説明

像振れ補正装置および光学機器

【課題】 光軸方向の厚さを小型化する。
【解決手段】 振れ補正手段101を保持する可動部材103と、固定部材102に対し光軸と直交する第1の方向に移動可能に支持され、かつ可動部材を光軸と直交し第1の方向とは異なる第2の方向に移動可能に支持する案内部材104と、案内部材を、固定部材に対して転動により案内する第1の転動部材105と、可動部材を、案内部材に対して転動により案内する第2の転動部材と、案内部材に第1、第2の転動部材を転動可能に接触させる力を発生する第1および第2の付勢手段と、可動部材を移動させる駆動手段とを有し、第1の転動部材と第2の転動部材は、案内部材の同一面側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器に搭載される像振れ補正装置および光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、一般的な防振システムについて、図4を用いて説明する。図4は、図示矢印461方向のカメラ縦振れ461p及びカメラ横振れ461yに起因する像振れを抑制するシステムを想定している。
【0003】
図4のうち、462は撮影光学系を有するレンズ鏡筒、463p,463yは各々カメラ縦振れ角変位、カメラ横振れ角変位を検出する角変位検出装置で、それぞれの角変位検出方向を464p,464yで示してある。465p,465yは演算回路であり、角変位検出装置463p,463yからの信号を演算して像振れ補正装置400の駆動目標信号に変換する。そして、この信号により像振れ補正装置400を駆動させて、像面469での安定を確保する。467p,467yは、各々像振れ補正装置400の駆動部であり、468p,468yは補正レンズ位置検出センサである。
【0004】
次に、従来の像振れ補正装置について、図5および図6を用いて説明する。図5は従来の像振れ補正装置の構造を示す分解斜視図であり、図6は図5を組み立てた後の該像振れ補正装置を、光軸に平行に切断した模式図である。
【0005】
一般的に、像振れ補正装置は、補正レンズを保持する可動部材を、カメラを横方向に振る方向(以下ヨー方向と記す)と縦方向に振る方向(以下ピッチ方向と記す)それぞれ独立にしかも光軸方向の移動を生じずに摩擦無く移動可能に支持する必要がある。
【0006】
この従来の像振れ補正装置は、補正レンズ301、固定地板302、可動鏡筒303、案内部材304、第1の転動ボール305、第1の転動受け部材306および307、第2の転動ボール308、第2の転動受け部材309および310を有する。また、付勢部材312を有する。なお、転動ボール305および308は、転がり抵抗を低減するために硬い材質であることが望ましい。また様々な部品との位置決め部分が設けられた固定地板302と可動鏡筒303は、複雑形状になるために、樹脂成型によって製造するのが最も適当である。
【0007】
一方、補正レンズ301の重量が重くなるなど、可動鏡筒303の負荷が増えると、転動ボール305、308と接触する箇所には大きな圧力が発生する。モールド樹脂と転動ボール305、308を接触させる構造では、この圧力によって変形、磨耗してしまう恐れがある。したがって、モールド部材である可動鏡筒303、固定地板302には、転動ボール305、308を受けるための転動受け部材306、307、309、310をそれぞれ取り付ける必要がある。また、転動受け部材306、307、309、310は、ステンレス等の硬い材料が用いられ、プレス成型によって製造するのが適当である。
【0008】
一方、この像振れ補正装置は、固定地板302に設けられた取り付け部によって、他のレンズ群や、フィルムやCCDなどの撮像部材を支持する図示しない鏡筒部材に取り付けられる。したがって、固定地板302と不図示の鏡筒部材との間の光軸方向位置及び傾きを正確にすることで、他のレンズ群や撮像部材との位置関係を高精度に行うことができる。
【0009】
また、特許文献1では、固定部材と、レンズを保持する可動部材との間に、ヨー方向およびピッチ方向に伸びるボール保持部を有する案内部材を設けていた。これにより可動部材は、回転方向への移動が規制されるため、ヨー方向およびピッチ方向へ所望の量だけ精度よく移動させることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−007051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図5,6に開示した従来の像振れ補正装置では、固定地板302と補正レンズ301との間に、第1の転動受け部材306、307、第1の転動ボール305、案内部材304、第2の転動ボール308、第2の転動受け部材309,310と、多くの部品を介している。そのため、図5,6に開示した従来の像振れ補正装置や特許文献1で開示されている像振れ補正装置では、光軸方向に部品が重なるため、装置全体の薄型化が難しいという問題があった。
【0012】
(発明の目的)
本発明の目的は、光軸方向の厚さを薄型化した像振れ補正装置および光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の像振れ補正装置は、固定部材と、振れ補正手段を保持し、光軸と直交する方向に移動可能な可動部材と、前記固定部材に対し光軸と直交する第1の方向に移動可能に支持され、かつ前記可動部材を光軸と直交し第1の方向とは異なる第2の方向に移動可能に支持する案内部材と、前記案内部材を、前記固定部材に対して前記第1の方向に転動により案内する第1の転動部材と、前記可動部材を、前記案内部材に対して前記第2の方向に転動により案内する第2の転動部材と、前記案内部材に前記第1の転動部材を転動可能に接触させる力を発生する第1の付勢手段と、前記案内部材に前記第2の転動部材を転動可能に接触させる力を発生する第2の付勢手段と、前記可動部材を前記第1の方向および前記第2の方向へ移動させる駆動手段とを有し、前記第1の転動部材と前記第2の転動部材は、前記案内部材の同一面側に配置されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光軸方向の厚さを薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例である像振れ補正装置の部品構成を示す分解斜視図である。
【図2】実施例の組立後の状態を示す正面図である。
【図3】実施例の光軸に平行に切断した状態を示す模式図である。
【図4】一般的な防振システムを示す斜視図である。
【図5】従来例の構造を示す分解斜視図である。
【図6】従来例の光軸に平行に切断した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に記載される通りである。
【実施例】
【0017】
図1ないし図3を参照して、本実施例である像振れ補正装置100の構成について説明する。
【0018】
本実施例における像振れ補正装置100は、振れ補正手段である補正レンズ101、固定部材である固定地板102、可動部材である可動鏡筒103、案内部材104を有する。また、第1の転動ボール105(1051、1052、1053)、第1の転動受け部材106、第2の転動ボール107(1071、1072、1073)、第2の転動受け部材108、第1の付勢磁石109、第2の付勢磁石110を有する。また、第1のヨーク111、第2のヨーク112、ピッチマグネット113、ヨーマグネット114、ピッチコイル115、ヨーコイル116を有する。第1および第2の転動部材として第1および第2の転動ボール105、107が用いられているが、円柱形の転動部材でも良い。
【0019】
固定地板102に第1の転動受け部材106、第1の付勢磁石109、第1のヨーク111、第2のヨーク112、ピッチマグネット113およびヨーマグネット114を固定することで、固定部ユニットを構成する。
【0020】
また、可動鏡筒103に補正レンズ101、第2の転動受け部材108、第2の付勢磁石110、ピッチコイル115、ヨーコイル116を固定することで、鏡筒ユニットを構成する。
【0021】
図1は本実施例の部品構成を示す分解斜視図である。図2は、組立後の像振れ補正装置100を正面から見た図である。なお、図2では説明のために案内部材104および第2のヨーク112は図示していない。図3は、像振れ補正装置100を光軸に平行に切断した模式図である。
【0022】
補正レンズ101は、図示しない撮像光学系の一部を構成するレンズであり、光軸を偏心させる振れ光学要素である。光軸と直交する方向に移動することによって、撮像光学系の作る像を移動させることができる。これにより手振れを検知したときに、前述の方法により像面での安定を確保することができる。
【0023】
なお、本実施例においては、振れ補正手段として補正レンズ101を用いているが、CCDやC−MOSセンサなどの撮像素子を撮影レンズに対して移動させることでも、同様の効果が期待できる。
【0024】
固定地板(固定部材)102は、概略円盤状に形成される。中央部に開口部を有し、可動鏡筒103を配置することができる。
【0025】
また固定地板102は、図1に示されるように、外周側面部に3箇所の取り付けリングを固定できる取り付け穴1021を有している。この穴を利用し、他のレンズ群(例えば、結像光学系)を固定するレンズ鏡筒に固定される。すなわち、この取り付け穴1021が、像振れ補正装置100の基準位置となる。
【0026】
また固定地板102は、貫通する第1の転動ボール配置溝1022を有している。第1の転動ボール配置溝1022は、第1の転動ボール105(1051、1052、1053)の数と同じ数(本実施例では三個)設けられ、その内部に第1の転動ボール1051、1052、1053を転動可能に収容することができる。また、第1の転動ボール配置溝1022の開口の大きさは、第1の転動ボール105の可動範囲よりも大きく、ヨー方向に長い長孔形状を有する。ただし、本発明はこの形状に限定されるものではなく、例えば矩形形状であってもよい。
【0027】
そして固定地板102は、第1の付勢磁石109、ピッチマグネット113、ヨーマグネット114と嵌合する穴を具えており、それぞれの部品の位置決めをすることができる。
【0028】
可動鏡筒103は、中央の開口部に補正レンズ101を保持することができる。また可動鏡筒103は、後述の方法で固定地板102に対して光軸と直交する方向に移動可能に支持される。
【0029】
また可動鏡筒103は、貫通する第2の転動ボール配置溝1031を3個有している。第2の転動ボール配置溝1031は、その内部に第2の転動ボール107(1071、1072、1073)を転動可能に収容することができ、その溝の大きさは、第2の転動ボール107の可動範囲よりも大きくなっている。
【0030】
第1の転動ボール配置溝1022は第1の転動部材配置溝を構成し、第2の転動ボール配置溝1031は、第2の転動部材配置溝を構成し、それらの高さは第1および第2の転動部材の直径より小さい。
【0031】
また可動鏡筒103は、第2の付勢磁石110と嵌合する穴を具えており、第2の付勢磁石110の位置決めをすることができる。また可動鏡筒103は、ピッチコイル115およびヨーコイル116を保持することができる。また可動鏡筒103は、図示しない位置検出センサを具え、固定地板102に対するピッチ方向およびヨー方向の変位量を逐次測定することができる。位置検出センサは非接触式のものが適しており、公知の光学式センサ、磁気式センサなどが利用できる。
【0032】
案内部材104は、ステンレスなどの耐磨耗性の高い材質によって形成される。これにより、第1および第2の転動ボール105、107に硬い材質を用いても、接触部が削れることなく、長期間の使用に耐えうる。また、本実施例においては、マルテンサイト系ステンレスなどの強磁性体の材質を用いることで、第1の付勢磁石109および第2の付勢磁石110のヨークを兼用することができる。
【0033】
案内部材104は、固定地板102に対して、ピッチ方向(第1の方向)に移動可能に支持されている。また、可動鏡筒103をヨー方向(第2の方向)に移動可能に支持している。
【0034】
ここで、ピッチ方向とヨー方向は互いに直交している。また、ピッチ方向とヨー方向は、それぞれ光軸に直交する方向である。これにより、可動鏡筒103は固定地板102に対して光軸に直交する方向に回転することなしに移動可能に支持される。
【0035】
案内部材104は、第1の転動案内部1041を2個有している。第1の転動案内部1041は、ヨー方向に対する断面がV字状に形成されている。これにより、第1の転動ボール1051および1052を、2点で接しながらピッチ方向にガタ無く転動可能に支持できる。
【0036】
また、第1の転動案内部1041が設けられる面と同じ面に、第2の転動案内部1042を2個有している。第2の転動案内部1042は、ピッチ方向に対する断面がV字状に形成されている。これにより、第2の転動ボール1071および1072を、2点で接しながらヨー方向にガタ無く転動可能に支持できる。
【0037】
本実施例では2箇所の第1の転動案内部1041および2箇所の第2の転動案内部1042を、それぞれ同一部品に設けているので、それぞれの支持する移動方向を高い精度にすることができる。
【0038】
第1の転動ボール(第1の転動部材)1051〜1053は、転がり抵抗を小さくするため、また高い加工精度で作るために、ステンレスやセラミックなどの硬度の高い材質で形成される。第1の転動ボール1051〜1053は、案内部材104を固定地板102に対してピッチ方向に転動により案内する。
【0039】
第1の転動受け部材106は、ステンレスなどの耐磨耗性の高い材質によって形成される。これにより、転動ボール105に硬い材質を用いても、接触部が削れることなく、長期間の使用に耐えうる。また、本実施例においては、マルテンサイト系ステンレスなどの強磁性体の材質を用いることで、第1の付勢磁石109のヨークを兼用することができる。
【0040】
第1の転動受け部材106は、固定地板102に接触してビス止めされる。そして固定地板102と接触する面に、第1のガイド部1061、1062を備えている。第1のガイド部1061、1062は、ヨー方向に垂直な断面がV字状に形成されている。これにより、第1の転動ボール1051および1052を、2点で接しながらピッチ方向にガタ無く転動可能に支持できる。
【0041】
第2の転動ボール(第2の転動部材)1071〜1073は、転がり抵抗を小さくするため、また高い加工精度で作るために、硬度の高い材質で形成される。第2の転動ボール1071〜1073は、可動鏡筒103を案内部材104に対してヨー方向に転動により案内する。
【0042】
第2の転動受け部材108は、ステンレスなど、耐磨耗性に優れる金属により構成することが望ましい。これにより、転動ボールに硬い材質を用いても、接触部が削れることなく、長期間の使用に耐えうる。また、本実施例においては、マルテンサイト系ステンレスなどの強磁性体の材質を用いることで、第2の付勢磁石110のヨークを兼用することができる。
【0043】
第2の転動受け部材108は、可動鏡筒103に接触して固定される。そして可動鏡筒103と接触する面に、第2のガイド部1081、1082を備えている。第2のガイド部1081、1082は、ピッチ方向に垂直な断面がV字状に形成されている。これにより、第2の転動ボール1071および1072を、2点で接しながらヨー方向に転動可能に支持できる。
【0044】
第1の付勢磁石109は、光軸方向に着磁された磁石であり、第1の転動受け部材106に固定される。そのとき、案内部材104とは所定の空隙を持って対向することで、案内部材104と第1の転動受け部材106との間に光軸方向の吸引力を働かせることができる。これにより、第1の転動ボール105が、常に第1の転動受け部材106と案内部材104によって挟持されるようにしている。すなわち、第1の付勢磁石109および強磁性体である第1の転動受け部材106、案内部材104によって磁気回路を作り、本発明の第1の付勢手段を実現している。本実施例においては、2個の第1の付勢磁石109を用いている。その合力は複数(3個)の第1の転動ボール1051、1052、1053を結んだ三角形の内側にある。これにより、第1の付勢磁石109が案内部材104に接触してしまうのを防止している。
【0045】
また第1の付勢手段の合力の大きさは、可動鏡筒103と案内部材104の重量の和よりも大きく、好ましくは重量の和の3倍程度である。これにより、衝撃時などによって可動鏡筒103に任意の方向の慣性力が働いても、第1の付勢磁石109による付勢力と慣性力の合力が第1の転動ボール105を結んだ三角形の外側に出ることを防止できる。
【0046】
第2の付勢磁石110は、光軸方向に着磁された磁石であり、第2の転動受け部材108に固定される。そのとき、案内部材104とは所定の空隙を持って対向することで、案内部材104と第2の転動受け部材108との間に光軸方向の吸引力を働かせることができる。これにより、第2の転動ボール107が、常に第2の転動受け部材108と案内部材104によって挟持されるようにしている。すなわち、第2の付勢磁石110および強磁性体である第2の転動受け部材108、案内部材104によって磁気回路を作り、本発明の第2の付勢手段を実現している。なお、第1、第2の付勢手段の構成方法として、本実施例のように磁力を用いる以外に、ばねなどの弾性部材や、静電力を利用する方法でも良い。
【0047】
本実施例においては、3個の第2の付勢磁石110を用いている。その合力は複数(3個)の第2の転動ボール1071、1072、1073を結んだ三角形の内側にある。これにより、第2の付勢磁石110が案内部材104に接触してしまうのを防止している。
【0048】
また第2の付勢手段の合力の大きさは、可動鏡筒103の重量よりも大きく、好ましくは重量の3倍程度である。これにより、衝撃時などによって可動鏡筒103に任意の方向の慣性力が働いても、第2の付勢磁石110による付勢力と慣性力との和が第2の転動ボール107を結んだ三角形の外側に出ることを防止できる。
【0049】
ピッチマグネット113、ピッチコイル115、第1のヨーク111、第2のヨーク112によって、ピッチ方向アクチュエータ(第1の駆動手段)を構成している。
【0050】
また、ヨーマグネット114、ヨーコイル116、第1のヨーク111、第2のヨーク112によって、ヨー方向アクチュエータ(第2の駆動手段)を構成している。
【0051】
ピッチマグネット113は、ピッチコイル115に電力を流したときに、ピッチ方向の推力を生じさせるような磁界を作る。
【0052】
ヨーマグネット116は、ヨーコイル116に電力を流したときに、ヨー方向の推力を生じさせるような磁界を作る。
【0053】
第1のヨーク111および第2のヨーク112は、ピッチ方向アクチュエータ、ヨー方向アクチュエータのヨークとして働き、それぞれのマグネットの磁気抵抗を減らし、アクチュエータの効率を高める。
【0054】
それぞれのアクチュエータは、公知の電磁アクチュエータである。なお本発明においては、アクチュエータの種類においては限定をせず、可動鏡筒103を固定地板102に対して、光軸に直交する2方向に移動させる公知のアクチュエータを使用できる。具体的には、静電アクチュエータ、圧電アクチュエータ、超磁歪アクチュエータ等を使っても良い。また、本実施例のように1自由度型のアクチュエータを2個使っても良いし、2自由度型のアクチュエータを1個使っても良い。
【0055】
本実施例では、案内部材104の同じ面側に第1の転動ボール105および第2の転動ボール107を並べて配置している。また、本実施例では、第1の転動ボール105と第2の転動ボール107は同じ直径のものを使用している。そのため、第1の転動受け部材106および第2の転動受け部材108は、同じ面内に配置される。
【0056】
第1の転動ボール1051,1052,1053は、案内部材104に転動可能に接触する。第1の転動ボール1051、1052は、案内部材104に設けられた第1の転動案内部1041および第1の転動受け部材106に設けられた第1のガイド部1061、1062により規制される。そして、案内部材104を固定地板102に対してガタなくピッチ方向のみに移動可能に支持する。案内部材104は、第1の転動ボール1051,1052,1053の3つのボールに支持されることで、光軸方向に安定して位置が決まる。
【0057】
第2の転動ボール1071,1072,1073は、案内部材104に転動可能に接触する。第2の転動ボール1071、1072は、案内部材104に設けられた第2の転動案内部1042および第2の転動受け部材108に設けられた第2のガイド部1081、1082により規制される。そして、可動鏡筒103を案内部材104に対してガタ無くヨー方向のみに移動可能に支持する。可動鏡筒103は、第2の転動ボール1071,1072,1073の3つのボールに支持されることで、光軸方向に安定して位置が決まる。これにより、可動鏡筒103は固定地板102に対して、光軸に直交する方向にガタ無く回転することなく移動可能に支持される。そして、ピッチアクチュエータおよびヨーアクチュエータに所定の推力を発生させることで、補正レンズ101を所定の位置に移動させることができる。
【0058】
本実施例の効果について、本実施例の模式図である図3と、従来の像振れ補正装置の模式図である図6を比較しながら説明する。
【0059】
本実施例のような配置とすることで、像振れ補正装置の光軸方向の厚さを薄くすることができる。これについて、以下で詳しく説明する。
【0060】
従来においては、図6に示すように、像振れ補正装置の厚さは、(固定地板302の厚さ+第1の転動受け部材306の厚さ+第1の転動ボール305の直径+案内部材304の厚さ+第2の転動ボール308の直径+第2の転動受け部材310の厚さ+可動鏡筒303の厚さ)分だけ必要であった。
【0061】
しかし本実施例では、図3に示すように、第1の転動ボール105と第2の転動ボール107を、案内部材104の同一面側に配置している。そして、光軸方向に並列に配置し、第1の転動受け部材106と第2の転動受け部材108を光軸方向に並列に配置することが可能である。また、案内部材104と第1および第2の転動受け部材106、108の間に、可動鏡筒103および固定地板102を配置することができる。したがって装置下端から案内部材104までの距離は、(第1および第2の転動受け部材106、108の厚さ+第1および第2の転動ボール105、107の直径+案内部材104の厚さ)分だけあれば構成可能である。これは従来に比し、(固定地板302の厚さ+第2の転動ボール308の直径+第2の転動受け部材310の厚さ+可動鏡筒303の厚さ)の分だけ、像振れ補正装置を光軸方向に薄い構成とすることができる。なお、本実施例では第1の転動ボール105と第2の転動ボール107のすべてを同じ直径にすることで、第1および第2の転動受け部材106、108を同一面に配置することを可能にし、光軸方向の厚さが最小になるような構成にしている。本発明はこれに限らず、第1および第2の転動ボール105,107の直径を変えてもよい。これにより、装置全体の光軸方向の厚さは大きくなってしまうものの、第1および第2の転動受け部材106、108を異なる面に配置することができ、装置全体の小径化に有利である。
【0062】
また、このような構成をとることで、像振れ補正装置の光軸方向の位置を精度よく決めることができる。
【0063】
図6に示すように、従来の像振れ補正装置の第1の転動受け部材306および307は、固定地板302を取り付ける面の反対側の面で第1の転動ボール305と接触している。また案内部材304は、第1の転動ボール305と接触する面の反対側の面で第2の転動ボール308と接触している。そして第2の転動受け部材309および310は、第2の転動ボール308と接触する面の反対側で可動鏡筒303を固定している。
【0064】
したがって、案内部材304、第1の転動受け部材306および307、第2の転動受け部材309および310のいずかの板厚がばらついた場合、レンズの位置が(例えば、斜めに傾く等)変化してしまう。これは、第1及び第2の転動受け部材306、307は、量産性に優れるプレス加工で製造するのが望ましいが、一般にプレス加工では、ロットによって板厚にばらつきが生じ得るためである。
【0065】
一方、図3に示す本実施例の像振れ補正装置の第1の転動受け部材106は、固定地板102を取り付けるのと同じ面側で第1の転動ボール105と接触している。また案内部材104は第1の転動ボール105と接触するのと同じ面側で第2の転動ボール107と接触している。そして第2の転動受け部材108は、第2の転動ボール107と接触するのと同じ面側で可動鏡筒103と接している。
【0066】
したがって、第1の転動受け部材106、案内部材104、第2の転動受け部材108のいずれかの板厚がばらついても、全体寸法がばらつくだけであり、他の光学部材との基準位置になる固定地板102と、補正レンズ101の間の位置関係に影響は与えない。したがって従来の像振れ補正装置に対し、誤差要因が少ない構成とすることができ、像振れ補正装置の光学性能を安定させることができる。
【0067】
以上、上記実施例では固定地板102および可動鏡筒103が案内部材104と第1及び第2の転動受け部材106、108の間に配置された。これにより、光軸方向に最も薄い構成とすることができた。しかし、本発明で提案する像振れ補正装置はこの形に限定されない。
【0068】
上記構成を成り立たせるためには、可動鏡筒103および固定地板102の光軸方向の少なくても一部分の厚さが、転動ボール105、107の直径よりも薄い必要がある。従って、転動ボール105、107の直径の大型化や、可動鏡筒103および固定地板102の過度な薄型化による強度不足を招いてしまうことがある。
【0069】
これを防ぐため、第2の転動受け部材108が第2の転動ボール107と接触する面の反対側に、可動鏡筒103を配置してもよい。これにより、可動鏡筒103の厚さを第2の転動ボール107の直径よりも大きくすることができ、強度低下を避けることができる。また、第1の転動受け部材106が第1の転動ボール105と接触する面の反対側に、固定地板102を配置してもよい。これにより、固定地板102の厚さを第1の転動ボール105の直径よりも大きくすることができ、固定地板102の強度低下を避けることができる。
【0070】
この構成は上記実施例よりも光軸方向に厚くなってしまうものの、上記問題の発生を避けることができる。なお、この場合は第1および第2の転動ボール105、107を小径化することで、光軸方向の大型化を抑えることができる。
【0071】
また本実施例では、像振れ補正装置について説明したが、その像振れ補正装置はビデオカメラ、デジタル及び銀塩スチルカメラといった撮影装置や、双眼鏡、望遠鏡、フィールドスコープといった観察装置を含む光学機器に搭載可能である。したがって、本実施例の像振れ補正装置を有する光学機器も本発明の一側面を構成する。
【符号の説明】
【0072】
101 補正レンズ
102 固定地板
103 可動鏡筒
104 案内部材
105 第1の転動ボール
106 第1の転動受け部材
107 第2の転動ボール
108 第2の転動受け部材
109 第1の付勢磁石
110 第2の付勢磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
振れ補正手段を保持し、光軸と直交する方向に移動可能な可動部材と、
前記固定部材に対し光軸と直交する第1の方向に移動可能に支持され、かつ前記可動部材を光軸と直交し第1の方向とは異なる第2の方向に移動可能に支持する案内部材と、
前記案内部材を、前記固定部材に対して前記第1の方向に転動により案内する第1の転動部材と、
前記可動部材を、前記案内部材に対して前記第2の方向に転動により案内する第2の転動部材と、
前記案内部材に前記第1の転動部材を転動可能に接触させる力を発生する第1の付勢手段と、
前記案内部材に前記第2の転動部材を転動可能に接触させる力を発生する第2の付勢手段と、
前記可動部材を前記第1の方向および前記第2の方向へ移動させる駆動手段とを有し、
前記第1の転動部材と前記第2の転動部材は、前記案内部材の同一面側に配置されることを特徴とする像振れ補正装置。
【請求項2】
前記第1の転動部材と前記第2の転動部材は、光軸方向に並列に配置されることを特徴とする請求項1に記載の像振れ補正装置。
【請求項3】
前記固定部材に固定される第1の転動受け部材と、
前記固定部材に固定される第2の転動受け部材とを有し、
前記第1の付勢手段は、前記案内部材と前記第1の転動受け部材の間に前記第1の転動部材を挟持し、
前記第2の付勢手段は、前記案内部材と前記第2の転動受け部材の間に前記第2の転動部材を挟持し、
前記第1の転動受け部材と前記第2の転動受け部材は、光軸方向に並列に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の像振れ補正装置。
【請求項4】
前記固定部材には、前記第1の転動部材が前記第1の方向に移動可能に収容される第1の転動部材配置溝が設けられ、
前記可動部材には、前記第2の転動部材が前記第2の方向に移動可能に収容される第2の転動部材配置溝が設けられ、
前記第1の転動部材配置溝および第2の転動部材配置溝の高さは、前記第1および第2の転動部材の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の像振れ補正装置。
【請求項5】
前記第1の転動部材は、前記案内部材と2点で接触し、
前記第2の転動部材は、前記案内部材と2点で接触することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の像振れ補正装置。
【請求項6】
第1の付勢手段の合力は、複数の前記第1の転動部材を結んで作る面内を通り、かつ前記振れ補正手段と前記可動部材および前記案内部材を合わせた重量よりも大きく、
第2の付勢手段の合力は、複数の前記第2の転動部材を結んで作る面内を通り、かつ前記振れ補正手段と前記可動部材の重量よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の像振れ補正装置。
【請求項7】
前記第1および第2の転動受け部材は強磁性体であり、
前記第1の付勢手段は、前記第1の転動受け部材と前記案内部材の間に働く磁力によって実現され、
前記第2の付勢手段は、前記第2の転動受け部材と前記案内部材の間に働く磁力によって実現されることを特徴とする請求項3に記載の像振れ補正装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の像振れ補正装置を備えた光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−168398(P2012−168398A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30011(P2011−30011)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】