説明

充放電制御回路及び充電式電源装置

【課題】低消費電流の中間端子はずれ検出回路を備えた充放電制御回路及び充電式電源装置を提供する。
【解決手段】充放電制御回路の2次電池が接続される端子に設けられた中間端子はずれ検出回路の定電流回路を、デプレッション型MOSトランジスタと、デプレッション型MOSトランジスタのゲート端子とソース端子間に接続した抵抗とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直列に接続された複数の2次電池を備えた電池ユニットの充放電を制御することができる充放電制御回路及び充電式電源装置に関し、より詳しくは充電式電源装置の安全性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
充電式電源装置において、安全性の向上は重要な課題である。特に複数個の2次電池を搭載した充電式電源装置は、電池ユニットと充放電制御回路との接続部分の断線(以降「中間端子はずれ」と呼ぶ)による充放電制御不良という課題がある。中間端子はずれの対策としては、図3に示すような充電式電源装置が知られている。
【0003】
図3の充電式電源装置は以下のように構成されている。2次電池2及び3が充放電制御回路1の正極電源端子4と負極電源端子6との間に直列に挿入されている。また、2次電池2及び3の接続点は充放電制御回路1の中間端子5に接続されている。2次電池2の電圧は電圧分割回路7により分割され、その分割電圧を電圧検出回路7で検出している。電圧検出回路7の出力は制御回路11に入力されている。制御回路11は、各々の2次電池が過充電状態または過放電状態の時に、2次電池と充電式電源装置の外部端子との間の充放電制御スイッチ(図示しない)をOFFする信号を出力する。従って、制御回路11は論理回路のみで構成されている。2次電池3に対しても同様に、電圧分割回路8と電圧検出回路10により過充電状態及び過放電状態を検出する構成になっている。この検出結果は、ディジタル信号で制御回路11に同様に入力されている。従って、制御回路11は2次電池2及び3のいずれか1つの2次電池が過充電または過放電状態になると2次電池と外部との接続を遮断して、過充電及び過放電の進行を止める働きをする。2つの2次電池の充電特性及び放電特性は全く同じではないので、別々に過放電・過充電を検出制御する必要がある。
【0004】
定電流回路15は、一定の電流を正極電源端子4から中間端子5に流している。定電流回路15は、ゲート端子とソース端子を結線したデプレッション型MOSトランジスタを用いている。
【0005】
上記のように構成した従来の充電式電源装置は、以下のように動作をして中間端子はずれを検出し、充放電を停止する。中間端子5と2次電池2及び3の接続が外れた場合、定電流回路15の定電流が電圧分割回路8に流れて、中間端子5の電圧は正極電源端子4にプルアップされる。電圧分割回路8は、正常な電圧よりも高い電圧が印加されるので過充電を検出する。従って、制御回路11は充放電制御スイッチをOFFする信号を出力する。
【0006】
すなわち、正極電源端子4と中間端子5の間に定電流回路15を設けたので、中間端子5の接続が外れても、2次電池が過充電状態や過放電状態にならない。従って、安全性の高い充電式電源装置を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−308115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の定電流回路では中間端子外れを検出するために必要十分な電流値に設定することが困難であるという課題があった。
【0009】
中間端子外れの状態において、中間端子の電位は上下に接続されている電圧分割回路によって固定されている。そのため、定電流回路は電圧分割回路による電流を上回る電流値で中間端子をプルアップしなければならない。電圧分割回路は抵抗素子によって構成されているため、抵抗素子の製造ばらつきを考慮して定電流値を設定する必要があり、従って冗長を含んだ大きな定電流が必要となる。
【0010】
一方、定電流回路の電流は接続されている電池にとってアンバランス電流となるため、大きすぎる低電流は電池電圧のバランスが崩れる原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来の課題を解決するために、本発明の充放電制御回路は以下のような構成とした。
充放電制御回路の2次電池が接続される端子に設けられた中間端子はずれ検出回路である定電流回路を、分割抵抗の抵抗素子の抵抗値のばらつきに応じて定電流値が可変する構成とした。より具体的には、デプレッション型MOSトランジスタと、デプレッション型MOSトランジスタのゲート端子とソース端子間に抵抗を接続する構成とした。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成の定電流回路で構成した中間端子はずれ検出回路とすることで、電圧分割回路を構成する抵抗素子の抵抗値が大きくなるようにばらつき、大きなプルアップ電流が不要となる場合には定電流値を小さくし、逆に電圧分割回路を構成する抵抗素子の抵抗値が小さくなるようにばらつき、大きなプルアップ電流が必要となる場合には定電流値を大きくすることで中間端子外れに必要十分な定電流値を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の充電式電源装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の充電式電源装置の他の例を示すブロック図である。
【図3】従来の充電式電源装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の充電式電源装置の一例を示すブロック図である。
本発明の充電式電源装置は、電池ユニットを構成する2次電池2及び3と、充放電制御回路1を備えている。直列に接続された2次電池2及び3は、充放電制御回路1の正極電源端子4と負極電源端子6の間に接続されている。また、2次電池2と3の接続点は中間端子5に接続されている。
【0015】
充放電制御回路1は、正極電源端子4と中間端子5に接続された電圧分割回路7と、負極電源端子6と中間端子5に接続された電圧分割回路8と、電圧分割回路7及び8の出力端子が接続された制御回路11と、正極電源端子4と中間端子5に接続された中間端子はずれ検出回路である定電流回路15と、を備える。
【0016】
定電流回路15は、デプレッション型MOSトランジスタと、デプレッション型MOSトランジスタのゲート端子とソース端子間に接続した抵抗と、を備える。ここで、ゲート端子とソース端子間に接続した抵抗は、電圧分割回路8に用いている抵抗と同じ種類の抵抗を用いる。
【0017】
上述したような充電式電源装置は、以下のように動作して中間端子はずれを検出して2次電池を保護する機能を有する。
【0018】
2次電池2の電圧は、電圧分割回路7により分割され、分割電圧として出力される。その分割電圧は、電圧検出回路9で検出される。電圧検出回路9の出力は制御回路11に入力される。制御回路11は、各々の2次電池が過充電状態または過放電状態の時に、2次電池2及び3と外部端子との間のスイッチ(図示しない)をOFFする信号を出力する。従って、制御回路11は論理回路のみで構成されている。
【0019】
また、2次電池3に対しても、同様に電圧分割回路8と電圧検出回路10により過充電状態及び過放電状態を検出する構成になっている。この検出結果は、ディジタル信号で制御回路11に同様に入力されている。
【0020】
従って、制御回路11は2次電池2及び3のいずれか1つの2次電池が過充電または過放電状態になると、外部との接続を遮断して、過充電及び過放電の進行を止める働きをする。2次電池2及び3の充電特性及び放電特性は全く同じではないので、別々に過放電・過充電を検出制御する必要がある。
【0021】
中間端子5の接続が正常な場合、定電流回路15は正極電源端子4から中間端子5に電流を流している。
【0022】
次に、中間端子5の接続が外れた場合の動作について説明する。
中間端子5と2次電池2及び3の接続が外れた場合、定電流回路15の定電流が電圧分割回路8に流れて、中間端子5の電圧は正極電源端子4にプルアップされる。電圧分割回路8は、正常な電圧よりも高い電圧が印加されるので過充電を検出する。従って、制御回路11は充放電制御スイッチをOFFする信号を出力する。
【0023】
ここで、デプレッション型MOSトランジスタのゲート端子とソース端子の間に抵抗を接続することで、ゲート端子電圧はソース端子電圧よりも、抵抗の電圧降下分だけ低くなる。電圧分割回路を構成する抵抗素子の抵抗値が大きくなるようにばらついた場合には、抵抗の両端にかかる電圧が高くなるため、デプレッション型MOSトランジスタのソース電圧は高くなり電流値は小さくなる。逆に電圧分割回路を構成する抵抗素子の抵抗値が小さくなるようにばらついた場合には、抵抗の両端にかかる電圧が小さくなるため、デプレッション型MOSトランジスタのソース電圧は低くなり電流値は大きくなる。
【0024】
このようにデプレッション型MOSトランジスタのゲート端子とソース端子間に抵抗を接続したことによって、抵抗素子の製造ばらつきに対して、定電流値を調整し、必要十分なプルアップ電流を得ることができる。
【0025】
図2は、本発明の充電式電源装置の他の例を示すブロック図である。
図2の充放電制御回路1は、中間端子はずれ検出回路である定電流回路15を電源中間端子5と負極電源端子6の間に接続している。定電流回路15は、図1と同様に、デプレッション型MOSトランジスタと、デプレッション型MOSトランジスタのゲート端子とソース端子間に接続した抵抗と、を備える。ここで、ゲート端子とソース端子間に接続した抵抗は、電圧分割回路7に用いている抵抗と同じ種類の抵抗を用いる。
【0026】
上述したような充電式電源装置は、以下のように動作して中間端子はずれを検出して2次電池を保護する機能を有する。
中間端子5の接続が正常な場合、定電流回路15は中間端子5から負極電源端子6に電流を流している。
【0027】
次に、中間端子5の接続が外れた場合の動作について説明する。
中間端子5と2次電池2及び3の接続が外れた場合、定電流回路15の定電流が電圧分割回路7から流れて、中間端子5の電圧は負極電源端子6にプルダウンされる。電圧分割回路7は、正常な電圧よりも高い電圧が印加されるので過充電を検出する。従って、制御回路11は充放電制御スイッチをOFFする信号を出力する。
【0028】
ここで、デプレッション型MOSトランジスタのゲート端子とソース端子の間に抵抗を接続することで、ゲート端子電圧はソース端子電圧よりも、抵抗の電圧降下分だけ低くなる。電圧分割回路を構成する抵抗素子の抵抗値が大きくなるようにばらついた場合には、抵抗の両端にかかる電圧が高くなるため、デプレッション型MOSトランジスタのソース電圧は高くなり電流値は小さくなる。逆に電圧分割回路を構成する抵抗素子の抵抗値が小さくなるようにばらついた場合には、抵抗の両端にかかる電圧が小さくなるため、デプレッション型MOSトランジスタのソース電圧は低くなり電流値は大きくなる。
このようにデプレッション型MOSトランジスタのゲート端子とソース端子間に抵抗を接続したことによって、抵抗素子の製造ばらつきに対して、定電流値を調整し、必要十分なプルアップ電流を得ることができる。
【0029】
なお、本発明の充電式電源装置は、2個の2次電池を備えた例で説明したが、3個以上の2次電池を備えていても、1個置きに中間端子はずれ検出回路を設けることで、同様の効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0030】
1 充放電制御回路
5 中間電圧入力端子
7、8 電圧分割回路
9、10 電圧検出回路
11 制御回路
15 定電流回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の2次電池を備えた電池ユニットの充放電を制御する充放電制御回路であって、
前記電池ユニットの2次電池間の接続端子を接続する1つまたは複数の中間端子と、
前記複数の2次電池に対応して設けられた複数の分割抵抗と、
前記中間端子に接続された中間端子はずれ検出回路と、を備え、
前記中間端子はずれ検出回路は、前記分割抵抗の抵抗素子の抵抗値のばらつきに応じて定電流値が可変する定電流回路である、ことを特徴とする充放電制御回路。
【請求項2】
前記定電流回路は、
デプレッション型MOSトランジスタと、前記デプレッション型MOSトランジスタのゲート端子とソース端子間に接続した抵抗を備えることを特徴とする請求項1に記載の充放電制御回路。
【請求項3】
前記抵抗は、前記分割抵抗の抵抗と同じ種類の抵抗を用いることを特徴とする請求項2に記載の充放電制御回路。
【請求項4】
直列に接続された複数の2次電池を備えた電池ユニットと、
前記電池ユニットの充放電を制御する請求項1から3のいずれかに記載の充放電制御回路と、
前記充放電制御回路によって制御される充放電制御スイッチと、
を備える充電式電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−72177(P2011−72177A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151543(P2010−151543)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】