説明

偏光板用保護フィルム

【課題】高温高湿環境下においても、剥離等による変形がなく、表示画面の縁近傍での光漏れ、色むら、着色等による視認不良の無い、耐擦傷性に優れた偏光板用保護フィルム、偏光板の提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂層がk個(kは2以上の整数)積層されてなるフィルムの製造方法で、k個の熱可塑性樹脂層のうち少なくとも1層がアクリル樹脂を含有する層であり、第i番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率ni(380)及び波長780nmにおける屈折率ni(780)、並びに、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率ni+1(380)及び波長780nmにおける屈折率ni+1(780)が、式〔1〕の関係を有する、共押出成形による偏光板用保護フィルムの製造方法。||ni(380)−ni+1(380)|−|ni(780)−ni+1(780)||≦0.02(ただし、iは1〜k−1の整数)式〔1〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関し、さらに詳細には、高温高湿環境下においても、剥離等による変形がなく;表示画面の縁近傍での光漏れ、色むら、着色等による視認不良の無い、耐擦傷性に優れた、液晶表示装置等に好適な偏光板用保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等に用いられる偏光板は、偏光子と保護フィルムとからなる積層体である。
この偏光板を構成する偏光子としては、ポリビニルアルコールを溶液流延法により製膜したフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ、ホウ酸溶液中で延伸させたフィルムが通常使用されている。
一方、偏光板を構成する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムが広く用いられている。しかし、トリアセチルセルロースフィルムは、防湿性とガスバリア性が悪いので、偏光板の耐久性、耐熱性、機械的強度などが不十分である。
【0003】
偏光板の耐久性や耐熱性を向上させるために、トリアセチルセルロースフィルム以外の保護フィルムを使用することが提案されている。例えば、特許文献1には、ノルボルネン系樹脂層と、ヘーズの値が小さい樹脂層とからなる積層フィルムを保護フィルムとして用いることが提案されている。そして、この保護フィルムを、ポリビニルアルコールを含有してなる偏光子に、ノルボルネン系樹脂層の面を向けて、貼り付けて、偏光板を得ることが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、トリアセチルセルロースよりも吸湿性が小さく正の光弾性定数を有する樹脂層と、トリアセチルセルロースよりも吸湿性が小さく負の光弾性定数を有する樹脂層とが積層された、光弾性定数が小さい保護フィルムが提案されている。そして、この保護フィルムをポリビニルアルコールを含有してなる偏光子に貼着してなる偏光板が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−115085号公報
【特許文献2】特開2000−206303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1や特許文献2に開示されている技術だけで得られる保護フィルムでは、液晶表示装置等に取り付けたときに、青みを帯びたり、干渉縞が生じたり、摩擦によって傷が付いたりして、視認側からの視認性が不良となることがあった。また偏光板に好ましくない応力が加わったときに、表示画面の縁近傍に光漏れ、色むら着色などが生じ、視認性が不良となることがあった。さらに高温高湿環境下に偏光板を放置しておくと、剥離等の変形が生じ、やはり視認性が不良となることがあった。
【0007】
従って、本発明の目的は、光漏れ、虹むら、色むら、着色、干渉縞等による視認不良が無く、耐擦傷性や色再現性に優れ、高温高湿環境下においても剥離等の変形がない、液晶表示装置等に好適な偏光板用保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記目的を達成するために検討した結果、熱可塑性樹脂層がk個(kは2以上の整数)積層されてなるフィルムであって、第i番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率ni(380)及び波長780nmにおける屈折率ni(780)が、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率ni+1(380)及び波長780nmにおける屈折率ni+1(780)と、特定の関係を満足するフィルムを、偏光子に積層することによって、干渉縞が生じ難く、色再現性、耐擦傷性に優れていることを見出した。
【0009】
第i番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni(λ)と、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni+1(λ)とが特定の関係を満足し、且つ光弾性係数の絶対値が10×10-12Pa-1以下であるフィルムを、偏光子に積層することによって、表示画面の縁近傍での光漏れ、色むら、着色等による視認不良が無く、耐擦傷性に優れた偏光板が得られることを見出した。
【0010】
該熱可塑性樹脂層をヘイズ0.5%以下の材料で且つ非晶質熱可塑性樹脂を含んでいる材料で形成し、加えて第1番目の熱可塑性樹脂層が偏光子に面するように偏光子と積層され、第i番目の熱可塑性樹脂層の湿度膨張係数βiと第i+1番目の熱可塑性樹脂層の湿度膨張係数βi+1とが特定の関係を満たす保護フィルムを用いて得られる偏光板は、高温高湿環境下においても偏光子と保護フィルムとが剥離しないことを見出した。
【0011】
熱可塑性樹脂層が負の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂層及び正の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂層をそれぞれ少なくとも一層含み、第i番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni(λ)が、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni+1(λ)と、特定の関係を満足するフィルムを、偏光子と積層することによって、表示画面の縁近傍での光漏れ、色むら、着色等による視認不良が無い偏光板が得られることを見出した。
【0012】
偏光子に最も近い位置にある熱可塑性樹脂層(第1番目の熱可塑性樹脂層)の波長380nmにおける屈折率n1(380)及び波長780nmにおける屈折率n1(780)と、偏光子に含有されるポリビニルアルコールの波長380nmにおける屈折率nb(380)及び波長780nmにおける屈折率nb(780)とが、特定の関係を満たす保護フィルムと偏光子とを積層させた偏光板は、虹むら、着色等の光の干渉が生じ難くなることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は、次のものを含む。
(1) 熱可塑性樹脂層がk個(kは2以上の整数)積層されてなるフィルムであって、 第i番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率ni(380)及び波長780nmにおける屈折率ni(780)、並びに、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率ni+1(380)及び波長780nmにおける屈折率ni+1(780)が、式〔1〕の関係を有する、偏光板用保護フィルム。
||ni(380)−ni+1(380)|
−|ni(780)−ni+1(780)||≦0.02
(ただし、iは1〜k−1の整数) 式〔1〕
(2) 第i番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni(λ)、及び、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni+1(λ)が、式〔2〕の関係を有し、且つ光弾性係数の絶対値が10×10-12Pa-1以下である(1)に記載の偏光板用保護フィルム。
|ni(λ)−ni+1(λ)|≦0.05
(ただし、iは1〜k−1の整数) 式〔2〕
(3) 負の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂層及び正の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂層をそれぞれ少なくとも一層含む(1)〜(2)のいずれかに記載の偏光板用保護フィルム。
【0014】
(4) 負の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂層及び正の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂層をそれぞれ少なくとも一層含んでなり、
第i番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni(λ)が、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni+1(λ)と、式〔2〕の関係を有する、(1)に記載の偏光板用保護フィルム。
|ni(λ)−ni+1(λ)|≦0.05
(ただし、iは1〜k−1の整数) 式〔2〕
(5) 熱可塑性樹脂層がk個(kは2以上の整数)積層されてなるフィルムであって、
前記k個の熱可塑性樹脂層は、いずれもヘイズ0.5%以下の材料で形成され、且つ非晶質熱可塑性樹脂を含んでおり、
第i番目の熱可塑性樹脂層の湿度膨張係数βiと第i+1番目の熱可塑性樹脂層の湿度膨張係数βi+1とが式〔3〕の関係を満たす偏光板用保護フィルム。
|βi−βi+1|≦40 ppm/%RH 式〔3〕
(ただし、iは1〜k−1の整数)
(6) 前記k個の熱可塑性樹脂層の少なくとも1層が、吸水率0.5%以下の熱可塑性樹脂層である(1)〜(5)のいずれかに記載の偏光板用保護フィルム。
(7) 共押出成形で得られた(1)〜(6)のいずれかに記載の偏光板用保護フィルム。
(8) 第k番目の熱可塑性樹脂層の表面に、直接または間接的に、さらに反射防止層を有する(1)〜(7)のいずれかに記載の偏光板用保護フィルム。
【0015】
(9) (1)〜(8)のいずれかに記載の偏光板用保護フィルムと偏光子とを積層させてなる偏光板。
(10) 偏光子がポリビニルアルコールを含有し、
前記偏光板用保護フィルムが第1番目の熱可塑性樹脂層を偏光子側に向けて積層されており、該第1番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率n1(380)及び波長780nmにおける屈折率n1(780)、並びに、
前記ポリビニルアルコールの波長380nmにおける屈折率nb(380)及び波長780nmにおける屈折率nb(780)が、式〔4〕の関係を満足する(9)に記載の偏光板。
||n1(380)−nb(380)|
−|n1(780)−nb(780)||≦0.02 式〔4〕
(11) 前記偏光板用保護フィルムの第1番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率n1(λ)、及び、前記偏光子に含有されるポリビニルアルコールの380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率nb(λ)が、式〔5〕を満たす(9)又は(10)に記載の偏光板。
|n1(λ)−nb(λ)|≦0.04 式〔5〕
(12) 前記偏光板用保護フィルムの第k番目の熱可塑性樹脂層の表面に深さ50nm以上で且つ幅500nm以下の線状凹部が無い(9)〜(11)のいずれかに記載の偏光板。
(13) 前記偏光板用保護フィルムの第k番目の熱可塑性樹脂層の表面に高さ50nm以上で幅が500nm以下の線状凸部が無い(9)〜(12)のいずれかに記載の偏光板。
【0016】
(14) (9)〜(13)のいずれかに記載の偏光板と液晶パネルとを備える液晶表示装置。
(15) 前記偏光板が液晶パネルの視認側に備えられる(14)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の偏光板用保護フィルムは、干渉縞が起きにくく、色再現性に優れ、摩擦による傷の発生が小さいので、偏光子と積層することによって、視認性不良となることが無い偏光板を得ることができる。さらに本発明の偏光板用保護フィルムは、熱や変形による応力によって偏光板の位相差が変化しにくいので、予測不能の好ましくない応力が加わっても、表示画面の縁近傍で、光漏れ、色むら、着色等がない偏光板を得ることができる。
本発明の偏光板は、変形が起きにくく、摩擦による傷の発生が小さいので、視認性が良好である。また過酷な環境下においても偏光子と保護フィルムとが剥離し難い。さらに本発明の偏光板は、虹むら、着色等の光の干渉が起きにくく、摩擦による傷の発生が小さいので、視認性が良好である。
そして、本発明の偏光板は特に大面積の液晶表示装置等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施例及び比較例で用いた熱可塑性樹脂層の屈折率n(λ)を示す図である。
【図2】本実施例及び比較例で用いたポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)と他の熱可塑性樹脂層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示す図である。
【図3】本実施例及び比較例で用いたポリビニルアルコールの屈折率n(λ)と熱可塑性樹脂層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示す図である。
【図4】本実施例及び比較例で行った偏光度及び透過率の測定点を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
PMMA:ポリメチルメタクリレート樹脂; COP:脂環式オレフィンポリマー; TAC:トリアセチルセルロース; PC:ポリカーボネート樹脂; PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂; R1−PMMA:弾性体粒子配合ポリメチルメタクリレート樹脂
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の偏光板用保護フィルムは、熱可塑性樹脂層がk個(kは2以上の整数)積層されてなるものである。すなわち第1番目の熱可塑性樹脂層から第k番目の熱可塑性樹脂層までがこの順に積層されてなるものである。kは、通常2〜7、好ましくは3〜5である。
フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、脂環式オレフィンポリマーなどから選択することができる。
【0021】
なお、脂環式オレフィンポリマーは、主鎖及び/又は側鎖に脂環構造を有するポリマーである。脂環式オレフィンポリマーの具体例としては、特開平05−310845号公報に記載されている環状オレフィンランダム多元共重合体、特開平05−97978号公報に記載されている水素添加重合体、特開平11−124429号公報(米国特許第6,511,756号)に記載されている熱可塑性ジシクロペンタジエン系開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。また例示した熱可塑性樹脂が全て本発明に適用できるということではなく、同種の熱可塑性樹脂の中には下記の要件を満たすものと満たさないものとがあるので、下記要件を満たすものを選択するのである。
また、本発明に用いる熱可塑性樹脂は、顔料や染料のごとき着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの配合剤が適宜配合されたものであってもよい。これら配合剤のうち滑剤が好ましく用いられる。
【0022】
滑剤としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、及び硫酸ストロンチウムなどの無機粒子、ならびに、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどの有機粒子が挙げられる。滑剤を構成する粒子として、有機粒子が好ましく、この中でもポリメチルメタクリレート製の粒子が特に好ましい。
【0023】
滑剤としては、ゴム状弾性体からなる弾性体粒子を用いることができる。ゴム状弾性体としては、アクリル酸エステル系ゴム状重合体、ブタジエンを主成分とするゴム状重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。アクリル酸エステル系ゴム状重合体としてはブチルアクリレ−ト、2−エチルヘキシルアクリレ−ト等を主成分とするものがある。これらの内ブチルアクリレ−トを主成分としたアクリル酸エステル系重合体及びブタジエンを主成分とするゴム状重合体が好ましい。弾性体粒子は、二種の重合体が層状になったものであってもよく、その代表例としては、ブチルアクリレ−ト等のアルキルアクリレ−トとスチレンのグラフト化ゴム弾性成分と、ポリメチルメタクリレ−ト及び/又はメチルメタクリレ−トとアルキルアクリレ−トの共重合体からなる硬質樹脂層とがコア−シェル構造で層を形成している弾性体粒子が挙げられる。
【0024】
本発明に用いることのできる弾性体粒子は、熱可塑性樹脂中に分散した状態における数平均粒径が通常2.0μm以下、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.1〜0.5μmである。弾性体粒子の一次粒子径が小さくても、凝集などによって形成される二次粒子の数平均粒径が大きいと、偏光板用保護フィルムはヘイズ(曇り度)が高くなり、光線透過率が低くなるので、表示画面用には適さなくなる。また、数平均粒径が小さくなりすぎると可撓性が低下する傾向にある。
【0025】
本発明において、弾性体粒子の波長380nm〜780nmにおける屈折率np(λ)は、マトリックスとなる熱可塑性樹脂の波長380nm〜780nmにおける屈折率nr(λ)との間に、式〔6〕の関係を満たすことが好ましい。
|np(λ)−nr(λ)|≦0.05 式〔6〕
特に、|np(λ)−nr(λ)|≦0.045であることがより好ましい。なお、npλ)及びnr(λ)は、波長λにおける主屈折率の平均値である。|np(λ)−nr(λ)|の値が上記値を超える場合には、界面での屈折率差によって生じる界面反射により、透明性を損なうおそれがある。
【0026】
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、1mm厚における、400〜700nmの可視領域の光の透過率が80%以上のものが好ましく、85%以上のものがより好ましく、90%以上のものがさらに好ましい。熱可塑性樹脂は、透明性の観点から非晶性の樹脂が好ましい。また、ガラス転移温度が60〜200℃であるものが好ましく、100〜180℃であるものがより好ましい。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。
【0027】
本発明の偏光板用保護フィルムは、第i番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率ni(380)及び波長780nmにおける屈折率ni(780)、並びに、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率ni+1(380)及び波長780nmにおける屈折率ni+1(780)が、式〔1〕の関係を有するものである。
||ni(380)−ni+1(380)|
−|ni(780)−ni+1(780)||≦0.02
(ただし、iは1〜k−1までの整数) 式〔1〕
【0028】
すなわち、保護フィルムを構成する隣接する熱可塑性樹脂層相互の可視光領域の上限付近及び下限付近における屈折率の差がそれほど離れていないということである。特に||ni(380)−ni+1(380)|−|ni(780)−ni+1(780)||≦0.01であることが好ましい。なお、ni(380)及びni+1(380)は波長380nmにおける第i番目の熱可塑性樹脂層及び第i+1番目の熱可塑性樹脂層の主屈折率の平均値である。ni(780)及びni+1(780)は波長780nmにおける第i番目の熱可塑性樹脂層及び第i+1番目の熱可塑性樹脂層の主屈折率の平均値である。なお、相互に隣接する第i番目の熱可塑性樹脂層と第i+1番目の熱可塑性樹脂層とは直接に接していてもよいし、後記の接着層を介して接していてもよい。
【0029】
本発明の偏光板用保護フィルムは、前記第i番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni(λ)、及び、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni+1(λ)が、式〔2〕の関係を有し、且つ光弾性係数の絶対値が10×10-12Pa-1以下であることが好ましい。
|ni(λ)−ni+1(λ)|≦0.05
(ただし、iは1〜k−1の整数) 式〔2〕
【0030】
本発明の偏光板用保護フィルムにおいて、上記式〔2〕の関係を有し、且つ光弾性係数が上記範囲であることにより、熱や変形による応力によって偏光板の位相差が変化しにくいので、予測不能の好ましくない応力が加わっても、表示画面の縁近傍で、光漏れ、色むら、着色等がない偏光板を得ることができる。
なお、上記式〔2〕は、|ni(λ)−ni+1(λ)|≦0.045であることがより好ましい。
【0031】
前記光弾性係数とは、応力を受けたときに生じる複屈折の応力依存性を示す値であり、屈折率の差Δnが、応力σと光弾性係数Cの積で求められる関係を有する。この光弾性係数は、温度20℃±2℃、湿度60±5%の条件下で、光弾性定数測定装置を用いて測定することができる。なお、本発明において、光弾性係数の絶対値は、より好ましくは7×10-12Pa-1以下、特に好ましくは5×10-12Pa-1以下である。
【0032】
本発明の偏光板用保護フィルムは、積層された熱可塑性樹脂層の内の少なくとも1層が負の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂層であり、且つ別の少なくとも1層が正の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂層であることが好ましい。
【0033】
負の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂層は、正の応力σを受けたときにΔnが負となる樹脂層である。正の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂層は、正の応力σを受けたときにΔnが正となる樹脂層である。各熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、上記係数を持つ層を形成できるものであれば、特に制限されず、一種類の樹脂であってもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。二種以上の組み合わせは、同符号の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂同士を組み合わせたものだけでなく、負の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂と正の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂とを組み合わせたものであってもよい。
【0034】
負の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン、ポリ−αメチルスチレン、エチレン−テトラシクロドデセン付加共重合体などが挙げられる。
正の光弾性係数を有する熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、テトラシクロドデセンやジシクロペンタジエンなどのノルボルネン構造含有モノマーの開環重合体及びその水素化物、トリアセチルセルロースなどが挙げられる。
【0035】
本発明の偏光板用保護フィルムは、前記k個の熱可塑性樹脂層が、いずれもヘイズ0.5%以下の材料で形成され、且つ非晶質熱可塑性樹脂を含んでおり、第i番目の熱可塑性樹脂層の湿度膨張係数βiと第i+1番目の熱可塑性樹脂層の湿度膨張係数βi+1とが式〔3〕の関係を満たすことが好ましい。
|βi−βi+1|≦40 ppm/%RH 式〔3〕
本発明の偏光板用保護フィルムにおいて、前記熱可塑性樹脂がいずれもヘイズ0.5%以下の材料で形成され、且つ非晶質熱可塑性樹脂を含んでおり、前記式〔3〕の関係を満たすことにより、変形が起きにくく、摩擦による傷の発生が小さいので、視認性が不良となることが無く、また過酷な環境下においても偏光子と保護層とが剥離することが無い偏光板を得ることができる。
【0036】
該k個の熱可塑性樹脂層は、いずれもヘイズが0.1%以下の材料で形成されていることがさらに好ましい。ヘイズはJIS(日本工業規格、以下同じ) K7105に準拠して、通常の射出成形法により(表面に凸凹の無い成形金型を用いて)作製した厚み2mmの平板5枚を、市販の濁度計、例えば、日本電色工業社製「濁度計NDH−300A」を用いて測定し、その算術平均値をヘイズの値とする。
【0037】
非晶質熱可塑性樹脂は、融点を有しない熱可塑性樹脂であり、前記熱可塑性樹脂の中から選択することができる。非晶質熱可塑性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂層中に60〜100重量%であることが好ましい。なお、上記式〔3〕は、|βi−βi+1|≦30 ppm/%RHであることがより好ましい。
【0038】
本発明の偏光板用保護フィルムは、k個の熱可塑性樹脂層のうち少なくとも1層の吸水率が好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.1%以下である。吸水率が低いものを偏光板用保護フィルムに用いると偏光板の耐久性が高くなる。熱可塑性樹脂層の吸水率は、JIS K7209に準拠して求めることができる。
【0039】
また、本発明の偏光板用保護フィルムは、透湿度が、好ましくは1〜200g/(m2・24hr)、より好ましくは5〜180g/(m2・24hr)、特に好ましくは10〜150g/(m2・24hr)である。透湿度が低すぎると積層時に用いた接着剤の乾燥が不十分となることがある。逆に、透湿度が高すぎると偏光子が空気中の水蒸気を吸いやすくなることがある。従って、透湿度を上記範囲にすることにより偏光板の耐久性を向上させることができる。なお、上記透湿度は、JIS Z0208によるカップ法を用いて、温度40℃、湿度90%で測定できる。
【0040】
本発明の好ましい偏光板用保護フィルムが、第k番目の熱可塑性樹脂層と第1番目の熱可塑性樹脂層との間に、少なくとも1層の熱可塑性樹脂層(以下、「中間層」という。)を有するものである。中間層は、第k番目の熱可塑性樹脂層及び第1番目の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂とは異なる種類の熱可塑性樹脂で構成してもよいし、同じ種類の熱可塑性樹脂で構成してもよい。
また、偏光板用保護フィルムを偏光子に設けて偏光板を構成した際に、偏光板の反り、湾曲、丸まりなどを防ぐために、第k番目の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂と、第1番目の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂とは、同じ種類の熱可塑性樹脂から選択することが好ましい。
【0041】
第k番目の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂は、硬いものが好ましい。具体的には鉛筆硬度(試験荷重を500gにした以外は、JIS K5600−5−4に準拠)で、2Hより硬いものが好ましい。第k番目の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂として、最も好ましいものはポリメチルメタクリレート樹脂などのアクリル樹脂から選択されるものである。
【0042】
積層された熱可塑性樹脂層は、それぞれ直接に接していても良いし、接着層を介して接していてもよい。接着層は、JIS K7113による引張り破壊強度が40MPa以下の材料からなる層である。接着層は、その平均厚みが、通常0.01〜30μm、好ましくは0.1〜15μmである。接着層を構成する接着剤としては、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、塩化ビニル−酢酸ビニル系接着剤、SEBS系接着剤、エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系接着剤、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体などのメタアクリル酸エステル系接着剤などが挙げられる。
【0043】
本発明の偏光板用保護フィルムを形成する熱可塑性樹脂層は、それぞれの厚みによって特に制限されないが、第k番目の熱可塑性樹脂層の平均厚みは、通常5μm〜100μm、好ましくは10μm〜50μmである。第1番目の熱可塑性樹脂層の平均厚みは、通常5μm〜100μm、好ましくは10μm〜50μmである。また必要に応じて設けられる中間層の平均厚みは、通常、5μm〜100μm、好ましくは10μm〜50μmである。偏光板用保護フィルム全体の平均厚みは、通常20μm〜200μm、好ましくは40μm〜100μmである。
【0044】
さらに、第k番目の熱可塑性樹脂層の平均厚みと、第1番目の熱可塑性樹脂層の平均厚みとは、ほぼ等しいことが好ましい。具体的には第k番目の熱可塑性樹脂層の平均厚みと第1番目の熱可塑性樹脂層の平均厚みとの差の絶対値が、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
中間層の平均厚みと、第k番目の熱可塑性樹脂層の平均厚み又は第1番目の熱可塑性樹脂層の平均厚みとの比は、特に制限されないが、好ましくは5:1〜1:5である。
【0045】
本発明の偏光板用保護フィルムは、その面内レターデーションRe(Re=d×(nx−ny)で定義される値、nx、nyは偏光板用保護フィルムの面内主屈折率(nxは面内の遅相軸の屈折率、nyは面内で遅相軸と直交する方向の屈折率である。);dは偏光板用保護フィルムの平均厚みである)が小さいものが好ましく、具体的には波長550nmにおいて面内レターデーションReが好ましくは50nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0046】
本発明の偏光板用保護フィルムは、その膜厚方向のレターデーションRth(Rth=d×((nx+ny)/2−nz)で定義される値;nxは面内の遅相軸の屈折率、nyは面内で遅相軸と直交する方向の屈折率、nzは膜厚方向の屈折率、dは偏光板保護フィルムの平均厚みである。)の絶対値が小さいものが好ましい。具体的には、当該偏光板用保護フィルムの膜厚方向レターデーションRthは、波長550nmにおいて−10nm〜+10nmであることが好ましく、−5nm〜+5nmであることがより好ましい。
【0047】
本発明の偏光板用保護フィルムは、その製法によって特に制限されず、例えば、単層の熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせることによって得られたもの、2以上の熱可塑性樹脂を共押出成形して得られたもの、熱可塑性樹脂フィルムに熱可塑性樹脂溶液をキャストして得られたものなどが挙げられるが、生産性の観点から共押出成形で得られたものが好ましい。
【0048】
本発明の偏光板用保護フィルムは、第k番目の熱可塑性樹脂層の表面に、直接又は間接的に、さらに反射防止層を有することが好ましい。反射防止層の平均厚みは、好ましくは0.01〜1μm、より好ましくは0.02〜0.5μmである。反射防止層は、公知のものから選択できる。例えば、第k番目の熱可塑性樹脂層よりも屈折率の小さい、好ましくは屈折率1.30〜1.45の低屈折率層を積層したもの、無機化合物からなる低屈折率層と無機化合物からなる高屈折率層とを繰り返し積層したもの、高い表面硬度を有する高屈折率層の上に微小空気層を有する材料で形成された低屈折率層を積層したものなどが挙げられる。本発明においては、高い表面硬度を有する高屈折率層の上に微小空気層を有する材料で形成された低屈折率層を積層したものが好ましい。
【0049】
そこで、高い表面硬度を有する高屈折率層の上に微小空気層を有する材料で形成された低屈折率層を積層した反射防止層について説明する。なお、高い表面硬度を有する高屈折率層の上に微小空気層を有する材料で形成された低屈折率層を積層した反射防止層は低屈折率層を視認側に向けて積層される。
本発明に好適に用いられる低屈折率層は、微小空気層を有する材料で形成されたものである。低屈折率層の厚みは、通常10〜1000nm、好ましくは30〜500nmである。
微小空気層を有する材料としては、エアロゲルが挙げられる。エアロゲルは、マトリックス中に微小な気泡が分散した透明性多孔質体である。気泡の大きさは大部分が200nm以下であり、気泡の含有量は、通常10〜60体積%、好ましくは20〜40体積%である。エアロゲルには、シリカエアロゲルと、中空微粒子をマトリックス中に分散させた多孔質体とがある。
【0050】
シリカエアロゲルは、米国特許第4,402,927号公報、米国特許第4,432,956号公報および米国特許第4,610,863号公報などに開示されているように、アルコキシシランの加水分解重合反応によって得られたシリカ骨格からなるゲル状化合物を、アルコールあるいは二酸化炭素などの溶媒(分散媒)で湿潤させ、この溶媒を超臨界乾燥で除去することによって製造することができる。また、シリカエアロゲルは、米国特許第5,137,279号公報、米国特許5,124,364号公報などに開示されているように、ケイ酸ナトリウムを原料として、上記と同様にして製造することができる。
【0051】
本発明においては、特開平5−279011号公報および特開平7−138375号公報(米国特許第5,496,527号)に開示されているようにして、アルコキシシランの加水分解、重合反応によって得られたゲル状化合物を疎水化処理して、シリカエアロゲルに疎水性を付与することが好ましい。この疎水性を付与した疎水性シリカエアロゲルは、湿気や水などが浸入し難くなり、シリカエアロゲルの屈折率や光透過性などの性能が劣化することを防ぐことができる。
【0052】
中空微粒子をマトリックス中に分散させた多孔質体としては、特開2001−233611号公報および特開2003−149642号公報に開示されているような多孔質体が挙げられる。なお、中空微粒子をマトリックス中に分散させた多孔質体は、前記熱可塑性樹脂層には含まれないものとする。
【0053】
マトリックスに用いる材料は、中空微粒子の分散性、多孔質体の透明性、多孔質体の強度などの条件に適合する材料から選択される。例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルコキシシランなどの加水分解性有機珪素化合物およびその加水分解物などが挙げられる。
これらの中でも中空微粒子の分散性、多孔質体の強度からアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、加水分解性有機珪素化合物およびその加水分解物が好ましい。
【0054】
中空微粒子は特に制限されないが、無機中空微粒子が好ましく、特にシリカ系中空微粒子が好ましい。無機中空微粒子を構成する無機化合物としては、SiO2、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、Ce23、P25、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、In23−SnO2、Sb23−SnO2などを例示することができる。
【0055】
中空微粒子の外殻は細孔を有する多孔質なものであってもよく、あるいは細孔が閉塞されて空洞が外殻の外側に対して密封されているものであってもよい。外殻は、内側層と外側層などからなる多層構造であることが好ましい。外側層の形成に含フッ素有機珪素化合物を用いた場合は、中空微粒子の屈折率が低くなるとともに、マトリックスへの分散性もよくなり、さらに低屈折率層に防汚性を付与する効果も生じる。この含フッ素有機珪素化合物の具体例としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0056】
外殻の厚みは通常1〜50nm、好ましくは5〜20nmである。また、外殻の厚みは、無機中空微粒子の平均粒子径の1/50〜1/5の範囲にあることが好ましい。
【0057】
また、空洞には中空微粒子を調製するときに使用した溶媒および/または乾燥時に浸入する気体が存在してもよいし、空洞を形成するための前駆体物質が空洞に残存していてもよい。
【0058】
中空微粒子の平均粒径は特に制限されないが、5〜2,000nmの範囲が好ましく、20〜100nmがより好ましい。ここで、平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察による数平均粒子径である。
【0059】
本発明において、反射防止層が積層された偏光板用保護フィルムは、入射角5°、430〜700nmにおける反射率が2.0%以下であるとともに、550nmにおける反射率が1.0%以下であることが好ましい。
【0060】
本発明においては、高い表面硬度を有する高屈折率層を、第k番目の熱可塑性樹脂層で兼ねることができるし、第k番目の熱可塑性樹脂層の表面に該熱可塑性樹脂層とは別の層(この別に設ける層のことを「ハードコート層」ということがある。)として設けてもよい。高屈折率層の厚さは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは3〜15μmである。前記高屈折率層の屈折率は、1.6以上であることが好ましい。
【0061】
高屈折率層(ハードコート層)は、試験荷重を500gとした以外はJIS K5600−5−4に準拠して測定される鉛筆硬度試験(試験板はガラス板)で「2H」以上の硬度を示す材料から形成される。ハードコート層用材料としては、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系、ウレタンアクリレート系などの有機ハードコート材料;および、二酸化ケイ素などの無機系ハードコート材料;などが挙げられる。なかでも、接着力が良好であり、生産性に優れる観点から、ウレタンアクリレート系および多官能アクリレート系ハードコート材料の使用が好ましい。
【0062】
高屈折率層は、その屈折率nHが、その上に積層する低屈折率層の屈折率nLとの間に、nH≧1.53、及びnH1/2−0.2<nL<nH1/2+0.2、の関係を有することが、反射防止機能を発現させるために好ましい。
【0063】
高屈折率層には、所望により、屈折率の調整、曲げ弾性率の向上、体積収縮率の安定化、耐熱性、帯電防止性、防眩性などの向上を図る目的で、各種フィラーを含有せしめてもよい。さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤などの各種添加剤を配合することもできる。
【0064】
高屈折率層の屈折率や帯電防止性を調整するためのフィラーとしては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、五酸化アンチモン、錫をドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化錫(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)が挙げられる。透明性を維持できるという点から五酸化アンチモン、ITO、IZO、ATO、FTOが好ましいフィラーとして挙げられる。これらフィラーの一次粒子径は通常1nm以上100nm以下、好ましくは1nm以上30nm以下である。
【0065】
防眩性を付与するためのフィラーとしては、平均粒径が0.5〜10μmのものが好ましく、1〜7μmのものがより好ましく、1〜4μmがさらに好ましい。防眩性を付与するフィラーの具体例としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、フッ化ビニリデン樹脂およびその他のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの有機樹脂からなるフィラー;または酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化錫、酸化ジルコニウム、ITO、フッ化マグネシウム、酸化ケイ素などの無機化合物からなるフィラーが挙げられる。
【0066】
本発明の偏光板用保護フィルムにおいては、その表面に防眩手段を設けても良い。
防眩手段を形成した後の本発明の偏光板用保護フィルムは、ヘイズが好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜50%になる。
前記ヘイズは、JIS K7105に準拠して、市販の濁度計、例えば日本電色工業(株)製、NDH−300Aヘーズメーターを用いて測定できる。
【0067】
防眩手段形成後の本発明の偏光板用保護フィルムの透過像鮮明度は、0.5mm幅の光学櫛を使用した場合、50〜l00%、好ましくは60〜100%程度である。透過像鮮明度が前記範囲にあると、透過光のボケが少ないため、高精細表示装置であっても画素の輪郭がボケるのを防止でき、その結果文字ボケを防止できる。
【0068】
透過像鮮明度とは、フィルムを透過した光のボケや歪みを定量化する尺度である。透過像鮮明度は、フィルムからの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出する。すなわち、フィルムが透過光をぼやかす場合、光学櫛上に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。透過像鮮明度の値Cは光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mから次式により定義される。
C(%)=〔(M−m)/(M+m)〕×100
上記Cの値が100%に近づく程、像のボケが小さいことを示す。
前記透過像鮮明度測定の測定装置としては、市販の写像性測定器、例えば、スガ試験機(株)製写像性測定器ICM−1が使用できる。光学櫛としては、0.125〜2mm幅の光学櫛を用いることができる。
なお、本発明では、前記防眩手段形成後の前記透過像鮮明度及びヘイズの双方が、共に前記範囲にあるのが特に好ましい。
【0069】
防眩手段の形成方法は特に制限されず、適宜な防眩手段を採用することができる。例えば、偏光板用保護フィルムに微細凹凸を付与する方法や、屈折率が不連続である領域を含む皮膜層を形成して内部散乱による防眩機能を付与する方法が挙げられる。
微細凹凸を付与する方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、前記偏光板用保護フィルムに直接またはその他の層が積層された状態で、サンドブラストやエンボスロール、化学エッチング等の方式で粗面化処理して微細凹凸を付与する方法や賦形フィルムにより凹凸を転写する方法の他、偏光板用保護フィルムを構成する樹脂中に無機および/または有機の微粒子を分散させる方法や、前記偏光板用保護フィルム上に無機および/または有機の微粒子を含む透明樹脂材料からなる防眩層を形成する方法が挙げられ、上記方法を2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0070】
前記微粒子は、2種類以上用いてもよい。例えば、透明樹脂材料との屈折率差によって拡散効果を発現する微粒子と樹脂層表面に凹凸を形成することにより拡散効果を発現させる微粒子とを併用することができる。
前記微粒子は、偏光板用保護フィルムを構成する樹脂中又は透明樹脂材料中に、均一に分散した形で存在しても、膜厚方向に対して偏在した形であってもよい。また、微粒子は表面から突出する形で存在していても構わないが、透過画像鮮明度の向上の観点から、微粒子の防眩層の表面よりの突出は0.5μm以下とすることが好ましい。
【0071】
屈折率が不連続である領域を含む皮膜層を形成して、内部散乱による防眩機能を付与する方法としては、屈折率が異なる2種類以上の組成物を用いて紫外線照射等により相分離構造を有する皮膜層を形成させる方法や、透明樹脂材料と透明樹脂材料とは異なる屈折率を有する微粒子を含む皮膜層を形成する方法が挙げられる。
【0072】
本発明の偏光板用保護フィルムでは、さらに防汚層を設けることが好ましい。防汚層は、偏光板用保護フィルムの表面に撥水性、撥油性、耐汗性、防汚性などを付与できる層である。防汚層を形成するために用いる材料としては、フッ素含有有機化合物が好適である。フッ素含有有機化合物としては、フルオロカーボン、パーフルオロシラン、又はこれらの高分子化合物などが挙げられる。防汚層の平均厚みは好ましくは1〜50nm、より好ましくは3〜35nmである。
また、本発明の偏光板用保護フィルムには、ガスバリア層、透明帯電防止層、プライマー層、電磁遮蔽層、下塗り層等のその他の層を設けてもよい。
【0073】
本発明の偏光板用保護フィルムを偏光子と積層させることによって本発明の偏光板を形成することができる。本発明の偏光板用保護フィルムを偏光子の一面に積層した場合には、偏光子の他面にも本発明の偏光板用保護フィルムを積層することができるし、また従来の保護フィルムを積層することもできる。なお、従来の保護フィルムは、その透湿度によって特に制限されないが、好ましくは、0.3〜40g/(m2・24hr)、より好ましくは0.6〜20g/(m2・24hr)、特に好ましくは1.0〜10g/(m2・24hr)のものである。上記透湿度は、JIS Z0208によるカップ法を用いて、温度40℃、湿度90%で測定できる。
【0074】
本発明に用いる偏光子は液晶表示装置等に用いられている公知の偏光子である。例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるもの、またはポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるものなどが挙げられる。その他に、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうちポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
【0075】
本発明に用いる偏光子に自然光を入射させると一方の偏光だけが透過する。本発明に用いる偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の平均厚みは好ましくは5〜80μmである。
【0076】
本発明の好ましい偏光板は、その偏光板用保護フィルムが第1番目の熱可塑性樹脂層を偏光子側に向けて積層されており、該第1番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率n1(380)及び波長780nmにおける屈折率n1(780)、並びに、前記偏光子に含有させるポリビニルアルコールbの波長380nmにおける屈折率nb(380)及び波長780nmにおける屈折率nb(780)が、式〔4〕の関係を満足する。
||n1(380)−nb(380)|
−|n1(780)−nb(780)||≦0.02 式〔4〕
すなわち可視光領域の上限付近の波長における第1番目の熱可塑性樹脂層の屈折率と偏光子に含有されるポリビニルアルコールの屈折率との差が、下限付近の波長におけるその差と、それほど違わないということである。特に、||n1(380)−nb(380)|−|n1(780)−nb(780)||≦0.01であることが好ましい。なお、n1(380)、及びn1(780)はそれぞれの波長における主屈折率の平均値である。nb(380)及びnb(780)は無配向のポリビニルアルコールの屈折率である。
第1番目の熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂、脂環式オレフィンポリマー、及びポリカーボネート樹脂から選択したものが好ましく、特にポリメチルメタクリレート樹脂などのアクリル樹脂から選択したものが好ましい。
【0077】
本発明の好ましい偏光板は、その偏光子がポリビニルアルコールを含有してなり、その偏光板用保護フィルムの第1番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率n1(λ)、及び、前記偏光子に含有されるポリビニルアルコールの380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率nb(λ)が、式〔5〕を満たす。
|n1(λ)−nb(λ)|≦0.04 式〔5〕
【0078】
なお、n1(λ)は波長λにおける主屈折率の平均値である。nb(λ)は無配向のポリビニルアルコールの屈折率である。
【0079】
さらに本発明の好適な偏光板は、その偏光板用保護フィルムが、第k番目の熱可塑性樹脂層の表面に深さ50nm以上で且つ幅500nm以下の線状凹部を有さず、好ましくは深さ30nm以上で且つ幅700nm以下の線状凹部を有しない。また、本発明の好適な偏光板を構成する保護フィルムは、第k番目の熱可塑性樹脂層の表面に高さ50nm以上で且つ幅500nm以下の線状凸部を有さず、好ましくは高さ30nm以上で且つ幅700nm以下の線状凸部を有しない。さらに、第1番目の熱可塑性樹脂層の表面に上記のごとく高さ50nm以上で且つ幅500nm以下の線状の凸部又は上記のごとく深さ50nm以上で且つ幅500nm以下の線状の凹部を有しないことが好ましい。このような線状凹部又は線状凸部を有しないことで、光漏れ、光干渉などを防ぐことができる。
なお、表面に深さ50nm以上で幅500nm以下の線状凹部を有しないということは、表面が平らであるか、又は線状凹部が在ったとしてもその深さが50nm未満、又は幅が500nm超であることを言う。また、表面に高さ50nm以上で幅500nm以下の線状凸部を有しないということは、表面が平らであるか、又は線状凸部が在ったとしてもその高さが50nm未満、又は幅が500nm超であることを言う。
【0080】
そのフィルムの線状凹部の深さ、線状凸部の高さ及びそれらの幅は次に述べる方法で求めている。
フィルムに光を照射して、透過光をスクリーンに映し、スクリーン上に現れる光の明又は暗の縞の有る部分(この部分は線状凹部の深さ及び線状凸部の高さが大きい部分である。)を30mm角で切り出す。切り出したフィルム片の表面を三次元表面構造解析顕微鏡(視野領域5mm×7mm)を用いて観察し、これを3次元画像に変換し、この3次元画像からMD方向の断面プロファイルを求める。断面プロファイルは視野領域で1mm間隔で求める。この断面プロファイルに、平均線を引き、この平均線から線状凹部の底までの長さが線状凹部深さ、または平均線から線状凸部の頂までの長さが線状凸部高さとなる。平均線とプロファイルとの交点間の距離が幅となる。これら線状凹部深さ及び線状凸部高さの測定値からそれぞれ最大値を求め、その最大値を示した線状凹部又は線状凸部の幅をそれぞれ求める。以上から求められた線状凹部深さ及び線状凸部高さの最大値、その最大値を示した線状凹部の幅及び線状凸部の幅を、そのフィルムの線状凹部の深さ、線状凸部の高さ及びそれらの幅とする。
【0081】
このような大きさの線状凸部及び線状凹部を有しない熱可塑性樹脂層は、以下のような手段を行うことにより得ることができる。例えば、Tダイ式の押出成形法においては、ダイのリップ部の表面粗さを小さくする、リップ先端部にクロム、ニッケル、チタンなどのメッキを施す、リップ先端部にセラミックスを溶射する、リップの内面にPVD(Phisical Vapor Deposition)法などによりTiN、TiAlN、TiC、CrN、DLC(ダイアモンド状カーボン)などの被膜を形成する、ダイから押し出された直後の溶融樹脂周りの温度分布、空気流れなどを均一に調整する、熱可塑性樹脂層を形成する樹脂としてメルトフローレート値が同程度のものを選択する、などの手段を行うことによって、得ることができる。またキャスト成形法においては、表面粗さが小さいキャスト支持フィルムを用いる、塗布機の表面粗さを小さくする、さらに塗布層の乾燥時の温度分布、乾燥温度、乾燥時間を調整する、などの手段を行うことによって、得ることができる。
【0082】
本発明においては、偏光子と偏光板用保護フィルムとが、直接に接していてもよいし、接着層を介して接していてもよい。この接着層を構成する接着剤としては、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、塩化ビニル−酢酸ビニル系接着剤などが挙げられる。
【0083】
本発明の液晶表示装置は、前記本発明の偏光板と、液晶パネルとを少なくとも備えるものである。液晶パネルは、液晶表示装置に用いられているものならば特に制限されない。例えば、TN(Twisted Nematic)型液晶パネル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶パネル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶パネル、IPS(In Plane Switching)型液晶パネル、VA(Vertical Alignment)型液晶パネル、MVA(Multiple Vertical Alignment)型液晶パネル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶パネルなどが挙げられる。
【0084】
本発明の好ましい液晶表示装置は、前記偏光板が液晶パネルの視認側に備えられているものである。液晶表示装置には、通常2枚の偏光板が液晶パネルを挟むようにして備えられている。液晶パネルの視認側は観察者が表示画面を視認できる側である。本発明の偏光板、特に前記偏光板用保護フィルムを視認側に積層した偏光板は、優れた視認性を有するので、液晶パネルの視認側に配置することが好ましい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではなく、例えば、熱可塑性樹脂層が4層以上の場合や2層の場合も含んでいる。また、部および%は、特に記載のない限り重量基準である。
【0086】
(高屈折率層(ハードコート層)形成用組成物の調整)
6官能ウレタンアクリレートオリゴマー30部、ブチルアクリレート40部、イソボロニルメタクリレート30部及び2,2−ジフェニルエタン−1−オン10部をホモジナイザーで混合し、五酸化アンチモン微粒子(平均粒子径20nm、水酸基がパイロクロア構造の表面に現われているアンチモン原子に1つの割合で結合している。)の40%メチルイソブチルケトン溶液を、五酸化アンチモン微粒子の重量が高屈折率層形成用組成物全固形分の50重量%を占める割合で混合して、高屈折率層形成用組成物Hを調製した。
【0087】
(低屈折率層形成用組成物の調整)
テトラメトキシシランのオリゴマー21部、メタノール36部、水2部、及び0.01Nの塩酸水溶液2部を混合し、25℃の高温槽中で2時間撹拌して、重量平均分子量850のシリコーンレジンを得た。次に、中空シリカ微粒子のイソプロパノール分散ゾル(固形分20%、平均一次粒子径約35nm、外殻厚み約8nm)を前記シリコーンレジンに加えて、中空シリカ微粒子/シリコーンレジン(縮合化合物換算)が固形分基準の重量比で8:2となるようにした。最後に全固形分が1%になるようにメタノールで希釈して低屈折率層形成用組成物Lを調製した。
【0088】
(偏光子の作製)
波長380nmでの屈折率が1.545、波長780nmでの屈折率が1.521である厚さ75μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、2.5倍に一軸延伸し、ヨウ素0.2g/L及びヨウ化カリウム60g/Lを含む30℃の水溶液中に240秒間浸漬し、次いでホウ酸70g/L及びヨウ化カリウム30g/Lを含む水溶液に浸漬すると同時に6.0倍に一軸延伸して5分間保持した。最後に、室温で24時間乾燥し、平均厚さ30μmで、偏光度99.95%の偏光子Pを得た。
【0089】
実施例1
(偏光板保護フィルムの作製)
ポリメチルメタクリレート樹脂(吸水率0.3%、光弾性係数−6.0×10-12Pa-1、ヘイズ0.08%、湿度膨張係数28ppm/%RH、引張弾性率3.3GPa、「PMMA」と略記。)を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型の一軸押出機に投入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイの一方に供給した。
一方、脂環式オレフィンポリマー(ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物、吸水率0.01%未満、光弾性係数6.3×10-12Pa-1、ヘイズ0.02%、湿度膨張係数1ppm/%RH未満、引張弾性率2.4GPa、「COP」と略記。)を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型の一軸押出機に導入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイの他方に供給した。
【0090】
そして、溶融状態のポリメチルメタクリレート樹脂、脂環式オレフィンポリマー、接着剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体のそれぞれをマルチマニホールドダイから260℃で吐出させ、130℃に温度調整された冷却ロールにキャストし、その後、50℃に温度調整された冷却ロールに通して、ポリメチルメタクリレート樹脂層(20μm)−接着層(4μm)−脂環式オレフィンポリマー層(32μm)−接着層(4μm)−ポリメチルメタクリレート樹脂層(20μm)の3層構成からなる、幅600mm、厚さ80μmの偏光板用保護フィルム1Aを共押出成形により得た。偏光板用保護フィルム1Aは、その透湿度が3.5g/(m2・24h)、光弾性係数が1×10-12Pa-1、隣接する層間の湿度膨張係数差が27ppm/%RH、その表面は線状凹部や線状凸部のない平坦な面であった。ポリメチルメタクリレート樹脂層はいずれも屈折率n(λ)が図1に示す分布を有し、脂環式オレフィンポリマー層は屈折率n(λ)が図1に示す分布を有していた。両サイドのポリメチルメタクリレート樹脂層はいずれも波長380nmの屈折率が1.512、波長780nmの屈折率が1.488であり、脂環式オレフィンポリマー層は波長380nmの屈折率が1.555、波長780nmの屈折率が1.529であった。式〔1〕の値は0.002であった。
【0091】
(偏光板の作製)
脂環式オレフィンポリマー(ガラス転移温度136℃)からなる厚さ100μmの長尺の未延伸フィルムの片面に、高周波発信機を用いてコロナ放電処理を行い、表面張力が0.055N/mのフィルム1Bを得た。
【0092】
偏光子Pの両面にアクリル系接着剤を塗布し、偏光板用保護フィルム1Aの一面及びフィルム1Bのコロナ放電処理面を偏光子Pに向けて重ね、ロールトゥロール法により貼り合わせ偏光板1を得た。また評価結果を表1及び表2に示した。
図2にポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)と脂環式オレフィンポリマー層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示した。ポリメチルメタクリレート樹脂層と脂環式オレフィンポリマー層とは式〔2〕の関係を満たしていた。また、図3に偏光子に含有されるポリビニルアルコールの屈折率n(λ)とポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示した。偏光子に含有されるポリビニルアルコールとポリメチルメタクリレート樹脂層は、式〔4〕の値が0で、式〔5〕の関係を満たしていた。なお、得られた偏光板はフィルム1Aが液晶パネルから遠い側になるようにして液晶表示装置に取り付けられる。
【0093】
実施例2
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムの一方の面に、水酸化カリウムの1.5モル/Lイソプロピルアルコール溶液を25mL/m2塗布し、25℃で5秒間乾燥した。次いで、流水で10秒間洗浄し、最後に25℃の空気を吹き付けることによりフィルムの表面を乾燥して、トリアセチルセルロースフィルムの一方の表面のみをケン化処理したフィルム2Bを得た。
偏光板用保護フィルム1Aの一方の面にアクリル系接着剤を塗布し、フィルム2Bのケン化処理された面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、偏光板用保護フィルム1A、偏光子P、フィルム2Bとなるように重ね、ロールトゥロール法により前記接着剤で貼り合わせて偏光板2を得た。評価結果を表1及び表2に示した。なお、得られた偏光板はフィルム1Aが液晶パネルから遠い側になるようにして液晶表示装置に取り付けられる。
【0094】
実施例3
吸水率4.4%、光弾性係数12×10-12Pa-1、ヘイズ0.05%、及び湿度膨張係数65ppm/%RH、波長380nmにおける屈折率1.515、及び波長780nmにおける屈折率1.487である、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム(「TAC」と略記。)の両面に、水酸化カリウムの1.5モル/Lイソプロピルアルコール溶液を25mL/m2塗布し、25℃で5秒間乾燥した。次いで、流水で10秒間洗浄し、25℃の空気を吹き付けることによりフィルムの表面を乾燥した。この表面処理されたトリアセチルセルロースフィルムの両面に、吸水率0.3%、光弾性係数−6.0×10-12Pa-1、ヘイズ0.08%、湿度膨張係数28ppm/%RH、引張弾性率3.3GPa、及び厚さ30μmのポリメチルメタクリレート樹脂の単層フィルムを圧着ラミネートにより積層し、偏光板用保護フィルム2Aを得た。偏光板用保護フィルム2Aは、その透湿度が61g/(m2・24h)、光弾性係数が3×10-12Pa-1、隣接する層間の湿度膨張係数差が37ppm/%RHであり、その表面は線状凹部や線状凸部のない平坦な面であった。トリアセチルセルロース層は屈折率n(λ)が図1に示す分布を有し、ポリメチルメタクリレート樹脂層はいずれも屈折率n(λ)が図1に示す分布を有していた。両サイドのポリメチルメタクリレート樹脂層はいずれも波長380nmの屈折率が1.512、波長780nmの屈折率が1.488であった。式〔1〕の値は0.002であった。
【0095】
偏光子Pの両面にアクリル系接着剤を塗布し、偏光板保護フィルム2Aの一面及びフィルム1Bのコロナ放電処理面を偏光子Pに向けて重ね、ロールトゥロール法により貼り合わせ偏光板3を得た。
図2にポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)とトリアセチルセルロース層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示した。ポリメチルメタクリレート樹脂層とトリアセチルセルロース層とは式〔2〕の関係を満たしていた。また、図3に偏光子に含有されるポリビニルアルコールの屈折率n(λ)とポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示した。偏光子に含有されるポリビニルアルコールとポリメチルメタクリレート樹脂層は、式〔4〕の値が0で、式〔5〕の関係を満たしていた。また評価結果を表1及び表2に示した。なお、得られた偏光板はフィルム2Aが液晶パネルから遠い側になるようにして液晶表示装置に取り付けられる。
【0096】
実施例4
(反射防止層の作成)
偏光板保護フィルム1Aの両面に、高周波発信機を用いてコロナ放電処理を行い、表面張力が0.055N/mの偏光板保護フィルム1Cを得た。
次に、高屈折率層形成用組成物Hを前記偏光板保護フィルム1Aの片面に、ダイコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥炉の中で5分間乾燥させて被膜を得た。さらに、紫外線を照射(積算照射量300mJ/cm2)して、厚さ5μmの高屈折率層を形成し、積層フィルム1Dを得た。高屈折率層の屈折率は1.62、鉛筆硬度は4Hであった。
上記積層フィルム1Dの高屈折率層側に、低屈折率層形成用組成物Lを、ワイヤーバーコーターを用いて塗工し、1時間放置して乾燥させ、得られた被膜を120℃で10分間、酸素雰囲気下で熱処理し、厚さ100nmの低屈折率層(屈折率1.36)を形成し、反射防止層付偏光板保護フィルム1Eを得た。
偏光子Pの両面にアクリル系接着剤を塗布し、偏光板保護フィルム1Eの反射防止層が形成されていない面及びフィルム1Bのコロナ放電処理面を偏光子Pに向けて重ね、ロールトゥロール法により貼り合わせ偏光板4を得た。評価結果を表1及び表2に示した。なお、得られた偏光板はフィルム1E(反射防止層)が液晶パネルから遠い側になるようにして液晶表示装置に取り付けられる。
【0097】
実施例5
ポリメチルメタクリレート樹脂(吸水率0.3%、光弾性係数−6.0×10-12Pa-1、ヘイズ0.08%、湿度膨張係数28ppm/%RH、引張弾性率3.3GPa、「PMMA」と略記)を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型一軸押出機に投入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイの一方に供給した。
一方、数平均粒径0.4μmの弾性体粒子を含むポリメチルメタクリレート樹脂(引張弾性率2.8GPa)と、紫外線吸収剤(LA31;旭電化工業製)とを、前記紫外線吸収剤の濃度が3重量%となるように混合して混合物(吸水率0.3%、光弾性係数−4.0×10-12Pa-1、ヘイズ0.1%、湿度膨張係数30ppm/%RH、「R1−PMMA」と略記。)を得た。これを目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型の一軸押出機に導入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイの他方に供給した。
【0098】
そして、溶融状態の弾性体粒子を含まないポリメチルメタクリレート樹脂、紫外線吸収剤と弾性体粒子を含むポリメチルメタクリレート樹脂をそれぞれマルチマニホールドダイから260℃で吐出させ、130℃に温度調整された冷却ロールにキャストし、その後、50℃に温度調整された冷却ロールに通して、PMMA層(20μm)/R1−PMMA層(40μm)/PMMA層(20μm)の3層構成からなる、幅600mm、厚さ80μmの偏光板用保護フィルム3Aを共押出成形により得た。偏光板用保護フィルム3Aは、その透湿度が51g/(m2・24h)、光弾性係数が−5×10-12Pa-1、隣接する層間の湿度膨張係数差が2ppm/%RHであり、その表面は線状凹部や線状凸部のない平坦な面であった。
ポリメチルメタクリレート樹脂層はいずれも屈折率n(λ)が図1に示す分布を有し、弾性体粒子及び紫外線吸収剤を含むポリメチルメタクリレート樹脂層は屈折率n(λ)が図1に示す分布を有していた。両サイドのポリメチルメタクリレート樹脂層はいずれも波長380nmの屈折率が1.512、波長780nmの屈折率が1.488であり、弾性体粒子及び紫外線吸収剤を含むポリメチルメタクリレート樹脂層は波長380nmの屈折率が1.507、波長780nmの屈折率が1.489であった。式〔1〕の値は0.004であった。
【0099】
図2にポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)と弾性体粒子及び紫外線吸収剤を含むポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示した。ポリメチルメタクリレート樹脂層と弾性体粒子及び紫外線吸収剤を含むポリメチルメタクリレート樹脂層とは式〔2〕の関係を満たしていた。なお、図2ではポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)と弾性体粒子及び紫外線吸収剤を含むポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布とポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)とトリアセチルセルロース層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布とがほぼ同じような分布をしているので重なって表示されている。
偏光子Pの両面にアクリル系接着剤を塗布し、偏光板保護フィルム3Aの一面及びフィルム2Bのコロナ放電処理面を偏光子Pに向けて重ね、ロールトゥロール法により貼り合わせ偏光板5を得た。また評価結果を表1及び表2に示した。また、図3に偏光子に含有されるポリビニルアルコールの屈折率n(λ)とポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示した。偏光子に含有されるポリビニルアルコールとポリメチルメタクリレート樹脂層は、式〔4〕の値が0で、式〔5〕の関係が満たされていた。なお、得られた偏光板はフィルム3Aが液晶パネルから遠い側になるようにして液晶表示装置に取り付けられる。
【0100】
実施例6
弾性体粒子を含むポリメチルメタクリレート樹脂(吸水率0.3%、光弾性係数−5.0×10-12Pa-1、ヘイズ0.1%、湿度膨張係数30ppm/%RH、引張弾性率2.8GPa、「R2−PMMA」と略記。)を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型一軸押出機に投入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイの一方に供給した。
実施例5において、PMMAの代わりにR2−PMMAを用いる以外は、実施例5と同様にしてR2−PMMA層(10μm)/R1−PMMA層(20μm)/R2−PMMA層(10μm)の3層構成からなる、幅600mm、厚さ40μmの偏光板用保護フィルム3Bを共押出成形により得た。偏光板用保護フィルム3Bは、その透湿度が105g/(m2・24h)、光弾性係数が−4.5×10-12Pa-1、隣接する層間の湿度膨張係数差が2ppm/%RHであり、その表面は線状凹部や線状凸部のない平坦な面であった。
【0101】
2−PMMA及びR1−PMMAは、n(λ)がほぼ同じ分布を示し式〔2〕を満たしている。R2−PMMA層は波長380nmの屈折率が1.507、波長780nmの屈折率が1.489であり、R1−PMMA層は波長380nmの屈折率が1.507、波長780nmの屈折率が1.489であった。式〔1〕の値は0であった。
【0102】
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムの一方の面に、水酸化カリウムの1.5モル/Lイソプロピルアルコール溶液を25mL/m2塗布し、25℃で5秒間乾燥した。次いで、流水で10秒間洗浄し、最後に25℃の空気を吹き付けることによりフィルムの表面を乾燥して、トリアセチルセルロースフィルムの一方の表面のみをケン化処理したフィルム4Aを得た。
【0103】
偏光子Pの両面にアクリル系接着剤を塗布し、偏光板保護フィルム3Bの一面及びフィルム4Aを偏光子Pに向けて重ね、ロールトゥロール法により貼り合わせ偏光板6を得た。また評価結果を表1及び表2に示した。式〔4〕の値が0.006で、式〔5〕の関係が満たされていた。なお、得られた偏光板はフィルム4Aが液晶パネルから遠い側になるようにして液晶表示装置に取り付けられる。
【0104】
比較例1
実施例1において、脂環式オレフィンポリマーの代わりにポリカーボネート樹脂(吸水率0.2%、光弾性係数70×10-12Pa-1、ヘイズ0.08%、湿度膨張係数32ppm/%RH、引張弾性率2.5GPa、「PC」と略記。)を使用した他は実施例1と同様にして3層構造の偏光板用保護フィルム5Aを作製した。偏光板用保護フィルム5Aは、その透湿度が22g/(m2・24h)、光弾性係数が27×10-12Pa-1、隣接する層間の湿度膨張係数差が13ppm/%RHであり、その表面は線状凹部や線状凸部のない平坦な面であった。ポリメチルメタクリレート層はいずれも屈折率n(λ)が図1に示す分布を有し、ポリカーボネート樹脂層は屈折率n(λ)が図1に示す分布を有していた。このフィルム5Aをフィルム1Aに換えて用いた他は実施例1と同様にして偏光板7を得た。
図2にポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)とポリカーボネート樹脂層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示した。ポリメチルメタクリレート樹脂層とポリカーボネート樹脂層とは式〔2〕の関係を満たしていなかった。加えて、図3に偏光子に含有されるポリビニルアルコールの屈折率n(λ)とポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示した。ポリカーボネート樹脂層は、波長380nmにおける屈折率が1.608、波長780nmにおける屈折率が1.556であり、両サイドのポリメチルメタクリレート樹脂層はいずれも波長380nmの屈折率が1.512、波長780nmの屈折率が1.488であった。式〔1〕の値は0.028、式〔4〕の値は0であった。また評価結果を表1及び表2に示した。なお、得られた偏光板はフィルム5Aが液晶パネルから遠い側になるようにして液晶表示装置に取り付けられる。
【0105】
比較例2
実施例3において、トリアセチルセルロースフィルムの代わりに波長380nmにおける屈折率が1.715、波長780nmにおける屈折率が1.631のポリエチレンテレフタレートフィルム(吸水率0.5%、光弾性係数120×10-12Pa-1、ヘイズ0.08%、湿度膨張係数12ppm/%RH、引張弾性率5GPa、「PET」と略記。)を使用した他は実施例3と同様にして3層構造の偏光板用保護フィルム6Aを作製し、さらにこのフィルム6Aをフィルム2Aに換えた他は実施例3と同様にして偏光板8を得た。偏光板用保護フィルム6Aは、その透湿度が54g/(m2・24h)、光弾性係数が50×10-12Pa-1、隣接する層間の湿度膨張係数差が16ppm/%RHであった。偏光板用保護フィルム6Aの表面は、線状凹部の深さ等が20nm以上50nm以下で、かつ幅が500nm以上800nm未満の範囲の線状凹部等が形成された面であった。ポリメチルメタクリレート層はいずれも屈折率n(λ)が図1に示す分布を有し、ポリエチレンテレフタレート樹脂層は屈折率n(λ)が図1に示す分布を有していた。
図2にポリメチルメタクリレート樹脂層の屈折率n(λ)とポリエチレンテレフタレート樹脂層の屈折率n(λ)との差の絶対値の分布を示した。ポリメチルメタクリレート樹脂層とポリエチレンテレフタレート樹脂層とは式〔2〕の関係を満たしていなかった。式〔1〕の値は0.060、式〔4〕の値は0であった。また評価結果を表1及び表2に示した。なお、得られた偏光板はフィルム6Aが液晶パネルから遠い側になるようにして液晶表示装置に取り付けられる。
【0106】
比較例3
実施例1において、偏光板用保護フィルム1Aに代えて、ポリメチルメタクリレート樹脂(表及び図中PMMAと表記)からなる厚み80μmの単層押出成形したフィルムを偏光板用保護フィルム7Aとして用いた他は、実施例1と同様にして偏光板9を得た。偏光板用保護フィルム7Aは、その透湿度が40g/(m2・24h)、光弾性係数が−6×10-12Pa-1であり、その表面は、線状凹部の深さ等が20nm以上50nm以下で、かつ幅が500nm以上800nm未満の範囲の線状凹部等が形成された面であった。
なお、図1にポリメチルメタクリレートの単層フィルム層の屈折率n(λ)を示す。また、評価結果を表1及び表2に示した。なお、得られた偏光板はフィルム7Aが液晶パネルから遠い側になるようにして液晶表示装置に取り付けられる。
【0107】
【表1】

【0108】
(吸水率)
JIS K7209に準じて、23℃、24時間で測定する。
【0109】
(ヘイズ)
JIS K7105に準拠して、日本電色工業社製「濁度計NDH−300A」を用いて測定する。なお、同様の測定を5回行い、その算術平均値をヘイズの代表値とする。
【0110】
(引張弾性率)
熱可塑性樹脂を単層成形して、厚み100μmのフィルムを得、これを1cm×25cmの大きさに切り出して試験片とし、これをASTM D882に基づき、引張試験機(テンシロンUTM−10T−PL、東洋ボールドウィン社製)を用いて引張速度25mm/minの条件で測定した。同様の測定を5回行い、その算術平均値を引張弾性率の代表値とする。
【0111】
(熱可塑性樹脂層の屈折率n(λ))
熱可塑性樹脂を単層成形して、厚み100μmのフィルムを得、これを1cm×25cmに切り出して試験片とし、この試験片の中心部の任意の1点を、プリズムカプラ−(Metricon社製 model2010)を用いて、温度20℃±2℃、湿度60±5%の条件下で、波長633nm、407nm、532nmにおける屈折率の値から、Caucyの分散式により、380nm及び780nmの屈折率を算出する。
【0112】
(反射防止層の屈折率)
高速分光エリプソメトリ(J.A.Woollam社製、M−2000U)を用い,温度20℃±2℃、湿度60±5%の条件下で、入射角度55度、60度、及び65度で、波長領域400〜1000nmのスペクトルを測定し、これらの測定結果から算出した。
【0113】
(透湿度)
熱可塑性樹脂を単層成形して、厚み100μmのフィルムを得、これを40℃、92%R.H.の環境下に24時間放置する試験条件で、JIS Z0208に記載のカップ法に準じた方法で測定した。透湿度の単位はg/(m2・24h)である。
【0114】
(光弾性係数)
温度20℃±2℃、湿度60±5%の条件下で、光弾性定数測定装置(ユニオプト社製 PHEL−20A)を用いて測定した
【0115】
(湿度膨張係数)
フィルムサンプルを、幅方向が測定方向となるようにJIS K7127に記載の試験片タイプ1Bに準拠して切り出し、高温恒湿槽付引張試験機(インストロン社製)にセットし、湿度35%RH、23℃の窒素雰囲気又は湿度70%RH、、23℃の窒素雰囲気に保ち、その時のサンプルの長さをそれぞれ測定し、次式にて湿度膨張係数を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を湿度膨張係数とした。
湿度膨張係数=(L70−L35)/(L35×△H)
ここで、L35:35%RHのときのサンプル長(mm)
70:70%RHのときのサンプル長(mm)
△H:35(=70−35)%RHである。
表1には、中間層の湿度膨張係数と、その両側の層の湿度膨張係数との差を示した。
【0116】
(フィルム表面の線状凹凸)
前述した方法により、線状凹部の深さ、線状凸部の高さ、およびこれらの幅を測定した。得られた線状凹部深さ及び線状凸部高さの最大値、その最大値を示した線状凹部の幅及び線状凸部の幅を、そのフィルムの線状凹部の深さ、線状凸部の高さ及びそれらの幅とし、以下の基準で評価した。
◎:線状凹部の深さ、または線状凸部の高さが20nm未満で,且つ幅が800nm以上
○:線状凹部の深さ、または線状凸部の高さが20nm以上、50nm以下で、且つ幅が500nm以上、800nm未満
×:線状凹部の深さ、または線状凸部の高さが50nmを超え、且つ幅が500nm未満
【0117】
(レターデーション)
フィルム中心部の任意の1点を自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA21−ADH)を用いて、温度20℃±2℃、湿度60±5%の条件下で測定した値である。
【0118】
【表2】

【0119】
(干渉縞観察)
暗幕のような光を通さない黒布の上に、偏光板用保護フィルムを置き、三波長蛍光灯(ナショナル:FL20SS・ENW/18)で照らして、偏光板保護フィルム表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:干渉縞が見えない。
○:干渉縞がうっすらと見える。
△:干渉縞が目立つ。
×:干渉縞が目立ち、かつギラツキが生じる。
【0120】
(鉛筆硬度)
試験荷重を500gにした以外はJIS K5600−5−4に従って、45度の角度に傾け、上から500gの荷重を掛けた鉛筆で、偏光板用保護フィルムの表面(視認側面)を、5mm程度引っかき、傷の付き具合を確認した。
【0121】
(反射率)
偏光板保護フィルムの一方の面(偏光子に貼り合わせる面)に黒色のビニルテープNo.21(日東電工社製)を貼り、分光光度計(日本分光社製:「紫外可視近赤外分光光度計 V−570」)を用いて、偏光板保護フィルムのもう一方の面(視認側面)の入射角5°における反射スペクトルを測定し、波長550nmにおける反射率(%)を求めた。
【0122】
(光漏れ度)
2枚の試験用偏光板を保護フィルムB同士を向かい合うようにしてクロスニコル配置し、図4に示した9箇所の光線透過率を測定し、それら測定値を下記式に代入し、光漏れ度を算出した。
光漏れ度=((T2+T4+T6+T8)/4)/((T1+T3+T5+T7+T9)/5)
なお、Txは、測定点(x)における光透過率を表し、(1),(2),(3),(4),(6),(7),(8),及び(9)は端部から10mmの位置を測定点とした。(5)は試験用偏光板の対角線交点を測定点とした。
○:光漏れ度が2以下
×:光漏れ度が2より大きい
【0123】
(偏光度変化)
偏光板を10インチ四方の大きさに切り出し、ガラス板の片面に、感圧性接着剤を介して、偏光板の保護フィルムBの面がガラス板側になるように貼り合わせ、試験用偏光板を作製した。この試験用偏光板を温度60℃、湿度90%の恒温槽に500時間放置し、試験用偏光板の対角線交点(図中、(5)の位置)における高温高湿下の放置前後での偏光度の変動幅を測定した。
○:偏光度の変動幅が0.5以下
×:偏光度の変動幅が0.5より大きい
【0124】
(積層強度)
偏光板を、80℃、95%RHの恒温恒湿室に24時間放置し、次いで20℃、40%RHの恒温恒湿室に24時間放置する操作を20回繰り返した。保護フィルムの各層間及び偏光子と保護フィルムとの間の積層状態を目視観察し、偏光板の端から1mm以上の長さで剥離して白く見える部分があれば×、1mm未満の長さであれば○として評価した。
【0125】
(偏光板の可撓性)
偏光板を1cm×5cmに打ち抜いてフィルム片を得た。このフィルム片を3mmφのスチール製の棒に巻きつけ、巻きつけたフィルム片が棒のところで折れるか否かをテストした。合計10回テストを行い、折れなかった回数によって下記指標で可撓性を表した。
○:割れたフィルム片が1枚以下
×:割れたフィルム片が2枚以上
【0126】
(色再現性)
上記組み立てなおした液晶テレビを、周囲明るさ500ルクスの環境下に設置し、画面表示を黒表示にしたときの、表示画面を目視観察して、以下の基準で評価した。
○:表示画面の色が黒
×:表示画面の色が青
【0127】
(視認性)
市販の液晶テレビ(シャープ社製、LC−13C5−S)から液晶表示パネルを取り外し、該液晶表示パネルから視認側の偏光板を液晶セルから剥がし、代わりに本実施例又は比較例で得られた偏光板を偏光板用保護フィルムAが視認側になるように、前記液晶セルに貼り合わせ、液晶テレビを組み立て直し、この液晶テレビの表示品位を以下の基準で評価した。
○:長時間(例えば1〜2時間くらい)使用しても作業者が不快に感じない。
×:長時間の使用で作業者が不快に感じる。
【0128】
(コントラスト)
市販の液晶テレビから液晶表示パネルを取り外し、視認側に配置されている偏光板に替えて、実施例及び比較例で作製した偏光板を(保護フィルムAが視認側になるように)組み込み、液晶表示装置を組み直した。
組み直した液晶表示装置の暗表示時及び明表示時に、正面に対し5度傾いた角度から輝度を色彩輝度計(トプコン社製、色彩輝度計BM−7)を用いて測定した。そして、明表示の輝度と暗表示の輝度の比(=明表示の輝度/暗表示の輝度)を計算し、これをコントラスト(CR)とした。コントラスト(CR)が大きいほど、視認性に優れることを表す。
【0129】
表2の結果から、以下のことがわかる。実施例に示すように、保護フィルムを構成する熱可塑性樹脂層が上記式〔1〕の関係を有するものは、色再現性、干渉縞、視認性等のすべてにおいて優れている。それに対して、比較例に示すように、式〔1〕の関係を有しないものは、色再現性、干渉縞、及び視認性が悪い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂層がk個(kは2以上の整数)積層されてなるフィルムの製造方法であって、
k個の熱可塑性樹脂層のうち少なくとも1層がアクリル樹脂を含有する層であり、
第i番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率ni(380)及び波長780nmにおける屈折率ni(780)、並びに、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率ni+1(380)及び波長780nmにおける屈折率ni+1(780)が、式〔1〕の関係を有する、共押出成形による偏光板用保護フィルムの製造方法。
||ni(380)−ni+1(380)|
−|ni(780)−ni+1(780)||≦0.02
(ただし、iは1〜k−1の整数) 式〔1〕
【請求項2】
第i番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni(λ)、及び、第i+1番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率ni+1(λ)が、式〔2〕の関係を有し、且つ光弾性係数の絶対値が10×10-12Pa-1以下である請求項1に記載の偏光板用保護フィルムの製造方法。
|ni(λ)−ni+1(λ)|≦0.05
(ただし、iは1〜k−1の整数) 式〔2〕
【請求項3】
前記k個の熱可塑性樹脂層は、いずれもヘイズ0.5%以下の材料で形成され、且つ非晶質熱可塑性樹脂を含んでおり、
第i番目の熱可塑性樹脂層の湿度膨張係数βiと第i+1番目の熱可塑性樹脂層の湿度膨張係数βi+1とが式〔3〕の関係を有する、請求項1に記載の偏光板用保護フィルムの製造方法。
|βi−βi+1|≦40 ppm/%RH 式〔3〕
【請求項4】
前記k個の熱可塑性樹脂層の少なくとも1層は、吸水率0.5%以下の熱可塑性樹脂層である請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板用保護フィルムの製造方法。
【請求項5】
第k番目の熱可塑性樹脂層の表面に、直接または間接的に、さらに反射防止層を有する請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板用保護フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で得られる偏光板用保護フィルムと偏光子とを積層させてなる偏光板。
【請求項7】
偏光子がポリビニルアルコールを含有し、
前記偏光板用保護フィルムが第1番目の熱可塑性樹脂層を偏光子側に向けて積層されており、該第1番目の熱可塑性樹脂層の波長380nmにおける屈折率n1(380)及び波長780nmにおける屈折率n1(780)、並びに、
前記ポリビニルアルコールの波長380nmにおける屈折率nb(380)及び波長780nmにおける屈折率nb(780)が、式〔4〕の関係を満足する請求項6に記載の偏光板。
||n1(380)−nb(380)|
−|n1(780)−nb(780)||≦0.02 式〔4〕
【請求項8】
前記偏光板用保護フィルムの第1番目の熱可塑性樹脂層の380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率n1(λ)、及び、前記偏光子に含有されるポリビニルアルコールの380nm〜780nmの範囲の波長λにおける屈折率nb(λ)が、式〔5〕を満たす請求項6又は7に記載の偏光板。
|n1(λ)−nb(λ)|≦0.04 式〔5〕
【請求項9】
前記偏光板用保護フィルムの第k番目の熱可塑性樹脂層の表面に深さ50nm以上で且つ幅500nm以下の線状凹部が無い請求項6〜8のいずれかに記載の偏光板。
【請求項10】
前記偏光板用保護フィルムの第k番目の熱可塑性樹脂層の表面に高さ50nm以上で幅が500nm以下の線状凸部が無い請求項6〜9のいずれかに記載の偏光板。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の偏光板と液晶パネルとを備える液晶表示装置。
【請求項12】
前記偏光板が液晶パネルの視認側に備えられる請求項11に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−15841(P2013−15841A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167728(P2012−167728)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2007−522309(P2007−522309)の分割
【原出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】