説明

僅かなOH官能性を有するアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするホルムアルデヒド不含のカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂ならびにこれらの製法

本発明は、僅かなOH官能性、結晶化可能な化合物の僅かな割合、僅かな粘度、極めて低い色数及び極めて高い耐熱性と耐光性を有するアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとする、ホルムアルデヒド不含のカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂ならびにその製法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、僅かなOH官能性、結晶化可能な化合物の僅かな割合、僅かな粘度、極めて低い色数及び極めて高い耐熱性と耐光性を有する、アルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするホルムアルデヒド不含のカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂ならびにその製法に関する。
【0002】
ケトン、又はケトンとアルデヒドから成る混合物は、塩基触媒又は酸の存在で反応させて樹脂様生成物にすることができることが公知である。従って、シクロヘキサノンとメチルシクロヘキサノンの混合物から樹脂を製造できる(Ullmann 第12巻、551頁)。ケトンとアルデヒドの反応は、大抵は塗料工業で頻繁に使用される固形樹脂を生じる。
【0003】
工業的に重要なケトン−アルデヒド樹脂は、今日では大抵はホルムアルデヒドの使用下に製造されている。
【0004】
ケトン−ホルムアルデヒド樹脂は、既に長い間公知である。製法は、例えばDE 3324287、US 2540885、US 2540886、DE 1155909、DD 12433、DE 1300256及びDE 1256898に記載されている。
【0005】
製造に関しては、通常はケトンとホルムアルデヒドを塩基の存在で相互に反応させる。
【0006】
ケトン−アルデヒド樹脂は、被覆剤中で例えばフィルム形成添加成分として使用され、初期乾燥速度、光沢、硬度又は引掻耐性のような特定の性質を改善する。その比較的に僅かな分子量ゆえに、通常ケトン−アルデヒド樹脂は僅かな溶融粘度と溶液粘度を有し、従って被覆剤中で特にフィルム形成性充填剤として利用される。
【0007】
ケトン−アルデヒド樹脂のカルボニル基は、例えば太陽光での照射により、例えばノーリッシュタイプI又はIIの古典的な分解反応を受けやすい[Laue, Plagens, Namen und Schlagwort-Reaktionen, Teubner Studienbuecher, Stuttgart, 1995]。
【0008】
従って、変性していないケトン−アルデヒド樹脂又はケトン樹脂を品質的に価値の高い用途、例えば、特に風化及び熱に対する高い耐性が必要な外部領域で使用することは不可能である。この欠点は、カルボニル基の水素化により改善できる。二級アルコール内のカルボニル基の転化は、ケトン−アルデヒド樹脂の水素化により長い間実施されてきた(DE 826974、DE 870022、JP 11012338、US 6222009)。
【0009】
アルキルアリールケトンをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂の製造は記載されていない。
【0010】
工業的に重要なケトン−アルデヒド樹脂は、ホルムアルデヒドとアセトフェノンをベースとして得られる(Stoye, Freitag, Lackharze. Chemie, Eigenschaften und Anwendungen. Hanser Fachbuch(Juli 1996))。
【0011】
カルボニル基の存在の他に、芳香族構造エレメントは高い耐熱性と耐光性を制限する。従って、このような製品は、その極めて良好な一般的特性にもかかわらず、例えば風化安定性の塗料で使用するには不適切である。
【0012】
このような芳香族基を有するケトンをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂の製造は、DE 3334631に記載されている。ここに挙げられている方法は出発生成物よりも、色、耐熱性及び耐光性に関して改善された特性を有する生成物を生じる。今日の見地によれば、これらの生成物の性能はその改善にもかかわらず、もはや十分ではない。DE 3334631に記載されている方法によれば、出発樹脂の溶解度特性は変化している。しかし自身の情報が示しているように、例えばアモルファスポリ−α−オレフィン又はパラフィンのような非極性ポリマーに対する相容性は挙げられていない。更に、結晶化可能な化合物の含有量と色数が高いという特有のデータが証明された。
【0013】
自体のデータが包括的に証明したように、ここに記載された水素化生成物には比較的に高い遊離ホルムアルデヒドの含有量があることが述べられている。従来技術により記載された水素化法により確かに遊離ホルムアルデヒドの割合は非水素化ケトン−ホルムアルデヒド樹脂よりも減少しているが、しかし著しい量の遊離ホルムアルデヒドが水素化生成物中に残ったままである。水素化時間が長いほど、更に減少したホルムアルデヒド含有量を生じ得るが、しかしこれは更なる樹脂の特性、例えば色、溶融範囲、OH−数などには不利な作用を及ぼし、かつ生産性の減少によって通用しない方法を生じてしまう。
【0014】
ホルムアルデヒドは健康上の損害を引き起し得る。しかし現在のところまだ正確に分類されていない。"International Agency for Research on Cancer(IARC)"、世界保健機構(WHO)は、最近の研究に基づきホルムアルデヒドがヒトにおいて極めて希に生じる鼻咽頭癌を自発的に引き起こすことを見出した。
【0015】
IARCの評価は単に学術的であり、かつ未だに法的な因果関係を引き起こしていないが、しかし"持続的開発"と"責任を伴う化学物質との接触"の意味で、ホルムアルデヒド不含製品の提供が必要不可欠である。更に、ホルムアルデヒド不含製品だけが市場で存在することに由来する。
【0016】
カルボニル基を減らさずに水素化されていないアセトン−ホルムアルデヒド−樹脂のホルムアルデヒド含有量を下げる方法は、US 5247066に記載されている。ここでは、0.4質量%未満の遊離ホルムアルデヒドの含有量が達成されているが、今日の基準では著しく高すぎる。更に、この方法では芳香族構造エレメントとカルボニル基が水素化されていない。
【0017】
ケトン−アルデヒド樹脂は、不揮発性成分の含有量を被覆剤中で高めるために以前から使用されている。例えばEU委員会のガイドライン1999/13/EGのような新たなガイドラインは、揮発性有機化合物の発散制限により、強制的にこの性質を更に改善しなくてはならない。
【0018】
ケトン−ホルムアルデヒド樹脂の合成の際に、結晶化可能な化合物を形成することができ、その際、これは第一に環状オリゴマーである。これらの副成分のカルボニル基が水素化される場合には、溶液中で結晶化する傾向のある生成物(式I)
【化1】

が生じてしまい、このことは被覆剤において加工上の不都合を生じ得る。
【0019】
従って、本発明の課題は、遊離ホルムアルデヒド不含であり、かつ例えばアモルファスポリ−α−オレフィン又はパラフィンのような非極性ポリマーに相溶性であるアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂を見出すことであった。
【0020】
結晶化可能な化合物の割合は、出来るだけ少ないのがよい。更に、樹脂の特性は、溶液粘度、溶融範囲及び色に関して更に改善されるのがよく、かつ極めて高い耐熱性と耐光性が存在するのがよい。
【0021】
更に本発明の課題は、このような生成物の製法を開発することである。
【0022】
意外にも前記課題は、一方では樹脂のカルボニル基と芳香族構造エレメントの選択的水素化を接触し、他方では、遊離ホルムアルデヒドの含有量を減らす触媒の存在で水素と反応させ、アルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとする特殊に製造された請求項に記載のケトン−アルデヒド樹脂により解決された。
【0023】
本発明によるカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂は、傑出した耐光性と耐熱性ならびに極めて僅かな色を有する。生成物は僅かな割合のカルボニル基と芳香族構造エレメントならびに結晶化可能な化合物を有し、かつ実質的にホルムアルデヒド不含である。例えばアモルファスポリ−α−オレフィン又はパラフィンのような非極性ポリマーに対する極めて良好な相溶性が与えられ、かつカルボニル数とヒドロキシル数ならびに芳香族の割合が調節される。溶液濃度は従来技術に対して僅かであり、かつ特に狭い分子量分布を有する既成の出発樹脂を水素化に使用して行うことができる。
【0024】
本発明の対象は、実質的に式II
【化2】

[式中、
R=6〜14個の炭素原子を有する芳香族、6〜14個の炭素原子を有する脂環式であり、その際、芳香族構造エレメントの割合は10mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂、有利には5mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂(その都度使用されるアルキルアリールケトンに対して)であり、
R’=H、CH2OHであり、
k=0〜6、有利には0〜4、特に有利には0〜3であり、
m=2〜18、有利には2〜15、特に有利には2〜12であり、
l=0〜0.35、有利には0〜0.30であり、その際、
k+l+mの合計は2〜24の間、有利には2〜19の間、特に有利には2〜15であり、
m/kの比は>5、有利には>7.5であり、かつ
3つの構造エレメントは交互に又はランダムに分布していてよく、かつ前記構造エレメントはCH2−基により線状に及び/又はCH−基により分枝状に結合している]
による構造エレメントを有する、0〜75mgKOH/gのヒドロキシル数、3ppm未満の遊離ホルムアルデヒドの含有量を有するアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂である。
【0025】
本発明の対象は、
A)溶剤なしで、又は水と混合可能な有機溶剤の使用下に、少なくとも1つの塩基触媒ならびに場合により少なくとも1つの相間移動触媒の存在で、少なくとも1つのケトンと少なくとも1つのアルデヒドの縮合によりベース樹脂を製造し、かつ引き続き
B)50〜250バールの間、有利には75〜225バールの間、特に有利には75〜200バールの間の圧力、かつ150〜250℃の間、有利には150〜225℃の間、特に有利には175〜220℃の温度で、触媒の存在で、溶融物中又は適切な溶剤の溶液中、水素でケトン−アルデヒド樹脂(A)のカルボニル基と芳香族基を連続的、半連続的又は非連続的に水素化すること
により得られる、実質的に式II
【化3】

[式中、
R=6〜14個の炭素原子を有する芳香族、6〜14個の炭素原子を有する脂環式であり、その際、芳香族構造エレメントの割合は10mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂、有利には5mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂(その都度使用されるアルキルアリールケトンに対して)であり、
R’=H、CH2OHであり、
k=0〜6、有利には0〜4、特に有利には0〜3であり、
m=2〜18、有利には2〜15、特に有利には2〜12であり、
l=0〜0.35、有利には0〜0.30であり、その際、
k+l+mの合計は2〜24の間、有利には2〜19の間、特に有利には2〜15であり、
m/kの比は>5、有利には>7.5であり、かつ
3つの構造エレメントは交互に又はランダムに分布していてよく、かつ前記構造エレメントはCH2−基により線状に及び/又はCH−基により分枝状に結合している]
による構造エレメントを有する、0〜75mgKOH/gのヒドロキシル数、3ppm未満の遊離ホルムアルデヒドの含有量を有するアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂である。
【0026】
本発明の有利な対象は、アルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂であり、その際、これは以下の特性を有する:
・遊離ホルムアルデヒドの含有量は、3ppm未満、有利には2.5ppm未満、特に有利には2.0ppm未満であり、
・結晶化可能な化合物の含有量は、3質量%未満、有利には2質量%未満、特に有利には1質量%未満であり、
・カルボニル数は、0〜20mgKOH/gの間、有利には0〜18mgKOH/gの間、特に有利には0〜15mgKOH/gの間であり、
・ヒドロキシル数は、0〜75mgKOH/gの間、有利には0〜60mgKOH/gの間、特に有利には0〜50mgKOH/gの間であり、
・芳香族構造エレメントの割合は、10mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂、有利には5mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂(アルキルアリールケトンに対して)であり、
・ガードナー色数(エチルアセテート中50質量%)は、1.5未満、有利には1.0未満、特に有利には0.75未満であり、
・樹脂を熱処理(24時間、150℃)した後のガードナー色数(エチルアセテート中50質量%)は、2.0未満、有利には1.5未満、特に有利には1.0未満であり、
・樹脂の多分散度(Mw/Mn)は、1.35〜1.7の間、特に有利には1.4〜1.6の間であり、
・Isopar H中40質量%の溶液粘度は、1000〜15000mPa・sの間、特に有利には3000〜10000mPa・sの間であり、
・融点/溶融範囲は、25〜150℃の間、有利には30〜125℃の間、特に有利には35〜100℃の間であり、
・150℃で24時間にわたり温度処理した後の不揮発性成分の含有量は、97.0質量%以上、有利には97.5質量%以上であり、かつ
・溶解度は、n−ヘキサン、テストベンジン及びIsopar H中10%濃度及び50%濃度で与えられる。
【0027】
この場合に、本発明によるカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂の特性は、上記の値の範囲内であらゆる可能なバリエーションをとる。例として挙げられるのは:75mgKOH/gのヒドロキシル数−上限−かつ2ppm未満の遊離ホルムアルデヒドの含有量−下限−などを有する樹脂。
【0028】
本発明の対象は、実質的に式IIによる構造エレメントを有する、0〜75mgKOH/gのヒドロキシル数、3ppm未満の遊離ホルムアルデヒドの含有量を有するアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂を製造する方法でもあり、該方法は
A)溶剤なしで、又は水と混合可能な有機溶剤の使用下に、少なくとも1つの塩基触媒ならびに場合により少なくとも1つの相間移動触媒の存在で、少なくとも1つのケトンと少なくとも1つのアルデヒドの縮合によりベース樹脂を製造し、かつ引き続き
B)50〜250バールの間、有利には75〜225バールの間、特に有利には75〜200バールの間の圧力で、かつ150〜250℃の間、有利には150〜225℃の間、特に有利には175〜220℃の間の温度で、触媒の存在で、溶融物中又は適切な溶剤の溶液中、水素でケトン−アルデヒド樹脂(A)のカルボニル基と芳香族基を連続的、半連続的又は非連続的に水素化すること
に特徴付けられる。
【0029】
本発明による方法により、健康を阻害するホルムアルデヒドの含有量を著しく減少できる。ホルムアルデヒド不含とは、本発明によるカルボニル水素化ケトン−アルデヒド樹脂が3ppm未満、有利には2.5ppm未満、特に有利には2.0ppm未満の遊離ホルムアルデヒドの含有量を有することを意味する。
【0030】
本発明による方法により、結晶化可能な化合物の形成は広範囲に阻害される。本発明による生成物の結晶化可能な化合物の含有量は3質量%未満、有利には2質量%未満、特に有利には1質量%未満である。それにより、著しく透き通った本発明による生成物の溶液を製造することができる。これは、特に例えばスプレーノズル又はボールペンの芯の目詰まりを回避するために重要である。
【0031】
僅かな色数と高い耐熱性が結果として僅かなカルボニル数(II-Cからl<0.35)を生じることが見出された。本発明による生成物のカルボニル数は、0〜20mgKOH/gの間、有利には0〜18mgKOH/gの間、特に有利には0〜15mgKOH/gの間であるので、本発明による生成物のガードナー色数(エチルアセテート中50質量%濃度)は、1.5未満、有利には1.0未満、特に有利には0.75未満であり、本発明による生成物を熱処理(24時間、150℃)した後のガードナー色数(エチルアセテート中50質量%濃度)は、2.0未満、有利には1.5未満、特に有利には1.0未満である。
【0032】
非極性溶剤中では出来るだけ良好な溶解度が望ましい。それというのも、それにより例えばポリエチレン、ポリプロピレン、天然樹脂、α−オレフィン及び/又はパラフィンから成るコポリマーのような非極性ポリマーへの相溶性が保証され、ひいては、本発明による生成物が使用される用途において本発明の生成物の利用分野が制限されないからである。本発明による生成物は、例えば、香気物質(例えばキシレン)及び脂肪族溶剤(例えば、テストベンジン、パラフィン又はn−ヘキサン)のような非極性有機溶媒中に10%濃度及び50%濃度溶ける。これは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、α−オレフィン、パラフィンから成るコポリマーのような非極性ポリマー、ワックス、変性ワックス、例えば、官能化及び/又は酸化したポリエチレンワックス及び/又は天然樹脂に対して極めて良好な相溶性を有する。
【0033】
これらの溶解度特性は、式IIによるk、l及びmから成る比の選択により(k=0〜6、有利には0〜4、特に有利には0〜3、m=2〜18、有利には2〜15、特に有利には2〜12、かつl=0〜0.35、有利には0〜0.30、ここでm/k>5、有利には>7.5である)ならびに樹脂中での出来るだけ僅かな割合の芳香族構造により調節できる。それぞれのアルキルアリールケトン(例えば、アセトフェノン)に関して、芳香族構造エレメントの割合は10mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂、有利には5mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂である。
【0034】
出来るだけ僅かな溶液粘度が望ましく、それにより特に必要な有機溶剤の割合は、所望の加工分野で溶液粘度を下げるために経済的理由ならびに自然保護の観点から出来るだけ少ないのがよい。本発明による生成物の溶液粘度は、Isopar H中40%濃度で1000〜15000mPas・s、特に有利には3000〜10000mPas・sである。
【0035】
所定の分子量(Mn)の場合には、溶液粘度が高くなるほど溶解したポリマーは不均一になる(高い多分散度)。本発明による樹脂は、1.35〜1.7の間、特に有利には1.4〜1.6の間の僅かな多分散度(Mw/Mn)を有する。
【0036】
本発明による樹脂は出来るだけ溶融範囲が高いのが望ましく、それにより例えば被覆剤の初期乾燥速度と被覆の硬度が可能な限り高くなる。
【0037】
より高い融点/溶融範囲は、一方では高い分子量(式II中k+l+mから成る合計)により得ることができる。しかし、分子量が高くなるほど、溶液粘度も高くなる。従って、分子量を高くすることなく融点/溶融範囲を高めることが望ましかった。これは、式II中のkを出来るだけ高く有利に選択することにより達成でき、所望の溶解度特性を不利に変化させることがない。しかし、式II中のkが高いと非極性溶剤中の溶解度特性に不利な作用を及ぼすので、m/kの比は5を上回るように選択される。
【0038】
kの値は0〜6、有利には0〜4、特に有利には0〜3であり、mの値は2〜18、有利には2〜15、特に有利には2〜12である。本発明による樹脂は25〜150℃の間、有利には30〜125℃の間、特に有利には35〜100℃の間の融点/溶融範囲を有する。
【0039】
kの値はヒドロキシル数と相関関係にある。ヒドロキシル数が高いほど、融点/溶融範囲は高くなるが、しかし非極性溶剤中の溶解度はより一層悪くなる。理想的には、ヒドロキシル数は0〜75mgKOH/gの間、有利には0〜60mgKOH/gの間、特に有利には50mgKOH/gの間である。
【0040】
k、l及びmの値ならびにこれらの値の合計は、整数、例えば2であることができるが、しかし例えば2.4のような中間の値をとることもできる。
【0041】
ベース樹脂A)を製造するための成分
ケトンとアルデヒド
アルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂を製造するためのケトンとして、アルキル芳香族構造エレメントを有する全てのケトン、特に単独又は混合物の形の全ての芳香族α−メチルケトン、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンの誘導体、例えば、ヒドロキシアセトフェノン、フェニル環に1〜8個の炭素原子を有するアルキル置換されたアセトフェノン誘導体、メトキシアセトフェノンが適切である。これらのケトンは、ケトン成分に対して70〜100mol%本発明による樹脂中に含有されている。
【0042】
アセトフェノンをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂が有利である。
【0043】
さらに更なるCH−酸ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、3,3−ジメチルブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピオフェノン、ヘプタノン−2、ペンタノン−3、シクロペンタノン、シクロドデカノン、2,2,4−と2,4,4−トリメチルシクロペンタノンから成る混合物、シクロヘプタノン及びシクロオクタノン、シクロヘキサノン及び全部で1〜8個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基でアルキル置換された全てのシクロヘキサノン(単独に又は混合物の形)を僅かな程度で混合物の形で上記ケトンに、30mol%まで、有利には15mol%まで(ケトン成分に対して)使用できる。アルキル置換されたシクロヘキサノンの例として、4−t−アミルシクロヘキサノン、2−sec−ブチルシクロヘキサノン、2−t−ブチルシクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン及び3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンが挙げられる。更なるCH−酸ケトンとして、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、2−t−ブチルシクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、3,3−ジメチルブタノンならびにメチルイソブチルケトンが有利である。
【0044】
ホルムアルデヒドの他に、ホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化ケトン−アルデヒド樹脂の更なるアルデヒド成分として、原則的に非分枝又は分枝アルデヒド、例えば、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド及び/又はイソ−ブチルアルデヒド、バレリアンアルデヒドならびにドデカナールが適切である。一般的に、文献中でケトン樹脂合成に適切なものとして挙げられている全てのアルデヒドを使用できる。しかし、ホルムアルデヒドだけを用いるのが有利である。更なるアルデヒドは、アルデヒド成分に対して0〜75mol%の間、有利には0〜50mol%、特に有利には0〜25mol%の間の割合を使用できる。芳香族アルデヒド、例えば、ベンズアルデヒドは同じくホルムアルデヒドとの混合物の形で10mol%まで含有されていてもよい。
【0045】
必要なホルムアルデヒドは通常は約20〜40質量%濃度の水性又はアルコール性(例えばメタノール又はブタノール)溶液として使用される。ホルムアルデヒドの他の使用形は、パラ−ホルムアルデヒド及び/又はトリオキサンのようなホルムアルデヒドを供与する化合物である。
【0046】
カルボニル水素化樹脂用の出発化合物として、アセトフェノン及び場合により、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、2−t−ブチルシクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、3,3−ジメチルブタノン及びメチルイソブチルケトンから選択されるCH−酸ケトンを単独に又は混合物の形で、ならびにホルムアルデヒドがとりわけ有利に使用される。この場合に、種々のケトン−アルデヒド樹脂の混合物を使用することもできる。
【0047】
ケトンとアルデヒド成分のモル比は、1:0.25〜1:15の間、有利には1:0.9〜1:5の間、かつ特に有利には1:0.95〜1:4の間である。
【0048】
カルボニル基含有ベース樹脂A)の製法
例えば、本発明によるカルボニル水素化及び核水素化生成物の分子量と分子量分布、結晶化可能な化合物の含有量又は溶液粘度のような重要な特性は、カルボニル基含有ベース樹脂A)の目標とする合成に直接に関係する。更に、本発明によるカルボニル水素化及び核水素化生成物の色数と遊離ホルムアルデヒドの含有量は、ベース樹脂A)の製造の際に選択される反応条件に決定的に影響される。
【0049】
カルボニル基含有ベース樹脂A)を製造するために、ケトン、又は種々のケトンとホルムアルデヒドの混合物、又はホルムアルデヒドと更なるアルデヒドから成る混合物を、それぞれ少なくとも1つの塩基触媒の存在で反応させる。特に、ホルムアルデヒドを水溶液ならびにその水への溶解度を制限するとケトンとして使用する際に、水と混合可能な有機溶剤を有利に使用できる。とりわけ、これと結合する優れた相混合物ゆえに、反応転化率はより早くかつ完全になる。更に、場合により少なくとも1つの相関移動触媒を更に使用でき、それにより例えばアルカリ化合物の量を減らすことができる。反応が終わった後に、水相が樹脂相から分離される。粗生成物は、樹脂の溶融サンプルが透き通るまで酸性水で洗浄される。次に樹脂は蒸留により乾燥される。
【0050】
ケトンとアルデヒドからベース樹脂を製造する反応は、塩基環境中で実施される。一般的に、文献中でケトン樹脂合成に適切なものとして挙げられている全ての塩基触媒、例えばアルカリ化合物を使用できる。ヒドロキシド、例えば、カチオンNH4、NR4(ここで、R=H、アルキル及び/又はベンジル、Li、Na、有利にはカチオンNH4のヒドロキシド)、NR4(R=H、アルキル及び/又はベンジル、又はNa)が適切である。
【0051】
ケトンとアルデヒドから成るベース樹脂を製造する反応は、助剤の使用下に実施できる。例えばメタノール又はエタノールのようなアルコールが適切である。助剤として、水溶性ケトンを使用し、これを次に樹脂中で反応させることもできる。
【0052】
ベース樹脂A)を精製するために、使用される塩基触媒から樹脂A)を除去しなくてはならない。これは、酸の使用下に水で洗浄することにより簡単に中和を行うことができる。一般的に、中和には全ての酸、例えば、全ての有機酸及び/又は無機酸、またイオン交換体が適切である。しかし、1〜6個の炭素原子を有する有機酸、特に有利には1〜4個の炭素原子を有する有機酸も特に有利である。
【0053】
ケトンとアルデヒドから成るベース樹脂を製造するための重縮合混合物中では、任意に相関移動触媒を付加的に使用することができる。
【0054】
相関移動触媒を使用する際には、一般式(A)
【化4】

[式中、
X:窒素原子又はリン原子であり、
1、R2、R3、R4:同じ又は異なっていてよく、かつ炭素鎖及び/又はフェニル基及び/又はベンジル基中に1〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
Y:(無機)有機酸のアニオン又はヒドロキシドイオンである]
の相関移動触媒0.01〜15質量%(ケトンに対して)が使用される。
【0055】
第四級アンモニウム塩の場合には、炭素鎖及び/又はフェニル基及び/又はベンジル基中に1〜22個の炭素原子を有するアルキル基(R1-4)、特に1〜12個の炭素原子を有するもの及び/又は両方の混合物が有利である。アニオンとして、強い(無機)有機酸、例えば、Cl-、Br-、I-またヒドロキシド、メトキシド又はアセテートのようなものが挙げられる。第四級アンモニウム塩の例は、塩化セチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウム、ヨウ化トリメチルベンジルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム又はヨウ化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウムである。塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化セチルジメチルベンジルアンモニウム及び/又は塩化トリエチルベンジルアンモニウムを使用するのが有利である。
【0056】
四級ホスホニウム塩に関しては、1〜22個の炭素原子を有するR1〜4アルキル基及び/又はフェニル基及び/又はベンジル基が有利である。アニオンとして、強い(無機)有機酸、例えば、Cl-、Br-、I-またヒドロキシド、メトキシド又はアセテートのようなものが該当する。
【0057】
四級ホスホニウム塩として、例えば塩化トリフェニルベンジルホスホニウム又はヨウ化トリフェニルベンジルホスホニウムが該当する。しかし、混合物を使用することもできる。
【0058】
場合により含有される相関移動触媒は、使用されるケトンに対して0.01〜15質量%、有利には0.1〜10.0質量%、特に0.1〜5.0質量%の量で重縮合混合物中で使用される。
【0059】
特に有利な実施態様
特に有利な実施態様では、まずカルボニル基と芳香族含有ベース樹脂A)を製造した。このために、50〜90質量%濃度のメタノール溶液中の10molケトン(1つのケトン又は種々のケトン混合物)、相関移動触媒0〜5質量%及びホルムアルデヒド水溶液1〜5molを装入し、かつ撹拌しながら均質化した。それに続いて、撹拌しながら、苛性ソーダ水溶液0.1〜5molの添加を行った。次に70〜115℃で、撹拌しながらホルムアルデヒド水溶液4〜10molの添加を30〜120分にわたり行った。還流温度で0.5〜5時間撹拌した後に撹拌をやめた。場合により、ほぼ三分の一の運転時間の後にホルムアルデヒド水溶液0.1〜1molを添加してもよい。水相を樹脂相から分離した。樹脂の溶融サンプルが透き通るまで、有機酸の使用下に粗生成物を水で洗浄した。次に蒸留により樹脂を乾燥させた。
【0060】
方法工程B)による本発明による樹脂の製法
ケトンとアルデヒドから成る樹脂を触媒の存在で水素で水素化した。この場合に、ケトン−アルデヒド樹脂のカルボニル基を第二ヒドロキシル基に変換した。反応条件に応じて、ヒドロキシル基の一部がはずれ、その結果メチレン基が生じる。反応条件は、還元されていないカルボニル基の割合を減らさないように選択した。更に、水素化条件の選択により、同時に芳香族構造エレメントを出来るだけ完全に脂環式単位に変換した。
【0061】
図解による説明のために以下の簡単な図式を利用することにする:
【化5】

【0062】
触媒として、水素でのカルボニル基と芳香族基の水素化ならびに遊離ホルムアルデヒドのメタノールへの水素化を接触する全ての化合物を原則的に使用できる。均一触媒又は不均一触媒を使用でき、特に不均一触媒が有利である。
【0063】
本発明によるホルムアルデヒド不含生成物を得るために、ニッケル、銅、銅−クロム、パラジウム、白金、ルテニウム及びロジウムから選択される単体又は混合物の形の金属触媒が特に適切であり、ニッケル触媒、パラジウム触媒及び/又はルテニウム触媒が特に有利である。
【0064】
活性、選択率及び/又は持続時間を高めるために、触媒は更にドーピング金属又は他の変性剤を含有してもよい。一般的なドーピング金属は、例えば、Mo、Fe、Ag、Cr、Ni、V、Ga、In、Bi、Ti、Zr及びMnならびに希土類金属である。一般的な変性剤は、例えば、触媒の酸−塩基特性に影響を与えることができる、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物ならびにリン酸もしくは硫酸ならびにそれらの化合物のようなものである。触媒は、粉末又は成形品の形であることができ、例えば押出物又は圧搾粉を使用できる。完全接触、ラネー型触媒又は担体触媒を用いることもできる。ラネー型及び担体触媒が有利である。有利な担体材料は、例えばケイソウ土、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミノシリケート、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、アルミニウム−ケイ素−混合酸化物、酸化マグネシウム及び活性炭である。活性金属は、当業者に公知の方法により、例えば含浸、噴霧又は沈殿により担体材料上に塗布できる。触媒製造の種類に応じて、例えば乾燥、か焼、成形及び活性化のような当業者に公知の調製工程が重要である。成形には、場合により更なる助剤、例えばグラファイト又はステアリン酸マグネシウムを添加できる。
【0065】
接触水素化は、溶融物中、適切な溶剤の溶液中又は水素化生成物自体の中で"溶剤"として行うことができる。場合により使用される溶剤は、望ましい場合には反応終了後に分離することができる。分離した溶剤はプロセスに戻すことができるが、その際、使用した溶剤に応じて、易揮発性の又は難揮発性の副生成物、例えば、メタノール及び水を完全に又は部分的に取り除くために、更に精製工程が必要であるかもしれない。適切な溶剤は、出発材料も生成物も十分な量で溶かし、かつ選択された水素化条件下で不活性のままであるものである。これは、例えば、アルコール、有利にはn−ブタノール及びイソブタノール、環式エーテル、有利にはテトラヒドロフラン及びジオキサン、アルキルエーテル、芳香族、例えば、キシレン及びエステル、例えば、エチルアセテート及びブチルアセテートである。これらの溶剤の混合物も可能である。溶剤中の樹脂の濃度は、1〜99質量%の間で変化することができ、有利には10〜50質量%の間である。
【0066】
反応器内で出来るだけ僅かな滞留時間で高い転化率を達成するために、比較的に高い圧力が有利である。反応器の全圧は、50〜250バール、有利には75〜225バール、特に有利には75〜200バールである。水素化温度は、使用される水素化触媒による。従って、ロジウム触媒に関しては、40〜75℃、有利には40〜60℃の温度が既に十分であるのに対して、パラジウム、ルテニウム又はニッケル触媒の場合には、より高い温度が必要である。最適な温度は、150〜250℃の間、有利には150〜225℃の間、特に有利には175〜220℃の間である。
【0067】
本発明による樹脂への水素化は、非連続又は連続的な運転様式で行うことができる。半連続的な運転様式も可能であり、その際バッチ反応器中に、連続的に樹脂及び/又は溶剤が添加され、かつ/又は連続的に1つ以上の反応生成物及び/又は溶剤が除去される。
【0068】
触媒の空時収率は、0.05〜4(t)樹脂/触媒(立方メートル)・時、有利には0.1〜2(t)樹脂/触媒(立方メートル)・時である。
【0069】
反応器内の温度経過を制御し、かつ特に最大温度を制限するために当業者に公知の種々の方法が適切である。従って、例えば十分に小さな樹脂濃度の場合には反応器を更に冷却することなく完全に運転でき、その際、反応媒体は遊離エネルギーを完全に吸収し、かつこれにより反応器から対流により出される。更に、例えば中間冷却を有するバンド反応器、ガス冷却を用いる水素循環、冷却生成物の一部の循環(循環反応器)の使用、かつ外部の冷却剤循環を特に管束反応器の場合に使用するのが適切である。
【0070】
カルボニル水素化樹脂を製造するための有利な実施態様I
製造されたカルボニル基含有の芳香族樹脂A)の水素化は、ニッケル、パラジウム及び/又はルテニウムをベースとする触媒を用いて行った。本発明による樹脂の製造に特に適切であるのは、連続的固定床反応器、例えば、細流床の運転様式で動くシャフト炉及び管束反応器内で運転される。この場合に、水素及び水素化すべき樹脂を場合により溶剤中に溶かし、反応器の頭頂部で触媒床上に置く。二者択一的に、水素を向流で下から上へ通すこともできる。反応器を出た反応混合物をフィルター上に通して触媒の残りを除去する。場合により含まれる溶剤は、望ましい場合には、引き続き分離してもよい。
【0071】
水素化の際に放出される反応熱を排出するか、もしくは温度上昇を減らすために、種々の方法が適切である。これは、例えば化学量論的に必要な量よりも多い水素を反応器に供給するガス循環により行うことができる。反応器の末端で流れ出る水素は冷却され、かつ反応器の頭頂部に戻される。
【0072】
管束反応器中では、反応熱の排出は有利には外部の冷却剤循環により行われる。
【0073】
温度調節のために、生成物の一部を反応器の入口に戻すことも適切である(循環反応器)。同じく反応器を出た反応生成物は、更に処理することなく戻すこともできる。しかし、戻す前に更なる後処理工程、例えば、使用した溶剤の一部の分離を予定するのも有利である。生成物は温度を用いて戻し、これと一緒に反応器を出ることができる。しかし、反応熱の少なくとも一部を排出するために、まず冷却することもできる。温度制御に種々の変異形の組合せも可能である。
【0074】
カルボニル水素化樹脂を製造するための有利な実施態様II
製造したカルボニル基含有の芳香族樹脂A)の水素化は、バッチ反応器(オートクレーブ)内で断続的に行うことができる。ここでも、ニッケル、パラジウム及び/又はルテニウムをベースとする触媒を使用するのが有利である。
【0075】
水素化すべき樹脂を場合により溶剤に溶かし、反応器に加えた。触媒を粉末の形で添加し、かつ当業者に公知の適した方法により反応媒体中に懸濁させた。特に適切な反応器のタイプは、例えば撹拌釜反応器、バブルカラム、クヴァエルナー・バス(Kvaerner−Buss)社製ループ反応器及びビアッチ反応器である。全体の圧力は、水素の添加により調節される。この場合に、反応の進行又は生成物の品質を提示した水素量により調節することもできる。従って、例えば特に反応を開始するに当たり、反応の発熱による著しい熱の発生を阻止するために再調整した水素量を制限することが有利である。
【0076】
断続的な運転で触媒を粉末として反応媒体に懸濁させるのではなく、固定床反応器に通常の例えば押出物、ペレット又はタブレットのような成形品を用いて運転することもできる。この場合には、場合により溶剤に溶かした水素化すべき樹脂を、所望の水素化度が達成されるまで固定床触媒上に通すことが有利である。固定床触媒は、別々の反応管中に置くこともできるが、しかし金属バスケット又は他の適切な容器の形で反応器内に直接あってもよい。
【0077】
粉末触媒又は固定床触媒が用いられるかどうかとは無関係に、反応器から排出される反応混合物は、触媒の残りを除去するためにフィルター上に通される。場合により含まれる溶剤は、望ましい場合に引き続き分離される。
【0078】
分析法
遊離ホルムアルデヒドの含有量の測定
ホルムアルデヒドの含有量は、HPLCを用いるルチジン法により後カラム分配により算出される。
【0079】
ヒドロキシル数の決定
決定は、DIN 53240-2に倣って"ヒドロキシル数の決定"により行った。この場合に、3時間のアセチル化時間が正確に維持されていることに留意すべきである。
【0080】
カルボキシ数の決定
決定は、NaCl−キュベット内のTHF中の2−エチルヘキサノンで較正した後にFT−IR−スペクトロスコピーにより行った。
【0081】
水素化されていない芳香族構造エレメントの含有量の決定
決定は、NaCl−キュベット内のTHF中でその都度使用したアルキルアリールケトン(例えばアセトフェノン)に対するFT−IR−スペクトルスコピーにより行った。
【0082】
不揮発性部分の含有量(nfA)の決定
不揮発性部分の含有量は二重測定からの平均値として得られた。適切なアルミニウム−カップ(容器の質量 m1)内で、分析計量器上に約2gのサンプルを量り入れた(物質の質量m2)。引き続き、アルミニウムカップを循環空気加温箱中に150℃で24時間置いた。このカップを室温まで冷却し、かつ0.1mgまで正確に計り直した(m3)。
【0083】
不揮発性部分(nfA)は以下の方程式により算出した:
【数1】

【0084】
ガードナー色数の決定
ガードナー色数の決定は、DIN ISO 4630に倣ってエチルアセテート中、樹脂の50質量%濃度の溶液中で行った。
【0085】
この方法で同じく熱負荷の後に色数を算出した。このために、樹脂をまず150℃で24時間空気雰囲気に貯蔵した(不揮発性部分の測定を参照)。それに続いて、DIN ISO 4630に倣ってエチルアセテート中の熱負荷した樹脂の50%濃度溶液中でガードナー色数の決定を行った。
【0086】
溶液粘度の決定
溶液粘度を決定するために、樹脂を40質量%濃度でIsopar Hに溶かした。粘度の測定は、平板/円錐−回転粘度計(1/40s)を用いて20℃で行った。
【0087】
多分散度の決定
本発明による樹脂の分子量分布の測定は、基準としてのポリスチレンに対してテトラヒドロフラン中のゲル浸透クロマトグラフィーを用いて行った。多分散度(Mw/Mn)は、重量平均(Mw):数平均(Mn)の比から算出した。
【0088】
溶融範囲の決定
DIN 53181に倣い、キャピラル融点−測定容器(Buechi B-545)を用いて測定を行った。
【0089】
結晶化可能な化合物の含有量の決定
フェノキシエタノール中の水素化樹脂の溶液を、結晶形成するまで貯蔵した。結晶をエタノールで分離して希釈し、膜フィルター上で単離し、かつ計量した。
【0090】
溶解度の決定
Isopar H、キシレン、テストベンジン及びn−ヘキサン中の樹脂の溶液を製造した。このために、樹脂10%濃度と50%濃度を、それぞれ溶剤中に撹拌しながら溶かし、かつ溶液の透明度を視覚的に評価した。
【0091】
APAOへの相溶性の決定
樹脂とアモルファスポリ−α−オレフィン(Vestoplast 750(Degussa AG))を1:1の割合で撹拌しながらキシレン中に50%濃度で溶かし、かつ溶液の透明度を視覚的に評価した。
【0092】
コポリマー分布の算定
k、l及びmの値を算定するために以下のように行った。
【0093】
算定例(具体的に示すために整数を使用した):
【化6】

仮定:分子量(Mn)は1000g/mol、OH数は150mgKOH/g、カルボニル数は10mgKOH/gであるとする。
【0094】
300mgKOH/g のOH数から(150/56110*1000)で、1000g/mol当たり2.7OH−基が得られる。これは、k=2.7であることを意味する。
【0095】
10mgKOH/g のC=O数から(10/56110*1000)で、1000g/mol当たり0.2C=O基が得られる。これは、l=0.2であることを意味する。
【0096】
mの算定:(1000g/mol−(5.35mol*139g/mol)−(0.18mol*137g/mol))/123g/mol=4.9。
【0097】
従ってk+m+lから成る合計は7.8である。
【0098】
以下の実施例は本発明を更に説明するものであるが、しかしそれらの使用範囲に限定されるわけではない:
実施例:
本発明によらない比較例
従来技術に最もよく記載されている文献は、DE3334631A1である。ここで使用したアセトフェノン/ホルムアルデヒド樹脂はDE 892975の例2により得たものである。
【0099】
例A:DE 892975の例2の再調整
アセトフェノン1200gに50質量%濃度の苛性カリ溶液240gとメタノール400gを添加した後に、30質量%濃度のホルムアルデヒド溶液1000gを強く撹拌しながら2時間の経過で添加した。この場合に、温度が90℃まで高まった。この温度を10時間保持した。これを硫酸で酸性化し、かつ生じた縮合生成物を熱湯で洗浄し、溶融し、かつ真空で脱水した。
【0100】
黄色い樹脂1260gが得られた。この樹脂は透き通っていて、かつ脆く、67℃の融点を有した。ガードナー色数は3.8(エチルアセテート中50質量%濃度)であった。例えば、ブチルアセテート及びエチルアセテートのようなアセテート中、トルエン及びキシレンのような芳香族に可溶であった。エタノールには溶けなかった。ホルムアルデヒド含有量は255ppmであった。
【0101】
例B:DE3334631A1の例3の再調整
例Aからの樹脂を温めながらイソブタノール中に30質量%濃度溶かした。水素化は、市販のニッケル触媒(Engelhard Ni 5126T1/8)400mlを充填しておいた連続的に運転する固定床反応器中で行った。この触媒はDE3334631で使用されている触媒"Harshaw Ni 5124"と同じEngelhard社の指示によるものであった。300バール及び180℃で毎時反応混合物250mlを反応器の上から下に通した(細流床の運転様式)。圧力を水素の再調整により一定に保持した。
【0102】
例C:DE3334631A1の例4の再調整
例Aからの樹脂300gを温めながらイソブタノール700gに溶かした。それに続いて、300バール及び200℃で、市販のPd−触媒(Al2O3上に0.5質量%Pd)90gを充填しておいた触媒バスケットと一緒にオートクレーブ(Parr社)中で水素化を行った。4時間後にフィルター上の反応混合物を反応器から取り出した。
【0103】
本発明による実施例
本発明による例I)
更に水素化するためのアセトフェノンとホルムアルデヒドをベースとするベース樹脂の製造
アセトフェノン1200g、メタノール220g、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム0.3g及び30質量%濃度のホルムアルデヒド水溶液360gを装入し、かつ撹拌しながら均質化した。引き続き、撹拌しながら25質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液32gの添加を行った。次に80〜85℃で撹拌しながら30質量%濃度のホルムアルデヒド水溶液655gを90分間にわたり添加した。還流温度で5時間撹拌した後に、撹拌を止め、かつ水相を樹脂相から分離した。樹脂の溶融サンプルが透き通るまで粗生成物を酢酸水で洗浄した。次に蒸留により樹脂を乾燥させた。
【0104】
淡黄色の樹脂1270gが得られた。樹脂は透き通っていて、かつ脆く、72℃の融点を有した。ガードナー色数は0.8(エチルアセテート中50質量%濃度)であった。これは例えば、ブチルアセテート及びエチルアセテートのようなアセテート中、トルエン及びキシレンのような芳香族に可溶であった。エタノールには溶けなかった。ホルムアルデヒド含有量は35ppmであった。
例I)からのアセトフェノンとホルムアルデヒドをベースとする樹脂の水素化
本発明による例1:(試験HDK1 12.〜13.12.2005)
例I)からの樹脂を温めながらテトラヒドロフラン中に30質量%濃度溶かした。市販のラネーニッケル固定床触媒400mlを充填しておいた連続的に運転する固定床反応器中で水素化を行った。150バール及び200℃で毎時反応混合物360mlを反応器の上から下に通した(細流床の運転様式)。圧力を水素の再調整により一定に保持した。
【0105】
本発明による例2:(試験HDK1 13.〜16.02.2005)
例I)からの樹脂を温めながらテトラヒドロフラン中に30質量%濃度溶かした。市販のラネーニッケル固定床触媒400mlを充填しておいた連続的に運転する固定床反応器中で水素化を行った。150バール及び210℃で毎時反応混合物240mlを反応器の上から下に通した(細流床の運転様式)。圧力を水素の再調整により一定に保持した。
【0106】
本発明による例3:(試験HDK1 16.〜19.02.2005)
例I)からの樹脂を温めながらテトラヒドロフラン中に30質量%濃度溶かした。市販のラネーニッケル固定床触媒400mlを充填しておいた連続的に運転する固定床反応器中で水素化を行った。150バール及び200℃で毎時反応混合物70mlを反応器の上から下に通した(細流床の運転様式)。圧力を水素の再調整により一定に保持した。
【0107】
例1〜3からの樹脂溶液と比較例BとCを真空中で溶剤から遊離した。得られた樹脂の特性は表1に挙げてある。
【0108】
【表1】

【0109】
本発明による樹脂1〜3は、本発明によらない例BとCの樹脂と比べて、著しく僅かな遊離ホルムアルデヒドと結晶化可能な化合物の含有量を有した。僅かなカルボニル数に相応して、色数ならびに熱負荷後の色数は少なかった。本発明による樹脂1〜3の溶液粘度は、本発明によらない例BとCの樹脂と比べて著しく低かった。これは場合により、本発明によらない樹脂のより高い多分散度で根拠づけることができるかもしれない。
【0110】
本発明による実施例1〜3の樹脂は、Isopar H、テストベンジン、キシレン及びn−ヘキサン中に10質量%と50質量%濃度で明らかに溶けている。それに対して、比較例BとCの樹脂は、Isopar H及びn−ヘキサン中に10質量%の固体割合の濃度では、もはや明らかに溶けていない。これは、場合によっては高い割合の芳香族ならびにm/kの低い比率(双方の場合に約1)に起因するのかもしれない。そのうえ、比較例BとCの樹脂のアモルファスポリ−α−オレフィンへの相溶性も制限されている。それに対して、本発明による例1〜3の樹脂は、これに相溶性である。
【0111】
本発明による樹脂の得られた全ての特性が水素化条件に起因しているわけではないので、出発樹脂の製造プロセスが得られる水素化樹脂の特性に明らかに基本的な影響を与えている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に式II
【化1】

[式中、
R=6〜14個の炭素原子を有する芳香族、6〜14個の炭素原子を有する脂環式であり、その際、芳香族構造エレメントの割合は10mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂、有利には5mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂(その都度使用されるアルキルアリールケトンに対して)であり、
R’=H、CH2OHであり、
k=0〜6であり、
m=2〜18であり、
l=0〜0.35であり、その際、
k+l+mの合計は2〜24の間であり、
m/kの比は>5であり、かつ
3つの構造エレメントは交互に又はランダムに分布していてよく、かつ前記構造エレメントはCH2−基により線状に及び/又はCH−基により分枝状に結合している]
による構造エレメントを有する、0〜75mgKOH/gのヒドロキシル数、3ppm未満の遊離ホルムアルデヒドの含有量を有するアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項2】
実質的に式II
【化2】

[式中、
R=6〜14個の炭素原子を有する芳香族、6〜14個の炭素原子を有する脂環式であり、その際、芳香族構造エレメントの割合は10mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂、有利には5mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂(その都度使用されるアルキルアリールケトンに対して)であり、
R’=H、CH2OHであり、
k=0〜6であり、
m=2〜18であり、
l=0〜0.35であり、その際、
k+l+mの合計は2〜24の間であり、
m/kの比は>5であり、かつ
3つの構造エレメントは交互に又はランダムに分布していてよく、かつ前記構造エレメントはCH2−基により線状に及び/又はCH−基により分枝状に結合している]
による構造エレメントを有する、0〜75mgKOH/gのヒドロキシル数、3ppm未満の遊離ホルムアルデヒドの含有量を有するアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂であって、
A)溶剤なしで、又は水と混合可能な有機溶剤の使用下に、少なくとも1つの塩基触媒ならびに場合により少なくとも1つの相間移動触媒の存在で、少なくとも1つのケトンと少なくとも1つのアルデヒドの縮合によりベース樹脂を製造し、かつ引き続き
B)50〜250バールの間の圧力、かつ150〜250℃の間の温度で、触媒の存在で、溶融物中又は適切な溶剤の溶液中、水素でケトン−アルデヒド樹脂(A)のカルボニル基と芳香族基を連続的、半連続的又は非連続的に水素化すること
により得られる、ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項3】
遊離ホルムアルデヒドの含有量は3ppm未満、有利には2.5ppm未満、特に有利には2.0ppm未満である、請求項1又は2に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項4】
結晶化可能な化合物の含有量は、3質量%未満、有利には2質量%未満、特に有利には1質量%未満である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項5】
カルボニル数は、0〜20mgKOH/gの間、有利には0〜18mgKOH/gの間、特に有利には0〜15mgKOH/gの間である、請求項1から4までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項6】
ヒドロキシル数は、0〜75mgKOH/gの間、有利には0〜60mgKOH/gの間、特に有利には0〜50mgKOH/gの間である、請求項1から5までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項7】
芳香族構造エレメントの割合は、10mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂、有利には5mg未満のアルキルアリールケトン/g樹脂(その都度使用したアルキルアリールケトンに対して)である、請求項1から6までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項8】
ガードナー色数(エチルアセテート中50質量%濃度)は、1.5未満、有利には1.0未満、特に有利には0.75未満である、請求項1から7までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項9】
樹脂を熱負荷(24時間、150℃)した後のガードナー色数(エチルアセテート中50質量%濃度)は、2.0未満、有利には1.5未満、特に有利には1.0未満である、請求項1から8までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項10】
樹脂の多分散度(Mw/Mn)は、1.35〜1.7の間、特に有利には1.4〜1.6の間である、請求項1から9までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項11】
Isopar H中40%濃度の溶液粘度は、1000〜15000mPa・sの間、特に有利には3000〜10000mPas・sの間である、請求項1から10までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項12】
融点/溶融範囲は、25〜150℃の間、有利には30〜125℃の間、特に有利には35〜100℃の間である、請求項1から11までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項13】
150℃で24時間にわたる温度処理後の不揮発性成分の含有量は、97.0質量%以上、有利には97.5質量%以上である、請求項1から12までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項14】
樹脂の溶解度は、n−ヘキサン、テストベンジン及びIsopar H中10〜50質量%濃度で与えられる、請求項1から13までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項15】
芳香族α−メチルケトンを含有している、請求項1から14までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項16】
アセトフェノン、アセトフェノンの誘導体、例えば、ヒドロキシアセトフェノン、フェニル環に1〜8個の炭素原子を有するアルキル置換されたアセトフェノン誘導体、メトキシアセトフェノンを単独に又は混合物の形で含有している、請求項1から15までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項17】
ケトン成分に対して、アセトン、メチルエチルケトン、3,3−ジメチルブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピオフェノン、ヘプタノン−2、ペンタノン−3、シクロペンタノン、シクロドデカノン、2,2,4−と2,4,4−トリメチルシクロペンタノンの混合物、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロヘキサノン及び全部で1〜8個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基でアルキル置換された全てのシクロヘキサノン(単独に又は混合物の形)から選択される更なるCH−酸ケトンを、混合物の形でアルキル芳香族ケトンに30mol%まで、有利には15mol%まで含有している、請求項1から16までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項18】
アルキル置換されたシクロヘキサノンとして、4−t−アミルシクロヘキサノン、2−sec−ブチルシクロヘキサノン、2−t−ブチルシクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン及び/又は3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンを含有している、請求項1から17までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項19】
ケトン−アルデヒド樹脂を製造するための出発化合物として、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒドを供与する化合物を使用する、請求項1から18までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項20】
ケトン−アルデヒド樹脂を製造するための出発化合物として、ホルムアルデヒド及び/又はパラ−ホルムアルデヒド及び/又はトリオキサンを使用する、請求項1から19までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項21】
ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒドを供与する化合物の他に、ケトン−アルデヒド樹脂を製造するための出発化合物として、アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソ−ブチルアルデヒド、バレリアンアルデヒド、ドデカナールから選択されるアルデヒドを単独に又は混合物の形で、アルデヒド成分に対して0〜75mol%、有利には0〜50mol%、特に有利には0〜25mol%の割合で使用する、請求項1から20までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項22】
ケトン−アルデヒド樹脂を製造するための出発化合物として、アセトフェノン及び場合によりシクロヘキサノン、メチルエチルケトン、2−t−ブチルシクロヘキサノン、4−t−ブチルシクロヘキサノン及び3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンから選択される単独に又は混合物の形のC H−酸ケトンならびにホルムアルデヒドを使用する、請求項1から21までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項23】
ケトン成分とアルデヒド成分の間のモル比は、1:0.25〜1:15の間、有利には1:0.9〜1:5の間かつ特に有利には1:0.95〜1:4の間である、請求項1から22までのいずれか1項に記載のアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂。
【請求項24】
式IIによる構造エレメントを実質的に含有する、0〜75mgKOH/gのヒドロキシル数、3ppm未満の遊離ホルムアルデヒドの含有量を有するアルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂を製造する方法において、
A)溶剤なしで、又は水と混合可能な有機溶剤の使用下に、少なくとも1つの塩基触媒ならびに場合により少なくとも1つの相間移動触媒の存在で、少なくとも1つのケトンと少なくとも1つのアルデヒドの縮合によりベース樹脂を製造し、かつ引き続き
B)50〜250バールの間の圧力、かつ150〜250℃の間の温度で、触媒の存在で、溶融物中又は適切な溶剤の溶液中、水素でケトン−アルデヒド樹脂(A)のカルボニル基と芳香族基を連続的、半連続的又は非連続的に水素化すること
を特徴とする、アルキルアリールケトンとホルムアルデヒドをベースとするカルボニル水素化及び核水素化ケトン−アルデヒド樹脂を製造する方法。
【請求項25】
反応A)は塩基環境で実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
カルボニル基含有ケトンーアルデヒド樹脂A)を製造するために、塩基触媒として、カチオンNH4、NR4(ここで、R=H、アルキル及び/又はベンジル、Li又はNa)のヒドロキシド、有利にはカチオンNH4、NR4(R=H、アルキル及び/又はベンジル、又はNa)のヒドロキシドを使用する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
助剤の使用下に、カルボニル基含有ケトンーアルデヒド樹脂A)の製造を行う、請求項24から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
水と混合可能なアルコール及び/又はケトンから選択される助剤の使用下に、カルボニル基含有ケトンーアルデヒド樹脂A)の製造を行う、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
カルボニル基含有ケトンーアルデヒド樹脂A)を製造するために、使用されるケトンに対して更に相関移動触媒を0.01〜15質量%、有利には0.1〜10.0質量%、特に0.1〜5.0質量%の量で使用する、請求項24から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
第四級アンモニウム塩として、塩化セチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム及び/又は塩化トリエチルベンジルアンモニウムならびに第四級ホスホニウム塩として、塩化トリフェニルベンジルホスホニウム及び/又はヨウ化トリフェニルベンジルホスホニウムを使用する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ベース樹脂A)を精製するために、酸の使用下に水で洗浄する、請求項24から30までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ベース樹脂A)を精製するために、1〜6個、有利には1〜4個の炭素原子を有する有機酸の使用下に水で洗浄する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
カルボニル基含有ベース樹脂A)を水素化するために均一又は不均一触媒を使用する、請求項24から32までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
金属触媒を水素化に使用する、請求項24から33までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
金属ニッケル、銅、銅−クロム、パラジウム、白金、ルテニウム及びロジウムを単独に又は混合物の形で、有利にはニッケル、パラジウム及びルテニウムを単独に又は混合物の形で主要金属として含有している金属触媒を水素化に使用する、請求項24から34までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
金属触媒は更にドーピング金属及び/又は他の変性剤を含有している、請求項24から35までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
更に、Mo、Fe、Ag、Cr、Ni、V、Ga、In、Bi、Ti、Zr及びMnならびに希土類金属から選択されるドーピング金属を含有している、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属及び/又はそれらの化合物及び/又はリン酸及び/又は硫酸ならびにそれらの化合物から選択される変性剤を含有している、請求項24から37までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
触媒は粉末又は成形品の形で使用される、請求項24から38までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
触媒は完全触媒、ラネー型の触媒又は担体触媒として使用される、請求項24から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
担体材料として、ケイソウ土、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミノシリケート、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、アルミニウム−ケイ素−混合酸化物、酸化マグネシウム及び活性炭が使用される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
接触水素化は、溶融物中、適切な溶剤の溶液又は水素化生成物自体の中で"溶剤"として実施される、請求項24から41までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
溶剤として、n−ブタノール、イソブタノール、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、ブチルアセテート、キシレン、ジオキサン、ジエチルエーテル及び/又はジエチレングリコールを使用する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
場合により含有される溶液を反応終了後に分離し、かつ循環に戻す、請求項42及び43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
請求項1から23までのいずれか1項に記載の化合物を使用する、請求項24から44までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
触媒の空時収率は、0.05〜4(t)樹脂/触媒(立方メートル)・時、有利には0.1〜2(t)樹脂/触媒(立方メートル)・時である、請求項24から45までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
水素化は非連続的、連続的又は半連続的に行われる、請求項24から46までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
水素化は連続的に行われる、請求項24から47までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
固定床反応器中で水素化される、請求項24から48までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
水素化はシャフト炉又は管束反応器内で行われる、請求項24から49までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
水素化は、細流床の運転様式で行われる、請求項24から50までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
水素及び水素化すべき樹脂を場合により溶剤に溶かし、反応器の頭頂部で触媒床に供給する、請求項24から51までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
水素を向流で下から上に通す、請求項24から52までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
水素化は非連続的に行われる、請求項24から53までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
水素化はバッチ反応器(オートクレーブ)内で行われる、請求項24から54までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
水素化は撹拌釜反応器、バブルカラム、クヴァエルナー・バス社製−ループ反応器及びビアッチ反応器内で行われる、請求項24から55までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
カルボニル基含有ベース樹脂A)を以下:
・必要に応じて50〜90質量%濃度のメタノール溶液中のケトン又は種々のケトンの混合物10mol(又は数倍)、相関移動触媒0〜5質量%及びホルムアルデヒド水溶液1〜5mol(又は数倍)を撹拌しながら装入し、かつ均質化し、
・撹拌しながら、苛性ソーダ水溶液0.1〜5mol(又は数倍)を添加し、
・70〜115℃で、撹拌しながらホルムアルデヒド水溶液4〜10mol(又は数倍)を30〜120分間にわたり添加し、
・還流温度で更に0.5〜5時間撹拌した後に、撹拌を止め、その際、場合により、ほぼ三分の一の運転時間の後にホルムアルデヒド水溶液0.1〜1mol(又は数倍)を更に添加してもよく、
・樹脂相から水相を分離し、
・樹脂の溶融サンプルが透き通るまで、有機酸の使用下に粗生成物を水で洗浄し、かつ
・最後に蒸留により樹脂を乾燥させる
ことにより初めに製造する、請求項24から56までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−540027(P2009−540027A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513636(P2009−513636)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054643
【国際公開番号】WO2007/141114
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】