説明

偏向横波用電磁超音波トランスデューサ

【課題】 安定性、品質の均一化、精密・小型化、製作時間の短縮そして理想的な平行コイルによる高機能化(S/N比の改善)を図った偏向横波用電磁超音波トランスデューサを提供すること。
【解決手段】 絶縁シート21−1の両面に形成した導電性材料からなる渦巻状コイル21−2、21−3を該絶縁シート21−1を介在して両渦巻状コイル21−2、21−3が互いに対向一致するように配置した平面渦巻コイルを具備する偏向横波用電磁超音波トランスデューサ。また、絶縁シート21−1の両面に配置した渦巻状コイル21−2、21−3のうち一方は電磁超音波を発生し、他方は検知作用を有し、それぞれ独立していて、該渦巻状のコイルの端部にはスルーホール22を介して他方の面に通じ外部リード線と接続し、他方の端部はアース部を共通にするように接続する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電材料の表面及び内部の傷の検出、残留応力の検出、材料特性(弾性係数、減衰係数)の測定、荷重、熱等による材料内部の損傷、劣化を検出する偏向横波用電磁超音波トランスデューサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は電磁超音波トランスデューサの計測原理を説明するための図である。電磁超音波トランスデューサは導電性材料(被測定物)2の表面にスペーサ3aを介在させて互いに磁気方向の異なる永久磁石3、3を配置し、該永久磁石3、3の下部に配置した渦巻状の平面コイル5を配置した構成である。なお、永久磁石3、3の代りに同様な磁界を形成する電磁石でも良い。
【0003】永久磁石3は導電性材料2の深さ方向に静磁場4を形成し、平面コイル5にコントローラ18から高周波電流7を流すと、導電性材料2の表面にその電流7と逆向きの渦電流8が発生し、この渦電流8と静磁場4の相互作用。所謂フレミングの左手の法則により、ローレンツ力9が発生し、導電性材料2の内部の自由電子に働き、イオンなどに衝突し、静磁場4と高周波電流7の方向に垂直な運動を導電性材料2の内部に励起させ、超音波の横波10を発生させる。
【0004】上記超音波の横波10が矢印11の方向に進行し、導電性材料2の表面や内部の傷、欠陥、結晶粒界、組織変化等、端面で反射し矢印12に示すように進み表面近傍に達すると、力13が発生し、この力13と静磁場4との相互作用により渦電流14を発生する。この渦電流14を平面コイル5により検出し、プリアンプ16で増幅し、更に主アンプ17で増幅し、コントローラ18に送る。該コントローラ18はこれを解析し、導電性材料2の内部の傷、欠陥、結晶粒界、組織変化等を計測する。
【0005】図4は従来の偏向横波用電磁超音波トランスデューサの概略構成を示す図である。平面コイル41には2本のエナメル線を相隣あうように手巻きし樹脂で固めたものを用い、0.1mm程度の保護フィルム42を平面コイル41(送信用コイル41a、受信用コイル41b)に接着することにより、強磁性体の被測定物(図示せず)の計測時の永久磁石43と該被測定物(図示せず)の間の磁力により、設置時の平面コイル41の損傷を防ぐようにしている。なお、図4(a)は偏向横波用電磁超音波トランスデューサの平面図、同図(b)は同図(a)のA−A断面図である。また、43aは互いに磁気方向の異なる永久磁石43と43の間に介在するスペースである。
【0006】また、従来の電磁超音波発生検出コイルとしては、例えば特開昭53−1078号公報に開示するように、2重渦巻状コイルを絶縁板の両側に設け、送信用コイルと受信用コイルを分けているもの、特開昭62−277555号公報に開示するように、平行型コイルを片面に設け、送受信を1つのコイルで行なうようにしたもの、特開昭53−23066号公報に開示するように、平行型コイルを印刷技術を用いて8字状(向きの異なるコイルが2つ配置されている)に片面に設けたものがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記従来構成の偏向横波用電磁超音波トランスデューサにおいては、上記のように設置時の平面コイル41の損傷を防ぐため、保護フィルム42を平面コイル41に接着する必要があった。また、受信用コイル41と送信用コイルを同一平面に隣合うように配置されているため平面コイル41が大型化し、小型化できないという問題があった。また、平面コイル41はエナメル線を手巻きするので、線間のばらつきによりトランスデューサの性能にばらつきが生じ、安定した品質が得られなかった。さらに外形寸法も大きくなるという問題もあった。
【0008】また、特開昭53−1078号公報に開示したものは、コイルを送信用と受信用に分けているが、接続で2つのコイルのアース部を共通していないため、S/N比が悪く、且つゲインも劣る。
【0009】また、特開昭62−277555号公報に開示したものは、平行型コイルを片面に設け、送受信を1つのコイルで行なうようにしているため、S/N比が悪く、且つゲインも劣る。
【0010】また、特開昭53−23066号公報に開示したものは、片面に平行型コイルを印刷技術を用いて8字状に設けているため、寸法が大きくなり、また接続で2つのコイルのアース部を共通していないため、S/N比が悪く、且つゲインも劣る。
【0011】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、トランスデューサの性能向上、品質の安定、精密・小型化を図った偏向横波用電磁超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、絶縁シートの両面に形成した導電性材料からなる渦巻状コイルを該絶縁シートを介在して両渦巻状コイルが互いに対向一致するように配置した平面渦巻コイルを具備することを特徴とする。
【0013】また、請求項2に記載の発明は請求項1に記載の発明において、絶縁シートの両面に配置した渦巻状コイルのうち一方は電磁的作用によって超音波を発生し、他方は検知作用を有し、それぞれ独立していて、該渦巻状のコイルの一方の端部にはスルーホールを介して他方の面に通じ、外部リード線と接続し、他方の端部はアース部を共通にするように接続することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の偏向横波用電磁超音波トランスデューサの平面図、同図(b)は同図(a)のA−A断面図である。本偏向横波用電磁超音波トランスデューサは永久磁石(又は電磁石)20と平面渦巻コイル21を具備する構成である。平面渦巻コイル21は絶縁シート21−1の両面にエッチング又は印刷技術を用いて形成した導電性材料からなる渦巻状コイル21−2と渦巻状コイル21−3を該絶縁シート21−1を介在して互いに対向一致する(重なり合う)ように配置し、更に渦巻状コイル21−2の面と渦巻状コイル21−3の面に耐熱性で且つ絶縁性の接着材で絶縁シート21−6、21−6を接着した構造である。
【0015】渦巻状コイル21−2及び渦巻状コイル21−3のいずれか一方は電磁超音波を発する送信用で、他方は検知作用を有する受信用になっている。どちらが上面にくるかは決まっていないが、電磁超音波トランスデューサは、送信より受信特性の方が優れているので、通常、送信面が被計測材料側に位置することが多い。
【0016】次に、上記構成の偏向横波用電磁超音波トランスデューサの製造方法を図2に基づいて説明する。先ず、図2の(1)に示すように、所定の外形寸法に切断した厚さ25μm程度の耐熱性のある絶縁シート(例えばポリイミド系の樹脂シート)21−6に厚さ18〜75μm程度の銅箔21−4を接着材で接着したものを2枚用意する。
【0017】次に、図2の(2)に示すように、銅箔21−4をエッチング処理して渦巻き状に形成し渦巻状コイル21−2、21−3のパターンを形成する。なお、該パターンは回路印刷技術を用いて形成しても良いことは当然である。
【0018】次に、図2の(3)に示すように、渦巻状コイル21−2、21−3のパターンが形成された絶縁シート21−6のパターン形成側の面に耐熱性の接着材21−5を塗布する。この接着材21−5は後述する絶縁シートを接着するだけでなく、渦巻状コイル21−2、21−3の隣合うパターン(線)間の絶縁材としての役割も果たす。
【0019】次に、図2の(4)に示すように、耐熱性のある絶縁シート21−1を渦巻状コイル21−2、21−3の上面に接着する。
【0020】次に、図2の(5)に示すように、絶縁シート21−1の上面に接着材21−5を塗布する。
【0021】次に、図2の(6)に示すように、同図の(2)で作成した渦巻状コイル21−2又は21−3のパターンが形成された絶縁シート21−6を同図の(5)で作成した絶縁シート21−1の上の接着材21−5に接着して平面渦巻きコイル21が完成する。なお、渦巻状コイル21−2及び21−3の一方の端部はスルーホール22により絶縁シート21−6を通して他方の面に通じ外部リード線と接続し、他方の端部はアース部を共通にするように接続する(図1参照)。
【0022】上記製造方法に基づいて、図1に示す構成の偏向横波用電磁超音波トランスデューサに用いる平面渦巻コイルを製作した。寸法例は下記の通りである。絶縁シート21−1の外形寸法は長さL=40mm、幅W=25mm、厚さH=0.025mmである。該絶縁シート21−1の両面に幅W1=0.1mm、間隔L1=0.1mm、厚さH1=0.018mm、巻回数44の渦巻状コイル21−2及び21−3を形成した。該渦巻状コイル21−2及び21−3の抵抗値は50Ω、インダクタンス40μHで、実用上十分な感度を有するトランスデューサの平面渦巻コイル21が得られる。
【0023】偏向横波用電磁超音波トランスデューサに図1に示すような構成を採用することにより、下記のような優れた作用効果が得られる。
【0024】第1に、絶縁シート21−1は数十ミクロン程度の例えばポリイミド系の耐熱性絶縁シートであり、該絶縁シート21−1を挟んで受信用コイルとなる渦巻状コイル21−2又は21−3と受信用コイルとなる渦巻状コイル21−3又は21−2は対向一致する(重なり合う)位置にあるので、送信した波(超音波の横波)の反射波を同じ位置で捕らえることができ、精度のよい計測が可能である。
【0025】第2に、渦巻状コイル21−2及び21−3のコイル間隔L1が精度良く作成されるので、安定した超音波の受信が可能となる。
【0026】第3に、絶縁シート21−6の接着に絶縁性の接着材21−5を用いることにより、渦巻状コイル21−2及び21−3のコイル間の絶縁も可能となり、計測時1000V前後の電圧に耐え得ることが可能になる。
【0027】第4に、従来の渦巻状コイルにエナメル線等の被覆銅線を手巻したものに比較し、両面にコイルを配置することにより、小型化、精密化が可能になると共に、絶縁シート21−6が保護フィルムの役割を兼ねることができる。
【0028】第5に、スルーホール22を介して、反対面でリード線との接合部とすることにより、被測定物と渦巻状コイル21−2又は21−3の間に凹凸をなくすることが可能となる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば下記のような優れた効果が得られる。
(1)絶縁シートの両面に導電性材料からなる渦巻状コイルを該絶縁シートを介在して両渦巻状コイルが互いに対向一致するように配置し、いずれか一方を受信用、他方を送信用とするので、従来のように同一平面に隣合って受信用コイルと送信用コイルとを配置するのに比較し、渦巻コイルの小型化が可能になる。
【0030】(2)また、絶縁シートの両面に配置した渦巻状コイルの一方の渦巻状コイルを送信用とし、他方の渦巻状コイルを受信用とし、アース部を共通にするように両渦巻状コイルの端部を接続するので、手作りでは製作できない性能の向上、安定性、品質の均一化、小型・精密化、製作時間の短縮そして理想的な平行コイルによる高機能化(S/N比の改善)が可能になるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偏向横波用電磁超音波トランスデューサの概略構成を示す図で、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のA−A断面図である。
【図2】本発明の偏向横波用電磁超音波トランスデューサの平面渦巻コイルの製造方法を説明する図である。
【図3】電磁超音波トランスデューサの計測原理を説明するための図である。
【図4】従来の偏向横波用電磁超音波トランスデューサの概略構成を示す図で、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のA−A断面図である。
【符号の説明】
20 永久磁石(又は電磁石)
21 平面渦巻コイル
21−1 絶縁シート
21−2 渦巻状コイル
21−3 渦巻状コイル
21−4 銅箔
21−5 接着材
21−6 絶縁シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁シートの両面に形成した導電性材料からなる渦巻状コイルを該絶縁シートを介在して両渦巻状コイルが互いに対向一致するように配置した平面渦巻コイルを具備することを特徴とする偏向横波用電磁超音波トランスデューサ。
【請求項2】 前記絶縁シートの両面に配置した渦巻状コイルのうち一方は電磁的作用によって超音波を発生し、他方は検知作用を有し、それぞれ独立していて、該渦巻状のコイルの一方の端部にはスルーホールを介して他方の面に通じ、外部リード線と接続し、他方の端部はアース部を共通にするように接続することを特徴とする請求項1に記載の偏向横波用電磁超音波トランスデューサ。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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