説明

偏光板用粘着剤およびこれを利用した粘着剤付偏光板

【課題】 帯電防止性能に優れるとともに、優れた耐久性および光漏れ防止性を有する偏光板用粘着剤を提供すること。
【解決手段】
次の成分(A)ないし(C)
(A)少なくとも次の成分(a1)ないし(a4)
(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキ
シエチル 79〜97.9質量%
(a2)水酸基含有モノマー 0.05〜10質量%
(a3)カルボキシル基含有モノマー 0.1〜10質量%
(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 1〜10質量%
を共重合してなり重量平均分子量が50万〜200万である(メタ)アクリル系ポリ
マー(但し、(a2)が1質量%以上のとき(a3)は3質量%未満であり、(a2)
が1質量%未満のとき(a3)は3質量%以上) 100質量部
(B)含フッ素アニオンを含むイオン化合物 0.01〜10質量部
(C)イソシアネート系架橋剤 0.1〜5質量部
を含有する粘着剤組成物から得られ、測定波長600nmにおける光弾性係数が−300×10−12〜0(m/N)である偏光板用粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用粘着剤に関し、更に詳細には、帯電防止性能に優れるとともに、高い光漏れ防止性および耐久性を備えた偏光板用粘着剤並びにこれを用いた粘着剤付偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は、液晶材料が2枚のガラス基板間に挟まれた構造を有しており、このガラス基板の表面には粘着剤層を介して偏光板が貼着されている。近年、液晶素子は、車両搭載用、屋外計器用、パソコンのディスプレイ、テレビ等用途が拡大しており、それに伴い使用環境も非常に過酷になってきている。
【0003】
偏光板は異種材料の多層構造を有しており、構成する材料の特性から寸法安定性に乏しい。特に高温、高湿熱の使用環境下においては、偏光板の収縮により応力が集中し、偏光板の複屈折を誘発するとともに、粘着剤自身も応力集中によって配向して複屈折が生じるため、応力の集中する端部で光漏れが起こり、表示品位が低下する。また、このような環境下では、偏光板とガラスとの界面での発泡や偏光板の剥がれなどの不具合も生じやすい。したがって、偏光板用の粘着剤には優れた光漏れ防止性と耐久性が要求される。
【0004】
また、偏光板上に形成された粘着剤層には、セパレーターが貼着されており、液晶素子の製造時に、セパレーターを剥がして粘着剤層を露出させてから偏光板をガラス基板に貼り付けるが、その際にセパレーターや偏光板の絶縁性が高いことから静電気が発生し、液晶の配向を乱したり、電子部品を損傷させるなどの悪影響を及ぼす。このため、偏光板用粘着剤には、帯電防止性能も求められるが、近年、液晶ディスプレーの大型化に伴い帯電する電荷量が増大してきたため、要求される水準が従来よりも格段に高くなってきている。
【0005】
これまでに、光学用粘着剤において、光漏れ防止性、帯電防止性、耐久性などの向上を目的とした技術が種々提案されている。例えば、特許文献1では、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、多官能活性エネルギー線硬化型化合物、帯電防止剤を含む粘着性材料に活性エネルギー線を照射して、光弾性係数および損失正接(tanδ)の極大値を示す温度を一定の範囲に調整することによって、光漏れ防止性、帯電防止性等の向上を図っている。また、特許文献2および3には、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイドを共重合したアクリル系ポリマーと、帯電防止剤としてヨウ化リチウム等のアルカリ金属塩またはイオン性液体とを用いた帯電防止性粘着剤が開示されている。本出願人も、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを主成分とした粘着性ポリマーと低分子量ポリマーを用いて耐湿性を向上させたディスプレイ用粘着シートについて既に報告している(特許文献4)。しかしながら、これらの技術では、耐久性、光漏れ防止性をも両立させつつ、要求される高い帯電防止性能を達成することは非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−242633号公報
【特許文献2】特開2005−314579号公報
【特許文献3】特開2006−063311号公報
【特許文献4】特開2002−327160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、高い帯電防止性能を有するとともに、優れた耐久性、光漏れ防止性を兼ね備えた偏光板用粘着剤が望まれており、本発明はそのような偏光板用粘着剤を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキシエチルを主モノマーとし、これに水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させた(メタ)アクリル系ポリマーを用い、光弾性係数を一定の範囲に調整することによって、帯電防止性、耐久性および光漏れ防止性のいずれにおいても優れた性能が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)ないし(C)
(A)少なくとも次の成分(a1)ないし(a4)
(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキ
シエチル 79〜97.9質量%
(a2)水酸基含有モノマー 0.05〜10質量%
(a3)カルボキシル基含有モノマー 0.1〜10質量%
(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 1〜10質量%
を共重合してなり重量平均分子量が50万〜200万である(メタ)アクリル系ポリ
マー(但し、(a2)が1質量%以上のとき(a3)は3質量%未満であり、(a2)
が1質量%未満のとき(a3)は3質量%以上) 100質量部
(B)含フッ素アニオンを含むイオン化合物 0.01〜10質量部
(C)イソシアネート系架橋剤 0.1〜5質量部
を含有する粘着剤組成物から得られ、測定波長600nmにおける光弾性係数が−300×10−12〜0(m/N)であることを特徴とする偏光板用粘着剤である。
【0010】
また本発明は、次の成分(A1)、(B)および(C)
(A1)少なくとも次の成分(a1)ないし(a4)
(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキ
シエチル 80〜97.9質量%
(a2)水酸基含有モノマー 1〜10質量%
(a3)カルボキシル基含有モノマー 0.1質量%以上3質量%未満
(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 1〜10質量%
を共重合してなり重量平均分子量が50万〜200万である(メタ)アクリル系ポリ
マー 100質量部
(B)含フッ素アニオンを含むイオン化合物 0.01〜10質量部
(C)イソシアネート系架橋剤 0.1〜5質量部
を含有する粘着剤組成物から得られ、測定波長600nmにおける光弾性係数が−300×10−12〜0(m/N)であることを特徴とする偏光板用粘着剤である。
【0011】
さらに本発明は、次の成分(A2)、(B)および(C)
(A2)少なくとも次の成分(a1)ないし(a4)
(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキ
シエチル 79〜95.95質量%
(a2)水酸基含有モノマー 0.05質量%以上1質量%未満
(a3)カルボキシル基含有モノマー 3〜10質量%
(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 1〜10質量%
を共重合してなり重量平均分子量が50万〜200万である(メタ)アクリル系ポリ
マー 100質量部
(B)含フッ素アニオンを含むイオン化合物 0.01〜10質量部
(C)イソシアネート系架橋剤 0.1〜5質量部
を含有する粘着剤組成物から得られ、測定波長600nmにおける光弾性係数が−300×10−12〜0(m/N)であることを特徴とする偏光板用粘着剤である。
【0012】
また本発明は、偏光板の少なくとも一方の面に上記偏光板用粘着剤からなる層を有する粘着剤付偏光板である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の偏光板用粘着剤は、光漏れ防止性および耐久性に優れ、高温高湿環境下でも光漏れや発泡、剥がれ等の外観不良の発生を防止することができる。また、帯電防止性能が高く、セパレーター剥離時における静電気の発生を有効に防止することが可能である。さらに、帯電防止剤として有機アニオンと含フッ素カチオンのイオン化合物を用い、イソシアネート系と金属キレート系の架橋剤を併用することによって、耐久性がより向上するとともに、熟成期間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の偏光板用粘着剤に用いる成分(A)の(メタ)アクリル系ポリマーは、少なくとも(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキシエチル、(a2)水酸基含有モノマー、(a3)カルボキシル基含有モノマーおよび(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合して得られるものである。
【0015】
上記(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキシエチルとしては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチルなどを挙げることができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル等が安定的に重合可能であり分子量の調整が容易であるため好ましく用いられる。
【0016】
上記成分(a2)の水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート等が例示でき、このうち2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが入手が容易で、共重合性が良好であることから好ましく用いられる。
【0017】
上記成分(a3)のカルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、3−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、4−カルボキシブチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などを挙げることができ、これらのうち、入手が容易で、共重合性が良好であるため(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0018】
上記成分(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、ブチルアクリレート、メチルアクリレート等が粘着物性を調整する観点から好ましく用いられる。
【0019】
成分(A)(メタ)アクリル系ポリマーの構成モノマー全体に対し、成分(a1)の含有量は、79〜97.9質量%(以下、「%」で示す)、成分(a2)0.05〜10%、成分(a3)0.1〜10%、成分(a4)1〜10%であるが、成分(a2)の含有量によって、成分(a3)の含有量が規定される。成分(a2)が上記範囲のうち1%以上である場合、成分(a3)の含有量は3%未満であり、成分(a2)が1%未満のときは、成分(a3)の含有量は3%以上である。またこれに伴い成分(a1)の含有量も規定される。すなわち、本願発明で用いる成分(A)には、以下の組成のモノマーから構成される(メタ)アクリル系ポリマー(A1)および(A2)が包含される。
【0020】
(A1)
(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキ
シエチル 80〜97.9%
(a2)水酸基含有モノマー 1〜10%
(a3)カルボキシル基含有モノマー 0.1%以上3%未満
(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 1〜10%
【0021】
(A2)
(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキ
シエチル 79〜95.95%
(a2)水酸基含有モノマー 0.05%以上1%未満
(a3)カルボキシル基含有モノマー 3〜10%
(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 1〜10%
【0022】
(メタ)アクリル系ポリマー(A1)において、成分(a1)の含有量が80〜97.9%の範囲を逸脱すると、後述する光弾性係数を−300×10−12〜0(m/N)の範囲に調整することが困難となるため好ましくない。成分(a1)のより好ましい含有量は、85〜95%である。
【0023】
(A1)において、成分(a2)の含有量が1%よりも少ないと十分な凝集力が得られず耐久性が劣り、10%よりも多いとポットライフが短くなるため作業性が悪くなり、また、過剰な架橋形成により塗膜が硬くなり光漏れ性が悪化するおそれがある。より好ましくは1〜5%である。
【0024】
(A1)において、成分(a3)の含有量が0.1%よりも少ないと水酸基とイソシアネート基との架橋を促進する効果が十分に得られず凝集力が不十分となり、3%以上であると過剰な架橋促進によりポットライフが短くなるため作業性が悪化し、また、カルボキシル基と架橋剤との反応による架橋形成により塗膜が硬くなり光漏れ性が悪化するおそれがある。より好ましい範囲は0.1〜2%である。
【0025】
(A1)において、成分(a4)の含有量は、1%よりも少ないと耐久性能が不十分となるおそれがあり、10%よりも多いと帯電防止性能が不十分となる。好ましくは5〜10%である。
【0026】
一方、(メタ)アクリル系ポリマー(A2)において、成分(a1)の含有量が79〜95.95%の範囲を逸脱すると、後述する光弾性係数を−300×10−12〜0(m/N)の範囲に調整することが困難となるため好ましくない。成分(a1)の含有量のより好ましい範囲は、85〜95%である。
【0027】
(A2)において、成分(a2)の含有量が0.05%よりも少ないと十分な凝集力が得られず耐久性が劣り、1%以上であるとポットライフが短くなるため作業性が悪くなり、また、過剰な架橋形成により塗膜が硬くなり光漏れ性が悪化するおそれがある。より好ましくは0.1〜0.5%である。
【0028】
(A2)において、成分(a3)の含有量が3%よりも少ないと水酸基とイソシアネート基との架橋を促進する効果が十分に得られず凝集力が不十分となり、10%よりも多いと過剰な架橋促進によりポットライフが短くなるため作業性が悪化し、また、カルボキシル基と架橋剤との反応による架橋形成により塗膜が硬くなり光漏れ性が悪化するおそれがある。より好ましくは3〜5%である。
【0029】
(A2)において、成分(a4)の含有量は、1%よりも少ないと耐久性能が不十分となるおそれがあり、10%よりも多いと帯電防止性能が不十分となる。好ましくは5〜10%である。
【0030】
成分(A)は、上記モノマー成分の混合物を、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の重合法により重合させて製造することができる。これらの中でも、反応制御が容易で、乳化剤等の不純物を含まない点で、溶液重合法より製造したものが好ましい。
【0031】
上記のようにして得られる成分(A)の重量平均分子量(Mw)は50〜200万であり、好ましくは80〜160万である。重量平均分子量が50万未満であると、耐久性が不十分となり、一方200万よりも大きいと製造が困難であり、また、塗工時に多量の溶剤で希釈する必要があり環境上好ましくなく、作業性も悪化する。
【0032】
また成分(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn;分散指数)は7〜40であることが好ましく、15〜30がより好ましい。なお、本明細書において重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、実施例中に記載した測定方法により求められる値を意味する。
【0033】
本発明においては、帯電防止剤として成分(B)含フッ素アニオンを含むイオン化合物を用いる。この含フッ素アニオンを含むイオン化合物として、例えば、有機カチオンと含フッ素アニオンからなるイオン化合物、アルカリ金属カチオンと含フッ素アニオンからなるイオン化合物などが例示される。含フッ素アニオンとしてはBF、PF、CFCOO、CFSO、(CFSO、(SOF)、CSO等が挙げられる。
【0034】
有機カチオンとしてはピリジニウムカチオン、ピペリジウムカチオン、ピロリジウムカチオン、ピロリン環を有するカチオン、ピロール環を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。具体的には、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−4−メチルピリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオン;1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−エチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ヘキシルピペリジニウムカチオン等のピペリジニウムカチオン;1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ペンチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−へキシルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ヘプチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−ペンチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−へキシルピロリジニウムカチオン等のピロリジニウムカチオン;2−メチル−1−ピロリンカチオン等のピロリン環を有するカチオン;1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオン等のピロール環を有するカチオン;1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムカチオン;テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン等のテトラアルキルアンモニウムカチオンが例示できる。
【0035】
有機カチオンと含フッ素アニオンからなるイオン化合物として、具体的には、1−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド;1−ブチル−1−メチルピロリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジウムテトラフルオロボレート;1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート;テトラエチルアンモニウムトルフルオロアセテート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。これらのうち、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートが成分(A)中における安定性が高く帯電防止性能が良好である点で好ましい。
【0036】
一方、アルカリ金属カチオンとしては、K、Li、Na等が例示できる。アルカリ金属カチオンと含フッ素アニオンからなるイオン化合物のうち、LiBF、LiPF、LiCFSO、Li(CFSON、Li(SOF)N、LiCSO等のリチウム塩が成分(A)中における安定性が高く帯電防止性能が良好であるため好ましい。
【0037】
本発明に用いる粘着剤組成物中の成分(B)の配合量は、成分(A)100質量部(以下、「部」で示す)に対して、0.01〜10部であり、好ましくは0.1〜8部である。0.01部よりも少ないと十分な帯電防止性能が得られず、10部よりも多いと、帯電防止剤のブリードにより耐久性が低下するため好ましくない。
【0038】
成分(C)イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート等の分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物;それらをトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと付加反応させたイソシアネート化合物やイソシアヌレート化合物、ビュレット型化合物、更には公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等と付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート化合物等の誘導体を挙げることができる。これらの中でも、キシリレンジイソシアネートおよびその誘導体が好ましく用いられる。
【0039】
粘着剤組成物中の成分(C)の配合量は、成分(A)100部に対して、0.1〜5部である。
【0040】
本発明では、上記成分(C)以外の架橋剤を併用することもできる。このような架橋剤として、(D1)エポキシ系架橋剤、(D2)金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
【0041】
上記成分(D1)エポキシ架橋剤としては、エチレンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N'−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0042】
粘着剤組成物中の(D1)の配合量は、成分(A)100部に対して0.01〜5部であり、好ましくは0.1〜2部である。配合量がこの範囲であると、耐久性を良好な範囲に調整できる点で好ましい。
【0043】
上記成分(D2)キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属にアセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物等が挙げられる。これらのうち、加水分解に対して安定性が高いという点でアルミニウムトリアセチルアセテートが好適に用いられる。
【0044】
成分(C)イソシアネート系架橋剤に加えて、(D2)金属キレート系架橋剤を併用することにより、耐久性がさらに向上するとともに、熟成に要する時間を短縮することができるため、生産性を高め、在庫量を低減することが可能となる。
【0045】
粘着剤組成物中の成分(D2)の配合量は、成分(A)100部に対して、0.01〜1部であり、好ましくは0.1〜0.5部である。0.01部よりも少ないと耐久性の向上効果が得られず、1部よりも多いと経時安定性が悪くなる場合がある。また、成分(C)に対して配合質量比が1:0.5〜1:2となるように配合することが好ましい。配合比がこのような範囲であると、耐久性をさらに向上させ、熟成時間を短縮することが出来る。
【0046】
本発明に用いる粘着剤組成物には、更に、成分(E)シランカップリング剤を配合することが好ましい。これを使用することにより、粘着剤をガラスに対し強固に接着することができ、湿熱環境下で剥がれを防止することができる。具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0047】
粘着剤組成物中のシランカップリング剤(E)の配合量は、成分(A)100部に対して、0.1〜5部であり、好ましくは0.1〜1部である。0.1部よりも少ないと
ガラスに対する十分な密着性が得られないおそれがあり、5部よりも多いとシランカップリング剤がブリードし耐久性が低下する場合があるため好ましくない。
【0048】
粘着剤組成物の調製は、上記成分(A)ないし(C)と必要により成分(D1)、(D2)および(E)やその他の任意成分を配合し、これらを常法に従って混合することによって行われる。使用可能な任意成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、粘着付与樹脂、無機粒子、有機粒子等が挙げられ、これらは本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0049】
かくして得られた粘着剤組成物を、支持体上の少なくとも一方の面に常法に従って塗工し、乾燥、架橋処理することによって本発明の偏光板用粘着剤を得ることができる。形成される粘着剤層の厚みは、通常5〜50μm、好ましくは10〜30μm程度である。
【0050】
本発明の偏光板用粘着剤は、光弾性係数が−300×10−12〜0(m/N)であり、さらに−250×10−12〜0(m/N)であることが好ましい。−300×10−12〜0(m/N)の範囲を逸脱すると、光漏れを十分に抑制することが出来ない
。なお本明細書において、光弾性係数は、実施例中に記載の方法によって測定される値である。
【0051】
また本発明の偏光板用粘着剤は、アクリル系ポリマーと帯電防止剤の相溶性が高く、帯電防止剤を高濃度で添加してもブリードアウトしないため、高い帯電防止性を付与することができ、例えば、表面抵抗値を1.0×10〜1.0×10Ω/□程度に調整することが可能である。表面抵抗値は実施例中に記載の方法によって測定される値である。
【0052】
さらに本発明の偏光板用粘着剤からなる層を、偏光板の少なくとも一方の面に設けることによって、本発明の粘着剤付偏光板を得ることができる。偏光板上に設けられる粘着剤層の厚みは、通常5〜50μm、好ましくは10〜30μm程度である。
【0053】
偏光板上に粘着剤層を設けるにあたっては、偏光板上に粘着剤組成物を塗工し、乾燥・熟成させるか、または支持体に塗工し乾燥させた塗膜を偏光板上に張り合わせ、これを熟成させることにより粘着剤層を形成することができる。
【0054】
また、本発明に使用される偏光板としては、他の機能を有する層が積層されていてもよく、具体的には、楕円偏光板、位相差板等も含まれる。
【0055】
上記のようにして得られる本発明の偏光板が用いられる液晶素子のタイプとしては特に限定されるものではなく、TNモード、VAモード、IPSモード、OCBモード等のいずれであってもよい。
【0056】
本発明の偏光板用粘着剤は、帯電防止性能が高く、セパレーターを剥離する際の静電気の発生を効果的に防止するとともに、優れた光漏れ防止性と耐久性を備え、高温高湿環境下でも光漏れが生じず、発泡や剥がれ等の発生を防止できるものであるが、その理由は次のように考えられる。
エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキシエチルは、固有複屈折が0に近い負の値を有しており、該モノマーを79〜97.9%の割合で共重合させることにより、(メタ)アクリル系ポリマーの測定波長600nmにおける光弾性係数は−300×10−12〜0(m/N)の範囲に調整され、偏光板の収縮による光漏れを抑制することが出来る。
さらに、エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキシエチルを特定量共重合した(メタ)アクリル系ポリマーは、イオン化合物を安定化する効果を有しており、特に電気陰性度の高いフッ素アニオンを含有する解離度の高いイオン化合物を添加することにより高い帯電防止性能を発揮している。
また、水酸基含有モノマーとカルボキシル基含有モノマーとを併用し、比較的多量のイソシアネート系架橋剤で架橋させることにより、十分な凝集力を付与し、耐久性の良好な粘着剤が得られている。
【実施例】
【0057】
次に実施例等を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0058】
製 造 例 1
アクリル系ポリマーの製造:
攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコに、ブチルアクリレート7.8部、アクリル酸0.2部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2部、アクリル酸2−メトキシエチル90部、酢酸エチル120部を仕込みフラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコの内容物を66℃に加熱した。次いで、十分に窒素ガス置換したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.05部攪拌下にフラスコ内に添加した。フラスコ内の内容物の温度が65−66℃に維持できるように、加熱及び冷却を3時間行った。酢酸エチル160部を滴下し75℃に加熱し5時間還流を行い最後に酢酸エチル120部を添加してアクリル系ポリマーA1溶液を得た。このアクリル系重合体A1について、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を下記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定条件に従って測定し、分散指数(Mw/Mn)を求めた。また、105℃加熱残分(nV)および粘度についても下記方法により測定した。測定結果をモノマー組成と併せて表1に示す。
【0059】
<GPC測定条件>
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSK−GEL HXL−H (ガードカラム)
(2)TSK−GEL G7000HXL
(3)TSK−GEL GMHXL
(4)TSK−GEL GMHXL
(5)TSK−GEL G2500HXL
サンプル濃度:1.0mg/cmとなるように、テトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量: 1ml/min
カラム温度:40℃
【0060】
<105℃加熱残分(nV)の測定方法>
精秤したブリキシャーレ(n1)にアクリル系共重合体溶液を1g程度入れ、合計重量(n2)を精秤した後、105℃で3時間加熱した。その後、このブリキシャーレを室温のデシケータ内に1時間静置し、次いで再度精秤し加熱後の合計重量(n3)を測定した。得られた重量測定値(n1〜n3)を用いて下記式から加熱残分(nV)を算出した。
加熱残分(%)=100×[加熱後重量(n3−n1)/加熱前重量(n2−n1)]
【0061】
<粘度の測定方法>
B型粘度計を使用して、23℃にて測定した。
【0062】
製 造 例 2〜4
表1に示すモノマー組成に代えた以外は製造例1と同様にしてアクリル系ポリマーA2〜A4溶液を得た。このポリマーのMw、Mn、105℃加熱残分(nV)、粘度を製造例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0063】
比 較 製 造 例 1〜3
表1に示すモノマー組成に代えた以外は製造例1と同様にしてアクリル系ポリマーB1〜B3溶液を得た。このポリマーのMw、Mn、105℃加熱残分(nV)、粘度を製造例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
実 施 例 1
粘着剤付偏光板の作製:
(粘着剤組成物の調製)
製造例1により得られたアクリル系ポリマーA1溶液のアクリル系ポリマーA1(固形分)100部に対して、帯電防止剤としてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩(Li(CFSON)2.5部、イソシアネート系架橋剤としてキシリレンジイソシアネートトリメチロールプロパン付加体であるTD−75(綜研化学社製)0.7部、シランカップリング剤としてA−50(綜研化学社製)0.2部を添加し、これらを充分混合して粘着剤組成物を得た。
【0066】
(偏光板の作製)
泡抜け後、ドクターブレードを用い剥離処理されたPETセパレーターに塗工し、すぐに90℃で3分間乾燥した。乾燥後、偏光板に張り合わせ、室温23℃、湿度65%の条件下1〜7日間静置して粘着剤付偏光板を得た。
【0067】
実 施 例 2〜8
アクリル系ポリマー、帯電防止剤、架橋剤およびシランカップリング剤を下記表2のように代えた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。また、得られた粘着剤組成物を用い、実施例1と同様にして粘着剤付偏光板を作製した。
【0068】
比 較 例 1〜7
アクリル系ポリマー、帯電防止剤、架橋剤およびシランカップリング剤を下記表3のように代えた以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。また、得られた粘着剤組成物を用い、実施例1と同様にして粘着剤付偏光板を作製した。
【0069】
試 験 例 1
実施例1〜8および比較例1〜7で得た粘着剤付偏光板について、以下の方法により性能を評価した。これらの結果を表2および3にまとめて示す。
【0070】
<耐熱・耐湿試験>
粘着剤付偏光板を、310mm×385mmの大きさに裁断し、ガラス板の片面にラミネーターロールを用いて貼着し、次いで、50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して、試験板を作成した。同様の試験板を2枚作成し、それぞれ温度60℃、湿度95%RHの条件下(耐湿)及び温度80℃の条件下(耐熱)で500時間放置し、以下の基準でハガレの発生等を目視で観察し評価した。
(基準)
○:ハガレ等の外観不良は観察されなかった。
△:ハガレ等の外観不良が僅かに観察された。
×:ハガレ等の外観不良が明らかに観察された。
【0071】
<ショック試験>
粘着剤付偏光板を310mm×385mmの大きさに裁断し、ガラス板の片面にラミネーターロールを用いて貼着し、次いで50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して試験板を作成した。この試験板を温度60℃、湿度95%RHの条件下に24時間放置した後、温度60℃の条件下に96時間放置し以下の基準でハガレ、発泡の発生等を目視で確認した。
(基準)
◎:ハガレ等の外観不良は全く観察されなかった。
○:ハガレ等の外観不良がごく僅かに観察されたが問題ない範囲である。
△:ハガレ等の外観不良が僅かに観察された。
×:ハガレ等の外観不良が明らかに観察された。
【0072】
<光漏れ試験>
2枚の粘着剤付偏光板を310mm×385mmに裁断し、ガラス板の両側に互いに直交するようにラミネーターロールを用いて貼着し、次いで50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して試験板を作成した。この試験板を温度80℃の条件下に500時間放置し以下の基準で光漏れの観察を行った。
(基準)
○:光漏れは観察されなかった。
△:光漏れが僅かに観察された。
×:光漏れが明らかに観察された。
【0073】
<エージング日数>
エージング日数はゲル分率の値を24時間おきに測定し、前回測定値からゲル分率値の上昇が見られなくなった時の、前回測定時点までの日数である。ゲル分率は以下の方法により測定した。
(ゲル分率の測定方法)
得られた粘着剤を約0.1gをサンプル瓶に採取し、該サンプル瓶に酢酸エチル30gを加えて、室温で24時間放置した後、サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網で濾過し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥重量を測定し、次式により求めた。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/粘着剤採取重量)×100
【0074】
<表面抵抗値の測定>
90mm×90mmに裁断した粘着剤付偏光板について、R8252デジタルエレクトロメータ(株式会社エーディーシー社製)を用いて表面抵抗値を測定した。
【0075】
<光弾性係数>
50mm×10mm×1mm(長さ×幅×厚み)に裁断した粘着剤層についてM−220自動波長走査型エリプソメータ(日本分光株式会社製)を用いて測定波長600nmにおける光弾性係数の測定を行った。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
帯電防止剤であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩を15部添加している比較例1では帯電防止剤のブリードにより耐久性が著しく低下しており、また、帯電防止剤を添加していない比較例2では表面抵抗値が高く、帯電防止性能が得られない。
エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキシエチルを50%共重合した(メタ)アクリル系ポリマーを使用している比較例3では、光弾性係数の値を−300×10−12〜0(m/N)の範囲に調整することが出来ず、光漏れ性が悪い。
また、エチレンオキシド基の付加モル数が2であるエトキシジエチレングリコールアクリレートを使用している比較例4では、光弾性係数を上記範囲に調整出来ないため光漏れ性が悪く、また、エチレンオキシド基の吸湿性が高いために耐久性が悪化する傾向にある。
さらに、エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキシエチルを共重合していない比較例5、6では、帯電防止剤との相溶性が悪いため、帯電防止剤が粘着剤層界面にブリードし耐久性が悪く、また、光弾性係数も上記範囲にないため光漏れ性も悪い。
帯電防止剤としてフッ素アニオンを含まないイオン化合物を使用している比較例7では、本件発明の(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性が不十分であり、イオン化合物がブリードするため十分な耐久性が得られていない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の偏光板粘着剤は、セパレーター剥離時の静電気の発生を有効に防止するとともに、優れた光漏れ防止性および耐久性を有し、高温高湿条件においても光漏れや、発泡、剥がれ等が生じないものであり非常に有用なものである。
以上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)ないし(C)
(A)少なくとも次の成分(a1)ないし(a4)
(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキ
シエチル 79〜97.9質量%
(a2)水酸基含有モノマー 0.05〜10質量%
(a3)カルボキシル基含有モノマー 0.1〜10質量%
(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 1〜10質量%
を共重合してなり重量平均分子量が50万〜200万である(メタ)アクリル系ポリ
マー(但し、(a2)が1質量%以上のとき(a3)は3質量%未満であり、(a2)
が1質量%未満のとき(a3)は3質量%以上) 100質量部
(B)含フッ素アニオンを含むイオン化合物 0.01〜10質量部
(C)イソシアネート系架橋剤 0.1〜5質量部
を含有する粘着剤組成物から得られ、測定波長600nmにおける光弾性係数が−300×10−12〜0(m/N)である偏光板用粘着剤。
【請求項2】
次の成分(A1)、(B)および(C)
(A1)少なくとも次の成分(a1)ないし(a4)
(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキ
シエチル 80〜97.9質量%
(a2)水酸基含有モノマー 1〜10質量%
(a3)カルボキシル基含有モノマー 0.1質量%以上3質量%未満
(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 1〜10質量%
を共重合してなり重量平均分子量が50万〜200万である(メタ)アクリル系ポリ
マー 100質量部
(B)含フッ素アニオンを含むイオン化合物 0.01〜10質量部
(C)イソシアネート系架橋剤 0.1〜5質量部
を含有する粘着剤組成物から得られ、測定波長600nmにおける光弾性係数が−300×10−12〜0(m/N)である請求項1記載の偏光板用粘着剤。
【請求項3】
次の成分(A2)、(B)および(C)
(A2)少なくとも次の成分(a1)ないし(a4)
(a1)エチレンオキシド基の付加モル数が1である(メタ)アクリル酸アルコキ
シエチル 79〜95.95質量%
(a2)水酸基含有モノマー 0.05質量%以上1質量%未満
(a3)カルボキシル基含有モノマー 3〜10質量
(a4)(メタ)アクリル酸アルキルエステル 1〜10質量%
を共重合してなり重量平均分子量が50万〜200万である(メタ)アクリル系ポリ
マー 100質量部
(B)含フッ素アニオンを含むイオン化合物 0.01〜10質量部
(C)イソシアネート系架橋剤 0.1〜5質量部
を含有する粘着剤組成物から得られ、測定波長600nmにおける光弾性係数が−300×10−12〜0(m/N)である請求項1記載の偏光板用粘着剤。
【請求項4】
(B)含フッ素アニオンを含むイオン化合物が、アルカリ金属カチオンと含フッ素アニオンからなるものである請求項1ないし3のいずれかの項記載の偏光板用粘着剤。
【請求項5】
アルカリ金属カチオンが、カリウムイオン、リチウムイオンおよびナトリウムイオンよりなる群から選ばれたものである請求項4記載の偏光板用粘着剤。
【請求項6】
含フッ素アニオンが、BF,PF,CFCOO,CFSO,(CFSO,(SOF)およびCSOよりなる群から選ばれたものである請求項4または5記載の偏光板用粘着剤。
【請求項7】
(B)含フッ素アニオンを含むイオン化合物が、有機カチオンと含フッ素アニオンからなるものである請求項1ないし3のいずれかの項記載の偏光板用粘着剤。
【請求項8】
有機カチオンが、ピリジニウムカチオン、ピペリジウムカチオン、ピロリジウムカチオン、ピロリン環を有するカチオン、ピロール環を有するカチオン、イミダゾリウムカチオンおよびテトラアルキルアンモニウムカチオンよりなる群から選ばれたものである請求項7記載の偏光板用粘着剤。
【請求項9】
含フッ素アニオンが、BF,PF,CFCOO,CFSO,(CFSO,(SOF)およびCSOよりなる群から選ばれたものである請求項7または8記載の偏光板用粘着剤。
【請求項10】
粘着剤組成物が、さらに成分(D2)金属キレート系架橋剤を、成分(A)100質量部に対して0.01〜1質量部含有するものである請求項1ないし9のいずれかの項記載の偏光板用粘着剤。
【請求項11】
さらに成分(E)シランカップリング剤を含有する請求項1ないし10のいずれかの項記載の偏光板用粘着剤。
【請求項12】
偏光板の少なくとも一方の面に請求項1ないし11のいずれかの項記載の粘着剤からなる層を有する粘着剤付偏光板。

【公開番号】特開2012−67275(P2012−67275A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46175(P2011−46175)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】