説明

健康医療器具

【課題】磁力線効果、赤外線効果及び荷電粒子効果の相乗効果が向上された健康医療器具を提供する。
【解決手段】永久磁石の表面を赤外線輻射材料及び圧電焦電材料でコーティングした。遠赤外線放射材料は永久磁石表面側に、圧電焦電放射材料は前記永久磁石の人体接触面側にコーティングして、人体に対する磁力線、赤外線及び荷電粒子浸透の相乗効果を一層向上させた。磁石材料粉末に赤外線輻射材料及び圧電焦電材料の一方の粉末を混合した磁石の表面に赤外線輻射材料及び圧電焦電材料の他方をコーティングしても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力線の作用、赤外線の作用、荷電粒子の作用を複合的に利用する健康医療器具に係り、特に、磁力線及び赤外線の複数波長による遠接効果と荷電粒子の近接効果を有効に利用した健康医療器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁力線の作用、赤外線の作用、荷電粒子の作用を複合的に利用する健康医療器具には、次のようなものが知られている。
第1先行技術: 永久磁石(以下、単に磁石という。)は、その放射する磁力線の作用が人体の血流促進効果をもたらすことから、所定の形状に加工され、粘着テープ等で人体に密着させて健康医療器具として使用されている。磁石材料としては、初期のBHmax(最大エネルギー積)3程度のフェライト磁石から、より強い磁場を発生できるBHmax20−30の希土類系磁石が使用され始めている。
第2先行技術: 赤外線放射材料、例えばゲルマニウムも、磁石と同様な血流促進効果のほか新陳代謝促進効果が期待され、磁石と同じ構造体で健康医療器具として単体で使用されてきている。
第3先行技術: 最近では、マイナス電荷を有する粒子(荷電粒子)が、皮膚侵入作用による疲労回復等の効果を有することも認識されており、赤外線効果と荷電粒子効果を有する圧電焦電材料である電気石(トルマリン)等が健康医療器具として広く使用されている。
第4先行技術: また、最近では、磁力線効果と赤外線効果を同時に複合的に使用して医療効果を高めるため、フェライト磁石、マンガン磁石又は希土類磁石等の磁性材料粉末と赤外線放射材料粉末を混合して一体成型した、又は混合粉末と樹脂等の結合剤(バインダー)を混合して成型した健康医療器具が提案され、使用されている(例えば、特許文献1,2)。
第5先行技術: また、磁性材料粉末と赤外線放射材料粉末をそれぞれ別個に結合剤と混合して成型し、両者を積層し、患部に合う形状に切断して、患部に密着使用するものも提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開平10−241924号公報
【特許文献2】特開平9−55309号公報
【特許文献3】特開2001−187155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述された磁力線効果と赤外線効果と荷電粒子効果の複合効果(相乗効果)をねらった健康医療器具は、次のような問題を有していて、材料固有の性質を充分に活用していないため、充分に高い相乗効果が得られているとは言えない。
【0004】
上記従来品の磁力線、赤外線及び荷電粒子の効果に関する問題点を個別にあげれば、次の通りである。
(1)磁力線効果
磁性体の密度が、非磁性体である赤外線放射材料等により薄められ、固有体積磁気モーメントが減ると同時に、磁性体粒子間が非磁性体により磁気的に切断されるので、例え磁性体粒子の磁気方位を磁石成型時に配列させても、外部に出てくる有効磁力線は減る。また、非磁性体が混入されているので、磁性体粒子の磁場による配列が難しくなり、磁石としての性能が落ちる。従って、人体に作用する有効磁力線が減る。近年、磁気エネルギー積の大きな希土類系磁石が開発利用され、有効磁束密度は向上してきている。
【0005】
(2)赤外線効果
トルマリン及びゲルマニウムは、人体の体温を受けて活性化し、それぞれ波長10−14μmの赤外線及び100μmの遠赤外線を輻射するが、粒子間に存在する磁性体及び結合剤が前記赤外線及び遠赤外線を乱反射し、また透過損失を受けるので、人体に接する近傍の材料しか効果を発揮しない。また、人体表面から離れて存在する赤外線放射材料は人体により加温され難いため活性化されない。特に樹脂成型された複合磁石では、波長の短いトルマリンの赤外線効果は薄くなる。
【0006】
(3)荷電粒子効果
皮膚より浸透して筋肉疲労回復効果が期待できる荷電粒子は、そのライフタイム及び電荷の移動度が小さいので、近接効果しか期待できず、皮膚に密着している部分のみが特に有効であるが、磁性材料粉末と圧電焦電材料粉末の混合粉で樹脂成型した複合磁石の場合は、その内部で発生する荷電粒子は、皮膚面には到達できない。また、圧電焦電材料は、自発分極を持つ結晶が温度変化又は圧力変化を受けて電荷を放出するものであるから、体温の影響を受けにくい内部のものは、活性化されないため、電荷の放出効果は期待できない。
【0007】
(4)一体成形型又は樹脂成形型
上記第4先行技術に属する磁気、赤外線及び荷電粒子の皮膚面よりの浸透効果を利用した健康医療器具は、必要とされる人体部分に複合作用してその相乗効果が充分に発揮されるが、従来例の構造では必要とされる人体表面に磁力線単体、単波長赤外線又は単波長赤外線及び荷電粒子しか作用せず、磁力線効果、赤外線効果及び荷電粒子効果の相乗効果を充分に発揮できていない。
【0008】
(5)積層型
上記第5先行技術に属する磁性体粒子と赤外線放出粒子の樹脂成型体を積層した健康医療器具については、磁性体粒子の結合剤による有効体積の減少と、バインダー樹脂との混合による磁気配列の乱れによる磁気モーメントの減少が問題点として上げられる。また、樹脂は赤外線透過能が低く、樹脂内では電荷キャリアのライフタイムが短いので、発生した赤外線及び電荷が有効に利用されない。
【0009】
本発明は、磁力線、赤外線、荷電粒子の複合効果をねらった上記従来品である磁性材料粉末と赤外線放射材料粉末の混合粉から成型される健康医療器具に存在した磁力線、赤外線及び電荷放出能の問題を解消するためになされたものであり、その目的は、各構成材料の特質を考慮して、その相乗効果をできるだけ100%に近い効率で発揮するように改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
磁石から放出される磁力線は、遠接効果を有する。すなわち、皮膚表面から離れていても人体内部に到達できるので、必要とされる磁束密度800G以上が確保できればその治療効果が期待できる。圧電焦電材料は、体温により活性化されて比較的波長の短い赤外線及び荷電粒子を放出するが、磁力線に比較して結合剤及び磁性体粒子による妨害を受け易く、比較的近接効果を発揮する材料であり、その及ぼす効果は人体に密着された近傍に限られる。特に放出された荷電粒子は、その移動距離が短いので、人体に接した面しかその効果が期待できない。
【0011】
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、上記課題を解決するため、本発明の健康医療器具は、所定の形状に加工された磁石又は複合磁石の表面を自発分極を有する圧電焦電材料及び遠赤外線放射材料でコーティングしてなることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
そして、遠赤外線放射材料は、禁止帯幅が0.7eV以下の半導体遠赤外線放射材料であることが望ましい(請求項2)。
また、圧電焦電材料としてトルマリン又はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を、遠赤外線放射材料としてトルマリン、PZT、ゲルマニウム(Ge)、インジウムアンチモン(InSb)の1種又は複数種の組合わせを使用することが望ましい(請求項3)。
また、圧電焦電材料及び遠赤外線放射材料は、その粉末が無機結合剤、有機結合剤又は金属材料結合剤と混合されてコーティングされていることが望ましい(請求項4)。
さらに、圧電焦電材料及び遠赤外線放射材料は、人体に接する面にのみコーティングされていることが望ましい(請求項5)。
さらに、圧電焦電材料及び遠赤外線放射材料は、真空メッキ又はプラズマ溶射法を用いて永久磁石の表面に付着させることが望ましい(請求項6)。
加えて、遠赤外線輻射材料は永久磁石の表面側に、荷電粒子放射材料は永久磁石の人体接触面側にコーティングされていることが望ましい(請求項7)。
【0013】
本発明の目的は、磁性材料粉末及び遠赤外線放射材料と圧電焦電材料の一方の粉末の混合物から成型し、着磁された永久磁石の表面に前記遠赤外線放射材料と圧電焦電材料の他方をコーティングしてなる構成によっても達成される(請求項8)。
【発明の効果】
【0014】
本発明による健康医療器具は、磁石の表面に赤外線輻射材料と電荷放出材料とを分離してコーティングしてなるので、磁力線強度が大きく、かつ、長波長遠赤外線及び短波長赤外線と放出荷電粒子が人体表面の至近位置から人体内部の同一個所に複合作用するので、相乗効果が大きい。
そして、磁石材料は最適配合と最適成型方法が選択でき、赤外線放射材料及び圧電焦電材料は必要とするところに最適配分できるので、従来の磁石粉末と赤外線放射材料粉末との混合粉末による成型加工品等に比較して、強力な磁力線効果、複数波長赤外線効果及び電荷浸透効果による高い相乗効果が得られる。従って、本発明は、各材料より放出される磁力線、赤外線、荷電粒子の特性をそれぞれ充分に生かした非常に効率の高い医療効果を発揮する健康医療器具を提供することができる。
【0015】
請求項1の発明により、磁石は最適加工ができるので、表面磁束密度として従来品の1200ガウス(以下、Gという。)から2000Gまで向上させることができる。請求項2の発明により、強力な磁力線の人体内部への浸透深さに合わせて身体深部により浸透し易い長波長赤外線が活用できる。請求項3の発明により、長波長赤外線に加えて比較的人体表面に作用する短波長赤外線と荷電粒子による筋肉疲労回復効果が期待できる。請求項4の発明により、請求項1−3の実施がより経済的にできる。請求項5の発明により、人体で活性化される部分に集中的に材料が使用されるので、材料の利用効率が高まる。請求項6の発明により、磁石表面に各材料が結合剤無しでコーティングできるので、赤外線放射能&電荷粒子発生効率が向上する。また、コーティングされた材料は100%セラミックであるため、硬度が大きく使用中に傷等の損傷を受け難くなる。請求項7の発明により、浸透能力の大きな長赤外線放射材料が磁石表面に荷電粒子及び短赤外線放射材料が人体側にコーティングされるので、磁力線との複合効果がより強まる。
【0016】
請求項8の発明により、磁束密度は多少減少するが、2波長赤外線と荷電粒子浸透効果の相乗効果を利用した医療器具が低コストで製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
希土類磁石、フェライト系磁石は抗磁力が大きいので、薄板形状で使用し、アルニコ系高飽和磁束密度の材料は抗磁力が小さいので、細長い形で着磁して使用する。使用する磁石としては、磁気エネルギー積の大きな希土類系磁石が望ましい。特に請求項8の発明に係る磁石材料としては、希土類又はフェライト系粉末成型磁石に限られる。
本発明に係る健康医療器具の製造方法としては、(1)磁性体又は磁性体と赤外線放射材料の混合品を単独で成型加工し、(2)使用される磁性体の抗磁力、磁気モーメントに合わせて最適パーミアンス係数が取れるような寸法比を決め、(3)必要とする人体内部での磁界強度に合わせて磁石材料と寸法を選択する。(4)こうして、所定の形状に加工された磁石の表面に赤外線放射材料及び又は圧電焦電材料をコーティングする。
【0018】
赤外線放射材料は、禁止帯幅2eV以上の圧電焦電材料から輻射される波長10−15μmの短いトルマリン等と、禁止帯幅0.7eV以下の100μmと波長の長い人体のより深部への浸透が可能なゲルマニウム等の組み合わせを用いることが望ましい。
【0019】
磁石の表面に赤外線放射材料及び圧電焦電材料をコーティングして得られる本発明による健康医療器具は、従来の磁性材料粉末と赤外線放射材料粉末との混合粉からの成型体とは異なるため、最大エネルギー積BHmaxは20以上にもなり、30mmφ×3mmt(φは直径、tは厚み)のもので、表面磁束密度は2000Gが得られ、従来品の3−5倍になり、人体により深く浸透してその効果を及ぼすことができる。
本発明によれば、磁石の最大磁束密度は4200Gまで取ることができるが、皮膚に密着して使用する場合は、赤外線放射材料及び圧電焦電材料の厚みを増すか、又は磁石の体積を調整して表面磁束密度が2000Gを超えないようにすることが望ましい。磁界強度は距離の二乗に反比例して減少するので、非磁性材料の厚みか磁石の厚みを減少することにより、磁界強度の調整が簡単にできる。
【0020】
赤外線放射材料は、人の体温を受けて活性化し、赤外線を放射するが、放射される赤外線は人体に浸透する前に周辺の材料の妨害を受けやすく、磁力線に比較して到達距離が短くなりやすい。従って、人体表面に比較的近い部分しか効果が期待できない。特に波長の短い圧電焦電材料から輻射される赤外線は、周辺の材料よりの妨害を受け易く、人体への浸透距離が短いので、この傾向が大きい。このため本発明においては、赤外線放射材料を磁石の表面に適性配置コーティングすることにより、その効果を発揮させるようにした。
【0021】
圧電焦電材料であるトルマリン等は、活性化されることにより波長10−14μmの赤外線を放射しまた圧電焦電効果で電荷を放出する。ゲルマニウムは禁止帯幅0.66eVの半導体で、32℃の加熱によりそのドナー帯より電子を放出し、波長100μm内外の遠赤外線を輻射する。従って、長波長の赤外線を放射するゲルマニウムは磁石に近い側に、トルマリンは人体に近い側にコーティングするのが望ましい。しかし、場合によっては、混合粉末の形でコーティングしてもよい。複合粉末磁石の場合は、なるべく長波長を出すGeを混合粉末として使用し、圧電焦電材料を表面にコーティングするのが望ましい
【0022】
コーティングは、材料単独で又は材料と結合剤との混合で行ってもよいが、結合剤とのコートの場合は赤外線透過能の大きいカルコゲン低融点ガラス等との複合コーティングをすることが望ましい。ゲルマニウムを単独でコーティングする場合は、真空メッキを使用して結合剤無しのコーティングが望ましい。特に磁性体を非磁性金属でメッキコーティングした磁石の表面にゲルマニウムを直接コーティングした場合は、金属は100%赤外線を反射するので、輻射が人体側に集中するため有効である。
【0023】
ゲルマニウム及びトルマリンは、プラズマ溶射により磁石表面に個別に又は複合して同時に溶射することもできる。プラズマ溶射の場合は、粉末化された粒子が一度溶融し、固体化して、素材に付着成膜するため、材料の機械的な粉砕過程で結晶に発生した歪み欠陥が回復され、赤外線放射効率と圧電焦電効果が向上する。また、溶射膜はラミネート構造を有するため、反電界係数が小さくなり、発生する電荷が大きくなるので、皮膚面に浸透し易くなる。従って、プラズマ溶射は圧電焦電材料の溶射に適している。ゲルマニウム及びトルマリンの配合比は人体の作用部分の特質に合わせて変えることが好ましい。ゲルマニウムは、99.9%以上の純度をもつドナー濃度10E19−20個/CCのN型半導体材料が望ましい。真性半導体ゲルマニウムでは、室温でキャリアが10E13個/CC位しかなく、人体温での熱励起による赤外線放射効率は期待できない。
【0024】
ゲルマニウム及びトルマリンをコーティングする方法としては、次の4つの方法を用いることが可能である。
A)磁石表面へのプラズマ溶射法による積層又は混合コーティング及び各粉末とガラス 又は樹脂粉末との複合溶射コーティング。
B)低融点ガラスと赤外線放射材料粉末との有機樹脂混合溶液への浸漬塗布後、加熱処 理によるガラス化コーティング。
C)Ni―P等金属無電解メッキ液への粉末混合による流動複合メッキ。
D)塗料樹脂との混合による複合塗装。
【0025】
積層コーティングの場合は、ゲルマニウムをスパッタ、イオンプレーテイング、真空蒸着等真空メッキ法でコーティングした後、トルマリンを上記方法のいずれかでコーティングする方法が挙げられるが、結合剤を使用しないプラズマ溶射法と真空メッキ法は、ゲルマニウムとトルマリンの両材料のコーティングに適用できるので便利である。また、結合剤を使用しないコーティング膜は、研磨加工により宝石としての外観を持たせることができるので、装飾品としての効果も期待できる。プラズマ溶射は、プラズマガスの周辺を炭酸ガス等の冷却噴射ガスでシールドして行うコールド溶射法が下地磁石のプラズマ炎の熱による性能劣化を防げるので、特に熱劣化を受け易い希土類磁石に対して有効である。
【0026】
ガラスとの複合コーティングの場合は、使用されるガラスは赤外線透過能が大きいカルコゲンガラスが望ましい。赤外線効果に加えて、人体に接している活性粒子より出る電荷の浸透による疲労回復効果が期待できる。
【0027】
金属との複合メッキでは、金属が赤外線を反射するので赤外線効果が減少されるが、発生する荷電粒子は有効に活用される。塗料樹脂との混合コーティングおいては赤外線効果、電荷移動によるイオン効果ともに多少減少するが、両方の効果が期待できる。
【0028】
上述した発明は、磁石の表面に赤外線放射材料と圧電焦電材料をコーティングした構成を有するものであるが、他の実施の形態として、磁石材料の粉末に赤外線放射材料又は圧電焦電材料の一方の粉末を所定の割合で混合・成型し、磁束密度を調整して複合磁石を成型後、その磁石の表面に赤外線放射材料又は圧電焦電材料の他方をコーティングした構成とすることもできる。
例えば、磁石粉末とGe等を複合成型し、その成型した磁石の表面に圧電焦電材料をコーティングすることが、荷電粒子の移動距離の関係で好ましいが、逆の組み合わせでもよい。半導体赤外線放射材料は材料の中での荷電粒子のライフタイム及び移動度が大きいので、電荷は医療器具の表面に析出できる。
磁力線及び複数波長の赤外線と荷電粒子の相乗作用を効果的に発揮する医療器具の必要とする条件により、経済効果を考慮して、磁石又は複合磁石表面にコーティングされる赤外線放射材料及び/又は圧電焦電材料の組合わせが選択される。
【実施例】
【0029】
以下の実施例の説明は、磁石の成型時に磁場配向されたNd系希土類磁石30mmφ×3mmtを使用した場合を示すが、磁場の必要とされる強度に応じて、アルニコ系等の析出硬化型磁石、フェライト系酸化物磁石を使用することができる。また、圧電焦電材料にはトルマリン、赤外線輻射材料にはゲルマニウムを用いた場合を示すが、これらに限定されない。複合磁石も同寸法の成型品であるが成型時には磁場配向処理はしてない。
【0030】
[実施例1]
Nd磁石表面に平均粒径5μmのGe粉末及トルマリン粉末をそれぞれ膜厚100μm毎層状にプラズマ溶射した。溶射条件は、プラズマガスAr、印加電圧22V、電流600A、シールドガスに炭酸ガスを使用した。
[実施例2]
実施例1と同じ粉末を50質量%ずつ混合して、Nd磁石表面に膜厚が200μmになるまで複合溶射した。溶射条件は、実施例1と同一である。
[実施例3]
Nd磁石表面にGe粉末をHfイオンプレーテイング法により膜厚30μmになるまで付着した後、トルマリン粉末を膜厚100μmとなるようにプラズマ溶射した。
イオンプレーテイング条件:Hf、27MHz、200W
電子銃加速電圧:10kV、10mA
[実施例4]
Nd磁石の表面にGe粉末とトルマリン粉末の50重量%配合の混合粉末を低融点ガラス(米国Diemat社製品DM2700)粉末に重量配合比50%で有機結合剤を用いて膜厚200μmとなるようにコーティングした後、370℃で燒結した。
[実施例5]
Nd磁石の表面に、トルマリン粉末のみを、その他は実施例4と同じ条件で、膜厚100μmとなるようにコーティングし、370℃で燒結した。
[実施例6]
Nd磁石に、Ge粉末のみを、その他は実施例4と同じ条件で、膜厚100μmとなるようにコーティングし、370℃で燒結した。
[実施例7]
実施例1の条件でGeのみ100μmコーティングした。
[実施例8]
実施例1の条件でトルマリンのみ100μmコーティングした。
[実施例9]
実施例4におけるガラス粉末をカルコゲンガラス、Sb−Se−In系酸化物ガラスに変更してコーティングを行った。
[実施例10]
実施例4におけるガラス粉末をナイロン6に変更してコーティングを行った。
[実施例11]
Nd系磁石粉末70%,Ge粉末30%の燒結磁石の表面にトルマリン粉末
100μmを実施例1の条件で溶射
[実施例12]
Nd系磁石粉末70%、トルマリン粉末30%の燒結磁石の表面にGe30μm
実施例3の条件でイオンプレート
【0031】
請求項8の発明を実施する場合は、次の点に留意すると良い。すなわち、磁石粉末に2波長赤外線効果と荷電粒子効果を発揮させるために、赤外線放射材料と圧電焦電材料の2種類の粉末を例えば30重量%ずつ必要十分な量を添加すると、磁石粉末の量が減るので、磁力線の効果が期待できなくなる。最近、高性能の希土類磁石が進歩したので、磁石粉末に必要最小限の磁力線強度800Gが得られるまで、赤外線放射材料と圧電焦電材料の一方を混入した混合磁石を成型し、その混合磁石の上に赤外線放射材料と圧電焦電材料の他方をコーティングすると、2波長赤外線と荷電粒子の相乗効果を発揮させることができる。
【0032】
各実施例について、最大エネルギー積、表面磁束密度、5個装着時の体表面上昇温度を測定した。体表面温度測定は、所定の形状に加工した製品を身体に装着し、赤外線サーモグラフイを用いて平均上昇温度を測定した。
[特性測定結果]
各実施例及び比較例の特性測定結果は、表1に示す通りであった。
[表1]
BHmax 表面磁束密度 赤外線放射率 体表面温度上昇℃
実施例1 10 2000 29 3.9
実施例2 10 2000 24 3.3
実施例3 10 2000 27 3.5
実施例4 10 2000 20 2.4
実施例5 10 2000 18 1.5
実施例6 10 2000 25 2.0
実施例7 10 2000 27 2.1
実施例8 10 2000 20 1.9
実施例9 10 2000 23 2.1
実施例10 10 2000 14 1.8
実施例11 6 1200 20 2.2
実施例12 6 1200 19 2.1
比較例1 3.9 850 16 1.3
比較例2 5.8 1150 11 1.1
比較例3 1.1 330 8 1.0

比較例1は、Nd磁石粉末50部、トルマリン粉末50部の混合燒結品
比較例2は、Nd磁石粉末70部、トルマリン粉末30部の混合燒結品
比較例3は、Nd磁石粉末60部、トルマリン粉末30部の混合ボンド磁石
【0033】
実施例は、Nd系希土類磁石 ゲルマニウム及びトルマリンに限定して記載したが、遠赤外線輻射材料として禁止帯幅0.7eV以下の半導体、例えばInSbを、また、赤外線輻射材料と電荷放出材料として自発分極を持つ圧電焦電材料、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)も同様に使用できる。禁止帯幅0.7eV以上の半導体は、100μm等の長波長赤外線の輻射能が下がるので、好ましくない。また、絶縁物である圧電焦電材料は、通常、禁止帯幅が2ev以上あり、5−15μmの赤外線を電荷と共に輻射するので、複合して使用することが望ましい。
【0034】
以上の実施例から明らかなように、本発明による健康医療器具は、磁石材料表面に赤外線輻射と電荷放出材料とを分離してコーティングしてなるので、磁力線強度が大きくとれ、かつ長波長遠赤外線及び短波長赤外線と放出荷電粒子が人体表面の至近位置から同じ個所に同じ作用するのでその相乗効果が大きい。
【0035】
特に、プラズマ溶射はトルマリン等圧電焦電材料粉末の機械粉砕による歪みを回復するので、その赤外線及び電荷放出能を10%以上改善するとともに、結合剤無しで皮膜が構成されるので、溶射後の研磨加工により装飾品としての効果も期待でき、産業上有利である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の磁力線効果、赤外線効果及び荷電粒子効果の人体に対する複合作用を使用した医療用具はネックレス、腕輪、指輪、足輪、肌着、靴下、腹巻き、シート、枕及び寝具等の形状に成型して使用することができ、人以外の動物用医療器具としても応用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状に加工された永久磁石の表面を自発分極を有する圧電焦電材料及び遠赤外線放射材料でコーティングしてなる健康医療器具。
【請求項2】
遠赤外線放射材料は、禁止帯幅が0.7eV以下の半導体遠赤外線放射材料であることを特徴とする請求項1記載の健康医療器具。
【請求項3】
圧電焦電材料としてトルマリン又はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を、遠赤外線放射材料としてトルマリン、PZT、ゲルマニウム(Ge)、インジウムアンチモン(InSb)の1種又は複数種の組合わせを使用していることを特徴とする請求項1又は2記載の健康医療器具。
【請求項4】
圧電焦電材料及び遠赤外線放射材料は、その粉末が無機結合剤、有機結合剤又は金属材料結合剤と混合されてコーティングされていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の健康医療器具。
【請求項5】
圧電焦電材料及び遠赤外線放射材料が永久磁石の人体に接する面にのみコーティングされていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の健康医療器具。
【請求項6】
圧電焦電材料及び遠赤外線放射材料は真空メッキ又はプラズマ溶射法を用いて永久磁石の表面に付着されていることを特徴とする請求項5記載の健康医療器具。
【請求項7】
遠赤外線放射材料は永久磁石の表面側に、圧電焦電放射材料は前記永久磁石の人体接触面側にコーティングされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の健康医療器具。
【請求項8】
磁性材料粉末及び遠赤外線放射材料と圧電焦電材料の一方の粉末の混合物から成型された永久磁石の表面に前記遠赤外線放射材料と圧電焦電材料の他方をコーティングしてなる健康医療器具。
【請求項9】
遠赤外線放射材料は、禁止帯幅が0.7eV以下の半導体遠赤外線放射材料であることを特徴とする請求項8記載の健康医療器具。
【請求項10】
圧電焦電材料としてトルマリン又はPZTを、遠赤外線放射材料としてトルマリン、PZT、Ge、InSbの1種又は複数種の組合わせを使用していることを特徴とする請求項8又は9記載の健康医療器具。