説明

傷手当用品とその製造方法

【課題】吸収性を備え、且つ傷に対する固着性を改善した傷手当用品を提供する。
【解決手段】上面及び底面を有し複数の貫通孔21を有する孔開き材料20と、孔開き材料の上面に配置される吸収体30とを備えた傷手当用品10において、孔開き材料20の少なくとも底面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂40で被覆され、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分31の一部が、シリコーン樹脂40で被覆され、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過し得るようにしたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傷の保護、治療に使用する傷手当用品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱傷、褥瘡、及びその他の損傷の治療において、傷を保護し、傷からの体液を吸収するために、従来、ガーゼ、脱脂綿、吸収性繊維からなる層を含む多層構造のパッド等の傷手当用品が用いられている。
しかし、これらの傷手当用品は、手当用品を適用後交換する際に創傷面を傷つけ、痛みや、出血、創傷の治癒遅延を招くことがあった。
一方で、傷手当用品は、固定等の取り扱い性、体液の漏れによる傷周辺皮膚への浸軟を防止する目的で、創傷部また周辺皮膚部に対し粘着性であることが望ましい。
しかしながら、従来の粘着層(例えばアクリル系接着剤、ゴム系接着剤)を備えた傷手当用品は、粘着力が強すぎる傾向があり、交換時に創傷部に固着することで脆弱な新生表皮組織に損傷を与え、組織の治療を遅延する原因となっていた。
【0003】
このような背景から、傷手当用品において、創傷部に接触する材料としては、生体組織に対し微弱な粘着力を有するものを用いることが好ましい。特には、生体に対する親和性の低いシリコーン樹脂からなる材料が好ましい。
【0004】
この粘着性のシリコーン樹脂を用いた傷手当用品の例をあげると、例えば、特許文献1ではシリコーンゲルが弾性網状補強物の貫通孔を残して、網の全構成要素をシールした傷手当用品を開示している。特許文献1の技術によれば、このシリコーン樹脂を創傷接触材料に用いることで傷への固着性は改善する。
しかしながら、特許文献1記載の傷手当用品は吸収性を有さないことから、何らかの吸収材料と併用する手間があった。また、この傷手当用品に、仮に吸収体を併用した場合には、傷手当用品の貫通孔の部分から吸収体が露出されてしまう。このため貫通孔の部分においては、創傷部の新生組織と容易に固着する危険性があった。
【0005】
また、特許文献2では、空気不浸透性且つ体液不浸透性の孔開き層材料(キャリヤー材料)の片面をシリコーンゲルで被膜した傷手当用品が教示されている。この傷手当用品は吸収体を具備しているため、特許文献1の課題であった吸収体と併用する手間がない。しかしながら、特許文献2記載の傷手当用品は、特許文献1記載の傷手当用品と同じく、貫通孔の部分においては適用した吸収体が露出された状態になるため、新生組織と容易に固着する危険性に関しては解決できていない。
【0006】
【特許文献1】特許第2525215号公報
【特許文献2】特許3677283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、吸収性を備え、且つ傷に対する固着性を改善した傷手当用品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため本発明によれば、上面及び底面を有し複数の貫通孔を有する孔開き材料と、孔開き材料の上面に配置される吸収体とを備えた傷手当用品において、孔開き材料の少なくとも底面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆され、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部が、シリコーン樹脂で被覆され、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過し得るようにしたことを特徴とする。前記発明において、孔開き材料の上面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆されることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上面及び底面を有し複数の貫通孔を有する孔開き材料と、孔開き材料の上面に配置される吸収体とを備えた傷手当用品において、孔開き材料の上面及び底面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆され、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部が、シリコーン樹脂で被覆され、孔開き材料と吸収体とが、孔開き材料の底面に位置するシリコーン樹脂により接着され、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過し得るようにしたことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記発明の実施態様としては下記の発明が好ましい。即ち、シリコーン樹脂は、粘着性ゲルとすることが好ましい。また、孔開き材料の貫通孔の内周面が、貫通孔の全部が塞がれることなくシリコーン樹脂で被覆されていることが好ましい。さらに、シリコーン樹脂が、孔開き材料の底面から内部に浸透し孔開き材料の上面に至っていることが好ましい。また、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分が、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過することを阻害しない程度にシリコーン樹脂で被覆されていることが好ましい。さらに、孔開き材料及び吸収体を被覆するシリコーン樹脂量が、150〜350g/m2であることが好ましい。また、孔開き材料が、厚さ0.05〜0.7mmの編布であるされていることが好ましい。さらに、孔開き材料が、0.01〜10mm2の貫通孔平均断面積と、5〜70%の開孔率とを備えることが好ましい。
【0011】
また、前記傷手当用品の製造方法の発明としては、下記の発明が好ましい。即ち、
上面及び底面を有し複数の貫通孔を有する孔開き材料と、孔開き材料の上面に配置される吸収体とを備え、孔開き材料の少なくとも底面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆され、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部が、シリコーン樹脂で被覆され、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過し得るようにした傷手当用品の製造方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする。
(P1)剥離シートにシリコーン樹脂を塗工する工程
(P2)硬化前のシリコーン樹脂塗工面に孔開き材料を載せ、孔開き材料の上面に吸収体を載せ、孔開き材料及び吸収体にシリコーン樹脂を被覆する工程
(P3)シリコーン樹脂を加熱硬化させる工程
【0012】
さらに、本発明の製造方法としては、下記の発明が好ましい。即ち、
上面及び底面を有し複数の貫通孔を有する孔開き材料と、孔開き材料の上面に配置される吸収体とを備え、孔開き材料の上面及び底面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆され、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部が、シリコーン樹脂で被覆され、孔開き材料と吸収体とが、孔開き材料の底面に位置するシリコーン樹脂により接着され、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過し得るようにした傷手当用品の製造方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする。
(P1)剥離シートにシリコーン樹脂を塗工する工程
(P2A)硬化前のシリコーン樹脂塗工面に孔開き材料を載せ、孔開き材料の上面に吸収体を載せ、シリコーン樹脂を孔開き材料の底面から内部に浸透させ孔開き材料の上面に至らせることで孔開き材料と吸収体とをシリコーン樹脂により接着すると共に、孔開き材料及び吸収体にシリコーン樹脂を被覆する工程
(P3)シリコーン樹脂を加熱硬化させる工程
【発明の効果】
【0013】
本発明の傷手当用品は、傷接触面となる孔開き材料及び吸収体の双方がシリコーン樹脂で被覆されているため、新生肉芽組織が孔開き材料の貫通孔から侵入してきても傷手当用品が傷面と強く付着することを防止でき、脆弱な新生表皮組織に損傷を与えることなく傷手当用品の除去、交換等を行うことができる。また、本発明の傷手当用品は、傷からの滲出液を傷表面から速やかに吸収体に吸い上げるため、過剰な滲出液による皮膚浸軟や創治癒遅延も防ぐことができる。さらに、本発明の製造方法によれば、上記の傷手当用品が容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜5に基づき、本発明の実施形態について以下に述べる。各実施形態の共通部分には、同じ番号の符号を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の傷手当用品に係る実施形態で、a)は上面からみた斜視図、b)は底面からみた斜視図、c)はa)図のC−C線に沿う拡大断面図を示す。
【0016】
本発明の傷手当用品10は、上面及び底面を有する孔開き材料20と、孔開き材料20の上面に配置される吸収体30とを備える。孔開き材料20は、編布から形成され、その編構造により複数の貫通孔21が形成され、その底面側が傷に対向する面となる。
孔開き材料20の上面、底面、及び貫通孔21の内周面22は、貫通孔21の孔全部が塞がれることがないように孔の少なくとも一部(本実施形態では貫通孔の全部)を残してゲル状の粘着性シリコーン樹脂40で被覆される。すなわち、本発明の傷手当用品10は、孔開き材料の底面側から吸収体30の内部へ血液、滲出液等の液体が通過し得るように、孔開き材料20の上面から底面を貫通する孔の少なくとも一部(本実施形態では貫通孔の全部)を残したままシリコーン樹脂40が孔開き材料20を被覆する構成を有する。なお、後述するように、通常は、傷手当用品の使用前におけるシリコーン樹脂被覆層および孔開き材料の保護用材料として、図示しない剥離シートが、シリコーン樹脂40の底面側に設けられる。
また、吸収体30においては、孔開き材料20の貫通孔21と対向する部分31の一部が、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ血液、滲出液等の液体が通過することを阻害しない程度にゲル状の粘着性シリコーン樹脂で被覆されている。吸収体30として、後述するように、例えば、不織布を用いた場合、不織布の一部にシリコーン樹脂がからんで付着し、残りの部分には、シリコーン樹脂が付着せずに液体が通過可能な状態となるように、シリコーン樹脂で不織布の一部が被覆される。
【0017】
図1に係る実施形態のように、孔開き材料20の表面全部をシリコーン樹脂40で被覆し、さらに吸収体30の孔開き材料20の貫通孔21と対向する部分31の一部をシリコーン樹脂40で被覆することにより、治癒により新生肉芽組織が孔開き材料の貫通孔に侵入した場合でも、傷に対する高い非固着性を維持することができ、かつ傷からの滲出液を傷表面から速やかに吸収体に吸い上げることができる。
【0018】
また、図1の実施形態においては、ゲル状の粘着性シリコーン樹脂40が孔開き材料20の底面からその編布内部に浸透し、孔開き材料の上面に至っている。そして、孔開き材料の上面に存在するこのシリコーン樹脂40により、孔開き材料20と吸収体30とが接着されている。このように、図1の実施形態に係る傷手当用品10は、1種類の粘着性のシリコーン樹脂40により、孔開き材料及び吸収体のシリコーン樹脂による被覆、並びに孔開き材料及び吸収体の一体化を行っているため、材料構成がシンプルで、製造工程が極めて簡単となる。
【0019】
50は、吸収体30の上面に被覆されるカバー材で、吸収体の汚染防止、傷手当用品の支持、吸収体からの汚染物質脱落防止などの機能がある。図1の実施形態では、カバー材50として液体浸透性の不織布を用いているが、このようなカバー材は傷からの滲出液が多量に出る場合に特に有利な構成である。つまり、過剰な滲出液がカバー材から滲みでてくるので、カバー材の上に本発明の傷手当用品とは別の吸収パッドを載置すれば、本発明の傷手当用品を除去することなく必要に応じてこの吸収パッドのみを交換することができ、滲出液管理を簡便に行うことができる。
【0020】
なお、図1の実施形態では、孔開き材料20の表面全部(上面、底面、及び貫通孔の内周面)に粘着性のシリコーン樹脂を被覆した例を示したが、孔開き材料の底面のみを被覆する態様、孔開き材料の底面及び上面のみを被覆する態様にしてもよい。
また、孔開き材料20は、貫通孔21の全部がシリコーン樹脂で塞がれないようにシリコーン樹脂で被覆されることが好ましいが、吸収体内部への通液を阻害しなければ貫通孔21の一部がシリコーン樹脂で塞がれていても良い。
また、孔開き材料20と吸収体30との接着は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤等のシリコーン樹脂以外の粘着剤で接着してもよいし、熱溶着により接着してもよい。
【0021】
図2は、本発明の傷手当用品に係る図1とは異なる実施形態で、a)は上面からみた斜視図、b)は底面からみた斜視図、c)はa)図のC−C線に沿う拡大断面図である。
図2の実施形態は、図1で示した実施形態と、カバー材51が異なる。即ち、カバー材51は、液体不浸透性且つ水蒸気透過性のプラスチックフィルムからなり、その底面に粘着性のシリコーン樹脂52が被覆され、更にその外周縁が吸収体30の外周縁より外側に伸びている。この傷手当用品を患部に固定した際には、前記の外側に伸びた部分が吸収体以下の部材を覆う状態となる。
従って、図2の実施形態によれば、カバー材51により、簡便に患部に傷手当用品を固定でき、滲出液が過剰な場合でも吸収体の外周縁から滲出液が漏れ出ることを防止でき、さらに傷を適度な湿潤環境に保つことができるので創治癒促進をはかることができる。
【0022】
図3は、本発明の図1に係る傷手当用品の形状を変えた実施形態である。この実施形態によれば、踵、肘、膝、仙骨、前腕などの突出部、湾曲部に貼付した場合でも、患部によくフィットし、シワなく傷手当用品を適用することができる。
【0023】
次に図4および図5により、本発明の傷手当用品の製造方法を説明する。
本発明の傷手当用品は、P1、P2(P2A)、P3の工程を順次経て製造される。なお、図5は、前記各工程を連続的に行なう状態を模式的に示す図であり、各工程は、実質的に図4と同様である。
P1の工程は、剥離シート60にシリコーン樹脂40を塗工する工程である。剥離シートとしては、シリコーン系やフッ素系の剥離剤により処理された剥離紙、剥離フィルム、又はポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セロハン、ウレタン等のフィルムを使用することができる。
P2の工程では、P1の工程により塗工した硬化前のシリコーン樹脂塗工面40に孔開き材料20を載せ、さらに孔開き材料20の上面に吸収体30(この吸収体はカバー材50を予め吸収体の上面に積層しておくことも可能である)を載せる。この際、シリコーン樹脂、孔開き材料、及び吸収体の積層は、図4および図5に示すようにほぼ同時に行っても良いし、孔開き材料を先にシリコーン樹脂上に供給し、次いで吸収体を供給するようにしてもよい。このように、シリコーン樹脂上に孔開き材料を載置し、さらにその上に吸収体を載置することで、孔開き材料の貫通孔以外の部分と、吸収体の孔開き材料の貫通孔に対向する部分にシリコーン樹脂が被覆される。
なお、このP2の工程としては、次に示すP2Aの工程が特に好ましい。P2Aの工程では、先ずP2の工程と同様に硬化前のシリコーン樹脂塗工面40に孔開き材料20を載せ、孔開き材料20の上面に吸収体30を載せる。次いで、これらの積層物に適当な荷重70を加えるなどして、シリコーン樹脂40を孔開き材料20の底面から内部に浸透させ孔開き材料の上面に至らせることで孔開き材料20と吸収体30とをシリコーン樹脂40により接着する。また、この孔開き材料20と吸収体30の接着と同時に、孔開き材料の貫通孔部分に存在するシリコーン樹脂を吸収体表面に吸収させ、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分にシリコーン樹脂を被覆する。即ち、P2Aの工程は、孔開き材料の貫通孔を塞がずに孔開き材料をシリコーン樹脂で被覆するとともに、吸収体にもシリコーン樹脂を被膜し、さらに、孔開き材料と吸収体との接着も同時に達成することができる工程である。
P3の工程は、P2(P2A)の工程により孔開き材料と吸収体に塗工したシリコーン樹脂を加熱硬化させる工程であり、未硬化で液状のシリコーン樹脂がこの工程を経て硬化し、本発明の傷手当用品10が完成する。
なお、シリコーン樹脂の種類や塗工量、孔開き材料と吸収体の種類、荷重の程度等をコントロールすることにより、本発明の種々の実施形態を製造することができる。
また、本発明の傷手当用品は、上記以外の方法でも製造することができ、例えば、孔開き材料を未硬化のシリコーン樹脂に浸漬し、余分なシリコーン樹脂を搾った後その上に吸収体を載せ、シリコーン樹脂を加熱硬化させ、その後スプレー等によりシリコーン樹脂を吹き付け、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分をシリコーン樹脂で被覆する方法がある。
【0024】
次に、本発明の傷手当用品を構成している各材料等について述べる。
【0025】
(孔開き材料)
本発明の傷手当用品に使用する孔開き材料は、上面及び底面を有し、底面側が傷に対向する面となる。孔開き材料は、上面から底面に連通する複数の貫通孔を有することが必要である。傷からの血液、滲出液などを、孔開き材料の貫通孔を通して吸収体に吸収させるためである。
孔開き材料に設ける貫通孔の平均断面積は、孔開き材料の表面において空孔1つ当たり0.01〜10mm2であることが好ましく、0.1〜5mm2であることが更に好ましい。貫通孔の平均断面積が0.01mm2より小さいと、シリコーン樹脂で孔開き材料を被覆する際、シリコーン樹脂が孔開き材料の貫通孔を塞ぎ、滲出液が孔開き材料から吸収体に移動しなくなる恐れがある。また、貫通孔の平均断面積が10mm2より大きいと、孔開き材料と創面との十分な接触面積が得られず、傷手当用品の傷に対する密着性が低下し滲出液が漏れる場合がある。
本発明の孔開き材料において、貫通孔の開孔率は、5〜70%であることが好ましく、15〜50%であることが更に好ましい。貫通孔の開孔率が5%より小さいと、滲出液が孔開き材料から吸収体に移動しなくなる恐れがあり、70%より大きいと孔開き材料と創面との十分な接触面積が得られず、傷手当用品の傷に対する密着性が低下し滲出液が漏れる場合がある。
特に好適な孔開き材料は、貫通孔の平均断面積が0.1〜1mm2であり、且つ、貫通孔の開孔率が15〜40%の範囲にあるものである。
また、孔開き材料の厚さは、滲出液の吸収体への移動性と創面への非固着性の観点から、0.05〜0.7mmの範囲であることが好ましい。
【0026】
本発明で使用可能な孔開き材料としては、貫通孔を有するシート状材料であれば特に限定されず、編布、織布、不織布、ネット等の繊維状材料、孔開きプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい孔開き材料は、液体浸透性の繊維状材料であるが、特に好ましくは、貫通孔形成が容易で、本発明の傷手当用品の製造方法にも最適な編布である。
孔開き材料は、これら材料の一種類を単独で使用してもよいし、同一又は異なる種類の材料をラミネートした積層構造のものであってもよい。
孔開き材料に用いる編布としては、経編及び緯編の各種編組織が利用できる。特に好適な編布は、平編生地、ゴム編生地、トリコット生地、ラッシェル生地である。織布は、平織、綾織及び朱子織のいずれであってもよい。不織布は、フリース形成法として、乾式法、湿式法及びスパンボンド法のいずれを使用したものであってもよく、繊維結合が、スパンレース法、ニードルパンチ法、ケミカルボンド法、ポイントシール法、サーマルボンド法等のいずれの方法で形成されたものであってもよい。
ネットは、複数の長繊維を網目が形成されるように適当な間隔をあけて配置し、これを熱融着や接着剤等の結合手段により繊維同士を結合して形成したものを使用できる。
編布、織布、不織布、ネット等の繊維状材料を構成する糸としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、撚糸、カバードヤーン、コアヤーン等が利用でき、伸縮加工や嵩高加工等を施したものを利用してもよい。
繊維の種類も特に限定されず、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリウレタン系繊維、セルロース系繊維(綿、レーヨン、ポリノジック、リヨセル)、ポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ガラス繊維、カーボンファイバー繊維等が利用できる。
特に好ましい繊維材料は、熱可塑性のポリエステル系繊維、アクリル系繊維及びポリアミド系繊維である。
【0027】
孔開き材料における貫通孔の配置は、特に限定されず、規則的に又はランダムに点在させてもよいし、格子状、波状、同心円状、渦巻き状等の所定パターンを形成して配置してもよいが、孔開き材料全体で均一な滲出液透過ができるように、均一間隔をあけて配置されていることが好ましい。
孔開き材料の貫通孔は、編布の編目による貫通孔、繊維の組織(糸の太さ、密度等を含む)のバランスにより布表面に生じる貫通孔、織布の経糸と緯糸の間に形成される空隙等の繊維材料が本来有するものであってもよいし、後加工で物理的に穿孔した貫通孔であってもよい。
これらの中でも、編布のループによる貫通孔又は編組織(糸の太さ、密度等を含む)のバランスにより布表面に生じる貫通孔は、繊維材料自体に人体へのフィット性があり、シリコーン樹脂層を塗布した際に貫通孔が閉塞され難いので、好適である。
【0028】
(吸収体)
本発明の傷手当用品に使用する吸収体は、傷からの血液、滲出液を吸収、保持するためのものであり、孔開き材料の上面に配置される。
吸収体は、不織布、編布、織布等の繊維状材料、フォーム材料、吸収性樹脂材料、吸水性粉末材料などからなるものを使用することができ、繊維状材料、フォーム材料が好ましい。吸収体は、これら材料の一種類を単独で使用してもよいし、同一又は異なる種類の材料をラミネートした積層構造のものであってもよい。
特に、繊維状材料からなるものが好ましく、セルロース系繊維(綿、レーヨン、ポリノジック、リヨセル)、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリウレタン系繊維、又はこれらの混合繊維が好適な繊維材料である。また、これらの繊維材料中に、吸収性樹脂材料、吸水性粉末材料などの吸水性の高い材料を混ぜ込むことができ、必要とされる吸収量を適宜調整することができる。
また、吸収体を構成する材料として、吸水時にゲルを形成する物質を含ませることが好ましく、このような材料を使用することで、創傷を湿潤状態に保ち、傷の治癒を促進することができる。ゲル形成材料としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、アクリル酸(塩)重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体、多価アルコール等が好ましい。
【0029】
(シリコーン樹脂)
本発明の傷手当用品に使用するシリコーン樹脂は、傷に対する固着性を低減するために、孔開き材料の少なくとも底面と、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分に被覆される。
本発明のシリコーン樹脂は、取り扱いの簡便性と、傷に対する固着性の観点から、粘着性を有するゲル状物質であることが好ましい。
シリコーン樹脂は、特に限定されず、付加反応型、過酸化反応型、又は縮合反応型のいずれを使用してもよいが、付加反応型のシリコーン樹脂が好ましい。
付加反応型シリコーン樹脂は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)とヒドロシリル基(Si−H)を有するオルガノポリシロキサン(ハイドロジェンオルガノポリシロキサン)とを、塩化白金酸等の白金化合物触媒を用いて、付加反応(ヒドロシリル化反応)させたものである。
付加反応型シリコーン樹脂は、その合成に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの量や、オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子内のヒドロシリル基(Si−H)の量を変化させることによって、架橋密度を調整することができる。これにより、シリコーン樹脂の硬さや粘着力を容易に調整することができる。本発明に使用する付加反応型シリコーン樹脂としては、ビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物であることが好ましい。
シリコーン樹脂は、一種類を単独で使用しても、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。シリコーン樹脂は、架橋等により硬化されていることが好ましい。シリコーン樹脂の硬化方法は、特に限定されず、加熱等により容易に架橋させることができる。
【0030】
また、シリコーン樹脂には、更に、薬剤、吸水性高分子化合物、pH調整剤等のその他の調整剤を、本発明の目的を損なわない程度において、適宜配合することができる。
薬剤の例としては、保湿、老化防止、美白等の目的で皮膚の生理機能を調整する物質や、傷の治癒を促進する物質、抗菌性を有する物質等を示すことができる。その具体例としては、スフィンゴ脂質、尿素、グリコール酸、アミノ酸及びその誘導体(アルギニン、システイン、グリシン、リシン、プロリン、セリン等)、タンパク質加水分解物(コラーゲン、エラスチン、ケラチン等)、ムコ多糖及びその誘導体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン等)、ビタミンB群(チアミン、リボフラビン、ニコチン酸、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、ビオチン、葉酸、シアノコバラミン等)、アスコルビン酸(ビタミンC及びその誘導体)、レチノイド(ビタミンA、レチナール、レチノイン酸等)、ビタミンD(D2、D3等)、ビタミンE及びその誘導体、カロチノイド(カロチン、リコピン、キサントフィル等)、酵素、補酵素、γ―オリザノール等が挙げられ、スフィンゴ脂質が特に好適である。スフィンゴ脂質としては、スフィンゴシンと脂肪酸が結合したセラミド、セラミドと糖が結合したスフィンゴ糖脂質が好ましい。セラミドは、天然、合成いずれのものを使用してもよく、タイプ1〜7のセラミドを挙げることができるが、タイプ2、5、7のセラミドが特に好ましい。スフィンゴ糖脂質としては、セレブロシド、ガラクトシルセラミド、グルコシルセラミド等が好ましい。
吸水性高分子化合物、pH調整剤としては公知のものを使用することができる。
【0031】
(カバー材)
本発明の傷手当用品は、吸収体の汚染防止、傷手当用品の取り扱い性、吸収体からの汚染物質脱落防止の観点から、吸収体の上面にカバー材を被覆することが好ましい。
カバー材は、傷からの滲出液の量や使用する場面にあわせて選択することができ、滲出液の量が多い場合は液体浸透性の材料を用いるのが好ましく、滲出液の量がそれほど多くない場合は、液体不浸透性且つ水蒸気透過性の材料を用いるのが好ましい。
また、カバー材は、底面に粘着剤を被覆すると共に、その外形を孔開き材料及び吸収体よりも大きく形成することで、孔開き材料及び吸収体の外周縁より外側にでた部分により、患部に粘着固定することが可能となる。
カバー材の底面を被覆する粘着剤としては、孔開き材料及び吸収体を被覆するシリコーン樹脂と同様のものを使用できるが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、吸水性高分子を含有する所謂ハイドロコロイド粘着剤等のシリコーン樹脂以外の粘着剤を用いることもできる。
カバー材の材料としては、不織布、編布、織布、ネット等の繊維状シート、合成樹脂フィルム、フォーム等をあげることができ、これら材料の適宜選択により液体浸透性の程度をコントロールすることができる。
【0032】
(孔開き材料と吸収体へのシリコーン樹脂の被覆)
本発明の傷手当用品は、孔開き材料の少なくとも底面が、貫通孔全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆される。孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過するのであれば孔開き材料の貫通孔の一部がシリコーン樹脂で塞がれても良いが、貫通孔の60%以上がシリコーン樹脂で塞がれることなく貫通部分を残していることが好ましく、貫通孔の80%以上が残っていることが更に好ましく、貫通孔の全部がシリコーン樹脂で塞がれずに残っていることが特に好ましい。孔開き材料の貫通孔がシリコーン樹脂により塞がれないため、孔開き材料の底面側から吸収体内部への滲出液の通過が可能となる。
孔開き材料は、傷への固着性を低減するために、その上面もシリコーン樹脂で被覆されることが好ましく、貫通孔の内周面を含めた孔開き材料の全表面をシリコーン樹脂で被覆されることがより好ましい。
また本発明の傷手当用品は、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部が、シリコーン樹脂で被覆される。ただし、吸収体をシリコーン樹脂で被覆をしたとしても、開き材料の底面側から吸収体内部へ血液、滲出液等の液体が通過し得ることが必要である。そのような液体の通過を可能とするためには、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分が、液体が通過することを阻害しない程度にシリコーン樹脂で被覆されていることが好ましい。
吸収体を被覆するシリコーン樹脂の量は、5〜150g/m2である事が好ましく、15〜100g/m2が更に好ましい。吸収体を被覆するシリコーン樹脂の量が5g/m2より少ないと、吸収体と傷との固着を防ぐことが困難になり、150g/m2より多いと、シリコーン樹脂が吸収体の空孔部分を塞いでしまい滲出液の吸収が効率良く行なわれない可能性がある。
【0033】
また、孔開き材料と吸収体とを、孔開き材料の底面に位置するシリコーン樹脂により接着することが、傷への固着性及び製造上の観点から好ましい。孔開き材料と吸収体とをシリコーン樹脂で接着する態様としては、シリコーン樹脂を孔開き材料の底面から内部に浸透させ孔開き材料の上面に至らせ、そのシリコーン樹脂により接着する態様を用いることが好ましい。このような態様によれば、孔開き材料のシリコーン樹脂による被覆と、孔開き材料と吸収体の一体化とを同時に行うことができ、製造上有利である。
なお、孔開き材料と吸収体の両方を含めた傷手当用品全体に付着させるシリコーン樹脂の量は、150〜350g/m2であることが好ましく、170〜250g/m2が更に好ましい。150g/m2より少ないと、傷との固着を防ぐことが困難になり、孔開き材料の内部にシリコーン樹脂を浸透させ孔開き材料と吸収体とを接着することが困難となる。また、350g/m2より多いと、シリコーン樹脂が孔開き材料の貫通孔と吸収体の空孔部分を塞いでしまい滲出液の吸収が効率良く行なわれなくなる可能性がある。
本発明の傷手当用品の粘着力は、0.1〜1.5N/25mmであることが好ましく、0.15〜1.2N/25mmであることが更に好ましい。傷手当用品の粘着力が0.1N/25mmより低いと患部への密着性が損なわれる恐れがあり、1.5N/25mmより高いと、傷手当用品の交換時に創傷面を損傷してしまう恐れがある。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
また、本発明の傷手当用品に関する特性は、以下の方法により測定した。
【0035】
〔孔開き材料の貫通孔平均断面積(単位:mm2)〕
孔開き材料の底面を垂直方向(底面と直交する方向)から顕微鏡にて観察し、5個の貫通孔の断面積を測定して、その平均値を求める。
【0036】
〔孔開き材料の開孔率(単位:%)〕
孔開き材料の底面を垂直方向(底面と直交する方向)から顕微鏡にて観察し、一定面積内で何個の孔が存在するか数え、上記で算出した断面積の平均値を基に求める。
【0037】
〔孔開き材料の厚さ(単位:mm)〕
JIS L 1096「一般織物試験方法」に準じて、シリコーン樹脂を被覆する前の厚さを測定する。
【0038】
〔傷手当用品の粘着力(単位:N/25mm)〕
JIS Z 0237-2000「180度引き剥がし粘着力」に準じて測定する。ただし、被着体にはベークライト板を使用する。
【0039】
〔吸収体のシリコーン樹脂被覆量(g/m2)〕
傷手当用品を作製する前に、シリコーン樹脂が被覆される前の吸収体の重量を予め測定しておく(W1)。傷手当用品を作製後、孔開き材料と吸収体を分離し、再度重量を測定する(W2)。W1とW2の重量変位から単位面積あたりの吸収体のシリコーン樹脂被覆量(g/m2)を算出する。
【0040】
〔実施例1〕
図4で説明したP1、P2A、P3の工程を経る製造方法に従い作製した。具体的には、次の通りである。
ビニル基置換ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒を主体とする2成分型の付加反応型シリコーン樹脂(ダウコーニング社製、商品名「DOW CORNING 7−9800」)を混合し、得られた混合液をシリコーン剥離シートに一定の厚さで塗工した。次いで、塗工したシリコーン樹脂上に、ポリエステル製のトリコット編かなる孔開き材料と、レーヨン繊維等を含む不織布からなる吸収体を供給する。それから、シリコーン樹脂、孔開き材料、及び吸収体からなる積層体に一定の荷重を加え、孔開き材料と吸収体をシリコーン樹脂で被覆すると共に、孔開き材料と吸収体をシリコーン樹脂により接着する。その後、110℃で2分間加熱し、シリコーン樹脂を硬化させ、本発明の傷手当用品を得た。得られた傷手当用品の孔開き材料側からの拡大図を図6に示す。図6によれば、吸収体の不織布の一部にシリコーン樹脂がからんで付着し、残りの部分には、シリコーン樹脂が付着せずに液体が通過可能な状態となっていることがわかる。
【0041】
[実施例2]
吸収体をポリウレタンフォームに代える以外は、実施例1と同様の方法で傷手当用品を得た。得られた傷手当用品の孔開き材料側からの拡大図を図7に示す。図7においても、吸収体のポリウレタンフォームの一部にシリコーン樹脂がからんで付着している状態がわかる。
【0042】
[比較例1]
孔開き材料の底面にのみシリコーン樹脂を被覆する以外は、実施例1と同じ構成で傷手当用品を作成した。即ち、比較例1の傷手当用品は、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分がシリコーン樹脂で被覆されていない。得られた傷手当用品の孔開き材料側からの拡大図を図8に示す。
【0043】
実施例と比較例の評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
上記の実施例1と比較例1で得られた傷手当用品を用い、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部をシリコーン樹脂で被覆することにより、生体組織との固着性が改善されるのかどうかに関して次の評価を行った。
【0046】
〔固着性評価〕
6週齢のオスSDラットの左側腹部に直径3cmの全層皮膚欠損層を作製する。作製した傷部に滅菌済みの傷手当用品を被覆し、その上から弾性包帯を巻いて固定する。傷を作製してから2日後、9日後に傷から傷手当用品を剥離し、その固着状況を観察する。
【0047】
(比較例1の結果)
比較例1で得られた傷手当用品では、2日後、孔開き材料のシリコーン樹脂被覆面では固着は見られなかったものの、孔開き材料の貫通孔部分で軽い固着を生じた。また剥離後の創面を観察すると創面が孔開き材料の形状に沿って凹凸を生じている様子が観察できた。
この結果は、SDラットの創傷部の肉様膜組織が孔開き材料の貫通孔から侵入し吸収体に固着したために生じたものと推測される。9日後では、さらに強い固着を孔開き材料の貫通孔部分で生じた。傷手当用品を創面から引き剥がしたところ、創面から多量の出血が確認された。この結果は、2日後の場合と同様に新生した肉芽組織が貫通孔部から侵入し、吸収体の繊維を取り込み固着したために生じたものと推測される。結果を図9に示す。
【0048】
(実施例1の結果)
一方、実施例1で得られた傷手当用品では、2日後、全く固着を生じることなく剥離することができた。剥離後の創面も全く凹凸を生じていない。9日後では、孔開き材料の貫通孔部分で軽い固着を生じたものの、剥離後の創面からの出血はほとんど確認できなかった。実施例1と比較例1との構成の違いは、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部をシリコーン樹脂で被覆する点である。従って、本願発明が肉様膜及び肉芽組織による固着に対し有効であることが確認された。結果を図10に示す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る傷手当用品を示す図。
【図2】本発明の異なる実施形態に係る傷手当用品を示す図。
【図3】本発明のさらに異なる実施形態に係る傷手当用品を示す図。
【図4】本発明の傷手当用品の製造方法を説明する図。
【図5】本発明の傷手当用品の連続的な製造方法を説明する図。
【図6】本発明の実施例1について孔開き材料側から拡大して示す図。
【図7】本発明の実施例2について孔開き材料側から拡大して示す図。
【図8】比較例1について孔開き材料側から拡大して示す図。
【図9】比較例1に関する固着性評価結果の説明図。
【図10】本発明の実施例1に関する固着性評価結果の説明図。
【符号の説明】
【0050】
10 傷手当用品
20 孔開き材料
21 貫通孔
30 吸収体
31 貫通孔と対向する部分
40,52 シリコーン樹脂
50,51 カバー材
60 剥離シート
70 荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び底面を有し複数の貫通孔を有する孔開き材料と、孔開き材料の上面に配置される吸収体とを備えた傷手当用品において、
孔開き材料の少なくとも底面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆され、
吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部が、シリコーン樹脂で被覆され、
孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過し得るようにしたことを特徴とする傷手当用品。
【請求項2】
孔開き材料の上面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆されたことを特徴とする請求項1に記載の傷手当用品。
【請求項3】
上面及び底面を有し複数の貫通孔を有する孔開き材料と、孔開き材料の上面に配置される吸収体とを備えた傷手当用品において、
孔開き材料の上面及び底面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆され、
吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部が、シリコーン樹脂で被覆され、
孔開き材料と吸収体とが、孔開き材料の底面に位置するシリコーン樹脂により接着され、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過し得るようにしたことを特徴とする傷手当用品。
【請求項4】
シリコーン樹脂が、粘着性ゲルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項5】
孔開き材料の貫通孔の内周面が、貫通孔の全部が塞がれることなくシリコーン樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項6】
シリコーン樹脂が、孔開き材料の底面から内部に浸透し孔開き材料の上面に至っていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項7】
吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分が、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過することを阻害しない程度にシリコーン樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項8】
孔開き材料及び吸収体を被覆するシリコーン樹脂量が、150〜350g/m2であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項9】
孔開き材料が、厚さ0.05〜0.7mmの編布であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項10】
孔開き材料が、0.01〜10mm2の貫通孔平均断面積と、5〜70%の開孔率とを備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項11】
上面及び底面を有し複数の貫通孔を有する孔開き材料と、孔開き材料の上面に配置される吸収体とを備え、孔開き材料の少なくとも底面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆され、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部が、シリコーン樹脂で被覆され、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過し得るようにした傷手当用品の製造方法であって、
(P1)剥離シートにシリコーン樹脂を塗工する工程、
(P2)硬化前のシリコーン樹脂塗工面に孔開き材料を載せ、孔開き材料の上面に吸収体を載せ、孔開き材料及び吸収体にシリコーン樹脂を被覆する工程、
(P3)シリコーン樹脂を加熱硬化させる工程、
からなることを特徴とする傷手当用品の製造方法。
【請求項12】
上面及び底面を有し複数の貫通孔を有する孔開き材料と、孔開き材料の上面に配置される吸収体とを備え、孔開き材料の上面及び底面が、貫通孔の全部が塞がれることがないように貫通孔の少なくとも一部を残してシリコーン樹脂で被覆され、吸収体の孔開き材料の貫通孔と対向する部分の一部が、シリコーン樹脂で被覆され、孔開き材料と吸収体とが、孔開き材料の底面に位置するシリコーン樹脂により接着され、孔開き材料の底面側から吸収体内部へ液体が通過し得るようにした傷手当用品の製造方法であって、
(P1)剥離シートにシリコーン樹脂を塗工する工程、
(P2A)硬化前のシリコーン樹脂塗工面に孔開き材料を載せ、孔開き材料の上面に吸収体を載せ、シリコーン樹脂を孔開き材料の底面から内部に浸透させ孔開き材料の上面に至らせることで孔開き材料と吸収体とをシリコーン樹脂により接着すると共に、孔開き材料及び吸収体にシリコーン樹脂を被覆する工程、
(P3)シリコーン樹脂を加熱硬化させる工程、
からなることを特徴とする傷手当用品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−95476(P2009−95476A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269892(P2007−269892)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)