説明

値選択回路

【課題】入力値のいずれかを高速に選択でき且つ入力値が増えた場合への対応が容易な値選択回路を提供する。
【解決手段】 比較器111は、入力値A>Bなら、値「1」を有する信号ABを出力し、A≦Bなら、値「0」を有する信号ABを出力する。比較器112は、同様に、入力値B、Cの比較結果を示す信号BCを出力する。比較器113は、同様に、入力値C、Aの比較結果を示す信号CAを出力する。選択信号出力手段12のテーブル121は、信号AB、BC、CAの値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め値を記憶している。テーブル121は、当該信号の値の組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された値を読み出して当該値を有する選択信号OUT121を出力する。選択手段13の選択器131は、選択信号OUT121の値に応じた入力値を選択して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される複数の入力値のいずれかを選択する値選択回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
符号化処理中のマクロブロックの動きベクトルの予測値として、周囲のマクロブロックの動きベクトルの中央値を用いる技術がある。
【0003】
これを、図5を用いて説明すると、符号化処理中のマクロブロックMEの動きベクトルBMEの予測値は、周囲のマクロブロックMA、MB、MCの動きベクトルBMA、BMB、BMCの中央値とされる。
【0004】
ここで、奇数個の数値の中央値とは、数値を昇順または降順に並べた際に中央に位置する数値である。一方、偶数個の数値の中央値とは、数値を同様に並べた際に中央に位置する2つの数値の平均値である。例えば、数値A、B、C、D(ただし、A>B>C>D)の中央値は、数値B、Cの平均値である。
【0005】
H.264の規格を策定するITU−T(国際電気通信連合・電気通信標準化セクタ)から供給されるジョイントモデルというソフトウェアでは、例えば、数値A、B、Cの中央値を以下のように求める。以下、数値を適宜符号のみで表記する。
【0006】
1.AとBを比較する。ここでは、A>Bとする。
【0007】
2.CとAを比較し、C>Aなら、C>A>Bなので、Aを中央値とする。
【0008】
3.C<Aなら、CとBを比較する。
【0009】
4.C>Bなら、A>C>Bなので、Cを中央値とする。
【0010】
5.C<Bなら、A>B>Cなので、Bを中央値とする。
【0011】
図6は、このような中央値の選択を実現する回路の回路図である。
【0012】
比較器101は、入力値A、Bを比較し、A>Bなら、値「1」を有する信号ABを出力し、A≦Bなら、値「0」を有する信号ABを出力する。選択器201は、信号ABが値「1」を有するならA、BからAを選択して出力し、信号ABが値「0」を有するならBを選択して出力する。つまり、選択器201は、A、Bの大きい方を出力する。選択器202は、信号ABの反転信号を与えられ、反転信号が値「0」を有するならBを選択して出力し、反転信号が値「1」を有するならAを選択して出力する。つまり、選択器202は、A、Bの小さい方を出力する。
【0013】
比較器102は、入力値Cと選択器202が出力した値(値Sという)とを比較し、C>Sなら、値「1」を有する信号CSを出力し、C≦Sなら、値「0」を有する信号CSを出力する。選択器203は、信号CSが値「1」を有するなら、S、CからCを選択して出力し、信号CSが値「0」を有するなら、Sを選択して出力する。つまり、選択器203は、S、Cの大きい方を出力する。
【0014】
比較器103は、入力値Cと選択器201が出力した値(値Lという)とを比較し、L>Cなら、値「1」を有する信号LCを出力し、L≦Cなら、値「0」を有する信号LCを出力する。選択器204は、信号LCが値「1」を有するなら、Lと選択器203から出力された値とから後者を選択して出力し、信号LCが値「0」を有するなら前者のLを選択して出力する。つまり、選択器204は、A、B、Cの中央値を出力する。
【0015】
中央値の選択をソフトウェアで実現する技術としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【0016】
かかる技術を図7を用いて説明する。なお、用語は適宜変更して説明する。
【0017】
ROM(リードオンリーメモリ)301には、制御プログラム3011が記憶されており、それをCPU(中央演算装置)302が読み出し実行することでデータ処理部3021が構成される。データ処理部3021は、例えば、入力された入力値A、B、Cを、RAM(ランダムアクセスメモリ)303内に構成された入力値記憶部3031における番号「1」、「2」、「3」の位置にそれぞれ記憶させる。
【0018】
次に、データ処理部3021は、入力値記憶部3031から、A、Bを読み出し、A−Bを算出し、算出結果≧0なら値「1」、算出結果<0なら値「0」を、RAM303内に構成された算出結果記憶部3032の2ビット目の位置に記憶させる。データ処理部3021は、A、Cを読み出し、A−Cを算出し、同様な算出結果に応じた値を、算出結果記憶部3032の1ビット目の位置に記憶させる。データ処理部3021は、B、Cを読み出し、B−Cを算出し、同様な算出結果に応じた値を、算出結果記憶部3032の0ビット目の位置に記憶させる。
【0019】
次に、データ処理部3021は、算出結果記憶部3032の0、1、2ビット目の位置に記憶された各値を読み出す。そして、当該各値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め番号を記憶したROM301内の参照テーブル3012を使用し、参照テーブル3012から実際に当該組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された番号を読み出す。
【0020】
次に、データ処理部3021は、入力値記憶部3031から、読み出した番号の位置に記憶された入力値を読み出して出力する。出力される入力値が中央値となるように、参照テーブル3012は番号を記憶しており、こうして中央値が出力される。
【特許文献1】特開平05−165536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、図6に示した回路は、その構成要素数が多く、複雑であり、クリティカルパスが増大する。また、入力値が増えた場合に対応しにくい。
【0022】
一方、図7に示した装置では、ソフトウェアによっては逐次処理がなされるので、つまりは並列処理が行えない。そのため、長時間を要し、入力値が増えた場合には、その時間が指数関数的に増える。
【0023】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、入力値のいずれかを高速に選択でき且つ入力値が増えた場合への対応が容易な値選択回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の課題を解決するために、請求項1の本発明は、入力される複数の入力値のいずれかである2つの入力値で構成される組内の入力値同士を比較する比較器を当該複数の入力値で構成可能な各組について有する比較手段と、前記各比較器から出力される信号の値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め1以上の値を記憶するとともに当該組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された値を読み出して当該値を有する選択信号を出力するテーブルを1以上有する選択信号出力手段と、前記複数の入力値の中から前記選択信号出力手段が出力する1つの選択信号または2つ以上の選択信号の組み合わせに応じた入力値を選択して出力する選択手段とを備えることを特徴とする値選択回路をもって解決手段とする。
【0025】
請求項1の本発明によれば、CPU、ROM、RAM、制御プログラムを不要にでき、よって、入力値を高速に選択でき、また、比較器は並列に配置すればよく、選択手段もまとめて配置できるので、入力値が増えた場合であっても、回路構成が複雑にならず、その結果、入力値が増えた場合への対応が容易である。
【0026】
請求項2の本発明は、前記選択信号出力手段は、少なくとも2つの選択信号を出力し、前記選択手段は、前記複数の入力値の一部である複数の入力値の中から当該一方の選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器と、当該一部の入力値を除いた入力値の少なくとも一部と当該一方の選択信号に応じて出力された入力値とで構成される複数の入力値の中から当該他方の選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器とを備えることを特徴とする請求項1記載の値選択回路をもって解決手段とする。
【0027】
請求項2の本発明によれば、2つ以上の選択信号で1つの入力値を選択することで、少ない入力数の選択器を使用することができる。
【0028】
請求項3の本発明は、前記選択信号出力手段は、少なくとも1つの選択信号を出力し、前記選択手段は、前記複数の入力値の一部である複数の入力値の中から当該1つの選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器と、前記複数の入力値から当該一部の入力値を除いたものの少なくとも一部である複数の入力値の中から当該1つの選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の値選択回路をもって解決手段とする。
【0029】
請求項3記載の本発明によれば、共通の選択信号を2つ以上の選択器に出力することで、例えば、2段以上の選択器で選択手段を構成した場合において、選択器や配置や配線を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、入力される複数の入力値のいずれかである2つの入力値で構成される組内の入力値同士を比較する比較器を当該複数の入力値で構成可能な各組について有する比較手段と、各比較器から出力される信号の値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め1以上の値を記憶するとともに当該組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された値を読み出して当該値を有する選択信号を出力するテーブルを1以上有する選択信号出力手段と、複数の入力値の中から前記選択信号出力手段が出力する1つの選択信号または2つ以上の選択信号の組み合わせに応じた入力値を選択して出力する選択手段とを備えることで、CPU、ROM、RAM、制御プログラムを不要にでき、よって、入力値を高速に選択でき且つ入力値が増えた場合への対応が容易な値選択回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0032】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る値選択回路1の回路図である。
【0033】
値選択回路1は、入力される複数の入力値のいずれかである2つの入力値で構成される組内の入力値同士を比較する比較器を当該複数の入力値で構成可能な各組について有する比較手段11と、各比較器から出力される信号の値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め値を記憶するとともに当該組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された値を読み出して当該値を有する選択信号を出力するテーブルを有する選択信号出力手段12と、複数の入力値の中から選択信号出力手段12が出力する選択信号に応じた入力値を選択して出力する選択手段13とを備える。
【0034】
入力される複数の入力値は、ここでは、入力値A、B、Cである。このように3つの入力値の中央値を出力すべく、比較手段11は、比較器111、112、113を備える。
【0035】
比較器111は、入力値A、Bを比較し、A>Bなら、値「1」を有する信号ABを出力し、A≦Bなら、値「0」を有する信号ABを出力する。比較器112は、入力値B、Cを比較し、B>Cなら、値「1」を有する信号BCを出力し、B≦Cなら、値「0」を有する信号BCを出力する。比較器113は、入力値C、Aを比較し、C>Aなら、値「1」を有する信号CAを出力し、C≦Aなら、値「0」を有する信号CAを出力する。
【0036】
選択信号出力手段12は、テーブル121を有する。テーブル121は、信号AB、BC、CAの値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め値を記憶している。テーブル121は、信号AB、BC、CAが出力されたなら、当該信号の値の組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された値を読み出して当該値を有する選択信号OUT121を出力する。選択信号OUT121は、値「0」、「1」、「2」のいずれかを有する。
【0037】
選択手段13は、選択器131を有する。選択器131は、入力値A、B、Cの中から、選択信号OUT121の値に応じた入力値を選択して出力する。出力される入力値が中央値となるように、テーブル121は構成されており、こうして入力値A、B、Cの中央値が出力される。
【0038】
例えば、信号ABが値「1」を有し、信号BCが値「1」を有し、信号CAが値「0」を有する場合、値「1」を有する選択信号OUT121が出力され、中央値である入力値Bが選択され、出力される。
【0039】
なお、テーブル121にあっては、信号ABの値「1」と、信号BCの値「1」と、信号CAの値「1」の組み合わせで示されるアドレスの位置に値を記憶していないが、これは、当該組み合わせが実現不可能だからである。
【0040】
また、信号ABの値「0」と、信号BCの値「0」と、信号CAの値「0」の組み合わせで示されるアドレスの位置に値「0」を記憶し、入力値Aが選択されるようにしているが、この場合、入力値A、B、Cが互いに等しいので、当該アドレスの位置に値「1」または「2」を記憶し、入力値BまたはCが選択されるようにしてもよい。
【0041】
[第2の実施の形態]
図2は、第2の実施の形態に係る値選択回路2の回路図である。なお、ここでは、値選択回路とともに使用される演算器も示す。
【0042】
値選択回路2は、値選択回路1と同様に、比較手段(ここでは、比較手段21という)と、選択信号出力手段(ここでは、選択信号出力手段22という)と、選択手段(ここでは、選択手段23という)とを備える。
【0043】
入力される複数の入力値は、ここでは、入力値A、B、C、Dである。このように4つの入力値の中央に近い2つを出力すべく、比較手段21は、比較器211〜216を備える。
【0044】
比較器211は、入力値A、Bを比較し、A>Bなら、値「1」を有する信号ABを出力し、A≦Bなら、値「0」を有する信号ABを出力する。比較器212は、入力値A、Cを比較し、A>Cなら、値「1」を有する信号ACを出力し、A≦Cなら、値「0」を有する信号ACを出力する。比較器213は、入力値A、Dを比較し、A>Dなら、値「1」を有する信号ADを出力し、A≦Dなら、値「0」を有する信号ADを出力する。比較器214は、入力値B、Cを比較し、B>Cなら、値「1」を有する信号BCを出力し、B≦Cなら、値「0」を有する信号BCを出力する。比較器215は、入力値B、Dを比較し、B>Dなら、値「1」を有する信号BDを出力し、B≦Dなら、値「0」を有する信号BDを出力する。比較器216は、入力値C、Dを比較し、C>Dなら、値「1」を有する信号CDを出力し、C≦Dなら、値「0」を有する信号CDを出力する。
【0045】
選択信号出力手段22は、テーブル221、222を有する。各テーブル221、222は、信号AB、AC、AD、BC、BD、CDの値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め値を記憶している。
【0046】
各テーブル221、222は、信号AB、AC、AD、BC、BD、CDが出力されたなら、当該信号の値の組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された値を読み出して当該値を有する選択信号OUT221、OUT222をそれぞれ出力する。各選択信号OUT221、OUT222は、値「0」、「1」、「2」、「3」のいずれかを有する。 選択手段23は、選択器231、232を有する。選択器231は、入力値A〜Dの中から、選択信号OUT221の値に応じた入力値を選択して出力する。出力される入力値が入力値A〜Dの中央に近い2つの中の小さい方となるように、テーブル221は構成されており、こうして入力値A〜Dの中央に近い2つの中の小さい方が出力される。選択器232は、入力値A〜Dの中から、選択信号OUT222の値に応じた入力値を選択して出力する。出力される入力値が入力値A〜Dの中央に近い2つの中の大きい方となるように、テーブル222は構成されており、こうして入力値A〜Dの中央に近い2つの中の大きい方が出力される。
【0047】
演算器2Aは、値選択回路2から出力された2つの入力値の平均値を演算し、当該平均値を出力する。
【0048】
なお、各テーブル221、222は、各アドレスの位置に値を1つだけ記憶しているので、選択信号を1つだけ出力するが、テーブルを1つにまとめ、その各アドレスの位置に各テーブル221、222が記憶していた合計2つの値を記憶し、1つにしたテーブルが、テーブル221が記憶していた値を有する選択信号を選択器231に出力するとともにテーブル222が記憶していた値を有する選択信号を選択器232に出力するようにしてもよい。つまり、テーブルの数、選択信号の数、選択信号の出力先は、設計の容易さなどに応じて定めればよい。
【0049】
[第3の実施の形態]
図3は、第3の実施の形態に係る値選択回路3の回路図である。
【0050】
値選択回路3は、値選択回路1の構成要素である比較手段11を備えるので、比較手段11については詳細説明を省略する。値選択回路3は、さらに、選択信号出力手段32と選択手段33とを備える。入力される複数の入力値は、ここでは、入力値A、B、Cである。
【0051】
選択信号出力手段32は、テーブル321を有する。テーブル321は、信号AB、BC、CAの値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め値を2つ記憶している。テーブル321は、信号AB、BC、CAが出力されたなら、当該信号の値の組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された2つの値を読み出して当該一方の値を有する選択信号OUT3211と当該他方の値を有する選択信号OUT3212とを出力する。各選択信号OUT3211、OUT3212は、値「0」、「1」のいずれかを有する。
【0052】
選択手段33は、選択器331、332を有する。選択器331は、入力値A、Bの中から、選択信号OUT3211の値に応じた入力値を選択して出力する。選択器332は、選択信号OUT3211に応じて出力された入力値(例えば、A)と入力値Cの中から、選択信号OUT3212の値に応じた入力値を選択して出力する。出力される入力値が中央値となるように、テーブル321は構成されており、こうして入力値A、B、Cの中央値が出力される。
【0053】
すなわち、選択信号出力手段32は、少なくとも2つの選択信号OUT3211、OUT3212を出力し、選択手段33は、複数の入力値(A、B、C)の一部である複数の入力値(A、B)の中から一方の選択信号OUT3211に応じた1つの入力値(例えばA)を選択して出力する選択器331と、一部の入力値(A、B)を除いた入力値の少なくとも一部(C)と一方の選択信号に応じて出力された入力値(例えばA)とで構成される複数の入力値(A、C)の中から他方の選択信号OUT3212に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器332とを備えるので、選択手段33にあっては、第1の実施の形態のように、いわゆる「n入力1出力」の選択器を使用する必要はなく、各選択器331、332としていわゆる「2入力1出力」の選択器を使用することができる。
【0054】
なお、この技術思想を採用しつつ、ここではいわゆる2段の選択器で構成した選択手段を、3段以上の選択器で構成してもよい。この場合、テーブルの各アドレスの位置には、段数と同数の値を記憶しておき、各値を有する選択信号を出力し、各選択信号を該当段の選択器に出力すればよい。
【0055】
例えば、n個(nは奇数)の入力値の中央値を「2入力1出力」の選択器により選択する場合、n×(n−1)/2個の比較器と、例えば1個のテーブルと、[log(n−1)]+1段にしたn−1個の選択器が使用される。なお、[]はガウス記号で、[]内の数値を超えない最大の整数値を表す。
【0056】
なお、テーブル321にあっては、信号ABの値「1」と、信号BCの値「1」と、信号CAの値「1」の組み合わせで示されるアドレスの位置に値を記憶していないが、これは、当該組み合わせが実現不可能だからである。
【0057】
また、信号ABの値「0」と、信号BCの値「0」と、信号CAの値「0」の組み合わせで示されるアドレスの位置に値「0」と値「0」を記憶し、入力値Aが選択されるようにしているが、この場合、入力値A、B、Cが互いに等しいので、当該アドレスの位置に記憶される各値は、「0」、「1」のいずれでもよく、入力値BまたはCが選択されるようにしてもよい。
【0058】
また、信号ABの値「0」と、信号BCの値「1」と、信号CAの値「1」の組み合わせで示されるアドレスの位置に値「0」と値「1」を記憶し、値「0」を有する選択信号OUT3211により入力値A、Bの中からAが選択され、値「1」を有する選択信号OUT3212により入力値A、Cの中からCが選択されようにしているが、入力値A、Bの中からBが選択されてもよいので、値「0」に代えて値「1」を記憶してもよい。
【0059】
また、同様の理由により、信号ABの値「1」と、信号BCの値「0」と、信号CAの値「0」の組み合わせで示されるアドレスの位置に記憶した値「0」を値「1」に代えてもよい。
【0060】
[第4の実施の形態]
図4は、第4の実施の形態に係る値選択回路4の回路図である。
【0061】
値選択回路4は、図示しない比較手段と選択信号出力手段42と選択手段43とを備える。比較手段は、上記の各比較手段と同様なので、詳細説明を省略する。
【0062】
入力される複数の入力値は、ここでは、入力値A〜Iである。上記の段の数を求める式に入力値の数「9」を代入すると、[log(9−1)]+1=4となる。したがって、選択手段43は4段の選択器で構成され、4つの選択信号のそれぞれが、4段の中の該当段の選択器に出力されることとなる。
【0063】
選択信号出力手段42は、テーブル421を有する。テーブル421は、比較手段から出力される各信号の値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め値を4つ記憶している。テーブル421は、比較手段から各信号が出力されたなら、当該信号の値の組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された4つの値を読み出し、当該4つの中の1つの値を有する選択信号OUT4211と、残りの3つの中の1つの値を有する選択信号OUT4212と、残りの2つの中の1つの値を有する選択信号OUT4213と、残りの1つの値を有する選択信号OUT4214とを出力する。各選択信号OUT4211〜OUT4214は、値「0」、「1」のいずれかを有する。
【0064】
選択手段43は、選択器4311、4312、4313、4314、4321、4322、4331、4341を有する。選択器4311は、入力値A、Bの中から、選択信号OUT4211の値に応じた入力値を選択して出力する。選択器4312は、入力値C、Dの中から、選択信号OUT4211の値に応じた入力値を選択して出力する。選択器4313は、入力値E、Fの中から、選択信号OUT4211の値に応じた入力値を選択して出力する。選択器4314は、入力値G、Fの中から、選択信号OUT4211の値に応じた入力値を選択して出力する。
【0065】
選択器4321は、選択器4311が出力した入力値(例えばA)と選択器4312が出力した入力値(例えばC)の中から、選択信号OUT4212の値に応じた入力値を選択して出力する。選択器4322は、選択器4313が出力した入力値(例えばE)と選択器4314が出力した入力値(例えばG)の中から、選択信号OUT4212の値に応じた入力値を選択して出力する。選択器4331は、選択器4321が出力した入力値(例えばC)と選択器4322が出力した入力値(例えばG)の中から、選択信号OUT4213の値に応じた入力値を選択して出力する。選択器4341は、選択器4331が出力した入力値(例えばG)と入力値Iの中から、選択信号OUT4214の値に応じた入力値(例えばG)を選択して出力する。
【0066】
出力される入力値が中央値となるように、テーブル421は構成されており、こうして入力値A〜Iの中央値が出力される。例えば、入力値Gが出力されるように、入力値Gが中央値である場合に各比較器から出力される信号の値の組み合わせで示されるアドレスの位置には、選択信号OUT4211の値となる値「0」と、選択信号OUT4212の値となる値「1」と、選択信号OUT4213の値となる値「1」と、選択信号OUT4214の値となる値「0」とが記憶され、これにより、上記の例で示したように、まず、A、C、E、Gが選択され、その中からC、Gが選択され、その中からGが選択され、そのGとIからGが選択される。
【0067】
すなわち、選択信号出力手段42は、少なくとも1つの選択信号(例えば、選択信号OUT4211)を出力し、選択手段43は、複数の入力値(A〜I)の一部である複数の入力値(A、B)の中から当該1つの選択信号(OUT4211)に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器4311と、複数の入力値(A〜I)から当該一部の入力値(A、B)を除いたものの少なくとも一部である複数の入力値(C、D)の中から当該1つの選択信号(OUT4211)に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器4312とを備える。ここでは、4段の選択器で構成した選択手段43の最下段の一部に述べたが、各段は、同様の技術思想により構成され、選択器によるいわゆるツリーが構成されている。
【0068】
仮にこうしない場合、段数が増えてしまい、選択器や配置や配線が困難となる虞があるが、当該技術思想を採用することで、段数を少なくでき、選択器や配置や配線を容易にすることができる。
【0069】
なお、上記の各実施の形態に係る値選択回路は、入力値の中央値または中央に近い2値を選択するものであるが、テーブルの構成を変更することで、最大値、最小値、または所望の特徴を有する値などを選択するようにしてもよい。
【0070】
以上説明したように、上記の各実施の形態に係る値選択回路によれば、入力される複数の入力値のいずれかである2つの入力値で構成される組内の入力値同士を比較する比較器を当該複数の入力値で構成可能な各組について有する比較手段と、各比較器から出力される信号の値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め値を記憶するとともに当該組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された値を読み出して当該値を有する選択信号を出力するテーブルを有する選択信号出力手段と、複数の入力値の中から選択信号出力手段12が出力する選択信号に応じた入力値を選択して出力する選択手段とを備えることで、CPU、ROM、RAM、制御プログラムを不要にでき、よって、これらを使用した場合には、例えば数十クロックに相当する程度だった入力値選択に必要な時間長を、例えば、1クロックに相当する程度の時間長に短縮することができる。
【0071】
また、上記構成を採用することで、比較器は並列に配置すればよく、選択器もまとめて配置できるので、入力値が増えた場合であっても、回路構成が複雑にならず、その結果、入力値が増えた場合への対応が容易である。
【0072】
また、第3の実施の形態で説明したように、選択信号出力手段は、少なくとも2つの選択信号を出力し、選択手段は、複数の入力値の一部である複数の入力値の中から当該一方の選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器と、当該一部の入力値を除いた入力値の少なくとも一部と当該一方の選択信号に応じて出力された入力値とで構成される複数の入力値の中から当該他方の選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器とを備える、すなわち、2つ以上の選択信号で1つの入力値を選択することで、少ない入力数の選択器を使用することができる。
【0073】
また、第4の実施の形態で説明したように、選択信号出力手段は、少なくとも1つの選択信号を出力し、選択手段は、複数の入力値の一部である複数の入力値の中から当該1つの選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器と、複数の入力値から当該一部の入力値を除いたものの少なくとも一部である複数の入力値の中から当該1つの選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器とを備えることで、すなわち、共通の選択信号を2つ以上の選択器に出力することで、例えば、2段以上の選択器で選択手段を構成した場合において、選択器や配置や配線を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1の実施の形態に係る値選択回路1の回路図である。
【図2】第2の実施の形態に係る値選択回路2の回路図である。
【図3】第3の実施の形態に係る値選択回路3の回路図である。
【図4】第4の実施の形態に係る値選択回路4の回路図である。
【図5】マクロブロックの動きベクトルの予測値を求める方法の説明図である。
【図6】従来の中央値を選択する回路の回路図である。
【図7】中央値の選択をソフトウェアで実現する装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0075】
1、2、3、4…値選択回路
11、21…比較手段
12、22、32、42…選択信号出力手段
13、23、33、43…選択手段
111〜113、211〜216…比較器
121、221、222、321、421…テーブル
OUT121、OUT221、OUT222、OUT3211、OUT3212、OUT4211〜OUT4214…選択信号
131、231、232、331、332、4311〜4314、4321、4322、4331、4341…選択器
A〜I…入力値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される複数の入力値のいずれかである2つの入力値で構成される組内の入力値同士を比較する比較器を当該複数の入力値で構成可能な各組について有する比較手段と、
前記各比較器から出力される信号の値の組み合わせで示すことができる各アドレスの位置に予め1以上の値を記憶するとともに当該組み合わせで示されたアドレスの位置に記憶された値を読み出して当該値を有する選択信号を出力するテーブルを1以上有する選択信号出力手段と、
前記複数の入力値の中から前記選択信号出力手段が出力する1つの選択信号または2つ以上の選択信号の組み合わせに応じた入力値を選択して出力する選択手段と
を備えることを特徴とする値選択回路。
【請求項2】
前記選択信号出力手段は、少なくとも2つの選択信号を出力し、
前記選択手段は、
前記複数の入力値の一部である複数の入力値の中から当該一方の選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器と、
当該一部の入力値を除いた入力値の少なくとも一部と当該一方の選択信号に応じて出力された入力値とで構成される複数の入力値の中から当該他方の選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器と
を備えることを特徴とする請求項1記載の値選択回路。
【請求項3】
前記選択信号出力手段は、少なくとも1つの選択信号を出力し、
前記選択手段は、
前記複数の入力値の一部である複数の入力値の中から当該1つの選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器と、
前記複数の入力値から当該一部の入力値を除いたものの少なくとも一部である複数の入力値の中から当該1つの選択信号に応じた1つの入力値を選択して出力する選択器とを
を備えることを特徴とする請求項1または2記載の値選択回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−175861(P2009−175861A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11672(P2008−11672)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)