説明

充填剤入りポリマー複合材料

ポリマーマトリックス;複数の充填剤;および少なくとも1つのセグメントが充填剤と相互作用するブロックコポリマー;を含む組成物が提供される。表面を有する複数の充填剤と、少なくとも1つのセグメントが、ポリマーマトリックス中で適用すると充填剤と相互作用することができるブロックコポリマーとを含む組成物も提供される。難燃性化合物と、少なくとも1つのセグメントが、ポリマーマトリックス中で適用すると難燃性化合物と相互作用することができるブロックコポリマーとを含む組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
一般に、高価なポリマー成分を置き換えるため、複合材料全体の特定の機械的特性を高めるため、またはその両方のために、ポリマー複合材料に充填剤が添加される場合が多い。充填剤を含有させることによって提供される向上は一般に、複合材料の強度対重量特性または引張り特性を解決することが意図される。通常、かかる特性に影響を与えるには、多量の充填剤が必要である。しかしながら、複合材料の少なくとも1つの機械的特性を高めると同時に、高レベルの充填剤を包含させることによって、他の機械的特性が悪影響を受ける場合が多い。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
(要旨)
本発明は、充填剤を含有するポリマー複合材料への添加剤としてのブロックコポリマーの使用に関する。充填剤と共にブロックコポリマーを使用することによって、充填剤入り複合材料の物理的性質が向上する。ポリマー複合材料においてブロックコポリマーと充填剤とを組み合わせることによって、ブロックコポリマーを組み込むことなく高レベルの充填剤によって達成される初期のレベルと比較して、引張り強さ、耐衝撃性、および弾性率など、複合材料の機械的性質を高めることができる。
【0003】
本発明の組成物は、ポリマーマトリックス、1種または複数種の充填剤および1種または複数種のブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーは、充填剤と相互作用することができる、少なくとも1つのセグメントを有する。本発明の目的では、ブロックコポリマーと充填剤との相互作用は一般に、その共有結合、水素結合、双極子結合、イオン結合、またはその組み合わせによる結合の形成として認識される。ブロックコポリマーの少なくとも1つのセグメントおよび充填剤を要する相互作用は、ブロックコポリマーを含まないポリマーマトリックスと比較して、ポリマーマトリックスの機械的性質を所望のレベルに向上または回復することができる。
【0004】
本発明は、充填剤および1種または複数種のブロックコポリマーを含有するポリマーマトリックスを形成する方法にも関する。その1種または複数種のブロックコポリマーは、充填剤と相互作用することができる。ブロックコポリマーと充填剤との組み合わせは、熱可塑性組成物、エラストマー組成物または熱硬化性組成物における利用可能性を有する。本発明の組成物において有用な充填剤は、ポリマーマトリックスで使用するのに適している、従来のすべての充填剤を含む。
【0005】
各ポリマーマトリックス、特定の充填剤、複数の充填剤、またはその組み合わせに対して、ブロックコポリマーを調整することができ、それに伴って、広範囲の柔軟性が加えられる。さらに、種々の物理的性質をブロックデザインによって高めることができる。ブロックコポリマーは、表面処理の代わりに使用することができる。代替方法としては、ブロックコポリマーは、表面処理と並行して使用することができる。
【0006】
(定義)
本発明の目的では、本出願で使用される以下の用語は、以下の通り定義される:
「ブロック」とは、隣接するブロック中に存在しない少なくとも1つの特徴を有する、多くのモノマー単位を含有する、ブロックコポリマーの一部を意味する。
「相溶性混合物」とは、第2材料の連続マトリックス中の分散液を形成することができるか、または両方の材料の共連続ポリマー分散液を形成することができる材料を意味する。
「ブロックコポリマーと充填剤の相互作用」とは、共有結合、水素結合、双極子結合、イオン結合またはその組み合わせによる結合の形成を意味する。
「ブロックコポリマー」とは、少なくとも2つの組成上独立したセグメントを有するポリマー、例えばジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマー、星型分岐ブロックコポリマー(star-branched block copolymer)または高分岐ブロックコポリマー(hyper-branched block copolymer)を意味する。
「ランダムブロックコポリマー」とは、少なくとも2つの別個のブロックを有するコポリマーであって、少なくとも1つのブロックが、少なくとも2つの種類のモノマー単位のランダム配置を含むコポリマーを意味する。
「ジブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマー」とは、隣接するすべてのモノマー単位(転移点を除いて)が、同一性を有するポリマーを意味し、例えば、−ABは、組成上異なる、AブロックおよびBブロックで構成されるジブロックコポリマーであり、ABCは、それぞれが組成上異なる、Aブロック、Bブロック、およびCブロックで構成されるトリブロックコポリマーである。
「グラフトブロックコポリマー」とは、主鎖上にグラフト化された側鎖ポリマーからなるポリマーを意味する。その側鎖ポリマーは、主鎖コポリマーと組成が異なるあらゆるポリマーであることができる。
「星型分岐ブロックコポリマー」または「高分岐ブロックコポリマー」とは、放射状ブロックコポリマー(radial block copolymer)としても知られる、単一の分岐または分岐点によって各鎖の一方の末端で互いに結合されたいくつかの直鎖状ブロック鎖からなるポリマーを意味する。
「末端官能化(end functionalized)」とは、少なくとも1つの鎖末端上で官能基を末端とするポリマー鎖を意味する。
「ポリマーマトリックス」とは、複合材料の添加剤が埋め込まれた、強化プラスチック材料の任意の樹脂相を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(詳細な説明)
ポリマーマトリックスは、相溶性混合物中の1種または複数の種類の充填剤、および1種または複数種のブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーは、相溶性混合物中で充填剤と相互作用することができる、少なくとも1つのセグメントを有する。ブロックコポリマーの少なくとも1つのセグメントおよび充填剤を要する相互作用は、ブロックコポリマーを含まないポリマーマトリックスと比較して、ポリマーマトリックスの機械的性質を所望のレベルに向上または回復することができる。
【0008】
(ポリマーマトリックス)
ポリマーマトリックスは、一部の場合において、ブロックコポリマーおよび1種または複数の種類の充填剤が使用される、任意の熱可塑性もしくは熱硬化性のポリマーまたは任意の熱可塑性もしくは熱硬化性のコポリマーを含む。ポリマーマトリックスは、炭化水素ポリマーと非炭化水素ポリマーのどちらも含む。有用なポリマーマトリックスの例としては、限定されないが、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリ尿素、ポリビニル樹脂、ポリアクリレートおよびポリメチルアクリレートが挙げられる。
【0009】
好ましい一用途は、押出しまたは成形のポリマー物品を形成する前に、溶融混合段階でその成分が分散される、溶融加工性ポリマーを要する。
【0010】
本発明の目的では、溶融加工性組成物は、組成物の少なくとも一部が溶融状態である間に加工することができる組成物である。
【0011】
従来から認められている溶融加工方法および装置を本発明の組成物の加工に使用することができる。溶融加工法の非限定的な例としては、押出し成形、射出成形、バッチ混合および回転成形が挙げられる。
【0012】
好ましいポリマーマトリックスとしては、ポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP))、ポリオレフィンコポリマー(例えば、エチレン−ブテン、エチレン−オクテン、エチレンビニルアルコール)、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー(例えば、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、エポキシ、アルキド樹脂、メラミン、フェノール樹脂、尿素、ビニルエステル、またはその組み合わせが挙げられる。
【0013】
ポリマーマトリックスは、一般に約30重量%を超える量で溶融加工性組成物中に含有される。ポリマーマトリックスの量は、例えば、ポリマーの種類、ブロックコポリマーの種類、充填剤の種類、加工装置、加工条件および所望の最終製品に応じて異なることは当業者には理解されよう。
【0014】
有用なポリマーマトリックスとしては、酸化防止剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、および顔料などの従来の添加剤を含有する、種々のポリマーおよびそのブレンドが挙げられる。ポリマーマトリックスは、粉末、ペレット、顆粒状で、または任意の他の押出し可能な形状で溶融加工性組成物中に組み込むことができる。
【0015】
他の好ましいポリマーマトリックスとしては、圧感接着剤(PSA)が挙げられる。これらの種類の材料は、ブロックコポリマーと共に充填剤を要する用途に非常に適している。PSAにおいて使用するのに適しているポリマーマトリックスは一般に、当業者によって認識される。さらに、PSAと共に、粘着付与剤、充填剤、可塑剤、顔料、繊維、強化剤、難燃剤、および酸化防止剤などの従来の添加剤もまた、混合物中に含有される。
【0016】
エラストマーは、ポリマーマトリックスとして使用するのに適しているポリマーのもう1つのサブセットである。有用なエラストマーポリマー樹脂(つまり、エラストマー)としては、熱可塑性および熱硬化性のエラストマーポリマー樹脂、例えば、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、スルホン化エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、ポリクロロプレン、ポリ(2,3−ジメチルブタジエン)、ポリ(ブタジエン−co−ペンタジエン)、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリスルフィドエラストマー、シリコーンエラストマー、ポリ(ブタジエン−co−ニトリル)、水素化ニトリル−ブタジエンコポリマー、アクリルエラストマー、エチレン−アクリレートコポリマーが挙げられる。
【0017】
有用な熱可塑性エラストマーポリマー樹脂としては、ガラス質または結晶質ブロックのブロックで構成されたブロックコポリマーが挙げられる。本発明の目的では、ポリマーマトリックスとして適しているブロックコポリマーは、充填剤と相互作用することができないコポリマーである。その非限定的な例としては、ポリスチレン、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(t−ブチルスチレン)、およびポリエステル、およびエラストマーブロック、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレンコポリマー、およびエチレン−ブチレンコポリマーが挙げられる。さらに、ポリエーテルエステルブロックコポリマー等も使用することができる。例えば、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)ブロックコポリマー(テキサス州ヒューストンのシェル・ケミカル社(Shell Chemical Company,Houston,Texas)から「クラトン(KRATON)」として市販)が挙げられる。前述のこれらのエラストマーポリマー樹脂のコポリマーおよび/または混合物も使用することができる。
【0018】
有用なポリマーマトリックスは、フルオロポリマーであることもできる。有用なフルオロポリマーとしては、例えば、2,5−クロロトリフルオロエチレン、2−クロロペンタフルオロプロペン、3−クロロペンタフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、2−ヒドロペンタフルオロプロペン、1,1−ジクロロフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、過フッ素化ビニルエーテル(例えば、CFOCFCFCFOCF=CFなどのパーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、またはパーフルオロ(メチルビニル)エーテルまたはパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)などのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル)、例えばニトリル含有モノマー(例えば、CF=CFO(CF)LCN、CF=CFO[CFCF(CF)O](CFO)CF(CF)CN、CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFCN、またはCF=CFO(CFOCF(CF)CN(式中、L=2〜12;q=0〜4;r=1〜2;y=0〜6;t=1〜4;u=2〜6))、臭素含有モノマー(bromine and/or containing monomer)(例えば、Z−Rf−Ox−CF=CF(式中、Zは、BrまたはIであり、Rfは、過フッ素化されており、かつ1つまたは複数のエーテル酸素原子を含有し得る、置換または非置換のC−C12フルオロアルキレンであり、xは、0または1である))などの硬化部位モノマー;またはその組み合わせを含むモノマーから、任意に、例えば、エチレンまたはプロピレンなどの更なる非フッ素化モノマーと併せて、製造可能である(例えば、フリーラジカル重合によって)フルオロポリマーが挙げられる。かかるフルオロポリマーの具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンのコポリマー;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル、およびフッ化ビニリデンのコポリマー;テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー;テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニル)エーテルコポリマー(例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(プロピルビニル)エーテル);およびその組み合わせが挙げられる。
【0019】
市販の有用な熱可塑性フルオロポリマーとしては、例えば、ミネソタ州オークデールのダイニオン社(Dyneon LLC,Oakdale,Minnesota)によって商品名「THV」(例えば、「THV220」、「THV400G」、「THV500G」、「THV815」、および「THV610X」)、「PVDF」、「PFA」、「HTE」、「ETFE」、および「FEP」で市販されているフルオロポリマー;ペンシルバニア州フィラデルフィアのアトフィナ・ケミカルズ社(Atofina Chemicals,Philadelphia,Pennsylvania)によって商品名「カイナー(KYNAR)」(例えば、「カイナー(KYNAR)740」)で市販されているフルオロポリマー;ニュージャージー州ソロフェアのソルベイ・ソレクシス社(Solvay Solexis,Thorofare,New Jersey)によって商品名「ハイラー(HYLAR)」(例えば、「ハイラー(HYLAR)700」)および「ハラー(HALAR)ECTFE」で市販されているフルオロポリマーが挙げられる。
【0020】
(充填剤)
1種または複数の種類の従来の充填剤が、本発明の複合材料と共に使用される。充填剤は、ポリマーマトリックス中で使用するのに適していることが、当業者によって一般に認識されている、あらゆる充填剤であることができる。充填剤を使用することによって、例えば、弾性率の増加、引張り強さの増加、および/または強度対密度比の向上などの特定の機械的な利点が得られる。本発明の目的では、本明細書で使用される充填剤は、ポリマーマトリックス中の1つまたは複数の特定の種類の充填剤、または多数の同じ個々の充填剤を意味する。
【0021】
本発明の組成物において有用な充填剤としては、ポリマーマトリックスで使用するのに適している従来のすべての充填剤が挙げられる。好ましい充填剤は、ガラス繊維、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭素(ナノ)繊維、ケイ酸アルミナ、マイカ、ケイ酸カルシウム、カルシウムアルミノフェライト(ポルトランドセメント)、セルロース系材料、ナノ粒子、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウムまたはセラミック材料である。対象の他の繊維としては、農業繊維(植物または動物の繊維材料または副生成物)が挙げられる。セルロース系材料は、様々なアスペクト比、化学組成、密度、および物理的特性を有する、天然材料または木材材料を含み得る。セルロース系材料の非限定的な例は、木粉、木部繊維、おがくず、かんな屑、新聞用紙、紙、亜麻、麻、もみ殻、ケナフ、ジュート、サイザル、およびピーナッツ殻である。
【0022】
セルロース系材料の組み合わせ、またはセルロース系材料と他の充填剤との組み合わせも、本発明の組成物において使用することができる。一実施形態は、ガラス繊維、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、セルロース系材料、およびナノ粒子を含み得る。
【0023】
コストを減らし、ポリマーの機械的性質を改善するために、CaCOなどの充填剤が使用される場合が多い。しばしば、添加することができるCaCOの量は、充填剤とポリマーの間の界面密着性が乏しいことによって制限される。この弱い界面は、複合材料の強度を最終的に低減する亀裂の初期部位である。
【0024】
タルクは一般に、寸法安定性を向上させ、剛性を高め、コストを下げるために、プラスチック用途で使用される。これは、一般に自動車産業、白色の製品、包装、ポリマー木材複合材料、およびすべてのプラスチックにおける利用可能性を有する。しかしながら、タルクおよび他の無機充填剤は、大部分のポリマーマトリックスにうまく結合しない。
【0025】
この制限を克服するために、タルクはしばしば、カップリング剤としてシラン、ステアリン酸塩、または無水マレイン酸グラフト化コポリマーで処理される。これらの方法は、複合材料の加工性および機械的性質を改善する傾向がある。本発明は、一般的なカップリング剤よりも低い添加率で高充填化ポリマーの弾性率、つまり剛性を高める、ブロックコポリマーの種類を開示している。物理的特性に対する本発明の効果は、タルクの量も低減することができるのに十分に有意である。
【0026】
他の好ましい実施形態において、充填剤は、難燃性組成物である。従来のすべての難燃性化合物が、本発明において使用することができる。難燃性化合物は、ポリマーマトリックスに添加されて、複合材料全体を発火しにくくすることができ、それらが点火された場合には、はるかに効率的に燃えにくくすることができる化合物である。難燃性化合物の非限定的な例としては:塩素化パラフィン;塩素化アルキルホスフェート;脂肪族臭素化化合物;芳香族臭素化化合物(臭素化ジフェニルオキシドおよび臭素化ジフェニルエーテルなど);臭素化エポキシポリマーおよびオリゴマー;赤リン;ハロゲン化リン;ホスファゼン;アリール/アルキルホスフェートおよびホスホネート;リン含有有機化合物(リン酸エステル、P含有アミン、P含有ポリオール);水和金属化合物(アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム);窒素含有無機化合物(リン酸アンモニウムおよびポリリン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム);モリブデン化合物;シリコーンポリマーおよび粉末;トリアジン化合物;メラミン化合物(メラミン、シアヌル酸メラミン、リン酸メラミン);グアニジン化合物;金属酸化物(三酸化アンチモン);硫化亜鉛;スズ酸亜鉛;ホウ酸亜鉛;金属硝酸塩;有機金属複合体;低融点ガラス、ナノ複合材(ナノ粘土およびカーボンナノチューブ);および発泡性グラファイトが挙げられる。化合物のうちの1種または複数種が、約5重量%〜約70重量%の量で本発明の組成物中に存在する。
【0027】
フルオロポリマー、および特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、溶融加工性を高めるために、従来の難燃性組成物と共にポリマーマトリックス中に組み込むことができる。ポリマーマトリックスへの難燃剤の組み込みは、組成物の溶融加工性に悪影響を及ぼし得ることは、従来から認識されている。難燃剤を含有するポリマーマトリックスへの1種または複数種のブロックコポリマーの組み込みは、組成物を溶融加工する能力に悪影響を及ぼすことなく、難燃剤の添加レベルを高くすることを可能にする。一実施例において、本明細書に記載の1種または複数種のブロックコポリマー、および難燃性充填剤と共にPTFEを含有させることによって、組成物の溶融加工が可能となる。PTFEは一般に、約0.5重量%〜約5.0重量%の量で溶融加工性組成物中に含有される。
【0028】
(ブロックコポリマー)
ブロックコポリマーは好ましくは、ポリマーマトリックスと相溶性である。相溶性混合物とは、第2材料の連続マトリックス中で分散液を形成することができる材料、または両方の材料の共連続ポリマー分散液を形成することができる材料を意味する。さらに、ブロックコポリマーは、充填剤と相互作用することができる。ある意味では、かつ本発明の範囲を限定することを意図することなく、出願人らは、ブロックコポリマーは、相溶性混合物中の充填剤に対してカップリング剤として働くことができる、相溶性混合物全体に充填剤を均一に分散するための分散剤として働くことができる、またはその両方であると考える。
【0029】
ブロックコポリマーの好ましい例としては、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマー、星型分岐コポリマーまたは高分岐コポリマーが挙げられる。さらに、ブロックコポリマーは、末端官能基を有し得る。
【0030】
ブロックコポリマーは一般に、異なるモノマーを逐次重合することによって形成される。ブロックコポリマーの形成に有用な方法としては、例えば、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、およびフリーラジカル重合法が挙げられる。
【0031】
ブロックコポリマーは、官能性部位を介して充填剤と相互作用する。官能性ブロックは一般に、例えば、酸(例えば、−COH、−SOH、−POH);−OH;−SH;第1級、第2級、または第3級のアミン;アンモニウムN−置換または非置換のアミドおよびラクタム;N−置換または非置換のチオアミドおよびチオラクタム;無水物;直鎖状または環状のエーテルおよびポリエーテル;イソシアネート;シアネート;ニトリル;カルバメート;尿素;チオ尿素;複素環式アミン(例えば、ピリジンまたはイミダゾール))などの1つまたは複数の極性部位を有する。かかる基を導入するために使用され得る有用なモノマーとしては、例えば、酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、および米国特許出願公開第2004/0024130号明細書(ネルソン(Nelson)ら)に記載のようにt−ブチルメタクリレートモノマー単位の酸触媒脱保護によって形成されたメタクリル酸官能基など);アクリレートおよびメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート)、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、N−置換およびN,N−二置換のアクリルアミド(例えば、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−(ジメチルアミノ)エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド)、N−エチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、およびN−エチル−N−ジヒドロキシエチルアクリルアミド)、脂肪族アミン(例えば、3−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン);および複素環式モノマー(例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−(2−アミノエチル)ピリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、3−アミノキヌクリジン、N−ビニルピロリドン、およびN−ビニルカプロラクタム)が挙げられる。
【0032】
他の適切なブロックは一般に、例えば、少なくとも約4個、8個、12個、またはさらには18個の炭素原子を有する部位など、脂肪族および芳香族の炭化水素部位;例えば、少なくとも約4個、8個、12個、またはさらには18個の炭素原子を有する部位などのフッ素化脂肪族および/またはフッ素化芳香族の炭化水素部位;およびシリコーン部位など、1つまたは複数の疎水性部位を有する。
【0033】
かかるブロックの導入に有用なモノマーの非限定的な例としては:エチレン、プロピレン、イソプレン、スチレン、およびブタジエンなどの炭化水素オレフィン;デカメチルシクロペンタシロキサンおよびデカメチルテトラシロキサンなどの環状シロキサン;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、およびクロロフルオロエチレンなどのフッ化オレフィン;ブチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレートなどの非フッ素化アルキルアクリレートおよびメタクリレート;式HC=C(R)C(O)O−X−N(R)SOf’(式中、Rf’は、−C13、−C、または−Cであり;Rは、水素、C−C10アルキル、またはC−C10アリールであり;Xは、二価連結基である)を有する、パーフルオロアルキルスルホンアミドアルキルアクリレートおよびメタクリレートなどのフッ素化アクリレート;が挙げられる。好ましい例としては、
【化1】

が挙げられる。
【0034】
かかるモノマーは容易に、供給元から入手することができるか、あるいは、例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,903,173号(セルノホス(Cernohous)ら)、米国特許出願第10/950932号明細書、米国特許出願第10/950834号明細書、および米国仮特許出願第60/628335号明細書における手順に従って製造することができる。
【0035】
官能性部位を有する有用なブロックコポリマーの他の非限定的な例としては、ポリ(イソプレン−ブロック−4−ビニルピリジン);ポリ(イソプレン−ブロック−メタクリル酸);ポリ(イソプレン−ブロック−グリシジルメタクリレート);ポリ(イソプレン−ブロック−メタクリル酸無水物);ポリ(イソプレン−ブロック−(メタクリル酸無水物−co−メタクリル酸));ポリ(スチレン−ブロック−4−ビニルピリジン);ポリ(スチレン−ブロック−メタクリルアミド);ポリ(スチレン−ブロック−グリシジルメタクリレート);ポリ(スチレン−ブロック−2−ヒドロキシエチルメタクリレート);ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−4−ビニルピリジン);ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−グリシジルメタクリレート);ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−メタクリル酸);ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−(メタクリル酸無水物−co−メタクリル酸));ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−メタクリル酸無水物);ポリ(MeFBSEMA−ブロック−メタクリル酸)(「MeFBSEMA」とは、例えばミネソタ州セントポールの3M社(3M Company,Saint Paul,Minnesota)から入手可能な、2−(N−メチルパーフルオロブタンスルホンアミド)エチルメタクリレートを意味する)、ポリ(MeFBSEMA−ブロック−t−ブチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−ブロック−t−ブチルメタクリレート−ブロック−MeFBSEMA)、ポリ(スチレン−ブロック−メタクリル酸無水物−ブロック−MeFBSEMA)、ポリ(スチレン−ブロック−メタクリル酸−ブロック−MeFBSEMA)、ポリ(スチレン−ブロック−(メタクリル酸無水物−co−メタクリル酸)−ブロック−MeFBSEMA))、ポリ(スチレン−ブロック−(メタクリル酸無水物−co−メタクリル酸−co−MeFBSEMA))、ポリ(スチレン−ブロック−(t−ブチルメタクリレート−co−MeFBSEMA))、ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−t−ブチルメタクリレート−ブロック−MeFBSEMA)、ポリ(スチレン−イソプレン−ブロック−メタクリル酸無水物−ブロック−MeFBSEMA)、ポリ(スチレン−イソプレン−ブロック−メタクリル酸−ブロック−MeFBSEMA)、ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−(メタクリル酸無水物−co−メタクリル酸)−ブロック−MeFBSEMA)、ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−(メタクリル酸無水物−co−メタクリル酸−co−MeFBSEMA))、ポリ(スチレン−ブロック−イソプレン−ブロック−(t−ブチルメタクリレート−co−MeFBSEMA))、ポリ(MeFBSEMA−ブロック−メタクリル酸無水物)、ポリ(MeFBSEMA−ブロック−(メタクリル酸−co−メタクリル酸無水物))、ポリ(スチレン−ブロック−(t−ブチルメタクリレート−co−MeFBSEMA))、およびポリ(ブタジエン−ブロック−4−ビニルピリジン)、ポリ(ブタジエン−ブロック−メタクリル酸)、ポリ(ブタジエン−ブロック−N,N−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート)、ポリ(ブタジエン−ブロック−2−ジエチルアミノスチレン)、ポリ(ブタジエン−ブロック−グリシジルメタクリレート)の水素化形態が挙げられる。一般に、ブロックコポリマーは、少なくとも1つのブロックが充填剤と相互作用することができるように選択すべきである。ブロックコポリマーの残りのブロックの選択は一般に、ブロックコポリマーがそれと合わせられるであろう、いずれかのポリマー樹脂の性質によって指示される。
【0036】
ブロックコポリマーは、当技術分野で従来から認識されているように、官能性開始剤を使用することによって、またはリビングポリマーを末端キャッピングすることによって合成され得る、末端官能化ポリマー材料であることができる。本発明の末端官能化ポリマー材料は、少なくとも1つの鎖末端上で官能基を末端とするポリマーを含み得る。ポリマー種は、ホモポリマー、コポリマー、またはブロックコポリマーであり得る。複数の鎖末端を有するこれらのポリマーでは、官能基は同じであっても異なっていてもよい。官能基の非限定的な例としては、アミン、無水物、アルコール、カルボン酸、チオール、マレエート、シラン、およびハロゲン化物が挙げられる。当技術分野で公知のリビング重合法を用いた末端官能化法を利用して、これらの材料を提供することができる。
【0037】
任意の量のブロックコポリマーを使用することができるが、一般にブロックコポリマーは、範囲10重量%までの量で含有される。
【0038】
(カップリング剤)
一態様において、充填剤をカップリング剤で処理して、充填剤とブロックコポリマーとの相互作用を高めることができる。ブロックコポリマーの相当する官能基との適切な反応性と調和する、または反応性を提供するカップリング剤を選択することが望ましい。カップリング剤の非限定的な例としては、ジルコン酸塩、シラン、またはチタン酸塩が挙げられる。一般的なチタン酸塩およびジルコン酸塩のカップリング剤は当業者には公知であり、これらの材料の使用および選択基準の詳細な概要は、モンテ(Monte),S.J.,ケンリッチ・ペトロケミカルズ社(Kenrich Petrochemicals,Inc.)、「ケン−リアクト(Ken−React)(登録商標)Reference Manual−Titanate,Zirconate and Aluminate Coupling Agents」、改訂第3版1995年3月に記載されている。カップリング剤は、約1重量%〜約3重量%の量で含有される。
【0039】
適切なシランは、縮合反応によってガラス表面にカップリングし、ケイ質充填剤とシロキサン結合を形成する。この処理によって、充填剤の湿潤性が高くなり、あるいは、ガラス表面への材料の付着が促進される。これは、無機充填剤と有機マトリックスとの共有結合、イオン結合、または双極子結合を生じさせるメカニズムを提供する。シランカップリング剤は、所望の特定の官能性に基づいて選択される。例えば、アミノシランガラス処理は、無水物、エポキシ基またはイソシアネート基を含有するブロックコポリマーと配合するのに望ましくあり得る。代替方法としては、酸性官能基でのシラン処理には、酸−塩基相互作用することができるブロック、イオン結合または水素結合のシナリオ(scenario)を有するように、ブロックコポリマーを選択する必要があり得る。適切なシランカップリング法は、「Silane Coupling Agents:Connecting Across Boundries」、バリー・アークルズ(Barry Arkles)著、165−189頁、Gelest Catalog 3000−A Silanes and Silicones:ゲレスト社、ペンシルバニア州モーリスビル(Gelest Inc.Morrisville,PA)に概説されている。当業者は、ブロックコポリマーの相互作用部位を合致させるように、適切な種類のカップリング剤を選択することができる。
【0040】
ポリマー複合材料におけるブロックコポリマーと充填剤との組み合わせは、引張り強さ、耐衝撃性、および弾性率などの複合材料の特定の機械的性質を高め得る。好ましい実施形態において、弾性率は、本発明のブロックコポリマーを有する比較用のポリマー組成物よりも50%以上改善され得る。さらに、引張り強さ、耐衝撃性および伸び率は、本発明のブロックコポリマーを含まないポリマー組成物と比較すると、少なくとも10%以上の向上を示す。他の実施形態において、伸び率は、200%も向上し得る。示される向上は、熱可塑性ポリマー組成物およびエラストマーポリマー組成物の両方に当てはまる。充填剤と相互作用する、ブロックコポリマーを含有するエラストマー組成物もまた、圧縮永久ひずみの10%以上の向上を示し得る。
【0041】
物理的性質の向上によって、本発明の複合材料は、多くのさまざまな用途での使用に適するようになる。非限定的な例としては、自動車部品(例えば、Oリング、ガスケット、ホース、ブレーキパッド、計器板、側面衝撃パネル、バンパー、およびフェーシア(fascia))、成形家庭用品、複合材料シート、熱成形品、および構造材料が挙げられる。
【実施例】
【0042】
実施例全体で使用される材料の説明は、以下の表1に含まれる。
【0043】
【表1】


【0044】
(分子量および多分散性)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって、平均分子量および多分散性を決定した。試料約25mgを(THF)10ミリリットル(mL)に溶解し、混合物を形成した。孔径0.2μmポリテトラフルオロエチレンシリンジフィルターを使用して、混合物を濾過した。次いで、マサチューセッツ州アマーストのポリマー・ラボラトリー社(PolymerLabs,Amherst,Massachusetts)から商品名「PLGEL−ミクストB(PLGEL−MIXED B)」で市販されており、かつオートサンプラーおよびポンプを備えたGPCシステムの一部である、長さ25cm×直径1cmのゲル充填カラムに、濾過した溶液約150マイクロリットルを注入した。GPCシステムは、流量約0.95mL/分で移動するTHF溶離剤を使用して室温で操作された。屈折率検出器を使用して、濃度の変化を検出した。数平均分子量(Mn)および多分散性指数(PDI)の計算値は、分子量範囲600〜6×10g/モルの狭い多分散性のポリスチレン対照を使用して較正した。実際の計算は、ソフトウェア(マサチューセッツ州アマーストのポリマー・ラボラトリー社(PolymerLabs,Amherst,Massachusetts)から商品名「キャリバー(CALIBER)」で市販されている)を使用して行った。
【0045】
H NMR分光法)
各ブロックの相対濃度をH核磁気共鳴(1H NMR)分光分析法によって決定した。試験片を濃度約10重量%で重水素化クロロホルムに溶解し、カリフォルニア州パロアルトのバリアン社(Varian,Inc.,Palo Alto,California)から商品名「ユニティ(UNITY)500MHz NMR分光計」で市販されている500MHz NMR分光計に入れた。固有のブロック成分スペクトルの相対面積からブロック濃度を計算した。
【0046】
(物理的性質の試験)
ミニ−ジェクター・インジェクション・モールダー・モデル45(Mini−Jector Injection Molder Model 45)(オハイオ州ニューベリー(Newbury,OH)のミニ−ジェクター・マシーナリー社(Mini−Jector Machinery Corp)から市販されている)を使用して、タルク、ATH、およびCaCOを含有するペレット化複合材料実施例を180℃および70psiで射出成形した。
【0047】
すべての複合材料に関して、物理的性質試験のために引張り試験片を作製し、ASTM D1708に従って製造した。インストロン(Instron)5500R引張試験機(マサチューセッツ州カントンのインストロン社(Instron Corporation,Canton,MA)から市販されている)で試料を試験した。21.1℃および相対湿度55%で温度および湿度制御された部屋において速度50.8mm/分で試料を引っ張った。各試料について、5つの試験片を試験し、引張弾性率の平均値を計算した。
【0048】
(充填剤入り複合材料の一般手順A:連続的な複合材料の形成)
ニュージャージー州ラムゼーのコペリオン社(Coperion;Ramsey,New Jersey)から商品名「コペリオン(COPERION)ZSK−25ワールド・ラボ・エクストルーダー(WORLD LAB EXTRUDER)」で市販されているL/D41:1を有する同時回転25mm二軸スクリュー押出機(TSE)を使用して、連続二軸スクリュー押出し成形を行った。押出機のバレル領域は長さ4D(100mm)である。すべての実施例において、押出機は、スクリュー回転数300rpm、392°F(200℃)で操作された。TSEは、バレル領域3において押出機にそれを加えた後に、溶融樹脂に充填剤および/またはブロックコポリマー添加剤を組み込むためのバレル領域4における混練セクションを有した。この混練セクションは長さ2.88Dであり、分散混合のための高せん断強度および中せん断強度の前進混練要素、およびメルトシールおよび分配混合を生じさせるための低せん断強度の逆進混練要素が組み込まれていた。バレル領域5の始まりにある、長さ1Dの小さな空気口(atmospheric vent)を使用して、閉じ込められた空気または揮発物を逃がした。
【0049】
複合材料全体に充填剤粒子を均質に分布させることを確実にするために分配混合に重点を置いて、3つの下流混合セクションが、分散および分配混合のためのせん断エネルギーを加えるために組み込まれた。3.36D混合セクションはバレル領域5および6にわたり、2.4D混合セクションがバレル領域7で用いられ、2.88D混合セクションは、バレル領域8および9にわたった。すべての場合において、適切な分散および分配混合が得られるように、中せん断強度ないし低せん断強度の前進混練要素および狭いパドル付きの低せん断強度の逆進混練要素が選択かつ使用された。残存するすべての揮発物を除去するために、バレル領域9における2D(50mm)真空孔で49トル(6.5kPa)の真空吸引を行った。
【0050】
熱均一性および更なる分配混合を達成するために、コペリオン社(Coperion)から商品名「ZME」で市販されている歯車式混合要素が、真空孔の下流で用いられた。バレル領域4および6それぞれにおける混練セクションにわたって、混練ブロックの先端の真上に位置する浸漬熱電対によって、溶融ストリームの温度をモニターし、記録した。
【0051】
ニュージャージー州ピットマンのKトロン・インターナショナル社(K−Tron International,Pitman,New Jersey)から商品名「Kトロン・グラヴィメトリック・フィーダー、モデルKCLKT20(K−TRON GRAVIMETRIC FEEDER,MODEL KCLKT20)」で市販されている双流渦巻クリューを備えた重量測定フィーダー(gravimetric feeder)を使用して、ポリオレフィン樹脂ペレットをバレル領域1の供給口に供給した。開いているバレル領域1供給口への充填剤およびブロックコポリマー添加剤の供給は、ニュージャージー州ピットマンのKトロン・インターナショナル社(K−Tron International,Pitman,New Jersey)から商品名「Kトロン・グラヴィメトリック・フィーダー、モデルKCLKT20(K−TRON GRAVIMETRIC FEEDER,MODEL KCLKT20)」で市販されている二軸オーガースクリューを備えた重量測定フィーダーを使用して行った。
【0052】
TSEからの押出し物を、ノースカロライナ州ヒッコリーのダイニスコ・エクストルージョン社(Dynisco Extrusion,Hickory,North Carolina)から商品名「ノーマグ(NORMAG)」で市販されている10.3mL/回転歯車ポンプによって計量し、直径1/4インチ(0.64cm)パイプ2本を通して押出し、ストランドを形成した。そのストランドを水浴中で8℃にて冷却し、オハイオ州ケントのリダクション・エンジニアリング社(Reduction Engineering;Kent,Ohio)から商品名「コナイア・モデル(CONAIR MODEL)304」で市販されているストランドペレタイザーを使用してペレット化した。
【0053】
(充填剤入り複合材料の一般手順B:連続的な複合材料の形成)
ニュージャージー州ラムゼーのコペリオン社(Coperion;Ramsey,New Jersey)から商品名「コペリオン(COPERION)ZSK−25ワールド・ラボ・エクストルーダー(WORLD LAB EXTRUDER)」で市販されているL/D41:1を有する同時回転25mm二軸スクリュー押出機(TSE)を使用して、連続二軸スクリュー押出し成形を行った。押出機のバレル領域は長さ4D(100mm)である。すべての実施例において、押出機は、スクリュー回転数450rpm、392°F(200℃)で操作した。TSEは、バレル領域3において押出機にそれを加えた後に、溶融樹脂に充填剤および/またはブロックコポリマー添加剤を組み込むためのバレル領域4における混練セクションを有した。この混練セクションは長さ2.88Dであり、分散混合のための高せん断強度および中せん断強度の前進混練要素、およびメルトシールおよび分配混合を生じさせるための低せん断強度の逆進混練要素が組み込まれていた。バレル領域5の始まりにある、長さ1Dの小さな空気口を使用して、閉じ込められた空気または揮発物を逃がした。
【0054】
複合材料全体に充填剤粒子を均質に分布させることを確実にするために分配混合に重点を置いて、3つの下流混合セクションが、分散および分配混合のためのせん断エネルギーを加えるために組み込まれた。3.36D混合セクションはバレル領域5および6にわたり、2.4D混合セクションがバレル領域7で用いられ、2.88D混合セクションは、バレル領域8および9にわたった。すべての場合において、適切な分散および分配混合が得られるように、中せん断強度ないし低せん断強度の前進混練要素および狭いパドル付きの低せん断強度の逆進混練要素が選択かつ使用された。残存するすべての揮発物を除去するために、バレル領域9における2D(50mm)真空孔で49トル(6.5kPa)の真空吸引を行った。
【0055】
熱均一性および更なる分配混合を達成するために、コペリオン社(Coperion)から商品名「ZME」で市販されている歯車式混合要素が、真空孔の下流で用いられた。バレル領域4および6それぞれにおける混練セクションにわたって、混練ブロックの先端の真上に位置する浸漬熱電対によって、溶融ストリームの温度をモニターし、記録した。
【0056】
ニュージャージー州ピットマンのKトロン・インターナショナル社(K−Tron International,Pitman,New Jersey)から商品名「Kトロン・グラヴィメトリック・フィーダー、モデルKCLKT20(K−TRON GRAVIMETRIC FEEDER,MODEL KCLKT20)」で市販されている双流渦巻クリューを備えた重量測定フィーダーを使用して、ポリオレフィン樹脂ペレットをバレル領域1の供給口に供給した。開いているバレル領域1供給口への充填剤および/またはブロックコポリマー添加剤の供給は、ニュージャージー州ピットマンのKトロン・インターナショナル社(K−Tron International,Pitman,New Jersey)から商品名「Kトロン・グラヴィメトリック・フィーダー、モデルKCLKT20(K−TRON GRAVIMETRIC FEEDER,MODEL KCLKT20)」で市販されている二軸オーガースクリューを備えた重量測定フィーダーを使用して行った。ニュージャージー州ラムゼーのコペリオン社(Coperion;Ramsey,New Jersey)から商品名「タイプZSBサイド−フィーダー(TYPE ZSB SIDE−FEEDER)」で市販の側方供給装置に供給するために、ニュージャージー州ピットマンのKトロン・インターナショナル社(K−Tron International,Pitman,New Jersey)から商品名「Kトロン・グラヴィメトリック・フィーダー、モデルKCLKT20(K−TRON GRAVIMETRIC FEEDER,MODEL KCLKT20)」で市販されている二軸凹形スクリューを備えた重量測定フィーダーを使用することによって、残りの充填剤を二軸スクリュー押出機のバレル領域5に加えた。充填剤の60重量%がバレル領域1に供給され、40重量%がバレル領域5に供給されるように、2つの重量測定フィーダーに分けた。
【0057】
TSEからの押出し物を、ノースカロライナ州ヒッコリーのダイニスコ・エクストルージョン社(Dynisco Extrusion,Hickory,North Carolina)から商品名「ノーマグ(NORMAG)」で市販されている10.3mL/回転歯車ポンプによって計量し、直径1/4インチ(0.64cm)パイプ2本を通して押出し、ストランドを形成した。そのストランドを水浴中で8℃にて冷却し、オハイオ州ケントのリダクション・エンジニアリング社(Reduction Engineering;Kent,Ohio)から商品名「コナイア・モデル(CONAIR MODEL)304」で市販されているストランドペレタイザーを使用してペレット化した。
【0058】
(充填剤入り複合材料の一般手順C:連続的な複合材料の形成)
ニュージャージー州ラムゼーのコペリオン社(Coperion;Ramsey,New Jersey)から商品名「コペリオン(COPERION)ZSK−25ワールド・ラボ・エクストルーダー(WORLD LAB EXTRUDER)」で市販されているL/D41:1を有する同時回転25mm二軸スクリュー押出機(TSE)を使用して、連続二軸スクリュー押出し成形を行った。押出機のバレル領域は長さ4D(100mm)である。すべての実施例において、押出機は、スクリュー回転数250rpm、340°F(171℃)で操作された。TSEは、バレル領域1供給口における押出機に添加される熱可塑性ペレットを溶融するための、バレル領域2および3にわたる混練セクションを有した。この混練セクションは長さ4.32Dであり、分散混合のための高せん断強度および中せん断強度の前進混練要素、およびメルトシールおよび一部の分配混合を生じさせるための低せん断強度の逆進混練要素が組み込まれていた。バレル領域5の始まりにある、長さ1Dの小さな空気口を使用して、閉じ込められた空気または揮発物を逃がした。ニュージャージー州ラムゼーのコペリオン社(Coperion;Ramsey,New Jersey)から商品名「タイプZSBサイド−フィーダー(TYPE ZSB SIDE−FEEDER)」で市販の側方供給装置によって押出機のバレル領域5に充填剤およびブロックコポリマー添加剤を導入した。
【0059】
複合材料全体に充填剤粒子を均質に分布させることを確実にするために分配混合に重点を置いて、2つの下流混合セクションが、分散および分配混合のためのせん断エネルギーを加えるために組み込まれた。5.28D混合セクションはバレル領域5、6および7にわたり、6.24D混合セクションはバレル領域7、8、および9にわたった。これらの混合セクションにおいて、適切な分散および分配混合が得られるように、広いパドル付きの高せん断強度ないし中せん断強度の、逆進混練要素、および狭いパドル付きの低せん断強度の逆進混練要素が選択かつ使用された。メルトシールを生じさせ、確実に溶融ストリームが混練領域を満たすようにするために、逆進運搬要素によって両方の混合セクションが覆われた。残存するすべての揮発物を除去するために、バレル領域9における2D(50mm)真空孔で49トル(6.5kPa)の真空吸引を行った。バレル領域6および8それぞれにおける混練セクションにわたって、混練ブロックの先端の真上に位置する浸漬熱電対によって、溶融ストリームの温度をモニターし、記録した。
【0060】
ニュージャージー州ピットマンのKトロン・インターナショナル社(K−Tron International,Pitman,New Jersey)から商品名「Kトロン・グラヴィメトリック・フィーダー、モデルKCLKT20(K−TRON GRAVIMETRIC FEEDER,MODEL KCLKT20)」で市販されている双流渦巻クリューを備えた重量測定フィーダーを使用して、ポリオレフィン樹脂ペレットをバレル領域1の供給口に供給した。ニュージャージー州ピットマンのKトロン・インターナショナル社(K−Tron International,Pitman,New Jersey)から商品名「Kトロン・グラヴィメトリック・フィーダー、モデルKCLKT20(K−TRON GRAVIMETRIC FEEDER,MODEL KCLKT20)」で市販されている二軸オーガースクリューを備えた重量測定フィーダーを使用して、充填剤とブロックコポリマー添加剤の6:1ブレンドをタイプZSBサイド−フィーダー(TYPE ZSB side−feeder)に供給した。実施例がブロックコポリマーなしで生成された場合には、このフィーダーは使用されなかった。ニュージャージー州ピットマンのKトロン・インターナショナル社(K−Tron International,Pitman,New Jersey)から商品名「Kトロン・グラヴィメトリック・フィーダー、モデルKCLKT20(K−TRON GRAVIMETRIC FEEDER,MODEL KCLKT20)」で市販されている二軸凹形スクリューを備えた重量測定フィーダーを使用して、残りの充填剤を側方供給装置に供給した。
【0061】
TSEからの押出し物を、ノースカロライナ州ヒッコリーのダイニスコ・エクストルージョン社(Dynisco Extrusion,Hickory,North Carolina)から商品名「ノーマグ(NORMAG)」で市販されている10.3mL/回転歯車ポンプによって計量し、直径1/4インチ(0.64cm)パイプ2本を通して押出し、ストランドを形成した。そのストランドを水浴中で8℃にて冷却し、オハイオ州ケントのリダクション・エンジニアリング社(Reduction Engineering;Kent,Ohio)から商品名「コナイア・モデル(CONAIR MODEL)304」で市販されているストランドペレタイザーを使用してペレット化した。
【0062】
(木粉充填剤入り複合材料、連続的な複合材料の形成)
円錐形二重反転スクリューおよびアキュレート・オープン・ヘリックス(Accurate open helix)乾燥材料フィーダー(ウィスコンシン州ホワイトウォーターのアキュレート社(Accurate Co.Whitewater,WI)から市販)を備えた、19mm、L:D15:1、ハーケ・レオコード(Haake Rheocord)二軸スクリュー押出機(ニューハンプシャー州ニューイントンのハーケ社(Haake Inc.,Newington,NH)から市販)を使用して、複合材料の押出し成形を行った。ハーケRC9000コントロール・データ・コンピューターソフトウェア(Haake RC 9000 control data computerized software)(ニューハンプシャー州ニューイントンのハーケ社(Haake Inc.,Newington,NH)から市販)を使用して、押出し成形のパラメーターを制御し、実験データを記録した。標準直径1/8インチ、4ストランドのダイ(ニューハンプシャー州ニューイントンのハーケ社(Haake Inc.,Newington,NH)から市販)によって材料を押出し成形した。
【0063】
木粉(320g)を最初に、真空オーブン内で105℃(約1mmHg)で16時間、予備乾燥させた。次いで、比較的均一な混合物が得られるまで、HDPE(472g)をプラスチックバッグ中で木分とドライブレンドし、そのブレンドを乾燥粉末フィーダーに入れた。押出し成形前に、添加剤をHPDE/木粉混合物とドライブレンドした。材料を速度20g/分(せん断速度約30s−1)で押出機に供給し、それぞれの領域における以下の温度プロファイル:210℃/180℃/180℃を用いて加工した。実験を全体通して、ダイも180℃に維持した。
【0064】
(難燃性配合物の実験)
円錐形二重反転スクリューおよびアキュレート・オープン・ヘリックス(Accurate open helix)乾燥材料フィーダー(ウィスコンシン州ホワイトウォーターのアキュレート社(Accurate Co.Whitewater,WI)から市販)を備えた、19mm、L:D15:1、ハーケ・レオコード(Haake Rheocord)二軸スクリュー押出機(ニューハンプシャー州ニューイントンのハーケ社(Haake Inc.,Newington,NH)から市販)を使用して、複合材料の押出し成形を行った。ハーケRC9000コントロール・データ・コンピューターソフトウェア(Haake RC 9000 control data computerized software)(ニューハンプシャー州ニューイントンのハーケ社(Haake Inc.,Newington,NH)から市販)を使用して、押出し成形のパラメーターを制御し、実験データを記録した。標準直径0.05cm、4ストランドのダイ(ニューハンプシャー州ニューイントンのハーケ社(Haake Inc.,Newington,NH)から市販)によって材料を押出し成形した。
【0065】
P(I−VP)/FRレオガード(Reogard)化合物を配合するために、混合ボウル(ハーケ社(Haake inc.)から市販のレオミックス(Reomix)3000E)を使用して、P(I−VP)試料の予備配合を行った。温度225℃およびローター回転数20rpmでの5分間のブレンド(レオガード(Reogard)中にP(I−VP)33重量%)の混合は、P(I−VP)/レオガード(Reogard)混合物をブレンドするのに十分であった。このプロセス中に、レオガード(Reogard)を混合ボウルに入れ、P(I−VP)を添加する前に、最初に溶融した。これらの溶融ブレンドが冷却されたら、実験室規模のミル(ペンシルベニア州レッドライオンのトーマス・ワイリー,レーマン・サイエンティフィック社(Thomas−Wiley,Lehman Scientific,Red Lion PA))を使用して、大きな塊を粉末に粉砕した。次いで、予備配合されたP(I−VP)/レオガード(Reogard)(量については、表2を参照)を使用して、および使用せず、プラスチックバッグ中で、比較的均一な混合物が得られるまで、PP(1:1ブレンド,エクソン(Exxon)1024E−4ペレット;BPソルベイ(Solvay)HB9600フレーク)をレオガード(Reogard)とドライブレンドし、そのブレンドを乾燥粉末フィーダーに入れた。
【0066】
材料を速度17g/分(せん断速度約22s−1)で押出機に供給し、それぞれの領域における以下の温度プロファイル:190℃/190℃/190℃を用いて加工した。実験を全体通して、ダイも190℃に維持した。キリアン(Killian)2インチ・ペレタイザー(ニュージャージー州シーダーグローヴのキリアン・エクストルーダーズ社(Killian Extruders Inc.,Cedar Grove,NJ.))を使用して押出し物をペレット化する前に、長さ4インチの水浴を用いて直ぐに冷却した。これらの配合物のストランドを、表面粗さ分析のために収集した。
【0067】
【表2】

【0068】
(ポリオレフィン/レオガード(Reogard)複合材料フィルム配合物)
円錐形二重反転スクリューを備えた、19mm、L:D15:1、ハーケ・レオコード(Haake Rheocord)二軸スクリュー押出機(ニューハンプシャー州ニューイントンのハーケ社(Haake Inc.,Newington,NH)から市販)を使用して、複合材料の押出し成形およびその後のフィルムの形成を行った。溶融混合前に、塊(mass)300gをベースとする成分の粉末ブレンドを調製し、フラッド供給(flood−feeding)によって押出機に供給した。12インチ、3ロールのスタック(ニュージャージー州トトワのウェイン・マシーン・アンド・ダイ社(Wayne Machine & Die Co.,Totowa,NJ)から市販)上に標準6インチフィルムダイを通して、複合材料を押出し成形した。
【0069】
(ポリオレフィン/レオガード(Reogard)フィルム品質測定)
フィルムとして押出し成形されるその能力について、難燃性複合材料を分析した。0〜10の評点システムを開発した。このシステムでは、評点0は、フィルムを押出し成形することができないことに相当する。評点10は、比較的均一な厚さであり、かつボイドが存在しない、平滑なフィルムに相当する。この評点システムは本質的に、これらの2つの間で線形であり、表3に示される。
【0070】
【表3】

【0071】
(表面粗さ分析)
RaおよびRqの定義はISO4287から採用される。Raは、サンプリングの長さ内の縦座標絶対値(Z(x))の相加平均であり、Z(x)は、x点での最適(best fit)線からの距離である。Rqは、サンプリング長さ内の縦座標値(Z(x))の二乗平均値である。この研究では、サンプリング長さは、5mmであるように選択され、短波長カットオフは、画像画素サイズ3.6ミクロンによって定義された。このサンプリング長さは、各試料に対して最適化するのではなく、全セットの試料に対して結像(imaging)条件を最適化することに基づいた。さらに、サンプリング長さは、提示された試料において観察されたサンプリング長さの範囲でRaのISO4288ガイドラインとかなり一致するように選択された。ポラロイドMP−3コピースタンド(Polaroid MP−3 copy stand)に取り付けられた、インフィニヴァー・ビデオ(Infinivar Video)顕微鏡レンズを備えたレシア(Lecia)DC300デジタルカメラを使用することによって、画像を取り込んだ。スタンドは、試料の背面照明のために使用される蛍光灯ライトボックスベースを有する。背面(または透過)光照明は、試料のエッジの非常に高いコンストラストの画像を提供する。
【0072】
(レオガード(Reogard)/ポリオレフィン複合材料の射出成形)
シンシナティ・ミリクロン−ファナック・ロボショット110(Cincinnati Milicron−Fanuc Roboshot 110)(オハイオ州バテービアのミラクロン・プラスチックス・テクノロジーズ社(Milacron Plastics Technologies,Batavia,OH)から市販)を使用して、射出成形を行った。続いて、インストロン(Instron)5564万能材料試験(マサチューセッツ州カントンのインストロン社(Instron Corporation,Canton,MA)から市販)を使用して、ASTM D1708に記載のように、各試料で引張り試験を行った。15部品を製造する際、射出成形機および型が確実に混入物を含まないようにするために、試料を射出する前に、未使用の(virgin)1024E−4樹脂を射出しておいた。続いて、試料の15部品を作製した。試料それぞれに関して、この手順を繰り返した。
【0073】
【表4】

【0074】
(比較例1〜4)
充填剤入り複合材料の一般手順A〜C、連続的な複合材料の形成に従って、種々の充填剤添加率(10〜60%)で充填剤入り複合材料を製造した。比較例1には手順A、比較例2には手順B、比較例3および4には手順Cを用いた。比較例1〜4についての供給量、得られる組成物、得られる弾性率の測定値を表5に示す。
【0075】
【表5】

【0076】
(実施例5〜23)
充填剤入り複合材料の一般手順A〜C、連続的な複合材料の形成に従って、充填剤入り複合材料を製造した。実施例5〜8に一般手順Aを適用し、実施例9〜12には手順Bを適用し、実施例13〜23には手順Cを適用した。種々の充填剤添加率(10〜60%)で添加剤として、種々のブロックコポリマーを使用した。供給量、得られる組成物、得られる弾性率の測定値を表6に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
引張弾性率のデータによって明らかなように、1%と少ないブロックコポリマーを添加することによって、TPO/タルク複合材料の機械的性質に重要な効果を及ぼすことができる。10%タルク充填剤入り複合材料にP(S−VP)またはP(S−MAn)1%または5%を添加することによって、弾性率は著しく影響を受け、ほぼ100%以上弾性率が増加する(比較例1に対して実施例5〜8)。
【0079】
TPOにタルク50%を添加した場合、非充填剤入りポリマーと比較して、弾性率の増加が確認される。しかしながら、50%タルク充填剤入り複合材料にP(S−VP)またはP(S−MAn)1%または5%を添加することによって、タルク充填剤入りTPOに比べて、弾性率が著しく増加する(実施例9〜12と共に実施例2を参照)。同様な傾向が、ATHを含有するLDPE複合材料(実施例13〜19と共に実施例3参照)およびCaCOを含有するLDPE複合材料(実施例20〜23と共に実施例4参照)で見られた。
【0080】
(比較例24および実施例25〜26 レオガード(Reogard)/PP充填剤入り複合材料)
難燃性配合物の実験の一般手順に従って、レオガード(Reogard)/PP充填剤入り複合材料を製造した。物理的性質試験および表面粗さの結果を表7に示す。
【0081】
【表7】

【0082】
これらのストランドの表面粗さ分析から分かるように(表7)、1%と少ないP(I−VP)ブロックコポリマーを含有させることによって、表面の品質の劇的な向上が達成されている(実施例25および26と共に24参照)。
【0083】
難燃性配合物の物理的性質に対するP(I−VP)含有の効果を評価するために、種々の配合物を射出成形して、物理的性質の試験に適した試料を作製した。1%と少ないP(I−VP)を含有させることによって、最大引張り応力および降伏応力が改善され、P(I−VP)3%を含有させることによって、この場合における対照と比べて破断点伸びが改善される(実施例25および26と共に24参照)。
【0084】
射出成形中、P(I−VP)を含有する試料(実施例25)から製造されたPP/レオガード(Reogard)部品は、対照PP/レオガード(Reogard)材料(実施例24)に対して、金型およびスプルーからの取り出しが容易であるため、加工およびサイクルが容易であった。射出口に最も近い箇所で、特にスプルーにおいて、対照試料は金型に付着した(実施例24)。しかしながら、P(I−VP)を有する試料のいずれも、この現象を示さず、射出およびサイクルが容易であった(実施例25)。
【0085】
(比較例27〜30 ポリオレフィン/レオガード(Reogard)複合材料フィルムの形成)
上述のポリオレフィン/レオガード(Reogard)複合材料フィルムの形成手順に従って、レオガード(Reogard)/PP複合材料を形成した。ポリオレフィン/レオガード(Reogard)フィルム品質測定に示されるガイドラインに従って、フィルムを作製し、評価した。表8は、考察される他の比較用添加剤の説明を含む、これらの複合材料の内容を示す。
【0086】
【表8】

【0087】
レオガード(Reogard)を含有しないPPフィルム(実施例27)は、30%レオガード(Reogard)(実施例28)を含有するPP/レオガード(Reogard)複合材料、30%レオガード(Reogard)/1%PS(実施例29)を含有するPP/レオガード(Reogard)複合材料、30%レオガード(Reogard)/1%MAPP(実施例30)を含有するPP/レオガード(Reogard)複合材料と比較して、優れた品質を示した。
【0088】
(実施例32〜36 ポリプロピレン/レオガード(Reogard)複合材料フィルムの形成)
上述のポリオレフィン/レオガード(Reogard)複合材料フィルムの形成手順に従って、レオガード(Reogard)/PP複合材料を形成した。ポリオレフィン/レオガード(Reogard)フィルム品質測定に示されるガイドラインに従って、フィルムを作製し、評価した。表9は、これらの複合材料の内容を示し、添加剤としての数種類のブロックコポリマーの検討を含む。
【0089】
【表9】

【0090】
明らかに、ブロックコポリマーを含有させることは、表9に示されるように、溶融強度およびフィルム品質を向上させる助けとなる。特に、それを含有せず配合されたPP/レオガード(Rheogard)複合材料に対するフィルム品質の改善におけるP(I−S−VP)の活性を留意されたい(実施例36と共に実施例28参照)。
【0091】
(比較例37および実施例38〜39 レオガード(Reogard)/HDPE複合材料の形成)
上述の難燃性配合物の実験手順に従って、レオガード(Reogard)/HDPE複合材料を形成した。上記の表面粗さ分析の説明に示されるガイドラインに従って、複合材料のストランドを評価した。表10は、加工助剤、PA−5933が存在する、および存在しない、P(I−VP)の試験を含む、これらの複合材料の内容を示す。
【0092】
【表10】

【0093】
実施例37および38を比較すると、P(I−VP)材料の存在は、表面プロフィロメトリーによって測定されるように、これらの複合材料ストランドの表面品質を改善する。更なる改善が、ブロックコポリマーとPA−5933との組み合わせを使用することによって見出される(実施例39と共に実施例38参照)。
【0094】
(比較例40および実施例41 木材ポリマー複合材料の形成)
木粉充填剤入り複合材料、連続的な複合材料の形成の一般手順に従って、木粉充填剤入り複合材料を製造した。P(S−GMA)を使用し、木粉のみを含有する試料と比較した。供給量、組成、および得られた引張り測定値を表11に示す。
【0095】
【表11】

【0096】
実施例40および41を比較すると、これらの木粉複合材料中にブロックコポリマーを使用することによって、引張り強さが向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリマーマトリックス、
(b)複数種の充填剤、および
(c)ブロックコポリマーの少なくとも1つのセグメントが前記充填剤と相互作用する、ブロックコポリマー、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記ブロックコポリマーが、10重量%までの量で含有される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、ポリマーマトリックスおよび充填剤のみを有する組成物に比べて、約25%以上の弾性率の増加を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ブロックコポリマーが、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマー、星型分岐ブロックコポリマー、末端官能化コポリマー、および高分岐ブロックコポリマーのうちの1種または複数種から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックスが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリ尿素、ポリビニル樹脂、ポリアクリレート、フッ素化ポリマー、およびポリメチルアクリレートのうちの1種または複数種から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ブロックコポリマーの少なくとも1つのセグメントが、ポリマーマトリックスと相溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
(a)表面を有する複数の充填剤、および
(b)ブロックコポリマーの少なくとも1つのセグメントが、ポリマーマトリックス中で適用すると、充填剤と相互作用することができる、ブロックコポリマー、
を含む、組成物。
【請求項8】
前記充填剤が、難燃性化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ブロックコポリマーが、10重量%までの量で含有される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
酸化防止剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、ミクロスフィア、および顔料のうちの1種または複数種をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記ブロックコポリマーが、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、グラフトブロックコポリマー、星型分岐ブロックコポリマー、末端官能化コポリマー、および高分岐ブロックコポリマーのうちの1種または複数種から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリマーマトリックスが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリ尿素、ポリビニル樹脂、ポリアクリレート、フッ素化ポリマー、およびポリメチルアクリレートのうちの1種または複数種から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
(a)難燃性化合物、および
(b)ブロックコポリマーの少なくとも1つのセグメントが、ポリマーマトリックス中で適用すると、難燃性化合物と相互作用することができる、ブロックコポリマー、
を含む、組成物。
【請求項14】
フッ素化ポリマーをさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記フッ素化ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ポリマーマトリックスをさらに含み、前記ポリマーマトリックスがフィルムに押出し成形される、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物を溶融加工することを含む、方法。

【公表番号】特表2008−523224(P2008−523224A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545695(P2007−545695)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/044806
【国際公開番号】WO2006/063317
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
2.POLAROID
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】