説明

元素の溶媒

リン、セレン、テルルおよびイオウなどの元素、ならびにその化合物のための溶媒としてのイオン性液体の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン、セレン、テルルおよびイオウなどの元素、ならびにその化合物のための溶媒としてのイオン性液体の使用に関する。
【0002】
イオウは、化学工業において非常に重要な原料と考えられており、イオウ含有化合物はあらゆる生命にとって必須のものである。したがって、その化学は、非常に重要ではあるが、良好な溶解度を提供し、かつ取り扱うのに環境面で安全である適切な溶媒が十分でないため、限定されたものとなっている。
【0003】
最もよく知られている溶媒は、二硫化炭素(CS2)(イオウの溶解度:17℃で0.34g/g)である。しかし、二硫化炭素は、高い毒性、揮発性、燃焼性および低い沸点といった不都合で有害な物理的特性のため、広く適した溶媒とはいえない。
【0004】
イオウを溶解させるのにやはり知られている溶媒は、一塩化硫黄(Cl22)である。しかし、二硫化炭素と同様に、この溶媒は、毒性、低い蒸気圧および水分に対する鋭敏さ(水と激しく反応して塩化水素、二酸化硫黄および硫化水素を生成する)のため、取り扱うのが困難である。
【0005】
したがって、イオウ(ならびにリン、セレンおよびテルル)化学の検討をより容易かつ安全にし、環境により優しい工業規模のプロセスを可能にする溶媒を開発する必要がある。
【0006】
イオン性液体は、過去数年間にわたって開発されてきた新規な部類の溶媒である。
【0007】
本明細書で用いる「イオン性液体」という用語は、固体を溶融することによって生成させることができ、生成した場合、それがイオンだけからなる液体を指す。イオン性液体は有機塩から誘導することができる。
【0008】
イオン性液体は、1種のカチオンと1種のアニオン種を含む均一物質から形成されていてもよく、または1種を超えるのカチオンおよび/またはアニオンで構成されていることができる。したがって、イオン性液体は、2種以上のカチオンと1種のアニオンで構成されていてよい。イオン性液体は、さらに、1種のカチオンと1種以上のアニオンで構成されていてよい。したがって、本発明の混合塩は、アニオンとカチオンを含む混合塩を含むことができる。
【0009】
要約すれば、本明細書で用いる「イオン性液体」という用語は、単一の塩(1つのカチオン種と1つのアニオン種)からなる単一組成物を指すか、または、1種を超えるカチオンおよび/または1種を超えるアニオンを含む異種組成物を指すことができる。
【0010】
分子溶媒と比較したイオン性液体の主な利点は、その非揮発性、低毒性、低燃焼性、広い温度範囲(200〜250℃)での適用性、および再生利用の可能性であり、これらの特性により、イオン性液体は環境に優しいものとなる。そうした溶媒は、もちろん、工業的プロセスに非常に望ましいものである。さらに、イオン性の構造であるため、しばしば、一般的な試薬の反応性、または反応の位置もしくは立体選択性を変化させ、その結果、より速い反応とより高い収率をもたらす。
【0011】
可能性のあるカチオンおよびアニオンが非常に様々であることから、粘度、密度、水溶性などの物理的特性を、ほとんどすべての反応に対して「調節可能」である。
【0012】
本発明の発明者らは、リン、セレン、テルルおよび/またはイオウから選択される元素のための溶媒として用い、それによって、毒性が強くかつ環境に優しくない従来の既知の溶媒を使用する必要性を回避できる、一連のイオン性液体を開発した。
【0013】
本発明は、リン、セレン、テルルおよびイオウ、好ましくはイオウおよびセレン、最も好ましくはイオウのための溶媒として、特に開発したイオン性液体の使用を説明する。イオン性液体を溶媒として利用することによって、元素のリン、セレン、テルルおよびイオウ、好ましくはイオウの化学反応、ならびに精製および再結晶化を施すことが可能である。
【0014】
「元素の」という用語は、その元素が、任意の他の元素を含有する分子中に結合されていないことを意味する。したがって、イオウの場合、そのイオウは、S8の元素形態、すなわちオクトマー分子のS8の形態であってよい。
【0015】
さらに、イオン性液体の使用によって、二硫化炭素や一塩化硫黄のような危険な有毒性の溶媒を使用する必要性が回避できる。
【0016】
本発明の一態様によれば、リン、セレン、テルルおよび/またはイオウのための溶媒としてのイオン性液体の使用であって、そのイオン性液体が、少なくとも1種のカチオンと少なくとも1種のソフトアニオンで構成される使用を提供する。イオン性液体は、イオウまたはセレン溶媒として用いることが好ましく、最も好ましくはイオウ溶媒としてである。
【0017】
ハードおよびソフトイオンの考え方は、化学分野においてよく知られているものである(Advanced Organic Chemistry,March Jおよびd−Block Chemistry,Winter M.Jを参照されたい)。ソフトイオンは低い電気陰性度と高い分極率を有するものである。反対に、ハードイオンは高い電気陰性度と低い分極率を有するものであり、例えば[SO3OR]-である。
【0018】
理論に拘泥するわけではないが、本発明の発明者らは、元素のS、Se、Te、P、As、Sg、ならびにイオンのBr-、I-および(Cl-:それほどでもないが)は、アニオン中に存在する場合、F>O>N(すなわち、Fは最も大きい溶解度低減効果を有する)と比べると、溶解度が増大すると考える。
【0019】
ソフトアニオンは、芳香族であることが好ましい。
【0020】
ソフトアニオンは、塩基性であることが好ましい。
【0021】
ソフトアニオンは、芳香族であり、かつ塩基性であることがより好ましい。
【0022】
本発明によれば、ソフトアニオンは、[S2CNR2-、[S2CSR]-、[S2COR]-および[S2CNR2-から選択されてよく、但し、Rは水素、C1〜C40直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基またはC5〜C10アリール基であり、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、置換されていなくてもよく、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、SH、NO2、C7〜C30アラルキルまたはC7〜C30アルカリールから選択される1〜3個の基で置換されていてもよい。
【0023】
より好ましくは、Rは、C1〜C10直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C5〜C7シクロアルキル基またはC5〜C8アリール基から選択され、但し、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、置換されていないか、C1〜C6アルコキシ、C6〜C8アリール、CN、OH、SH、NO2、C8〜C15アラルキルまたはC8〜C15アルカリールから選択される1〜3個の基で置換されていてもよい。
【0024】
さらに好ましくは、Rは、C1〜C6直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C5〜C6シクロアルキル基またはC5〜C6アリール基から選択され、但し、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、置換されていないか、C1〜C6アルコキシ、C6〜C8アリール、CN、OH、SH、NO2、C8〜C15アラルキルまたはC8〜C15アルカリールから選択される1〜3個の基で置換されていてもよい。
【0025】
さらなるRの例には、
【0026】
【化1】

【0027】
が含まれる。
【0028】
ソフトアニオンは、[O2CR]-から選択してもよく、但し、Rは、水素またはC1〜C40直鎖もしくは分枝鎖アルキル基であり、1〜3個のOH基で置換されていてよい。Rは、1個のOH基で置換されたC1〜C6直鎖アルキル基であることが好ましい。Rは、−CH(OH)CH3であることがより好ましい。あるいは、Rは、C1〜C15非置換直鎖アルキル、好ましくはC5〜C12アルキル、最も好ましくはC9アルキルであってよい。
【0029】
ソフトアニオンは[SO3R]-から選択してもよく、但し、Rは1〜3個のSH基で置換されたC1〜C40直鎖または分枝鎖アルキル基である。Rは、1個のOH基で置換されたC1〜C6直鎖アルキル基であることが好ましい。Rは、−CH2−CH2−SHであることがより好ましい。
【0030】
他の例には、[S2CSBu]-、[(S2CSCH2CH2)S]2-、[(S2CSCH2)]2-、[S2CNEt2-、[S2CN(CHMe22-、[S2CN(CH22-、[S2CN(CH24-、[S2COMe]-、[S2COEt]-、[S2COCHMe2-、[S2COBu]-、[SO3(CH22SH]-および[S2COPent]-が含まれ、元素のイオウは、意外にも、これらの中で高い溶解度を有している。
【0031】
本発明で用いるアニオンは[N(CN)2-であってもよい。
【0032】
カチオンは、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリニウム、アザチアゾリウム、オキソチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレノゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソトリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、ジベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ジベンゾチオフェニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アノリニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キナザリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、タジニウム、オキサジニウム、アザアヌレニウムおよびピロリジニウムから選択される複素環構造を含んでもよく、またはそれからなってもよい。
【0033】
より好ましくは、カチオンは、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、ピリミジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、キノリニウム、イソキノリニウムおよびピロリジニウムら選択される複素環構造を含む、またはそれからなる。
【0034】
カチオンは、
【0035】
【化2】

【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素、C1〜C40直鎖または分枝鎖アルキル基、C3〜C6シクロアルキル基またはC6〜C10アリール基から選択され、但し、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、置換されていないか、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキルおよびC7〜C30アルカリールから選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、または隣接炭素原子と結合しているRb、Rc、Rd、ReおよびRfのうちのいずれか2つは、メチレン鎖−(CH2q−(qは8〜20である)を形成している。)
から選択されることが好ましい。
【0039】
本発明の他の態様によれば、イオン性液体は、ソフトアニオンおよびソフトカチオンを含む。
【0040】
本発明の発明者らは、元素であるリン、セレン、テルルおよび/またはイオウのイオン性液体中における溶解性は、選択されるアニオンに、より敏感であることを見出した。しかし、選択したカチオンも溶解度に影響を及ぼすことができる。ソフトアニオンと同様に、ソフトカチオンは、芳香族であることが好ましい。
【0041】
ソフトカチオンは、塩基性であることが好ましい。
【0042】
ソフトカチオンは、芳香族であり、かつ塩基性であることがより好ましい。
【0043】
ソフトカチオンが塩基性である場合、それは、(i)正に荷電した部分と、(ii)塩基性の部分とを含んでもよい。
【0044】
本発明の実施形態で使用するための塩基性のイオン性液体は、式:
[Cat+−Z−Bas][X-
(式中、
Cat+は、正に荷電した部分、
Basは、塩基性の部分、および
Zは、Cat+とBasを連結する共有結合であるか、それぞれが1〜10個の炭素原子を含み、それぞれが任意選択で1、2もしくは3個の酸素原子を含む1、2または3個の脂肪族二価連結基であり、
-は、上述の通りのソフトアニオンである。)
で表されるものでもよい。
【0045】
Basは、少なくとも1個の、窒素、リン、イオウ、酸素またはホウ素原子を含むことが好ましく、例えば、Basは、少なくとも1個の、第1級、第2級または第3級アミノ基を含んでいてもよい。
【0046】
Basは、−N(R1)(R2)および−P(R1)(R2)(R3)から選択されることが好ましく、但し、R1、R2およびR3は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素、直鎖または分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリールおよび置換アリールから選択される。
【0047】
1、R2およびR3は、それぞれ、水素、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジルおよびフェニルから選択されることが好ましい。
【0048】
Basは、−N(CH32または−N(CH(CH322であることがさらに好ましい。
【0049】
Basは、−O(R1)(R1は上記定義と同様である)でないことが好ましい。Basは、−OHでないことがより好ましい。
【0050】
本発明の他の態様は、Basがヒンダード塩基性部分である塩基性のイオン性液体である化合物の使用を対象とする。
【0051】
「ヒンダード塩基性部分」という用語は、塩基として作用するが、立体障害性であるため、試薬や生成物と化学的に結合しない官能基を指す。
【0052】
ヒンダード塩基性イオン性液体のためには、基Rは、ヒューニッヒ塩基(ビス−(ジイソプロピル)エチルアミン)について記されているような低い求核性を有していなければならない(Tetrahedron Letters、1981年、31巻、1483頁を参照されたい)。この関連では、また、“Hindered non−nuclepohilic base with high protein affinity”,Chem.Ber.、1958年、91巻、380頁およびChem.Ber.、1993年、29巻、1042頁の文献も参照されたい。このことは、塩基性基Rは、遊離水素イオンと化学結合を形成することが可能であるが、化学プロセスにおける試薬または生成物とは化学結合を形成しないことを意味する。
【0053】
Bas部分は、WO04/029004に記載されているような窒素と結合した3個のエチル基の場合より、低い求核性または高い立体障害を有していなければならない。
【0054】
本発明によれば、Zは、直鎖もしくは分枝鎖C1〜C18アルカンジイル、置換アルカンジイル、ジアルカニルエーテルまたはジアルカニルケトンから選択されてもよく、好ましくはC1〜C8、より好ましくはC2〜C6である。
【0055】
Zは、−(CH2−CH2)−、(CH2−CH2−CH2)−、−(CH2−CH2−CH2−CH2)−、−(CH2−CH2−CH2−CH2−CH2)−、−(CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2)−、−(CH2−CH2−O−CH2−CH2)−および−(CH2−CH2−O−CH2−CH2−CH2)−から選択されることが好ましい。
【0056】
Cat+部分は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリニウム、アザチオゾリウム、オキソチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチオゾリウム、トリアゾリウム、セレノゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソトリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、ジベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ジベンゾチオフェニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アノリニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キナザリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、チアジニウム、オキサジニウムおよびアザアヌレニウムから選択される複素環構造を含んでもよく、またはそれからなってもよい。
【0057】
本発明による好ましいCat+−Z−Basは、
【0058】
【化5】

【0059】
【化6】

【0060】
【化7】

【0061】
(式中、BasおよびZは、上記定義と同様であり、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素、C1〜C40直鎖または分枝鎖アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基またはC6〜C10アリール基から選択され、但し、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、置換されていないか、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキルおよびC7〜C30アルカリールから選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、または隣接炭素原子と結合しているRb、Rc、Rd、ReおよびRfのうちのいずれか2つは、メチレン鎖−(CH2q−(qは8〜20である)を形成している。)
から選択されてもよい。
【0062】
Cat+−Z−Basは、
【0063】
【化8】

【0064】
(式中、Bas、ZおよびRbは、上記定義と同様である。)
から選択されることが、より好ましい。
【0065】
Cat+−Z−Basは、
【0066】
【化9】

【0067】
(上記化合物は、すべて「ヒンダード」であると考えられる。)
からなる群から選択されることが、さらに好ましい。
【0068】
本発明で用いるCat+部分は、イミダゾール、ピリジン、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、アザチオゾール、オキソチアゾール、オキサジン、オキサゾリン、オキサゾボロール、ジチオゾール、トリアゾール、セレノゾール、オキサホスホール、ピロール、ボロール、フラン、チオフェン、ホスホール、ペンタゾール、インドール、インドリン、オキサゾール、イソオキサゾール、イソトリアゾール、テトラゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアジアゾール、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、ピラン、アノリン、フタルジン、キナゾリン、キノキサリン、キノリン、イソキノリン、チアジン、オキサジンおよびアザアヌレンから選択される前躯体の、アルキル化、プロトン化および/またはアシル化によって得ることができる。
【0069】
本発明によれば、Cat+部分は、非環式有機イオンであってもよい。
【0070】
Cat+部分が非環式である場合、アミノアミジノ、イミノ、グアニジノ、ホスフィノ、アルシノ、スチビノ、アルコキシアルキル、アルキルチオ、アルキルセレノおよびホスフィンイミノから選択される基を含む、またはそれからなることが好ましい。
【0071】
一実施形態では、非環式Cat+部分は、Cat+−Z−Basであり、好ましくは、
【0072】
【化10】

【0073】
(Bas、Z、Rb、RcおよびRdは、上記定義と同様である。)
から選択される。
【0074】
より好ましくは、Cat+−Z−Basは、
【0075】
【化11】

【0076】
(但し、Bas、ZおよびRbは上記定義と同様である。)
から選択される。
【0077】
さらに好ましくは、Cat+−Z−Basは、
【0078】
【化12】

【0079】
(上記化合物のすべては、「ヒンダード」塩基性のイオン性液体と考えられる。)
および
【0080】
【化13】

【0081】
から選択される。
【0082】
本発明によれば、Cat+−Z−Basは、
【0083】
【化14】

【0084】
(Rbは上記定義と同様である。)
であってもよい。
【0085】
他の実施形態では、非環式Cat+部分は、
【0086】
【化15】

【0087】
(Ra、Rb、RcおよびRdは上記定義と同様である。)
から選択される。
【0088】
a、Rb、RcおよびRdは、独立して、C1〜C40アルキル、好ましくはC1〜C20アルキル、さらに好ましくはC115アルキルから選択されることが好ましい。
【0089】
Cat+は、[C6,6,6,14P]+であることが好ましい。
【0090】
Cat+が[C6,6,6,14P]+である1つの好ましい実施形態では、アニオンX-は、
【0091】
【化16】

【0092】
から選択することができる。
【0093】
そうしたイオン性液体は、イオウ、リン、セレンおよびテルル(特にイオウおよびセレン)を溶解するのに好都合であることが分かっている。
【0094】
本発明のイオン性液体中の元素(好ましくはイオウ)の溶解度は、少なくとも0.05g/gである。
【0095】
好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.05g/gである。
【0096】
より好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.08g/gである。
【0097】
さらに好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.10g/gである。
【0098】
その上さらに好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.15g/gである。
【0099】
一層好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.20g/gである。
【0100】
さらにその上好ましくは、溶解度は、少なくとも0.25g/gである。
【0101】
さらに一層好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.30g/gである。
【0102】
一層その上好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.35g/gである。
【0103】
一層さらに好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.40g/gである。
【0104】
さらに加えて好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.50g/gである。
【0105】
その上加えて好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.60g/gである。
【0106】
最も好ましくは、溶解度は、110℃で、少なくとも0.70g/gである。
【0107】
好ましくは、溶解度は、120℃で、少なくとも0.30g/gである。
【0108】
より好ましくは、溶解度は、120℃で、少なくとも0.40g/gである。
【0109】
最も好ましくは、溶解度は、120℃で、少なくとも1.00g/gである。
【0110】
本発明の他の態様によれば、イオウ、リン、セレンおよび/またはテルルを上記定義のイオン性液体に加える工程を含む、イオウ、リン、セレンおよび/またはテルルを溶解する方法を提供する。
【0111】
イオウまたはセレンをイオン性液体に溶解することが好ましく、より好ましくはイオウである。
【0112】
本発明のさらに他の態様によれば、
(i)イオウをイオン性液体中に溶解して、溶液を作製する工程と、
(ii)その溶液からイオウを結晶化させる工程と
を含むイオウを結晶化させる方法を提供する。
【0113】
この結晶化方法は、リン、セレンおよび/またはテルルを用いて使用するのにも適用することができる。
【0114】
次に、本発明を実施例によって論じることとする。
【0115】
〔実施例〕
<溶解度の値を測定するための一般的方法>
本発明で適用するイオン性液体は、室温で比較的高い粘度であることを特徴とする。したがって、測定はより高い温度で実施した(用いるイオン性液体は、すべて、所与の温度範囲(DSC)で安定である。)。
【0116】
計量した量(0.800〜1.200g)のイオン性液体に、少量(0.050g)のS8を110〜135℃で加えた。溶解度の値を、所与の温度で透明な溶液が得られるイオウの量として測定した。
【0117】
本発明で用いるイオン性液体は、既知の手段を用いて、例えば以下に示す反応、または同様の反応を用いて作製することができる。
【0118】
〔ジチオカルバメートイオン性液体〕
二段合成法を用いて、一連のジチオカルバメートイオン性液体を作製した。
【0119】
【化17】

【0120】
<ナトリウムジチオカルバメート(2a〜d)の合成>
二硫化炭素(12mmol)を、水(30ml)中の適切なアミン(10mmol)と水酸化ナトリウム(10mmol)の氷冷溶液に加えた。その混合物を室温で6〜10時間攪拌した。真空下で水を蒸発させ、残留物をジエチルエーテルで処理して、結晶生成物を得た。
【0121】
<ナトリウム塩(2a〜d)の[bmim][Cl]との反応>
[bmim][Cl](10mmol)を、適切なナトリウム塩(11mmol)に室温で加えた。生成した液体にプロパノンを加え、析出した塩化ナトリウムをろ過した。ろ液を真空下で蒸発させて、黄色液体(生成物3a〜d)を得た。
【0122】
新規な誘導体は、すべて、S8に対する良好な溶媒であり、最も良好なものは0.43g/gの溶解度を有するピロリジン誘導体であることが分かった。
【0123】
〔トリチオカーボネートイオン性液体〕
【0124】
【化18】

【0125】
<ナトリウムトリチオカーボネート(4a〜c)の合成>
テトラヒドロフラン(10〜20ml)中の適切なチオール(10mmol)の氷冷溶液に、水(7ml)中の水酸化ナトリウム(10mmol)の溶液を加えた。10分後、二硫化炭素(12mmol)を加え、その混合物を室温で6〜10時間攪拌した。真空下で水を蒸発させ、残留物をジエチルエーテルまたは酢酸エチルで処理して、結晶生成物を得た。
【0126】
<ナトリウム塩(4a〜c)の[bmim][Cl]との反応>
反応のこの部分を、上記ジチオカーボネートイオン性液体と同様に実施して、生成物5a〜cを得た。
【0127】
〔ジチオカーボネートイオン性液体〕
【0128】
【化19】

【0129】
<ナトリウムジチオカーボネート(6a〜e)の合成>
適切なアルコール(10ml)中のナトリウム(10mmol)の氷冷溶液に、二硫化炭素(12mmol)を加え、その混合物を室温で6〜10時間攪拌した。真空下で溶媒を蒸発させ、残留物をジエチルエーテルで処理して、結晶生成物を得た。
【0130】
<ナトリウム塩(6a〜e)の[bmim][Cl]との反応>
反応のこの部分を、上記ジチオカーボネートイオン性液体と同様に実施して、生成物(7a〜e)を得た。
【0131】
〔溶解度の結果I〕
【0132】
【表1】

【0133】
溶解度の値(表2、化合物5a〜c、7a〜e)を測定すると、アニオン中のイオウの量は、溶解度に影響を及ぼしていないようであることが分かる。ジチオカーボネートは、概ねトリチオカーボネートより良好な溶媒であるようであり、ブチル、イソプロピルおよびペンチル誘導体は、ジチオカルバメートよりさらに良好である。
【0134】
ジチオカーボネート誘導体の溶媒特性に及ぼすアルキル基の影響を考えると、溶解度は、鎖長がメチルからペンチル誘導体へ増大するにしたがって、概ね増大するようである。
【0135】
カルボン酸や炭酸中での同様の構成元素を考慮して、一連のカルボン酸誘導体およびチオカルボン酸誘導体を調製した。
【0136】
〔カルボン酸誘導体イオン性液体〕
【0137】
【化20】

【0138】
<アンモニウムアルキルおよびアリールカルボキシレート(8a〜c)の合成>
適切なカルボン酸(10mmol)と、水の中のアンモニアの溶液(50ml、32%)の混合物を、酸が完全に溶解するまで室温で攪拌した。真空下で溶媒を一部蒸発させた。析出した結晶生成物をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄した。
【0139】
<アンモニウム塩(8a〜c)の[bmim][Cl]との反応>
2−プロパノール(15ml)中の適切なアンモニウム塩(11mmo)と[bmim][Cl](10mmol)の混合物を、120℃(MW)で10分間加熱した。冷却後、析出した塩化アンモニウムをろ過し、ろ液を真空下で蒸発させて黄色液体(生成物9a〜c)を得た。
【0140】
アセトン中でのカルボン酸のナトリウム塩の溶解度が小さいため、化合物9a〜cを上記と同様にして合成した。
【0141】
〔チオ安息香酸イオン性液体〕
チオ安息香酸誘導体11を、適切なナトリウム塩から炭酸誘導体と同様にして調製した(スキーム6)。
【0142】
【化21】

【0143】
<ナトリウムチオベンゾエート(10)の合成>
水中のチオ安息香酸(10mmol)と水酸化ナトリウム(10mmol)の混合物を、室温で1時間攪拌した。真空下で溶媒を蒸発させ、残留物をジエチルエーテルで処理して、黄色結晶生成物を得た。
【0144】
<[bmim][OC(S)C65](11)の合成>
上記ナトリウム塩を[bmim][Cl]と反応させて橙黄色の液体を得た。
【0145】
〔溶解度結果II〕
構造的に類似しているにも関わらず、化合物9a〜cおよび11は、元素のイオウに対して良好な溶媒ではない(以下の表2)。最も良好な結果は、イオン性液体中にジチオ炭酸構造が存在する場合に得られるようである。
【0146】
【表2】

【0147】
〔ホスホニウムジチオカルバナートイオン性液体〕
イオン性液体の溶解度と安定性に与えるカチオンの影響を検討するために、ホスホニウムカチオンを有するカーボネート誘導体イオン性液体も合成した。
【0148】
化合物12および14a〜eを、適切なジチオカルバメートまたはジチオカーボネートアニオンのナトリウム塩を、アセトン中でトリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロリドと反応させて合成した(スキーム6)。ホスホニウム類似体は、安定であることが判明し、ピロリジン誘導体12は、3か月間放置しても変化は認められなかった。
【0149】
【化22】

【0150】
この種のイオン性液体、すなわち12および14eは、S8に対してbmim類似体と少なくとも同等に良好な溶媒のようである。
【0151】
〔メルカプトスルホネートイオン性液体〕
可能性のある他のイオウ含有アニオンは、2−メルカプトエタンスルホネートアニオンである。アセトン中で適切なナトリウム塩とクロリド塩を反応させて、bmimカチオンと結合させると(スキーム7)、生成物イオン性液体16は、[emim][lactate]と同様であり、110〜135℃で0.14〜0.18g/gの同じ溶解度の値を有することが分かった。
【0152】
【化23】

【0153】
<[bmim][O3SCH2CH2SH]の合成>
水(50cm3)およびMeOH(20cm3)中のナトリウム2−メルカプトエタンスルホネート(18.3mmol、3.00g)と[bmim]Cl(14.6mmol、2.55g)の溶液を、2時間攪拌した。真空下で溶媒を蒸発させた後、アセトン(20〜50cm3)を加え、析出した塩化ナトリウムをろ過した。真空下で溶媒を蒸発させて、黄色液体を97%の収率で得た。
【0154】
〔比較例〕
様々なイオン性液体中でのS8の溶解度の比較を実施し、すべてが適しているとはいえないことが分かった。
【0155】
【表3】

【0156】
<[emim][O2CCH(OH)CH3](1)の合成>
メタノール(5ml)中の[emim][HSO4](10mmol)の溶液に、(S)−乳酸ナトリウム(12.5mmol)を加えた。その混合物を室温で1時間攪拌し、続いて炭酸ナトリウム(約0.3g)を加えた。30分後、プロパノン(約20ml)を加えた。析出した有機塩をろ過し、ろ液を真空下で蒸発させて、無色液体を得た。
【0157】
〔さらなる比較例〕
イオン性液体中でのイオウの溶解性をさらに検討するため、複数のスルホニウムイオン性液体中でのS8の溶解度を測定した(表4)。以下の表から分かるように、そのどれも元素のイオウに対して良好な溶媒ではなかった。
【0158】
【表4】

【0159】
<スルホニウムアルキルサルフェートの合成の一般的手順>
トルエン(50cm3)中のdmsoまたは適切なスルフィド(120mmol)の溶液に、硫酸ジメチルまたはジエチル(100mmol、それぞれ11.13cm3および13.10cm3)を室温で加え、その混合物を110℃で15〜30分間加熱した。冷却後、生成したイオン性液体層を分離し、トルエン(約20cm3)で2回洗浄して、過剰の出発原料を除去した。すべての場合、第1のトルエン層を、アンモニア水溶液とエタノールの混合液に注加して、過剰の硫酸ジアルキルを分解させ、ガラス器具は、すべてその同じ混合液で洗浄した。
【0160】
次いで、分離した生成物層を真空下で乾燥して、生成物を中程度の収率から高い収率の範囲で得た。
【0161】
〔まとめ〕
上記の結果から、すべてのイオン性液体を、イオウの溶媒として用いることができるわけではないことは明らかである。
【0162】
その代わりに、本出願で例示したような特定のイオン性液体を用いるべきである。
【0163】
ジチオカーボネート構造を含むイオン性液体は、特に良好な溶媒特性を提供する。
【0164】
より長いアルキル鎖は、溶媒特性をより向上させるようである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオウ、リン、セレンおよび/またはテルルから選択される元素のための溶媒としてのイオン性液体の使用であって、前記イオン性液体が少なくとも1種のカチオンと少なくとも1種のソフトアニオンで構成されるイオン性液体の使用。
【請求項2】
前記ソフトアニオンが、芳香族である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ソフトアニオンが、塩基性である、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ソフトアニオンが、[S2CNR2-、[S2CSR]-、[S2COR]-および[S2CNR2-から選択されてよく、但し、Rは水素、C1〜C40直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基またはC5〜C10アリール基であってよく、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、置換されていなくてもよく、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、SH、NO2、C7〜C30アラルキルまたはC7〜C30アルカリールから選択される1〜3個の基で置換されていてもよい、前記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
Rが、C1〜C10直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C5〜C7シクロアルキル基またはC5〜C8アリール基から選択され、但し、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、置換されていないか、C1〜C6アルコキシ、C6〜C8アリール、CN、OH、SH、NO2、C8〜C15アラルキルまたはC8〜C15アルカリールから選択される1〜3個の基で置換されていてよい、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
Rが、C1〜C6直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C5〜C6シクロアルキル基またはC5〜C6アリール基から選択され、但し、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、置換されていないか、C1〜C6アルコキシ、C6〜C8アリール、CN、OH、SH、NO2、C8〜C15アラルキルまたはC8〜C15アルカリールから選択される1〜3個の基で置換されていてよい、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記ソフトアニオンが、[O2CR]-から選択され、但し、Rは1〜3個のOH基で置換されたC1〜C40直鎖または分枝鎖アルキル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
Rが、1個のOH基で置換されたC1〜C6直鎖アルキル基である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
Rが、−CH(OH)CH3である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記ソフトアニオンが、[SO3R]-から選択され、但し、Rは1〜3個のSH基で置換されたC1〜C40直鎖または分枝鎖アルキル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記カチオンが、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリニウム、アザチアゾリウム、オキソチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレノゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソトリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、ジベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ジベンゾチオフェニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アノリニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キナザリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、タジニウム、オキサジニウム、アザアヌレニウムおよびピロリジニウムから選択される複素環構造を含んでもよく、またはそれからなってもよい、前記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記カチオンが、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、ピリミジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホレニウム、キノリニウム、イソキノリニウムおよびピロリジニウムから選択される複素環構造を含む、またはそれからなる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記カチオンが、
【化1】

【化2】

【化3】

(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素、C1〜C40直鎖または分枝鎖アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基またはC6〜C10アリール基から選択され、但し、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、置換されていないか、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキルおよびC7〜C30アルカリールから選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、または隣接炭素原子と結合しているRb、Rc、Rd、ReおよびRfのうちのいずれか2つは、メチレン鎖−(CH2q−(qは8〜20である)を形成している)
から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記イオン性液体が、ソフトアニオンおよびソフトカチオンを含む、本発明の他の態様による請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記ソフトカチオンが、塩基性である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記ソフトカチオンが、芳香族である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記ソフトカチオンが、(i)正に荷電した部分と、(ii)塩基性の部分とを含む、請求項14または請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記イオン性液体が、式:
[Cat+−Z−Bas][X-
(式中、
Cat+は、正に荷電した部分、
Basは、塩基性の部分、および
Zは、Cat+とBasを連結する共有結合であるか、それぞれが1〜10個の炭素原子を含み、それぞれが任意選択で1、2もしくは3個の酸素原子を含む1、2または3個の脂肪族二価連結基であり、
-は、上述の通りのソフトアニオンである。)
で表される、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
Basが、少なくとも1個の、窒素、リン、イオウ、酸素またはホウ素原子を含む、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
Basが、少なくとも1個の、第1級、第2級または第3級アミノ基を含む、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
Basが、−N(R1)(R2)および−P(R1)(R2)(R3)から選択され、但し、R1、R2およびR3は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素、直鎖または分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アリールおよび置換アリールから選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
1、R2およびR3が、それぞれ、水素、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジルおよびフェニルから選択される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
Basが、−N(CH32または−N(CH(CH322である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
Zが、直鎖もしくは分枝鎖C1〜C18アルカンジイル、置換アルカンジイル、ジアルカニルエーテルまたはジアルカニルケトンから選択され、好ましくはC1〜C8、より好ましくはC2〜C6である、請求項18〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
Zが、−(CH2−CH2)−、(CH2−CH2−CH2)−、−(CH2−CH2−CH2−CH2)−、−(CH2−CH2−CH2−CH2−CH2)−、−(CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2)−、−(CH2−CH2−O−CH2−CH2)−および−(CH2−CH2−O−CH2−CH2−CH2)−から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
Cat+が、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリニウム、アザチアゾリウム、オキソチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリズジウム、セレノゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、イソトリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、ジボルゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ジベンゾチオフェニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アノリニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キナザリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、タジニウム、オキサジニウムおよびアザアヌレニウムから選択される複素環構造を含む、またはそれからなる、請求項18〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
Cat+−Z−Basが、
【化4】

【化5】

【化6】

(式中、BasおよびZは、上記定義と同様であり、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RgおよびRhは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素、C1〜C40直鎖または分枝鎖アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基またはC6〜C10アリール基から選択され、但し、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、置換されていないか、C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキルおよびC7〜C30アルカリールから選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、または隣接炭素原子と結合しているRb、Rc、Rd、ReおよびRfのうちのいずれか2つは、メチレン鎖−(CH2q−(qは8〜20である)を形成している。)
から選択される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
本発明のイオン性液体中の前記元素の溶解度が、少なくとも0.05g/gである、前記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
前記溶解度が、110℃で、少なくとも0.05g/gである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記溶解度が、110℃で、少なくとも0.10g/gである、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記溶解度が、110℃で、少なくとも0.20g/gである、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記溶解度が、110℃で、少なくとも0.40g/gである、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記溶解度が、110℃で、少なくとも0.70g/gである、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記元素が、イオウである、前記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
イオウ、リン、セレンおよび/またはテルル、イオウから選択される元素を溶解させる方法であって、前記元素を上記イオン性液体に加える工程を含む方法。
【請求項36】
イオウ、リン、セレンおよび/またはテルルから選択される元素を結晶化させる方法であって、
(i)前記元素をイオン性液体中に溶解させて、溶液を形成する工程と、
(ii)前記元素を前記溶液から結晶化させる工程と
を含む方法。
【請求項37】
前記元素が、イオウである、請求項35または請求項36に記載の方法。

【公表番号】特表2009−511399(P2009−511399A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526556(P2008−526556)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003113
【国際公開番号】WO2007/020468
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(508049802)
【氏名又は名称原語表記】THE QUEEN’S UNI.IONIC LIQUID LAB. RESEARCH CENTRE
【Fターム(参考)】