偏光子
【課題】大面積の作製が容易で、特に短波長領域における偏光分離と反射防止の両方を同時に実現でき、中赤外領域における特性を向上させることができる偏光子、その製造方法及び光モジュールを提供する。
【解決手段】基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造を波長より小さな周期で繰り返す周期構造を有した基材11と、その周期構造の表面に設けられた金属層11と、基材11の表面に設けられた中間層13と、中間層13の表面に設けられた金属層14と、を有するように構成する。周期構造の断面が三角波形状又は正弦波形状であることが好ましい。
【解決手段】基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造を波長より小さな周期で繰り返す周期構造を有した基材11と、その周期構造の表面に設けられた金属層11と、基材11の表面に設けられた中間層13と、中間層13の表面に設けられた金属層14と、を有するように構成する。周期構造の断面が三角波形状又は正弦波形状であることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子、その製造方法及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子は、ある特定の偏光のみを透過させる素子である。光通信、光情報処理又は光センシング等の分野では、小型で、消光比が高く、使用波長範囲が広く、耐環境性に優れ、量産性にも優れた偏光子が要求されている。
【0003】
例えば、テラヘルツ帯及び近赤外領域用偏光子として、特許文献1では、サブ波長格子(Subwavelength grating:SWG)を用いた偏光子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−256840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の偏光子は、主に、テラヘルツ領域から遠赤外領域を対象としていたが、中赤外及び近赤外領域の特性を向上させる余地がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、平易な作製プロセスによりコストが大幅に削減できるとともに、かつ広開口の偏光子を作製することが容易で、中赤外及び近赤外領域における特性を向上させることができる偏光子、その製造方法及び光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明に係る偏光子は、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を有した基材と、前記周期構造の表面に中間層を介して複数設けられた金属層と、を有することを特徴とする。
【0008】
なお、例えば、本発明の偏光子において、前記単位構造の周期が、λ(1μm≦λ≦20μm)/n(前記中間層の屈折率)以下である、ことが好ましい。また、前記中間層の厚さが0.08λ〜0.25λであること、前記金属層が三層であり、前記周期構造の断面が正弦波形状である場合に、前記中間層の厚さが0.2λ〜0.58λであることが好ましい。さらに、前記金属層が三層であり、前記周期構造の断面が三角波形状である場合に、前記中間層の厚さが0.25λ〜0.7λであることが好ましい。
【0009】
(2)本発明の偏光子において、前記周期構造の断面が三角波形状又は正弦波形状であることが好ましい。
【0010】
(3)本発明の偏光子において、前記金属層が二層であり、前記中間層の厚さが0より大きくλ/n以下であることが好ましい。
【0011】
(4)上記課題を解決するための本発明に係る偏光子の製造方法は、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を前記基材面に形成する工程と、前記周期構造の表面に金属層を形成する工程と、前記金属層の表面に中間層を形成する工程と、前記中間層の表面に金属層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
(5)本発明の偏光子の製造方法において、前記周期構造の断面が三角波形状又は正弦波形状であることが好ましい。
【0013】
(6)上記課題を解決するための本発明に係る光モジュールは、上記本発明に係る偏光子を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の偏光子によれば、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を有した基材と、前記周期構造の表面に中間層を介して複数設けられた金属層とを有するので、中赤外領域における特性を向上させることができる。
【0015】
本発明の偏光子の製造方法によれば、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を前記基材面に形成する工程と、前記周期構造の表面に金属層を形成する工程と、前記金属層の表面に中間層を形成する工程と、前記中間層の表面に金属層を形成する工程とを有するので、従来のような多層構造を形成した後に切り出す方法よりも効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る偏光子の一例とその使用態様を示す全体図である。
【図2】三角波形状の断面を有し、その三角波形状の表面に金属層が形成されている偏光子(サブ波長格子)の例を示す拡大図である。
【図3】正弦波形状の断面を有し、その正弦波形状の表面に金属層が形成されている偏光子(サブ波長格子)の例を示す拡大図である。
【図4】周期構造の占有率(充填率)についての説明図である。
【図5】波長λが1μm、周期構造の周期Λが250nm、アスペクト比h/Λが1、金属層Alの厚さの合計が18nmである場合の、中間層の厚さDの変化に対するTE波とTM波の透過損失特性を厳密結合波解析(RCWA)法を用いた数値解析により求めたグラフである。
【図6】単層格子(金属層が一層の格子)の場合の表面および裏面に励起される表面プラズモンを概念的に示す図である。
【図7】二重格子(金属層が二層の格子)で中間層の厚さDが小さい場合の表面および裏面に励起される表面プラズモンと、各金属層の中間層側に励起される表面プラズモンを概念的に示す図である。
【図8】一層当りの金属層の膜厚が十分小さい二重格子で、かつ中間層の厚さDが十分大きい場合の表面および裏面に励起される表面プラズモンと、各金属層の中間層側に励起される表面プラズモンを概念的に示す図である。
【図9】波長λが10μm、正弦波形状の断面を有し、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、中間層の厚さDが0(単層格子)と1.5μm(二重格子)である場合の、金属層が一層の場合と二層の場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層の厚さに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図10】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、二重格子を構成する金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図11】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、四重格子(金属層が四層)を構成する金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図12】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、二重格子を構成する金属層の合計の厚さtが18nm、中間層の厚さDが1.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、アスペクト比h/Λに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図13】波長λが10μm、三角波形状の断面を有し、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、中間層の厚さDが0(単層格子)と1.5μm(二重格子)である場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層の合計の厚さtに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図14】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、三重格子を構成する金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図15】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、三重格子を構成する金属層の合計の厚さtが18nm、中間層の合計の厚さDが2.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、アスペクト比h/Λに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図16】波長λが10μm、正弦波形状の断面を有し、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、中間層の合計の厚さDが2.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層の合計の厚さtに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図17】波長λが10μm、三角波形状の断面を有し、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、中間層の合計の厚さDが2.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層の合計の厚さtに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図18】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、四重格子を構成する中間層の合計の厚さDが2.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層Alの合計の厚さtに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図19】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、四重格子を構成する中間層の合計の厚さDが3.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層Alの合計の厚さtに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図20】周期構造の周期Λ=2.5μm、構造のアスペクト比h/Λ=1、金属層Alの合計の厚さt=20nm、中間層の厚さがD=1.5μmである二重格子の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、入射波長に対する透過損失特性を示すグラフである。
【図21】周期構造の周期Λ=2.5μm、構造のアスペクト比h/Λ=1、金属層Alの合計の厚さt=20nm、中間層の合計の厚さがD=2.5μmである三重格子の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、入射波長に対する透過損失特性を示すグラフである。
【図22】正弦波形状の断面を有し、その正弦波形状の表面に金属層が形成されている偏光子(サブ波長格子)の例を示す拡大図である。
【図23】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μ、アスペクト比h/Λが1、金属層の合計の厚さtすなわちt1+t2が20nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、各金属層の厚さに対する透過損失特性を示すグラフである。
【図24】波長λが20μm、周期構造の周期Λが5μm、アスペクト比h/Λが1、金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対する透過損失特性を示すグラフである。
【図25】波長λが1μm、周期構造の周期Λが250nm、アスペクトh/Λが1、金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の合計の厚さDに対する透過損失特性を示すグラフである。
【図26】波長λが20μm、周期構造の周期Λが5μm、アスペクト比h/Λが1、金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の合計の厚さDに対する透過損失特性を示すグラフである。
【図27】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対する透過損失特性を示すグラフである。
【図28】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対する透過損失特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、その技術的思想を含む範囲を包含し、以下に示す説明や図面等に限定されない。
【0018】
[偏光子]
本発明の偏光子10は、図1に示すように、入射する電磁波に対する占有率が連続的に変化する単位構造を繰り返す周期構造を有する基材11と、周期構造の表面に設けられた金属層12と、この金属層12の上に設けられた中間層13と、この中間層13の上に設けられた金属層14と、を有している。
【0019】
基材11の表面に設けられた周期構造は、図2に断面を示すように、断面が三角形の溝(Groove)である単位構造を溝の長手方向に対して垂直な方向に隣接させて繰り返す構造、すなわち三角波形状となっている。なお、この例では、単位構造の断面形状を三角波形状としているが、入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造を繰り返す周期構造であれば、例えば図3に示すように、単位構造の断面形状を正弦波形状としてもよい。あるいは、単位構造の断面形状を矩形波形状としてもよい。
【0020】
この偏光子10は、図1に示すように、周期構造が形成された面に所定の角度で電磁波(光)が入射波として入射した場合に、その周期構造に平行な偏波成分を反射し、垂直な偏波成分を透過させる。すなわち、電界の偏光方向が図1のx方向(周期構造に垂直)であるTM波は、表面プラズマ波を介して金属層を低損失で透過し、電界がy方向の偏光方向(周期構造に平行)を持つTE波は、金属層により吸収、反射され、TE波の透過損失は大きくなる(高透過損失)。
【0021】
なお、電磁波(光)は進行方向と垂直に振動する横波である。また、入射角は入射波の方向と基材面の法線方向とがなす角度である。さらに、入射面は入射波の方向と基材面の法線方向を含む平面である。また、図1にも示したように、電界の向きが周期構造(格子)の溝方向に平行な電磁波をTE(Transverse Electric wave)波、格子の溝方向に垂直な電磁波をTM(Transverse Magnetic wave)波と呼ぶ。本発明のTE透過損失とTM透過損失とは、上記のTE波やTM波が偏光子1を透過する際の損失(単位「dB」による表記)である。
【0022】
以下、本発明の構成について詳しく説明する。
【0023】
(基材)
基材11は、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造を繰り返す周期構造を有している。
【0024】
周期構造は、図1、図2及び図3に示すように、一定の単位構造が周期的に繰り返される構造であり、基材11は、そうした周期構造が基材面に形成されている。周期的に繰り返す単位構造は、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化するものである。
【0025】
また、基材11の基材面の全面には、図1及び図2に示すように、Al等からなる金属層12が形成されており、この金属層12の上には、Siや石英等などの透明体からなる中間層13が形成されており、さらに、この中間層13の上には、Al等からなる金属層14が形成されている。同様に、図3に示す基材21の基材面の全面には、Al等からなる金属層22が形成されており、この金属層22の上には、Siや石英等などの透明体等からなる中間層23が形成されており、さらに、この中間層23の上には、Al等からなる金属層24が形成されている。
【0026】
ここで、「基材面に所定の角度で入射する電磁波」とは、所定の入射角(入射波の方向と基材面の法線方向とがなす角度)で基材面に入射するものであれば、図1に示すように必ずしも法線方向から入射するものでなくてもよく、「所定の角度(入射角)」で基材面に入射するものであればよい。
【0027】
また、「電磁波に対して占有率が連続的に変化する」とは、例えば図4に示すように、基材面の法線方向から入射する電磁波が基材面にそのまま直進透過するとした場合に、電磁波が直進透過する長さの割合ということができる。例えば図4では、電磁波E3が透過する谷部5は透過長さが最も短い部位であり、電磁波E1が透過する尾根部4は透過長さが最も長い部位である。「電磁波に対する占有率」とは、このように、電磁波の透過長さが最も長い部位を占有率100%とし、電磁波の透過長さが最も短い部位を占有率0%として表すものということができる。そして、「占有率が連続的に変化する」とは、図4の例のように、尾根部4から谷部5に向かって占有率(単位構造の長さL)が連続的に変化することをいう。なお、「連続的」とは、尾根部4から谷部5に向かう面3が、図2の三角波形状のように直線的に変化する場合や図3の正弦波形状のよう曲線状に変化する場合の他、ガウス形、アークタンジェント形、レイズドコサイン形、放物形等々に連続変化する場合(図示しない)であってもよい。つまり、尾根部4から谷部5に向かって占有率が総じて増加乃至減少する態様のものも含まれてもよい。
【0028】
また、「一定の単位構造が周期的に繰り返される」とは、上記した「電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造」が一定の周期(ピッチ:図2、図3中のΛ)で繰り返されているものである。その周期は全て一致していることが好ましいが、必ずしも完全に一致していなくてもよい。例えば、周期が不規則であってもある意図を持った設計思想の下で繰り返されているものであればよい。また、構造単位も全て同じ形状であることが好ましいが、完全に一致していなくてもよい。例えば、異なる形状の構造単位がある意図を持った設計思想の下で繰り返されているものであればよい。
【0029】
基材11の材質としては、屈折率の実部n及び虚部κが低い材料を用いることが好ましい。屈折率の実部nが低いほど優れた偏光特性を見込むことができるとともに、基材11によるフレネル反射損失を低減することができる。一方、虚部κが小さいほど吸収損失を低減することができる。
【0030】
本発明の偏光子10が対象とする帯域は、波長が1μm〜20μm程度の赤外帯域である。この帯域では、基材11の材質は、例えば低損失材料であるSiとし、金属層12及び金属層14の材質は、Alとする。例えば波長が10μmである場合、Alの光学定数(屈折率の実部nと虚部κ)のうち虚部κは89.8である。また、この場合の金属表面に入射した電磁波の電界の振幅が1/eとなる深さである表皮深さδは、17.7nmとなる。なお、金属層12及び金属層14の材質は、Alだけに限られず、他に、Ag,Pt,Cu,Au,Cr,Mo,W,Ti,Pd,Ni等も用いることができる。
【0031】
周期構造は、例えば図2及び図3に示す三角波形状と正弦波形状の場合では、その尾根部4(あるいは谷部5)がサブ波長周期で繰り返す構造となっている。サブ波長周期とは、構造周期が入射電磁波の波長と同程度か、それよりも小さいという意味である。透過あるいは反射する波に高次の回折波が発生せず、0次だけの透過光あるいは反射光になる条件を指す。この周期構造は、媒体の屈折率境界で生じるフレネル反射を低減するように作用し、いわゆる反射低減効果を有する。こうした周期構造は、サブ波長格子(Sub−Wavelength Grating:SWG)といい、反射防止表面や偏光分離素子として、ディスプレイ、光検出器、発光素子への応用が期待できる。
【0032】
周期構造の格子形状は、適用する波長(テラヘルツ帯域、近赤外帯域等)において、回折散乱を伴わない構造周期Λ(ラムダ)(<λ/n)であることが好ましい。ここで、λは波長であり、nは基材11の屈折率である。上記の式「Λ<λ/n」を満たす範囲内で、金属薄膜のサブ波長格子の周期Λを設定すれば、大きな偏光特性をもたせることができる。
【0033】
赤外帯域では、基材11をSiとした場合、nは3.4なので、λ/nよりも小さいΛの好ましい範囲は10〜100μm(遠赤外)、1.5〜10μm(中赤外)、0.2〜1.5μm(近赤外)の範囲とすることが好ましい。
【0034】
周期構造は、図1、図2及び図3に示すような三角波形状や正弦波形状等を例示できる。図示しないが、ノコギリ波形状であってもよい。これらの形状は、尾根部4(凸部)と谷部5(凹部)を有し、上記の構造周期Λは、尾根部4,4間、又は谷部5,5間で評価することができる。
【0035】
周期構造を構成する単位構造の尾根部4から谷部5までを高さLとすると、アスペクト比(L/Λ[図2、図3では、h/Λ])は0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。アスペクト比が高いほど高い偏光特性を得ることができる。なお、アスペクト比の上限は特にないが、製造容易の観点から現実的なアスペクト比は3.0程度である。こうしたアスペクト比の範囲内になるように、三角波形状や正弦波形状等からなる単位構造の構造周期Λ(ピッチ)と高さLを規定する。中赤外帯域で好ましい構造周期Λが上記の(1.5〜10μm)の範囲である場合には、その上下限に対応した高さLは(0.75〜5μm)以上、(4.5〜30μm)以下の範囲となる。
【0036】
こうした周期構造を含む基材11の全体の厚さTは特に限定されないが、例えば500〜2000μm程度であればよい。周期構造の形成は、基材11の表面に、干渉露光法や電子ビーム露光法によりレジストの周期構造を作製してそれをそのまま利用するか、あるいはさらにそのレジストの厚み形状をリアクティブイオンエッチングなどにより基材に転写するなどして実現することができる。また、レーザーアブレーションにより表面を走査することによっても周期構造の形成が可能である他、周期構造を形成した金属或いはセラミックスを型として、樹脂等に周期構造を転写して形成することもできる。
【0037】
(金属層)
金属層12及び金属層14の材質は、下記のように、適用する波長帯域に応じた適切な材質のものが選ばれる。なお、図1、図2及び図3では、金属層を二層として示しているが、複数の金属層を有していればよく、三層、四層あるいはそれ以上の数の金属層を設けても良い。
【0038】
赤外帯域では、金属層12及び金属層14の材質としては、Pt,アルミニウム,Au,Ni等を用いることができるが、中でも、高い虚部κを持つアルミニウムが好ましく用いられる。そして、この帯域で適用する金属層12及び金属層14の合計の厚さは、例えば赤外帯域での表皮深さδ程度が好ましく、具体的には例えば波長が10μm(表皮深さδが17.7nm)の場合では合計で18nmの厚さであることが好ましい。
【0039】
金属層12及び金属層14の合計の厚さが適用波長における表皮深さδ以上である場合には、TM偏光とTE偏光に対して、高反射ミラーとなってしまう。TM偏光を透過して偏光子として動作させるためには、金属層12及び金属層14の合計の厚さを、上記のように、表皮深さδ程度に薄くすることが望ましい。
【0040】
こうした金属層12は、スパッタリング法、蒸着法等で周期構造上の全面に形成することができる。また、金属層14は、金属層12の形成後、中間層13を形成した後、同様の方法で形成することができる。
【0041】
(中間層)
中間層13は、金属層12を形成した後、高周波スパッタリング法や電子ビーム蒸着法によりアモルファスシリコン膜を成膜することによって形成することができる。
【0042】
以上説明したように、本発明の偏光子10は、図1、図2及び図3等に示すように、サブ波長オーダーの周期構造の表面に金属層12及び金属層14が形成されているので、TM偏光を透過し、TE偏光を反射又は吸収するという特性、すなわちTM偏光を低損失で透過(TM透過損失が小さい)しTE偏光を高損失で透過(TE透過損失が大きい)するという高い偏光特性を持っている。こうした特徴を持つ偏光子10は、分光分析(試薬、セキュリティー)、光通信、光通信アイソレーター等、偏波選択が必要な用途に利用可能である。
【0043】
(複数の金属層12、金属層14)
さらに、本発明の偏光子10は、図1、図2及び図3等に示すように、複数の金属層12及び金属層14を有しているため、単一の金属層の場合に比較して、TM透過損失を小さく、TE透過損失を大きくすることができる。
【0044】
以下、TE偏光(TE波)とTM偏光(TM派)各々について特性を検討する。
1.TE波
金属層14に入射し、金属層14、中間層13、金属層12を透過するTE波については、単純な平板金属膜の透過の場合と同等に考えることができる。透過率は金属中での吸収と金属表面での反射で決まる。
【0045】
(1)吸収
金属層における吸収は、(吸収係数×金属層の厚さ)で決まる。このため、単層格子(金属層が1層)でも多層格子(金属層が複数層)でも合計の金属厚さ(金属層12と金属層14の合計の厚さ)が同じならば吸収による透過損失はほぼ等しい。ただし、多層構造では多重反射が存在するので、厳密には全ての多重反射光成分を加えて減衰量を求める必要がある。
【0046】
(2)反射
金属層における反射は、境界数が多いほど反射の効果は大きくなる。このため、多層にしたほうが単層の時より損失を大きくできる。ただし、多層構造では層間の多重反射による干渉効果が存在するため、Dの値に依存する。
【0047】
図5は、入射光の波長λが1μm、周期構造の周期Λが250nm、アスペクト比h/Λが1、基材11の材質がTsurupica(登録商標)であり、金属層12と金属層14の厚さの合計が18μm、中間層13の材質がSiO2である場合の、中間層13の厚さDの変化に対するTE波とTM波の透過損失特性を、厳密結合波解析(RCWA:Rigorous Coupled Wave Analysis))法を用いた数値解析により求めたグラフである。この図5中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0048】
この図5に示すように、TE波が中間層13の厚さDに対して周期的な変動が生じているのはこの多重反射による干渉である。例えば同図において隣り合うピークが生じるDの差は、0.35μm(900−550=350nm)である。即ち、0.35μm(金属膜間隔)×2(往復分)×1.45(屈折率)が、第1の格子と第2の格子の間を往復する光路長になる。この値は1.015となり、波長とほぼ同じになることから多重反射に起因した干渉現象であることがわかる。
【0049】
2.TM波
金属層14に入射し、金属層14、中間層13、金属層12を透過するTM波の透過は、入射光が金属格子の表面(入射側)および裏面(出射側)に励起される表面プラズモンを介して行われる。このため、透過率は金属境界面の数にはほとんど依存しない。ここで、図6〜図8にモデルを示す。なお、金属膜の厚さは表皮深さδより小さいことが必要であり、δは金属の複素屈折率の虚部をκとするとδ=λ/(2πκ)である。
【0050】
(a)図6は、単層の格子(金属層が一層の格子)の場合の表面(入射側)および裏面(出射側)に励起される表面プラズモン(A1、A2)を概念的に示す図である。このような場合では、多層の格子の場合に比べて1層当りの金属層の膜厚が厚いため、金属層の裏面(出射側)に励起される表面プラズモンA2の振幅が小さく、透過損失が大きくなる。
【0051】
(b)図7は、二重格子(金属層が二層の格子)で中間層13の厚さDが小さい場合の表面(入射側)および裏面(出射側)に励起される表面プラズモン(A1、A4)と、各金属層12、金属層14の中間層13側に励起される表面プラズモン(A2、A3)を概念的に示す図である。このような場合では、2つの金属層の間における表面プラズモン(A2とA3)が十分大きな振幅をもたない。この結果、出射側の表面プラズモンA4の振幅も入射側の表面プラズモンA1と比べて大きくないために透過損失の低減効果は小さい。
【0052】
(c)図8は、一層当りの金属層の膜厚が十分小さい二重格子で、かつ中間層13の厚さDが十分大きい場合の表面(入射側)および裏面(出射側)に励起される表面プラズモン(A1、A4)と、各金属層12、金属層14の中間層13側に励起される表面プラズモン(A2、A3)を概念的に示す図である。このような場合では、入射光は第1の金属膜(金属層14)の表面プラズモン(A1とA2)を介して中間層13の光に結合される。さらに第2の金属膜(金属層12)の表面プラズモン(A3とA4)を介して出射光に高効率で結合する。
【0053】
以上の図6〜図8のモデルから以下のことを説明できる。
図5(波長λ=1μmの場合)に示すように、中間層13の厚さDが大きくなるにつれてTM波の損失が単調に小さくなり、ある程度以上(100nm以上)になれば、ほぼ一定になる。
【0054】
図9は、入射光の波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1である場合の、金属層が一層の場合と二層の場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層の厚さに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この図9中において、実線は中間層13の厚さDが1.5μmの二層の場合の(金属層の厚さの合計に対する)特性を示しており、破線はD=0すなわち一層の場合の特性を示している。この図9に示すように、金属層の厚さが厚くなるとある厚さ以上で急激にTM波の損失が大きくなる。また、金属層を2分割して二層にしたほうがTM波の損失を大幅に低減することができる。
【0055】
図10は、入射光の波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、基材11及び中間層13の材質がSiであり、二重格子(金属層が二層)を構成する金属層の合計の厚さtが18μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層13の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この図10中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。横軸のD=0の点は、単層の金属の場合の特性に該当する。
【0056】
図11は、入射光の波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、基材11及び中間層13の材質がSiであり、四重格子(金属層が四層)を構成する金属層の合計の厚さtが18μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層13の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この図11中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。横軸のD=0の点は、単層の金属の場合の特性に該当する。
【0057】
図10と図11を比較すると明らかなように金属層の分割数を大きくする(一層あたりの金属層厚は単層の場合に対して分割数で除した値)方が特性は向上する。周期構造の断面が三角波形状の場合については、二重格子、四重格子の場合とも、中間層13の厚さに対してTM波の損失が急激に減少し(四重格子のほうが顕著)、その後Dによらず小さい値を保持する。一方TE波の損失はDが2〜2.5μm程度までDに比例して大きくなり、2重格子で60dB程度、四重格子で85dB以上に達する。すなわち、分割数を多くしたほうが特性は向上する。周期構造の断面が正弦波形状の場合についても、中間層13の厚さDに対して二重格子、四重格子の場合とも損失が減少し、Dが一定の値(3μm)以上で四重格子のほうがより損失が小さくなる。TE波の損失はDが2〜2.5μm程度までDに比例して大きくなり、2重格子で60dB程度、四重格子で70dB以上に達する。すなわち、分割数を多くしたほうが特性は向上している。
【0058】
以上説明したように、この偏光子10では、金属層の数を複数とすることにより、TM偏光を透過し、TE偏光を反射又は吸収するという特性、すなわちTM偏光を低損失で透過(TM透過損失が小さい)させ、TE偏光を高損失で透過(TE透過損失が大きい)させる偏光特性を向上させることができる。
【0059】
[光モジュール]
本発明に係る光モジュールは、上記した本発明の偏光子10を用いて構成されるデバイス又は機器である。赤外帯域で用いる光モジュールの例としては、通信用光アイソレーターを挙げることができる。通信用光アイソレーターは、互いに透過する偏光の向きが45度傾いた2枚の偏光子の間に、偏光の回転角が45度のファラデー回転子を挿入することにより構成したものである。こうした光アイソレーターによれば、ある方向の光はすべて透過し、逆方向の光は透過しないようにできる。光通信では半導体レーザの発信を安定化するのに必要であり、偏光子は必要不可欠なモジュールの一つの構成部品である。その偏光子に本発明の偏光子10を用いれば、安価かつ広開口の光アイソレーターが製造できる。
【実施例】
【0060】
以下、解析例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0061】
[解析例1]
上述の図2及び図3に示す構造をモデリングし、二重格子構造(金属層が二層)について、厳密結合波解析(RCWA)法を用いた数値解析によって、(A)中間層厚依存性、(B)アスペクト比依存性、(C)金属層厚依存性を解析した。
【0062】
これらの数値解析では、入射光の波長λを10μm、周期構造の周期Λを2.5μm、基材11及び中間層13の材質をSi(n=3.4、κ=0)、金属層をAl(屈折率n=25.3、消衰係数κ=89.8)と仮定している。
【0063】
(A)中間層厚依存性
上述の図10は、中間層13の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この数値解析では、アスペクト比h/Λを1、二重格子(金属層が二層)を構成する金属層の合計の厚さtを18μm(金属層12及び金属層14の厚さは各々9μm)としている。上述の図10中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0064】
周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状のいずれも、中間層の厚さDが厚くなるに伴い、TM波の透過損失は減少する。中間層の厚さDが0〜1.5μmのとき、TE波の透過損失は、Dが厚くなるに伴い増加し、D>1.5μmでは減少していく。D=1.5μm付近でTE波の透過損失が最大となり、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が20dB以上向上する。以上より、上述のような構成の二重格子構造の場合は、中間層13(Si)の厚さをDを1.5μmとすることが望ましい。
【0065】
なお、上述の図5に示す波長λが1μmである場合には、中間層の厚さDが0.15μmのときにTE波の透過損失が最大となる。また、後述の図24に示す波長λが20μmである場合には、中間層の厚さDが3μのときにTE波の透過損失が最大となる。従って、上述のような構成の二重格子構造の場合で、波長λが1μm〜20μmの範囲では、Dを0.15λとすることが望ましい。
【0066】
(B)アスペクト比依存性
図12は、アスペクト比h/Λに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この数値解析では、中間層13の厚さDを1.5μm(二重格子構造であって(A)で仮定した条件において消光比が最大となるDの値)、二重格子(金属層が二層)を構成する金属層の合計の厚さtを18μm(金属層12及び金属層14の厚さは各々9μm)としている。この図12中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0067】
この図12より、アスペクト比h/Λの増加に伴い、TE波とTM波の透過損失差が大きくなり、高い消光比を得られることがわかる。断面形状ごとの特性を比較すると、正弦波形状の断面を持つ構造では三角波形状に比べ、アスペクト比が小さく(h/Λ<0.5)なった場合、TM波の透過損失を抑えることができる。TM波の透過損失について、TE波の透過損失を上回る場所が存在しているのは、アスペクト比の変化に伴い電界の振動方向に平行な金属層の厚さも変化することから、特定のアスペクト比(電界の振動方向と平行な厚さと同義)において、金属層で共鳴吸収が起きているためと考えられる。以上より、アスペクト比h/Λの増加によって良好な偏光特性が得られ、挿入損失は、正弦波形状の方が三角波形状に比べ構造のアスペクト比による依存が少ない。また、構造のアスペクト比アスペクト比は、正弦波形状では0.5以上、三角波形状では0.6以上であることが望ましい。
【0068】
(C)金属層厚依存性
上述の図9は、周期構造の断面が正弦波形状となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtに対する透過損失特性の計算結果を示している。上述の図9中において、実線は中間層13の厚さDが1.5μmである二重格子構造(金属層が二層)の場合の特性を示しており、破線は中間層13の厚さDが0すなわち金属層が一層の場合の特性を示している。なお、二重格子構造の場合は各々の金属層の厚さはtの半分(t/2)である。
【0069】
また、図13は、周期構造の断面が三角波形状となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtに対する透過損失特性の計算結果を示している。図13中において、実線は中間層13の厚さDが1.5μmである二重格子構造(金属層が二層)の場合の特性を示しており、破線は中間層13の厚さDが0すなわち金属層が一層の場合の特性を示している。なお、二重格子構造の場合は各々の金属層の厚さはtの半分(t/2)である。
【0070】
上述の図9、図13のいずれの場合も、金属層の合計の厚さtの増加に伴い、TE波、TM波ともに透過損失が増加する。どちらの断面形状においてもt>15nmとなると、D=1.5μmの場合では、D=0の場合と比較し、TM波の透過損失(偏光子としての挿入損失)の増加を大きく低減することができる。従って、金属層の合計の厚さtは、上述の表皮深さ程度にするのが望ましい。
【0071】
また、D=1.5μmの場合において、断面形状による特性を比較すると、TE波の透過損失に大きな差は見られない。しかしながら、三角波形状の断面では、正弦波形状と比較し、膜厚が厚くなったときの挿入損失増加を低減できる。以上より、二重格子構造の偏光子を製造する場合、三角波形状の方が金属層の作製トレランスが高いことがわかる。
【0072】
[解析例2]
三重格子構造(金属層が三層)について、厳密結合波解析(RCWA)法を用いた数値解析によって、(A)中間層厚依存性、(B)アスペクト比依存性、(C)金属層厚依存性を解析した。これらの数値解析では、入射光の波長λを10μm、周期構造の周期Λを2.5μm、基材11及び中間層の材質をSi(n=3.4、κ=0)、金属層をAl(屈折率n=25.3、消衰係数κ=89.8)と仮定している。
【0073】
(A)中間層厚依存性
図14は、中間層の合計の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この数値解析では、アスペクト比h/Λを1、三重格子(金属層が三層)を構成する金属層の合計の厚さtを18μm(各金属層の厚さは各々6μm)としている。この図14中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0074】
周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状のいずれも、中間層の合計の厚さDが厚くなるに伴い、TM波の透過損失は減少する。中間層の合計の厚さD=0〜2.5μmのとき、TE波の透過損失は、中間層の合計の厚さDが厚くなるに伴い増加する。D=2.5μm付近でTE波の透過損失は最大となり、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が30dB以上向上する。三角波形状の断面では、正弦波形状と比較し、TE波の透過損失が高い。以上より、三重格子構造の場合、周期構造の断面は三角波形状、中間層の合計の厚さDを2.5μm(各中間層の厚さがD/2=1.25μm)とすることが望ましい。
【0075】
また、後述の図25は、同様な条件下で、波長λを1μmとした場合のシミュレーション結果である。また、後述の図26は、同様な条件下で、波長λを20μmとした場合のシミュレーション結果である。後述の図25に示す結果では、D=0.2μm(正弦状格子)、0.25μm(三角状格子)でTEの損失が最大になる。また、後述の図26に示す結果では、D=5μm(正弦状格子)、6μm(三角状格子)でTEの損失が最大になる。従って、波長に比例したDの値で最大になることがわかる。
【0076】
(B)アスペクト比依存性
図15は、アスペクト比h/Λに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この数値解析では、中間層の合計の厚さDを2.5μm(三重格子構造であって(A)で仮定した条件において消光比が最大となるDの値)、三重格子(金属層が三層)を構成する金属層の合計の厚さtを18μm(各金属層の厚さは各々6μm)としている。この図15中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0077】
この図15より、アスペクト比h/Λの増加に伴い、TE波とTM波の透過損失差が大きくなり、高い消光比を得られることがわかる。断面形状ごとの特性を比較すると、正弦波形状の断面を持つ構造では三角波形状に比べ、アスペクト比が小さく(h/Λ<0.5)なった場合、TM波の透過損失を抑えることができる。以上より、アスペクト比h/Λの増加によって良好な偏光特性が得られ、挿入損失は、正弦波形状の方が三角波形状に比べ構造のアスペクト比による依存が少ない。また、構造のアスペクト比アスペクト比は、正弦波形状では0.3以上、三角波形状では0.5以上であることが望ましい。
【0078】
(C)金属層厚依存性
図16は、周期構造の断面が正弦波形状の三重格子構造となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtに対する透過損失特性の計算結果を示している。図16中において、実線は中間層の合計の厚さDが2.5μmである三重格子構造(金属層が三層)の場合の特性を示しており、破線は中間層の厚さDが0すなわち金属層が一層の場合の特性を示している。なお、三重格子構造の場合は各々の金属層の厚さはtの3分の1(t/3)であり、各々の中間層の厚さはDの半分(D/2)である。
【0079】
また、図17は、周期構造の断面が三角波形状の三重格子構造となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtに対する透過損失特性の計算結果を示している。図17中において、実線は中間層の合計の厚さDが2.5μmである三重格子構造(金属層が三層)の場合の特性を示しており、破線は中間層の厚さDが0すなわち金属層が一層の場合の特性を示している。なお、三重格子構造の場合は各々の金属層の厚さはtの3分の1(t/3)であり、各々の中間層の厚さはDの半分(D/2)である。
【0080】
図16、図17のいずれの場合も、金属層の合計の厚さtの増加に伴い、TE波、TM波ともに透過損失が増加する。どちらの断面形状においてもt>15nmとなると、D=2.5μmの場合では、D=0の場合と比較し、TM波の透過損失(偏光子としての挿入損失)の増加を大きく低減できる。従って、金属層の合計の厚さtは、上述の表皮深さ程度にするのが望ましい。
【0081】
D=2.5μmの場合において、断面形状による特性を比較すると、三角波形状の断面では、正弦波形状と比較し、膜厚が厚くなったときの挿入損失増加を低減でき、TE波の透過損失は、t=10〜50nmの全域で約5dB高い。以上より、三重格子構造偏光子の場合、三角波形状の方が良好な偏光特性を得られ、加えて金属層の作製トレランスが高いことがわかる。
【0082】
[解析例3]
四重格子構造(金属層が四層)について、厳密結合波解析(RCWA)法を用いた数値解析によって、(A)中間層厚依存性、(B)金属層厚依存性を解析した。
これらの数値解析では、入射光の波長λを10μm、周期構造の周期Λを2.5μm、基材11及び中間層の材質をSi(n=3.4、κ=0)、金属層をAl(屈折率n=25.3、消衰係数κ=89.8)と仮定している。
【0083】
(A)中間層厚依存性
上述の図11は、中間層の合計の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この数値解析では、アスペクト比h/Λを1、四重格子(金属層が四層)を構成する金属層の合計の厚さtを18μm(各金属層の厚さは各々4.5μm)としている。上述の図11中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0084】
周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状のいずれも、中間層の合計の厚さDが厚くなるに伴い、TM波の透過損失は減少する。一方、TE波の透過損失は、周期構造の断面が正弦波形状の場合にはD=2.5μm付近で最大となる。周期構造の断面が三角波形状の場合には、D=3.5μm付近でTE波の透過損失が最大となる。三角波形状の断面では、正弦波形状と比較し、TE波の透過損失が高く、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が50dB以上向上する。以上より、四重格子構造の場合、周期構造の断面は三角波形状、中間層の合計の厚さDを3.5μm(各中間層の厚さがD/3=1.167μm)とすることが望ましい。
【0085】
(B)金属層厚依存性
図18及び図19は、周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状の四重格子構造となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtに対する透過損失特性の計算結果を示している。図18は、中間層の合計の厚さが2.5μm(正弦波形状で消光比最大)である場合の特性を示しており、図19は、中間層の合計の厚さが3.5μm(三角波形状で消光比最大)である場合の特性を示している。また、図18及び図19において、実線は正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は三角波形状の場合の特性を示している。なお、四重格子構造の場合は各々の金属層の厚さはtの4分の1(t/4)であり、各々の中間層の厚さはDの3分の1(D/3)である。
【0086】
図18、図19から、金属層厚の増加に伴い、TE波、TM波ともに透過損失が増加する。断面形状による特性を比較すると、D=2.5μmの場合、三角波形状の断面では正弦波形状に比べ、膜厚が厚くなったときの挿入損失増加を低減でき、TE波の透過損失は高くなっている。D=3.5μmの場合、挿入損失はt=10〜50nmにおいて断面形状による違いは見られないが、三角波形状の方が正弦波形状に比べ、TE波の透過損失が非常に高い。以上より、四重格子構造偏光子の場合、三角波形状の方が良好な偏光特性を得られ、加えてDが薄いとき、金属層の作製トレランスが高いことがわかる。
【0087】
[解析例4]
(光学特性の波長依存性)
上述の図9及び図14に示す構造パラメータの中間層厚依存性により得られた、消光比が最大となる中間層Siの合計の厚さを用い、二重及び三重格子構造の偏光子について、パラメータを入射波長λとしてRCWA法により数値解析を行った。この解析では、周期構造の周期(格子周期)Λ=2.5μm、構造のアスペクト比h/Λ=1、金属層Alの合計の厚さt=20nmと仮定する。
【0088】
(A)二重格子構造
図20に、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、二重格子構造となっている偏光子の、入射波長に対する透過損失特性の計算結果を示す。この図20中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0089】
中間層Siの厚さをD=1.5μmと仮定する。断面形状による特性を比較すると、今回用いたパラメータでは、λ=10μmにおいて、三角波形状の方が正弦波形状に比べ低挿入損失であるが、特性の違いは僅かといえる。λ=10〜30μmにおいて、消光比60dB以上が得られる。
【0090】
(B)三重格子構造
図21に、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、二重格子構造となっている偏光子の、入射波長に対する透過損失特性の計算結果を示す。この図21中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0091】
中間層Siの厚さをD=2.5μmと仮定する。断面形状による特性を比較すると、今回用いたパラメータでは、三角波形状の方が正弦波形状に比べ高消光比である。λ=10〜30μmにおいて、消光比70dB以上が得られる。
【0092】
[解析例5]
(金属層厚の割合が変化した場合の透過損失特性)
図22に示すように、二重格子構造の偏光子20において、金属層22と金属層24の厚さをそれぞれt1、t2とする。また、入射波長λを10μm、周期構造の周期Λを2.5μ、アスペクト比h/Λを1、中間層23の厚さDを1.5μmとし、金属層22及び金属層24をAl、基材11及び中間層13をSiと仮定する。
【0093】
このような条件で、周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状である二重格子構造となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtを20nmとし、各金属層の厚さt1、t2に対する透過損失特性を求めると、図23に示すようになる。この図23において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0094】
周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状のいずれの断面形状においても、t1及びt2が10nm付近のときに、TE波の透過損失が最も高くなり、TM波の透過損失が最も低くなる。以上より,金属層厚の割合は二重格子構造の場合、t1=t2=t/2となるように、同様の厚さとすることが望ましい。
【0095】
[解析例6]
(波長に対する中間層厚依存性)
二重及び三重格子構造の偏光子において、波長に応じて構造を変え、構造パラメータを中間層の合計の厚さDとして数値解析を行った。
【0096】
(A)二重格子構造
上述の図5は、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、二重格子構造となっている偏光子の、波長λが1μmの場合での中間層の厚さに対する透過損失特性の計算結果を示す。周期構造の周期Λを250nm、アスペクト比h/Λを1、金属層の合計の厚さt=18nm(t/2=9nm)、金属層をAl(n=1.35、κ=9.58)、基材をTsurupica(登録商標)(n=1.53、κ=0)、中間層をSiO2(n=1.45、κ=0)と仮定する。
【0097】
中間層の厚さDの増加に伴い、TM波の透過損失は減少し、D>200nmでは一定となる。一方、TE波の透過損失は、Dの増加に伴い、中間層厚による干渉を繰り返し波打った特性となる。D=150nm付近でTE波の透過損失は最大となり、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が約5dB向上する。
【0098】
図24に、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、二重格子構造となっている偏光子の、波長λが20μmの場合での中間層の厚さに対する透過損失特性の計算結果を示す。周期構造の周期Λを5μm、アスペクト比h/Λを1、金属層の合計の厚さt=18nm(t/2=9nm)、金属層をAl(n=60.7、κ=147)、基材及び中間層をSi(n=3.4、κ=0)と仮定する。
【0099】
中間層の厚さDの増加に伴い、TM波の透過損失は減少する。一方、TE波の透過損失はDの増加とともに増加し、D=3μm付近で最大となり、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が20dB以上向上する。
【0100】
以上より、二重格子構造の場合、中間層厚を波長λが1μmの場合で中間層の厚さDを150nmとし、λ=20μmでD=3μmとすることが望ましく、上述の解析例1(A)の結果からλ=10μmにおいてはD=1.5μmとすることで最良となるため、波長に対して中間層厚をD=0.15λと設定したときに、TE波の透過損失が最大になると考えられる。また、これらの上述の図5、図24から、中間層の厚さDを0.08λ〜0.25λ程度にすれば、良好な特性を得ることができる。
【0101】
(B)三重格子構造
図25に、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、三重格子構造となっている偏光子の、波長λが1μmでの中間層の厚さに対する透過損失特性の計算結果を示す。周期構造の周期Λを250nm、アスペクトh/Λを1、金属層の合計の厚さt=18nm(t/3=6nm)、金属層をAl、基材をTsurupica(登録商標)、中間層をSiO2と仮定する。
【0102】
中間層の合計の厚さDの増加に伴い、TM波の透過損失は減少する。周期構造の断面の形状が正弦波形状の場合、D=400nm付近でTM波の透過損失が増加しているのは、特定の中間層厚において干渉が起きているためと考えられる。一方、TE波の透過損失はDの増加とともに増加し、正弦波形状の場合には、D=200nm付近で最大となる。三角波形状の場合には、D=250nm付近で最大となる。三角波状の断面形状では正弦波状に比べ、TE波の透過損失が高くなっている。D=0(単層膜)のときに比べ、正弦波形状で消光比が約5dB向上、三角波形状で約7dB向上する。
【0103】
図26に、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、三重格子構造となっている偏光子の、波長λが20μmでの中間層の厚さに対する透過損失特性の計算結果を示す。周期構造の周期Λを5μm、アスペクト比h/Λを1、金属層の合計の厚さt=18nm(t/3=6nm)、金属層をAl、基材及び中間層をSiと仮定する。
【0104】
中間層の合計の厚さDの増加に伴い、TM波の透過損失は減少する。一方、TE波の透過損失はDの増加とともに増加し、正弦波形状の場合にはD=5μm付近で最大となる。三角波形状の場合にはD=6μm付近で最大となり、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が40dB以上向上する。三角波状の断面形状では正弦波状に比べ、TE波の透過損失が高く、D<6μmのときTM波の透過損失が低くなっている。
【0105】
以上より、三重格子構造の場合、正弦波形状では中間層厚を波長λ=1μmでD=200nm、波長λ=20μmでD=5μmとすることが望ましい。また、三角波形状では波長λ=1μmでD=250nm、波長λ=20μmでD=6μmとすることが望ましい。上述の解析例2(A)の結果からλ=10μmにおいてはD=2.5μmとすることで最良となるため、波長に対して中間層の合計の厚さDを、正弦波形状の場合ではD=0.20λ〜0.25λ、三角波形状の場合ではD=0.25λ〜0.30λと設定したときに、TE波の透過損失が最大になると考えられる。
【0106】
[解析例7]
(中間層を厚くした場合)
多重格子構造において、中間層が非常に厚くなったとき、一層当たりの金属層厚とした金属単層膜の偏光子における透過損失を倍とした値に漸近するかを確認する。上述の図10、図27及びこれらをまとめた図28に、正弦波状及び三角波状の断面形状を持ち、二重格子構造となっている偏光子の、中間層の厚さ(D=0〜3μm[上述の図10]、D=35〜50μm[図27])に対する透過損失特性の計算結果を示す。
【0107】
ここで、波長λを10μm、周期構造の周期Λを2.5μm、アスペクト比h/Λ=1、金属層の合計の厚さt=18nm(t/2=9nm)とし、金属層をAl、基材及び中間層をSiと仮定する。
【0108】
中間層の厚さDが増加すると、TM波の透過損失は、どちらの断面形状においても0.5dB以下で安定しているが、TEの透過損失は、Dとともに増加し30〜40dBとなっている。ここで、t=9nmである金属単層膜の偏光子の損失を2倍すると、正弦波形状では、TE波の透過損失47.3dB、TM波の透過損失0.504dB、三角波形状では、TE波の透過損失49.2dB、TM波の透過損失0.220dBである。以上より、Dが増加したとき、TM波の透過損失は、金属単層膜の特性の2倍に漸近しているといえる。TE波の透過損失は、D=50μmではまだ十分に漸近していないが、さらにDが増加した場合、漸近していくと考えられる。
【0109】
(結論)
以上説明したように、金属薄膜サブ波長多重格子構造偏光子を提案した。中赤外域における偏光特性の数値解析結果について報告した。数値解析により、λ=10μmにおいて、中間層Si(屈折率3.4)の厚さを二重格子構造の場合D=1.5μm(図10より、D=波長λ/(2×屈折率)、三重格子構造の場合D=2.5μm(図16より)とすることで消光比が最大となる。すなわち、中間層の素材をSiとした場合には、波長に対する中間層厚依存性により、二重格子の場合D=0.15λ、三重格子の場合D=0.20λ〜0.25λ(正弦波状)、D=0.25λ〜0.30λ(三角波状)とすることで高い偏光特性が得られる。これらのシミュレーション結果より、中間層の合計の厚さDは、これらの値の±60%程度の値が妥当であると考えられる。
【0110】
なお、この値は、中間層の屈折率に応じて変わるため、中間層の材質をSiO2をとした場合には、三重格子の場合には、中間層の合計の厚さの上限をD=0.58λ(正弦波状)程度、D=0.7λ(三角波状)とすることが望ましい。
【0111】
また、これらのシミュレーション結果により、λ=10〜30μmにおいて、二重格子構造で消光比理論値60dB以上、三重格子構造で70dB以上が得られ、金属薄膜サブ波長格子を多重化することで、中赤外域において良好な偏光特性が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0112】
3 表面
4 尾根部
5 谷部
10 偏光子
11 基材
12 金属層
13 中間層
14 金属層
20 偏光子
21 基材
22 金属層
23 中間層
24 金属層
【0113】
Λ 構造周期のピッチ
h 周期構造(三角波形状又は正弦波形状)の高さ
D 中間層
t 金属層の合計の厚さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子、その製造方法及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子は、ある特定の偏光のみを透過させる素子である。光通信、光情報処理又は光センシング等の分野では、小型で、消光比が高く、使用波長範囲が広く、耐環境性に優れ、量産性にも優れた偏光子が要求されている。
【0003】
例えば、テラヘルツ帯及び近赤外領域用偏光子として、特許文献1では、サブ波長格子(Subwavelength grating:SWG)を用いた偏光子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−256840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の偏光子は、主に、テラヘルツ領域から遠赤外領域を対象としていたが、中赤外及び近赤外領域の特性を向上させる余地がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、平易な作製プロセスによりコストが大幅に削減できるとともに、かつ広開口の偏光子を作製することが容易で、中赤外及び近赤外領域における特性を向上させることができる偏光子、その製造方法及び光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明に係る偏光子は、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を有した基材と、前記周期構造の表面に中間層を介して複数設けられた金属層と、を有することを特徴とする。
【0008】
なお、例えば、本発明の偏光子において、前記単位構造の周期が、λ(1μm≦λ≦20μm)/n(前記中間層の屈折率)以下である、ことが好ましい。また、前記中間層の厚さが0.08λ〜0.25λであること、前記金属層が三層であり、前記周期構造の断面が正弦波形状である場合に、前記中間層の厚さが0.2λ〜0.58λであることが好ましい。さらに、前記金属層が三層であり、前記周期構造の断面が三角波形状である場合に、前記中間層の厚さが0.25λ〜0.7λであることが好ましい。
【0009】
(2)本発明の偏光子において、前記周期構造の断面が三角波形状又は正弦波形状であることが好ましい。
【0010】
(3)本発明の偏光子において、前記金属層が二層であり、前記中間層の厚さが0より大きくλ/n以下であることが好ましい。
【0011】
(4)上記課題を解決するための本発明に係る偏光子の製造方法は、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を前記基材面に形成する工程と、前記周期構造の表面に金属層を形成する工程と、前記金属層の表面に中間層を形成する工程と、前記中間層の表面に金属層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
(5)本発明の偏光子の製造方法において、前記周期構造の断面が三角波形状又は正弦波形状であることが好ましい。
【0013】
(6)上記課題を解決するための本発明に係る光モジュールは、上記本発明に係る偏光子を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の偏光子によれば、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を有した基材と、前記周期構造の表面に中間層を介して複数設けられた金属層とを有するので、中赤外領域における特性を向上させることができる。
【0015】
本発明の偏光子の製造方法によれば、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を前記基材面に形成する工程と、前記周期構造の表面に金属層を形成する工程と、前記金属層の表面に中間層を形成する工程と、前記中間層の表面に金属層を形成する工程とを有するので、従来のような多層構造を形成した後に切り出す方法よりも効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る偏光子の一例とその使用態様を示す全体図である。
【図2】三角波形状の断面を有し、その三角波形状の表面に金属層が形成されている偏光子(サブ波長格子)の例を示す拡大図である。
【図3】正弦波形状の断面を有し、その正弦波形状の表面に金属層が形成されている偏光子(サブ波長格子)の例を示す拡大図である。
【図4】周期構造の占有率(充填率)についての説明図である。
【図5】波長λが1μm、周期構造の周期Λが250nm、アスペクト比h/Λが1、金属層Alの厚さの合計が18nmである場合の、中間層の厚さDの変化に対するTE波とTM波の透過損失特性を厳密結合波解析(RCWA)法を用いた数値解析により求めたグラフである。
【図6】単層格子(金属層が一層の格子)の場合の表面および裏面に励起される表面プラズモンを概念的に示す図である。
【図7】二重格子(金属層が二層の格子)で中間層の厚さDが小さい場合の表面および裏面に励起される表面プラズモンと、各金属層の中間層側に励起される表面プラズモンを概念的に示す図である。
【図8】一層当りの金属層の膜厚が十分小さい二重格子で、かつ中間層の厚さDが十分大きい場合の表面および裏面に励起される表面プラズモンと、各金属層の中間層側に励起される表面プラズモンを概念的に示す図である。
【図9】波長λが10μm、正弦波形状の断面を有し、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、中間層の厚さDが0(単層格子)と1.5μm(二重格子)である場合の、金属層が一層の場合と二層の場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層の厚さに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図10】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、二重格子を構成する金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図11】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、四重格子(金属層が四層)を構成する金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図12】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、二重格子を構成する金属層の合計の厚さtが18nm、中間層の厚さDが1.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、アスペクト比h/Λに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図13】波長λが10μm、三角波形状の断面を有し、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、中間層の厚さDが0(単層格子)と1.5μm(二重格子)である場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層の合計の厚さtに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図14】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、三重格子を構成する金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図15】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、三重格子を構成する金属層の合計の厚さtが18nm、中間層の合計の厚さDが2.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、アスペクト比h/Λに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図16】波長λが10μm、正弦波形状の断面を有し、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、中間層の合計の厚さDが2.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層の合計の厚さtに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図17】波長λが10μm、三角波形状の断面を有し、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、中間層の合計の厚さDが2.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層の合計の厚さtに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図18】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、四重格子を構成する中間層の合計の厚さDが2.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層Alの合計の厚さtに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図19】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、四重格子を構成する中間層の合計の厚さDが3.5μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層Alの合計の厚さtに対するTE波とTM波の透過損失特性を示すグラフである。
【図20】周期構造の周期Λ=2.5μm、構造のアスペクト比h/Λ=1、金属層Alの合計の厚さt=20nm、中間層の厚さがD=1.5μmである二重格子の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、入射波長に対する透過損失特性を示すグラフである。
【図21】周期構造の周期Λ=2.5μm、構造のアスペクト比h/Λ=1、金属層Alの合計の厚さt=20nm、中間層の合計の厚さがD=2.5μmである三重格子の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、入射波長に対する透過損失特性を示すグラフである。
【図22】正弦波形状の断面を有し、その正弦波形状の表面に金属層が形成されている偏光子(サブ波長格子)の例を示す拡大図である。
【図23】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μ、アスペクト比h/Λが1、金属層の合計の厚さtすなわちt1+t2が20nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、各金属層の厚さに対する透過損失特性を示すグラフである。
【図24】波長λが20μm、周期構造の周期Λが5μm、アスペクト比h/Λが1、金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対する透過損失特性を示すグラフである。
【図25】波長λが1μm、周期構造の周期Λが250nm、アスペクトh/Λが1、金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の合計の厚さDに対する透過損失特性を示すグラフである。
【図26】波長λが20μm、周期構造の周期Λが5μm、アスペクト比h/Λが1、金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の合計の厚さDに対する透過損失特性を示すグラフである。
【図27】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対する透過損失特性を示すグラフである。
【図28】波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、金属層の合計の厚さtが18nmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層の厚さDに対する透過損失特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、その技術的思想を含む範囲を包含し、以下に示す説明や図面等に限定されない。
【0018】
[偏光子]
本発明の偏光子10は、図1に示すように、入射する電磁波に対する占有率が連続的に変化する単位構造を繰り返す周期構造を有する基材11と、周期構造の表面に設けられた金属層12と、この金属層12の上に設けられた中間層13と、この中間層13の上に設けられた金属層14と、を有している。
【0019】
基材11の表面に設けられた周期構造は、図2に断面を示すように、断面が三角形の溝(Groove)である単位構造を溝の長手方向に対して垂直な方向に隣接させて繰り返す構造、すなわち三角波形状となっている。なお、この例では、単位構造の断面形状を三角波形状としているが、入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造を繰り返す周期構造であれば、例えば図3に示すように、単位構造の断面形状を正弦波形状としてもよい。あるいは、単位構造の断面形状を矩形波形状としてもよい。
【0020】
この偏光子10は、図1に示すように、周期構造が形成された面に所定の角度で電磁波(光)が入射波として入射した場合に、その周期構造に平行な偏波成分を反射し、垂直な偏波成分を透過させる。すなわち、電界の偏光方向が図1のx方向(周期構造に垂直)であるTM波は、表面プラズマ波を介して金属層を低損失で透過し、電界がy方向の偏光方向(周期構造に平行)を持つTE波は、金属層により吸収、反射され、TE波の透過損失は大きくなる(高透過損失)。
【0021】
なお、電磁波(光)は進行方向と垂直に振動する横波である。また、入射角は入射波の方向と基材面の法線方向とがなす角度である。さらに、入射面は入射波の方向と基材面の法線方向を含む平面である。また、図1にも示したように、電界の向きが周期構造(格子)の溝方向に平行な電磁波をTE(Transverse Electric wave)波、格子の溝方向に垂直な電磁波をTM(Transverse Magnetic wave)波と呼ぶ。本発明のTE透過損失とTM透過損失とは、上記のTE波やTM波が偏光子1を透過する際の損失(単位「dB」による表記)である。
【0022】
以下、本発明の構成について詳しく説明する。
【0023】
(基材)
基材11は、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造を繰り返す周期構造を有している。
【0024】
周期構造は、図1、図2及び図3に示すように、一定の単位構造が周期的に繰り返される構造であり、基材11は、そうした周期構造が基材面に形成されている。周期的に繰り返す単位構造は、基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化するものである。
【0025】
また、基材11の基材面の全面には、図1及び図2に示すように、Al等からなる金属層12が形成されており、この金属層12の上には、Siや石英等などの透明体からなる中間層13が形成されており、さらに、この中間層13の上には、Al等からなる金属層14が形成されている。同様に、図3に示す基材21の基材面の全面には、Al等からなる金属層22が形成されており、この金属層22の上には、Siや石英等などの透明体等からなる中間層23が形成されており、さらに、この中間層23の上には、Al等からなる金属層24が形成されている。
【0026】
ここで、「基材面に所定の角度で入射する電磁波」とは、所定の入射角(入射波の方向と基材面の法線方向とがなす角度)で基材面に入射するものであれば、図1に示すように必ずしも法線方向から入射するものでなくてもよく、「所定の角度(入射角)」で基材面に入射するものであればよい。
【0027】
また、「電磁波に対して占有率が連続的に変化する」とは、例えば図4に示すように、基材面の法線方向から入射する電磁波が基材面にそのまま直進透過するとした場合に、電磁波が直進透過する長さの割合ということができる。例えば図4では、電磁波E3が透過する谷部5は透過長さが最も短い部位であり、電磁波E1が透過する尾根部4は透過長さが最も長い部位である。「電磁波に対する占有率」とは、このように、電磁波の透過長さが最も長い部位を占有率100%とし、電磁波の透過長さが最も短い部位を占有率0%として表すものということができる。そして、「占有率が連続的に変化する」とは、図4の例のように、尾根部4から谷部5に向かって占有率(単位構造の長さL)が連続的に変化することをいう。なお、「連続的」とは、尾根部4から谷部5に向かう面3が、図2の三角波形状のように直線的に変化する場合や図3の正弦波形状のよう曲線状に変化する場合の他、ガウス形、アークタンジェント形、レイズドコサイン形、放物形等々に連続変化する場合(図示しない)であってもよい。つまり、尾根部4から谷部5に向かって占有率が総じて増加乃至減少する態様のものも含まれてもよい。
【0028】
また、「一定の単位構造が周期的に繰り返される」とは、上記した「電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造」が一定の周期(ピッチ:図2、図3中のΛ)で繰り返されているものである。その周期は全て一致していることが好ましいが、必ずしも完全に一致していなくてもよい。例えば、周期が不規則であってもある意図を持った設計思想の下で繰り返されているものであればよい。また、構造単位も全て同じ形状であることが好ましいが、完全に一致していなくてもよい。例えば、異なる形状の構造単位がある意図を持った設計思想の下で繰り返されているものであればよい。
【0029】
基材11の材質としては、屈折率の実部n及び虚部κが低い材料を用いることが好ましい。屈折率の実部nが低いほど優れた偏光特性を見込むことができるとともに、基材11によるフレネル反射損失を低減することができる。一方、虚部κが小さいほど吸収損失を低減することができる。
【0030】
本発明の偏光子10が対象とする帯域は、波長が1μm〜20μm程度の赤外帯域である。この帯域では、基材11の材質は、例えば低損失材料であるSiとし、金属層12及び金属層14の材質は、Alとする。例えば波長が10μmである場合、Alの光学定数(屈折率の実部nと虚部κ)のうち虚部κは89.8である。また、この場合の金属表面に入射した電磁波の電界の振幅が1/eとなる深さである表皮深さδは、17.7nmとなる。なお、金属層12及び金属層14の材質は、Alだけに限られず、他に、Ag,Pt,Cu,Au,Cr,Mo,W,Ti,Pd,Ni等も用いることができる。
【0031】
周期構造は、例えば図2及び図3に示す三角波形状と正弦波形状の場合では、その尾根部4(あるいは谷部5)がサブ波長周期で繰り返す構造となっている。サブ波長周期とは、構造周期が入射電磁波の波長と同程度か、それよりも小さいという意味である。透過あるいは反射する波に高次の回折波が発生せず、0次だけの透過光あるいは反射光になる条件を指す。この周期構造は、媒体の屈折率境界で生じるフレネル反射を低減するように作用し、いわゆる反射低減効果を有する。こうした周期構造は、サブ波長格子(Sub−Wavelength Grating:SWG)といい、反射防止表面や偏光分離素子として、ディスプレイ、光検出器、発光素子への応用が期待できる。
【0032】
周期構造の格子形状は、適用する波長(テラヘルツ帯域、近赤外帯域等)において、回折散乱を伴わない構造周期Λ(ラムダ)(<λ/n)であることが好ましい。ここで、λは波長であり、nは基材11の屈折率である。上記の式「Λ<λ/n」を満たす範囲内で、金属薄膜のサブ波長格子の周期Λを設定すれば、大きな偏光特性をもたせることができる。
【0033】
赤外帯域では、基材11をSiとした場合、nは3.4なので、λ/nよりも小さいΛの好ましい範囲は10〜100μm(遠赤外)、1.5〜10μm(中赤外)、0.2〜1.5μm(近赤外)の範囲とすることが好ましい。
【0034】
周期構造は、図1、図2及び図3に示すような三角波形状や正弦波形状等を例示できる。図示しないが、ノコギリ波形状であってもよい。これらの形状は、尾根部4(凸部)と谷部5(凹部)を有し、上記の構造周期Λは、尾根部4,4間、又は谷部5,5間で評価することができる。
【0035】
周期構造を構成する単位構造の尾根部4から谷部5までを高さLとすると、アスペクト比(L/Λ[図2、図3では、h/Λ])は0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。アスペクト比が高いほど高い偏光特性を得ることができる。なお、アスペクト比の上限は特にないが、製造容易の観点から現実的なアスペクト比は3.0程度である。こうしたアスペクト比の範囲内になるように、三角波形状や正弦波形状等からなる単位構造の構造周期Λ(ピッチ)と高さLを規定する。中赤外帯域で好ましい構造周期Λが上記の(1.5〜10μm)の範囲である場合には、その上下限に対応した高さLは(0.75〜5μm)以上、(4.5〜30μm)以下の範囲となる。
【0036】
こうした周期構造を含む基材11の全体の厚さTは特に限定されないが、例えば500〜2000μm程度であればよい。周期構造の形成は、基材11の表面に、干渉露光法や電子ビーム露光法によりレジストの周期構造を作製してそれをそのまま利用するか、あるいはさらにそのレジストの厚み形状をリアクティブイオンエッチングなどにより基材に転写するなどして実現することができる。また、レーザーアブレーションにより表面を走査することによっても周期構造の形成が可能である他、周期構造を形成した金属或いはセラミックスを型として、樹脂等に周期構造を転写して形成することもできる。
【0037】
(金属層)
金属層12及び金属層14の材質は、下記のように、適用する波長帯域に応じた適切な材質のものが選ばれる。なお、図1、図2及び図3では、金属層を二層として示しているが、複数の金属層を有していればよく、三層、四層あるいはそれ以上の数の金属層を設けても良い。
【0038】
赤外帯域では、金属層12及び金属層14の材質としては、Pt,アルミニウム,Au,Ni等を用いることができるが、中でも、高い虚部κを持つアルミニウムが好ましく用いられる。そして、この帯域で適用する金属層12及び金属層14の合計の厚さは、例えば赤外帯域での表皮深さδ程度が好ましく、具体的には例えば波長が10μm(表皮深さδが17.7nm)の場合では合計で18nmの厚さであることが好ましい。
【0039】
金属層12及び金属層14の合計の厚さが適用波長における表皮深さδ以上である場合には、TM偏光とTE偏光に対して、高反射ミラーとなってしまう。TM偏光を透過して偏光子として動作させるためには、金属層12及び金属層14の合計の厚さを、上記のように、表皮深さδ程度に薄くすることが望ましい。
【0040】
こうした金属層12は、スパッタリング法、蒸着法等で周期構造上の全面に形成することができる。また、金属層14は、金属層12の形成後、中間層13を形成した後、同様の方法で形成することができる。
【0041】
(中間層)
中間層13は、金属層12を形成した後、高周波スパッタリング法や電子ビーム蒸着法によりアモルファスシリコン膜を成膜することによって形成することができる。
【0042】
以上説明したように、本発明の偏光子10は、図1、図2及び図3等に示すように、サブ波長オーダーの周期構造の表面に金属層12及び金属層14が形成されているので、TM偏光を透過し、TE偏光を反射又は吸収するという特性、すなわちTM偏光を低損失で透過(TM透過損失が小さい)しTE偏光を高損失で透過(TE透過損失が大きい)するという高い偏光特性を持っている。こうした特徴を持つ偏光子10は、分光分析(試薬、セキュリティー)、光通信、光通信アイソレーター等、偏波選択が必要な用途に利用可能である。
【0043】
(複数の金属層12、金属層14)
さらに、本発明の偏光子10は、図1、図2及び図3等に示すように、複数の金属層12及び金属層14を有しているため、単一の金属層の場合に比較して、TM透過損失を小さく、TE透過損失を大きくすることができる。
【0044】
以下、TE偏光(TE波)とTM偏光(TM派)各々について特性を検討する。
1.TE波
金属層14に入射し、金属層14、中間層13、金属層12を透過するTE波については、単純な平板金属膜の透過の場合と同等に考えることができる。透過率は金属中での吸収と金属表面での反射で決まる。
【0045】
(1)吸収
金属層における吸収は、(吸収係数×金属層の厚さ)で決まる。このため、単層格子(金属層が1層)でも多層格子(金属層が複数層)でも合計の金属厚さ(金属層12と金属層14の合計の厚さ)が同じならば吸収による透過損失はほぼ等しい。ただし、多層構造では多重反射が存在するので、厳密には全ての多重反射光成分を加えて減衰量を求める必要がある。
【0046】
(2)反射
金属層における反射は、境界数が多いほど反射の効果は大きくなる。このため、多層にしたほうが単層の時より損失を大きくできる。ただし、多層構造では層間の多重反射による干渉効果が存在するため、Dの値に依存する。
【0047】
図5は、入射光の波長λが1μm、周期構造の周期Λが250nm、アスペクト比h/Λが1、基材11の材質がTsurupica(登録商標)であり、金属層12と金属層14の厚さの合計が18μm、中間層13の材質がSiO2である場合の、中間層13の厚さDの変化に対するTE波とTM波の透過損失特性を、厳密結合波解析(RCWA:Rigorous Coupled Wave Analysis))法を用いた数値解析により求めたグラフである。この図5中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0048】
この図5に示すように、TE波が中間層13の厚さDに対して周期的な変動が生じているのはこの多重反射による干渉である。例えば同図において隣り合うピークが生じるDの差は、0.35μm(900−550=350nm)である。即ち、0.35μm(金属膜間隔)×2(往復分)×1.45(屈折率)が、第1の格子と第2の格子の間を往復する光路長になる。この値は1.015となり、波長とほぼ同じになることから多重反射に起因した干渉現象であることがわかる。
【0049】
2.TM波
金属層14に入射し、金属層14、中間層13、金属層12を透過するTM波の透過は、入射光が金属格子の表面(入射側)および裏面(出射側)に励起される表面プラズモンを介して行われる。このため、透過率は金属境界面の数にはほとんど依存しない。ここで、図6〜図8にモデルを示す。なお、金属膜の厚さは表皮深さδより小さいことが必要であり、δは金属の複素屈折率の虚部をκとするとδ=λ/(2πκ)である。
【0050】
(a)図6は、単層の格子(金属層が一層の格子)の場合の表面(入射側)および裏面(出射側)に励起される表面プラズモン(A1、A2)を概念的に示す図である。このような場合では、多層の格子の場合に比べて1層当りの金属層の膜厚が厚いため、金属層の裏面(出射側)に励起される表面プラズモンA2の振幅が小さく、透過損失が大きくなる。
【0051】
(b)図7は、二重格子(金属層が二層の格子)で中間層13の厚さDが小さい場合の表面(入射側)および裏面(出射側)に励起される表面プラズモン(A1、A4)と、各金属層12、金属層14の中間層13側に励起される表面プラズモン(A2、A3)を概念的に示す図である。このような場合では、2つの金属層の間における表面プラズモン(A2とA3)が十分大きな振幅をもたない。この結果、出射側の表面プラズモンA4の振幅も入射側の表面プラズモンA1と比べて大きくないために透過損失の低減効果は小さい。
【0052】
(c)図8は、一層当りの金属層の膜厚が十分小さい二重格子で、かつ中間層13の厚さDが十分大きい場合の表面(入射側)および裏面(出射側)に励起される表面プラズモン(A1、A4)と、各金属層12、金属層14の中間層13側に励起される表面プラズモン(A2、A3)を概念的に示す図である。このような場合では、入射光は第1の金属膜(金属層14)の表面プラズモン(A1とA2)を介して中間層13の光に結合される。さらに第2の金属膜(金属層12)の表面プラズモン(A3とA4)を介して出射光に高効率で結合する。
【0053】
以上の図6〜図8のモデルから以下のことを説明できる。
図5(波長λ=1μmの場合)に示すように、中間層13の厚さDが大きくなるにつれてTM波の損失が単調に小さくなり、ある程度以上(100nm以上)になれば、ほぼ一定になる。
【0054】
図9は、入射光の波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1である場合の、金属層が一層の場合と二層の場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、金属層の厚さに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この図9中において、実線は中間層13の厚さDが1.5μmの二層の場合の(金属層の厚さの合計に対する)特性を示しており、破線はD=0すなわち一層の場合の特性を示している。この図9に示すように、金属層の厚さが厚くなるとある厚さ以上で急激にTM波の損失が大きくなる。また、金属層を2分割して二層にしたほうがTM波の損失を大幅に低減することができる。
【0055】
図10は、入射光の波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、基材11及び中間層13の材質がSiであり、二重格子(金属層が二層)を構成する金属層の合計の厚さtが18μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層13の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この図10中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。横軸のD=0の点は、単層の金属の場合の特性に該当する。
【0056】
図11は、入射光の波長λが10μm、周期構造の周期Λが2.5μm、アスペクト比h/Λが1、基材11及び中間層13の材質がSiであり、四重格子(金属層が四層)を構成する金属層の合計の厚さtが18μmである場合の、RCWA法を用いた数値解析により求めた、中間層13の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この図11中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。横軸のD=0の点は、単層の金属の場合の特性に該当する。
【0057】
図10と図11を比較すると明らかなように金属層の分割数を大きくする(一層あたりの金属層厚は単層の場合に対して分割数で除した値)方が特性は向上する。周期構造の断面が三角波形状の場合については、二重格子、四重格子の場合とも、中間層13の厚さに対してTM波の損失が急激に減少し(四重格子のほうが顕著)、その後Dによらず小さい値を保持する。一方TE波の損失はDが2〜2.5μm程度までDに比例して大きくなり、2重格子で60dB程度、四重格子で85dB以上に達する。すなわち、分割数を多くしたほうが特性は向上する。周期構造の断面が正弦波形状の場合についても、中間層13の厚さDに対して二重格子、四重格子の場合とも損失が減少し、Dが一定の値(3μm)以上で四重格子のほうがより損失が小さくなる。TE波の損失はDが2〜2.5μm程度までDに比例して大きくなり、2重格子で60dB程度、四重格子で70dB以上に達する。すなわち、分割数を多くしたほうが特性は向上している。
【0058】
以上説明したように、この偏光子10では、金属層の数を複数とすることにより、TM偏光を透過し、TE偏光を反射又は吸収するという特性、すなわちTM偏光を低損失で透過(TM透過損失が小さい)させ、TE偏光を高損失で透過(TE透過損失が大きい)させる偏光特性を向上させることができる。
【0059】
[光モジュール]
本発明に係る光モジュールは、上記した本発明の偏光子10を用いて構成されるデバイス又は機器である。赤外帯域で用いる光モジュールの例としては、通信用光アイソレーターを挙げることができる。通信用光アイソレーターは、互いに透過する偏光の向きが45度傾いた2枚の偏光子の間に、偏光の回転角が45度のファラデー回転子を挿入することにより構成したものである。こうした光アイソレーターによれば、ある方向の光はすべて透過し、逆方向の光は透過しないようにできる。光通信では半導体レーザの発信を安定化するのに必要であり、偏光子は必要不可欠なモジュールの一つの構成部品である。その偏光子に本発明の偏光子10を用いれば、安価かつ広開口の光アイソレーターが製造できる。
【実施例】
【0060】
以下、解析例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0061】
[解析例1]
上述の図2及び図3に示す構造をモデリングし、二重格子構造(金属層が二層)について、厳密結合波解析(RCWA)法を用いた数値解析によって、(A)中間層厚依存性、(B)アスペクト比依存性、(C)金属層厚依存性を解析した。
【0062】
これらの数値解析では、入射光の波長λを10μm、周期構造の周期Λを2.5μm、基材11及び中間層13の材質をSi(n=3.4、κ=0)、金属層をAl(屈折率n=25.3、消衰係数κ=89.8)と仮定している。
【0063】
(A)中間層厚依存性
上述の図10は、中間層13の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この数値解析では、アスペクト比h/Λを1、二重格子(金属層が二層)を構成する金属層の合計の厚さtを18μm(金属層12及び金属層14の厚さは各々9μm)としている。上述の図10中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0064】
周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状のいずれも、中間層の厚さDが厚くなるに伴い、TM波の透過損失は減少する。中間層の厚さDが0〜1.5μmのとき、TE波の透過損失は、Dが厚くなるに伴い増加し、D>1.5μmでは減少していく。D=1.5μm付近でTE波の透過損失が最大となり、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が20dB以上向上する。以上より、上述のような構成の二重格子構造の場合は、中間層13(Si)の厚さをDを1.5μmとすることが望ましい。
【0065】
なお、上述の図5に示す波長λが1μmである場合には、中間層の厚さDが0.15μmのときにTE波の透過損失が最大となる。また、後述の図24に示す波長λが20μmである場合には、中間層の厚さDが3μのときにTE波の透過損失が最大となる。従って、上述のような構成の二重格子構造の場合で、波長λが1μm〜20μmの範囲では、Dを0.15λとすることが望ましい。
【0066】
(B)アスペクト比依存性
図12は、アスペクト比h/Λに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この数値解析では、中間層13の厚さDを1.5μm(二重格子構造であって(A)で仮定した条件において消光比が最大となるDの値)、二重格子(金属層が二層)を構成する金属層の合計の厚さtを18μm(金属層12及び金属層14の厚さは各々9μm)としている。この図12中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0067】
この図12より、アスペクト比h/Λの増加に伴い、TE波とTM波の透過損失差が大きくなり、高い消光比を得られることがわかる。断面形状ごとの特性を比較すると、正弦波形状の断面を持つ構造では三角波形状に比べ、アスペクト比が小さく(h/Λ<0.5)なった場合、TM波の透過損失を抑えることができる。TM波の透過損失について、TE波の透過損失を上回る場所が存在しているのは、アスペクト比の変化に伴い電界の振動方向に平行な金属層の厚さも変化することから、特定のアスペクト比(電界の振動方向と平行な厚さと同義)において、金属層で共鳴吸収が起きているためと考えられる。以上より、アスペクト比h/Λの増加によって良好な偏光特性が得られ、挿入損失は、正弦波形状の方が三角波形状に比べ構造のアスペクト比による依存が少ない。また、構造のアスペクト比アスペクト比は、正弦波形状では0.5以上、三角波形状では0.6以上であることが望ましい。
【0068】
(C)金属層厚依存性
上述の図9は、周期構造の断面が正弦波形状となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtに対する透過損失特性の計算結果を示している。上述の図9中において、実線は中間層13の厚さDが1.5μmである二重格子構造(金属層が二層)の場合の特性を示しており、破線は中間層13の厚さDが0すなわち金属層が一層の場合の特性を示している。なお、二重格子構造の場合は各々の金属層の厚さはtの半分(t/2)である。
【0069】
また、図13は、周期構造の断面が三角波形状となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtに対する透過損失特性の計算結果を示している。図13中において、実線は中間層13の厚さDが1.5μmである二重格子構造(金属層が二層)の場合の特性を示しており、破線は中間層13の厚さDが0すなわち金属層が一層の場合の特性を示している。なお、二重格子構造の場合は各々の金属層の厚さはtの半分(t/2)である。
【0070】
上述の図9、図13のいずれの場合も、金属層の合計の厚さtの増加に伴い、TE波、TM波ともに透過損失が増加する。どちらの断面形状においてもt>15nmとなると、D=1.5μmの場合では、D=0の場合と比較し、TM波の透過損失(偏光子としての挿入損失)の増加を大きく低減することができる。従って、金属層の合計の厚さtは、上述の表皮深さ程度にするのが望ましい。
【0071】
また、D=1.5μmの場合において、断面形状による特性を比較すると、TE波の透過損失に大きな差は見られない。しかしながら、三角波形状の断面では、正弦波形状と比較し、膜厚が厚くなったときの挿入損失増加を低減できる。以上より、二重格子構造の偏光子を製造する場合、三角波形状の方が金属層の作製トレランスが高いことがわかる。
【0072】
[解析例2]
三重格子構造(金属層が三層)について、厳密結合波解析(RCWA)法を用いた数値解析によって、(A)中間層厚依存性、(B)アスペクト比依存性、(C)金属層厚依存性を解析した。これらの数値解析では、入射光の波長λを10μm、周期構造の周期Λを2.5μm、基材11及び中間層の材質をSi(n=3.4、κ=0)、金属層をAl(屈折率n=25.3、消衰係数κ=89.8)と仮定している。
【0073】
(A)中間層厚依存性
図14は、中間層の合計の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この数値解析では、アスペクト比h/Λを1、三重格子(金属層が三層)を構成する金属層の合計の厚さtを18μm(各金属層の厚さは各々6μm)としている。この図14中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0074】
周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状のいずれも、中間層の合計の厚さDが厚くなるに伴い、TM波の透過損失は減少する。中間層の合計の厚さD=0〜2.5μmのとき、TE波の透過損失は、中間層の合計の厚さDが厚くなるに伴い増加する。D=2.5μm付近でTE波の透過損失は最大となり、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が30dB以上向上する。三角波形状の断面では、正弦波形状と比較し、TE波の透過損失が高い。以上より、三重格子構造の場合、周期構造の断面は三角波形状、中間層の合計の厚さDを2.5μm(各中間層の厚さがD/2=1.25μm)とすることが望ましい。
【0075】
また、後述の図25は、同様な条件下で、波長λを1μmとした場合のシミュレーション結果である。また、後述の図26は、同様な条件下で、波長λを20μmとした場合のシミュレーション結果である。後述の図25に示す結果では、D=0.2μm(正弦状格子)、0.25μm(三角状格子)でTEの損失が最大になる。また、後述の図26に示す結果では、D=5μm(正弦状格子)、6μm(三角状格子)でTEの損失が最大になる。従って、波長に比例したDの値で最大になることがわかる。
【0076】
(B)アスペクト比依存性
図15は、アスペクト比h/Λに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この数値解析では、中間層の合計の厚さDを2.5μm(三重格子構造であって(A)で仮定した条件において消光比が最大となるDの値)、三重格子(金属層が三層)を構成する金属層の合計の厚さtを18μm(各金属層の厚さは各々6μm)としている。この図15中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0077】
この図15より、アスペクト比h/Λの増加に伴い、TE波とTM波の透過損失差が大きくなり、高い消光比を得られることがわかる。断面形状ごとの特性を比較すると、正弦波形状の断面を持つ構造では三角波形状に比べ、アスペクト比が小さく(h/Λ<0.5)なった場合、TM波の透過損失を抑えることができる。以上より、アスペクト比h/Λの増加によって良好な偏光特性が得られ、挿入損失は、正弦波形状の方が三角波形状に比べ構造のアスペクト比による依存が少ない。また、構造のアスペクト比アスペクト比は、正弦波形状では0.3以上、三角波形状では0.5以上であることが望ましい。
【0078】
(C)金属層厚依存性
図16は、周期構造の断面が正弦波形状の三重格子構造となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtに対する透過損失特性の計算結果を示している。図16中において、実線は中間層の合計の厚さDが2.5μmである三重格子構造(金属層が三層)の場合の特性を示しており、破線は中間層の厚さDが0すなわち金属層が一層の場合の特性を示している。なお、三重格子構造の場合は各々の金属層の厚さはtの3分の1(t/3)であり、各々の中間層の厚さはDの半分(D/2)である。
【0079】
また、図17は、周期構造の断面が三角波形状の三重格子構造となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtに対する透過損失特性の計算結果を示している。図17中において、実線は中間層の合計の厚さDが2.5μmである三重格子構造(金属層が三層)の場合の特性を示しており、破線は中間層の厚さDが0すなわち金属層が一層の場合の特性を示している。なお、三重格子構造の場合は各々の金属層の厚さはtの3分の1(t/3)であり、各々の中間層の厚さはDの半分(D/2)である。
【0080】
図16、図17のいずれの場合も、金属層の合計の厚さtの増加に伴い、TE波、TM波ともに透過損失が増加する。どちらの断面形状においてもt>15nmとなると、D=2.5μmの場合では、D=0の場合と比較し、TM波の透過損失(偏光子としての挿入損失)の増加を大きく低減できる。従って、金属層の合計の厚さtは、上述の表皮深さ程度にするのが望ましい。
【0081】
D=2.5μmの場合において、断面形状による特性を比較すると、三角波形状の断面では、正弦波形状と比較し、膜厚が厚くなったときの挿入損失増加を低減でき、TE波の透過損失は、t=10〜50nmの全域で約5dB高い。以上より、三重格子構造偏光子の場合、三角波形状の方が良好な偏光特性を得られ、加えて金属層の作製トレランスが高いことがわかる。
【0082】
[解析例3]
四重格子構造(金属層が四層)について、厳密結合波解析(RCWA)法を用いた数値解析によって、(A)中間層厚依存性、(B)金属層厚依存性を解析した。
これらの数値解析では、入射光の波長λを10μm、周期構造の周期Λを2.5μm、基材11及び中間層の材質をSi(n=3.4、κ=0)、金属層をAl(屈折率n=25.3、消衰係数κ=89.8)と仮定している。
【0083】
(A)中間層厚依存性
上述の図11は、中間層の合計の厚さDに対するTE波とTM波の透過損失特性を示している。この数値解析では、アスペクト比h/Λを1、四重格子(金属層が四層)を構成する金属層の合計の厚さtを18μm(各金属層の厚さは各々4.5μm)としている。上述の図11中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0084】
周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状のいずれも、中間層の合計の厚さDが厚くなるに伴い、TM波の透過損失は減少する。一方、TE波の透過損失は、周期構造の断面が正弦波形状の場合にはD=2.5μm付近で最大となる。周期構造の断面が三角波形状の場合には、D=3.5μm付近でTE波の透過損失が最大となる。三角波形状の断面では、正弦波形状と比較し、TE波の透過損失が高く、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が50dB以上向上する。以上より、四重格子構造の場合、周期構造の断面は三角波形状、中間層の合計の厚さDを3.5μm(各中間層の厚さがD/3=1.167μm)とすることが望ましい。
【0085】
(B)金属層厚依存性
図18及び図19は、周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状の四重格子構造となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtに対する透過損失特性の計算結果を示している。図18は、中間層の合計の厚さが2.5μm(正弦波形状で消光比最大)である場合の特性を示しており、図19は、中間層の合計の厚さが3.5μm(三角波形状で消光比最大)である場合の特性を示している。また、図18及び図19において、実線は正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は三角波形状の場合の特性を示している。なお、四重格子構造の場合は各々の金属層の厚さはtの4分の1(t/4)であり、各々の中間層の厚さはDの3分の1(D/3)である。
【0086】
図18、図19から、金属層厚の増加に伴い、TE波、TM波ともに透過損失が増加する。断面形状による特性を比較すると、D=2.5μmの場合、三角波形状の断面では正弦波形状に比べ、膜厚が厚くなったときの挿入損失増加を低減でき、TE波の透過損失は高くなっている。D=3.5μmの場合、挿入損失はt=10〜50nmにおいて断面形状による違いは見られないが、三角波形状の方が正弦波形状に比べ、TE波の透過損失が非常に高い。以上より、四重格子構造偏光子の場合、三角波形状の方が良好な偏光特性を得られ、加えてDが薄いとき、金属層の作製トレランスが高いことがわかる。
【0087】
[解析例4]
(光学特性の波長依存性)
上述の図9及び図14に示す構造パラメータの中間層厚依存性により得られた、消光比が最大となる中間層Siの合計の厚さを用い、二重及び三重格子構造の偏光子について、パラメータを入射波長λとしてRCWA法により数値解析を行った。この解析では、周期構造の周期(格子周期)Λ=2.5μm、構造のアスペクト比h/Λ=1、金属層Alの合計の厚さt=20nmと仮定する。
【0088】
(A)二重格子構造
図20に、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、二重格子構造となっている偏光子の、入射波長に対する透過損失特性の計算結果を示す。この図20中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0089】
中間層Siの厚さをD=1.5μmと仮定する。断面形状による特性を比較すると、今回用いたパラメータでは、λ=10μmにおいて、三角波形状の方が正弦波形状に比べ低挿入損失であるが、特性の違いは僅かといえる。λ=10〜30μmにおいて、消光比60dB以上が得られる。
【0090】
(B)三重格子構造
図21に、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、二重格子構造となっている偏光子の、入射波長に対する透過損失特性の計算結果を示す。この図21中において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0091】
中間層Siの厚さをD=2.5μmと仮定する。断面形状による特性を比較すると、今回用いたパラメータでは、三角波形状の方が正弦波形状に比べ高消光比である。λ=10〜30μmにおいて、消光比70dB以上が得られる。
【0092】
[解析例5]
(金属層厚の割合が変化した場合の透過損失特性)
図22に示すように、二重格子構造の偏光子20において、金属層22と金属層24の厚さをそれぞれt1、t2とする。また、入射波長λを10μm、周期構造の周期Λを2.5μ、アスペクト比h/Λを1、中間層23の厚さDを1.5μmとし、金属層22及び金属層24をAl、基材11及び中間層13をSiと仮定する。
【0093】
このような条件で、周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状である二重格子構造となっている偏光子の、金属層の合計の厚さtを20nmとし、各金属層の厚さt1、t2に対する透過損失特性を求めると、図23に示すようになる。この図23において、実線は周期構造の断面が正弦波形状の場合の特性を示しており、破線は周期構造の断面が三角波形状の場合の特性を示している。
【0094】
周期構造の断面が正弦波形状及び三角波形状のいずれの断面形状においても、t1及びt2が10nm付近のときに、TE波の透過損失が最も高くなり、TM波の透過損失が最も低くなる。以上より,金属層厚の割合は二重格子構造の場合、t1=t2=t/2となるように、同様の厚さとすることが望ましい。
【0095】
[解析例6]
(波長に対する中間層厚依存性)
二重及び三重格子構造の偏光子において、波長に応じて構造を変え、構造パラメータを中間層の合計の厚さDとして数値解析を行った。
【0096】
(A)二重格子構造
上述の図5は、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、二重格子構造となっている偏光子の、波長λが1μmの場合での中間層の厚さに対する透過損失特性の計算結果を示す。周期構造の周期Λを250nm、アスペクト比h/Λを1、金属層の合計の厚さt=18nm(t/2=9nm)、金属層をAl(n=1.35、κ=9.58)、基材をTsurupica(登録商標)(n=1.53、κ=0)、中間層をSiO2(n=1.45、κ=0)と仮定する。
【0097】
中間層の厚さDの増加に伴い、TM波の透過損失は減少し、D>200nmでは一定となる。一方、TE波の透過損失は、Dの増加に伴い、中間層厚による干渉を繰り返し波打った特性となる。D=150nm付近でTE波の透過損失は最大となり、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が約5dB向上する。
【0098】
図24に、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、二重格子構造となっている偏光子の、波長λが20μmの場合での中間層の厚さに対する透過損失特性の計算結果を示す。周期構造の周期Λを5μm、アスペクト比h/Λを1、金属層の合計の厚さt=18nm(t/2=9nm)、金属層をAl(n=60.7、κ=147)、基材及び中間層をSi(n=3.4、κ=0)と仮定する。
【0099】
中間層の厚さDの増加に伴い、TM波の透過損失は減少する。一方、TE波の透過損失はDの増加とともに増加し、D=3μm付近で最大となり、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が20dB以上向上する。
【0100】
以上より、二重格子構造の場合、中間層厚を波長λが1μmの場合で中間層の厚さDを150nmとし、λ=20μmでD=3μmとすることが望ましく、上述の解析例1(A)の結果からλ=10μmにおいてはD=1.5μmとすることで最良となるため、波長に対して中間層厚をD=0.15λと設定したときに、TE波の透過損失が最大になると考えられる。また、これらの上述の図5、図24から、中間層の厚さDを0.08λ〜0.25λ程度にすれば、良好な特性を得ることができる。
【0101】
(B)三重格子構造
図25に、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、三重格子構造となっている偏光子の、波長λが1μmでの中間層の厚さに対する透過損失特性の計算結果を示す。周期構造の周期Λを250nm、アスペクトh/Λを1、金属層の合計の厚さt=18nm(t/3=6nm)、金属層をAl、基材をTsurupica(登録商標)、中間層をSiO2と仮定する。
【0102】
中間層の合計の厚さDの増加に伴い、TM波の透過損失は減少する。周期構造の断面の形状が正弦波形状の場合、D=400nm付近でTM波の透過損失が増加しているのは、特定の中間層厚において干渉が起きているためと考えられる。一方、TE波の透過損失はDの増加とともに増加し、正弦波形状の場合には、D=200nm付近で最大となる。三角波形状の場合には、D=250nm付近で最大となる。三角波状の断面形状では正弦波状に比べ、TE波の透過損失が高くなっている。D=0(単層膜)のときに比べ、正弦波形状で消光比が約5dB向上、三角波形状で約7dB向上する。
【0103】
図26に、正弦波形状及び三角波形状の断面を持ち、三重格子構造となっている偏光子の、波長λが20μmでの中間層の厚さに対する透過損失特性の計算結果を示す。周期構造の周期Λを5μm、アスペクト比h/Λを1、金属層の合計の厚さt=18nm(t/3=6nm)、金属層をAl、基材及び中間層をSiと仮定する。
【0104】
中間層の合計の厚さDの増加に伴い、TM波の透過損失は減少する。一方、TE波の透過損失はDの増加とともに増加し、正弦波形状の場合にはD=5μm付近で最大となる。三角波形状の場合にはD=6μm付近で最大となり、D=0(単層膜)のときに比べ、消光比が40dB以上向上する。三角波状の断面形状では正弦波状に比べ、TE波の透過損失が高く、D<6μmのときTM波の透過損失が低くなっている。
【0105】
以上より、三重格子構造の場合、正弦波形状では中間層厚を波長λ=1μmでD=200nm、波長λ=20μmでD=5μmとすることが望ましい。また、三角波形状では波長λ=1μmでD=250nm、波長λ=20μmでD=6μmとすることが望ましい。上述の解析例2(A)の結果からλ=10μmにおいてはD=2.5μmとすることで最良となるため、波長に対して中間層の合計の厚さDを、正弦波形状の場合ではD=0.20λ〜0.25λ、三角波形状の場合ではD=0.25λ〜0.30λと設定したときに、TE波の透過損失が最大になると考えられる。
【0106】
[解析例7]
(中間層を厚くした場合)
多重格子構造において、中間層が非常に厚くなったとき、一層当たりの金属層厚とした金属単層膜の偏光子における透過損失を倍とした値に漸近するかを確認する。上述の図10、図27及びこれらをまとめた図28に、正弦波状及び三角波状の断面形状を持ち、二重格子構造となっている偏光子の、中間層の厚さ(D=0〜3μm[上述の図10]、D=35〜50μm[図27])に対する透過損失特性の計算結果を示す。
【0107】
ここで、波長λを10μm、周期構造の周期Λを2.5μm、アスペクト比h/Λ=1、金属層の合計の厚さt=18nm(t/2=9nm)とし、金属層をAl、基材及び中間層をSiと仮定する。
【0108】
中間層の厚さDが増加すると、TM波の透過損失は、どちらの断面形状においても0.5dB以下で安定しているが、TEの透過損失は、Dとともに増加し30〜40dBとなっている。ここで、t=9nmである金属単層膜の偏光子の損失を2倍すると、正弦波形状では、TE波の透過損失47.3dB、TM波の透過損失0.504dB、三角波形状では、TE波の透過損失49.2dB、TM波の透過損失0.220dBである。以上より、Dが増加したとき、TM波の透過損失は、金属単層膜の特性の2倍に漸近しているといえる。TE波の透過損失は、D=50μmではまだ十分に漸近していないが、さらにDが増加した場合、漸近していくと考えられる。
【0109】
(結論)
以上説明したように、金属薄膜サブ波長多重格子構造偏光子を提案した。中赤外域における偏光特性の数値解析結果について報告した。数値解析により、λ=10μmにおいて、中間層Si(屈折率3.4)の厚さを二重格子構造の場合D=1.5μm(図10より、D=波長λ/(2×屈折率)、三重格子構造の場合D=2.5μm(図16より)とすることで消光比が最大となる。すなわち、中間層の素材をSiとした場合には、波長に対する中間層厚依存性により、二重格子の場合D=0.15λ、三重格子の場合D=0.20λ〜0.25λ(正弦波状)、D=0.25λ〜0.30λ(三角波状)とすることで高い偏光特性が得られる。これらのシミュレーション結果より、中間層の合計の厚さDは、これらの値の±60%程度の値が妥当であると考えられる。
【0110】
なお、この値は、中間層の屈折率に応じて変わるため、中間層の材質をSiO2をとした場合には、三重格子の場合には、中間層の合計の厚さの上限をD=0.58λ(正弦波状)程度、D=0.7λ(三角波状)とすることが望ましい。
【0111】
また、これらのシミュレーション結果により、λ=10〜30μmにおいて、二重格子構造で消光比理論値60dB以上、三重格子構造で70dB以上が得られ、金属薄膜サブ波長格子を多重化することで、中赤外域において良好な偏光特性が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0112】
3 表面
4 尾根部
5 谷部
10 偏光子
11 基材
12 金属層
13 中間層
14 金属層
20 偏光子
21 基材
22 金属層
23 中間層
24 金属層
【0113】
Λ 構造周期のピッチ
h 周期構造(三角波形状又は正弦波形状)の高さ
D 中間層
t 金属層の合計の厚さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を有した基材と、前記周期構造の表面に中間層を介して複数設けられた金属層と、を有することを特徴とする偏光子。
【請求項2】
前記周期構造の断面が三角波形状又は正弦波形状である、請求項1に記載の偏光子。
【請求項3】
前記金属層が二層であり、前記中間層の厚さが0より大きくλ/n以下である、請求項1または2に記載の偏光子。
【請求項4】
基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を前記基材面に形成する工程と、
前記周期構造の表面に金属層を形成する工程と、
前記金属層の表面に中間層を形成する工程と、
前記中間層の表面に金属層を形成する工程と、を有することを特徴とする偏光子の製造方法。
【請求項5】
前記周期構造の断面が三角波形状又は正弦波形状である、請求項4に記載の偏光子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光子を用いたことを特徴とする光モジュール。
【請求項1】
基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を有した基材と、前記周期構造の表面に中間層を介して複数設けられた金属層と、を有することを特徴とする偏光子。
【請求項2】
前記周期構造の断面が三角波形状又は正弦波形状である、請求項1に記載の偏光子。
【請求項3】
前記金属層が二層であり、前記中間層の厚さが0より大きくλ/n以下である、請求項1または2に記載の偏光子。
【請求項4】
基材面に所定の角度で入射する電磁波に対して占有率が連続的に変化する単位構造をλ(入射する電磁波の波長)より小さな周期で繰り返す周期構造を前記基材面に形成する工程と、
前記周期構造の表面に金属層を形成する工程と、
前記金属層の表面に中間層を形成する工程と、
前記中間層の表面に金属層を形成する工程と、を有することを特徴とする偏光子の製造方法。
【請求項5】
前記周期構造の断面が三角波形状又は正弦波形状である、請求項4に記載の偏光子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光子を用いたことを特徴とする光モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−177797(P2012−177797A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40704(P2011−40704)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
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