説明

偏光フィルムの製造方法、並びに偏光板および光学積層体

【課題】ヨウ素を吸着剤でホウ酸含有水溶液から除去し、かつヨウ素が吸着飽和した吸着剤を簡便かつ高効率で再生することができる偏光フィルムの製造方法、並びに該方法で得られた偏光フィルムを用いた偏光板および光学積層体を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール系フィルムを、二色性色素による染色処理、およびホウ酸による架橋処理の順に処理して偏光フィルムを製造するものであって、前記架橋処理は、ヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ化物を含むホウ酸含有水溶液に浸漬処理すると共に、前記ホウ酸含有水溶液に含まれるヨウ素を炭素系吸着剤で吸着する工程と、前記炭素系吸着剤を亜硫酸塩溶液で再生する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムの製造方法、並びに偏光板および光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光フィルムの製造方法として、例えば特許文献1には、ポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して膨潤させた後(膨潤処理)、ヨウ素(I2)等の二色性色素で染色し(染色処理)、これを延伸し(延伸処理)、ついでヨウ素をフィルムに定着させるためにポリビニルアルコール系フィルムを、架橋処理(すなわち架橋による耐水化処理)し、水洗した後、乾燥する方法が記載されている。架橋処理は、通常、ホウ酸含有水溶液にヨウ化カリウム(KI)などのヨウ化物を含有させた水溶液を用いて行われる。
【0003】
上述の架橋処理は、高温(50℃以上)で行われるため、KIなどのヨウ化物が架橋槽の表面で酸化されて三ヨウ素イオン(I3-)に転化する。このような三ヨウ素イオンはヨウ素I2とヨウ素イオンI-とに分解し、生成したヨウ素によって偏光フィルムの偏光度低下という問題が生じる。このため、ヨウ素を活性炭などの吸着剤に吸着させて除去することが行われている。
【0004】
活性炭を再生する場合、物理的には、活性炭の一般的な水蒸気賦活処理温度である850℃以上の高温条件下で処理すれば、ヨウ素が吸着された活性炭からヨウ素を脱離可能であると考えられる。しかし、その場合、850℃以上の高温条件が必要となり、エネルギーコストが大となる。それゆえ、ヨウ素が吸着された活性炭は廃棄されている。そのため、高温条件の必要がなく、ヨウ素が吸着された活性炭を簡便かつ高効率で再生する技術が望まれている。
【特許文献1】特開平10−153709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主たる課題は、ヨウ素を吸着剤でホウ酸含有水溶液から除去し、かつヨウ素が吸着飽和した吸着剤を簡便かつ高効率で再生することができる偏光フィルムの製造方法、並びに該方法で得られた偏光フィルムを用いた偏光板および光学積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、活性炭などの炭素系吸着剤を用いて、架橋処理においてホウ酸含有水溶液中のヨウ素を吸着除去すると共に、ヨウ素が吸着飽和した吸着剤を亜硫酸塩溶液を用いて簡便かつ高効率で再生できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明にかかる偏光フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系フィルムを、二色性色素による染色処理、およびホウ酸による架橋処理の順に処理して偏光フィルムを製造するものであって、前記架橋処理は、ヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ化物を含むホウ酸含有水溶液に浸漬処理すると共に、前記ホウ酸含有水溶液に含まれるヨウ素を炭素系吸着剤で吸着する工程と、前記炭素系吸着剤を亜硫酸塩溶液で再生する工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる偏光板は、上述のようにして得られる偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを貼合したものである。この保護フィルムは、位相差フィルム、輝度向上フィルム、視野角改良フィルムおよび半透過反射フィルムのいずれかの機能を有するものであってもよい。
【0009】
本発明にかかる光学積層体は、上述のようにして得られる偏光板と、位相差フィルム、輝度向上フィルム、視野角改良フィルムおよび半透過反射フィルムから選ばれる少なくとも1種とを貼合したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、架橋処理においてヨウ化物が架橋槽表面で酸化されて形成されたヨウ素を炭素系吸着剤で吸着し、これを亜硫酸塩溶液で還元処理することにより、ヨウ素が吸着飽和した炭素系吸着剤を、廃棄することなく、簡便にかつ高効率で再生し、再利用できるという効果が得られる。また、850℃以上の高温条件を必要としないため、エネルギーコストの削減が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を説明する。この実施形態にかかる偏光板は、偏光フィルムの原反フィルムとして有用なポリビニルアルコール系フィルムを、膨潤処理、二色性色素による染色処理、架橋槽内におけるホウ酸による架橋処理、水洗処理および乾燥して偏光フィルムを作製する工程と、その後前記偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤を用いて保護フィルムを貼合する工程とによって製造される。上述の架橋処理においては、ヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ化物を含むホウ酸含有水溶液に浸漬処理すると共に、前記ホウ酸含有水溶液に含まれるヨウ素を炭素系吸着剤で吸着する工程と、前記炭素系吸着剤を亜硫酸塩溶液で再生する工程とを含む。以下に、各工程における手順について詳細に説明する。
【0012】
本発明におけるポリビニルアルコール系フィルムを形成するポリビニルアルコール系樹脂は、通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものが例示される。ケン化度としては、85モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは99モル%〜100モル%である。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度としては、1000〜10000、好ましくは1500〜5000程度である。
【0013】
これらのポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなども使用しうる。通常、偏光フィルム製造の開始材料としては、厚さが20μm〜100μm、好ましくは30μm〜80μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルムの未延伸フィルムを用いる。工業的には、フィルムの幅は1500mm〜4000mmが実用的である。この未延伸フィルムを、膨潤処理、延伸処理、染色処理、架橋処理、水洗処理し、最後に乾燥して得られるポリビニルアルコール系偏光フィルムの厚みは、例えば約5〜50μm程度である。
【0014】
膨潤工程は、フィルム表面の異物除去、フィルム中の可塑剤除去、次工程での易染色性の付与、フィルムの可塑化などの目的で行われる。処理条件はこれらの目的が達成できる範囲で、かつ基材フィルムの極端な溶解、失透などの不具合が生じない範囲で決定される。未延伸の原反フィルムを、例えば10℃〜50℃、好ましくは20℃〜40℃の水溶液にフィルムを浸漬して行われる。フィルムの浸漬時間は、30秒〜300秒、更に好ましくは60秒〜240秒程度である。
【0015】
膨潤処理工程では、フィルムが幅方向に膨潤してフィルムにシワが入るなどの問題が生じやすいので、エキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロール、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップなど公知の拡幅装置でフィルムのシワを取りつつフィルムを搬送することが好ましい。浴中のフィルム搬送を安定化させる目的で、膨潤浴中での水流を水中シャワーで制御したり、EPC装置(Edge Position Control装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)などを併用したりすることも有用である。本工程では、フィルムの走行方向にもフィルムが膨潤拡大するので、搬送方向のフィルムのたるみを無くすために、例えば処理槽前後の搬送ロールの速度をコントロールするなどの手段を講ずることが好ましい。また、使用する膨潤処理浴は、純水の他、ホウ酸(特開平10−153709号公報に記載)、塩化物(特開平06−281816号公報に記載)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類などを0.01重量%〜10重量%の範囲で添加した水溶液も使用可能であるが、水が好ましい。
【0016】
膨潤処理後、ポリビニルアルコール系フィルムを湿式延伸処理する。この延伸処理では、水100重量部に対し、ホウ酸0.01〜2.0重量部を含む水溶液中でフィルムを1.1倍以上3倍未満の延伸倍率で一軸延伸する。この湿式延伸工程での延伸倍率が上記範囲を外れる場合は染色ムラを低減できなかったり、最終の偏光フィルムの光学特性が十分でなくなったりする。また、湿式延伸工程は1つの浴液で行うだけでなく、複数の浴液を用いた複数工程で連続的に行ってもよいが、その場合でも積算延伸倍率は1.1倍〜3倍の範囲であるようにする。
【0017】
延伸方法としては、例えば浸漬浴の前後に設けたニップロールの周速に差をつけてフィルムを延伸するロール間延伸法が好適に採用されるが、これに限定されるものではなく、従来から知られている各種延伸法が採用可能である。
【0018】
この湿式延伸工程で使用される浴液は、水100重量部に対しホウ酸0.01〜2.0重量部を含む水溶液であるが、このようなホウ酸水溶液を使用することにより、シワが入りにくいという利点もある。また、湿式延伸工程で使用される浴液の温度は10℃〜40℃であるのが好ましい。浴液の温度が10℃を下回ると温度制御に大規模な冷却設備が必要となり不経済であり、逆に40℃を超えると原反フィルムが溶解するおそれがある。
【0019】
延伸処理後、フィルムの染色が行われる。通常の二色性色素による染色工程は、フィルムに二色性色素を吸着、配向させるなどの目的で行われる。処理条件はこれらの目的が達成できる範囲で、かつ基材フィルムの極端な溶解、失透などの不具合が生じない範囲で決定される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、例えば、10℃〜45℃、好ましくは20℃〜35℃の温度で、かつ重量比でヨウ素/KI/水=0.003〜0.2/0.1〜10/100の濃度で30秒〜600秒、好ましくは60秒〜300秒浸漬処理を行う。ヨウ化カリウムに代えて、他のヨウ化物、例えばヨウ化亜鉛などを用いてもよい。また他のヨウ化物をヨウ化カリウムと併用しても良い。また、ヨウ化物以外の化合物、例えばホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルトなどを共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合、ヨウ素を含む点で下記の架橋処理と区別される。水100重量部に対し、ヨウ素を0.003重量部以上含んでいるものであれば染色槽と見なせる。
【0020】
二色性色素として水溶性二色性染料を用いる場合、例えば20℃〜80℃、好ましくは30℃〜70℃の温度で、かつ重量比で二色性染料/水=0.001〜0.1/100の濃度で30秒〜600秒、好ましくは60秒〜300秒浸漬処理を行う。使用する二色性染料の水溶液は、染色助剤などを有していてもよく、例えば硫酸ナトリウムなどの無機塩、界面活性剤などを含有していてもよい。二色性染料は単独でもよいし、2種類以上の二色性染料を同時に用いることもできる。
【0021】
また、膨潤工程と同様に、エキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロール、クロスガイダー、ベンドバーなどを、染色浴中および/または浴出入り口に設置することもできる。
【0022】
染色後の架橋処理は、水100重量部に対してホウ酸を6重量部以下、好ましくは、6〜4重量部含有する水溶液に、二色性色素で染色したポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行われる。二色性色素がヨウ素の場合、ヨウ化物を15重量部以下、好ましくは、7〜15重量部含有させるのがよい。
【0023】
ヨウ化物としてはヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛などが挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウムなどを共存させても良い。
この架橋処理は、架橋による耐水化や色相調整(青味がかるのを防止する等)等のために実施される。架橋による耐水化のための場合には、必要に応じて、ホウ酸と共に、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどの架橋剤も使用することができる。
【0024】
前記架橋処理は、高温(50℃以上)で行われるため、前述したように、ヨウ化カリウム等のヨウ化物が架橋槽の表面で酸化されて三ヨウ素イオン(I3-)に転化する。
【0025】
このため、架橋処理は、ホウ酸含有水溶液を連続的または断続的に炭素系吸着剤でヨウ素を吸着除去しながら行うのが好ましい。炭素系吸着剤としては、各種活性炭が挙げられる。炭素系吸着剤処理を行いながら架橋処理を行うには、例えば、架橋槽からポンプなどを用いてホウ酸含有水溶液の一部を抜き出し、これを炭素系吸着剤を充填した充填塔に通した後、架橋槽に戻せばよい。ポリビニルアルコール系フィルムのホウ酸含有水溶液による処理を複数の架橋槽で実施する場合、各々の架橋槽または各々の別に設けたタンクで、該水溶液の炭素系吸着剤処理を行うことが好ましい。
【0026】
ここで、本実施形態においては、炭素系吸着剤を再生して再利用するために、ヨウ素が吸着飽和した炭素系吸着剤を、亜硫酸塩溶液を用いてヨウ素還元除去する。使用する亜硫酸塩としては、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムのほか、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸水素塩などが挙げられ、これを水などの溶媒に溶解して亜硫酸塩溶液を得る。
【0027】
炭素系吸着剤を再生するには、吸着飽和した炭素系吸着剤の充填塔に亜硫酸塩溶液を通すほか、吸着飽和した炭素系吸着剤を亜硫酸塩溶液に加える、バッチ式であってもよい。吸着飽和した炭素系吸着剤に対する亜硫酸塩の処理量は、該炭素系吸着剤の単位重量あたり5〜20倍程度であるのがよい。また、亜硫酸塩溶液を用いる再生処理は、室温〜40℃の温度で約30秒〜30分程度であるのが適当である。
【0028】
このようにして、亜硫酸塩溶液にてヨウ素還元処理を行なうことでヨウ素を吸着した炭素系吸着剤を短時間でほぼ完全に再生することができる。
【0029】
前記架橋処理は、その目的によって、ホウ酸およびヨウ化物の濃度、処理浴の温度を適宜変更して行なわれる。耐水化のための架橋処理、色相調整のための架橋処理は特に区別されるものではないが、下記の条件で実施される。
原反フィルムを膨潤、染色、架橋処理をする場合で、架橋処理が架橋による耐水化を目的としている時は、水100重量部に対してホウ酸を約3〜10重量部、ヨウ化物を約1〜20重量部含有する架橋処理浴を使用し、通常、50℃〜70℃、好ましくは55℃〜65℃の温度で行われる。浸漬時間は、通常、30〜600秒程度、好ましくは60〜420秒、より好ましくは90〜300秒である。
【0030】
耐水化のための架橋処理後、色相調整のための架橋処理を行っても良い。例えば二色性染料がヨウ素の場合、この目的のためには、水100重量部に対してホウ酸を約1〜5重量部、ヨウ化物を約3〜30重量部含有する架橋酸処理浴を使用し、通常、10℃〜45℃の温度で行われる。浸漬時間は、通常、3〜300秒程度、好ましくは10〜240秒である。
色相調整のための架橋処理は、耐水化のための架橋処理に比べて、通常、低いホウ酸濃度、高いヨウ化物濃度、低い温度で行なわれる。
【0031】
これらの架橋処理は複数の工程で行っても良く、通常、2〜5の工程で行われることが多い。この場合、使用する各架橋処理槽の水溶液組成、温度は上記の範囲内で同じであっても、異なっていてもよい。上記耐水化のための架橋処理、色相調整のための架橋処理をそれぞれ複数の工程で行っても良い。
架橋処理工程においても、染色工程と同様にフィルムの延伸を行ってもよい。最終的な積算延伸倍率は、約4.5〜7.0倍、好ましくは5.0〜6.5倍である。
【0032】
以上のようにして耐水化および/または色調調整のために架橋処理したポリビニルアルコール系フィルムは、ついで水洗処理される。水洗処理は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬、水をシャワーとして噴霧、あるいは浸漬と噴霧を併用することによって行われる。水洗処理における水の温度は、通常2〜40℃程度であり、浸漬時間は2〜120秒程度であるのがよい。水洗後の乾燥は、乾燥炉中で約40〜100℃の温度で約60〜600秒行われる。このようにして製造された偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを接着剤で貼合して偏光板が得られる。
【0033】
偏光フィルムの少なくとも片面に積層される保護フィルムは、両面に積層される場合、同じ種類であってもよく、あるいは異なる種類であってもよい。異なる種類の保護フィルムを使用する場合、保護フィルムの一方としては、特に限定されないが、非晶性ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリサルホン系樹脂フィルム、脂環式ポリイミド系樹脂フィルムなどの透湿度の低い樹脂フィルムなどが挙げられる。非晶性ポリオレフィン系樹脂フィルムには、例えばドイツのティコナ(Ticona)社製の「トパス」(商標登録)、ジェイエスアール(株)社製の「アートン」(商標登録)、日本ゼオン(株)社製の「ゼオノア(ZEONOR)」や「ゼオネックス(ZEONEX)」(いずれも商標登録)、三井化学(株)社製の「アペル」(商標登録)などがある。保護フィルムの他方としては、これらのフィルムのほか、例えばトリアセチルセルロースフィルムやジアセチルセルロースフィルムなどのセルロースアセテート系の樹脂フィルムが使用されている。トリアセチルセルロースフィルムには、例えば富士写真フィルム(株)社製の「フジタックTD80」、「フジタックTD80UF」及び「フジタックTD80UZ」、コニカ(株)社製の「KC8UX2M」及び「KC8UY」などがある。
【0034】
保護フィルムへの接着剤の塗工方法は特に限定されないが、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、保護フィルムは、偏光フィルムへの貼合に先立って、貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理などの易接着処理が施されてもよい。また、保護フィルムの偏光フィルムへの貼合面と反対側の表面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層などの各種処理層を有していてもよい。保護フィルムの厚みは、通常5〜200μm程度の範囲であり、好ましくは10〜120μm、さらに好ましくは10〜85μmである。
【0035】
保護フィルムの厚みは薄いものが好ましいが、薄すぎると、強度が低下し、加工性に劣るものとなり、一方、厚すぎると、透明性が低下したり、積層後に必要な養生時間が長くなったりするなどの問題が生じる。従って、保護フィルムの適当な厚みは、例えば5〜200μm程度であり、好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。
【0036】
接着剤と偏光フィルム及び/又は保護フィルムとの接着性を向上させるために、偏光フィルム及び/又は保護フィルムに、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射、プライマー塗布処理、ケン化処理などの表面処理を施してもよい。
【0037】
保護フィルムには、アンチグレア処理、アンチリフレクション処理、ハードコート処理、帯電防止処理、防汚処理などの表面処理が単独或いは組み合わせて施されていても良い。また、保護フィルムおよび/又は保護フィルム表面保護層はベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物などの紫外線吸収剤や、フェニルホスフェート系化合物、フタル酸エステル化合物などの可塑剤を有していても良い。かかる保護フィルムは、偏光フィルムの片面に貼合されてもよいし、両面に貼合されてもよい。
【0038】
偏光フィルムと保護フィルムとは、水溶媒系接着剤、有機溶媒系接着剤、ホットメルト系接着剤、UV硬化系接着剤、無溶剤系接着剤などの接着剤を用いて積層される。水溶媒系接着剤としては例えばポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などが、有機溶媒系接着剤としては例えば二液型ウレタン系接着剤などが、UV硬化系接着剤としては例えば水素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などの分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂接着剤などが、無溶剤系接着剤としては例えば一液型ウレタン系接着剤などがそれぞれ挙げられる。偏光フィルムとの接着面をケン化処理などで親水化処理されたアセチルセルロース系フィルムを保護フィルムとして用いる場合、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が接着剤として好適に用いられる。
【0039】
接着剤として用いるポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。この接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物などを添加剤として用いても良い。また、接着剤として用いる分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂接着剤は重合開始剤、例えば活性エネルギー線照射で重合させるための光カチオン重合開始剤、加熱によって重合させるための熱カチオン重合開始剤、さらに他の添加剤(増感剤など)を添加して用いても良い。
【0040】
偏光フィルムと保護フィルムとを貼合する方法は特に限定されるものではなく、例えば偏光フィルム又は保護フィルムの表面に接着剤を均一に塗布し、塗布面にもう一方のフィルムを重ねてロール等により貼合し、乾燥する方法などが挙げられる。
【0041】
通常、接着剤は、調製後、15〜40℃の温度下で塗布され、貼合温度は、通常15〜30℃程度の範囲である。貼合後は乾燥処理を行って、接着剤中に含まれる水などの溶剤を除去するが、この際の乾燥温度は、通常30℃〜85℃、好ましくは40℃〜80℃の範囲である。その後、15℃〜85℃、好ましくは20℃〜50℃、より好ましくは35℃〜45℃の温度環境下で、通常1〜90日間程度養生して接着剤を硬化させてもよい。この養生期間が長いと生産性が悪くなるため、養生期間は、1〜30日間程度、好ましくは1〜7日間である。かくして、接着剤層を介して偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルムが貼合された偏光板が得られる。
【0042】
本発明においては、保護フィルムに、位相差フィルムとしての機能、輝度向上フィルムとしての機能、反射フィルムとしての機能、半透過反射フィルムとしての機能、拡散フィルムとしての機能、光学補償フィルムとしての機能など、光学的機能を持たせることもできる。この場合、例えば保護フィルムの表面に、位相差フィルム、輝度向上フィルム、反射フィルム、半透過反射フィルム、拡散フィルム、光学補償フィルムなどの光学機能性フィルムを積層することにより、このような機能を持たせることができるほか、保護フィルム自体にこのような機能を付与することもできる。また、輝度向上フィルムの機能を持った拡散フィルムなどのように複数の機能を保護フィルム自体に持たせてもよい。
【0043】
例えば、上記の保護フィルムに、特許第2841377号公報、特許第3094113号公報などに記載の延伸処理を施したり、特許第3168850号公報などに記載された処理を施したりすることにより、位相差フィルムとしての機能を付与することができる。また、上記の保護フィルムに、特開2002−169025号公報や特開2003−29030号公報に記載されるような方法で微細孔を形成することにより、また選択反射の中心波長が異なる2層以上のコレステリック液晶層を重畳することにより、輝度向上フィルムとしての機能を付与することができる。上記の保護フィルムに蒸着やスパッタリングなどで金属薄膜を形成することにより、反射フィルム又は半透過反射フィルムとしての機能を付与することができる。上記の保護フィルムに微粒子を含む樹脂溶液をコーティングすることにより、拡散フィルムとしての機能を付与することができる。また、上記の保護フィルムにディスコティック液晶性化合物などの液晶性化合物をコーティングして配向させることにより、光学補償フィルムとしての機能を付与することができる。また、適当な接着剤を用いて、商品名:DBEF(スリーエム(株)製)などの輝度向上フィルム、商品名:WVフィルム(富士写真フィルム(株)製)などの視野角改良フィルム、商品名:スミカライト(商標登録)(住友化学(株))などの位相差フィルム、などの市販の光学機能性フィルムを偏光フィルムに直接貼合しても良い。
【0044】
また、少なくとも片面に保護フィルムを貼合した前記偏光板と、位相差フィルム、輝度向上フィルム、視野角改良フィルムおよび半透過反射板から選ばれる少なくとも1種とを貼合することによって、光学積層体を製造することができる。
【0045】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
[参考例]
液温30℃の水溶液300ml中に、ヨウ素を約3.35mM、活性炭を約1.0g添加して、約8時間攪拌処理を行なった。
攪拌処理後の水溶液中のヨウ素濃度が約0.02mMまで低下していた。したがって、この平衡濃度において活性炭は約0.25[g-ヨウ素/g-活性炭]のヨウ素吸着量を有していることがわかる。なお、水溶液中のヨウ素濃度は紫外可視分光光度計により測定した。
このことから、ヨウ素を含む薬液槽に活性炭(炭素系吸着剤)を使用することによって、ヨウ素を選択的に吸着処理してヨウ素濃度のみを調整することが可能であると言える。
【実施例】
【0047】
ホウ酸5.0重量部、ヨウ化カリウム12重量部およびヨウ素約0.05mMを含有する液温56℃の水溶液中に、活性炭を水溶液1重量部に対して0.0015重量部を投入し、攪拌しながら約20時間接触処理した。ついで、ヨウ素を吸着飽和した活性炭をろ過して分離し、該活性炭に対して50倍の質量の10重量%亜硫酸カリウム溶液を添加して、攪拌しながら約1分間再生処理を行なった。
【0048】
[比較例]
10重量%亜硫酸カリウム溶液を用いた接触処理に代えて、室温の純水中で約3分間攪拌して洗浄を行なった以外は、実施例と同様にして処理した。
【0049】
<評価>
実施例において亜硫酸カリウム溶液を用いて再生処理を行なった活性炭と、比較例で洗浄を行なった活性炭とをそれぞれ、初期ヨウ素濃度 3.0mM、ヨウ化カリウム 5重量部、液温30℃の水溶液に投入し、攪拌してヨウ素吸着を再度行わせ、ヨウ素吸着量を求めた。比較のため、実施例、比較例で用いた活性炭と同種類で未使用の活性炭を用いて、上記と同様にしてヨウ素吸着を行わせ、ヨウ素吸着量を求めた。その結果、未使用活性炭に対して、比較例の場合約70%のヨウ素吸着量であったのに対して、実施例の場合はヨウ素吸着量が約95%であった。このことから、ヨウ素吸着した活性炭に亜硫酸塩溶液を接触処理することにより、効率的に活性炭の細孔内に吸着されたヨウ素を化学的に還元除去することが可能であり、活性炭をほぼ完全に再生できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系フィルムを、二色性色素による染色処理、およびホウ酸による架橋処理の順に処理して偏光フィルムを製造する方法であって、
前記架橋処理は、ヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ化物を含むホウ酸含有水溶液に浸漬処理すると共に、前記ホウ酸含有水溶液に含まれるヨウ素を炭素系吸着剤で吸着する工程と、前記炭素系吸着剤を亜硫酸塩溶液で再生する工程とを含むことを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法で得られた偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムを貼合して得られる偏光板。
【請求項3】
前記保護フィルムが、位相差フィルム、輝度向上フィルム、視野角改良フィルムおよび半透過反射フィルムのいずれかの機能を有する請求項3に記載の偏光板。
【請求項4】
請求項3または4のいずれかに記載の方法で得られた偏光板と、位相差フィルム、輝度向上フィルム、視野角改良フィルムおよび半透過反射フィルムから選ばれる少なくとも1種とを貼合してなることを特徴とする光学積層体。