健康器具
【課題】健康増進効果を発揮しつつ、衛生面に優れた健康器具を提供する。
【解決手段】赤外線を放出する健康器具1であって、薄膜で被覆された固形物10と、固形物10を収容する本体部11と、固形物10に向けて赤外線又は可視光線を照射する励起光源12と、を備え、固形物10の一部は、本体部11の外側に露出されており、薄膜10bは、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を含有することで、赤外線領域(遠赤外線領域を含む)の波長成分を含む光を適切に本体部11の外側へ放出できる。
【解決手段】赤外線を放出する健康器具1であって、薄膜で被覆された固形物10と、固形物10を収容する本体部11と、固形物10に向けて赤外線又は可視光線を照射する励起光源12と、を備え、固形物10の一部は、本体部11の外側に露出されており、薄膜10bは、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を含有することで、赤外線領域(遠赤外線領域を含む)の波長成分を含む光を適切に本体部11の外側へ放出できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康器具に関するものであり、特にゲルマニウムを用いた健康器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、健康器具として、ゲルマニウムを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の健康器具は、岩盤浴用のユニットであって、ゲルマニウム鉱石又は麦飯石を含有する略平板状の床板本体における表面部の一部又は全面に、適宜間隔で複数個の凹部が形成され、該凹部内には、ゲルマニウム鉱石を含有する石粒が収容されてなり、凹部の開口端に石粒の抜け出しを防ぐための押え材が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、健康器具は医療分野や福祉・介護分野において複数回利用され又は複数人により共用されることがあるため、治療の源である赤外線の強度の調整ができるものや健康増進だけでなく衛生面に優れたものが望まれている。そこで、本発明は、適切な強度の赤外線を出力することができるとともに、健康増進効果を発揮しつつ衛生面に優れた健康器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明に係る健康器具は、赤外線を放出する健康器具であって、薄膜で被覆された固形物と、固形物を収容する本体部と、固形物に向けて赤外線又は可視光線を照射する励起光源と、を備え、固形物の一部は、本体部の外側に露出されており、薄膜は、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を含有して形成されることを特徴として構成される。
【0006】
本発明に係る健康器具では、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が、励起光源から赤外線又は可視光線が照射される固形物の表面側に、赤外線及び可視光線を透過させる釉薬又はポリエチレンによって配置される。このため、励起光である赤外線又は可視光線を、極力吸収されることなくゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物へ到達させることができる。そして、励起光が、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の価電子帯の電子(正孔)を励起して伝導体に遷移させる。そして、励起された電子が伝導体から価電子帯に落ちる際に、赤外線領域(遠赤外線領域を含む)の波長成分を含む光が価電子帯から放出される。ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物は、固形物の表面側に配置されており、その配置位置が例えば固形物の表面から赤外線の波長よりも短い位置とされることで、放出光は固形物に吸収されることなく本体部の外側に放出される。放出光は、赤外線領域の波長成分を含む適切な強度の光となるため、例えば遠赤外線領域の光を照射する治療等に用いることができるとともに、赤外線領域の光により嫌気性細菌の繁殖を抑制することが可能となる。なお、酸化ゲルマニウムも価電子帯の性格上、赤外線を放出することができる。よって、適切な強度の赤外線を出力することが可能となるとともに、健康増進効果を発揮しつつ衛生面に優れた健康器具を得ることができる。
【0007】
上記健康器具では、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が例えば溶融分散されている。なお、ゲルマニウム(屈折率4)の価電子帯から発せられた赤外線が空気(屈折率1)中に発せられる場合において、ゲルマニウムから直接空気中に赤外線が発せされる場合と、例えばガラス(屈折率1.4〜2)に分散されたゲルマニウムから赤外線が発せられる場合とを比較すると、後者の方が屈折率の差が小さくなるので、より効率的に赤外線を空気中に放出することができるものと考える。すなわち、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が溶融分散されることで効率的に赤外線を空気中に放出することが可能となる。
【0008】
ここで、ゲルマニウム合金が、シリコンゲルマニウムであってもよい。このように構成することで、励起光によってゲルマニウムだけでなくシリコンの価電子帯の電子(正孔)が励起されるため、放出光の出力強度を一層高めることができるとともに広範囲の波長成分を有する放出光を得ることが可能となる。
【0009】
また、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が、粒子の状態で薄膜に含有されてもよい。このように構成することで、励起光が薄膜内部まで到達してゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の粒子に作用することができるため、固形物の表面から放出される放出光の出力強度を一層高めることが可能となる。
【0010】
また、薄膜が、銀粒子、又は銀粒子とゲルマニウム、ゲルマニウム合金もしくはゲルマニウム酸化物の粒子との接合粒子をさらに含有することが好ましい。このように構成することで、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物から放出される光が、銀により反射される。このため、放出光を本体部の外側へ適切に放出することができる。
【0011】
また、薄膜が、麦飯石又は粘土をさらに含有ことが好適である。このように構成することで、赤外線及び麦飯石もしくは粘土により、例えば嫌気性細菌の繁殖を抑制したり、尿や汗等の有機物質を分解したりすることができる。
【0012】
また、固形物が、球体を呈し、本体部に回転可能に設けられることが好適である。このように構成することで、例えば固形物が設けられた側の本体部の一面を皮膚や患部に接触させた状態で移動させることができるので、広範囲の部位に連続的に波長と強度を変更して照射することが可能となる。
【0013】
また、励起光源が、固形物と当接した状態で本体部に収容されることが好適である。このように構成することで、励起光源からの励起光をゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物に直接作用させることができるので、放出光の出力強度を一層高めることができる。
【0014】
あるいは、励起光源に接続され、励起光源から照射された赤外線又は可視光線を固形物に伝播させる光ファイバをさらに備えることが好適である。このように構成することで、本体部の表面から放出される光の照射幅を狭くすることができる。このため、目標とする部位に適切に照射することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、健康増進効果を発揮しつつ、衛生面に優れた健康器具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る健康器具の一部斜視図である。
【図2】図1の健康器具の内部構造を拡大して示す側断面図である。
【図3】ゲルマニウム微粒子の作用効果を説明する概要図である。
【図4】銀微粒子及びゲルマニウム微粒子の作用効果を説明する概要図である。
【図5】図1の健康器具の変形例の内部構造を拡大して示す側断面図である。
【図6】励起光として赤外線を用いた放出光出力測定系の概要図である。
【図7】釉薬に含有されたGeの放出光出力強度と波長との関係を図6の測定系で測定した結果である。
【図8】励起光として可視光線を用いた放出光出力測定系の概要図である。
【図9】釉薬に含有されたGeの放出光出力強度と波長との関係を図8の測定系で測定した結果である。
【図10】ポリエチレンに含有されたGeの放出光出力強度と波長との関係を図8の測定系で測定した結果である。
【図11】尿の分解を説明するための実験前の写真である。
【図12】図11に示す試験物を所定期間放置した後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図中の寸法比率は必ずしも説明中のものとは一致していない。
【0018】
本実施形態に係る健康器具は、岩盤浴用の床板、介護ベッドの床板、シャワーヘッドのシャワーローラ部等、主に人体の皮膚表面と接触する健康器具として好適に採用されるものである。
【0019】
最初に、本実施形態に係る健康器具の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る健康器具の一部斜視図、図2は、図1の健康器具の内部構造を拡大して示す斜視図である。図1に示すように、健康器具1は、略板状の上部本体部11aと略板状の下部本体部11bとを重ね合わせて構成される本体部11を備えている。上部本体部11a、下部本体部11bの材料としては、例えば透明アクリル、ウレタン樹脂又はポリエチレン樹脂等が用いられる。上部本体部11aの上面側(下部本体部11bと当接する主面と対向する主面側)には、球体の固形物10がその一部を上部本体部11a上面から外側へ露出させた状態で複数配置されている。上部本体部11aの上面及び固形物10は、人体の皮膚表面と接触する接触部として機能する。
【0020】
図2に示すように、上部本体部11aには、下部本体部11bとの重なり方向に貫通された円形の貫通孔11dが形成されており、貫通孔11d内に固形物10が収容されている。貫通孔11dの内径は、固形物10の直径(例えば1〜20mm)よりも大きく形成されている。また、上部本体部11aの上面側における貫通孔11dの開口端には、内側に張り出す環状の鍔11cが内周に沿って設けられており、鍔11cの内径が固形物10の直径よりも小さく形成されることで、本体部11からの固形物10の抜け出しを防止している。
【0021】
また、下部本体部11bには、貫通孔11dと対応する位置に、上部本体部11aとの重なり方向に貫通された円形の貫通孔11eが形成されており、貫通孔11dと貫通孔11eとは連通した状態とされている。貫通孔11e内には、励起光として赤外線又は可視光線を発光する励起光源12が収容されており、励起光源12は固形物10に当接されて配置される。このため、励起光源12から照射された励起光は、固形物10に直接作用する。励起光源12としては、例えば、赤外線又は可視光線を発光する発光ダイオード(LED(Light Emitting Diode))が用いられる。ここで、発光ダイオードにより得られる赤外線は、波長領域が約700nm〜約1mmの範囲となる電磁波であり、発光ダイオードにより得られる可視光線は、波長領域が約360nm〜約830mmの範囲となる電磁波である。
【0022】
固形物10は、励起光源12によって下側から支持されることで、その一部を上部本体部11a上面から外側へ露出させた状態で、上部本体部11a内部に回転可能に配置される。また、固形物10は、略球体のコア部10aを備えており、コア部10aの表面は薄膜10bで被覆されている。コア部10aの材料としては、例えば、セラミックス、石英ガラス又は軟質・硬質ガラス等が用いられる。また、薄膜10bは、溶融された釉薬あるいは溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を含んで形成された混晶で構成される。例えば、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物は、溶融された釉薬内又は溶融されたポリエチレン内に分散(溶融分散)されている。ゲルマニウム合金としては、例えば、AgGe合金、SiGe合金(シリコンゲルマニウム合金)等が用いられ、ゲルマニウム酸化物としては、GeO2が用いられる。また、薄膜10bには、GeSiO2、麦飯石又は粘土が含有されていてもよい。
【0023】
また、薄膜10bは、釉薬あるいはポリエチレンを母体材料(又はバインダー)とし、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が微粒子として母体材料内部に分散して存在してもよい。ゲルマニウム又はゲルマニウム合金の微粒子の直径は、例えば1nm〜100μmである。なお、ゲルマニウム又はゲルマニウム合金の微粒子の表面は、酸化された状態であってもよい。
【0024】
また、薄膜10bは、さらに銀を含有してもよい。銀は、例えば微粒子として単独で薄膜10b内部に分散して存在してもよい。あるいは、薄膜10bに含有される銀粒子は、例えばゲルマニウム、ゲルマニウム合金又は前記ゲルマニウム酸化物の粒子と接合して接合粒子を形成してもよい。
【0025】
さらに、薄膜10bは、固形物10の表面からゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が配置された位置までの距離が、赤外線の波長よりも短くなるように構成される。
【0026】
次に、本実施形態に係る健康器具1の作用効果を説明する。上述した健康器具1において、励起光源12から出力された励起光は、固形物10を覆う薄膜10bに照射される。励起光は、赤外線又は可視光線であるため、薄膜10bに含有される釉薬又はポリエチレンに吸収されることなく薄膜10bに含有されるゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物に到達する。そして、励起光が、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の価電子帯の電子(正孔)を励起して伝導体に遷移させる。そして、励起された電子が伝導体から価電子帯に落ちる際に、赤外線領域(遠赤外線領域を含む)の波長成分を含む光が価電子帯から放出される。ここで、固形物10の表面からゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が配置された位置までの距離が、赤外線の波長よりも短くなるように構成されているため、トンネル効果により固形物10の表面から赤外線が減衰することなく放出される。放出光は、上部本体部11aの上面側から外側へ放出され、例えば人体の皮膚に照射される。
【0027】
また、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の微粒子化による作用効果について、図3を用いて説明する。図3は、ゲルマニウム微粒子の作用効果を説明する概要図である。図3の(A)は、バルクのゲルマニウムにおける励起光の光路、図3の(B)は、母体材料を石英ガラスとし内部にゲルマニウム微粒子31を分散配置させた薄膜10bにおける励起光の光路を示している。励起光は、可視光又は赤外線であり、ゲルマニウムのバンドギャップ以上のエネルギーを有している。図3の(A)に示すように、バルクのゲルマニウムに励起光が照射された場合、励起光はゲルマニウムの表面のみで吸収・反射され、ゲルマニウムの表面のみから放出光(赤外線)が発生する。一方、図3の(B)に示すように、励起光がゲルマニウム微粒子31を含有する薄膜10bに照射された場合、励起光(特に赤外線)が石英ガラスの内部に大部分浸透し、内部に配置されたゲルマニウム微粒子31に到達する。励起光は、ゲルマニウム微粒子31の表面で吸収されるとともに屈折し、更に別のゲルマニウム微粒子31に到達して吸収される。このように、薄膜10b内部のゲルマニウム微粒子31により、赤外線が次々と発生する。すなわち、ゲルマニウムを微粒子化することにより励起光が十分に吸収されるため、放出光の強度を一層大きくすることができる。発生した放出光(赤外線)の波長は3〜300μmであり、石英ガラスの表面からそれぞれ発生する波長以下に位置するゲルマニウム微粒子31からの赤外線はトンネル効果で外部へ出力される。よって放出光の強度を一層大きくすることができる。
【0028】
また、銀微粒子及びゲルマニウム微粒子による接合粒子の作用効果について、図4を用いて説明する。図4は、銀微粒子及びゲルマニウム微粒子の作用効果を説明する概要図である。図4に示すように、薄膜10bに含有される銀微粒子30は、ゲルマニウム微粒子31と接合して接合粒子を形成している。銀微粒子30とゲルマニウム微粒子31との接合面32は、ゲルマニウム微粒子31からの放出光を反射するように機能する。すなわち、ゲルマニウム微粒子31から出力される放出光は、銀微粒子30との接合面32で反射されてゲルマニウム微粒子31側(例えば矢印L0で示す方向)に放出される。このように、放出光が散乱することなく所定の方向に出力されるため、放出光の強度を一層大きくすることができる。
【0029】
ここで、参考までにゲルマニウムが遠赤外線を含む赤外光を発生させる原理とメカニズムについて概説すると、次のようになる。
【0030】
ゲルマニウムは、間接遷移型の半導体であり、そのバンドギャップエネルギーが0.67eV(近赤外相当)であるが、ホール(正孔)には重いホールと軽いホールの二種類があり、液体ヘリウム温度に冷却して電場と磁場とを印加すると、これらのホールに関係した波長100μmオーダの遠赤外線を含む赤外光を放射することが知られている。例えば、小宮山進はIII族原子の不純物を含むp型ゲルマニウムを用いて半導体レーザを試作し、液体ヘリウムで冷却しながら波長80〜120μmの遠赤外線レーザ発振を確認している(「固体物理」,第31巻第4号,1996年)。
【0031】
ここで、上記論文の筆者(小宮山)が推測する遠赤外線の放射メカニズムを概説すると、p型ゲルマニウム(間接遷移型半導体)が極低温の状態では多量のホールはガンマ点(バンドの頂上)に縮退しているが、直交する電場と磁場とを印加すると、いわゆるサイクロトン運動を始める。このとき、軽いホールは重いホールに比べると1/8倍程度も有効質量が小さいため容易に高エネルギー側に励起されやすく、重いホールのレベルから励起光によって軽いホールのバンドに次々と励起されて反転分布が生じ、軽いホールは電場により運動エネルギーを得て、これが所定のエネルギーレベルに達すると重いホール帯に直接光学遷移し、波長100μm帯の遠赤外線の赤外光を放射することになる。
【0032】
以上、本実施形態に係る健康器具1によれば、励起光源12から放出された励起光が固形物10を覆うゲルマニウムのバンドギャップあるいは価電子帯の電子(正孔)を励起することで、固形物10から赤外線領域(遠赤外線領域を含む)の光が放出される。なお、酸化ゲルマニウムであっても、価電子帯の性格上、赤外線領域(遠赤外線領域を含む)の光が放出される。放射された光のうち波長0.7〜4μmの領域を含む赤外線は、硫化水素を発生する嫌気性細菌の発生・増殖を抑制することが可能である。また、放射された光のうち波長4〜1000μmの領域を含む赤外線(遠赤外線)は、傷や神経障害の治療、肩こりや腰痛などの緩解などに対して効果を発揮する。さらに、励起光源12から放出される励起光として可視光線を採用することで色彩療法(カラーセラピー)も期待できる。このように、健康増進の効果を発揮しつつ、衛生面にも優れた健康器具1を得ることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が例えば溶融分散されている。なお、ゲルマニウム(屈折率4)の価電子帯から発せられた赤外線が空気(屈折率1)中に発せられる場合において、ゲルマニウムから直接空気中に赤外線が発せされる場合と、例えばガラス(屈折率1.4〜2)に分散されたゲルマニウムから赤外線が発せられる場合とを比較すると、後者の方が屈折率の差が小さくなるので、より効率的に赤外線を空気中に放出することができるものと考える。すなわち、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が溶融分散されることで効率的に赤外線を空気中に放出することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンによって固形物10の表面に配置させることで、励起光をゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物に十分照射することができるので、出力強度の強い放出光を得ることが可能となる。さらに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の配置位置が例えば固形物10の表面から赤外線の波長よりも短い位置とされることで、放出光は固形物10に吸収されることなくトンネル効果により本体部11の外側に放出される。このため、遠赤外線を用いた健康増進効果や温熱治療効果を十分に発揮することができるとともに、フィルタを介して放出光に含まれる波長成分を選択して患部に照射する場合であっても健康増進効果や温熱治療効果を奏する程度の放出光強度を得ることが可能となる。
【0035】
なお、固形物10の表面だけでなくコア部10aにもゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を配置することも考えられるが、固形物10の内部で励起されて放出される放出光は、固形物10の外側に至るまでに吸収され減衰するため、固形物10から十分に取り出すことができない。このため、固形物10の表面側のみにゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を配置し、コア部10aはセラミックス、石英ガラス又は軟質・硬質ガラス等の材料で構成することで、費用対効果の高い健康器具とすることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、ゲルマニウム合金としてSiGeを採用することができるので、励起光によってゲルマニウムだけでなくシリコンの価電子帯の電子(正孔)が励起されるため、放出光の出力強度を一層高めることが可能となるとともに、広範囲の波長成分を有する放出光を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を微粒子状態とすることができる。ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の微粒子は、結晶化された際に半導体的な性質を持つため、肩凝り等を治療・治癒する健康増進、治療効果をもたらすゲルマニウムの遠赤外効果を特に好適に発揮することができる。また、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を微粒子状態とすることで、励起光が薄膜10b内部まで到達してゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の微粒子31に作用することが可能となるため、固形物10の表面から放出される放出光の出力強度を一層高めることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、薄膜10bが、銀粒子、又は銀粒子とゲルマニウム、ゲルマニウム合金もしくはゲルマニウム酸化物の粒子との接合粒子をさらに含有することができる。このため、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物から放出される光は、銀微粒子との接合面で反射され照射方向が調整されて本体部11の外側へ適切に放出される。よって、放出光の出力強度を一層高めることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、薄膜10bに麦飯石又は粘土をさらに含有させることができるので、赤外線及び麦飯石もしくは粘土により、嫌気性細菌の繁殖を抑制したり、尿素やアンモニアを分解したりすることが可能となり、より一層衛生面に優れた健康器具とすることができる。特に寝たきりの病人等の介護ベッドとして採用した場合、尿漏れや発汗による臭いを抑制・消臭することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、固形物10が球体を呈し、本体部に回転可能に設けることができるので、例えば固形物が設けられた側の本体部の一面を皮膚や患部に接触させた状態で移動させることが可能となり、広範囲の部位に指圧効果を含め連続的に波長と強度を変更して照射することができる。
【0041】
さらに、本実施形態に係る健康器具1によれば、励起光源12を固形物10と当接した状態で本体部11に収容することができるので、励起光源12からの励起光をゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物に直接作用させることが可能となり、放出光の出力強度を一層高めることができる。
【0042】
なお、上述した実施形態は本発明に係る健康器具の一例を示すものである。本発明に係る健康器具は、実施形態に係る健康器具に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係る健康器具を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0043】
例えば、上述した実施形態では、励起光源12が固形物10に当接した場合を説明したが、これに限られるものではなく、励起光源12が固形物10と間隔を空けて配置されてもよい。さらに、励起光源12と固形物10との間に光ファイバを介在させてもよい。図5は、励起光源12と固形物10との間に光ファイバ13を介在させた健康器具の内部構造の一部拡大図である。図5に示すように、下部本体部11b内部において、励起光源12と固形物10との間に光ファイバ13が配置されている。光ファイバ13は、励起光源12に接続され、励起光源12から照射された赤外線又は可視光線を固形物10に伝播させる。また、光ファイバ13が固形物10を下方から支持することで固形物10が上部本体部11aに回転可能に配置される。このように構成することで、励起光源12から出力された励起光は、固形物10を覆う薄膜10bに照射される際に、光ファイバ13を介して照射領域が限定される。このため、本体部11の表面から放出される光の照射幅を狭くすることができる。このため、目標とする部位に適切に照射することが可能となる。
【実施例】
【0044】
以下、上記効果を説明すべく本発明者が実施した実施例及び比較例について述べる。
【0045】
まず、本発明者は、実施形態に係る健康器具1の薄膜10bの放出光の出力及び波長成分を検証した。
(実施例1)
実施形態に係る釉薬及びゲルマニウムを含有する薄膜15を石英ガラス基板14上に積層して作成した。薄膜15は、800℃以上で溶融した釉薬にゲルマニウムを添加して形成した。この薄膜15は、釉薬が90重量%、ゲルマニウムが10重量%の混晶とした。
(測定条件1)
作成した薄膜15の放出光の出力及び波長成分を図6に示す測定系で測定した。図6に示すように、励起光源(LD素子)12から出力させた赤外線(波長0・9μm)を、石英ガラス基板14の裏側へ光ファイバ13を介して照射し、薄膜15から放出される放出光L1の強度を検出素子16で検出した。測定では、LD素子12の電流値を2A、4Aとし、励起光である赤外線の強度を変化させて放出光の強度及び波長成分を検証した。結果を図7に示す。
(比較例1)
タングステンヒータ(温度600℃)が出力する光の波長成分を比較例1として測定した。結果を図7に示す。
【0046】
図7は、放出光の出力強度と波長との関係を示すグラフであり、横軸が波長(cm)の逆数、縦軸が放出光の強度を示す。図7では、実施例1の測定結果として、LD素子12の電流値を2Aとした場合における放出光の強度及び波長成分のグラフをGGE2、LD素子12の電流値を4Aとした場合における放出光の強度及び波長成分のグラフをGGE1で示している。また、比較例1の測定結果として、タングステンヒータの放出光の強度及び波長成分のグラフをGTで示している。図7のグラフGGE1,GGE2に示すように、実施例1の釉薬及びゲルマニウムを含有する薄膜15に赤外線を照射した場合、比較例1のタングステンヒータのグラフGTと同様に、約3μm〜約10μmの領域に係る範囲の放出光(遠赤外線を含む赤外線)が出力されることが確認された。さらに、グラフGGE1に示すように、LD素子12の電流値を4Aとすることで、実施例1の薄膜15は、比較例1のタングステンヒータの出力光よりも出力強度の強い放出光を出力することができることが確認された。
【0047】
(測定条件2)
次に、本発明者は、実施形態に係る健康器具の放出光にフィルタを適用し、フィルタ透過後の出光光の出力強度を測定した。薄膜15は、実施例1と同様のものを用いた。LD素子12の電流値は2Aとし、フィルタとして、フッ化バリウム(BaF2)を用いた。結果を図7のグラフGGE3に示す。図7に示すように、フィルタを適用したグラフGGE3は、フィルタを適用しなかったグラフGGE2に比べて出力強度が若干低下したが、温感治療に用いる強度が確保できることが確認された。
【0048】
次に、本発明者は、励起光として可視光線を採用した場合を検証した。
(実施例2)
実施形態に係る釉薬及びゲルマニウムを含有する薄膜17をセラミックス基板18上に積層して作成した。薄膜17は、薄膜15と同様であり、800℃以上で溶融した釉薬にゲルマニウムを添加して形成した。この薄膜17は、釉薬が90重量%、ゲルマニウムが10重量%の混晶とした。
(実施例3)
実施形態に係るポリエチレン及びゲルマニウムを含有する薄膜19を石英ガラス基板20上に積層して作成した。薄膜19は、150℃以上で溶融したポリエチレンにゲルマニウムを添加して形成した。この薄膜19は、ポリエチレンが90重量%、ゲルマニウムが10重量%の混晶とした。
(測定条件3)
作成した薄膜17,19の放出光の出力及び波長成分を図8に示す測定系で測定した。図8に示すように、白色光源(LD素子)12から出力させた白色光線(波長2〜16μm)L2を、薄膜17,19に斜めに直接照射し、薄膜17,19から放出される放出光L3の強度を検出素子16で検出した。比較例として、白色光線L2を照射せずに出力された放出光L3の波長成分を測定した。結果を図9,10に示す。
【0049】
図9,10は、放出光の出力強度(発光強度)と波長との関係を示すグラフであり、横軸が波長(μm)、縦軸が放出光の強度を示す。図9,10では、白色光線L2を照射した場合における放出光の強度及び波長成分のグラフをGGE4,GGE5、白色光線L2を照射しない場合における放出光の強度及び波長成分のグラフをGB1,GB2で示している。図9のグラフGGE4,GB1に示すように、実施例2の釉薬及びゲルマニウムを含有する薄膜17に白色光線を照射した場合、比較例と比べて約2μm〜約6μmの領域に係る範囲の放出光(遠赤外線を含む赤外線)が出力されることが確認された。約2μm〜約6μmの領域に係る範囲の赤外線の強度は強く、ガラスの表面のゲルマニウムからの赤外線はトンネル効果により放出されることが確認された。また、図10のグラフGGE5,GB2に示すように、実施例3のポリエチレン及びゲルマニウムを含有する薄膜19に白色光線を照射した場合、比較例と比べて約2μm〜約16μmの赤外線領域〜遠赤外線領域に係る範囲の放出光が出力されることが確認された。すなわち、ゲルマニウムのバインダーとして石英ガラスを用いた場合には、6μmよりも長い波長の放出光は吸収されてしまうが、ゲルマニウムのバインダーとしてポリエチレンを用いた場合には、放出光の吸収が抑制されることが確認された。
【0050】
次に、本発明者は、実施形態に係る健康器具1の細菌抑制効果及び消臭効果(尿の分解効果)を検証した。透明な小便に薄膜10bを構成する材料を混ぜて経過を確認した。検証した材料を以下に示す。
(実施例1)
小便にゲルマニウム、麦飯石及び粘土を混入した(図11のD)。
(比較例1)
小便に何も混入しなかった(図11のA)。
(比較例2)
小便に麦飯石及び粘土を混入した(図11のD)。
(比較例3)
小便にゲルマニウム銀を混入した(図11のC)。
【0051】
上記実施例1及び比較例を放置し、17日間経過したものを図12に示す。図12のAに示すように、小便に何も混入しなかった比較例1は、透明度が極めて低下し異臭がした。一方、図12のB,Cに示すように、小便に麦飯石及び粘土を混入した比較例2、小便にゲルマニウム銀を混入した比較例3は、比較例1に比べて透明度は高いが濁っており、悪臭がした。これに対して、図12のDに示すように、小便にゲルマニウム、麦飯石及び粘土を混入した実施例1では、比較例1〜3に比べて明らかに透明度が高く、悪臭も抑えられていた。よって、ゲルマニウム(ゲルマニウム合金、ゲルマニウム酸化物)、麦飯石及び粘土の組合せにより細菌抑制効果及び消臭効果(尿の分解効果)が十分発揮されることが確認された。
【符号の説明】
【0052】
1…健康器具、10…固形物、10b…薄膜、11…本体部、12…励起光源(LD素子)、13…光ファイバ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康器具に関するものであり、特にゲルマニウムを用いた健康器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、健康器具として、ゲルマニウムを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の健康器具は、岩盤浴用のユニットであって、ゲルマニウム鉱石又は麦飯石を含有する略平板状の床板本体における表面部の一部又は全面に、適宜間隔で複数個の凹部が形成され、該凹部内には、ゲルマニウム鉱石を含有する石粒が収容されてなり、凹部の開口端に石粒の抜け出しを防ぐための押え材が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、健康器具は医療分野や福祉・介護分野において複数回利用され又は複数人により共用されることがあるため、治療の源である赤外線の強度の調整ができるものや健康増進だけでなく衛生面に優れたものが望まれている。そこで、本発明は、適切な強度の赤外線を出力することができるとともに、健康増進効果を発揮しつつ衛生面に優れた健康器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明に係る健康器具は、赤外線を放出する健康器具であって、薄膜で被覆された固形物と、固形物を収容する本体部と、固形物に向けて赤外線又は可視光線を照射する励起光源と、を備え、固形物の一部は、本体部の外側に露出されており、薄膜は、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を含有して形成されることを特徴として構成される。
【0006】
本発明に係る健康器具では、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が、励起光源から赤外線又は可視光線が照射される固形物の表面側に、赤外線及び可視光線を透過させる釉薬又はポリエチレンによって配置される。このため、励起光である赤外線又は可視光線を、極力吸収されることなくゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物へ到達させることができる。そして、励起光が、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の価電子帯の電子(正孔)を励起して伝導体に遷移させる。そして、励起された電子が伝導体から価電子帯に落ちる際に、赤外線領域(遠赤外線領域を含む)の波長成分を含む光が価電子帯から放出される。ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物は、固形物の表面側に配置されており、その配置位置が例えば固形物の表面から赤外線の波長よりも短い位置とされることで、放出光は固形物に吸収されることなく本体部の外側に放出される。放出光は、赤外線領域の波長成分を含む適切な強度の光となるため、例えば遠赤外線領域の光を照射する治療等に用いることができるとともに、赤外線領域の光により嫌気性細菌の繁殖を抑制することが可能となる。なお、酸化ゲルマニウムも価電子帯の性格上、赤外線を放出することができる。よって、適切な強度の赤外線を出力することが可能となるとともに、健康増進効果を発揮しつつ衛生面に優れた健康器具を得ることができる。
【0007】
上記健康器具では、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が例えば溶融分散されている。なお、ゲルマニウム(屈折率4)の価電子帯から発せられた赤外線が空気(屈折率1)中に発せられる場合において、ゲルマニウムから直接空気中に赤外線が発せされる場合と、例えばガラス(屈折率1.4〜2)に分散されたゲルマニウムから赤外線が発せられる場合とを比較すると、後者の方が屈折率の差が小さくなるので、より効率的に赤外線を空気中に放出することができるものと考える。すなわち、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が溶融分散されることで効率的に赤外線を空気中に放出することが可能となる。
【0008】
ここで、ゲルマニウム合金が、シリコンゲルマニウムであってもよい。このように構成することで、励起光によってゲルマニウムだけでなくシリコンの価電子帯の電子(正孔)が励起されるため、放出光の出力強度を一層高めることができるとともに広範囲の波長成分を有する放出光を得ることが可能となる。
【0009】
また、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が、粒子の状態で薄膜に含有されてもよい。このように構成することで、励起光が薄膜内部まで到達してゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の粒子に作用することができるため、固形物の表面から放出される放出光の出力強度を一層高めることが可能となる。
【0010】
また、薄膜が、銀粒子、又は銀粒子とゲルマニウム、ゲルマニウム合金もしくはゲルマニウム酸化物の粒子との接合粒子をさらに含有することが好ましい。このように構成することで、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物から放出される光が、銀により反射される。このため、放出光を本体部の外側へ適切に放出することができる。
【0011】
また、薄膜が、麦飯石又は粘土をさらに含有ことが好適である。このように構成することで、赤外線及び麦飯石もしくは粘土により、例えば嫌気性細菌の繁殖を抑制したり、尿や汗等の有機物質を分解したりすることができる。
【0012】
また、固形物が、球体を呈し、本体部に回転可能に設けられることが好適である。このように構成することで、例えば固形物が設けられた側の本体部の一面を皮膚や患部に接触させた状態で移動させることができるので、広範囲の部位に連続的に波長と強度を変更して照射することが可能となる。
【0013】
また、励起光源が、固形物と当接した状態で本体部に収容されることが好適である。このように構成することで、励起光源からの励起光をゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物に直接作用させることができるので、放出光の出力強度を一層高めることができる。
【0014】
あるいは、励起光源に接続され、励起光源から照射された赤外線又は可視光線を固形物に伝播させる光ファイバをさらに備えることが好適である。このように構成することで、本体部の表面から放出される光の照射幅を狭くすることができる。このため、目標とする部位に適切に照射することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、健康増進効果を発揮しつつ、衛生面に優れた健康器具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る健康器具の一部斜視図である。
【図2】図1の健康器具の内部構造を拡大して示す側断面図である。
【図3】ゲルマニウム微粒子の作用効果を説明する概要図である。
【図4】銀微粒子及びゲルマニウム微粒子の作用効果を説明する概要図である。
【図5】図1の健康器具の変形例の内部構造を拡大して示す側断面図である。
【図6】励起光として赤外線を用いた放出光出力測定系の概要図である。
【図7】釉薬に含有されたGeの放出光出力強度と波長との関係を図6の測定系で測定した結果である。
【図8】励起光として可視光線を用いた放出光出力測定系の概要図である。
【図9】釉薬に含有されたGeの放出光出力強度と波長との関係を図8の測定系で測定した結果である。
【図10】ポリエチレンに含有されたGeの放出光出力強度と波長との関係を図8の測定系で測定した結果である。
【図11】尿の分解を説明するための実験前の写真である。
【図12】図11に示す試験物を所定期間放置した後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図中の寸法比率は必ずしも説明中のものとは一致していない。
【0018】
本実施形態に係る健康器具は、岩盤浴用の床板、介護ベッドの床板、シャワーヘッドのシャワーローラ部等、主に人体の皮膚表面と接触する健康器具として好適に採用されるものである。
【0019】
最初に、本実施形態に係る健康器具の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る健康器具の一部斜視図、図2は、図1の健康器具の内部構造を拡大して示す斜視図である。図1に示すように、健康器具1は、略板状の上部本体部11aと略板状の下部本体部11bとを重ね合わせて構成される本体部11を備えている。上部本体部11a、下部本体部11bの材料としては、例えば透明アクリル、ウレタン樹脂又はポリエチレン樹脂等が用いられる。上部本体部11aの上面側(下部本体部11bと当接する主面と対向する主面側)には、球体の固形物10がその一部を上部本体部11a上面から外側へ露出させた状態で複数配置されている。上部本体部11aの上面及び固形物10は、人体の皮膚表面と接触する接触部として機能する。
【0020】
図2に示すように、上部本体部11aには、下部本体部11bとの重なり方向に貫通された円形の貫通孔11dが形成されており、貫通孔11d内に固形物10が収容されている。貫通孔11dの内径は、固形物10の直径(例えば1〜20mm)よりも大きく形成されている。また、上部本体部11aの上面側における貫通孔11dの開口端には、内側に張り出す環状の鍔11cが内周に沿って設けられており、鍔11cの内径が固形物10の直径よりも小さく形成されることで、本体部11からの固形物10の抜け出しを防止している。
【0021】
また、下部本体部11bには、貫通孔11dと対応する位置に、上部本体部11aとの重なり方向に貫通された円形の貫通孔11eが形成されており、貫通孔11dと貫通孔11eとは連通した状態とされている。貫通孔11e内には、励起光として赤外線又は可視光線を発光する励起光源12が収容されており、励起光源12は固形物10に当接されて配置される。このため、励起光源12から照射された励起光は、固形物10に直接作用する。励起光源12としては、例えば、赤外線又は可視光線を発光する発光ダイオード(LED(Light Emitting Diode))が用いられる。ここで、発光ダイオードにより得られる赤外線は、波長領域が約700nm〜約1mmの範囲となる電磁波であり、発光ダイオードにより得られる可視光線は、波長領域が約360nm〜約830mmの範囲となる電磁波である。
【0022】
固形物10は、励起光源12によって下側から支持されることで、その一部を上部本体部11a上面から外側へ露出させた状態で、上部本体部11a内部に回転可能に配置される。また、固形物10は、略球体のコア部10aを備えており、コア部10aの表面は薄膜10bで被覆されている。コア部10aの材料としては、例えば、セラミックス、石英ガラス又は軟質・硬質ガラス等が用いられる。また、薄膜10bは、溶融された釉薬あるいは溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を含んで形成された混晶で構成される。例えば、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物は、溶融された釉薬内又は溶融されたポリエチレン内に分散(溶融分散)されている。ゲルマニウム合金としては、例えば、AgGe合金、SiGe合金(シリコンゲルマニウム合金)等が用いられ、ゲルマニウム酸化物としては、GeO2が用いられる。また、薄膜10bには、GeSiO2、麦飯石又は粘土が含有されていてもよい。
【0023】
また、薄膜10bは、釉薬あるいはポリエチレンを母体材料(又はバインダー)とし、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が微粒子として母体材料内部に分散して存在してもよい。ゲルマニウム又はゲルマニウム合金の微粒子の直径は、例えば1nm〜100μmである。なお、ゲルマニウム又はゲルマニウム合金の微粒子の表面は、酸化された状態であってもよい。
【0024】
また、薄膜10bは、さらに銀を含有してもよい。銀は、例えば微粒子として単独で薄膜10b内部に分散して存在してもよい。あるいは、薄膜10bに含有される銀粒子は、例えばゲルマニウム、ゲルマニウム合金又は前記ゲルマニウム酸化物の粒子と接合して接合粒子を形成してもよい。
【0025】
さらに、薄膜10bは、固形物10の表面からゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が配置された位置までの距離が、赤外線の波長よりも短くなるように構成される。
【0026】
次に、本実施形態に係る健康器具1の作用効果を説明する。上述した健康器具1において、励起光源12から出力された励起光は、固形物10を覆う薄膜10bに照射される。励起光は、赤外線又は可視光線であるため、薄膜10bに含有される釉薬又はポリエチレンに吸収されることなく薄膜10bに含有されるゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物に到達する。そして、励起光が、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の価電子帯の電子(正孔)を励起して伝導体に遷移させる。そして、励起された電子が伝導体から価電子帯に落ちる際に、赤外線領域(遠赤外線領域を含む)の波長成分を含む光が価電子帯から放出される。ここで、固形物10の表面からゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が配置された位置までの距離が、赤外線の波長よりも短くなるように構成されているため、トンネル効果により固形物10の表面から赤外線が減衰することなく放出される。放出光は、上部本体部11aの上面側から外側へ放出され、例えば人体の皮膚に照射される。
【0027】
また、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の微粒子化による作用効果について、図3を用いて説明する。図3は、ゲルマニウム微粒子の作用効果を説明する概要図である。図3の(A)は、バルクのゲルマニウムにおける励起光の光路、図3の(B)は、母体材料を石英ガラスとし内部にゲルマニウム微粒子31を分散配置させた薄膜10bにおける励起光の光路を示している。励起光は、可視光又は赤外線であり、ゲルマニウムのバンドギャップ以上のエネルギーを有している。図3の(A)に示すように、バルクのゲルマニウムに励起光が照射された場合、励起光はゲルマニウムの表面のみで吸収・反射され、ゲルマニウムの表面のみから放出光(赤外線)が発生する。一方、図3の(B)に示すように、励起光がゲルマニウム微粒子31を含有する薄膜10bに照射された場合、励起光(特に赤外線)が石英ガラスの内部に大部分浸透し、内部に配置されたゲルマニウム微粒子31に到達する。励起光は、ゲルマニウム微粒子31の表面で吸収されるとともに屈折し、更に別のゲルマニウム微粒子31に到達して吸収される。このように、薄膜10b内部のゲルマニウム微粒子31により、赤外線が次々と発生する。すなわち、ゲルマニウムを微粒子化することにより励起光が十分に吸収されるため、放出光の強度を一層大きくすることができる。発生した放出光(赤外線)の波長は3〜300μmであり、石英ガラスの表面からそれぞれ発生する波長以下に位置するゲルマニウム微粒子31からの赤外線はトンネル効果で外部へ出力される。よって放出光の強度を一層大きくすることができる。
【0028】
また、銀微粒子及びゲルマニウム微粒子による接合粒子の作用効果について、図4を用いて説明する。図4は、銀微粒子及びゲルマニウム微粒子の作用効果を説明する概要図である。図4に示すように、薄膜10bに含有される銀微粒子30は、ゲルマニウム微粒子31と接合して接合粒子を形成している。銀微粒子30とゲルマニウム微粒子31との接合面32は、ゲルマニウム微粒子31からの放出光を反射するように機能する。すなわち、ゲルマニウム微粒子31から出力される放出光は、銀微粒子30との接合面32で反射されてゲルマニウム微粒子31側(例えば矢印L0で示す方向)に放出される。このように、放出光が散乱することなく所定の方向に出力されるため、放出光の強度を一層大きくすることができる。
【0029】
ここで、参考までにゲルマニウムが遠赤外線を含む赤外光を発生させる原理とメカニズムについて概説すると、次のようになる。
【0030】
ゲルマニウムは、間接遷移型の半導体であり、そのバンドギャップエネルギーが0.67eV(近赤外相当)であるが、ホール(正孔)には重いホールと軽いホールの二種類があり、液体ヘリウム温度に冷却して電場と磁場とを印加すると、これらのホールに関係した波長100μmオーダの遠赤外線を含む赤外光を放射することが知られている。例えば、小宮山進はIII族原子の不純物を含むp型ゲルマニウムを用いて半導体レーザを試作し、液体ヘリウムで冷却しながら波長80〜120μmの遠赤外線レーザ発振を確認している(「固体物理」,第31巻第4号,1996年)。
【0031】
ここで、上記論文の筆者(小宮山)が推測する遠赤外線の放射メカニズムを概説すると、p型ゲルマニウム(間接遷移型半導体)が極低温の状態では多量のホールはガンマ点(バンドの頂上)に縮退しているが、直交する電場と磁場とを印加すると、いわゆるサイクロトン運動を始める。このとき、軽いホールは重いホールに比べると1/8倍程度も有効質量が小さいため容易に高エネルギー側に励起されやすく、重いホールのレベルから励起光によって軽いホールのバンドに次々と励起されて反転分布が生じ、軽いホールは電場により運動エネルギーを得て、これが所定のエネルギーレベルに達すると重いホール帯に直接光学遷移し、波長100μm帯の遠赤外線の赤外光を放射することになる。
【0032】
以上、本実施形態に係る健康器具1によれば、励起光源12から放出された励起光が固形物10を覆うゲルマニウムのバンドギャップあるいは価電子帯の電子(正孔)を励起することで、固形物10から赤外線領域(遠赤外線領域を含む)の光が放出される。なお、酸化ゲルマニウムであっても、価電子帯の性格上、赤外線領域(遠赤外線領域を含む)の光が放出される。放射された光のうち波長0.7〜4μmの領域を含む赤外線は、硫化水素を発生する嫌気性細菌の発生・増殖を抑制することが可能である。また、放射された光のうち波長4〜1000μmの領域を含む赤外線(遠赤外線)は、傷や神経障害の治療、肩こりや腰痛などの緩解などに対して効果を発揮する。さらに、励起光源12から放出される励起光として可視光線を採用することで色彩療法(カラーセラピー)も期待できる。このように、健康増進の効果を発揮しつつ、衛生面にも優れた健康器具1を得ることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が例えば溶融分散されている。なお、ゲルマニウム(屈折率4)の価電子帯から発せられた赤外線が空気(屈折率1)中に発せられる場合において、ゲルマニウムから直接空気中に赤外線が発せされる場合と、例えばガラス(屈折率1.4〜2)に分散されたゲルマニウムから赤外線が発せられる場合とを比較すると、後者の方が屈折率の差が小さくなるので、より効率的に赤外線を空気中に放出することができるものと考える。すなわち、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物が溶融分散されることで効率的に赤外線を空気中に放出することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンによって固形物10の表面に配置させることで、励起光をゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物に十分照射することができるので、出力強度の強い放出光を得ることが可能となる。さらに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の配置位置が例えば固形物10の表面から赤外線の波長よりも短い位置とされることで、放出光は固形物10に吸収されることなくトンネル効果により本体部11の外側に放出される。このため、遠赤外線を用いた健康増進効果や温熱治療効果を十分に発揮することができるとともに、フィルタを介して放出光に含まれる波長成分を選択して患部に照射する場合であっても健康増進効果や温熱治療効果を奏する程度の放出光強度を得ることが可能となる。
【0035】
なお、固形物10の表面だけでなくコア部10aにもゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を配置することも考えられるが、固形物10の内部で励起されて放出される放出光は、固形物10の外側に至るまでに吸収され減衰するため、固形物10から十分に取り出すことができない。このため、固形物10の表面側のみにゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を配置し、コア部10aはセラミックス、石英ガラス又は軟質・硬質ガラス等の材料で構成することで、費用対効果の高い健康器具とすることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、ゲルマニウム合金としてSiGeを採用することができるので、励起光によってゲルマニウムだけでなくシリコンの価電子帯の電子(正孔)が励起されるため、放出光の出力強度を一層高めることが可能となるとともに、広範囲の波長成分を有する放出光を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を微粒子状態とすることができる。ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の微粒子は、結晶化された際に半導体的な性質を持つため、肩凝り等を治療・治癒する健康増進、治療効果をもたらすゲルマニウムの遠赤外効果を特に好適に発揮することができる。また、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を微粒子状態とすることで、励起光が薄膜10b内部まで到達してゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物の微粒子31に作用することが可能となるため、固形物10の表面から放出される放出光の出力強度を一層高めることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、薄膜10bが、銀粒子、又は銀粒子とゲルマニウム、ゲルマニウム合金もしくはゲルマニウム酸化物の粒子との接合粒子をさらに含有することができる。このため、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物から放出される光は、銀微粒子との接合面で反射され照射方向が調整されて本体部11の外側へ適切に放出される。よって、放出光の出力強度を一層高めることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、薄膜10bに麦飯石又は粘土をさらに含有させることができるので、赤外線及び麦飯石もしくは粘土により、嫌気性細菌の繁殖を抑制したり、尿素やアンモニアを分解したりすることが可能となり、より一層衛生面に優れた健康器具とすることができる。特に寝たきりの病人等の介護ベッドとして採用した場合、尿漏れや発汗による臭いを抑制・消臭することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態に係る健康器具1によれば、固形物10が球体を呈し、本体部に回転可能に設けることができるので、例えば固形物が設けられた側の本体部の一面を皮膚や患部に接触させた状態で移動させることが可能となり、広範囲の部位に指圧効果を含め連続的に波長と強度を変更して照射することができる。
【0041】
さらに、本実施形態に係る健康器具1によれば、励起光源12を固形物10と当接した状態で本体部11に収容することができるので、励起光源12からの励起光をゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物に直接作用させることが可能となり、放出光の出力強度を一層高めることができる。
【0042】
なお、上述した実施形態は本発明に係る健康器具の一例を示すものである。本発明に係る健康器具は、実施形態に係る健康器具に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係る健康器具を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0043】
例えば、上述した実施形態では、励起光源12が固形物10に当接した場合を説明したが、これに限られるものではなく、励起光源12が固形物10と間隔を空けて配置されてもよい。さらに、励起光源12と固形物10との間に光ファイバを介在させてもよい。図5は、励起光源12と固形物10との間に光ファイバ13を介在させた健康器具の内部構造の一部拡大図である。図5に示すように、下部本体部11b内部において、励起光源12と固形物10との間に光ファイバ13が配置されている。光ファイバ13は、励起光源12に接続され、励起光源12から照射された赤外線又は可視光線を固形物10に伝播させる。また、光ファイバ13が固形物10を下方から支持することで固形物10が上部本体部11aに回転可能に配置される。このように構成することで、励起光源12から出力された励起光は、固形物10を覆う薄膜10bに照射される際に、光ファイバ13を介して照射領域が限定される。このため、本体部11の表面から放出される光の照射幅を狭くすることができる。このため、目標とする部位に適切に照射することが可能となる。
【実施例】
【0044】
以下、上記効果を説明すべく本発明者が実施した実施例及び比較例について述べる。
【0045】
まず、本発明者は、実施形態に係る健康器具1の薄膜10bの放出光の出力及び波長成分を検証した。
(実施例1)
実施形態に係る釉薬及びゲルマニウムを含有する薄膜15を石英ガラス基板14上に積層して作成した。薄膜15は、800℃以上で溶融した釉薬にゲルマニウムを添加して形成した。この薄膜15は、釉薬が90重量%、ゲルマニウムが10重量%の混晶とした。
(測定条件1)
作成した薄膜15の放出光の出力及び波長成分を図6に示す測定系で測定した。図6に示すように、励起光源(LD素子)12から出力させた赤外線(波長0・9μm)を、石英ガラス基板14の裏側へ光ファイバ13を介して照射し、薄膜15から放出される放出光L1の強度を検出素子16で検出した。測定では、LD素子12の電流値を2A、4Aとし、励起光である赤外線の強度を変化させて放出光の強度及び波長成分を検証した。結果を図7に示す。
(比較例1)
タングステンヒータ(温度600℃)が出力する光の波長成分を比較例1として測定した。結果を図7に示す。
【0046】
図7は、放出光の出力強度と波長との関係を示すグラフであり、横軸が波長(cm)の逆数、縦軸が放出光の強度を示す。図7では、実施例1の測定結果として、LD素子12の電流値を2Aとした場合における放出光の強度及び波長成分のグラフをGGE2、LD素子12の電流値を4Aとした場合における放出光の強度及び波長成分のグラフをGGE1で示している。また、比較例1の測定結果として、タングステンヒータの放出光の強度及び波長成分のグラフをGTで示している。図7のグラフGGE1,GGE2に示すように、実施例1の釉薬及びゲルマニウムを含有する薄膜15に赤外線を照射した場合、比較例1のタングステンヒータのグラフGTと同様に、約3μm〜約10μmの領域に係る範囲の放出光(遠赤外線を含む赤外線)が出力されることが確認された。さらに、グラフGGE1に示すように、LD素子12の電流値を4Aとすることで、実施例1の薄膜15は、比較例1のタングステンヒータの出力光よりも出力強度の強い放出光を出力することができることが確認された。
【0047】
(測定条件2)
次に、本発明者は、実施形態に係る健康器具の放出光にフィルタを適用し、フィルタ透過後の出光光の出力強度を測定した。薄膜15は、実施例1と同様のものを用いた。LD素子12の電流値は2Aとし、フィルタとして、フッ化バリウム(BaF2)を用いた。結果を図7のグラフGGE3に示す。図7に示すように、フィルタを適用したグラフGGE3は、フィルタを適用しなかったグラフGGE2に比べて出力強度が若干低下したが、温感治療に用いる強度が確保できることが確認された。
【0048】
次に、本発明者は、励起光として可視光線を採用した場合を検証した。
(実施例2)
実施形態に係る釉薬及びゲルマニウムを含有する薄膜17をセラミックス基板18上に積層して作成した。薄膜17は、薄膜15と同様であり、800℃以上で溶融した釉薬にゲルマニウムを添加して形成した。この薄膜17は、釉薬が90重量%、ゲルマニウムが10重量%の混晶とした。
(実施例3)
実施形態に係るポリエチレン及びゲルマニウムを含有する薄膜19を石英ガラス基板20上に積層して作成した。薄膜19は、150℃以上で溶融したポリエチレンにゲルマニウムを添加して形成した。この薄膜19は、ポリエチレンが90重量%、ゲルマニウムが10重量%の混晶とした。
(測定条件3)
作成した薄膜17,19の放出光の出力及び波長成分を図8に示す測定系で測定した。図8に示すように、白色光源(LD素子)12から出力させた白色光線(波長2〜16μm)L2を、薄膜17,19に斜めに直接照射し、薄膜17,19から放出される放出光L3の強度を検出素子16で検出した。比較例として、白色光線L2を照射せずに出力された放出光L3の波長成分を測定した。結果を図9,10に示す。
【0049】
図9,10は、放出光の出力強度(発光強度)と波長との関係を示すグラフであり、横軸が波長(μm)、縦軸が放出光の強度を示す。図9,10では、白色光線L2を照射した場合における放出光の強度及び波長成分のグラフをGGE4,GGE5、白色光線L2を照射しない場合における放出光の強度及び波長成分のグラフをGB1,GB2で示している。図9のグラフGGE4,GB1に示すように、実施例2の釉薬及びゲルマニウムを含有する薄膜17に白色光線を照射した場合、比較例と比べて約2μm〜約6μmの領域に係る範囲の放出光(遠赤外線を含む赤外線)が出力されることが確認された。約2μm〜約6μmの領域に係る範囲の赤外線の強度は強く、ガラスの表面のゲルマニウムからの赤外線はトンネル効果により放出されることが確認された。また、図10のグラフGGE5,GB2に示すように、実施例3のポリエチレン及びゲルマニウムを含有する薄膜19に白色光線を照射した場合、比較例と比べて約2μm〜約16μmの赤外線領域〜遠赤外線領域に係る範囲の放出光が出力されることが確認された。すなわち、ゲルマニウムのバインダーとして石英ガラスを用いた場合には、6μmよりも長い波長の放出光は吸収されてしまうが、ゲルマニウムのバインダーとしてポリエチレンを用いた場合には、放出光の吸収が抑制されることが確認された。
【0050】
次に、本発明者は、実施形態に係る健康器具1の細菌抑制効果及び消臭効果(尿の分解効果)を検証した。透明な小便に薄膜10bを構成する材料を混ぜて経過を確認した。検証した材料を以下に示す。
(実施例1)
小便にゲルマニウム、麦飯石及び粘土を混入した(図11のD)。
(比較例1)
小便に何も混入しなかった(図11のA)。
(比較例2)
小便に麦飯石及び粘土を混入した(図11のD)。
(比較例3)
小便にゲルマニウム銀を混入した(図11のC)。
【0051】
上記実施例1及び比較例を放置し、17日間経過したものを図12に示す。図12のAに示すように、小便に何も混入しなかった比較例1は、透明度が極めて低下し異臭がした。一方、図12のB,Cに示すように、小便に麦飯石及び粘土を混入した比較例2、小便にゲルマニウム銀を混入した比較例3は、比較例1に比べて透明度は高いが濁っており、悪臭がした。これに対して、図12のDに示すように、小便にゲルマニウム、麦飯石及び粘土を混入した実施例1では、比較例1〜3に比べて明らかに透明度が高く、悪臭も抑えられていた。よって、ゲルマニウム(ゲルマニウム合金、ゲルマニウム酸化物)、麦飯石及び粘土の組合せにより細菌抑制効果及び消臭効果(尿の分解効果)が十分発揮されることが確認された。
【符号の説明】
【0052】
1…健康器具、10…固形物、10b…薄膜、11…本体部、12…励起光源(LD素子)、13…光ファイバ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を放出する健康器具であって、
薄膜で被覆された固形物と、
前記固形物を収容する本体部と、
前記固形物に向けて赤外線又は可視光線を照射する励起光源と、
を備え、
前記固形物の一部は、前記本体部の外側に露出されており、
前記薄膜は、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を含有して形成されること、
を特徴とする健康器具。
【請求項2】
前記ゲルマニウム合金が、シリコンゲルマニウムである請求項1に記載の健康器具。
【請求項3】
前記ゲルマニウム、前記ゲルマニウム合金又は前記ゲルマニウム酸化物が、粒子の状態で前記薄膜に含有される請求項1又は2に記載の健康器具。
【請求項4】
前記薄膜が、銀粒子、又は銀粒子と前記ゲルマニウム、前記ゲルマニウム合金もしくは前記ゲルマニウム酸化物の粒子との接合粒子をさらに含有する請求項3に記載の健康器具。
【請求項5】
前記薄膜が、麦飯石又は粘土をさらに含有する請求項1〜4の何れか一項に記載の健康器具。
【請求項6】
前記固形物が、球体を呈し、前記本体部に回転可能に設けられる請求項1〜5の何れか一項に記載の健康器具。
【請求項7】
前記励起光源が、前記固形物と当接した状態で前記本体部に収容される請求項1〜6の何れか一項に記載の健康器具。
【請求項8】
前記励起光源に接続され、前記励起光源から照射された赤外線又は可視光線を前記固形物に伝播させる光ファイバをさらに備える請求項1〜7の何れか一項に記載の健康器具。
【請求項1】
赤外線を放出する健康器具であって、
薄膜で被覆された固形物と、
前記固形物を収容する本体部と、
前記固形物に向けて赤外線又は可視光線を照射する励起光源と、
を備え、
前記固形物の一部は、前記本体部の外側に露出されており、
前記薄膜は、溶融された釉薬又は溶融されたポリエチレンに、ゲルマニウム、ゲルマニウム合金又はゲルマニウム酸化物を含有して形成されること、
を特徴とする健康器具。
【請求項2】
前記ゲルマニウム合金が、シリコンゲルマニウムである請求項1に記載の健康器具。
【請求項3】
前記ゲルマニウム、前記ゲルマニウム合金又は前記ゲルマニウム酸化物が、粒子の状態で前記薄膜に含有される請求項1又は2に記載の健康器具。
【請求項4】
前記薄膜が、銀粒子、又は銀粒子と前記ゲルマニウム、前記ゲルマニウム合金もしくは前記ゲルマニウム酸化物の粒子との接合粒子をさらに含有する請求項3に記載の健康器具。
【請求項5】
前記薄膜が、麦飯石又は粘土をさらに含有する請求項1〜4の何れか一項に記載の健康器具。
【請求項6】
前記固形物が、球体を呈し、前記本体部に回転可能に設けられる請求項1〜5の何れか一項に記載の健康器具。
【請求項7】
前記励起光源が、前記固形物と当接した状態で前記本体部に収容される請求項1〜6の何れか一項に記載の健康器具。
【請求項8】
前記励起光源に接続され、前記励起光源から照射された赤外線又は可視光線を前記固形物に伝播させる光ファイバをさらに備える請求項1〜7の何れか一項に記載の健康器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−5768(P2012−5768A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146608(P2010−146608)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(595106280)株式会社日本ゲルマニウム研究所 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(595106280)株式会社日本ゲルマニウム研究所 (4)
【Fターム(参考)】
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