説明

偽造防止用紙

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、偽造防止用紙に関する。より詳しくは、複写機によるコピーを行っても原稿とは全く異なった色調の複写物しか得られない偽造防止用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】最近の複写機の精度向上は著しく、特に電子写真方式のカラー複写機の普及は各種の有価証券類等の偽造を容易にしている。これを防止するため種々の偽造防止手段が考えられているが、その一つに、現在の複写機では光輝性を有するもの、例えば金属色や干渉色を再現することが出来ないことを利用したものがある。
【0003】例えば実開昭58−168754号に提案されているように、基紙上面に、金属色調顕著なアルミ箔などの光輝版を設け、且つ該光輝版表面に文字図柄を施してなる複写機によるコピー不能用紙の提案がある。これをコピーすると、用紙面に施された文字図柄は複写機の光線照射があると箔表面が黒ずんでコピーされるので読みとり不可能となる。この用紙は複写そのものが不可能(複写物の読みとりが出来ない)という長所はあるが、光輝版の用紙に占める面積が大きいために金属色が強調されすぎて違和感があることが欠点である。また用紙の製造工程が複雑となり、必然的にコスト高になること、古紙からの製紙用繊維の回収が困難等の別の問題点もある。
【0004】本発明者らはこれらの問題点を解決することを目的に検討を進めた。本発明者らは発想を転換して、カラー複写機で複写しても元の原稿と異なった色相に複写されれば本物か否かの判定が出来ることに着目した。
【0005】本発明者らは、まず光輝性に優れた銀色のアルミニウム蒸着ポリエステルフィルムを細片化して、それを紙に抄き込むことを検討した。こうして製造した用紙はカラー複写機では金属光沢感が再現できないので、細片の混在した部分は単に黒色に複写され、偽造防止能があることが判った。しかしながら、このようにして製造した用紙では細片が用紙に強固に密着せず、印刷時に細片の脱落が起こり大きな問題を起こすことが判った。またこの用紙は細片を構成するポリエステルフィルムの除去が困難であり、損紙や古紙から製紙用繊維の回収が極めて難しいと言う別の問題もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは上記課題を解決した発明を特願平5−114009号として先に提案した。この発明の要旨とするところは、基紙の表面に光輝性を有する細片を遍在させた偽造防止用紙において、該細片が抄紙工程において基紙と接着可能な性能を有すことを特徴とする偽造防止用紙である。細片は、長網抄紙機や円網抄紙機上の紙匹に細片を振りかける方法、長網抄紙機のスライス直前または直後の位置で細片入りの紙料や水を巾方向数カ所よりノズルにより吹き出し振りかける方法、プレスロール直前で湿紙に細片を振りかける方法、サイズプレス装置の塗工液に細片を混入し塗工する方法等で基紙の表面に遍在させることができる。本発明者らは、新規な偽造防止用紙を得ることを目的にさらに検討を進めた。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記提案は、光輝性を有した細片の光輝色がカラー複写機で再現されないことを利用している。そのためには細片が紙の表面近くに遍在していることが必要である。紙の内部に細片が入っていると、この細片の光輝色は表面に出てこないので偽造防止能は得られない。従って予め紙料に細片を混入しておいて抄紙する方法では細片は紙層内部に入る割合が多くなり目的は達成できない。本発明者らはさらに検討を進めた結果、抄合わせ紙の最外層を特定の坪量にすること、即ち最外層の厚みを薄くすることで、ここに混入された細片の光輝色が失われないことを見いだし本発明を完成させたものである。
【0008】即ち、本発明は、2層以上の抄合わせ紙よりなり、最外の紙層が20〜50g/m2であり、かつ特異な構成の光輝性を有する細片が含まれている偽造防止用紙である。本発明を図1に基づきさらに詳しく説明する。図1は本発明の偽造防止用紙の一例の一部拡大断面図である。この図は2層抄合わせの例を示したものであり、紙層1及び紙層2を円網抄紙機で抄合わせて製造した例である。最外の紙層(この場合は紙層2)には光輝性を有する細片3が含まれており、紙層2は乾燥重量換算で20〜50g/m2、好ましくは30〜40g/m2にすることが必要である。紙層2を20g/m2より少なくすることは抄紙が困難となり、50g/m2を越えると、混入された光輝性を有する細片2の光輝色が失われる割合が大きくなる。
【0009】本発明に於いては、細片3が抄紙工程の乾燥ゾーンで用紙を構成する製紙用繊維と接着可能とすることが好ましい。印刷工程等で細片の脱落等を防止できるからである。そのための一つの手段は、光輝性を有する細片の構成要素の一つとして熱水溶解温度が60〜80℃のフィルムを使用することである。また他の手段は後に詳しく述べるように構成要素の一つとして熱水溶解温度が60〜80℃の熱水可溶性のバインダーを使用することである。こうすることにより、用紙の抄造時の乾燥工程で湿紙が乾燥される時の熱によりフィルムやバインダーが膨潤し、用紙を構成する製紙用繊維と強固に接着するようになる。
【0010】使用する熱水可溶性フィルムやバインダーは、紙匹形成時(ウェットパート)に水によってフィルムやバインダーが溶解したり過度の膨潤をしないこと、抄紙工程中の湿紙の乾燥ゾーン(多筒式シリンダードライヤーやヤンキー式ドライヤー)で実用上問題となる変形を起こさないこと、乾燥後用紙との密着力に優れること等が必要であり、上記のものがこの性能を有することも判った。
【0011】また、他の利点としては、用紙の製造時、用紙の印刷工程等で必ず発生する損紙や古紙の処理が容易であることが挙げられる。ビーターやパルパー等で用水を加温し損紙や古紙を処理することで、細片を構成するフィルムやバインダーを容易に溶解できるからである。
【0012】水溶性フィルムやバイナダーには種々あり、たとえば澱粉系、メチルセルロース系、カルボキシル化メチルセルロース系、ヒドロキシエチルセルロース系、ポリビニルアルコール(以下PVAと呼ぶ)系、ポリビニルピロリドン系、ビニルエチルエーテル−無水マレイン酸共重合系、ポリアクリル酸系、ポリエチレンオキサイド系等のフィルムやバインダーを挙げることができる。本発明に使用するフィルムやバインダーは60〜80℃の熱水で溶解することが必要であり、上記水溶性高分子でこの範囲に含まれるものや、これらに官能基を導入したり、耐水化剤を併用して溶解温度を高めたものが使用できる。
【0013】本発明では、比較的安価であること、入手しやすいこと、物理的な強度も適度に有していることからPVAを使用することが好ましい。PVAの水に対する溶解性は、重合度や鹸化度、特に鹸化度によって大きく支配される。たとえば20℃の水でも鹸化度88%以下のものは完全に溶解するが、鹸化度97%では約50℃の熱水で、完全鹸化では約80℃で初めて溶解できる。60℃未満で溶解するものでは細片化して抄き込んだ場合に、抄紙機の乾燥ゾーンで細片が溶解または過度に膨潤してしまい、所定の形状を保てなくなり、また80℃以上で溶解するものは、回収時にスラリーを80℃以上の温度にすることはきわめて困難かつ危険となるので、溶解温度は上記範囲にあることが必要である。熱水可溶性フィルムの厚みは通常5〜100μm、好ましくは10〜25μmが使用される。
【0014】次に光輝性を有する細片を製造する例について述べる。
例1上記したような熱水可溶性フィルムの片面若しくは両面にアルミニウム、スズ、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、銅、金、銀等の金属蒸着層を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法で形成する。蒸着厚みは、通常は200〜1500オングストロームの範囲である。安価であること、腐食しにくいこと、金属光沢に優れること、アルカリに容易に溶解すること等の理由により本発明では、金属にアルミニウムを使用することが好ましい。
【0015】ついで蒸着面に樹脂若しくは樹脂と着色剤より成る塗工層を形成する。樹脂は熱水可溶性フィルムの変形を防ぎ、塗工性を損なわないことから有機溶剤系の樹脂を使用することが望ましく、また損紙の回収効率を考慮すると熱アルカリ水溶液に可溶な樹脂を使用することが特に好ましい。熱アルカリ水溶液に可溶な樹脂としては、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アイオノマー系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、マレイン酸系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、カゼイン系樹脂、シェラック系樹脂等やこれらをアルカリ可溶となるように、水酸基やカルボキシル基等の官能基を導入して変性した樹脂の単独かあるいは混合たものが挙げられる。本発明では、これらの樹脂の中から60〜80℃の温度範囲で熱水には溶解せず、熱アルカリ水で初めて溶解するものを選定し使用することが好ましい。損紙からのパルプ回収処理時のアルカリ濃度は通常0.01〜0.5重量%の範囲であるので、この範囲で溶解する樹脂を使用することが好ましい。
【0016】着色剤には有機顔料、無機顔料、染料等が使用できる。蒸着層上に着色塗工する場合は、金属光沢を低下させないために染料を使用することが好ましい。着色剤を使用しない場合は、蒸着した金属色、たとえばアルミニウムの場合は銀色が得られ、黄色に着色すれば金色が得られる。また、本発明の目的を阻害しない範囲ならば粘度調製剤、硬化剤等の助剤を適宜併用してもかまわない。また場合によりアンカー塗工層、裏面塗工層を設けるが、これに使用する樹脂も60〜80℃の熱アルカリ水溶液で溶解することが好ましく、着色剤や他の添加剤を併用できる。このようにして調製した塗料を蒸着面またはフィルム面に塗工するが、塗工量は通常は1〜10μm、好ましくは2〜5μmとする。このようにして製造したシートを後で述べるような方法で細片化する。
【0017】例2転写箔の利用光輝性を有する転写箔には、干渉色を有する転写箔や金属色を有する転写箔が知られている。例えば干渉色を有する転写箔は、ポリエステルベースフィルムの上に順次、樹脂層(剥離層と表面保護層を兼ねた、例えばニトロセルロースを主剤とした塗工層)、ごく薄いアルミニウム蒸着層(光の半透過層)、ごく薄い樹脂塗工層(干渉層)、アルミニウム蒸着層(光の反射層)、感熱接着剤層で構成される。また他の例としては上記した樹脂の干渉層の代わりにSiO2等の無機酸化物を蒸着した干渉層を形成したものもある。また他の例としてはホログラム干渉色を利用した転写箔が知られている。これは、ポリエステルベースフィルムの上に樹脂層(剥離層と表面保護層を兼ねた、例えばニトロセルロースを主剤とした塗工層)を形成しこの表面にホログラムパターンを熱エンボスし、ついで順次アルミニウム蒸着層(光の反射層)、感熱接着剤層を形成したもの等が知られている。これら転写箔を使用し、感熱接着剤と基材面例えば熱水可溶性フィルム面と合わせ、熱ロール間を通過させ両者を接着後冷却し、ポリエステルベースフィルムを剥離した後に細片化する。また、転写面にさらに熱水可溶性フィルムを、例えばポリウレタン系接着剤等を使用して貼合し、細片化してもよい。この構成のものは両面の外側に熱水可溶性フィルム面が位置するので、用紙との接着はより強固となる利点がある。
【0018】また、金属転写箔は例えば、ポリエステルベースフィルムの上に順次、樹脂層(剥離層と表面保護層を兼ねた、例えばニトロセルロースを主剤とし、必要に応じて着色剤を併用した塗工層)、アルミニウム蒸着層、感熱接着剤層で構成される。この転写箔を使用し、感熱接着剤と基材面、例えば熱水可溶性フィルム面と合わせ、熱ロール間を通過させ両者を接着後冷却し、ポリエステルベースフィルムを剥離した後に細片化する。また、転写面にさらに熱水可溶性フィルムを、例えばポリウレタン系接着剤等を使用して貼合し、細片化してもよい。この構成のものは両面の外側に熱水可溶性フィルム面が位置するので、用紙との接着はより強固となる利点がある。
【0019】例3金属粉若しくは真珠顔料に熱水可溶性のバインダーを混合した塗工液を紙に塗工したものを細片化する方法。本発明に使用する真珠顔料は、天然パールエッセンスや、雲母粉末、酸化チタン被覆雲母粉末、塩基性炭酸塩、魚鱗箔等公知の真珠顔料がいずれも使用できる。これらの製法等は特公昭35−5367号、特公昭39−28885号、特公昭48−23179号、特公昭47−29569号、特公昭53−47375号、特公昭56−39669号、特公昭58−7674号、特公平1−22873号、特公平4−48812号、特開昭58−174449号、特開昭58−180561号、特開昭58−219226号、特開昭59−78265号、特開昭60−92359号、特開昭62−34962号、特開昭62−285956号、特開平4−227666号、等に記載されている技術がいずれも使用できる。真珠顔料には虹彩色を発するものがあり、見る角度で色相が変化することが特徴である。本発明で用いる真珠顔料はこの虹彩色を発する真珠顔料を用いることが特に好ましい。異なる虹彩色を発する細片を用紙に遍在させることで偽造防止能が高まり、また意匠的な効果が高まるからである。本発明では、アルミニウムや真鍮等の金属粉若しくは、上記したような真珠顔料100重量部に対して、ポリビニルアルコール等の熱水可溶性のバインダーを通常80〜300重量部添加し塗料を調製し、通常坪量30〜100g/m2の基紙に塗工後細片化する。
【0020】例4金属粉若しくは真珠顔料にバインダーを混合した塗工液を紙に塗工し、さらにその表面にPVA等の熱水溶解性のバインダーを塗工したものを細片化する方法。この構成の細片は、例3の細片より用紙への接着はより向上する利点がある。
【0021】例5光輝性を有するフィルムの両面に熱水可溶性フィルムを貼り合わせ細片化する方法。光輝性を有するフィルムとしては、例えばポエステルフィルムに金属を蒸着したもの、ポリエステルフィルムに樹脂層を形成しこの表面にホログラムパターンをエンボスし金属蒸着したもの、塩化ビニルフィルムに直接ホログラムパターンをエンボスし金属蒸着したもの、ポリエステルフィルムにごく薄い金属蒸着を施し(光の半透過層)その上に順次干渉層、金属蒸着層(光の反射層)を形成したもの、金属粉末を接着剤と共に基体シートに塗工したもの、真珠顔料を接着剤と共に基体シートに塗工したもの等をいずれも利用できる。これら光輝性を有するフィルムの両面にポリウレタン系のドライラミ接着剤等を使用して熱水可溶性フィルムを貼り合わし、細片化する。
【0022】例6金属粉や真珠顔料を熱水溶解性のある樹脂に練り込みフィルム化し細片化する方法。リーフ状の金属粉や真珠顔料を練り込んだ場合は、フィルムは1軸または2軸延伸したほうが、光輝性は向上する。
【0023】本発明では、細片の形状は、円、楕円、正方形、矩形、星形など任意の形状が選択できる。その方法は上記形状の歯形を使用して打ち抜く方法や、あるいはマイクロスリッターでスリット化し、それを切断して細片化する方法など任意の方法が採用できる。細片化する大きさは通常は0.2〜10mm程度である。
【0024】本発明の偽造防止用紙は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP),広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP),針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP),サーモメカニカルパルプ(TMP)等の製紙用繊維を主体としこれに乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、染料、着色顔料、蛍光剤などを適宜併用し、通常フリーネス550〜250mlC.S.F.で短網抄紙機と円網抄紙機の組み合わせ、円網抄紙機と円網抄紙機の組み合わせ等の周知の抄合わせ手段により製造する。抄合わせは2層以上で行い、前述のように最外の紙層を形成する紙料中に光輝性を有する細片を混入し、乾燥重量換算で20〜50g/m2、好ましくは30〜40g/m2で抄紙し他の紙層と抄合わせを行い、通常坪量80〜300g/m2の偽造防止用紙を得る。抄合わせは3層以上で行ってもよく、最外の紙層(この場合は表及び裏)のどちらか一方若しくは両方に細片を混入する。最外の紙層に混入された細片は最外の紙層表面に露出するか、あるいは最外の紙層内部に遍在するが、紙層の厚みが薄いので内部に遍在した細片でも細片が有する光輝色は用紙表面から明確に視認できる。本発明ではさらに、抄紙途上で紙面に澱粉、ポリビニルアルコール、各種表面サイズ等をサイズプレス装置等で塗工することも可能である。さらに必要に応じ、マシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を施し、表面平滑性を向上させることも適宜行われる。
【0025】光輝性を有する細片は同一の色相でも異なった色相のものを数種類併用してもよく、また同一色相でトーンを変化させた細片を抄き込んでもよい。
【0026】また本発明の偽造防止用紙は他の偽造防止手段と併用することができる。例えば、透き入れ、染色繊維との混抄、蛍光色を発する物質の混抄、スレッドの抄込み等である。これにより偽造防止効果をより高めることができる。
【0027】以上述べたように本発明の偽造防止用紙は製造される。この用紙に所定の印刷を施し、必要に応じて断裁し、有価証券、チケット等を製造する。これをカラー複写機で複写しても用紙に混入された細片の光輝色は再現されないので、偽造されたものか否かが即座に判定できる。
【0028】
【実施例】
細片の製造構成1厚さ25μmの、熱水溶解温度80℃のPVAフィルムに金属アルミニウムを500オングストローム真空蒸着し、蒸着面に黄色染料(商品名:オレオゾールファーストイエロー、住友化学製造)をアルカリ可溶型ニトロセルロース系樹脂100重量部に対して15重量部添加した塗料を厚さ3μm塗工(乾燥厚み)した。ついで打ち抜き機を使用して直径1mmの円形の細片を製造した。
【0029】構成2厚さ12μmの、熱水溶解温度80℃のフィルムと干渉色を有した転写箔(レインボー転写箔)を熱ロール間に通過させて貼合し、冷却後に転写箔のベースであるポリエステルフィルムを取り除いた。ついで打ち抜き機を使用して直径1mmの円形の細片を製造した。
【0030】構成3坪量35g/m2の上質紙の両面に、赤色の虹彩色を発する真珠顔料(商品名「マーリン・ラスター・ピグメンツ、ハイライト・スーパーレツド9430Z」、マール・コーポレーション製造)100重量部、熱水溶解温度約60℃のポリビニルアルコール(クラレ(株)製造)200重量部より成る塗料を用い、エアーナイフコーターを使用して片面7g/m2ずつ塗工し真珠顔料塗工紙を製造した。また緑色の虹彩色を発する真珠顔料(商品名「マーリン・ラスター・ピグメンツ、ハイライト・スーパーグリーン18430Z」、マール・コーポレーション製造)を使用して他は同一処方の真珠顔料塗工紙を製造した。この2種類の塗工紙を用い、打ち抜き機を使用して1mm×1.5mmの長方形に打ち抜き、同量ずつ混合し細片を製造した。
【0031】実施例1NBKP20重量部,LBKP80重量部を350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10重量部、紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」、荒川化学工業(株)製)0.3重量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」、荒川化学工業(株)製)1.0重量部、硫酸バンドを適量加え紙料を調製した。円網−円網の2層抄合わせ抄紙機を使用し、紙料中に上記構成1の細片を混入して1層目を坪量30g/m2で抄紙した。2層目は細片の混入は行わずに坪量80g/m2で抄紙し、後は常法に従い抄合わせを行い偽造防止用紙を製造した。乾燥は多筒式シリンダードライヤーで行った。得られた偽造防止用紙は1m2当たり平均1400個の細片が混入されており、用紙表面からその光輝色は明確に視認できた。この用紙をカラー複写機(商品名「キャノンピクセル」)で複写したところ、細片の金属色(この場合、金色または銀色)は再現されず、目視による判断では両者(原稿と複写物)の差は明確に認められた。オフセット印刷を施しても細片の脱落は認められなかった。高濃度パルパーにこのようにして抄紙した用紙を5重量部、水95重量部(即ちパルプ濃度5%)、カセイソーダを0.1重量部仕込み、生蒸気を吹き込みながら回転させ、温度60℃に上昇させたところ、細片を構成するベースフィルム、蒸着層、樹脂塗工層は完全に溶解した。残留した染料は微細化されパルプ中に完全に分散しており、回収パルプを使用して抄紙してもこの影響は全く認められなかった。
【0032】実施例2構成2の細片を使用した外は実施例1と同様の偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙は1m2当たり平均1000個の細片が混入されており、用紙表面からその光輝色は明確に視認できた。この用紙をカラー複写機(商品名「キャノンピクセル」)で複写したところ、細片の光輝性のある干渉色(この場合、赤,橙,黄,緑,青,藍,紫色)は再現されず、目視による判断では両者(原稿と複写物)の差は明確に認められた。またオフセット印刷を施しても細片の脱落は認められなかった。また実施例1と同様な方法で用紙を処理したが製紙用パルプの回収は容易に行うことができた。
【0033】実施例3構成3の細片を使用した外は実施例1と同様の偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙は1m2当たり平均1500個の細片が混入されており、用紙表面からその光輝色は明確に視認できた。この用紙をカラー複写機(商品名「キャノンピクセル」)で複写したところ、細片の光輝性のある真珠光沢色(この場合、赤,緑の虹彩色)は再現されず、目視による判断では両者(原稿と複写物)の差は明確に認められた。またオフセット印刷を施しても細片の脱落は認められなかった。また実施例1と同様な方法で用紙を処理したが製紙用パルプの回収は容易に行うことができた。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように本発明の偽造防止用紙は製造され、下記に述べるような顕著な効果を有する。
1)カラー複写機で複写を試みても、最外の紙層に含まれた光輝性を有する細片の光輝色は再現できないため、偽造したものであるか否かの判定が即座に可能となる。特に真珠顔料を使用した細片は混入されたことによる違和感がないという長所を有している。
2)細片は用紙を構成する製紙用繊維と強固に接着しているので印刷時に細片が脱落する問題が起こらない。
3)損紙、古紙からの製紙用繊維の回収が容易に行える細片を製造できる。
4)このような特性を生かし、本発明の偽造防止用紙は、小切手用紙、株券用紙、債券用紙、紙幣用紙、商品券用紙、パスポート用紙、各種チケット用紙、乗車券などに好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偽造防止用紙の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 紙層
2 最外の紙層
3 光輝性を有する細片

【特許請求の範囲】
【請求項1】 2層以上の抄合わせ紙よりなり、最外の紙層が20〜50g/m2であり、かつ抄紙工程において用紙と接着可能な性能を有する光輝性細片が含まれている偽造防止用紙において、該細片が熱水溶解温度が60〜80℃のフィルムの片面に金属蒸着層を形成し、金属蒸着層上に必要に応じて樹脂と着色剤より成る塗工層を形成し、かつその表面に熱水溶解温度が60〜80℃のフィルムを貼合したものよりなることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項2】 2層以上の抄合わせ紙よりなり、最外の紙層が20〜50g/m2であり、かつ抄紙工程において用紙と接着可能な性能を有する光輝性細片が含まれている偽造防止用紙において、該細片が熱水溶解温度が60〜80℃のフィルムに、虹彩色若しくは金属光沢を有する転写箔を転写し、かつその表面に熱水溶解温度が60〜80℃のフィルムを貼合したものよりなることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項3】 2層以上の抄合わせ紙よりなり、最外の紙層が20〜50g/m2であり、かつ抄紙工程において用紙と接着可能な性能を有する光輝性細片が含まれている偽造防止用紙において、該細片が、金属粉若しくは真珠顔料に熱水溶解性のバインダーを混合した塗工液を紙に塗工したものよりなることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項4】 2層以上の抄合わせ紙よりなり、最外の紙層が20〜50g/m2であり、かつ抄紙工程において用紙と接着可能な性能を有する光輝性細片が含まれている偽造防止用紙において、該細片が、金属粉若しくは真珠顔料にバインダーを混合した塗工液を紙に塗工し、ついで熱水可溶性フィルムを両面に貼り合わせたものであることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項5】 2層以上の抄合わせ紙よりなり、最外の紙層が20〜50g/m2であり、かつ抄紙工程において用紙と接着可能な性能を有する光輝性細片が含まれている偽造防止用紙において、該細片が、金属粉若しくは真珠顔料を練り込んだ熱水溶解温度が60〜80℃のフィルムよりなることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項6】 真珠顔料が虹彩色を発する真珠顔料であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載の偽造防止用紙。

【図1】
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【特許番号】特許第3075454号(P3075454)
【登録日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【発行日】平成12年8月14日(2000.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−261769
【出願日】平成5年9月24日(1993.9.24)
【公開番号】特開平7−207599
【公開日】平成7年8月8日(1995.8.8)
【審査請求日】平成10年3月27日(1998.3.27)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【参考文献】
【文献】特開 平4−314876(JP,A)
【文献】特開 平4−146299(JP,A)
【文献】実開 昭62−203300(JP,U)