説明

偏光素子、偏光素子の製造方法、液晶装置及び電子機器

【課題】偏光部において均一な偏光特性を得ること。
【解決手段】複数の第一針状粒子を含む第一の偏光部と、複数の第二針状粒子を含む第二の偏光部と、前記第一の偏光部と前記第二の偏光部とを互いに区画するバンク層とを備え、前記バンク層は、少なくとも前記第一の偏光部を平面視で挟むように配置された第一導電部及び第二導電部を有し、平面視における前記複数の第一針状粒子の平均配向方向は、前記第一導電部の延在方向と前記第二導電部の延在方向とに交差している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光素子、偏光素子の製造方法、液晶装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフルカラー表示の液晶表示装置の多くは、例えば赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の複数種の色材層からなるカラーフィルターを備えている。このような液晶表示装置には、偏光板などの偏光素子が設けられている。偏光板としては、一般的には有機偏光板が用いられるが、吸収タイプのワイヤーグリッド偏光板や、金属の針状粒子を含んだ偏光ガラスなどが用いられる。特許文献1及び非特許文献1には、母材中で針状粒子を配向させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3359394号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://jstshingi.jp/abst/p/10/1056/kyushu1.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1には、具体的にどのような手順で針状粒子を配向させるかについての言及はされていない。また、非特許文献1に記載の手法においては、一対の電極が一面上に形成されたステージ上に、複数の針状粒子を含む液体層が塗布された基板を載置させた状態で、電極間に電圧を印加して基板上に電界を発生させる構成であるため、基板上においては電気力線が曲線状に形成されてしまう。このため、複数の針状粒子が当該曲線に沿って配向される場合がある。また、液体層と電極との距離にばらつきがあると、液体層の中での電気力線の形状にばらつきが生じる場合がある。その結果、複数の針状粒子の配向が偏光部内部でバラつき、偏光部全体で均一な偏光特性が得られない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、偏光特性の面内での均一性が高い偏光素子及び該偏光素子の製造方法を提供することを目的とする。また、そのような偏光素子を用いることで表示品位に優れた液晶装置を提供することを目的とする。また、この種の液晶装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る偏光素子は、複数の第一針状粒子を含む第一の偏光部と、複数の第二針状粒子を含む第二の偏光部と、前記第一の偏光部と前記第二の偏光部とを互いに区画するバンク層とを備え、前記バンク層は、少なくとも前記第一の偏光部を平面視で挟むように配置された第一導電部及び第二導電部を有し、平面視における前記複数の第一針状粒子の平均配向方向は、前記第一導電部の延在方向と前記第二導電部の延在方向とに交差していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、バンク層が少なくとも第一の偏光部を平面視で挟むように配置された第一導電部及び第二導電部を有し、平面視における複数の第一針状粒子の平均配向方向が第一導電部の延在方向と第二導電部の延在方向とに交差しているので、複数の第一針状粒子の配向は第一導電部と第二導電部との間に印加される電界によって制御されている。これにより、第一の偏光部における複数の第一針状粒子の配向の均一性が高いため、第一の偏光部における偏光特性の面内での均一性が高い偏光素子が得られる。
【0009】
上記の偏光素子において、平面視における前記平均配向方向は、前記第一導電部の延在方向と直交することが好ましい。
本発明によれば、平面視における平均配向方向が第一導電部の延在方向と直交するので、複数の第一針状粒子の平均配向方向は、第一導電部から第二導電部へ向けて形成される電界の方向に沿っている。これにより、第一の偏光部における複数の第一針状粒子の配向の均一性が高いため、第一の偏光部における偏光特性の面内での均一性が高い偏光素子が得られる。
【0010】
上記の偏光素子において、前記平均配向方向は、前記第一導電部と前記第二導電部との間に印加される電界の方向と略一致することが好ましい。
本発明によれば、平均配向方向が第一導電部と第二導電部との間に印加される電界の方向と略一致するので、第一の偏光部における複数の第一針状粒子の配向の均一性が高くなる。これにより、第一の偏光部における偏光特性の面内での均一性が高い偏光素子が得られる。
【0011】
上記の偏光素子は、前記第一の偏光部と前記第二の偏光部と前記バンク層とを支持する支持面を有する基板を更に備え、前記第一導電部及び前記第二導電部は、前記支持面に平行な面上に配置されていることが好ましい。
本発明によれば、第一の偏光部と第二の偏光部とバンク層とを支持する支持面を有する基板を更に備え、第一導電部及び第二導電部が支持面に平行な面上に配置されているので、支持面に平行な方向の電界が形成されることになる。これにより、複数の針状粒子は、支持面に対して略平行に配向されることになる。従って、視角依存性が小さい偏光素子が得られる。
【0012】
上記の偏光素子において、前記バンク層は、表面の少なくとも一部に光吸収層を有することが好ましい。
本発明によれば、バンク層が表面の少なくとも一部に光吸収層を有するので、偏光部に入射する光以外の光を吸収することができる。
【0013】
上記の偏光素子において、前記バンク層は、表面の少なくとも一部に光反射層を有することが好ましい。
本発明によれば、バンク層が表面の少なくとも一部に光反射層を有するので、例えば液晶装置などのバックライト側に光反射層を配置させることにより、偏光部に入射させる光以外の光を再利用することができる。
【0014】
上記の偏光素子において、前記第一導電部及び前記第二導電部のうち少なくとも一部は、前記第一の偏光部に接していることが好ましい。
本発明によれば、第一導電部及び前記第二導電部のうち少なくとも一部は、第一の偏光部に接しているので、第一の偏光部に対して直接的かつ効率的に電界を発生させることができる。これにより、針状粒子の配向をより確実に揃えることができる。
【0015】
上記の偏光素子において、前記第一の偏光部は第一波長域の光に対して偏光子として機能し、前記第二の偏光部は前記第一波長域とは異なる第二波長域の光に対して偏光子として機能することが好ましい。
本発明によれば、第一の偏光部が第一波長域の光に対して偏光子として機能し、第二の偏光部が第一波長域とは異なる第二波長域の光に対して偏光子として機能することとしたので、偏光部ごとに異なる波長域の色光が入射する場合であっても、各偏光部における偏光特性をより高めることができる。
【0016】
本発明に係る偏光素子の製造方法は、バンク層を形成するバンク層形成工程と、複数の第一針状粒子を含む第一の偏光部を、前記バンク層によって区切られた第一の領域に形成し、複数の第二針状粒子を含む第二の偏光部を、前記バンク層によって区切られた第二の領域に形成する偏光部形成工程と、を含み、前記バンク層形成工程は、少なくとも前記第一の領域を平面視で挟むように第一導電部及び第二導電部を配置させる工程を含み、前記偏光部形成工程は、前記第一導電部と前記第二導電部との間に電界を発生させることによって、前記複数の第一針状粒子の平均配向方向を制御する工程を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、バンク層形成工程において、少なくとも一の偏光部を平面視で挟む位置に第一導電部及び第二導電部を配置させ、偏光部形成工程において、第一導電部と第二導電部との間に電界を発生させることによって、複数の第一針状粒子の平均配向方向を制御することとしたので、複数の第一針状粒子の配向を、第一導電部と第二導電部との間に印加される電界によって制御することができる。これにより、第一の偏光部における複数の第一針状粒子の配向の均一性を高めることができるため、第一の偏光部における偏光特性の面内での均一性が高い偏光素子を得ることができる。
【0018】
上記の偏光素子の製造方法において、前記偏光部形成工程は、前記複数の第一針状粒子を含む液体層を前記第一の領域に塗布する工程と、前記液体層に含まれた状態の前記複数の第一針状粒子を、前記電界によって配向させる工程と、前記複数の第一針状粒子が配向された状態で前記液体層を固化する工程とを含むことが好ましい。
本発明によれば、偏光部形成工程において、複数の第一針状粒子を含む液体層を第一の領域に塗布し、液体層に含まれた状態の複数の第一針状粒子を電界によって配向させ、複数の第一針状粒子が配向された状態で液体層を固化することとしたので、複数の針状粒子の配向が一の偏光部の内部で均一な構成を効率的に形成することができる。
【0019】
本発明に係る液晶装置は、一対の基板間に挟持された液晶層と、カラーフィルターと、を備えた液晶パネルと、少なくとも一つの偏光素子とを備え、前記偏光素子として、上記の偏光素子が用いられていることを特徴とする。
本発明の液晶装置は前記本発明の偏光素子を備えているため、表示品位に優れた液晶装置を実現することができる。
【0020】
本発明に係る液晶装置は、第一色に対応する第一サブ画素と、第二色に対応する第二サブ画素と、前記第一サブ画素に対応して設けられた第一偏光部と、前記第二サブ画素に対応して設けられた第二偏光部と、前記第一偏光部に含まれる複数の第一針状粒子と、前記第二偏光部に含まれる複数の第二針状粒子と、前記第一偏光部と前記第二偏光部とを互いに区画するバンク層と、を含み、前記バンク層は、前記第一偏光部及び前記第二偏光部のうち少なくとも前記第一偏光部を平面視で挟むように配置された第一導電部及び第二導電部を有し、平面視における前記複数の第一針状粒子の平均配向方向は、前記第一導電部の延在方向と前記第二導電部の延在方向とに交差していることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、複数の第一針状粒子の配向は第一導電部と第二導電部との間に印加される電界によって制御されている。これにより、第一の偏光部における複数の第一針状粒子の配向の均一性が高いため、第一の偏光部における偏光特性の面内での均一性が高い。そのため、コントラスト比が高い表示が得られる。
【0022】
上記の液晶装置において、前記バンク層は、前記第一サブ画素と前記第二サブ画素との間の領域に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、バンク層が第一サブ画素と第二サブ画素との間の領域に設けられているため、当該バンク層が画像表示に関与しない領域に設けられていることになる。従って、第一導電部及び第二導電部が設けられていても表示される画像を暗くするといったことが引き起こされずに済むため、大面積の液晶装置に上記のバンク層がもうけられる構成であっても、明るくコントラスト比が高い高画質の画像を表示することができる。
【0023】
本発明の電子機器は、前記本発明の液晶装置を備えたことを特徴とする。
本発明の電子機器は前記本発明の液晶装置を備えているため、表示品位に優れた液晶表示部を有する電子機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態に係る偏光素子の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態に係る偏光素子の一部の構成を示す平面図。
【図3】本実施形態に係る偏光素子の一部の構成を示す断面図。
【図4】本実施形態に係る偏光素子の製造過程を示す工程図。
【図5】本実施形態に係る偏光素子の製造過程を示す工程図。
【図6】本実施形態に係る偏光素子の製造過程を示す工程図。
【図7】本実施形態に係る偏光素子の製造過程を示す工程図。
【図8】本発明の第二実施形態に係る液晶装置の構成を示す平面図。
【図9】本実施形態に係る液晶装置の構成を示す断面図。
【図10】本実施形態に係る液晶装置の一部の構成を示す断面図。
【図11】本発明の第三実施形態に係る電子機器の構成を示す斜視図。
【図12】本発明に係る偏光素子の他の構成を示す平面図。
【図13】本発明に係る偏光素子の他の構成を示す平面図。
【図14】本発明に係る偏光素子の他の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る偏光素子20を示す斜視図である。なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0026】
図1に示すように、偏光素子20は、基材としてのガラス基板10によって支持されている。偏光素子20は、例えば複数のサブ画素からなる画素を複数有する液晶パネルの表示面などに貼り付けられて用いられる。
【0027】
ガラス基板10の具体的な材質は特に限定されるものではなく、公知のいかなるガラス基板を用いても良い。なお、透光性を有する基板であれば、特にガラス基板に限定されるものではなく、石英基板、水晶基板、サファイア基板、樹脂基板等を用いても良い。偏光素子20に耐熱性が要求される場合には、無機系の基板を用いることが望ましい。
【0028】
偏光素子20は、ガラス基板10の一面10aに設けられている。偏光素子20は、ある特定の偏光状態の偏光を透過する一方、他の偏光状態の偏光を吸収する特性を有する。
【0029】
偏光素子20は、複数の偏光部を備えている。複数の偏光部は、複数の偏光部21Rと複数の偏光部21Gと複数の偏光部21Bを含む。図1に示したように、一の偏光部21Rと一の偏光部21Gと一の偏光部21Bによって、一の偏光部群21が形成されている。従って、複数の偏光部群21は、偏光素子20内にマトリクス状に配置されている。各偏光部群21には、ガラス基板10の一面10aに平行な方向に並んで配置された複数の偏光部21R、21G及び21Bが形成されている。
【0030】
図2は、偏光素子20の構成を示す平面図である。
図2に示すように、偏光部21R、21G及び21Bは、矩形の形状を持ち、一方向に長手に形成されている。偏光部21Rの短手方向をX軸方向とし、長手方向をY軸方向とする。XY面はガラス基板10の一面10aと平行である。偏光部21R、21G及び21Bは、等ピッチで一列に並んで配置されている。すなわち、偏光部21R、21G及び21Bは、短手方向に互いに隣り合って配置されている。偏光部21R、21G及び21Bは、それぞれ同一形状及び同一寸法を持つ。偏光部21R、21G及び21Bの配置及び寸法として、例えば偏光素子20が貼り付けられる液晶パネルのサブ画素の配置及び寸法に対応させた寸法とすることができる。なお、偏光部21Rは第一の偏光部に相当し、偏光部21Gは第二の偏光部に相当し、偏光部21Bは第3の偏光部に相当する。
【0031】
偏光部群21には、バンク層22が形成されている。バンク層22は、偏光部21R、21G及び21Bを仕切るように形成されている。バンク層22は、複数の第一導電部22A、複数の第二導電部22B及び2つの絶縁部22Cを有している。このうち、2つの絶縁部22CはX方向に延在しており、平面視(図中Z方向視)で偏光部21R、21G及び21BをY方向に挟む位置に設けられている。
【0032】
図3は、図2におけるA−A断面に沿った構成を示す図である。すなわち、一の偏光部群21のXZ断面図である。
各第一導電部22Aは、第一電極層24Aを有している。第一電極層24Aは、平面視で第一導電部22Aに重なる領域に配置されている。各第二導電部22Bは、第二電極層24Bを有している。第二電極層24Bは、平面視で第二導電部22Bに重なる領域に配置されている。
【0033】
第一導電部22A及び第二導電部22Bは、ガラス基板10の一面10aに平行な面上に配置されている。複数の第一導電部22A及び複数の第二導電部22Bは、X方向(各偏光部の短手方向)に交互に配置されている。同様に、複数の第一電極層24A及び複数の第二電極層24Bは、X方向に交互に配置されている。各第一導電部22A及び各第二導電部22Bは、例えばY軸方向(各偏光部の長手方向)に延在している。同様に、各第一電極層24A及び各第二電極層24Bは、例えばY軸方向に延在している。
【0034】
互いに隣り合う第一電極層24Aと第二電極層24Bは、平面視で偏光部21R、21G及び21BのいずれかをX方向に挟む位置に設けられている。このように、偏光部21R、21G及び21B各々は、平面視で、一つの第一電極層24Aと一つの第二電極層24Bと2つの絶縁部22Cとによって囲まれている。つまり、偏光部21R、21G及び21B各々は、バンク層22によって囲まれた領域に配置されている。
【0035】
第一電極層24Aは、第一導電部22AのY方向の端部から配線26Aに接続されている。配線26Aは、ガラス基板10の表面や裏面、内部などに引き回されて形成され、不図示の端子を介して接地されるようになっている。第二電極層24Bは、第二導電部22BのY方向の端部から配線26Bに接続されている。配線26Bは、ガラス基板10の表面や裏面、内部などに引き回されて形成され、不図示の端子を介して電源27に接続されるようになっている。
【0036】
図3に示すように、第一導電部22A及び第二導電部22B(第一電極層24A及び第二電極層24B)のX方向の両端面は、それぞれYZ平面に平行に形成されており、偏光部21R、21G及び21Bに接している。また、第一電極層24A及び第二電極層24Bは、Z方向においてガラス基板10の一面10aから同一の高さ位置に配置されている。したがって、この第一電極層24AのX方向の端面は、第二電極層24BのX方向の端面と対向した状態となっている。このため、第一電極層24Aと第二電極層24Bとの間に電圧を印加した場合、第一導電部22A(第一電極層24A)及び第二導電部22B(第二電極層24B)の一方から他方へ向けてガラス基板10の一面10aに平行な電界が形成される。
【0037】
また、第一導電部22Aは、第一電極層24Aのガラス基板10とは反対側に光吸収層23Aを有し、第二導電部22Bは、第二電極層24Bのガラス基板10とは反対側に光吸収層23Bを有している。したがって、偏光素子20に対してガラス基板10とは反対側から入射する光の一部は、光吸収層23A及び23Bによって吸収されるようになっている。
【0038】
また、第一導電部22Aは、第一電極層24Aのガラス基板10側に光反射層25Aを有し、第二導電部22Bは、第二電極層24Bのガラス基板10側に光反射層25Bを有している。したがって、偏光素子20に対してガラス基板10側から入射する光の一部は、光反射層25A及び25Bによってガラス基板10側へ反射されるようになっている。
【0039】
一方、バンク層22によって囲まれた複数の領域に配置される偏光部21R、21G及び21Bは、無機物を主原料とする透光性の母材50、例えばシリコン酸化物からなる母材50中に、金(Au)、銀(Ag)等からなる複数のナノロッド40(針状粒子)が分散したものである。
【0040】
個々のナノロッド40は、短軸方向が例えば数nmから数十nm程度、長軸方向が例えば数十nmから100nm程度の寸法を有している。ナノロッド40は、振動方向がナノロッド40の短軸方向と一致した偏光成分に対する吸収特性と、振動方向がナノロッド40の長軸方向と一致した偏光成分に対する吸収特性とが異なる。本実施形態では、以下説明するように、ナノロッド40の材質、分布密度、径及び長軸方向の寸法のうち少なくとも一つを含む諸元が、偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bごとに設定されている。
【0041】
本実施形態では、ナノロッド40として、金コア・銀シェルナノロッド40R(第一針状粒子)、金ナノロッド40G(第二針状粒子)、銀ナノロッド40B、が用いられている。金コア・銀シェルナノロッド40Rは、金(第一金属)からなる針状結晶の表面が銀(第二金属)で被覆された複合金属で構成されている。一方、銀ナノロッド40Bは銀単体から構成され、金ナノロッド40Gは金単体から構成されている。
【0042】
本実施形態の場合、偏光部21Rの内部には、金コア・銀シェルナノロッド40Rが配置されている。偏光部21Gの内部には、金ナノロッド40Gが配置されている。偏光部21Bの内部には、銀ナノロッド40Bが配置されている。複数のナノロッド40は、略同一の方向に配向している。ただし、一の偏光部に含まれる複数のナノロッド40の全てが同一方向に配向するとは限らず、複数のナノロッド40各々の配向方向はある程度のばらつきを持っていることがある。そこで、複数のナノロッド40の平均的な配向方向のことを、複数のナノロッド40の平均配向方向と呼ぶことにする。一の偏光部に含まれる複数のナノロッド40の平均配向方向は、ガラス基板10の主面(XY平面)に略平行な方向であって、Z軸と平行な方向から見たとき(平面視にて)、第一導電部22Aの延在方向及び第二導電部22Bの延在方向と交差する方向である。第一導電部22Aの延在方向が第二導電部22Bの延在方向と平行であれば、つまり、第一電極層24Aの延在方向が第二電極層24Bの延在方向と平行であれば、平均配向方向は第一導電部22Aの延在方向及び第二導電部22Bの延在方向と直交する方向である。当該方向は、第一電極層24Aと第二電極層24Bとの間に電圧を印加した場合に、第一導電部22A(第一電極層24A)及び第二導電部22B(第二電極層24B)の一方から他方へ向けて形成される電界の方向に略一致している。
【0043】
これらの3種類のナノロッド40は、それぞれ異なる吸収ピーク波長を有している。金コア・銀シェルナノロッド40Rは、振動方向が長軸方向と一致した偏光成分に対して650nm(赤色波長域)に吸収ピーク波長を有している。金コア・銀シェルナノロッド40Rは、主に赤色波長域の光に対して振動方向が長軸方向と一致した偏光成分を吸収し、振動方向が短軸方向と一致した偏光成分を透過する特性を発現する。
【0044】
金ナノロッド40Gは、振動方向が短軸方向と一致した偏光成分に対して530nm(緑色波長域)に吸収ピーク波長を有している。金ナノロッド40Gは、主に緑色波長域の光に対して振動方向が短軸方向と一致した偏光成分を吸収し、振動方向が長軸方向と一致した偏光成分を透過する特性を発現する。
【0045】
銀ナノロッド40Bは、振動方向が短軸方向と一致した偏光成分に対して410nm(青色波長域)に吸収ピーク波長を有している。銀ナノロッド40Bは、主に青色波長域の光に対して振動方向が短軸方向と一致した偏光成分を吸収し、振動方向が長軸方向と一致した偏光成分を透過する特性を発現する。
【0046】
各ナノロッド40のサイズの一例として、金コア・銀シェルナノロッド40Rは、長軸方向の寸法が例えば24nm、短軸方向の寸法が例えば12nm、アスペクト比が2である。金ナノロッド40Gは、長軸方向の寸法が例えば15nm、短軸方向の寸法が例えば5nm、アスペクト比が3である。銀ナノロッド40Bは、長軸方向の寸法が例えば40nm、短軸方向の寸法が例えば5nm、アスペクト比が8である。なお、アスペクト比とは、ナノロッド40の短軸方向の寸法に対する長軸方向の寸法の比である。
【0047】
上述したように、銀ナノロッド40Bおよび金ナノロッド40Gと金コア・銀シェルナノロッド40Rとでは、吸収ピーク波長を示す偏光成分の振動方向が異なる。したがって、偏光素子20において銀ナノロッド40Bおよび金ナノロッド40Gと金コア・銀シェルナノロッド40Rとを同一方向に配向させた場合、青色光および緑色光と赤色光とでは偏光素子20を透過する偏光成分の振動方向が異なる。
【0048】
しかしながら、この偏光素子20を液晶装置に適用する場合、液晶パネルの光入射側と光射出側とに本実施形態に係る偏光素子20を使用すれば、青色光、緑色光と赤色光とで透過する偏光成分が異なったとしても、液晶パネル内での偏光状態が異なるだけであり、表示上は差し支えない。
【0049】
このように、金コア・銀シェルナノロッド40Rの諸元は、偏光部21Rに対応する色光もしくは偏光部21Rに入射する色光に対応して選択される。また、金ナノロッド40Gの諸元は、偏光部21Gに対応する色光もしくは偏光部21Gに入射する色光に対応して選択される。また、銀ナノロッド40Bの諸元は、偏光部21Bに対応する色光もしくは偏光部21Bに入射する色光に対応して選択される。
【0050】
ここで、所定の波長域の光に対して、偏光部21Rが透過させる偏光成分の透過率を偏光部21Rが遮断すべき偏光成分の透過率で除して得られる値を、所定の波長の光に対する偏光部21Rの消光比と定義する。偏光部21Gの消光比と偏光部21Bの消光比も同様に定義する。
【0051】
本発明による偏光素子20は、赤色波長域において、偏光部21Rの消光比は、偏光部21Gの消光比および偏光部21Bの消光比よりも大きい。また、緑色波長域において、偏光部21Gの消光比は、偏光部21Rの消光比および偏光部21Bの消光比よりも大きい。また、青色波長域において、偏光部21Bの消光比は、偏光部21Rの消光比および偏光部21Gの消光比よりも大きい。
【0052】
そのため、偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bごとに異なる波長域の色光が入射する場合であっても、各偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bにおける偏光特性が従来の偏光素子よりも高められるような構成となっている。
【0053】
次に、図4〜図7を参照して、本実施形態の偏光素子20の方法を説明する。
図4〜図7は、上記構成の偏光素子20の製造工程を示す図である。
まず、図4に示すように、ガラス基板10上にバンク層22を形成する(バンク層形成工程)。バンク層22は、偏光部21Rを形成する第一の領域ARと偏光部21Gを形成する第二の領域AGと偏光部21Bを形成する第3の領域ABとを互いに区切るように形成する。当該バンク層22は、例えばフォトリソグラフィ法やエッチング法などによりパターニングして形成することができる。この場合、まず光反射層25A及び25Bを形成し、その上に第一電極層24A及び第二電極層24Bを形成し、その後、光吸収層23A及び23Bを形成する。
【0054】
この方法においては、光反射層25A及び25Bを同一層として平坦に形成することができるため、その上に形成される第一電極層24A及び第二電極層24Bの一面10aからの高さ位置を揃えることができる。第一電極層24A及び第二電極層24Bを形成する際には、ガラス基板10に配線26A及び26Bを同時に形成しても良い。当該配線26A及び26Bについては、他の工程で形成しても構わない。勿論、他の方法によりバンク層22及び配線26A、26Bを形成しても構わない。
【0055】
ガラス基板10上にバンク層22、配線26A及び26Bを形成した後、偏光部21R、21G及び21Bを形成する(偏光部形成工程)。偏光部形成工程では、まず、図5に示すように、バンク層22で囲まれた第一の領域ARに、金コア・銀シェルナノロッド40Rを含有する有機溶媒溶液61を塗布し、バンク層22で囲まれた第二の領域AGには、金ナノロッド40Gを含有する有機溶媒溶液62し、バンク層22で囲まれた第3の領域ABには、銀ナノロッド40Bを含有する有機溶媒溶液63を塗布する(塗布工程)。この塗布工程には、たとえば液的吐出法を用いることができる。
【0056】
有機溶媒溶液61〜63は、それぞれシリコン酸化物の原料であるポリシラザンを任意の有機溶媒に溶解したものである。有機溶媒溶液61〜63を塗布した段階では、複数の金コア・銀シェルナノロッド40R、複数の金ナノロッド40G、複数の銀ナノロッド40Bは、それぞれランダムな方向を向いている。
【0057】
次に、図6に示すように、有機溶媒溶液61〜63に対してx軸と平行な方向に電界を印加する(電界印加工程)。この工程では、配線26A及び配線26Bを介して第一電極層24Aと第二電極層24Bとの間に電圧を印加する。第一電極層24Aは第二電極層24Bに対して平行に設けられているため、第一導電部22A(第一電極層24A)から第二導電部22B(第二電極層24B)へ向けて、有機溶媒溶液61〜63の内部にX軸と平行な方向に電界が発生する。金コア・銀シェルナノロッド40R、金ナノロッド40G、銀ナノロッド40Bは全て針状の形状をしており、各ナノロッド40には分極が生じている。そのため、各ナノロッド40は、長軸方向が概ね電界の方向に沿うように配向する。つまり、一の偏光部に含まれる複数のナノロッドの平均配向方向は略電界の方向に沿う。
【0058】
次に、図7に示すように、例えばオーブン75等を用いて有機溶媒溶液61〜63を焼成する(焼成工程)。これにより、有機溶媒溶液61〜63中の有機溶媒が除去されるとともに、ポリシラザンが大気中の水分や酸素と反応して固化し、シリコン酸化物(母材50)に変化する。このとき、金コア・銀シェルナノロッド40R、金ナノロッド40G、銀ナノロッド40Bが略同一方向に配向した状態で固定される。
以上の工程を経て、本実施形態の偏光素子20が完成する。
【0059】
従来の針状粒子の配向方法は、一対の電極が一面上に形成されたステージ上に、複数の針状粒子を含む液体層が塗布された基板を載置させた状態で、電極間に電圧を印加して基板上に電界を発生させる構成であった。そのため、液体層の厚さ方向の断面(XZ面)において電気力線が曲線状に形成される場合があった。また、液体層と電極との距離にばらつきがあると、液体層の面内(XY面)において電気力線の形状にばらつきが生じる場合があった。このため、複数の針状粒子の配向が偏光部内部でバラつき、偏光部全体で均一な偏光特性が得られない可能性があった。
【0060】
これに対して、本実施形態に係る偏光素子20は、バンク層22が、偏光部21R、21G及び21Bのうち少なくとも偏光部21Rを平面視で挟む位置に配置された第一電極層24A及び第二電極層24Bを有し、複数のナノロッド40が、第一導電部22A(第一電極層24A)と第二導電部22B(第二電極層24B)との間に発生する電界の方向に沿って配向されている。そのため、複数のナノロッド40は第一導電部22A(第一電極層24A)から第二導電部22B(第二電極層24B)へ向けてガラス基板10の一面10aと平行に形成される電界の方向に沿って配向されている。これにより、偏光部21R、21G及び21B各々の内部において、複数のナノロッド40の配向の均一性が高いため、偏光部21R、21G及び21B各々において均一性が高い偏光特性を得ることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る偏光素子20の製造方法は、バンク層形成工程において、偏光部21R、21G及び21Bのうち少なくとも偏光部21Rを設ける領域を平面視で挟む位置に第一電極層24A及び第二電極層24Bを配置する。そして、偏光部形成工程において、第一導電部22A(第一電極層24A)と第二導電部22B(第二電極層24B)との間に電界を発生させ、複数のナノロッド40を当該電界の方向に沿って配向させる。そのため、第一導電部22A(第一電極層24A)から第二導電部22B(第二電極層24B)へ向けたガラス基板10の一面10aと平行な電界が形成されることとなり、当該電界の方向に沿って複数のナノロッド40を配向させることができる。これにより、偏光部21R、21G及び21B各々の内部において、複数のナノロッド40の配向の均一性を高めることができるため、偏光部21R、21G及び21B各々において偏光特性の均一性を高めることができる。
【0062】
具体的には、偏光部形成工程に先立って行われるバンク層形成工程において、ガラス基板10上のうち偏光部21Rを形成する領域ARと偏光部21Gを形成する領域AGと偏光部21Bを形成する領域AB各々を囲うようなバンク層22を配置させる。その後の偏光部形成工程において、ガラス基板10上のうちバンク層22に囲まれる領域AR,AG,AB各々に、複数のナノロッド40を含む有機溶媒溶液61〜63を塗布する。次に、有機溶媒溶液61〜63に含まれた状態の複数のナノロッド40を電界の方向に沿って配向させる。最後に、複数のナノロッド40が配向された状態で有機溶媒溶液61〜63を固化する。これにより、複数のナノロッド40の配向が一の偏光部21R、21G及び21Bの内部で均一な構成を効率的に形成することができる。
【0063】
また、大面積の偏光素子20を製造する際、互いに隣り合う第一電極層24Aと第二電極層24Bとの間隔を大きくする必要がないため、第一電極層24Aと第二電極層24Bとの間に印加する電圧を高くする必要がない。そのため、大面積の液晶装置に用いることが可能な偏光特性が高く均一な大面積の偏光素子20を容易に製造できる。
【0064】
また、一の偏光部に含まれる複数のナノロッドの平均配向方向は略電界の方向に沿い、電界の方向はガラス基板10の一面10aと略平行である。そのため、視角依存性が小さい偏光素子20が得られる。
【0065】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
図8及び図9は、本実施形態に係る液晶装置の構成を示す図である。本実施形態では、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を画素スイッチング素子として用いたアクティブマトリクス方式の液晶表示装置の例を挙げて説明する。図8は本実施形態の液晶表示装置を各構成要素とともに対向基板の側から見た平面図、図9は図8のH−H’線に沿う断面図である。
【0066】
図8および図9に示すように、本実施形態の液晶表示装置31は、TFTアレイ基板PXと対向基板33とがシール材34によって貼り合わされ、このシール材34によって区画された領域内に液晶層35が封入された液晶パネル36を有している。液晶層35は、正の誘電率異方性を有する液晶材料から構成されている。シール材34の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる遮光膜(周辺見切り)37が形成されている。
【0067】
シール材34の外側の周辺回路領域には、データ線駆動回路38および外部回路実装端子39がTFTアレイ基板PXの一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路46が形成されている。TFTアレイ基板PXの残る一辺には、表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路46の間を接続するための複数の配線41が設けられている。
【0068】
また、対向基板33の角部においては、TFTアレイ基板PXと対向基板33との間で電気的導通をとるための基板間導通材42が配設されている。対向基板33の液晶層35側の面には、カラーフィルター43が形成されている。液晶パネル36の光入射側および光射出側には、偏光板44,45がそれぞれ配置されている。これらの偏光板44、45(特に偏光板45)は、上記実施形態の偏光素子である。なお、液晶表示装置31の偏光板45側には、不図示のバックライトが配置されている。
【0069】
図10は、液晶表示装置31のうち1画素についての構成を模式的に示す分解斜視図である。
図10に示すように、液晶表示装置31は、マトリクス状に配列された複数の画素のそれぞれに、複数のサブ画素(赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXB)を含んでいる。赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXBは、一画素内において一方向に等ピッチで並んで配置されている。
【0070】
カラーフィルター43は、赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXBの各々に対応して、赤色色材層43R、緑色色材層43G、青色色材層43Bを有している。
【0071】
赤色色材層43Rは、赤色サブ画素PXRに平面視で重なる位置に配置されており、赤色サブ画素PXRを含む寸法に形成されている。緑色色材層43Gは、緑色サブ画素PXGに平面視で重なる位置に配置されており、緑色サブ画素PXGを含む寸法に形成されている。青色色材層43Bは、青色サブ画素PXBに平面視で重なる位置に配置されており、青色サブ画素PXBを含む寸法に形成されている。
【0072】
本実施形態に係る偏光板45では、偏光部21Rは、赤色サブ画素PXRに平面視で重なる位置に配置されており、赤色サブ画素PXRを含む寸法に形成されている。偏光部21Gは、緑色サブ画素PXGに平面視で重なる位置に配置されており、緑色サブ画素PXGを含む寸法に形成されている。偏光部21Bは、青色サブ画素PXBに平面視で重なる位置に配置されており、青色サブ画素PXBを含む寸法に形成されている。
【0073】
また、偏光部21Rは、赤色色材層43Rに平面視で重なる位置に配置されており、偏光部21Gは、緑色色材層43Gに平面視で重なる位置に配置されており、偏光部21Bは、青色色材層43Bに平面視で重なる位置に配置されている。
【0074】
また、図10に示したように、偏光部21Rと偏光部21Gと偏光部21Bを互いに区切るようにバンク層22が設けられている。第一導電部22Aは、緑色サブ画素PXGと青色サブ画素PXBとの間の、画像表示に関与しない領域に設けられている。また、第二導電部22Bは、緑色サブ画素PXGと赤色サブ画素PXRとの間の、画像表示に関与しない領域に設けられている。
【0075】
ここで、例えば、緑色サブ画素PXGを第一のサブ画素とし、青色サブ画素PXBを第二のサブ画素とすることができる。このように、バンク層22は互いに隣り合う2つのサブ画素の間の画像表示に関与しない領域に設けられている。従って、第一導電部22Aと第二導電部22Bは、表示される画像を暗くする等の問題を引き起こすことはないため、本発明の偏光板45を大面積の液晶表示装置に用いても、明るくコントラスト比が高い高画質の画像を表示することができる。
【0076】
また、この構成において、不図示のバックライトから射出され、赤色色材層43R、緑色色材層43G、青色色材層43Bを透過した光は、それぞれ偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bに照射されることになる。ここで、偏光板45の偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bには、ナノロッド40が含まれており、これらナノロッド40についての、材質、分布密度、径及び長軸方向の寸法のうち少なくとも一つを含む諸元が、偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bごとに設定されている。そのため、各色光毎に偏光特性が高められた構成となっている。
【0077】
たとえば、赤色サブ画素PXRに対応する偏光部21Rは、赤色に適した金コア・銀シェルナノロッド40Rを備える。また、緑色サブ画素PXGに対応する偏光部21Gは、緑色に適した金ナノロッド40Gを備える。青色サブ画素PXBに対応する偏光部21Bは、青色に適した銀ナノロッド40Bを備える。このため、明るく、コントラストの高い表示が可能な液晶表示装置を実現できる。
【0078】
また、偏光板45においては、第一実施形態において説明した光反射層25A及び25B(図3等参照)が形成されているため、偏光部21R、21G及び21Bから外れた領域に照射された光は、光反射層25A及び25Bによってバックライト側に反射されることになる。バックライト側においては、当該反射光を散乱等させる構成を配置しておくことにより、光を再利用することができる。
【0079】
本実施形態に係る液晶装置は、赤色サブ画素PXRに対応して設けられた偏光部21Rと、緑色サブ画素PXGに対応して設けられた偏光部21Gと、青色サブ画素PXBに対応して設けられた偏光部21Bと、偏光部21Rに含まれる複数のナノロッド40Rと、偏光部21Gに含まれる複数のナノロッド40Gと、偏光部21Bに含まれる複数のナノロッド40Bと、複数の偏光部21R、21G及び21Bを区画するバンク層22と、を含む。
さらに、バンク層22が備える第一導電部22Aと第二導電部22Bの各々は、互いに隣り合う2つのサブ画素の間の画像表示に関与しない領域に設けられており、各ナノロッド40が、第一導電部22A(第一電極層24A)と第二導電部22B(第二電極層24B)との間に発生する電界の方向に沿って配向されている。
【0080】
そのため、赤色サブ画素PXRと緑色サブ画素PXGと青色サブ画素PXB各々において均一性が高い偏光特性を得ることができる。さらに、第一導電部22Aと第二導電部22Bは、表示される画像を暗くする等の問題を引き起こすことはないため、第一実施形態で説明したように、大面積の液晶装置に用いることが可能な偏光特性が高く均一な大面積の偏光板45を容易に製造できる。そのため、本実施形態に係る液晶装置によれば明るくコントラスト比が高い高画質の画像を表示することができる。
【0081】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を説明する。
図11は本実施形態に係る携帯電話機の構成を示す斜視図である。
図11に示すように、携帯電話機1300(電子機器)は、複数の操作ボタン1302、受話口1303、送話口1304とともに、上記実施形態の液晶表示装置からなる表示部1301を備えている。
【0082】
なお、本発明の電子機器の具体例としては、上記の携帯電話機の他、プロジェクター、電子ブック、パーソナルコンピューター、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビジョン、ビューファインダー型またはモニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた電子機器等が挙げられる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
第一電極層24Aと第二電極層24Bの断面形状は矩形に限られない。例えば、図12に示すように、ガラス基板10の一面10a上に断面視で台形状の隔壁25A及び隔壁25Bが配置され、当該隔壁25Aの少なくとも側面に第一電極層24Aが設けられ、当該隔壁25Bの少なくとも側面に第二電極層24Bが設けられた構成であってもよい。
【0084】
この場合、隔壁25Aと第一電極層24Aが第一導電部22A’を構成し、隔壁25Bと第二電極層24Bが第二導電部22B’を構成する。更に当該第一電極層24A及び第二電極層24Bを覆うように光吸収層23A及び23Bが形成されても構わない。さらに、隔壁25A及び隔壁25Bの断面形状は台形に限られず、矩形であってもよい。
【0085】
このようなバンクは、偏光部を厚くしなければならない場合、有利である。第一実施形態で示したような構成において偏光部を厚くするためには、厚い電極層を設けなければならないが、電極層を厚くすると応力のために断線する虞がある。しかし、本変形例の構成であれば、高い隔壁の側面に電極層を設けているため、電極層の厚さの増加を抑えつつ容易に厚い偏光部を形成することができる。
【0086】
このような構成であっても、第一電極層24Aと第二電極層24Bとの間に電圧を印加することにより、当該第一電極層24A及び第二電極層24Bの一方から他方に向けて電界がX軸に平行に発生することになる。なお、この場合、第一電極層24A及び第二電極層24Bの表面が覆われた状態となるため、当該第一電極層24Aと第二電極層24Bを保護することができるという利点がある。
【0087】
このほか、例えば下記のような変更も可能である。
第二実施形態では、基板と偏光板とを別体として設けていたが、それに限られない。例えば、対向基板33あるいはTFTアレイ基板PXの液晶層側の面に複数の偏光部を設けてもよい。この構成によれば、液晶層と偏光部との間の距離が短くなるため、液晶装置を斜めから見たときの明るさの低下や画質の低下を低減することができる。
【0088】
また、上記第一実施形態から第三実施形態においては、第一導電部22A及び第二導電部22Bの構成として、ガラス基板10の一面10a上に光反射層25A及び25Bが形成され、その上に第一電極層24A及び第二電極層24Bが形成され、更にその上に光吸収層23A及び23Bが形成された積層構造を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。第一導電部22Aは少なくとも第一電極層24Aを有していればよく、第二導電部22Bは少なくとも第二電極層24Bを有していればよい。
【0089】
また、上記第一実施形態から第三実施形態においては、互いに隣り合う第一導電部22Aと第二導電部22Bとの間に1つの偏光部が設けられていたが、それに限られない。互いに隣り合う第一導電部22Aと第二導電部22Bとの間に、X方向に複数の偏光部が設けられていてもよい。
【0090】
さらに、上記第一実施形態から第三実施形態においては、液晶表示装置31の一画素内に赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXBが含まれており、赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXBが、一画素内において一方向に等ピッチで並んで配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
【0091】
また、例えば上記第一実施形態から第三実施形態においては、液晶表示装置31の一画素内に赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXBが含まれており、赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXBが、一画素内において一方向に等ピッチで並んで配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
【0092】
例えば、図13に示すように、液晶表示装置31の一画素内に4つのサブ画素(第一赤色サブ画素PXR1、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXB、第二赤色サブ画素PXR2)が配置されており、当該4つのサブ画素が一画素内にマトリクス状に配置された構成であっても構わない。
【0093】
この場合、カラーフィルター43の色材層の構成としては、第一赤色サブ画素PXR1が赤色色材層43R1と平面視で重なり、緑色サブ画素PXGが緑色色材層43Gと平面視で重なり、青色サブ画素PXBが青色色材層43Bと平面視で重なり、第二赤色サブ画素PXR2が赤色色材層43R2と平面視で重なる位置に配置される。
【0094】
また、偏光板45の構成としては、第一赤色サブ画素PXR1が偏光部21R1と平面視で重なり、緑色サブ画素PXGが偏光部21Gと平面視で重なり、青色サブ画素PXBが偏光部21Bと平面視で重なり、第二赤色サブ画素PXR2が偏光部21R2と平面視で重なる位置に配置される。
【0095】
なお、図13に示す構成では、液晶表示装置31の一画素内に、第一赤色サブ画素PXR1及び第二赤色サブ画素PXR2が設けられているため、赤色に対応する偏光部21R1および赤色に対応する偏光部21R2が設けられた構成となる。この場合、偏光部21R1の諸元を偏光部21R2の諸元と同一とすれば、製造が容易になる。なお、この場合、図14に示すように、偏光部21R1、21G、21B及び21R2は、サブ画素ごとにバンク層22によって区切られている。
【0096】
具体的には、バンク層22のうち図中X方向に延在する絶縁部22Cが、偏光部21R1と偏光部21Bとを区切り、かつ偏光部21Gと偏光部21R2とを区切っている。このような構成により、偏光部21R1、21G、21B及び21R2ごとに最適な種類のナノロッド40を配置させることができる。
【0097】
なお、液晶表示装置31のサブ画素の配置や形状、色などの構成が他の構成である場合には、偏光板45の偏光部の配置や形状、色を当該サブ画素の配置や色に対応させればよい。例えば、赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXB、赤色サブ画素PXRが、正方形や長方形に形成されている場合には、偏光板45の偏光部21R1、偏光部21G、偏光部21B、偏光部21R2の形状を対応させて正方形や長方形に形成すればよい。このような構成により、液晶表示装置31のサブ画素の配置や色などがどのような構成であっても、明るく、コントラストの高い表示が可能な液晶表示装置を実現できる。
【0098】
また、上記第一実施形態から第三実施形態においては、ナノロッドの材料として、金と銀を用いたが、これに限定されない。半導体材料を用いてもよい。
【0099】
また、上記第一実施形態から第三実施形態においては、3種類のナノロッドを用いることで、三つの波長域に吸収ピークを持つ偏光素子20を実現したが、本発明はこれに限定されない。例えば、画像表示を構成する色光が赤、緑、青、黄のように4つであれば、偏光素子がこれらの色に応じて四つの波長域に吸収ピークを持つように、4種類のナノロッドを用いればよい。
【0100】
また、画像表示を構成する色光が3つであっても、偏光素子が2つの波長域に吸収ピークを持つように、2種類のナノロッドを用いてもよい。この場合、画像表示を構成する3つの波長域のうち1つの波長域が、偏光素子が有する2つの吸収ピーク波長のいずれかと重なっていることが好ましい。
【0101】
さらに、波長域についても、青色波長域、緑色波長域、赤色波長域に限るものではない。その他、偏光素子の各部の構成材料、寸法、製造工程等に関して、適宜変更が可能である。
【0102】
また、上記第一実施形態から第三実施形態においては、ナノロッド40の諸元の一つであるナノロッド40の長軸方向の寸法として、例えば15nm〜40nmとした場合を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、長軸方向の寸法を40nm以上としても構わない。一例を挙げると、銀ナノロッド40Bの長軸方向の寸法を300nm〜500nm程度としても構わない。
【0103】
また、例えば赤色波長域や緑色波長域の光が照射される偏光部21R、21Gに用いられるナノロッドの材料として、金及び銀以外の金属、例えば銅などが用いられた構成であっても構わない。
【0104】
例えば、偏光部21Rに用いられるナノロッド40の材料として、銀を用いる構成であっても構わない。また、例えば偏光部21Gに用いられるナノロッド40の材料として、銅を用いる構成であっても構わない。また、例えば偏光部21Bに用いられるナノロッド40の材料として、赤リンを用いる構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0105】
PX…TFTアレイ基板 PXR、PXR1、PXR2…赤色サブ画素 PXG…緑色サブ画素 PXB…青色サブ画素 10…ガラス基板 10a…一面 20…偏光素子 21R、21G、21B、21R1、21R2…偏光部 22…バンク層 22A…第一導電部 22B…第二導電部 22C…絶縁部 23A、23B…光吸収層 24A…第一電極層 24B…第二電極層 25A、25B…光反射層 31…液晶表示装置 40…ナノロッド 40R…金コア・銀シェルナノロッド 40G…金ナノロッド 40B…銀ナノロッド 43…カラーフィルター 44、45…偏光板 50…母材 61〜63…有機溶媒溶液 1300…携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第一針状粒子を含む第一の偏光部と、
複数の第二針状粒子を含む第二の偏光部と、
前記第一の偏光部と前記第二の偏光部とを互いに区画するバンク層と
を備え、
前記バンク層は、少なくとも前記第一の偏光部を平面視で挟むように配置された第一導電部及び第二導電部を有し、
平面視における前記複数の第一針状粒子の平均配向方向は、前記第一導電部の延在方向と前記第二導電部の延在方向とに交差している
偏光素子。
【請求項2】
平面視における前記平均配向方向は、前記第一導電部の延在方向と直交する
請求項1に記載の偏光素子。
【請求項3】
前記平均配向方向は、前記第一導電部と前記第二導電部との間に印加される電界の方向と略一致する
請求項1又は2に記載の偏光素子。
【請求項4】
前記第一の偏光部と前記第二の偏光部と前記バンク層とを支持する支持面を有する基板を更に備え、
前記第一導電部及び前記第二導電部は、前記支持面に平行な面上に配置されている
請求項1から請求項3のうちいずれかに記載の偏光素子。
【請求項5】
前記バンク層は、表面の少なくとも一部に光吸収層を有する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項6】
前記バンク層は、表面の少なくとも一部に光反射層を有する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項7】
前記第一導電部及び前記第二導電部のうち少なくとも一部は、前記第一の偏光部に接している
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項8】
前記第一の偏光部は第一波長域の光に対して偏光子として機能し、
前記第二の偏光部は前記第一波長域とは異なる第二波長域の光に対して偏光子として機能する
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項9】
バンク層を形成するバンク層形成工程と、
複数の第一針状粒子を含む第一の偏光部を、前記バンク層によって区切られた第一の領域に形成し、複数の第二針状粒子を含む第二の偏光部を、前記バンク層によって区切られた第二の領域に形成する偏光部形成工程と、
を含み、
前記バンク層形成工程は、少なくとも前記第一の領域を平面視で挟むように第一導電部及び第二導電部を配置させる工程を含み、
前記偏光部形成工程は、前記第一導電部と前記第二導電部との間に電界を発生させることによって、前記複数の第一針状粒子の平均配向方向を制御する工程を含む
偏光素子の製造方法。
【請求項10】
前記偏光部形成工程は、前記複数の第一針状粒子を含む液体層を前記第一の領域に塗布する工程と、
前記液体層に含まれた状態の前記複数の第一針状粒子を、前記電界によって配向させる工程と、
前記複数の第一針状粒子が配向された状態で前記液体層を固化する工程と
を含む
請求項9に記載の偏光素子の製造方法。
【請求項11】
一対の基板間に挟持された液晶層と、カラーフィルターと、を備えた液晶パネルと、
少なくとも一つの偏光素子と
を備え、
前記偏光素子として、請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の偏光素子が用いられている
液晶装置。
【請求項12】
第一色に対応する第一サブ画素と、
第二色に対応する第二サブ画素と、
前記第一サブ画素に対応して設けられた第一偏光部と、
前記第二サブ画素に対応して設けられた第二偏光部と、
前記第一偏光部に含まれる複数の第一針状粒子と、
前記第二偏光部に含まれる複数の第二針状粒子と、
前記第一偏光部と前記第二偏光部とを互いに区画するバンク層と、を含み、
前記バンク層は、前記第一偏光部及び前記第二偏光部のうち少なくとも前記第一偏光部を平面視で挟むように配置された第一導電部及び第二導電部を有し、
平面視における前記複数の第一針状粒子の平均配向方向は、前記第一導電部の延在方向と前記第二導電部の延在方向とに交差している
液晶装置。
【請求項13】
前記バンク層は、前記第一サブ画素と前記第二サブ画素との間の領域に設けられている
請求項12に記載の液晶装置。
【請求項14】
請求項11から請求項13のうちいずれか一項に記載の液晶装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−29745(P2013−29745A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166931(P2011−166931)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】