIAN NATIONAL UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/037228
【国際公開番号】WO2010/141697
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【出願人】(511286953)ザ オーストラリアン ナショナル ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】THE AUSTRALIAN NATIONAL UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]