説明

傷手当用品

【課題】傷手当用品を患部に適用する際に、傷手当用品の傷接触表面を汚染することなく、簡単に傷手当用品を患部に適用し得る傷手当用品を提供する。
【解決手段】上面及び傷接触表面となる下面を有する傷手当用品であって、吸収層40と、吸収層40の被覆層(20、21)とを有し、下面側の被覆層は吸収層40へ液体が移動可能なものとし、前記下面側被覆層の少なくとも傷接触表面は疎水性とし、上面側の被覆層21は把持可能な摘み30を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傷の保護、治療に使用する傷手当用品に関する。特に、傷からの血液、滲出液等(以下、体液という。)を吸収するのに適する傷手当用品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱傷、褥瘡、及びその他の損傷の治療において、傷を保護し、傷からの体液を吸収するために、従来、ガーゼ、脱脂綿、吸収性繊維からなる層を含む多層構造のパッド等の傷手当用品が用いられている。
しかし、これらの傷手当用品は、体液を吸収し傷面が乾燥すると、傷面から除去する際に、傷面を傷つけ、痛みや出血を伴うことがあった。このような、剥離時の痛みや出血を低減するために種々の傷手当用品が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリウレタンフィルムからなるフレキシブル裏材料にくぼみを画定し、このくぼみにハイドロゲル材料を存在させた傷保護材が開示されている。
特許文献2には、撥水性物質により被覆されたカルボキシメチルセルロース不織布からなる支持層、接着剤層及び親水性多孔質膜が積層された積層構造体であって、この積層構造体に貫通孔が設けられている創傷被覆材が開示されている。
特許文献3には、傷表面に接する疎水性シリコーン・ゲル層と、ゲル層を支持するキャリヤー材料の層と、吸収体と、体液遮断層とを、この順番に積層した吸収性傷用手当用品が開示されている。
【0004】
これらの傷手当用品は、傷への感染を防止するために、滅菌して使用されることが多い。滅菌は、滅菌バッグと呼ばれる滅菌用包装材料で作成される容器により傷手当用品を1個ずつ滅菌したり、カストと呼ばれる開閉可能な通気孔を有する蓋付き容器を使用して一度に多くの傷手当用品を滅菌したりする方法が行われている。
そして、これらの傷手当用品を使用するときには、この滅菌状態を維持するために、滅菌した鑷子、ゴム手袋等を使用して、滅菌バッグやカストから傷手当用品を取り出し、患部に適用している。一般に傷手当用品は、扁平な形状なため、傷手当用品を鑷子やゴム手袋で摘んだときには、傷手当用品の傷接触面も摘むことになるが、傷手当用品が柔らかい素材で形成されているため、この摘んだ部分に皺や窪みが発生することがあった。そのため、傷手当用品を適用した際に、傷手当用品と傷との間に、この皺や窪みによる空隙が生じ、その空隙から体液が漏れたり、外部から菌が進入し易くなったりして、衛生上好ましくない場合あった。
使用する傷手当用品の大きさや形状によっては、一度に2本の鑷子を使ったり、両手にゴム手袋をはめて処置したりする場合もあり、操作が煩雑になり皺や窪みがより発生し易くなる。また、傷手当用品の傷接触面に粘着剤や軟膏等の薬剤が塗られている場合には、鑷子やゴム手袋に粘着剤や軟膏が付着してしまい、傷手当用品の傷接触表面を荒らしたり、付着した粘着剤等を分離するのに手間を要したりする場合もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平3−207357号公報
【特許文献2】特開平5−337151号公報
【特許文献3】特表平7−505310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、傷手当用品は、使用後に患部に痛みや出血を生じないように容易に除去できるようにすることは勿論のこと、使用の際に、適切な状態で患部に適用できるようにすることが衛生上重要である。
この発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、傷手当用品を患部に適用する際に、傷手当用品の傷接触表面を汚染することなく、簡単に傷手当用品を患部に適用し得る傷手当用品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため本発明によれば、上面及び傷接触表面となる下面を有する傷手当用品であって、吸収層と、吸収層の被覆層とを有し、下面側の被覆層は前記吸収層へ液体が移動可能なものとし、前記下面側被覆層の少なくとも傷接触表面は疎水性とし、上面側の被覆層は把持可能な摘みを有することを特徴とする(請求項1)。この構成によれば、傷手当用品を摘みで把持することにより、汚染の問題なしに簡単に患部に適用し得る。また、傷接触表面を疎水性とすることにより、傷手当用品を傷から容易に分離できる。
【0008】
また、前記課題は下記発明によっても達成される。上面及び傷接触表面となる下面を有する傷手当用品であって、吸収層と、吸収層の被覆層とを有し、下面側の被覆層は積層構造とし、少なくとも傷接触表面側の層は疎水性樹脂層とし、かつ下面側の被覆層は前記吸収層へ液体が移動可能なものとし、上面側の被覆層は把持可能な摘みを有することを特徴とする(請求項2)。この構成によれば、疎水性樹脂層の機能を適宜選択することで、傷接触表面側の層の特性を使用方法や治療目的に応じて変更することが容易となる。
【0009】
前記請求項1または2の発明の実施態様としては、下記請求項3ないし15の発明が好ましい。まず、疎水性の程度に関わり、前記請求項1または2記載の傷手当用品において、前記下面側被覆層の傷接触表面は、水との接触角が65°以上とする(請求項3)。
【0010】
また、請求項1〜3のいずれか1項に記載の傷手当用品において、前記下面側被覆層の傷接触表面は、粘着性を有するものとする(請求項4)。これにより、傷に適用した傷手当用品の位置を固定し、その位置からずれないようにすることができる。さらに、前記請求項2記載の傷手当用品において、前記疎水性樹脂層はシリコーンを含有するものとする(請求項5)。
【0011】
また、前記請求項2に記載の傷手当用品において、前記疎水性樹脂層は薬剤を含有するものとする(請求項6)。さらに、前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の傷手当用品において、前記下面側被覆層の傷接触表面は、その表面に更に別の薬剤含有層を有するものとする(請求項7)。これにより、傷の状態により、適当な薬剤を選択することで、治癒促進を図ることができる。
【0012】
また、前記請求項1または2記載の傷手当用品において、前記摘みは、傷手当用品の下面が下向きで略水平面となるように摘みを把持した際に、傷手当用品の自重によるたわみが、左右または前後に均等となるような位置に形成されるものとする(請求項8)。これにより、傷手当用品の傷への適用時に、傷接触表面に皺や折り目が発生しないようにし、傷手当用品と傷との密着性を高めることができる。
【0013】
さらに、前記請求項1または2記載の傷手当用品において、傷手当用品の上面が対称的な形状に形成され、少なくとも2つの摘みが、傷手当用品の上面形状の対称的な位置でかつ傷手当用品の縁または縁近傍に配設されるものとする(請求項9)。これにより、バランスよく把持でき、傷手当用品を容易に患部に適用できる。また、前記請求項9の実施態様としては、傷手当用品の上面が多角形に形成され、少なくとも2つの摘みが、多角形の辺に平行するように傷手当用品の縁または縁近傍に配設されるものとする(請求項10)。
【0014】
さらに、前記請求項1または2記載の傷手当用品において、前記摘みは、傷手当用品の縁の所定の位置から、傷手当て用品の縁の別の位置まで、傷手当用品の上面を横断するように形成されるものとしてもよい(請求項11)。また、前記請求項1〜11のいずれか1項に記載の傷手当用品において、前記被覆層は、1枚又は2枚のシートから形成され、摘みは、被覆層を形成するシートの縁により形成されるものとする(請求項12)。これにより、製造上効率良く、摘みを形成することができる。
【0015】
また、前記請求項1〜12のいずれか1項に記載の傷手当用品において、前記被覆層は、伸縮性のシートから形成されるものとする(請求項13)。これにより、傷手当用品の下面が略水平面となるように、さらにバランスよく把持し易くなり、傷手当用品を容易に患部に適用できる。
【0016】
さらに、前記請求項1〜13のいずれか1項に記載の傷手当用品において、傷手当用品は、一方向に連続する長尺物として形成されるものとする(請求項14)。これにより、傷手当用品を患部の大きさに合わせ、必要なぶんだけカットして使用することができるので、材料の無駄をなくすことができる。
【0017】
また、前記請求項1〜14のいずれか1項に記載の傷手当用品において、前記吸収層は、水吸収時にゲルを形成する物質を含むことが好ましい(請求項15)。これにより、創傷を湿潤状態に保ち、傷の治癒を促進することができる。
【0018】
また、本願発明の傷手当用品は、容器に封入したものであることが好ましい。即ち、前記請求項1〜15のいずれか1項に記載の傷手当用品は、容器内にその摘みが前記容器の開封口に向けられた状態で封入され、容器を開封した際には、摘みを把持して容器外へ取出し可能に封入されるものとする(請求項16)。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、傷手当用品の上面側に設けた摘みにより、傷手当用品の傷接触表面に触れずに、また、傷接触表面に皺を発生させないように傷手当用品を患部に適用することができるので、簡便で衛生的な処置が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜7に基づき、本発明の実施形態について以下に述べる。図1〜7において、同一部材には同一番号を付し、また類似機能を有する部材には、20番台、30番台等の類似番号を付して示す。図1は、本発明の第1の実施形態に係る傷手当用品であり、a)は傷手当用品の上面からみた斜視図、b)は傷手当用品の下面からみた斜視図、c)はa)のC−C線に沿って切断した側断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の傷手当用品10は、傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層20と、傷手当用品の上面側に位置するシート状の被覆層21と、これらの被覆層の間に介在させた吸収層40とを備えている。被覆層20下面側の表面は、傷接触表面となるシリコーンを含む疎水性樹脂層50と、これらの層を貫通する孔60が設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るようになっている。
被覆層20と21は、吸収層40の外形に沿うように、傷手当用品の対向する2辺となるシール部70と、傷手当用品の別の対向する2辺の近傍に形成されたシール部71とで互いに接合され吸収層を被覆している。そして、傷手当用品の上面側には、被覆層21のシートの縁により形成される摘み30が2箇所設けられている。本実施形態の傷手当用品は、その上面が対称的な形状である略正方形に形成されており、その正方形の対称的な位置である一対の対辺の縁に、これらの辺に平行するように摘み30が配置されている。このような位置に摘みを配置することで、摘みをもったときにバランスよく傷手当用品の重心が取れ、傷手当用品の下面を水平に保ちながら、傷接触表面に皺や折り目が発生しないように傷手当用品を適用することができる。
上記実施態様においては、下面側の被覆層20は疎水性樹脂層50を備え、下面側の被覆層を2層とするものについて述べたが、疎水性樹脂層50を設けずに被覆層を1層とする場合には、前述のように、被覆層20の少なくとも傷接触表面を疎水性とすることにより、傷手当用品を取り外す際に、傷手当用品を傷から容易に分離できる。なお、図1a)において、摘み30の部分に示す符号dについては後述する。
【0022】
図2、図3は、本発明の第2、第3の実施形態に係る傷手当用品であり、それぞれ、a)は傷手当用品の上面からみた斜視図、b)はa)のB−B線に沿って切断した側断面図である。第2、第3の実施形態は、被覆層20、21のシール位置が第1実施形態とは異なり、その結果、摘み31、32の形態も第1実施形態とは異なったものとなっている。それ以外の部分は、第1実施形態とほぼ同様である。
図2に示すように、第2の実施形態では、傷手当用品の上面側において、第1の実施形態とは逆で被覆層20が、被覆層21に被さるように配置され、被覆層20の上からシール部71により被覆層20と被覆層21とを互いに接合している。これにより、摘み31は、被覆層20のシートの縁により形成され、傷手当用品の内側に向けて突出するように配置されている。第2の実施形態の傷手当用品は、その上面が対称的な形状である略正方形に形成されており、その正方形の対称的な位置である一対の対辺の縁近傍に、これらの辺に平行するように摘み31が配置される。
図3に示すように、第3の実施形態では、傷手当用品の上面側において、吸収層40の外側でシール部71により被覆層20と被覆層21とを互いに接合している。これにより、摘み32は、被覆層21のシートの縁により形成され、吸収層40の外側で、傷手当用品の外側に向けて突出するように配置されている。第3の実施形態の傷手当用品は、その上面が対称的な形状である略正方形に形成されており、その正方形の対称的な位置である対辺の縁に、これらの辺に平行するように摘み32が配置される。
【0023】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る傷手当用品であり、それぞれ、a)は傷手当用品の上面からみた斜視図、b)はa)のB−B線に沿って切断した側断面図である。
図4に示すように、第4の実施形態は、1枚の被覆層22のみを使用し、被覆層22のシートの縁をシール部70、72で接合して吸収層40を被覆している。
この実施形態では、傷手当用品の上面中央部を横切るように接合したシール部72を摘み33として兼用している。つまり、摘み33は、被覆層22のシートの2つの縁を接合することにより形成され、傷手当用品の一方の辺の縁の中央部から、それに対向する辺の縁の中央部まで、傷手当用品の上面を横断するように形成されている。
【0024】
図5は、本発明の第5の実施形態に係る傷手当用品の上面からみた斜視図である。
図5に示すように、第5の実施形態の傷手当用品10は、傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層23と、傷手当用品の上面側に位置するシート状の被覆層24と、これらの被覆層の間に介在させた吸収層40とを備え、一方向に連続する長尺物としてロール状に構成したものである。
被覆層23下面側の表面は、傷接触表面となるシリコーンを含む疎水性樹脂層50と、これらの層を貫通する孔60とが設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るようになっている。
被覆層23と24は、傷手当用品の縁近傍で、傷手当用品の連続する方向と平行する方向に沿ってシール部73で互いに接合され吸収層40を被覆している。
傷手当用品の上面側には、被覆層24のシートの縁により形成される摘み34が、傷手当用品の連続する方向に沿って形成されている。摘み34は、一定間隔で設けられた切り込み80によって分割され、複数の摘める部分を形成している。このような、一定間隔の切り込み80を設けることで、使用する傷手当用品のサイズの目安とすることができる。同様に、使用する傷手当用品のサイズの目安とするために、目安線81を一定間隔で設けることができる。目安線81は、点線状の孔で形成し、傷手当用品の切取り線とすることができる。第5の実施形態は、傷手当用品を患部の大きさに合わせ、必要なぶんだけカットして使用することができるので、材料の無駄をなくすことができる。
【0025】
図6は、本発明の第6の実施形態に係る傷手当用品であり、それぞれ、a)は傷手当用品の上面からみた斜視図、b)はa)のB−B線に沿って切断した側断面図である。第6の実施形態は、摘み35を被覆層とは別の部材で形成した点が、他の実施形態と異なるところである。
図6に示すように、本実施形態の傷手当用品10は、傷手当用品の下面側に位置するシート状の被覆層25と、傷手当用品の上面側に位置するシート状の被覆層26と、これらの被覆層の間に介在させた吸収層40とを備え、吸収層40の外側で被覆層25と被覆層26の外周縁をシール部74で互いに接合している。
被覆層25の下面側の表面には、傷接触表面となるシリコーンを含む疎水性樹脂層50と、これらの層を貫通する孔60が設けられ、傷からの体液が吸収層へ移動し得るようになっている。
本実施形態の傷手当用品は、その上面が対称的な形状である略正方形に形成されており、その正方形の対称的な位置である一対の対辺の縁近傍に、これらの辺に平行するように摘み35が2つ設置されている。そして、摘み35には、指を引っ掛けたりすることもできる孔82を2つ設けている。この孔82は、ゴム手袋で作業をする場合や、傷手当用品が大きい場合に、しっかりと摘みを持つことができ、傷手当用品をまっすぐな状態に支持するのに役立つ。
【0026】
次に、本発明の使用方法および容器に封入された傷手当用品について、図7に基づき説明する。図7において、a)は滅菌用包装材料で作成される容器90に封入された傷手当用品10を取り出す状態を示す図で、b)は傷手当用品を傷に適用する状態を示す図である。この図では、傷手当用品として、上述した第1の実施形態のものを使用して説明する。
本発明の傷手当用品は、衛生上、容器90に1個ずつ封入されることが好ましい。容器90は、紙またはプラスチックのような滅菌用包装材料で形成される袋状また箱形の容器を使用できる。
そして、図7のa)に示すように、傷手当用品10は、2つ折りにして、摘み30が容器の開封口に向けられた状態で前記容器内に封入される。これにより、容器を開封したときに、傷手当用品10は、摘み30を持って容器内から容器外へ傷接触表面に触れることなく取出すことができる。
その後、図7のb)に示すように、もう一方の摘み30を持つと、傷手当用品10の下面が水平面を保持し得るように把持できるので、傷手当用品の傷接触表面に皺や折り目が発生しないように、傷100の上に適用することができる。
【0027】
次に、本発明の実施形態に係る各部材の材料や所要特性、機能等について述べる。まず、摘み30〜35について述べる。摘みの端部は、傷手当用品の外周縁から突出せず、傷手当用品の外周縁の内側に収まるように配置されることが好ましく、こうすることで、摘みが皮膚に触れた時に発生する違和感を生じさせない。
摘みは、被覆層の摘みが固定されている部分から、被覆層に固定されていない自由端までの距離(図1の符号d参照)が、7mm以上であることが好ましい。つまり、摘みを把持するときに、7mm以上の指で摘める突出した部分が摘みに設けられることが好ましい。
摘みの形状は、特に限定されないが、被覆層を形成するシートの縁により矩形に形成すると製造上有利である。
摘みに、孔や切り込みを設けたり、エンボス加工やエラストマーを塗工したりすることで、摘みを把持し易くすることができ、操作性を上げることができる。
摘みは、被覆層以外の別の部材で形成しても良く、接着、溶着により被覆層に取り付ける事ができる。
摘みは、被覆層の傷手当用品の上面側に2箇所以上設けることが好ましい。その位置は、傷手当用品の上面を対称的な形状に形成したときに、2つの摘みが、傷手当用品の上面形状の対称的な位置でかつ傷手当用品の縁または縁近傍に配置されることが好ましい。傷手当用品の上面の対称的な形状としては、三角形、四角形、菱形等の多角形や、円形、楕円形が利用でき、2つの摘みを多角形の辺に平行するように傷手当用品の縁または縁近傍に配置することが好ましい。
【0028】
次に、被覆層20〜26について述べる。被覆層は、吸収層の外形を被覆し得るものであればよく、1枚又はそれ以上のシートから形成することができ、適当な位置で互いに接合し吸収層を被覆することができる。被覆層は、吸収した体液が漏れないように、吸収層の外形全体を被覆することが好ましいが、部分的に吸収層を被覆していない部分があっても良い。
以下に、被覆層の所要特性、機能等について述べる。まず、疎水性について述べる。被覆層下面側の少なくとも傷接触表面は疎水性を有する。疎水性とするためには、被覆層自体を疎水性の材料で形成しても良いし、被覆層とは別の疎水性樹脂層を塗工する等して被覆層を積層構造とし、その表面を疎水性にしても良い。傷手当用品を傷から容易に分離するためには、被覆層のこの疎水性の表面は、水との接触角が65°以上であることが好ましく、90°以上であることが更に好ましい。接触角の測定は、接触角計CA−A(協和界面科学社製)を使用して該接触角計の取扱説明書「液滴法測定操作」に準拠して測定することができる。
【0029】
次に、液体の移動について述べる。被覆層のこの疎水性の表面は、吸収層へ体液などの液体が移動し得るように形成される。被覆層の下面側を液体透過性とするためには、メッシュ、穿孔フィルム等のプラスチックシートや、編布、織布、不織布等の液体透過性の繊維状シートを使用することができる。被覆層に疎水性樹脂層を形成する場合は、被覆層の液体が移動し得る孔を塞がないように疎水性樹脂層を塗工するか、疎水性樹脂層を塗工した後に疎水性樹脂層ごと被覆層を打ち抜けば良い。
【0030】
次に、粘着性について述べる。被覆層は、傷手当用品の下面側に粘着性の表面を有することが好ましく、JIS Z 0237−2000「180度引きはがし粘着力」(被着体にはベークライト板を使用)に準じて測定したときの粘着力が、0.05〜0.70(N/25mm)の範囲であることが好ましい。粘着力がこの範囲内にあることにより、剥離時の痛みや不快感を低減することができる。
【0031】
次に、薬剤の含有について述べる。
本発明の傷手当用品は、患部に適用したときに、その表面から薬剤を放出できるようにすることで、治癒促進を図ることができる。薬剤は、被覆層下面側に傷接触表面として設ける疎水性樹脂層中に含有させてもよいし、被覆層の傷接触表面にこの被覆層とは別の薬剤含有層を更に設けてもよい。薬剤含有層は、軟膏やゲルの層として形成することができ、薬剤としては、ポピドンヨードやゲンタマイシン等の抗菌剤、ワセリン、その他治癒促進に有効な物質等を使用できる。
【0032】
次に、被覆層の材料について述べる。被覆層を形成するプラスチックシートや繊維状シートは、これらの基材を単独で使用してもよいし、同一又は異なる種類のシートをラミネートした積層構造のシートを使用してもよい。これらのうち、液体不透過性のシートが好ましく、こうすることで、吸収層が吸収した液体が漏れ出すことを防止することができる。また、被覆層は、伸縮性のシートで形成することが好ましく、こうすることで、傷手当用品の貼付中に皮膚の伸展によく追従し、皮膚への貼付中に違和感や物理的刺激を与えることがなく、また、摘みを把持したときに、傷手当用品の下面が水平面を保持し易くなる。
被覆層の材料としては、例えば、ポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体等のオレフィン系共重合体;ポリアミド;ポリウレタン;シリコーン;等をあげることができ、これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
また、被覆層の材料に、セルロース繊維等の親水性で体液を吸収し得る材料を使用しても良い。セルロース繊維としては、綿等の天然セルロース繊維;ビスコースレーヨン繊維、ポリノジック繊維、銅アンモニアレーヨン繊維、リヨセル繊維、モダル繊維等の再生セルロース繊維を使用することができる。
【0033】
次に、疎水性樹脂層の材料について述べる。被覆層に設ける疎水性樹脂層の材料としては、その樹脂で形成した層の表面と水との接触角が65°以上になるものを選択すればよく、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、フッ素樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
特に、シリコーン樹脂を含む材料からなるものが好ましく、シリコーン樹脂としては、ビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物であることが好ましい。シリコーンはその架橋方法により、過酸化反応型、縮合反応型、付加反応型の種類があるが、付加反応型シリコーンは、開放系と密閉系の反応装置どちらも利用でき、常温硬化、加熱硬化いずれも可能であり、さらに、反応後に副生成物が発生しないため、他の反応型のシリコーンに比較し、医療用として特に好適である。
前記ビニル基置換ポリジメチルシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応は、ビニルシリル基(Si−CH=CH2)とヒドロシリル基(Si−H)との付加反応であり、白金化合物が反応触媒として用いられる。
シリコーン樹脂は、ゲル状に形成して、粘着性を付与することが好ましい。
【0034】
次に、吸収層について述べる。吸収層は、セルロース系繊維、パルプ、高分子吸水ポリマー等の吸水性の高い材料を単独又は併用して使用することができ、必要とされる吸収量にあわせてこれらの量を調整すればよい。特に、水吸収時にゲルを形成する物質を含ませることが好ましく、このようにすることで、創傷を湿潤状態に保ち、傷の治癒を促進することができる。ゲル形成物質としては、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、アクリル酸(塩)重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体、多価アルコール等が好ましい。
また、使用する吸収層の嵩、繊維密度、材料の硬さ等を調整することにより、傷手当用品に適度な保形性を付与することができ、これにより、摘みを持ったときに、傷手当用品の下面が水平面を保持し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る傷手当用品を示す図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る傷手当用品を示す図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る傷手当用品を示す図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る傷手当用品を示す図。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る傷手当用品を示す図。
【図6】本発明の第6の実施形態に係る傷手当用品を示す図。
【図7】本発明の傷手当用品の使用状態を示す図。
【符号の説明】
【0036】
10 傷手当用品
20、21、22、23、24、25、26 被覆層
30、31、32、33、34、35 摘み
40 吸収層
50 疎水性樹脂層
60 孔
70、71、72、73、74 シール部
80 切り込み
81 目安線
82 摘みの孔
90 容器
100 傷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び傷接触表面となる下面を有する傷手当用品であって、
吸収層と、吸収層の被覆層とを有し、
下面側の被覆層は前記吸収層へ液体が移動可能なものとし、前記下面側被覆層の少なくとも傷接触表面は疎水性とし、上面側の被覆層は把持可能な摘みを有することを特徴とする傷手当用品。
【請求項2】
上面及び傷接触表面となる下面を有する傷手当用品であって、
吸収層と、吸収層の被覆層とを有し、
下面側の被覆層は積層構造とし、少なくとも傷接触表面側の層は疎水性樹脂層とし、かつ下面側の被覆層は前記吸収層へ液体が移動可能なものとし、上面側の被覆層は把持可能な摘みを有することを特徴とする傷手当用品。
【請求項3】
前記下面側被覆層の傷接触表面は、水との接触角が65°以上とすることを特徴とする請求項1または2記載の傷手当用品。
【請求項4】
前記下面側被覆層の傷接触表面は、粘着性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項5】
前記疎水性樹脂層はシリコーンを含有することを特徴とする請求項2記載の傷手当用品。
【請求項6】
前記疎水性樹脂層は薬剤を含有することを特徴とする請求項2記載の傷手当用品。
【請求項7】
前記下面側被覆層の傷接触表面は、その表面に更に別の薬剤含有層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項8】
前記摘みは、傷手当用品の下面が下向きで略水平面となるように摘みを把持した際に、傷手当用品の自重によるたわみが、左右または前後に均等となるような位置に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の傷手当用品。
【請求項9】
傷手当用品の上面が対称的な形状に形成され、少なくとも2つの摘みが、傷手当用品の上面形状の対称的な位置でかつ傷手当用品の縁または縁近傍に配設されることを特徴とする請求項1または2記載の傷手当用品。
【請求項10】
傷手当用品の上面が多角形に形成され、少なくとも2つの摘みが、多角形の辺に平行するように傷手当用品の縁または縁近傍に配設されることを特徴とする請求項9記載の傷手当用品。
【請求項11】
前記摘みは、傷手当用品の縁の所定の位置から、傷手当て用品の縁の別の位置まで、傷手当用品の上面を横断するように形成されることを特徴とする請求項1または2記載の傷手当用品。
【請求項12】
前記被覆層は、1枚又は2枚のシートから形成され、摘みは、被覆層を形成するシートの縁により形成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項13】
前記被覆層は、伸縮性のシートから形成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項14】
傷手当用品は、一方向に連続する長尺物として形成されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項15】
前記吸収層は、水吸収時にゲルを形成する物質を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の傷手当用品。
【請求項16】
傷手当用品は容器内にその摘みが前記容器の開封口に向けられた状態で封入され、容器を開封した際には、摘みを把持して容器外へ取出し可能に封入されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の傷手当用品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−130134(P2007−130134A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324541(P2005−324541)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)