偏分波器
【課題】加工が容易であり、かつ、円形主導波管と管軸矩形副導波管の間で広帯域に良好なインピーダンス整合を得ながら、円形主導波管で不要な高次モードの伝播の防止や、低減を図ることができる偏分波器を得ることを目的とする。
【解決手段】管軸矩形副導波管3に対する円形主導波管1の結合部が、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3を変成する変成部1cをなしており、その変成部1cにおいて、管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、管軸矩形副導波管3に近づくにしたがって段階的に短くなっているように構成している。
【解決手段】管軸矩形副導波管3に対する円形主導波管1の結合部が、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3を変成する変成部1cをなしており、その変成部1cにおいて、管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、管軸矩形副導波管3に近づくにしたがって段階的に短くなっているように構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として、VHF帯、UHF帯、マイクロ波帯やミリ波帯で使用される偏分波器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1に開示されている偏分波器は、図9に示すように、水平方向及び垂直方向に直交する2偏波E1,E2を伝送する円形主導波管と、円形主導波管により伝送される2偏波E1,E2のうち、偏波E1を伝送する分岐矩形副導波管と、偏波E2を伝送する共軸矩形副導波管とから構成されている。
この偏分波器では、円形主導波管と共軸矩形副導波管の間で良好なインピーダンス整合を図る目的で、共軸矩形副導波管と接している円形主導波管の端部に略半円断面の導体(変成部)を挿入している。
【0003】
また、以下の特許文献2に開示されている偏分波器では、図10に示すように、円形主導波管と共軸矩形副導波管を変成するテーパ状の変成部を設けている。
テーパ状の変成部を設けることでも、円形主導波管と共軸矩形副導波管の間で良好なインピーダンス整合を得ることができる。
【0004】
特許文献1,2に開示されている偏分波器における変成部は、偏波として使用される円形主導波管の基本モード(TE11○モード)と、共軸矩形副導波管の基本モード(TE10□モード)の間の良好なインピーダンス整合を図ることを目的としており、一般的には、不要な高次モードは遮断になるように、それぞれの導波管の断面形状が選定されるため、不要な高次モードによる特性への影響はない。
しかし、共軸矩形副導波管と分岐矩形副導波管で異なる周波数帯を使用し、かつ、使用される異なる周波数帯のうち、低い周波数帯の低域端と、もう一方の高い周波数帯の高域端の間の周波数帯域を広帯域化するため、円形主導波管として、不要な高次モードが伝播するような断面形状を選定せざるを得ない場合がある。
【0005】
図11は円形導波管の使用周波数帯とTE11○モード及びTM01○モードの遮断周波数の関係を模式的に示す説明図である。
ここでは、基本モードであるTE11○モードが低い周波数帯から伝播し、その次に遮断周波数が低い高次モードである軸対称なTM01○モードが高い周波数帯で伝播する場合の例を示している。
【0006】
また、共軸矩形副導波管において、高次モードが遮断になるように、その断面形状が選定されていても、小型化のために、共軸矩形副導波管に接続される他のコンポーネント(例えば、同軸導波管変換器)の高次モード発生源が共軸矩形副導波管の端面に近接されることがある。
このような場合には、共軸矩形副導波管で不要な高次モードが減衰せずに、円形主導波管の高次モードと結合して伝播する。
【0007】
図12は矩形副導波管におけるTE10□モード、TE01□モード、TE11□モード及びTM11□モードの電界分布を示す説明図である。
図13は円形主導波管におけるTE11○モード(直交する2個のTE11○モード、TE11○VモードとTE11○Hモード)及びTM01○モードの電界分布を示す説明図である。
ただし、矩形副導波管では、断面形状によってTE20□モードがTE11□モードやTM11□モードよりも遮断周波数が低くなるが、図12では省略している。
【0008】
図12及び図13の電気分布からも分かるように、矩形副導波管におけるTE10□モードと円形主導波管におけるTE11○モードは結合し易く、矩形副導波管におけるTM11□モードと円形主導波管におけるTM01○モードは結合し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭60−14501号公報(第2図)
【特許文献2】特開平3−253101号公報(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の偏分波器は以上のように構成されているので、円形主導波管と共軸矩形副導波管の間に設けられている変成部によって、円形主導波管と共軸矩形副導波管の間で良好なインピーダンス整合を得ることができる。しかし、変成部は、あくまでも、良好なインピーダンス整合を得ることを目的とするものであって、不要な高次モードの抑圧を目的とするものではない。このため、共軸矩形副導波管に接続される他のコンポーネントは、不要な高次モードが減衰する位置まで離して設置する必要があり、他のコンポーネントを含む装置全体の小型化が困難である課題があった。
また、共軸矩形副導波管と接している円形主導波管の端部に略半円断面の導体(変成部)を挿入する場合は、偏分波器を構成する導体の数が増え、かつ、挿入するという作業工程が増えて加工コストが上がるとともに、一様な変成部でインピーダンス整合するため、広帯域な整合は困難である課題があった。
また、円形主導波管の管軸方向に対して直線状とならないテーパ状の変成部を設ける場合は、管軸方向にドリルを用いて掘削する際に、テーパ形状に合わせて微小な長さで径を変える必要があるなど加工が困難である課題があった。
【0011】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、加工が容易であり、かつ、円形主導波管と管軸矩形副導波管の間で広帯域に良好なインピーダンス整合を得ながら、円形主導波管において不要な高次モードを伝播することを防止する、もしくは低減することができる偏分波器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る偏分波器は、水平方向及び垂直方向に直交する2偏波を伝送する円形主導波管と、円形主導波管の側面に結合されており、その円形主導波管により伝送される2偏波の中の一方の偏波を伝送する分岐矩形副導波管と、円形主導波管の開口端に結合されており、その円形主導波管により伝送される2偏波の中の他方の偏波を伝送する管軸矩形副導波管とを備え、管軸矩形副導波管に対する円形主導波管の結合部が、円形主導波管と管軸矩形副導波管を変成する変成部をなしており、その変成部において、管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、管軸矩形副導波管に近づくにしたがって段階的に短くなっているものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、管軸矩形副導波管に対する円形主導波管の結合部が、円形主導波管と管軸矩形副導波管を変成する変成部をなしており、その変成部において、管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、管軸矩形副導波管に近づくにしたがって段階的に短くなっているように構成したので、加工が容易であり、かつ、円形主導波管と管軸矩形副導波管の間で広帯域に良好なインピーダンス整合を得ながら、円形主導波管において不要な高次モードを伝播することを防止する、もしくは低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1による偏分波器を示す側面図及び断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による偏分波器の円形主導波管1を示す斜視図である。
【図3】円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【図4】円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2による偏分波器の円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2による偏分波器の円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3による偏分波器の円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【図8】この発明の実施の形態4による偏分波器を示す側面図及び断面図である。
【図9】特許文献1に開示されている偏分波器を示す斜視図である。
【図10】特許文献2に開示されている偏分波器を示す斜視図である。
【図11】円形導波管の使用周波数帯とTE11○モード及びTM01○モードの遮断周波数の関係を模式的に示す説明図である。
【図12】矩形副導波管におけるTE10□モード、TE01□モード、TE11□モード及びTM11□モードの電界分布を示す説明図である。
【図13】円形導波管におけるTE11○モード(直交する2個のTE11○モード、TE11○VモードとTE11○Hモード)及びTM01○モードの電界分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による偏分波器を示す側面図及び断面図である。
図1において、円形主導波管1は水平方向及び垂直方向に直交する2偏波E1,E2を伝送する導波管である。
分岐矩形副導波管2は円形主導波管1の側面1aに結合されており、円形主導波管1により伝送される2偏波E1,E2の中の一方の偏波(例えば、偏波E1)を伝送する導波管である。
管軸矩形副導波管3は円形主導波管1の開口端1bに結合されており、円形主導波管1により伝送される2偏波E1,E2の中の他方の偏波(例えば、偏波E2)を伝送する導波管である。
セプタム4は円形主導波管1内に設けられており、例えば、管軸矩形副導波管と結合するTE11○Vモードと直交する不要なTE11○Hモードを遮断する部材である。
【0016】
図1の偏分波器では、管軸矩形副導波管3に対する円形主導波管1の結合部が、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3を変成する変成部1cをなしており、変成部1cにおいて管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、管軸矩形副導波管3に近づくにしたがって段階的に短くなっている。即ち、管軸矩形副導波管3に対する円形主導波管1の結合部において、円形主導波管1の側面1aに階段が形成されている。
ここで、図2はこの発明の実施の形態1による偏分波器の円形主導波管1を示す斜視図である。
また、図3は円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【0017】
次に動作について説明する。
図1の偏分波器では、管軸矩形副導波管3から水平方向の偏波E1が入力され、かつ、分岐矩形副導波管2から垂直方向の偏波E2が入力されて、2偏波E1,E2が円形主導波管1に伝播される態様の他に、円形主導波管1により伝送される2偏波E1,E2のうち、水平方向の偏波E1が管軸矩形副導波管3に伝播され、垂直方向の偏波E2が分岐矩形副導波管2に伝播される態様などが考えられる。
【0018】
例えば、基本モードであるTE10□モードが管軸矩形副導波管3から入力された場合、管軸矩形副導波管3のTE10□モードは、円形主導波管1において、電界の向きが同じであるTE11○Vモードと結合する。
このとき、円形主導波管1の変成部1cにおいて、管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが段階的に変化しているが、各段間の不連続が小さく、各段間において生じるモードが連続的に変成されるような形状であるため、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3の間で、広帯域に亘って良好なインピーダンス整合が得られる。
【0019】
次に、不要なTE01□モードが管軸矩形副導波管3から入力された場合、円形主導波管1内に設けられているセプタム4により遮断される。
また、高次モードであるTE11□モードが管軸矩形副導波管3から入力された場合、TE11□モードと円形主導波管1のTM01モードとは電界の向きが異なるため、TM01○モードと結合され難いと考えられる。
【0020】
高次モードであるTM11□モードが管軸矩形副導波管3から入力された場合、円形主導波管1において、電界の向きが似ているTM01○モードと結合する。
ただし、軸対称性が崩れている変成部1cを経由するため、変成部1cでTM11□モードが減衰し(変成部1cによって、TM11□モードが減衰する領域が長くなっている)、円形主導波管1でのTM01○モードを減衰させることができる。
なお、変成部1cは、円形主導波管1の管軸方向に対して直線状に形成されているため、円形主導波管1側からドリルを用いた堀削が可能であり、加工が容易である。
【0021】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、管軸矩形副導波管3に対する円形主導波管1の結合部が、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3を変成する変成部1cをなしており、その変成部1cにおいて管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、管軸矩形副導波管3に近づくにしたがって段階的に短くなっているように構成したので、加工が容易であり、かつ、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3の間で広帯域に良好なインピーダンス整合を得ながら、円形主導波管1で不要な高次モードの伝播を防止する、もしくは低減することができる効果を奏する。
【0022】
この実施の形態1では、円形主導波管1の側面が階段状に形成されており、その階段が等間隔に刻まれているものを示したが、図4に示すように、管軸矩形副導波管3に近い位置の階段ほど、図中、水平方向(円形主導波管1の管軸方向)の長さが長くなるように刻んでもよい。
管軸矩形副導波管3に近い位置の階段ほど、水平方向の長さを長くすることで、不要な高次モードの減衰効果を高めることができる。
【0023】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、分岐矩形副導波管2が結合されている側の円形主導波管1の側面1aと、分岐矩形副導波管2が結合されていない側の円形主導波管1の側面1aの双方に、階段状の変成部1cが形成されているものを示したが、図5に示すように、分岐矩形副導波管2が結合されている側の円形主導波管1の側面1aだけに、階段状の変成部1cが形成されていてもよい。
また、図6に示すように、分岐矩形副導波管2が結合されていない側の円形主導波管1の側面1aだけに、階段状の変成部1cが形成されていてもよい。
このように、いずれか一方の側面1aだけに階段状の変成部1cを形成する場合、上記実施の形態1と概ね同様の効果を得ながら、加工の容易性を高めることができる効果を奏する。
【0024】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、円形主導波管1の側面1aを階段状に形成することで変成部1cを設けているものを示したが、図7に示すように、円形主導波管1における変成部1cの断面形状を楕円形にして、大きさが異なる複数の楕円形状が連なっているようにしてもよい。
この場合も、上記実施の形態1と同様に、加工が容易であり、かつ、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3の間で広帯域に良好なインピーダンス整合を得ながら、円形主導波管1で不要な高次モードの伝播を防止する、もしくは低減することができる効果を奏する。
【0025】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、管軸矩形副導波管3が円形主導波管1の開口端1bに結合されているものを示したが、図8に示すように、その管軸矩形副導波管3に同軸導波管変換器5が組み合わされていてもよい。
一般的に、管軸矩形副導波管3内に同軸導波管変換器5が設けられており、同軸導波管変換器5から円形主導波管1までの距離が短い場合、不要な高次モードが十分に減衰されず、例えば、同軸導波管変換器5から出力された不要な高次モードが円形主導波管1内の高次モードと結合されてしまう可能性が高いが、円形主導波管1には変成部1cが形成されているため、その変成部1cで不要な高次モードを抑圧することができる。
このため、図8に示すように、管軸矩形副導波管3に同軸導波管変換器5が組み合わされていても、不要な高次モードの影響を抑えることができる。
【0026】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 円形主導波管、1a 円形主導波管の側面、1b 円形主導波管の開口端、1c 変成部、2 分岐矩形副導波管、3 管軸矩形副導波管、4 セプタム、5 同軸導波管変換器。
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として、VHF帯、UHF帯、マイクロ波帯やミリ波帯で使用される偏分波器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1に開示されている偏分波器は、図9に示すように、水平方向及び垂直方向に直交する2偏波E1,E2を伝送する円形主導波管と、円形主導波管により伝送される2偏波E1,E2のうち、偏波E1を伝送する分岐矩形副導波管と、偏波E2を伝送する共軸矩形副導波管とから構成されている。
この偏分波器では、円形主導波管と共軸矩形副導波管の間で良好なインピーダンス整合を図る目的で、共軸矩形副導波管と接している円形主導波管の端部に略半円断面の導体(変成部)を挿入している。
【0003】
また、以下の特許文献2に開示されている偏分波器では、図10に示すように、円形主導波管と共軸矩形副導波管を変成するテーパ状の変成部を設けている。
テーパ状の変成部を設けることでも、円形主導波管と共軸矩形副導波管の間で良好なインピーダンス整合を得ることができる。
【0004】
特許文献1,2に開示されている偏分波器における変成部は、偏波として使用される円形主導波管の基本モード(TE11○モード)と、共軸矩形副導波管の基本モード(TE10□モード)の間の良好なインピーダンス整合を図ることを目的としており、一般的には、不要な高次モードは遮断になるように、それぞれの導波管の断面形状が選定されるため、不要な高次モードによる特性への影響はない。
しかし、共軸矩形副導波管と分岐矩形副導波管で異なる周波数帯を使用し、かつ、使用される異なる周波数帯のうち、低い周波数帯の低域端と、もう一方の高い周波数帯の高域端の間の周波数帯域を広帯域化するため、円形主導波管として、不要な高次モードが伝播するような断面形状を選定せざるを得ない場合がある。
【0005】
図11は円形導波管の使用周波数帯とTE11○モード及びTM01○モードの遮断周波数の関係を模式的に示す説明図である。
ここでは、基本モードであるTE11○モードが低い周波数帯から伝播し、その次に遮断周波数が低い高次モードである軸対称なTM01○モードが高い周波数帯で伝播する場合の例を示している。
【0006】
また、共軸矩形副導波管において、高次モードが遮断になるように、その断面形状が選定されていても、小型化のために、共軸矩形副導波管に接続される他のコンポーネント(例えば、同軸導波管変換器)の高次モード発生源が共軸矩形副導波管の端面に近接されることがある。
このような場合には、共軸矩形副導波管で不要な高次モードが減衰せずに、円形主導波管の高次モードと結合して伝播する。
【0007】
図12は矩形副導波管におけるTE10□モード、TE01□モード、TE11□モード及びTM11□モードの電界分布を示す説明図である。
図13は円形主導波管におけるTE11○モード(直交する2個のTE11○モード、TE11○VモードとTE11○Hモード)及びTM01○モードの電界分布を示す説明図である。
ただし、矩形副導波管では、断面形状によってTE20□モードがTE11□モードやTM11□モードよりも遮断周波数が低くなるが、図12では省略している。
【0008】
図12及び図13の電気分布からも分かるように、矩形副導波管におけるTE10□モードと円形主導波管におけるTE11○モードは結合し易く、矩形副導波管におけるTM11□モードと円形主導波管におけるTM01○モードは結合し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭60−14501号公報(第2図)
【特許文献2】特開平3−253101号公報(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の偏分波器は以上のように構成されているので、円形主導波管と共軸矩形副導波管の間に設けられている変成部によって、円形主導波管と共軸矩形副導波管の間で良好なインピーダンス整合を得ることができる。しかし、変成部は、あくまでも、良好なインピーダンス整合を得ることを目的とするものであって、不要な高次モードの抑圧を目的とするものではない。このため、共軸矩形副導波管に接続される他のコンポーネントは、不要な高次モードが減衰する位置まで離して設置する必要があり、他のコンポーネントを含む装置全体の小型化が困難である課題があった。
また、共軸矩形副導波管と接している円形主導波管の端部に略半円断面の導体(変成部)を挿入する場合は、偏分波器を構成する導体の数が増え、かつ、挿入するという作業工程が増えて加工コストが上がるとともに、一様な変成部でインピーダンス整合するため、広帯域な整合は困難である課題があった。
また、円形主導波管の管軸方向に対して直線状とならないテーパ状の変成部を設ける場合は、管軸方向にドリルを用いて掘削する際に、テーパ形状に合わせて微小な長さで径を変える必要があるなど加工が困難である課題があった。
【0011】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、加工が容易であり、かつ、円形主導波管と管軸矩形副導波管の間で広帯域に良好なインピーダンス整合を得ながら、円形主導波管において不要な高次モードを伝播することを防止する、もしくは低減することができる偏分波器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る偏分波器は、水平方向及び垂直方向に直交する2偏波を伝送する円形主導波管と、円形主導波管の側面に結合されており、その円形主導波管により伝送される2偏波の中の一方の偏波を伝送する分岐矩形副導波管と、円形主導波管の開口端に結合されており、その円形主導波管により伝送される2偏波の中の他方の偏波を伝送する管軸矩形副導波管とを備え、管軸矩形副導波管に対する円形主導波管の結合部が、円形主導波管と管軸矩形副導波管を変成する変成部をなしており、その変成部において、管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、管軸矩形副導波管に近づくにしたがって段階的に短くなっているものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、管軸矩形副導波管に対する円形主導波管の結合部が、円形主導波管と管軸矩形副導波管を変成する変成部をなしており、その変成部において、管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、管軸矩形副導波管に近づくにしたがって段階的に短くなっているように構成したので、加工が容易であり、かつ、円形主導波管と管軸矩形副導波管の間で広帯域に良好なインピーダンス整合を得ながら、円形主導波管において不要な高次モードを伝播することを防止する、もしくは低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1による偏分波器を示す側面図及び断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による偏分波器の円形主導波管1を示す斜視図である。
【図3】円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【図4】円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2による偏分波器の円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2による偏分波器の円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3による偏分波器の円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【図8】この発明の実施の形態4による偏分波器を示す側面図及び断面図である。
【図9】特許文献1に開示されている偏分波器を示す斜視図である。
【図10】特許文献2に開示されている偏分波器を示す斜視図である。
【図11】円形導波管の使用周波数帯とTE11○モード及びTM01○モードの遮断周波数の関係を模式的に示す説明図である。
【図12】矩形副導波管におけるTE10□モード、TE01□モード、TE11□モード及びTM11□モードの電界分布を示す説明図である。
【図13】円形導波管におけるTE11○モード(直交する2個のTE11○モード、TE11○VモードとTE11○Hモード)及びTM01○モードの電界分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による偏分波器を示す側面図及び断面図である。
図1において、円形主導波管1は水平方向及び垂直方向に直交する2偏波E1,E2を伝送する導波管である。
分岐矩形副導波管2は円形主導波管1の側面1aに結合されており、円形主導波管1により伝送される2偏波E1,E2の中の一方の偏波(例えば、偏波E1)を伝送する導波管である。
管軸矩形副導波管3は円形主導波管1の開口端1bに結合されており、円形主導波管1により伝送される2偏波E1,E2の中の他方の偏波(例えば、偏波E2)を伝送する導波管である。
セプタム4は円形主導波管1内に設けられており、例えば、管軸矩形副導波管と結合するTE11○Vモードと直交する不要なTE11○Hモードを遮断する部材である。
【0016】
図1の偏分波器では、管軸矩形副導波管3に対する円形主導波管1の結合部が、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3を変成する変成部1cをなしており、変成部1cにおいて管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、管軸矩形副導波管3に近づくにしたがって段階的に短くなっている。即ち、管軸矩形副導波管3に対する円形主導波管1の結合部において、円形主導波管1の側面1aに階段が形成されている。
ここで、図2はこの発明の実施の形態1による偏分波器の円形主導波管1を示す斜視図である。
また、図3は円形主導波管1の変成部1cを示す側面図及び断面図である。
【0017】
次に動作について説明する。
図1の偏分波器では、管軸矩形副導波管3から水平方向の偏波E1が入力され、かつ、分岐矩形副導波管2から垂直方向の偏波E2が入力されて、2偏波E1,E2が円形主導波管1に伝播される態様の他に、円形主導波管1により伝送される2偏波E1,E2のうち、水平方向の偏波E1が管軸矩形副導波管3に伝播され、垂直方向の偏波E2が分岐矩形副導波管2に伝播される態様などが考えられる。
【0018】
例えば、基本モードであるTE10□モードが管軸矩形副導波管3から入力された場合、管軸矩形副導波管3のTE10□モードは、円形主導波管1において、電界の向きが同じであるTE11○Vモードと結合する。
このとき、円形主導波管1の変成部1cにおいて、管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが段階的に変化しているが、各段間の不連続が小さく、各段間において生じるモードが連続的に変成されるような形状であるため、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3の間で、広帯域に亘って良好なインピーダンス整合が得られる。
【0019】
次に、不要なTE01□モードが管軸矩形副導波管3から入力された場合、円形主導波管1内に設けられているセプタム4により遮断される。
また、高次モードであるTE11□モードが管軸矩形副導波管3から入力された場合、TE11□モードと円形主導波管1のTM01モードとは電界の向きが異なるため、TM01○モードと結合され難いと考えられる。
【0020】
高次モードであるTM11□モードが管軸矩形副導波管3から入力された場合、円形主導波管1において、電界の向きが似ているTM01○モードと結合する。
ただし、軸対称性が崩れている変成部1cを経由するため、変成部1cでTM11□モードが減衰し(変成部1cによって、TM11□モードが減衰する領域が長くなっている)、円形主導波管1でのTM01○モードを減衰させることができる。
なお、変成部1cは、円形主導波管1の管軸方向に対して直線状に形成されているため、円形主導波管1側からドリルを用いた堀削が可能であり、加工が容易である。
【0021】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、管軸矩形副導波管3に対する円形主導波管1の結合部が、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3を変成する変成部1cをなしており、その変成部1cにおいて管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、管軸矩形副導波管3に近づくにしたがって段階的に短くなっているように構成したので、加工が容易であり、かつ、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3の間で広帯域に良好なインピーダンス整合を得ながら、円形主導波管1で不要な高次モードの伝播を防止する、もしくは低減することができる効果を奏する。
【0022】
この実施の形態1では、円形主導波管1の側面が階段状に形成されており、その階段が等間隔に刻まれているものを示したが、図4に示すように、管軸矩形副導波管3に近い位置の階段ほど、図中、水平方向(円形主導波管1の管軸方向)の長さが長くなるように刻んでもよい。
管軸矩形副導波管3に近い位置の階段ほど、水平方向の長さを長くすることで、不要な高次モードの減衰効果を高めることができる。
【0023】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、分岐矩形副導波管2が結合されている側の円形主導波管1の側面1aと、分岐矩形副導波管2が結合されていない側の円形主導波管1の側面1aの双方に、階段状の変成部1cが形成されているものを示したが、図5に示すように、分岐矩形副導波管2が結合されている側の円形主導波管1の側面1aだけに、階段状の変成部1cが形成されていてもよい。
また、図6に示すように、分岐矩形副導波管2が結合されていない側の円形主導波管1の側面1aだけに、階段状の変成部1cが形成されていてもよい。
このように、いずれか一方の側面1aだけに階段状の変成部1cを形成する場合、上記実施の形態1と概ね同様の効果を得ながら、加工の容易性を高めることができる効果を奏する。
【0024】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、円形主導波管1の側面1aを階段状に形成することで変成部1cを設けているものを示したが、図7に示すように、円形主導波管1における変成部1cの断面形状を楕円形にして、大きさが異なる複数の楕円形状が連なっているようにしてもよい。
この場合も、上記実施の形態1と同様に、加工が容易であり、かつ、円形主導波管1と管軸矩形副導波管3の間で広帯域に良好なインピーダンス整合を得ながら、円形主導波管1で不要な高次モードの伝播を防止する、もしくは低減することができる効果を奏する。
【0025】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、管軸矩形副導波管3が円形主導波管1の開口端1bに結合されているものを示したが、図8に示すように、その管軸矩形副導波管3に同軸導波管変換器5が組み合わされていてもよい。
一般的に、管軸矩形副導波管3内に同軸導波管変換器5が設けられており、同軸導波管変換器5から円形主導波管1までの距離が短い場合、不要な高次モードが十分に減衰されず、例えば、同軸導波管変換器5から出力された不要な高次モードが円形主導波管1内の高次モードと結合されてしまう可能性が高いが、円形主導波管1には変成部1cが形成されているため、その変成部1cで不要な高次モードを抑圧することができる。
このため、図8に示すように、管軸矩形副導波管3に同軸導波管変換器5が組み合わされていても、不要な高次モードの影響を抑えることができる。
【0026】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 円形主導波管、1a 円形主導波管の側面、1b 円形主導波管の開口端、1c 変成部、2 分岐矩形副導波管、3 管軸矩形副導波管、4 セプタム、5 同軸導波管変換器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向及び垂直方向に直交する2偏波を伝送する円形主導波管と、
上記円形主導波管の側面に結合されており、上記円形主導波管により伝送される2偏波の中の一方の偏波を伝送する分岐矩形副導波管と、
上記円形主導波管の開口端に結合されており、上記円形主導波管により伝送される2偏波の中の他方の偏波を伝送する管軸矩形副導波管とを備えた偏分波器において、
上記管軸矩形副導波管に対する上記円形主導波管の結合部が、上記円形主導波管と上記管軸矩形副導波管を変成する変成部をなしており、上記変成部において上記管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、上記管軸矩形副導波管に近づくにしたがって段階的に短くなっている
ことを特徴とする偏分波器。
【請求項2】
管軸矩形副導波管に対する円形主導波管の結合部において、分岐矩形副導波管が結合されている側の上記円形主導波管の側面及び上記分岐矩形副導波管が結合されていない側の上記円形主導波管の側面のうち、少なくとも一方の側面に階段が形成されていることを特徴とする請求項1記載の偏分波器。
【請求項3】
円形主導波管における変成部の断面形状が楕円形であることを特徴とする請求項1記載の偏分波器。
【請求項4】
管軸矩形副導波管に同軸導波管変換器が組み合わされていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の偏分波器。
【請求項1】
水平方向及び垂直方向に直交する2偏波を伝送する円形主導波管と、
上記円形主導波管の側面に結合されており、上記円形主導波管により伝送される2偏波の中の一方の偏波を伝送する分岐矩形副導波管と、
上記円形主導波管の開口端に結合されており、上記円形主導波管により伝送される2偏波の中の他方の偏波を伝送する管軸矩形副導波管とを備えた偏分波器において、
上記管軸矩形副導波管に対する上記円形主導波管の結合部が、上記円形主導波管と上記管軸矩形副導波管を変成する変成部をなしており、上記変成部において上記管軸矩形副導波管の幅広面に垂直な径方向の長さが、上記管軸矩形副導波管に近づくにしたがって段階的に短くなっている
ことを特徴とする偏分波器。
【請求項2】
管軸矩形副導波管に対する円形主導波管の結合部において、分岐矩形副導波管が結合されている側の上記円形主導波管の側面及び上記分岐矩形副導波管が結合されていない側の上記円形主導波管の側面のうち、少なくとも一方の側面に階段が形成されていることを特徴とする請求項1記載の偏分波器。
【請求項3】
円形主導波管における変成部の断面形状が楕円形であることを特徴とする請求項1記載の偏分波器。
【請求項4】
管軸矩形副導波管に同軸導波管変換器が組み合わされていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の偏分波器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−110448(P2013−110448A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251508(P2011−251508)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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